弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 二 四
弘
法
大
師
の
戒
律
觀
上 田 天 瑞 序 、 戒 律 の 意 義 大 師 の 戒 律 觀 研 究 の 方 法 戒 律 と は 普 通 所 謂 二 百 五 十 戒 の 語 に よ つ て 示 さ れ る が 如 ー 比 丘 生 活 に 於 け る 禁 制 箇 條 學 處 ) を 意 味 す る も の と 考 へ ら れ て 居 る が 原 語 の 意 義 よ り 云 へ ば 戒 は 尸 羅 に し て 佛 教 道 徳 の 総 稱 で あ り 律 は 毘 奈 耶 に し て 佛 教 々 團 に 於 け る 律 法 規 定 で あ る 、 從 つ て 戒 は 廣 く し て 律 の 依 つ て 立 っ 根 據 で あ り 戒 律 と 稱 す る も の は 單 に 形 式 的 禁 制 箇 條 の み で は な い の で あ る 、 小 乗 佛 教 の 律 儀 主義
の
弊
に
對
し
て
大
乗
佛
教
に
於
い
て
は
特
に
戒
の
本
義
を
發
揚
せ
ん
と
し
梵
網
經
に
﹁
汝
是
當
成
佛
、我
是
已
成
佛
、
常 作 如 是 信 戒 品 已 具 足 ﹂ と 説 く 如 く 佛 法 の 實 義 に 安 住 す る こ と 即 ち 戒 な り と 説 く に 到 り 特 に 即 事 而 眞 を 教 旨 と す る 密 教 に 於 い て は 菩 提 心 論 に ﹁ 勝 義 行 願 三 摩 地 を 戒 と し ﹂ と 説 き 大 疏 に ﹁ 有 三 三 平 等 句 是 名 眞 實 ⋮ ⋮ 住 此 眞 實 即 是 住 佛 戒 也 ﹂ と 説 か れ る が 如 く 菩 提 心 の 發 起 即 ち 戒 で あ り 生 佛 平 等 の 信 に 住 す る こ と 即 ち 佛 戒 に 住 す る こ と ゝ す る の で あ る 、 要 す る に 戒 は 本 來 の 意 味 に 於 い て は 佛 教 を 信 す る も の ゝ 生 活 指 導 の 原 理 で あ り 所 謂 五 八 十 具 の 戒 は そ の 表 現 さ れ た る 一 様 相 で あ る 、 戒 な く し て 宗 徒 と して の 生 活 は あ り 得 な い 、 比 丘 に は 比 丘 の 戒 あ り 、 信 者 に は 信 者 の 戒 あ り 、 外 道 に は 又 外 道 の 戒 が あ る の で あ る 、 更 に 廣 く 云 へ ば 人 に は 人 と し て の 戒 あ り こ の 戒 あ る こ と に よ つ て 動 物 と 異 な る の で あ る 。 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 を う か じ は ん と す る に は 前 述 の 如 き 意 味 に 重 き を 置 か ね ば な ら ぬ 、 而 し て 大 師 の 戒 律 觀 を 研 究 せ ん と す る に は 種 々 の 方 面 よ り 是 を 見 る 必 要 が あ る 、 第 一 に は 大 師 の あ ら ゆ る 著 作 に よ つ て 大 師 の 佛 教 觀 人 生 觀 宇 宙 觀 を 尋 ね 同 時 に 戒 律 に つ い て の 説 述 を 見 ね ば な ら ぬ 、 第 二 に は 大 師 の 傳 記 に よ り そ の 實 際 生 活 上 に 於 け る 事 蹟 よ り 戒 律 觀 を 見 る べ く 、 第 三 に は 大 師 が 傳 承 さ れ た 密 教 の 經 典 論 疏 に つ い て 密 教 の 戒 律 觀 を 見 る べ く 、 第 四 に は 大 師 の 教 を 奉 す る 後 來 諸 徳 の 註 釋 及 び 論 述 を 見 或 は 大 師 の 時 代 に 於 け る 戒 律 思 想 を 見 こ れ に よ つ て 大 師 の 態 度 を 一 層 明 か に し な け れ ば な ら ぬ 、 勿 論 こ れ 等 の 凡 て の 點 に 亙 っ て 充 分 な る 研 究 を な す こ と は 淺 學 な る 余 と し て は 不 可 能 で あ る が 極 め て 簡 單 に 大 體 に つ い て こ れ 等 諸 方 面 よ り 見 て 大 師 の 戒 律 觀 を 窺 つ た も の が 本 論 で あ り 最 後 に 本 研 究 の 結 果 を 通 し て 現 代 密 教 徒 の 生 活 方 規 戒 律 態 度 は 如 何 に あ る べ き か に つ き 余 の 考 を 附 加 し て 置 い た 、 蓋 し 是 の 如 き 問 題 に つ い て 何 等 か の 解 決 を 得 る こ と は 自 分 と し て 必 要 な り と 信 す る が 故 に し て 、 た い 懼 る ゝ 所 は 大 師 の 眞 意 を 阻 害 す る 所 無 き や と 云 ふ こ と で あ る 。 I 大 師 の 顯 戒 に つ い て 弘 法 大 師 は 全 佛 教 を 顯 密 二 教 に 分 つ て こ れ を 統 括 せ ら れ た が 其 の 戒 律 觀 に 於 い て も 弘 仁 の 御 遺 誡 に 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 二 五
弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 二 六 ﹁ 必 須 顯 密 二 戒 堅 固 受 持 云 々 ﹂ と 述 べ ら れ し 如 く 一 切 の 戒 を 顯 密 二 戒 に 分 類 せ ら れ た の で あ る 、 而 し て そ の 顯 戒 と は 三 歸 五 戒 八 戒 二 百 五 十 戒 及 び 菩 薩 戒 等 で あ り 密 戒 と は 三 昧 耶 佛 戒 で あ る 、 こ の 兩 戒 の 中 所 謂 顯 戒 に つ い て 論 す べ き 點 は 第 一 に 弘 法 大 師 は 其 の 傳 記 に 見 ら れ る が 如 く 二 十 歳 に し て 勤 操 大 徳 に つ き 出 家 得 道 し て 沙 彌 の 戒 を 受 け 二 十 二 歳 に し て 南 都 東 大 寺 の 戒 壇 に 於 い て 四 分 律 に よ る 具 足 戒 を
受
け
ら
れ
た
の
で
あ
る
、
尚
又
大
師
は
廿
五
ヶ
條
の
御
遺
誡
に
於
い
て
眞
言
宗
徒
た
る
も
の
は
必
す
東
大
寺
の
戒
壇
院
に 於 い て 具 足 戒 を 受 く べ き こ と を 定 め ら れ て を る 、 こ れ に よ つ て 大 師 は 南 都 戒 壇 に 對 し て 當 時 の 教 界 一 般 の 風 習 に 從 ひ 極 め て 和 衷 的 包 容 的 態 度 を 取 ら れ た こ と を 知 り 得 る の で あ つ て 、 こ れ を か の 傳 教 大 師 が 自 ら 小 乗 戒 を 棄 捨 し 東 大 寺 戒 壇 に 對 し て 一 向 大 乗 の 圓 頓 戒 壇 を 建 立 し 小 乗 戒 よ り 別 立 せ ん と し て そ の 晩 年 を 悪 戦 苦 闘 の 裡 に 終 ら れ た の に 對 比 す る 時 、 同 じ く 新 興 教 團 の 組 織 者 と し て 其 の 態 度 の 相 反 す る こ と に 驚 く と 共 に 大 師 の 著 作 中 に 當 時 教 界 の 最 大 問 題 た る 圓 頓 戒 壇 建 立 に つ い て 何 ん 等 の 意 見 を も 見 出 す こ と が 出 來 な い の は 糞 の 感 を 抱 か ざ る を 得 な い の で あ る 、 こ れ は 更 に 研 究 す べ き 問 題 や あ る が 或 は こ れ を も つ て 大 師 の 政 策 的 意 圖 に よ る も の と 説 く 入 も あ る が 余 の 考 ふ る 所 に よ れ ば 後 に 述 べ る 如 く (Ⅲ 、 四 參 照 ) 大 師 の 包 容 的 佛 教 觀 、 教 義 よ り 來 た る 當 然 の 歸 結 な り と 云 は ね ば な ら ぬ 。 次 に 大 師 は 三 學 録 に 於 い て 眞 言 宗 所 學 の 律 と し て 密 戒 に 於 い て 蘇 悉 地 經 ・蘇 婆 呼 經 ・ 金 剛 頂 受 三 昧 耶 佛 戒 儀 を あ げ ら れ 顯 戒 に 於 い て は 根 本 説 一 切 有 部 毘 奈 耶 五 十 巻 以 下 十 二 部 百 六 十 八 巻 の 小 乗 律 は 悉 く所 謂 有 部 律 で あ つ て 四 分 律 に 關 す る も の は 一 も な い の で あ る、 こ ゝ に 於 い て 疑 問 と す べ き は 大 師 は 自 ら 四 分 律 に よ つ て 受 具 さ れ 且 つ 又 當 時 支 那 日 本 に 於 け る 風 潮 は 律 と 云 へ ば 實 際 上 の 依 用 は 全 く 四 分 律 で あ つ た に 拘 ら す 大 師 は 何 ん が 故 に 眞 言 宗 所 學 と し て 四 分 律 を 採 用 さ れ す し て 有 部 律 を 採 用 さ れ た か と 云 ふ こ と で あ る 、 こ れ に つ い て は 既 に 本 誌 第 四 十 六 號 に ( 一 ) 龍 猛 以 後 密 教 傳 統 の 祖 師 が 有 部 律 に よ れ り と の 説 あ り 、 有 部 律 と 密 教 と は 其 の 成 立 の 年 代 及 び 流 行 の 地 域 を 一 に す る こ と ( 二 ) 有 部 律 の 内 容 が 密 教 的 色 彩 に 富 め る こ と (三 ) 譯 者 義 淨 が 密 教 的 の 人 で あ り そ の 譯 た る 有 部 律 が 當 時 に 於 い て 最 も 新 し き 律 な り し こ と 、 の 三 點 を 理 由 と し て 余 の 考 へ を 述 べ て 置 い た が 尚 一 の 理 由 と し て 附 加 す べ き は 慈 雲 尊 者 も 指 摘 さ る ゝ が 如 く 空 有 兩 系 思 想 よ り 云 へ ば 成 實 四 分 は 空 宗 で あ り 有 部 は そ の 名 の 示 す が 如 く 有 宗 で あ る 、 密 教 は 本 有 の 宗 教 で あ り 六 大 縁 起 は 絶 對 有 、 妙 有 思 想 で あ つ て 有 宗 思 想 の 淳 化 せ る も の で あ る 、 大 師 が 法 華 を も つ て 華 嚴 の 下 位 に 置 か れ た の も 華 嚴 が 有 系 で あ る か ら で あ る 、 か く 有 部 の 有 思 想 が 密 教 の 有 思 想 と 一 致 す る が 故 に 特 に 有 部 律 を 探 ら れ た .