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中世仏家の言語の伝承─蓮如写『歎異抄』と自筆『御文』を通して─

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Academic year: 2021

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全文

(1)

中世仏家の言語の伝承 ─ 蓮如写 『歎異抄』 と自筆 『御文』 を通して ─ 金   子     彰

はじめに

  浄土真宗開祖親鸞から第三代の覚如、そして第八代の蓮如と各 遺文には言語の伝承と各人の独自の言語表現がどのように見られ るのか。言語表現を伝承している項目と、後世の時代を反映した 言語が表現されている場合とが見られるのではないか。本稿では 蓮如が転写した歎異抄と自筆御文とに視点を当てて、表記や文章 の 伝 承 が ど う 見 ら れ る か を 記 述 し て み る。 以 下 に 論 じ る よ う に、 蓮如写歎異抄には、漢語と和語との明確な漢字と仮名の書き分け が見られる が

注1

、蓮如自筆の御文にはそれらの書き分けが見られな い。蓮如は自己が持っていない表記法を歎異抄を書写した際に見 せている。歎異抄には著者の唯円が親鸞が持つ表記法をかなり伝 承していると見られ、それら親鸞の表記法が蓮如写歎異抄に更に 伝承されていると見られるのである。   蓮如が転写した歎異抄と、自己の教説を記した自筆御文とを比 較して、親鸞の言語の伝承の実態を見て行きたい。

一、歎異抄と御文について

  蓮 如 は 真 宗 の 中 興 の祖 と い わ れ て い る が 、 蓮 如 が 第 八 代 法 主 と な る 以 前 は 、 本 願 寺 の 生 活 は 窮 迫 の 極 に 達 し て い た 。 粗 末 な 衣 服 、 食 事 の 生 活 だ け で な く 、 次 々 と 生 ま れ る子 供 を 里 子 に 出 す ほど で あ っ た と い う 。 そ こ で 蓮 如 は 、 こ の 衰 え を 脱 す る た め に 、本 願 寺 の 門 徒 を 増 加 さ せ る た め の 布 教 活 動 を 意 欲 的 に 行 い 、 ま ず 親 鸞 の 教 説 を 正 し く 理 解 す る た め に 『 教 行 信 証 』 や 『 口 伝 鈔 』『 歎 異 抄 』 な ど 多 く の 書 物 を 読 破 し 書 写 し て い っ た 。 そ れは 四 十 三 歳 で 法 主 と なる ま で 二 十 年 に も 及 ぶ期 間であ る 。 そ う し た 勉 学 の あ と 、 教 説 を 誰に で も 容 易 に 理 解 でき る よ う に や さし い 文 章 と し てま と め

(2)

あ げ て 各 地 の 門 徒 集 会 へ 発 信 し た の が 自 筆 の 御 文 で あ っ た 。 1、歎異抄   歎 異 抄 は 浄 土 真 宗 宗 祖 親 鸞 ( 承 安 三 年 生 ・ 一 一 七 三 ─ 弘 長 二 年 没 ・ 一 二 六 二 ) か ら 学 ん だ 教 説 と 、 そ れ に 反 す る 異 義 の 批 判 と を 述 べ た も の で あ る 。 著 者 や 作 成 年 代 等 具 体 的 な 資 料 が 残 っ て い な い の で 、 歎 異 抄 本 文 の 内 容 から 、 常 陸 国 河 和 田 の 唯 円 が 著 者 と す る説 が 有 力 で あ る 。 鎌 倉 時 代 の 末 期 の 完 成 と み ら れ 、 そ の 原 本 は 存 在 し て い な い 。 現 存 す る 諸 本 の 中 で 、 最 も 古 い の は 、 お よ そ 二 百 年 後 に 蓮 如 に よ り 書 写 さ れ た 西 本 願 寺 所 蔵 写 本 で あ る 。 唯 円 は 親 鸞 聖 人 の 面 授 で 、 鴻 才 弁 舌 の 名 誉 あ る 人 で あ っ た と い う 。 唯 円 が 著 し た 原 本 歎 異 抄 が 現 存 せ ず 、 現 存 最 古 本 の 蓮 如 書 写 本 ま で お よ そ 二 百 年 を 経 過 し て い る 。 蓮 如 書 写 本 歎 異 抄 に は 、 親 鸞 が 見 せ て い る 語 の 漢 字 表 記 と 同 傾 向 が 見 ら れ る の で あ る 。 唯 円 の 他 の 著 作 に 見 ら れ る 表 記 法 が 現 時 点 で は 把 握 出 来 ない の で 、 断 定 は 出 来 ない が 、 親 鸞 面 授 の 弟 子 で あ る 唯 円 に は 、 師 の 表 記 を 知 る 機 会 が あ っ た の で は な い か 。 師 の 表 記 法 を 学 び 自 己 の 表 記 法 に 取 り 入 れ て い た の で は な い か 。 そ う し た 表 記 法 の 歎 異 抄 が 、 後 世 蓮 如 に よ っ て 忠 実 に 転 写 さ れ 、 蓮 如 本 に ま で 継 っ た も の で は な い か と 判 断 さ れ る 。