の で あ る と 云 ふ こ と が 出 來 る 。 ( 密 教 研 究 第 四 十 六 號 參 照 ) 註 ① 大 師 の 出 家 受 具 の 年 に つ い て は 種 々 の 異 説 が あ る 、 又 大 師 受 具 の 南 都 の 戒 壇 は 單 な る 四 分 律 に 非 す し て 瑜 伽 戒 に し て そ の 中 の 攝 律 儀 戒 に 四 分 律 を 依 用 ぜ る も の で あ る と の 説 が 近 時 常 盤 博 士 に よ り 述 べ ら れ て を る 。 (宗 教 研 究 特 輯 最 近 宗 教 研 究 思 潮 號 参 照 ) ② 今 須 東 寺 座 主 大 阿 闍 梨 執 事 欲 改 直 之 亦 簡 定 諸 定 額 僧 中 能 オ 童 子 等 於 山 家 試 度 即 於 東 大 寺 戒 壇 受 具 足 戒 受 戒 之 後 於 山 家 三 年 練 行 蕨 後 各 各 随 師 受 學 密 教 云 云 。 ( 大 師 全 集 Ⅱ 七 九 七 頁 ) 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 二 七
弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 二 八 ③ 大 屋 徳 城 氏 日 本 佛 教 史 研 究 第 二 、 一 九 九 頁 以 下 參 照 ④ 密 家 令 學 昌 有 部 律 其 樞 要 唯 有 一 事 相 傳 、如 成 實 四 分 等 空 宗 尊 無 性 破 有 也 、 見 衆 賢 論 師 所 諍 鑽 燧 求 火 、 經 部 日 燈 火 依 衆 緑 出 油 柱 盞 及 人 功 具 足 然 後 有 燈 火 一 緑 闕 燈 不 成 、 此 宗 同 顯 極 眞 如 無 性 是 故 秘 宗 所 不 好 也 、 如 一 切 有 宗 前 念 燈 爲 自 體 不 失 因 名 之 爲 得 金 石 中 本 來 所 具 火 性 爲 燈 火 因 是 故 同 秘 密 本 有 六 大 妙 訓 。 有 部 衣 相 暑 要 序 (慈 雲 尊 者 全 集 第 三 輯 三 〇 八 頁 ) Ⅱ 大 師 の 密 戒 に つ い て 一 大 日 經 の 戒 律 密 戒 と は 即 ち 三 味 耶 戒 で あ る 、 三 味 耶 戒 の 所 依 と す る 所 は 大 日 經 で あ る 、 仍つ て 特 に 三 味 耶 戒 を 説 く 前 に 大 日 經 所 説 の 戒 律 に つ き 經 疏 を 參 照 し つ ゝ 略 述 し て 置 き 度 い 、 大 日 經 中 戒 律 に つ い て 特 に 示 さ れ て を る 所 は 第 二 具 縁 品 所 説 の 三 世 無 障 碍 智 戒 及 び 三 味 耶 の 偈 た る 四 根 本 罪 、 第 五 持 明 禁 戒 品 所 説 の 眞 言 念 誦 の 行 法 中 に 於 け る 禁 戒 、 第 十 八 方 便 學 處 品 所 説 の 十 善 戒 五 戒 四 根 本 罪 で あ る 。 (1) 三 世 無 障 碍 智 戒 大 日 經 第 一 巻 (大 正 十 八 、 五 頁 以 下 ) 經 疏 第 五 巻 (大 正 三 十 九 、 六 二 六 頁 以 下 ) 演 奥 鈔 第 十 一 ( 大 正 五 十 九 、 一 〇 九 頁 以 下 ) 大 日 經 に 持 眞 言 行 者 是 の 如 く 攝 受 し 已 り て 彼 (弟 子 ) に 命 じ て 三 た び 自 歸 し て 説 い て 先 の 罪 を 悔 ひ し め よ 、 塗 香 等 を 奉 り 諸 の 菩 薩 を 供 養 せ し め 彼 に 三 世 無 障 磯 智 戒 を 授 く べ し 、 次 に 歯 木 を 授 く べ し 、⋮⋮ 云 何 な る を か 戒 と す る や 、謂 く 觀 察 し て 自 身 を 捨 て ゝ 諸 佛 菩 薩 に 奉 献 す る な り 、 何 を も つ て の 故 に 、 若 し 自 身 を 捨 っ れ ば 則 ち 彼 の 三 事 を 捨 つ と な す 、 云 何 な る を か 三 と 爲 す 、 謂 く 身 語 意 な り 、 是 の 故
に 族 姓 の 子 身 語 意 の 戒 を 受 く る を も つ て 菩 薩 と 名 く る こ と を 得 、 所 以 何 ん と な れ ば 彼 の 身 語 意 を 離 れ る が 故 に 、 菩 薩 摩 訶 薩 應 に 是 の 如 く 學 す べ し 。 大 正 十 八 、 五 頁 ・六 頁 と 云 ふ も の 即 ち 三 世 無 障 碍 智 戒 の 文 で あ つ て こ れ は 灌 頂 に 於 い て 入 曼 茶 羅 の 前 に 弟 子 に こ の 戒 を 授 く べ き こ と を 説 く も の で 經 疏 に は 別 名 と し て 無 爲 戒 と も 云 ひ 、 大 師 が 密 戒 、 三 味 耶 戒 、 菩 提 心 戒 と 云 は れ る も の は こ の 戒 で あ る 、 要 す る に 自 己 を 諸 佛 に 没 入 し 諸 佛 と 一 味 に な り 諸 佛 の 智 を 得 る こ と に よ り 三 業 の 諸 悪 を 離 れ る 戒 で あ つ て こ れ を 具 體 的 利 他 的 に 表 現 せ る も の が 同 じ く 具 縁 品 に 三 昧 耶 の 偈 と し て 説 く ﹁ 不 應 捨 法 捨 離 菩 提 心 樫 怯 一 切 法 不 型 衆 生 行 (大 正 十 八 、 一 二 頁 b ) と す る 菩 薩 の 四 重 禁 な る も の こ れ で あ る 、 經 疏 等 の 解 釋 に よ れ ば 住 無 戲 論 金 剛 智 印 を 體 と し 如 來 清 淨 の 智 慧 を 成 就 す る 戒 に し て 三 世 の 諸 佛 は 皆 こ の 道 に よ つ て 菩 提 に 至 る が 故 に 三 世 無 障 碍 智 戒 と 云 ひ (依 主 釋 ) 、 又 三 世 無 障 碍 智 即 ち 戒 に し て 三 平 等 の 佛 智 は 自 性 と し て 清 淨 に し て 罪 業 を 離 れ る 故 に 佛 智 に 住 す る こ と 即 ち 戒 で あ る (持 業 釋 ) 、 而 し て 佛 智 に 住 す る と は 十 緑 成 句 に よ り 身 不 可 得 を 觀 じ 三 三 平 等 の 大 智 に 住 す る こ と で あ る と す る 、 又 五 戒 十 善 等 は こ の 體 よ り 出 た 戒 相 で あ る と 云 ふ 。 (2) 持 明 禁 戒 大 日 經 第 五 巻 ( 大 正 十 八 、 三 七 頁 以 下 ) 疏 第 十 七 ( 大 正 三 十 九 、 七 五 一 頁 以 下 ) 演 奥 鈔 第 五 十 六 ( 大 正 五 十 九、 五 六 一 頁 以 下 ) 持 明 禁 戒 と は 眞 言 行 者 が 悉 地 を 成 就 す る 爲 に 一 定 期 間 (六 月 念 誦 ) 持 す る 禁 戒 没 栗 多 ) で あ つ て 大 日 經 第 十 五 持 明 禁 戒 品 に 説 く 所 で あ る 、 但 し 持 明 禁 戒 の 意 義 に つ い て は 上 の 如 き 持 明 者 所 持 の 禁 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 二 九
弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 三 〇 戒 と 云 ふ 意 味 の 外 に 持 明 即 禁 戒 な り と の 説 も あ る 、 即 ち 六 六 月 持 誦 の 行 が 防 非 止 悪 の 能 あ り 直 ち に 禁 戒 で あ る と 云 ふ の で あ る 。 經 に 、
爾
時
金
剛
手
復
以
偈
頌
請
問
大
日
世
尊
持
明
禁
戒
爲
眞
言
門
修
菩
薩
行
諸
菩
薩
故
と
し
て
次
に
金
剛
手
が
(1)
禁
戒
を
成
す
る
は
如
何
(2)
尸
羅
に
住
す
る
と
は
如
何
(3)
修
行
し
て
無
着
を
得
る
と
は
如
何
(4)
禁
戒
所
持
の
期
間
如
何
(5)
大
日
如
來
の
如
き
威
徳
は
如
何
に
し
て
成
就
す
る
や
の
五
問
を
發
し
こ
れ
に
對
し
て
大
日
如
來
が
答
へ
ら
れ
る
の
で
あ
る
が
所
謂
持
明
者
の
禁
戒
と
し
て
箇
條
的
に
あ
げ
る
も
の
は
少
く
そ
の
戒
相
と
し
て
見
る
べ