  別に親鸞遺文には見られない敬語「はんべり」等が蓮如の御文 や歎異抄には見られる。これは室町時代の蓮如自身が持つ言語の 反映であろう。   歎 異 抄

注2

古 写 本 四 本 ─ 直 接 調 査 し た 中 で 歎 異 抄 古 写 本 四 本 を 示 す 。 本稿では蓮如本が親鸞遺文の表記法に一番近いものと判断する。

蓮如本

  西本願寺蔵   便利堂複製本で調査

  漢 字 交 じ り 片 仮 名 文 。 序 の 漢 文 に は 訓 点 、 送 り 仮 名 だ け で な く 、 漢 字 の読 み も 附 さ れ て お り 、 流 罪 記 録 が あ る 。蓮 如 本 は 、 全 文 蓮 如 の書 写 に よ る も の であ り 、 最 後 に 蓮 如 の 奥 書 が ある が 、 書 写 の 年 時 は 記 して い な い 。し か し そ の 筆 致 か ら 、 文 明 十 一 、 二 年 ( 一 四 七 九 ─ 八 〇 )、蓮 如 六 五 、 六 歳 頃 の 書 写 か と 推 定 さ れ る 。 巻 頭 の 序 、 本 文 十 八 章 、 最 後 の 総 結 の 文 か ら な る 。

龍谷大学本

  紙焼き写真、原本調査 漢 字 交 じ り 片 仮 名 文。 漢 字 に は 振 り 仮 名 が あ る。 序 の 漢 文 に は 訓点と送り仮名のみで、第六条の一部と第七条のすべてが欠損し ている。流罪記録はない。  

大谷大学本①

  宗丙

60─

    1 紙焼き写真 原本調査   漢字交じり片仮名文。序の漢文は蓮如本と同じく、訓点、送り 仮 名 だ け で な く 漢 字 の 読 み も あ る。 流 罪 記 録 が あ る。 蓮 如 本 に 倣って書かれている。

大谷大学本②

  宗丙

61─

  1 紙焼き写真

原本調査

(3)

  漢字交じり片仮名文。漢字には振り仮名がある。序の漢文には 訓点送り仮名のみ流罪記録はない。基本的に龍谷大学本に倣って 書かれているが蓮如本と一致する箇所もある。

  蓮如自筆御文( 『蓮如上人御文』 2、御文

51通(同朋舎刊、一九八二年)

写真複製本で調査。

  浄 土 真 宗 本 願 寺 第 八 代 法 主( 一 四 一 五 ─ 一 四 九 九 ) に よ っ て 一四七三年頃以降著された法語消息の総称である。御文とは教義 の布教の為に門徒に発せられた法語消息である。そのほとんどが 門 徒 集 会 な ど で 朗 読 さ れ た。 そ れ が 朗 読 さ れ る こ と に つ い て は、 蓮如自身の承知するところであり、教義の浸透を意図したもので ある。御文の述作は、布教という明確な目的意識の下、大衆の耳 が受けとめることを前提に作成されたものであり、もとより、統 一性を持った文書ではな い