き も の は 六 月 念 調 の 作 法 で あ る 、 即 ち 持 明 者 が 悉 地 を 得 る 爲 に は 第 一 月 に は 黄 色 金 剛 方 曼 茶 羅 を 觀 じ 自 身 が そ の 中 に 坐 し 自 身 や が て 阿 字 と な る を 觀 じ 手 に 五 股 金 剛 の 印 を 結 び 阿 字 を 誦 じ こ の 阿 字 が 臍 よ り 出 て 鼻 か ら 入 り 間 斷 な く 喘 息 の 如 く 觀 す る の で あ る 、 か く し て 地 大 阿 字 の 徳 引 い て は 一 相 一 味 眞 實 の 理 た る 大 日 如 來 を 達 見 す る ま で 續 け る の で あ る 、 か く の 如 く し て 第 二 月 に は 白 色 水 輪 縛 字 圓 形 の 觀 、 第 三 月 は 赤 色 火 輪 羅 字 三 角 形 の 觀 、 第 四 月 は 黒 月 風 輪 訶 字 半 月 形 の 觀 、 第 五 月 は 地 水 方 圓 の 合 觀 、 第 六 月 は 風 火 合 觀 を な す の で あ る 、 而 し て 第 三 月 に は 乳 の み を 食 し 餘 の も の を 一 切 食 せ す 第 二 月 に は 水 の み を 服 し 第 三 月 に は 一 切 食 を 求 め す 施 者 あ る 時 の み 食 し 第 四 月 に は 但 だ 風 の み を 食 し 第 五 月 に は 一 切 の 食 を 斷 じ 眞 言 誦 持 の 出 入 の 息 を 食 と し 第 六 月 に は 但 だ 訶 字 を も つ て 食 と し 一 切 の 食 を 斷 つ と し て を る 、 經 及 び 疏 の 説 く 所 に よ れ ば 持 明 禁 戒 は 寧 ろ 持 明 の 相 貌 を 説 く も の な る が 故 に 持 明 即 禁 戒 の 意 に解 さ れ る 様 で あ る 、 た じ 食 に つ い て の 規 定 の み が 禁 戒 と 云 ふ こ と が 出 來 る 、 然 し こ の 六 月 念 誦 の 法 は 相 貌 を 假 り に 説 い た も の で こ の 禁 戒 も そ の 體 と す る 所 は 大 日 如 來 眞 實 の 三 平 等 で あ り 金 剛 實 際 で あ り 、 三 昧 耶 戒 と そ の 體 に 於 い て 相 違 す る 所 な く た じ こ の 戒 は 密 法 修 行 の 一 定 期 間 中 特 に 所 持 す る も の で あ り 一 洛 叉 ( 十 萬 ) を も つ て そ の 期 限 と す る の で あ る が 實 は 悉 地 成 就 の 時 を も つ て 終 る の で あ つ て 必 す し も 一 定 の 時 間 で は な い 。 尚 考 ふ べ き こ と は 前 述 の 如 く 經 、 疏 に は 持 明 禁 戒 を も つ て 持 明 者 所 持 の 禁 戒 と す る も 箇 條 的 に 禁 制 的 條 目 を あ げ な い の は 如 何 な る 理 由 で あ ら う か 、 そ の 他 に 特 に 悉 地 を 成 就 す る 爲 に 眞 言 行 者 の 受 持 す べ き 戒 條 と し て は 蘇 悉 地 經 及 び 蘇 婆 呼 量 子 經 所 説 の 戒 が こ れ で あ る 故 に こ れ 等 の 經 の 戒 律 も 亦 持 明 禁 戒 に 攝 し て も 差 支 な か ら う と 思 ふ 。 (3) 十 善 戒 、 五 戒 、 四 根 本 罪 、 十 重 禁 大 日 經 第 六 ( 大 正 十 八 、 三 九 頁 以 下 ) 疏 第 十 七 ・ 十 八 ( 大 正 三 九、七 五 六 頁 以 下 )
大
日
經
に
於
い
て
五
戒
十
善
四
波
羅
夷
等
所
謂
顯
教
に
云
ふ
戒
を
説
く
の
は
第
十
八
方
便
學
處
品
で
あ
る
、
疏
等
の
解
釋
に
よ
れ
ば
こ
れ
等
の
戒
は
秘
密
曼
荼
羅
に
入
ら
ん
と
す
る
時
先
づ
授
け
ら
る
べ
き
も
の
で
あ
る
が
故
に
上
の
具
縁
品
に
三
世
無
障
碍
智
戒
を
説
か
れ
る
所
に
同
時
に
説
く
べ
き
で
あ
る
が
具
緑
品
に
は
種
々
な
る
方
便
を
説
く
故
に
そ
の
暇
な
く
後
に
讓
つ
た
の
で
あ
る
と
し
て
を
る
、
こ
の
品
に
は
先
づ
爾
時
執
金
剛
秘
密
主
自
佛
言
、
世
尊
願
説
諸
菩
薩
摩
訶
薩
等
具
知
慧
方
便
所
修
學
句
令
歸
依
者
於
諸
菩
薩
摩
訶
弘
法
大
師
の
戒
律
觀
一
三
一
弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 三 二
薩
無
有
二
意
離
疑
惑
心
於
生
死
流
轉
中
常
不
可
壊
、
如
是
説
已
、毘
盧
遮
那
世
尊
以
如
來
眼
觀
一
切
法
界
、
告
執
金
剛
秘
密
主
言
、
誦
聽
金
剛
主
、
今
説
善
行
修
行
道
、
若
菩
薩
摩
訶
薩
住
於
此
者
當
於
大
乗
而
得
通
達
、
秘
密
主
、
菩
薩
持
不
奪
生
命
戒
所
不
應
爲
⋮
⋮
⋮
大
正
十
八
、
三
九
頁
a
と し て こ ゝ に 所 謂 十 善 戒 を あ げ 、 次 に 小 乗 の 十 善 戒 と 秘 密 の 十 善 戒 に つ い て の 相 違 質 問 に 對 し て 小 乗の
戒
は
﹁
慧
方
便
﹂
な
く
制
定
的
法
律
的
の
も
の
に
し
て
邊
智
を
開
發
す
る
に
過
ぎ
な
い
が
今
の
十
善
戒
は
一
切
法
平
等
の 觀 智 に 立 ち ﹁ 智 慧 方 便 ﹂ を 具 す る も の で あ る と 説 き 更 に 具 體 的 に 十 善 の 各 條 を 説 明 し て 小 乗 に 於 い て は 形 式 的 に 十 善 を 守 る こ と を も つ て 持 戒 と す る が 今 は 方 便 を 具 す る 動 的 な る も の と し て 一 一 例 を あ げ て 居 る 、 例 へ ば 菩 薩 は 盡 形 壽 殺 意 を 離 る べ く 他 の 壽 命 を 護 る こ と 己 身 の 知 く な る べ き で あ る が 而 も 時 に 大 悲 の 方 便 に よ つ て 悪 業 の 報 を 解 脱 せ し め ん が 爲 に は 亦 殺 す こ と も あ り こ れ 破 戒 に 非 す と 説 い て 居 る (Ⅲ 、 2 參 照 ) 、 次 に こ の 十 善 の 根 本 を 斷 す る も の は 何 な る や と 問 ふ に 對 し 在 家 の 菩 薩 は 五 戒 を 守 る べ く 而 も こ の 五 戒 を 持 す る に は 聲 聞 の 如 く 單 に 形 式 的 自 利 的 に 非 す し て 時 方 に 随 順 し 自 在 に 攝 受 し 利 他 の 精 神 に よ り 方 便 を 具 す べ く 是 の 如 き 有 爲 戒 を 道 し て そ の 根 本 た る 無 上 吉 群 の 無 爲 戒 に 至 る の で あ り こ の 故 に 王 位 に あ り 天 の 妙 樂 を 受 く る も 善 の 根 本 を 斷 せ す と し 、 次 に 菩 薩 の 根 本 善 業 を 斷 す る も の と し て 四 種 の 根 本 罪 を 説 い て を る 、 是 れ 即 ち 菩 薩 の 四 波 羅 夷 で あ つ て 經 に は 次 の 如 く 述 べ て を る 。有
四
種
根
本
罪
乃
至
活
命
因
縁
亦
不
應
犯
、
云
何
爲
四
、
謂
謗
諸
法
捨
離
菩
提
心
樫
悋
惱
害
衆
生
、
所
以
者
何 、 此 性 是 染 非 持 菩 薩 戒 。 大 正 十 八 、 四 〇 頁 、 即 ち 聲 聞 乗 に 云 ふ が 如 き 婬 盗 殺 妄 の 四 波 羅 夷 は 秘 密 乗 に 於 い て は 偸 蘭 遮 遮 罪 ) に 過 ぎ す し て (疏 の 解 ) 密 乗 の 菩 薩 の 根 本 生 命 を 失 ふ も の は 捨 正 法 等 の 四 罪 で あ る と す る の で あ る 、 更 に 經 に は 佛 が 方 便 智 を 離 れ た る 形 式 的 な る 小 乗 戒 を 説 く 所 以 は 諸 の 聲 聞 を 誘 進 せ ん が 爲 の 方 便 で あ る と 結 ん で を る 。 (Ⅲ 、 二 參 照 ) 尚 附 説 す べ き は 大 疏 に は 經 の 方 便 學 處 品 を 解 釋 す る 中 に 四 根 本 罪 の 外 に 菩 薩 の 生 命 を 斷 す る も の と し て 十 重 禁 を あ げ て 菩 薩 の 正 行 と し て を る 、 十 重 禁 は 無 畏 三 藏 禅 要 に も 弘 法 大 師 作 の 三 昧 耶 佛 戒 儀 中 に も あ げ ら れ 三 昧 耶 戒 を 授 け る 時 説 示 さ れ る も の と な つ て 居 る が 大 疏 の 十 重 禁 よ り 名 目 が 多 少 異 つ て 居 る 、 か く の 如 く 十 重 禁 を 説 く 所 以 は 小 乗 の 四 波 羅 夷 に 對 し 四 根 本 罪 を 經 に 説 い て 居 る 故 に 大 乗 梵 網 戒 等 に 説 く 十 重 禁 に 對 し て 更 に 秘 密 乗 の 十 重 禁 を 説 い て 大 小 の 顯 戒 と 秘 密 戒 と の 相 違 を 示 し た も の で あ ら う 、 繁 を 壓 ひ こ れ 等 の 十 重 禁 を 左 記 に 表 示 し て 置 き 度 い 。 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 三 三弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 三 四
(4)
具
支
灌
頂
の
七
種
戒
相