注3

二、和語、漢語の表記法

1、歎異抄四本の和語の表記

  蓮 如 書 写 本 歎 異 抄 に は 、 和 語 を 仮 名 で 書 く 表 記 傾 向 が 把 握 出来 る 点 で 、 そ こ に は 転 写 に 使 用 し た 祖 本 の 表 記 の 影 響 が 考 え ら れ る 。

  拙稿「蓮如書写本歎異抄の表記について

│語の漢字表記を視点

として─」 (『言語表現研究』第

5号、一九八六)

和語の表記

(蓮如本を中心として抄出する)

〈蓮如本〉〈龍谷大学本〉〈大谷大学本①〉〈大谷大学本②〉

とかれて説 せちてとかれて説 とかれて ことなるより異 によりことなるより異 ことなるより 御もちゐ御 こもちい用御もちゐ御 こもちい用 まことに實 しちにまことにまことに にくひ気 あくにくひ気◦気 御こゝろ御 意御こゝろ御こゝろ ひとたひ一 ゐちひとたひ◦ あしたゆふへに朝 ちうせきにあしたゆふへに朝 あしたゆふへ夕に とかれて説 せちてとかれて説 とかれて たからものを宝 ほうもちをたからものを宝 たからものを ことなるより異 によりことなるより異 ことなるより しれといふ信 しんせよとのしれといふ信 しんせよとの

むまれすして生せすしてむまれすしてむまれすして

詮するところ所 しょせん詮するところ所 せんするところ

(4)

御まへにて御 せんにて御まへにて御 せんにて 悪事の悪 あしきことの悪事の悪 あしき◦◦

本意もとのこゝろ本意本意

  蓮如本と大谷大学本①とでは和語を平仮名で表記し、龍谷大学 本 と 大 谷 大 学 本 ② と で は 漢 字 で 表 記 し 振 り 仮 名 が あ る。 「 説

せち

て 」 と「 説

とかれ

て」 、「 異

により」と「 異

ことなる

より」のように漢字で表記しなが らも、龍谷大学本では漢語の、大谷大学本②では異なる和語の振 り 仮 名 を 当 て て い る。 こ れ は、 大 谷 大 学 本 ② の 筆 者 が 書 写 す る 際、龍谷大学本の漢字表記と蓮如本の和語表記を取り合わせてい る。 「 漢 語 と 和 語 」 の 問 題 も 関 係 が あ る。 和 語 を 仮 名 で、 漢 語 を 漢字で明確に表記し分ける親鸞の表記法が蓮如本歎異抄に見られ るのである。

 

2、蓮如御文の和語の表記   蓮 如 自 筆 の 御 文 に は、 漢 語 = 漢 字、 和 語 = 仮 名 と い う 表 記 の 傾向を認めがたいことがわかる。連如自身には、この表記規範は 希薄なものであったことがわかる。マ行の表記を例示する。

和語の表記

(マ行の和語の表記を示す)

  誠 ニ

24、 誠

8、 マ コ ト ニ

23、 ま こ と に

4、 又

70、 亦

  2、 亦

マタ

1、 又 ( 墨 囲 ミ )

1、 マ タ

19、 先

3、 先 ツ

4、 マ ツ

17、 ま つ

2、

1、 マ ヒ ラ レ ン

1、 マ ヒ リ ナ ン ス ル

1、 マ ヒ リ ( 中 止 法 )

1、

参 候 テ

1、 身

41、 見 及 ヒ

1、 見 及 申 候

1、 見 及 ニ

ニモ 1、 見 ヲ ヨ フ 1、見及フニ

2、ミヲヨヘリ

1、右 5、砌 2、ミセス

1、見

せ す

2、 ミ ス テ マ ヒ ラ セ テ

1、 水

3、 三 日

2、 水 辺

1、 ミ ナ 人

4、 み な 人

1、 ミ ナ 〳〵

3、 み な 〳〵

2、 身 ノ 上

1、 身 の 上

3、

巳刻

1、耳 2、宮 1、見えて

2、ミエスト

2、ミエテ

3、ミヱタ

5、 ミ エ 給 ス ト

1、 ミ エ タ リ

2、 ミ ヱ タ ル

1、 ミ エ ヘ カ ラ ス

(ママ)