以 上 大 日 經 所 説 の 戒 を 説 い た が こ れ 等 密 教 所 依 の 經 論 に 説 か れ る 戒 を ま と め て 安 然 の 具 支 灌 頂 第 三 に 大 悲 胎 藏 入 曼 荼 羅 の 前 に 授 け る も の と し て 七 種 の 戒 を あ げ て を る 、 又 演 奥 砂 第 十 一 本 に も 出 し て を る 、 こ れ も 表 示 だ け し て 置 か う 。 二 、 三 昧 耶 戒 概 説 密 戒 は 所 謂 三 昧 耶 戒 で あ り 佛 戒 又 は 發 菩 提 心 戒 と も 名 け 前 述 の 三 世 無 障 碍 智 戒 も こ れ で あ つ て 大 師 が ﹁ 此 の 乗 に 入 る も の は 先 づ 須 く 戒 を 受 く べ し 、 こ の 戒 を 三 昧 耶 戒 と 名 く 、 教 を 眞 言 と 云 ふ ﹂ ( 平 城 天 皇 灌 頂 文 ) と 云 は れ る 如 く 秘 密 乗 に 於 け る 教 を 眞 言 と 云 ふ に 對 し て 戒 を 三 昧 耶 戒 と 云 ひ こ の 宗 に 入 る 者 の 先 づ 受 く べ き 眞 言 行 人 の 根 本 態 度 密 法 修 行 の 指 針 を 示 す も の で あ る 、 故 に 灌 頂 に 於 い て は 必 す 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 三 五
弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 三 六 先 づ 三 昧 耶 戒 を 授 け て 然 る 後 に 入 壇 せ し む る の で あ る 、 弘 法 大 師 も 入 唐 し て 慧 果 和 上 に よ り 兩 部 の 灌
頂
壇
に
入
ら
れ
る
に
當
つ
て
先
づ
受
け
ら
れ
た
も
の
で
あ
る
。
三
昧
耶
戒
の
内
容
は
菩
提
心
戒
と
云
は
れ
る
如
く
菩
提
心
を
發
す
こ
と
で
あ
る
、
即
ち
菩
提
心
論
に
﹁
諸
佛
菩
薩
昔
因
地
に
在
し
て
是
の
心
を
發
し
已
つ
て
勝
義
行
願
三
摩
地
を
戒
と
な
し
乃
し
成
佛
に
至
る
迄
で
時
と
し
て
暫
く
も
忘
る
る
な
し
﹂
と
説
か
れ
る
如
く
勝
義
行
願
三
摩
地
の
三
種
の
菩
提
心
を
發
す
こ
と
で
あ
る
、
更
に
具
體
的
に
云
へ
ば
深
般
若
に
よ
つ
て
諸
法
を
觀
察
し
九
種
住
心
の
無
自
性
を
觀
じ
第
十
秘
密
荘
嚴
心
に
入
る
大
智
と
、
一
切
衆
生
を
觀
す
る
こ
と
己
身
の
如
く
こ
れ
を
救
濟
せ
ん
と
す
る
大
悲
と
、
生
佛
平
等
の
觀
に
住
す
る
三
摩
地
定
)
の
三
種
の
働
を
内
容
と
す
る
菩
提
心
大
誓
願
心
を
發
す
こ
と
で
あ
り
、
其
の
戒
相
と
し
て
具
體
的
に
示
さ
れ
る
も
の
は
四
重
禁、
十
重
禁
、
十
善
戒
等
を
受
持
す
る
こ
と
で
あ
る
、
大
師
は
三
昧
耶
戒
を
説
明
し
て
今
所
レ授
三
昧
耶
佛
戒
者
即
是
大
毘
盧
遮
那
自
性
法
身
之
所
説
眞
言
曼
荼
羅
教
之
戒
也
、
若
有
二善
男
善
女
比
丘
比
丘
尼
清
信
男
女
等
欲
入
此
乗
修
行
者
先
發
四
種
心
、
一
信
心
二
大
悲
心
三
勝
義
心
四
大
菩
提
心
、
初
信
心
者
⋮
⋮
⋮
平 城 天 皇 灌 頂 文 ・三 昧 耶 戒 序 (大 正 七 十 八 、 三 頁 c ・五 頁 a ) と 述 べ て 居 ら れ る が こ の 四 種 心 は 要 約 す れ ば 前 述 の 三 種 の 菩 提 心 で あ る 、 故 に 同 書 に 續 い て 四 種 心 を 説 明 せ る 次 に ﹁ 諸 佛 如 來 此 の 大 悲 (行 願 ) 勝 義 三 摩 地 を 戒 と な し 時 と し て 暫 く も 忘 る ゝ な し 、 何 を も つ て の 故 に 此 を 以 つ て 戒 と 名 く 云 々 ﹂ (同 上 四 頁 b ) と 述 べ 生 佛 平 等 の 三 昧 に 住 す る こ と に よ り 十 不 善 業 を離 れ る の で あ つ て 梵 網 經 解 題 に も 云 は れ る 如 く (全 集 I 八 一 三 頁 ) 三 密 平 等 の 觀 智 は 絶 對 善 性 に し て (尸 羅 こ れ に よ つ て 自 ら 一 切 の 悪 を 離 脱 す る (調 伏 の で あ る 、 小 乗 が 外 形 的 に 悪 を 離 れ る こ と に よ つ て 善 に 達 せ ん と す る に 對 し 三 昧 耶 戒 は 大 智 大 信 に よ り 直 ち に 宇 宙 の 實 相 に 透 徹 し そ こ に 自 ら 悪 を 離 れ る の で あ る 、 こ の 消 息 を 大 師 は 以 深 般 若 觀 無 自 性 故 自 然 離 一 切 悪 修 一 切 善 饒 益 自 他 衆 生 即 是 三 聚 妙 戒 具 足 無 缺 、 住 秘 密 三 摩 地 亦 復 如 是 、 住 此 乗 者 以 此 戒 檢 知 自 身 心 教 他 衆 生 即 此 秘 密 三 摩 耶 佛 戒 也 。 (同 上 、 四 頁 c 、 六 頁 b ) と 述 べ て 居 ら れ る 。 出 典 及 び 異 名 三 摩 耶 戒 な る 語 は 善 無 畏 三 藏 の 大 日 經 疏 中 具 緑 品 の 疏 に ﹁ 當 深 起 慈 悲 護 念 之 心 耳
語
告
彼
三
昧
耶
戒
勿
令
諸
餘
未
入
壇
者
聞
聲
。
﹂
と
云
ひ
そ
の
他
處
々
に
出
す
所
で
あ
つ
て
大
日
經
に
は
前
述
の
如
く
具
緑
品
に
三
世
無
障
碍
智
戒
及
び
三
昧
耶
偈
を
説
き(Ⅱ
一
參
照
)
三
昧
耶
戒
な
る
語
は
見
え
な
い
.
然
し
疏
に
云
ふ
三
昧 耶 戒 は 全 く 經 の 具 緑 品 等 に 説 く も の で あ つ て 三 昧 耶 戒 は 大 日 經 に 基 く も の と 云 は ね ば な ら ぬ 、 又 こ の 戒 に は 極 め て 多 く の 異 名 が あ り 大 師 も 弘 仁 の 御 遺 誠 に ﹁ 密 戒 と は 所 謂 三 摩 耶 戒 な り 、 亦 は 佛 戒 と 名 け 亦 は 發 菩 提 心 戒 と 名 け 亦 は 無 爲 戒 等 と 名 く ﹂ と 示 さ れ て 居 る が 大 日 經 住 心 品 に 住 無 爲 戒 と 云 ひ 具 緑 品 に 三 世 無 障 碍 智 戒 、 住 無 戯 論 智 印 、 三 摩 耶 偈 と 云 ひ 、 方 便 學 處 品 に 如 來 無 上 吉 群 無 爲 戒 と 云 ひ 轉 字 輪 漫 荼 羅 行 品 に 無 上 正 等 戒 と 云 ひ 、 大 日 經 疏 に 一 切 衆 生 自 性 本 源 戒 、 本 性 萬 徳 具 足 戒 、 性 淨 金 剛 戒 、 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 三 七弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 三 八 無 漏 自 性 戒 と 云 ひ 、 無 畏 三 藏 禪 安 に 諸 佛 内 證 無 漏 清 淨 戒 、 眞 法 戒 と 云 ふ も の 即 ち 三 昧 耶 戒 の 異 名 で あ る 。 名 義 三 昧 耶 の 語 義 に つ き 大 師 は 次 の 如 く 釋 し て を ら れ る 。 三 昧 耶 者 梵 言 唐 翻 本 誓 平 等 攝 持 等 義 、 言 平 等 三 平 等 、 身 語 心 三 密 平 等 故 ⋮ ⋮ ⋮ 言 誓 願 者 已 知 自 他 如 是 故 發 誓 願 修 大 悲 行 願 、 行 願 則 四 無 量 四 攝 等 是 也 、 此 是 行 願 能 利 衆 生 能 濟 群 生 爲 衆 生 之 父 也 尤 可 留 心 . 言 攝 持 者 入 我 我 入 也 、自 塵 數 佛 能 入 他 心 佛 他 心 塵 數 佛 能 入 自 心 佛 彼 此 互 爲 能 持 所 持 、 能 觀 此 理 攝 持 自 他 善 悪 之 心 故 名 之 。 平 城 天 皇 灌 頂 文 、 (大 正 七 十 八 、 二 頁 c ) 又 大 師 は 字 義 に 約 し て 釋 し 三 は 諸 法 諦 の 義 、 昧 は 我 不 可 得 即 ち 大 空 の 義 、 耶 を 乗 の 義 等 の 釋 を 施 し て 居 ら れ る が 今 は 省 略 す る 、 又 嵯 峨 天 皇 灌 頂 文 に は 誓 願 平 等 三 賓 の 義 と し (全 集 Ⅳ 四 五 九 頁 )秘 藏 經 に は ﹁ 三 昧 耶 に 多 義 あ り 、 且 く 四 義 を 表 は す ﹂ と て 平 等 誓 願 驚 覺 除 垢 障 の 義 を あ げ て 居 ら れ る 、 (全 集 Ⅱ 七 頁 ) こ れ は 大 疏 に ﹁ 三 昧 耶 是 平 等 義 是 本 誓 義 是 除 障 義 是 驚 覺 義 、 言 平 等 者 ⋮ ⋮ ﹂ (大 正 三 十 九 、 六 七 四 頁 c ) と 説 く も の に よ ら れ た の で あ ら う 、 こ の 語 は 極 め て 多 義 の 語 で あ つ て 辭 書 に も 七 八 義 多 き は 二 十 數 義 を 出 し て を る が 今 三 昧 耶 戒 の 語 と し て 用 ひ ら れ る 意 味 は 平 等 、 攝 持 、 誓 願 除 垢 障 等 の 意 で あ ら う 、 即 ち 生 佛 三 密 平 等 の 觀 念 を 基 礎 と し 一 切 衆 生 救 濟 の 大 誓 願 を 起 し こ れ に よ つ て 一 切 の 塵 垢 を 去 る 意 味 で こ れ は そ の ま ゝ 三 種
菩 提 心 の 内 容 を 示 す も の で あ る 因 に 三 昧 耶 に は こ の 他 重 要 な る 意 味 と し て 時 の 意 と 標 幟 の 意 が あ る 、 三 味 耶 形 等 の 場 合 は こ の 標 幟 の 意 で あ る 。 三 昧 耶 戒 の 戒 體 三 昧 耶 戒 の 戒 體 如 何 と 云 ふ に 大 疏 巻 五 に 今 此 淨 戒 正 以 住 無 戯 論 金 剛 智 印 爲 體 、 所 以 特 告 此 尊 欲 令 人 法 相 應 流 傅 有 寄 也 (大 正 三 十 九 、 六 二 九 頁 a ) と あ る に よ り 住 無 戲 論 執 金 剛 の 智 印 即 ち 三 昧 耶 戒 の 戒 體 な り と 云 は れ て を る 、 住 無 戲 論 執 金 剛 と は 文 殊 菩 薩 で あ る 、 即 ち こ の 戒 は 文 殊 菩 薩 の 智 印 を も つ て 戒 體 と す る も の で 大 日 尊 が 特 に 文 殊 菩 薩 に こ の 戒 の こ と を 告 げ ら れ た の は 人 法 相 應 せ し め て 流 傳 に 便 な ら し め ん と せ ら れ た も の で あ る と す る の で あ る 、 然 る に 文 殊 の 智 印 は 大 智 に し て こ れ 菩 提 心 の 徳 に 外 な ら ぬ 、 殊 に 大 師 も 三 昧 耶 戒 を 受 く る も の は 三 種 の 菩 提 心 を 起 す べ し と 説 か れ 菩 提 心 論 に も 諸 佛 は こ の 菩 提 心 を 戒 と す と 説 く 故 に 三 昧 耶 戒 の 戒 體 は 淨 菩 提 心 で あ る 、 而 も こ の 淨 菩 提 心 は 衆 生 本 具 の も の な る が 故 に 三 昧 耶 戒 は 衆 生 本 具 の 戒 を 受 け る の で あ る 、 故 に 疏 に も ﹁ 淨 菩 提 心 は 其 の 性 法 爾 に し て 金 剛 の 如 き が 故 に 是 の 如 き 堅 固 の 性 は 即 ち 是 れ 師 よ り 得 す 、 無 爲 戒 に 住 す ﹂ 乏 云 ふ の で あ る 、 從 っ て 金 剛 不 壊 の 戒 に し て そ の 根 本 が 永 久 に 斷 す る が 如 き こ と は な い 、 換 言 す れ ば 人 類 は 永 遠 の 時 間 に 於 い て 魂 の 目 醒 を 求 む る 本 性 を 有 し て を り (菩 提 心 ) こ の 本 性 は 永 遠 に 失 は れ ぬ も の で あ る が こ の 本 性 を し て 發 動 せ し め て 速 か に 魂 の 目 醒 を 得 し む る も の 即 ち 發 菩 提 心 戒 で あ る 、 こ の 戒 を 破 る と 錐 も 戒 體 は 永 斷 す る こ と な く 更 め て 授 戒 す る こ と に よ つ て 新 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 三 九
弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 四 〇 し く 菩 提 心 の 覺 醒 を 得 る こ と が 出 來 る の で あ る 、 か ゝ る 消 息 を 大 疏 に は ﹁ 以 此 戒 故 於 生 死 流 縛 中 而 不 可 壊 ﹂ と 云 ひ ﹁ 然 大 乗 中 無 永 斷 義 更 受 自 新 即 是 生 也 ﹂ と 云 ふ の で あ る 。 又 三 昧 耶 戒 の 戒 體 に つ き 常 住 秘 密 の 三 賓 な り と 云 ふ 義 も あ る 、( 菩 提 心 戒 義 刊 本 二 九 頁 以 下 ) 然 し こ ゝ に 云 ふ 三 寶 は 獨 り 戒 體 た る の み な ら す 諸 法 の 體 と す る も の で あ る 、 即 ち 法 界 の 顯 形 等 の 色 は 大 曼 茶 羅 に し て 佛 寶 た り 、 こ の 顯 形 等 に 軌 持 法 則 あ る は 法 寶 で あ り 圓 融 無 碍 な る は 僧 寶 で あ り 、 こ の 三 寶 は 即 ち 又 菩 提 心 の 體 で あ り 受 戒 者 の 色 心 で あ る 、 か く し て 自 身 の 菩 提 心 即 法 界 體 で あ り こ れ 即 ち 三 昧 耶 戒 の 體 で あ る 、 か く し て 三 味 耶 戒 體 は 自 己 の 淨 菩 提 心 で あ り こ れ 又 同 時 に 一 切 宇 宙 で あ る の で あ る 。 戒 儀 三 昧 耶 戒 授 受 の 作 法 た る 戒 儀 に は 不 空 三 藏 譯 受 菩 提 心 戒 儀 一 巻 (大 正 第 十 八 巻 ) 善 無 三 藏 作 無 畏 三 藏 禪 要 一 巻 ( 同 上 ) 弘 法 大 師 作 秘 密 三 昧 耶 佛 戒 儀 一 巻 (大 正 七 十 八 巻 ) 傳 法 灌 頂 三 昧 耶 戒 作 法 等 が あ る 、 受 菩 提 心 戒 儀 は 大 師 が 御 請 來 録 に 載 せ ら る ゝ も の に 相 當 す る の で あ る が 内 容 が 多 少 異 な る 、 又 大 師 が 三 學 録 に 金 剛 頂 三 昧 耶 佛 戒 義 と し て あ げ ら れ る も の は こ れ で あ ら う 、 次 に 無 畏 三 藏 禪 要 は そ の 内 容 が 受 戒 懺 悔 と 密 教 禪 と の 二 部 分 よ り な り 前 者 が 三 味 耶 戒 作 法 に 相 當 す る も の で あ る 、 弘 法
大 師 は 大 日 經 、 經 疏 及 び こ の 兩 戒 儀 に よ り 秘 密 三 昧 耶 佛 戒 儀 を 作 ら れ π の で 同 じ く 大 師 の 作 た る 三 昧 耶 戒 序 は こ の 戒 儀 の 序 と す べ き も の で あ る 、 こ の 秘 密 三 昧 耶 佛 戒 儀 が 後 來 傳 法 灌 頂 作 法 の 基 と な つ た も の で あ る 、 次 に こ の 戒 儀 の 内 容 を 簡 單 に あ げ て お か う 。 一 、 發 起 菩 提 心 ( 一 、 發 心 門) 一 切 惡 を斷じ最 上法 門 を 修 習し 衆生 界 を 度 し 無 上 佛 果 を 得しめん と の 廣 大心 を 發 す 二 、 啓 請 一 切 諸 佛 ( 二 、 供 養 門 ) 一 切 諸 佛 を 稽 首 和 南 し 歸 命 頂 禮 す 。 普 禮 眞 言 庵 薩 嚇 咀 他 蘗 多 引 跛 娜 満 娜 喃 迦 瀘 彌
普
供
震
言
庵 識 識 誕 引 三 婆 嚇 嚇 羅 二 恰 解 レ 三 、 至 心 懺 悔 ( 三 、 懺 悔 門 ) 無 始 巳 來 の 五 逆 十 悪 無 量 の 罪 過 を 至 心 懺 悔 す 。 滅 罪 眞 言 俺 薩 噸 跛 波 捺 賀 引 嚢 嚇 日 羅 二 合 野 引 婆 鎮 ( 賀 ) 引 ( 授 戒 ) 四 、 授 三 歸 ( 四 、 歸 依 門 ) 三 歸 眞 言 俺 僕 欠 五 、 發 菩 提 心 ( 五 、 發 菩 提 心 門 ) 誓 願 斷 除 一 切 悪 等 の 大 誓 願 を 發 す 。 發 菩 提 心 眞 言 俺 冐 地 脚 多 母 怛 波 那 野 引 彌 六 、 問 能 受 持 (六 、 問 遮 難 門 ) 菩 薩 律 儀 を 能 く 受 持 す る や 否 や を 問 ふ 。 七 、 請 師 ( 七 、 請 師 門 ) 弘 法 大 師 の 戒 律 觀弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 四 二 (1) 請 賢 聖 證 明 師 と し て 十 方 一 切 諸 佛 、 戒 和 尚 と し て 無 動 寶 生 阿 彌 陀 天 皷 雷 音 の 四 佛 を 請 す 。 (2) 請 羯 磨 師 及 教 授 師 普 賢 慈 氏 妙 徳 餘 葢 障 の 四 菩 薩 を 羯 磨 師 に 普 賢 金 剛 薩 捶 觀 自 在 の 三 菩 薩 を 教 授 師 に 請 ふ 。 八 、 説 羯 磨 (九 、 結 戒 門 、 十 、 羯 磨 門 ) 羯 麿 を 説 い て 菩 薩 の 三 聚 淨 戒 を 受 持 ゼ し む 。 九 、 甑 別 戒 性 ( 十 、 修 四 攝 門 ) 1 、 四 攝 法 を 修 す べ し 、 四 障 を 淨 除 し 四 威 儀 か 修 す べ し 。 2 、 四 波 羅 夷 の 戒 相 を 説 く 。 3 、 十 重 禁 戒 相 を 説 く (十 三 、 十 重 禁 門 ) 十 、 廻 向 所 修 功 徳 等 以 上 の 戒 儀 に よ り 大 師 作 の 三 昧 耶 戒 儀 を 不 空 譯 の 受 菩 提 心 戒 儀 及 び 禪 要 を 比 較 す る に 不 空 譯 は 三 昧 耶 戒 儀 に あ げ る 眞 言 は 悉 く あ る が 戒 儀 作 法 は 極 め て 簡 單 で 十 悪 七 道 を 懺 悔 し 菩 提 心 を 發 し 、 五 大 願 を 發 す の み で 請 師 の 作 法 も 四 重 十 重 の 戒 相 を 説 く こ と も な く 所 謂 小 乗 律 の 羯 磨 の 形 式 を 具 し て ゐ な い 、 然 る に 無 畏 三 藏 禪 要 は 眞 言 は 一 も な い が 授 戒 の 作 法 は 全 く 大 師 の 作 と 等 し く 所 謂 授 戒 作 法 の 形 式 を 具 し て を り 、 戒 相 に 於 い て 大 師 の も の よ り 少 し く 異 な る の み で あ る 、 こ れ に よ つ て 大 師 作 の 秘 密 三 昧 耶 佛 戒 儀 は 大 日 經 、 疏 、 受 菩 提 心 戒 儀 、 無 畏 三 藏 禪 要 等 を 集 め て 禅 要 の 形 式 に よ つ て 作 ら れ た る も の な る こ と を 知 り 得 る の で あ る 。