1、 ミ エ ル ヤ ウ

1、 ミ ル ヤ ウ

2、 ミ ル ニ

2、 ミ ル ニ( ミ セ ケ チ )

1、 見 ル 事

1、 棟 上

2、 目

4、 め

2、 目 出 事

シ) 1、 目 出 サ( 墨 消 1、目出ク

1、めてたく

2、用 1、モテ

68、以 22、本 13、モ

13、 者

5、 物

9、 も の

2、 モ ノ

67、 も の

12、 モ ノ( ミ セ ケ チ )

1、モノ(墨囲ミ)

1、者 5、物語

2、物語シケリ

1、物シリカ

1、物トモ

1、モハラ

3、専 1、モラサス

1、諸人

1

三、文章、文体

1、係り助詞の文末の結び方

  歎異抄第三条のコソの結びを四本で示す。龍谷大学本の結びは 終止形で他と異なる。

(5)

  〈蓮如本〉

      善人たにこそ往生すれ   〈龍谷大学本〉

    善人たに往生す

  〈大谷大学本①〉

   善人たにこそ往生すれ   〈大谷大学本②〉

   善人たにこそ往生すれ 時 代 の 経 過 と と も に 中 世 以 降、 係 結 び に お い て 文 末 の 結 び 方 に 変形が見えることは周知の事実である。以下文末の結び方を六種 類で示 す

注4

蓮如書写本歎異抄

  こそ

  ( 1)、已然形止め

30例

     (

2)、コソ止め

2例

     (

3)、已然形

+ ド・ドモ

2例

     (

4)、已然形

+ バ

1例

     (

5)、連体形

+ 助詞

2例

     (

6)、終止形

2例

     (

7)、その他(係結びの流れ)

1例   ─ 蓮 如 書 写 本 歎 異 抄 は 室 町 時 代 書 写 で は あ る が、 コ ソ の 結びに正用が多いのは祖本の反映であろう。 (

1)、已然形止め

30例

◦念仏ヲマウシテ地獄ニモオチテサフラハヽ コソ スカサレタテ マツリテトイフ後悔モサフラハ (二) ◦ヨテ善人タニ コソ 往生 スレ (三) ◦ハケム善ニテモサフラハヽ コソ 念仏ヲ廻向シテ父母ヲモタス ケサフラハ (五) ◦念仏ヲマフサせサフラハヽ コソ 弟子ニテモサフラハ

(六)

◦コレニツケテ コソ イヨ〳〵大悲大願ハタノモシク往生ハ決定 ト存シ サフラヘ (九) ◦ワカ宗 コソ スクレ タレ (十二) ◦アヤマテソシルヒトノサフラハサランニ コソ イカニ信スルヒ ト ハ ア レ ト モ ソ シ ル ヒ ト ノ ナ キ ヤ ラ ン ト モ オ ホ ヘ サ フ ラ ヒ ヌ ヘケレ (十二) ◦トキキカせラレサフラハヽ コソ 学生ノカヒニテモサフラハ (十二) ◦ ト キ オ カ せ タ マ フ コ ト ヲ マ フ ス ナ リ ト サ フ ラ ヒ (十二) ◦本願ニアヒラテマツリテ コソ ケニホコラレ サフラヘ

(十三)

◦ヒトヘニ本願ヲタノミマヒラスレハ コソ 他力ニテハ サフラヘ (十三) ◦本願ニホコルコヽロノアランニツケテ コソ 他力ヲタノム信心 モ決定シヌヘキコトニテ サフラヘ (十三)

(6)

◦ヒト〳〵モ煩悩不浄具足セラレテ コソ サフラウケ ナレ

(十三)

◦往生せントハケムニテ コソ サフラウ ナレ (十四) ◦御恩ヲ報シタテマツルニテ コソ サフラハ (十四) ◦ コ レ ヲ 今 生 ニ サ ト リ ヲ ヒ ラ ク 本 ト ハ マ フ シ (十五) ◦ ナ ラ ヒ サ フ ラ ウ ソ ト 故 聖 人 ノ オ ホ せ ニ ハ サ フ ラ ヒ (十五) ◦一切ノ衆ヲ利益せントキニ コソ サトリニテハ サフラヘ