三
、
蘇
悉
地
經
及
び
蘇
婆
呼
經
の
戒
こ の 兩 經 は 大 師 が 三 學 録 に 金 剛 頂 受 三 昧 耶 佛 戒 儀 と 共 に 眞 言 宗 所 學 の 律 と し て あ げ ら れ た 密 戒 に 屬 す る も の で 眞 言 行 者 が 悉 地 成 就 の 爲 に 持 す べ き 戒 を 説 く も の で あ る 、 蘇 悉 地 經 は 忿 恕 軍 荼 利 菩 薩 が 執 金 剛 菩 薩 に 云 何 に し て 眞 言 を 持 誦 し て 成 就 を 得 る か に つ い て 四 十 二 の 質 問 を な し こ れ に 對 し て 答 へ る も の で 律 に 關 し て 特 に 説 く の は 一 經 三 十 四 品 中 第 二 分 別 阿 闍 梨 相 品 第 三 分 別 持 誦 相 品 第 四 分 別 同 伴 品 第 五 擇 地 品 第 六 持 眞 言 法 門 法 等 で あ り 他 に も 處 々 に 散 説 さ れ て を る 、 そ れ 等 の 内 容 は 十 重 四 重 禁 に 相 當 す る も の ゝ 外 河 水 に 裸 形 に て 戲 れ る べ か ら す と か 、 外 道 の 人 と 同 居 す る 勿 れ と か 、 五 辛 酒 を 食 す べ か ら す 、 水 中 に 大 小 便 を な す べ か ら す 、 因 縁 な く し て 装 身 具 を 用 ふ べ か ら す 等 小 乗 戒 に 説 く も の が 多 い 。 蘇 婆 呼 童 子 經 に 於 い て 律 に つ き 説 く 所 は 一 經 十 二 品 中 第 一 律 分 品 と 第 二 分 別 處 所 分 品 が 多 く 第 七 悉 地 相 分 品 第 十 分 別 道 品 等 に も 散 説 さ れ て を る 、 そ の 内 容 は 同 じ く 四 重 十 重 十 善 戒 の 外 に 非 時 食 戒 、 五 辛 酒 の 禁 、 肉 食 の 禁 等 を 嚴 重 に 規 定 し 眞 言 行 人 は 小 乗 戒 を も 受 持 す べ き こ と を 説 い て を る 、 要 す る に 兩 經 共 其 の 根 本 を 密 教 の 四 重 禁 十 重 禁 に 置 き 生 佛 平 等 の 三 摩 地 に 立 ち 實 際 修 行 の 方 規 と し て は 大 小 顯 戒 中 よ り 必 要 な る 戒 條 を 取 り 來 つ て 悉 地 成 就 の 方 法 と し た も の で こ れ は 一 定 期 間 を 限 つ て 受 持 す る の で は な い が こ れ も 持 明 禁 戒 に 舍 ま る ゝ も の と 考 へ て 差 支 な い と 思 ふ 。 註 ① 今 云 ふ 一 月 は 一 ヶ 月 の 意 に 非 す し て 行 者 と 眞 言 と 本 尊 と が 三 相 一 味 と な る に 至 る 期 間 を 云 ふ の で あ る 。 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 四 三
弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 四 四 ② 大 日 經 の 戒 名 は 、 不 奪 生 命 戒 、 不 與 取 ( 巳 下 戒 の 字 な し ) 、 欲 邪 行 、 虚 誑 語 、 麁 悪 語 、 兩 舌 語 、 無 義 語 、 貪 欲 、頤 恚 、 邪 見 と す る 。 ③ 不 與 取 戒 不 虚 妄 語 戒 不 欲 邪 行 戒 不 邪 見 戒 に し て 常 に 云 ふ 如 く 第 五 に 不 飮 酒 を あ げ ざ る に 注 意 す べ し 。 ④ こ の 根 本 罪 は 具 緑 品 に 説 く 四 重 禁 た る 、 ﹁ 次 當 於 弟 子 而 起 悲 念 心 應 入 行 者 中 示 三 昧 耶 偈 、 佛 子 汝 從 今 不 惜 身 命 散 常 不 應 捨 法 捨 離 苦 提 心 慳 悋 一 切 法 不 利 衆 生 行 云 云 ﹂ ( 大 正 十 八 、 一 二 頁b .) と 云 ふ も の と 同 一 で あ る 、 然 る に 學 處 品 の 疏 ( 大 正 三 十 九 、 七 五 七 頁 b ) に は ﹁ 如 前 三 世 無 障 碍 戒 中 先 令 不 捨 三 賓 叉 令 不 捨 菩 提 心 此 即 菩 薩 四 重 禁 也 ﹂ と 云 ふ 、 こ れ に よ れ ば 四 重 禁 は 不 捨 佛 不 捨 法 不 捨 僧 不 捨 菩 提 心 と な る 、 こ れ と 經 所 説 の 四 根 本 罪 と の 關 係 如 何 と 云 ふ に つ い て は 諸 説 が あ る が 兩 者 同 一 の も の で あ つ て 經 に 説 く 不 捨 正 法 不 捨 菩 提 心 不 慳 正 法 不 作 不 利 衆 生 は 順 次 疏 の 不 捨 法 不 捨 菩 提 心 不 捨 佛 不 捨 僧 に 當 る と 見 る べ き で あ る 。 ( 密 乗 菩 提 心 戒 儀 刊 本 二 三 頁 b 已 下 參 照 ) ⑤ 當 知 前 不 殺 等 (十 善 戒 ) 是 將 レ 順 他 人 意 又 初 入 法 者 所 持 之 戒 、 今 次 説 十 事 乃 是 一 切 菩 薩 正 行 之 戒 也 、 若 菩 薩 以 正 順 後 十 戒 故 假 使 行 前 十 事 中 而 不 爲 犯 。 ( 大 正 三 十 九 、 七 五 八 頁 a ) ⑥ 授 我 以 發 菩 提 心 戒 許 我 入 灌 頂 道 場 。( 御 請 來 録 ) 以 去 大 唐 貞 元 二 十 二 年 日 本 延 暦 二 十 四 年 六 月 十 三 日 於 長 安 城 青 龍 寺 東 塔 院 灌 頂 道 場 受 持 諸 佛 三 昧 耶 戒 授 五 部 灌 頂 荷 兩 部 曼 茶 負 二 百 餘 部 金 剛 一 乗 教 云 云 。 ( 平 城 天 皇 灌 項 文 ) ⑦ 三 昧 耶 戒 記 に は ﹁ 三 昧 耶 戒 所 依 經 論 事 ﹂ な る 條 下 に 二 十 六 種 の 書 を あ げ て 居 る 、 三 味 耶 戒 に 關 す る 文 献 を 殆 ん ど 網 羅 ぜ る も の で あ る 、 參 照 す べ し 。 ⑧ 以 下 カ ジ コ 内 は 無 畏 三 藏 禪 要 に 於 け る 十 一 門 と の 對 照 を 示 す 。 ⑨ 無 畏 三 藏 禪 要 に は 巳 下 の 眞 言 凡 て な く 受 菩 提 心 戒 儀 に は 悉 く あ り 。 ⑩ こ ゝ に 藤 要 に は 四 攝 法 及 び 十 重 禁 の み を 説 き 四 波 羅 夷 、 四 障 淨 除 、 四 威 儀 等 を 説 か ぬ 、 又 受 菩 提 心 戒 儀 に に 何 ん 等 戒 相 を 観 か す 、 た 穿 十 悪 七 逆 を 懺 悔 し 五 大 願 を 發 す の み 。 ⑪ 禪 要 に は 廻 向 な し 。
Ⅲ 大 師 の 戒 律 觀 大 師 弘 仁 の 御 道 誠 に 云 は く 、 發 心 し て 遠 渉 せ ん に は 足 に 非 ち ざ れ ば 能 は す 、 佛 道 に 趣 向 せ ん に は 戒 に 非 ら ざ れ ば 寧 ろ 至 ら ん や 、 必 す 須 く 顯 密 の 二 戒 堅 固 に 受 持 し 清 淨 に し て 犯 す こ と 勿 れ 。 ( 全 集 Ⅱ 八 六 一 頁 ) と 顯 密 二 戒 を 固 守 す る こ と を も つ て 佛 道 の 要 と さ れ 末 徒 に 必 す 受 持 す べ き こ と を 教 へ ら れ て を る 、 然 る に 又 梵 網 經 開 題 に は 本 清 き は 則 ち 心 王 の 體 性 な り 、 塵 垢 は 即 ち 心 數 の 本 名 な り 、 三 毒 五 道 皆 是 れ 佛 の 密 號 名 字 な り 、 若 し 能 く 此 の 意 を 得 る 時 は 則 ち 染 淨 に 著 せ す 善 悪 に 驚 か す 五 道 を 作 し て 忽 ち に 眞 如 に 入 り 大 欲 を 欲 し て 乍 ち に 法 身 を 得 、 文 に 任 せ て 義 を 取 る の 人 は 所 謂 佛 の 敵 な り と は 亦 此 の 意 な り 〇 (全 集 Ⅰ 八 一 五 頁 ) と 、 密 教 の 秘 奥 に 於 い て は 三 毒 五 欲 は 即 ち 是 れ 佛 の 密 號 な る が 故 に 戒 の 文 相 に 囚 は れ て こ れ に の み 怖 る ゝ 如 き は 着 文 沙 門 に し て 佛 教 の 敵 な り と せ ら れ て 居 る 、 或 は 又 秘 藏 寶 鑰 卷 中 に は 孔 子 の 門 徒 は 其 の 數 三 千 な れ ど も 達 者 は 則 ち 七 十 、 其 の 餘 は 註 さ す 、 釋 尊 の 弟 子 は 無 量 無 數 な り し か も 六 群 天 授 善 星 比 丘 は 濫 行 極 め て 多 し 、 如 來 の 在 せ し H す ら 純 善 な る こ と を 得 す 、 何 に 況 ん や 末 代 の 商 を や 、 然 れ ど も 猶 如 來 の 慈 悲 は 三 界 の 父 た り 賢 愚 善 悪 何 ん ぞ 隅 隅 せ ざ ら ん 。 (全 集 I 四 四 四 頁 ) と 説 か れ て 末 代 の 佛 徒 の 持 戒 堅 固 な ら ざ る を 辯 護 し て 居 ら れ る 、 是 の 如 く 大 師 の 著 作 を 通 し て 見 れ ば 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 四 五
弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 四 六 大 師 の 戒 律 觀 は 大 體 に 於 い て 三 様 の 立 場 が あ る と 思 ふ 、即 ち 第 一 は 必 す 顯 密 兩 戒 固 守 す べ し と の 立 場 、 第 二 は 密 戒 を 根 本 と し 小 戒 は 方 便 的 の も の に 過 ぎ す と す る 立 場 、 第 三 は 時 代 機 根 を 觀 察 し て 戒 律 を 寛 和 す る の 立 場 で あ る 、 第 一 は 共 門 の 立 場 で あ り 第 二 は 不 共 門 の 立 場 第 三 は 實 際 門 、妥 協 的 立 場 で あ る、 こ れ は 密 教 の 教 義 よ り 見 る も 又 所 依 の 經 論 先 徳 の 註 釋 等 に よ る も 同 様 に 認 め る こ と の 出 來 る 戒 律 觀 で あ つ て こ れ を も つ て 密 教 の 戒 律 觀 と す る こ と が 出 來 る 、 以 下 こ の 各 々 の 立 場 に つ い て 眺 め 更 に 大 師 の 眞 精 神 を う か じ っ て 見 度 い 。 一 、 共 門 の 戒 律 觀 大 師 が 顯 戒 を 固 守 す べ し と 説 か れ た こ と は 前 述 の 弘 仁 の 御 遺 誡 を 始 め 承 和 元 年 の 御 遺 誡 に も ﹁ 自 外 の 訓 誡 は 一 ら 顯 密 二 教 の 如 く 違 越 す る こ と 勿 れ 云 々 ﹂ (全 集 Ⅱ 八 六 五 頁 ) と 云 は れ 或 は 又 廿 五 ケ 條 の 御 遺 誡 に も 東 寺 の 僧 房 に 女 人 を 入 る べ か ら す と し 、 僧 房 内 に て 酒 を 飲 む こ と を 禁 せ ら れ て を り 、 又 金 剛 弟 子 儀 ( 全 集 Ⅳ )中 に は 蘇 悉 地 經 等 を 引 用 し て 眞 言 の 阿 闍 梨 た り 或 は 弟 子 た る も の は 律 儀 を 具 す べ き こ と を 説 い て を ら れ る 、 密 教 徒 が 五 戒 十 善 具 足 戒 等 を 受 け る の は こ れ に よ る も の で こ の 立 場 は 正 統 的 立 場 で あ る と 云 ふ こ と が 出 來 る 、 大 師 の 小 乗 顯 戒 護 持 の 立 場 は 又 前 に 述 べ た 如 く 傳 教 大 師 の 大 乗 戒 壇 獨 立 運 動 に 對 し て 末 徒 に 東 大 寺 戒 壇 受 具 を 規 定 さ れ た 態 度 に 於 い て も 充 分 に 知 り 得 る の で あ る 、 由 來 大 乗 教 徒 が 大 乗 戒 の み に て 比 丘 た り 得 べ き も の と い ふ こ と は 梵 網 經 の 思 想 を 受 け 傳 教 大 師 が 始 め て 稱 へ ら れ た
事 で あ つ て 當 時 に あ つ て は 支 那 に 於 て も 亦 日 本 に 於 て も 所 謂 ﹁ 釋 迦 法 中 無 別 菩 薩 僧 ﹂ と 云 ひ 、 應 身 所 化 の 菩 薩 は 必 す 聲 聞 に 似 同 す る も の と 定 ま り 實 際 に 於 て 小 乗 戒 と 別 立 せ る 大 乗 戒 な る も の は 用 ひ ら れ な か つ た の で あ る 、 故 に 大 師 の 此 の 態 度 は 寧 ろ 當 時 の 常 識 を 出 で な か つ た も の と も 云 ひ 得 る け れ ど も 大 師 の 教 學 が 瑜 伽 系 で あ つ た 事 及 び 大 師 の 思 想 が 萬 徳 輪 圓 法 佛 曼 茶 羅 の 絶 對 肯 定 思 想 で あ つ た 事 に 其 の 理 由 が 存 す る の で あ つ て 大 師 の 根 本 思 想 よ り し て 當 然 か く あ る べ き で あ つ た の で あ る 。 二 、 不 共 門 の 戒 律 觀 弘 法 大 師 の 密 教 獨 特 門 の 戒 律 は 三 昧 耶 戒 で あ つ て 密 教 徒 は 三 昧 耶 戒 を 根 本 と す べ く 聲 聞 戒 を 用 ふ る と い へ ど も そ れ は 三 昧 耶 戒 の 上 に 立 つ 時 始 め て 意 義 あ る 事 で あ つ て 單 な る 小 乗 戒 は 絶 對 的 と す べ き で は な い 〇 故 に 大 師 も ﹁ 如 聲 聞 菩 薩 戒 有 四 重 十 重 三 昧 耶 戒 亦 有 之 然 其 名 同 義 趣 別 ﹂ ( 平 城 天 皇 灌 頂 文 全 集 Ⅱ 一 六 ○ 頁 ) と 説 か れ 顯 戒 の 他 に 密 戒 あ り 密 戒 と 顯 戒 と は 義 趣 別 な り と せ ら れ て 居 る 、 こ れ を 實 際 の 戒 相 に 就 い て 見 る も 顯 戒 に 云 ふ 四 重 禁 十 重 禁 と 三 昧 耶 戒 に 於 け る 四 重 禁 十 重 禁 と は 全 く 異 る も の で あ り 密 教 の 戒 律 精 神 と 顯 教 殊 に 小 乗 の 戒 律 精 神 と は 全 く 異 る 事 を 知 り 得 る の で あ る 、 是 は 又 大 日 覺 王 を 最 極 と し 全 佛 教 を こ れ に 至 る 方 便 と し て 統 括 す る 大 師 の 教 學 よ り す る も 當 然 の 歸 結 で あ る 、 即 ち 三 昧 耶 戒 序 に ﹁ 二 百 五 十 戒 は 聲 聞 の 教 藥 緑 覺 の 除 病 な り ﹂ と 云 は れ (全 集 Ⅱ 一 三 二 頁 )、 二 教 論 に は 一 切 佛 法 を 五 藏 に 分 つ は 皆 機 根 對 應 の 方 便 な り と 説 か れ て を る (全 集 I 四 九 二 頁 ) 如 く 一 切 の 教 法 戒 法 は 究 寛 に 於 い て は 秘 密 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 四 七
弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 四 八 最 上 乗 に 引 入 す る の 方 便 に 過 ぎ な い の で あ る 、 又 顯 密 雨 戒 は そ の 戒 の 意 味 に 於 い て 異 な る の で あ る 、 興 教 大 師 の 顯 密 不 同 頌 に ﹁ 顯 断 障 得 道 、 密 即 惑 成 佛 ﹂ と 云 は れ る 如 く 顯 戒 が 廢 悪 修 善 を 戒 の 範 疇 と す る に 對 し 三 昧 耶 戒 は 密 教 の 秘 奥 た る 生 佛 平 等 の 三 摩 地、 大 智 大 信 を そ の 燈 と し 一 切 衆 生 救 濟 を そ の 業 と す る も の で あ つ て 惑 を 斷 す る 制 戒 が 本 髄 で な く し て 法 界 の 實 相 、 法 佛 の 三 昧 が そ の 膿 で あ る 。 故 に 小 乗 戒 の 個 別 的 に 悪 條 目 を 淨 除 し て 行 く が 如 き 態 度 は (別 解 脱 ) 四 重 十 重 禁 に は 見 ら れ な い の で あ る 、 惑 を 断 す る に 非 す し て 惑 に 即 し て 威 神 力 を 實 現 せ ん と す る も の で あ る 、 か く し て 極 端 に 云 へ ば 密 乗 の 大 事 を 成 す る に は 小 乗 の 方 便 戒 を 犯 す も 必 す し も 差 支 な し と の 思 想 と な る の で あ つ て 密 宗 要 決 鋤 十 六 に は 方 便 乗 戒 を 犯 す も 眞 言 圓 満 の 行 を 妨 げ す と し て 次 の 如 く 云 つ て を る 。 問 眞 言 行 者 犯 殺 盗 等 戒 時 可 妨 碍 眞 言 圓 満 行 耶
答
疏
第
十
一
云
如
修
眞
言
行
時
或
於
出
家
二
乗
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戒
有
所
遠
犯
不
應
生
如
是
迷
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由
此
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是
戒
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、
心
懐
悪
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妨
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修
、
何
以
故
如
來
所
有
方
便
唯
爲
如
是
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事
因
縁
、
若
令
爲
不
持
方
便
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清
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故
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妨
眞
言
圓
満
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行
無
此
理
也
、
是
故
行
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有
犯
時
當
生
是
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、
我
今
志
求
無
上
大
乗
普
利
一