(十五)

◦ 本 願 ヲ タ ノ ミ マ ヒ ラ ス ル ヲ 廻 心 ト ハ マ フ シ (十六) ◦サスカヨカランモノヲ コソ タスケタマハ ンスレ ト (十六) ◦ イ ヒ イ タ サ ル ヽ コ ト ニ テ サ フ ラ ウ ナ ル ア サ マ シ ク (十七) ◦報土ノサトリヲヒラクト コソ ウケタマハリ サフラヘ

(十七)

◦ムナシクナルヘシトサフラウナル コソ 如来ニ虚妄ヲマフシツ ケマヒラせラレサフラウ ナレ (十七) ◦ソレ コソ 願ノ本意ニテサフラハ (十八) ◦タヽ念仏ノミソマコトニテオハシマスト コソ オホせハサフラ ヒ シカ (十八) ◦ 一

ヒトツ

ナラントマフサハ コソ ヒカコトナラ (十八) ◦権ヲステヽ実ヲトリ仮ヲサシオキテ真ヲモチヰル コソ 聖人ノ 御本意ニテ サフラヘ (十八) ◦オホシメスホトニシリトヲシタラハ コソ ヨキヲシリタルニテ モアラ (十八) ◦ シ リ ト ヲ シ タ ラ ハ ア シ キ

ヲ シ リ タ ル ニ テ モ ア ラ ト (十八) ◦閉眼ノノチハサ コソ シトケナキコトトモニテサフラハンスラ ト (十八) (

2)、コソ止め

2例

◦マコトニヨク〳〵煩悩ノ興盛ニサフラウニ コソ (九) ◦智者遠離スヘキヨシノ証文サフラフニ コソ (十二) (

3)、已然形

+ ド・ドモ

2例

◦煩悩ノ興盛ニサフラウニ コソ ナコリオシクオモヘ トモ

(九)

◦サラメテオカシキコトニテ コソ サフラハメ トモ (十八) (

4)、已然形

+ バ

1例

◦ 生 死 ヲ ハ ナ レ ン コ ト 諸 仏 ノ 御 本 意 ニ テ オ ハ シ マ せ (十二) (

5)、連体形

+ 助詞

2例

◦イカナルフルマヒモスヘシト コソ 聖人ハオホせサフラヒシ (十三)

(7)

◦化仏ヲミタテマツルトイフコトノサフラウナル コソ 大念ニハ 大仏ヲミ小念ニハ小仏ヲミルトイヘル (十八) (

6)、終止形

2例

◦智者遠離スヘキヨシノ証文サフラフニ コソ 故聖人ノオホせニ ハコノ法ヲハ信スル衆生モ アリ (十二) ◦オナシク御信心ノヒトモスクナクオハシケルニ コソ 親鸞御同 朋ノ御ナカニモテ御相論ノコトサフラヒ ケリ (十八) (

7)、 そ の 他 ( 係 結 び の 流 れ )

1例

◦ 枯

草 ノ 身

ニカヽリテサフラウヒトニ コソ アヒトモナハシメタ マ フ ヒ ト 〳〵 御 不 審 ヲ モ ウ ケ タ マ ハ リ 聖 人 ノ オ ホ せ ノ サ フ ラ ヒシオモムキヲモマフシキカせマヒラセサフラヘト

─ 蓮如書写本歎異抄のゾの結びに正用が少ない。 ( 十八 )   (

1)、連体形止め

3例   (

2)、その他(係結びの流れ)

3例   (

3)、終助詞化

6例

1)、連体形止め

3例

◦ 念 仏 マ フ ス ノ ミ ス エ ト ヲ リ タ ル 大 慈 悲 心 ニ テ サ フ ラ ウ ト (

88行)

◦本願ヲ信せンノミ 願ニホコルオモヒモナクテヨカル ヘキ ニ (

351)

◦和讃ニイハク金剛堅固ノ信心ノサタマルトキヲマチヱテ 弥 陀ノ進光摂護シテナカク生死ヲヘタテ ケル トハ (

430)

2)、その他(係結びの流れ)

3例

◦サトリヲハヒラクトナラヒサフラウ トコソ故聖人ノオホせ ニハサフラヒシカ (

438)

◦ヒトツニハアルヒキ トサフラヒケレハ (

526)

◦タヽ念仏ノミ マコトニテオハシマストコソオホせハサフラ ヒシカ (

592)

3)、終助詞化

6例

◦地獄ハ一定スミカ カシ(

48行)

◦イカニ親鸞カイフコトヲタカフマシキトハイフ

( 303行)

◦ 罪 業 ノ ミ ナ レ ハ ス ク ハ レ カ タ シ ト オ モ フ ヘ キ ト サ フ ラ ウ カ シ (

347行)

◦イカナル悪カホコラヌニテサフラウヘキ ヤ (

359)

◦ナカク生死ヲハヘタテサフラウ カシ (

434)

◦コノ条ナニノ証文ニミヘサフラウ ヤ (

480)

  蓮如本歎異抄にはコソの正用の結びが

30例と大半である。終止

形の結びは

2例しかなく、以下に見る蓮如御文が誤用が多いのと

際立った違いである。鎌倉時代の親鸞の時代の用法が蓮如本歎異 抄には反映している。

(8)

蓮如自筆御文 ─ 蓮 如 御 文 に は 終 止 形 止 め の 用 法 が 多い 。 蓮 如 自 身 に は 係 り 助 詞 の 用 法 は 乱 れ て い た も の と 見 ら れ る 。 正 用 の 已 然 形 止 め

11

例 に 対 し 、 終 止 形 の 結 び が

( 結 び の 法 則 は 時 代 的 に 見 て 本 来 の 用 法 は 少 な い も の と 見 ら れ る 。 23例 と誤 用 の 方 が 多 い 。 蓮 如に は 係 り 1)、已然形止め

11例

2)、コソ止め

0例

3)、已然形

+ ド・ドモ

1例

4)、已然形

+ バ

0例

5)、連体形

+ ニ

0例

6)、終止形

23例

7)、その他(係結びの流れ)

3例

1)、已然形止め

11例

◦往生ハ一定ト コソ (ミセケチ心得テ コソ候ヘ ◦申サレ候候カ不審ニ コソ候ヘ ◦ソレ コソ マコトニモテ聖人報謝ニモアヒソナハリツヘクオホ ヘ ハンヘレ ◦ソレ コソ マコトニカラ ハンヘレ ◦阿弥陀如来ナレハ コソ候へ ◦言語道断殊勝ニ コソ 賞ヘ 候ヘ ◦後生 コソ 〜候ハ ンスレ ◦大事ニ コソ 〜候ハ ンスレ ◦候ハン コソ 〜候ハ ンスレ ◦阿弥陀如来なれは こそ候へ ◦阿弥陀如来なれは こそ候へ

2)、コソ止め

0例

3)、已然形

+ ド・ドモ

1例

◦マコトノコゝロナクテ コソ 〜トモ (

4)、已然形

+ バ

0例

5)、連体形

+ ニ

0例

6)、終止形

23例

◦カク コソ カタリ侍ヘリ ケリ ◦カク コソ 一首ハ申サレ ケリ ◦心モイマ コソ オモヒアハセラレテ〜 ケリ ◦マタカヤウニ コソ クチスサミ ケリ ◦浄土真宗ト コソ サタメラレ タリ ◦浄土真宗ト コソ オホセラレ タリ ◦浄土真宗ト コソ オホセサタメラレ タリ ◦ 三 年 マ テ 命 ノ ナ カ キ モ シ モ ツ キ ノ ノ リ ニ ア ヒ ヌ ル 身 ◦日クレヌレハ足ハヤニ コソ カヘリニ

(9)

◦カヤウニコゝロエタル人ヲ コソナリ ◦ヘカラスト コソ オホセラレ タリ ◦御スカタ コソナリ ◦カヤウニ コソ オモヒツゝ ケリ ◦アラン コソ 〜モノ ナリ ◦帰入スルヲ コソ 〜者トハイヘル ナリ ◦親トイフモノアレハ コソ 〜事モ ナシ ◦修スヘキ コソナリ ◦親ト云者アレハ コソ 〜 事モ ナシ ◦身ノ上ニ於テ コソ 仰セラレ タリ ◦称名念仏申スヘキハカリ コソナリ ◦人ヲモトツケントテ コソ 〜イフコトモイテキ タリ ◦カヤウニコゝ