切 有 情 故 、 事 不 兼 遂 於 是 中 有 所 違 犯 、 若 我 逮 得 成 果 已 當 應 悔 過 以 此 善 心 非 是 犯 戒 因 縁 故 不 名 犯 戒 也 。 (眞 言 宗 全 書 No. 4 三 二 二 頁 b ) 又 密 教 の 教 益 甚 深 門 よ り 見 る も 眞 言 陀 羅 尼 は 十 悪 五 逆 を も 淨 化 し 盡 す も の で あ る 、 故 に 二 教 論 下 等に
も
、
﹁若
彼
有
情
不
能
受
持
契
經
調
伏
(律
)
封
法
般
若
或
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有
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八
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五
無
間
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方
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經
一
闡
提 等 種 種 重 罪 使 得 銷 滅 速 疾 解 脱 頓 悟 涅 槃 而 爲 彼 説 諸 陀 羅 尼 藏 」 ハ全 集 I 四 九 三 頁 、 全 集 Ⅱ 一 六 四 頁 参 照 ) と 云 ひ 秘 密 藏 を 醍 醐 味 に 喩 へ 一 切 の 病 を 治 す る と 説 か れ て を る 、 こ れ 秘 藏 の 教 益 は 小 乗 戒 を 超 越 す る こ と を 説 く も の で あ る 。 密 教 戒 よ り 小 乗 戒 を 貶 斥 す る 立 場 は 弘 法 大 師 に 於 い て は 其 の 表 面 に 於 い て 直 接 こ れ を 見 る こ と は 少 な い が 大 師 が 三 昧 耶 戒 に つ い て 所 依 と せ ら れ た 大 日 経 及 び 大 日 経 疏 に は 屡 々 明 瞭 に 述 べ る 所 で あ る 、 大 日 經 に ﹁ 亦 説 餘 學 處 離 於 方 便 智 當 知 大 勤 勇 誘 進 諸 聲 聞 ﹂ (大 正 十 八 、 四 〇 頁 a ) と 云 ひ 聲 聞 戒 は 如 來 が 聲 聞 の 機 を 引 入 す る 爲 の 方 便 に し て 究 寛 な る も の で は な い と す る 、 疏 に は こ れ を 釋 し て佛
爲
聲
聞
亦
説
其
戒
及
四
重
等
、
然
此
攝
彼
一
類
小
根
性
故
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作
此
説
非
爲
究
寛
、
是
故
此
戒
離
於
方
便
、
方 便 及 智 不 具 足 也 、 若 能 趣 大 更 學 妙 戒 乃 能 具 菩 薩 戒 耳 。 (大 正 三 十 九 , 七 六 六 頁 c ) と 述 べ て 居 る 、 何 ん が 故 に 小 戒 は 方 便 に し て 絶 對 的 の も の に 非 ら ざ る や 、 小 乗 戒 は 制 せ ら れ て 守 る も の で 他 律 的 で あ つ て 自 性 能 持 の も の で な い 、 消 極 的 に 罪 過 を 離 れ ん と す る も の で あ つ て 積 極 的 に 智 徳 を 發 揮 せ ん と す る も の で は な い 、 形 式 的 に 罪 過 を 規 定 せ る 静 的 戒 律 で あ つ て 智 慧 に よ る 働 き 、 融 通 性 (方 便 ) が な い 、 偏 執 的 に し て 全 膿 的 で な い 、 自 利 主 義 で あ り 利 他 的 で な い 、 觀 念 的 で あ つ て 生 命 主 義 で な い 、 所 謂 大 日 経 の ﹁ 離 慧 方 便 教 令 成 就 開 發 邊 智 ﹂ で あ る 、 (疏 十 七 、 大 正 三 十 九 、 七 五 八 頁 以 下 參 照 ) 例 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 四 九弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 五 〇 へ ば 同 じ く 十 善 戒 の 殺 戒 に 於 い て も 密 戒 で は 單 に 殺 さ じ る を も つ て 持 戒 と し な い の で あ る 、 菩 薩 は 或 る 場 合 に は 出 離 の 因 緑 の 爲 に 又 は 一 殺 多 生 の 爲 に 大 悲 心 を も つ て 敢 て 殺 す こ と も あ る . こ れ 即 ち 方 便 で あ つ て 小 乗 戒 と 異 な る の で あ る 、 理 趣 經 に ﹁ 設 害 三 界 衆 生 不 堕 悪 趣 以 調 伏 故 疾 證 無 上 正 等 菩 提 ﹂ と 云 ふ の も こ の 意 で あ る 、 疏 に ﹁ 如 是 種 種 方 便 但 随 順 深 行 十 戒 之 行 以 大 菩 提 心 而 爲 導 首 一 切 無 犯 ﹂ と 云 ふ が 如 く 密 戒 の 戒 の 觀 念 は 小 乗 戒 と 遙 か に 異 つ て を る 、 婬 戒 に 於 い て も 自 妻 以 外 と の 邪 行 を 禁 す る も 經 に ﹁ 餘 の 方 便 あ ら ば 度 す べ き 所 に 随 つ て 衆 生 を 攝 護 す べ し ﹂ と 云 ひ 疏 に は 童 眞 行 を 修 せ る 菩 薩 が 童 女 の 欲 心 に 随 順 し て こ れ を 教 化 せ る 因 緑 談 を あ げ て を る 、 (大 正 三 十 九 、 六 六 〇 頁 、 b ) 但 し 是 の 如 き は 眞 の 智 慧 と 慈 悲 を 具 し て 云 ふ こ と に し て 自 己 の 欲 望 遂 行 の ロ 實 た る べ か ら ざ る は 云 ふ 迄 で も な い 事 で あ る 。 是 の 如 く 秘 密 三 昧 耶 戒 よ り 云 へ ば 一 切 智 々 と 利 益 衆 生 と を 根 本 と せ る 大 菩 提 心 こ そ 最 極 の も の で あ り 利 益 衆 生 の 爲 に 菩 提 心 を 根 本 と し て 種 々 の 方 便 を な す こ と 即 ち ﹁ 具 慧 方 便 ﹂ は 戒 の 發 現 に 於 い て 最 も 必 要 な る こ と で あ つ て 單 な る 形 式 の 如 き は 末 と 云 ふ べ き で あ る 、 か く て 疏 に 捨 佛 即 是 斷 一 切 菩 薩 之 命 而 絶 其 成 佛 之 根 、 若 行 嬉 盗 殺 妄 但 於 道 有 礙 非 是 絶 成 佛 之 根 本 故 但 成 偸 蘭 也 、 以 佛 不 可 捨 故 法 僧 亦 爾 、 ⋮ ⋮ 菩 提 心 亦 爾 、 是 一 切 諸 行 之 本 若 二菩 提 心 則 無 一 切 菩 薩 法 、 故 捨 之 亦 犯 重 也 ﹂ (大 正 三 十 九 、 七 五 七 頁 , ) と 云 ひ 、 小 戒 に 云 ふ 嬉 盗 殺 妄 の 四 波 羅 夷 は 小 乗 に 云 ふ が 如 く 比 丘 の 生 命 を 永 斷 す る 斷 頭 的
な る も の に 非 す 、 但 だ 佛 道 に 障 碍 あ る の み に し て 成 佛 の 根 本 を 斷 つ も の に 非 ざ る 故 に 密 戒 よ り 云 へ ば 波 羅 夷 に 非 す し て 障 碍 罪 た る 偸 蘭 遮 に 過 ぎ な い と し 、 佛 法 僧 を 捨 て 菩 提 心 を 捨 離 す る こ と こ そ 眞 の 波 羅 夷 で あ る と す る の で あ る 。 三 、 實 際 門 の 戒 律 觀 大 師 の 戒 律 觀 は 上 述 の 兩 様 の 立 場 の 外 に 當 時 の 僧 侶 の 實 際 生 活 よ り 見 て 又 末 法 觀 よ り し て 顯 戒 嚴 守 を な し 得 ざ る も 必 す し も こ れ を 排 斥 す べ き に 非 す と す る 要 協 的 中 庸 的 立 場 を 見 る 事 が 出 來 る と 思 ふ 、 大 師 は 秘 藏 寶 鑰 卷 中 に 於 い て 憂 國 公 子 が 僧 尼 の 堕 落 を 慨 し 寺 を 建 て 僧 尼 を 供 養 す る こ と の 無 益 な る を 論 じ て 今 の 僧 尼 は 頭 を 剃 る も 欲 を 剃 ら す 衣 を 染 む る も 心 を 染 め す 戒 定 智 慧 は 麟 角 よ り も 乏 し く 非 法 濫 行 は 龍 鱗 よ り も 盛 ん に し て 日 夜 螢 々 と し て 頭 を 臣 妾 の 前 に 屈 し 釋 風 日 に 陵 替 し 爲 に 疫 癘 年 に 起 る 、 故 に 一 切 の 度 を 止 め 供 養 を 廢 し 眞 に 羅 漢 得 道 の も の に の み 供 養 す べ し と 説 け る に 對 し 玄 關 法 師 の 名 を も つ て 人 に 賢 愚 善 惡 あ り 賢 善 は 摩 尼 の 如 く 乏 し く 愚 悪 は 瓦 礫 の 如 く 多 し 、 麟 鳳 を 見 す と 雖 も 羽 毛 の 扶 を 斷 つ べ か ら す 、 持 戒 智 慧 の 少 な き は 時 に 増 減 あ り 法 に 正 像 あ り 、増 劫 の 日 に は 人 皆 十 善 を 思 ひ 減 劫 の 年 に は 家 毎 に 十 惡 を 好 む 、 正 法 千 年 の 内 に は 持 戒 得 道 の も の 多 く 像 法 千 載 の 外 に は 護 禁 修 徳 の 者 少 し 、 今 や 時 は 是 れ 濁 世 人 は 根 劣 鈍 な り そ の 道 の 行 は れ ざ る 亦 止 む を 得 ざ る な り と 述 べ ら れ 、 又 前 述 の 如 く ﹁ 如 來 の 在 日 す ら 純 善 た る こ と を 得 す 況 ん や 末 代 の 裔 を や ﹂ と 云 は れ 純 善 な ら す と も 如 來 の 大 悲 は こ れ 弘 法 大 師 の 戒 律 觀 一 五 二