ロ エタル人

コソ 〜イフ ナリ ◦ ア リ カ タ ク ( ミ セ ケ チ ) オ ホ ヘ ハ ン ヘ レ ト テ 〜 ス サ ミ

7)、その他(係結びの流れ)

3例

◦信スル コソ 肝要 ◦信スル コソ 肝要 〜トイヘリ ◦振舞 こそ 〜 相背ぬへき者也

  因 み に 親 鸞 写 の 式 子 内 親 王 宛 法 然 書 状( 西 方 指 南 抄 掲 載 )を 示 す 。   こそ

1)、已然形止め

16例

2)、コソ止め

0例

3)、已然形

+ ド・ドモ

0例

4)、已然形

+ バ

1例

5)、連体形

+ ニ

0例

6)、終止形

0例

7)、その他(係結びの流れ)

0例

こそ ─ 正用が大半である。 (

1)、已然形止め

16例

◦シヤウ如ハウノ御事 コソ 返々アサマシク 候ヘ ◦ツネニ御タツネ候ラム コソ マコトニアハレニモコゝロクルシ クモオモヒマヒラセ 候ヘ ◦念佛申候ハヤトオモヒハシメタル事ノ候ヲヤウニ コソ ヨル事 ニテ 候ヘ ◦ワレモ人モタゝオクレサキタツカハリメハカリニテ コソ候ヘ ◦ タ カ ヒ ニ 未 来 ノ 化 道 オ モ タ ス ケ ム コ ト コ ソ 返 々 モ 詮 ニ テ 候 ヘ キ ◦ 本 願 ム ナ シ カ ラ ス ト イ フ コ ト ヲ コ レ ニ テ モ 信 シ ツ ヘ ク コ ソ 候 ヘ ◦ソノオシヘ申セハ佛説ニテ コソ候ヘ ◦往生ハ一定セサセオハシマスヘキコトニテ コソ候ヘ

(10)

◦カマヘテ〳〵オホシメスサマニトケマイラセ候ハゝヤト コソ ハフカク念シマイラセ 候ヘ ◦カヘリテハマタソノツミ候ヌヘシト コソ オホヘ 候ヘ ◦申キカセマイラスル人々ノ候ラム コソ 返々アサマシクコゝロ クルシク 候ヘ ◦往生ハ一定セサセオハシマスヘキコトニテ コソ候へ ◦トケサセマイラセ候ハゝヤト コソ ハフカク念シマイラセ 候ヘ ◦ヒトリソノカスニモレサセオハシマスヘキカハト コソ ハオホ ヘ 候ヘ ◦ハカラヒカタクテワヒシク コソ候ヘ ◦善根ノミ コソ ハツモラセオハシマスコトニテ候ハ メ (

2)、コソ止め

3)、已然形

+ ド・ドモ (

4)、已然形

+ バ

1例

◦サキノヨモユカシクアハレニ コソ オモヒシラルゝコトニテ 候 へ ハウケタマハリ候コトク (

5)、連体形

+ ニ (

6)、終止形

7)、その他(係結びの流れ)

 

1)、連体形

◦一定往生スル ソ トオホシメシテヨク〳〵ヒトスチニ御念佛ノ 候 ヘキ ナリ ◦タゝチニ浄土ニムマルゝホトノ事ハアリカタク ソ 候 ヘキ ◦タゝ佛ノ願力ヲ信シ信セヌニ ソ ヨリ候 ヘキ (

2)、その他(係結びの流れ)

3)、終助詞化

◦ソレニナホトロカサレオハシマシ候 ソ ◦一念シテカナラス往生ストイフコトハヒカ事 ソ ◦凡夫往生セストハノタマフヘキ ソ トイフイフコトワリヲモテ

2、強調表現法   歎異抄の文章の特徴のひとつは以下に見られるような多くの強 調表現法の使用であ る

注5

。 歎異抄は親鸞の言説を伝承する唯円が耳 に残る親鸞の強調表現をかなり忠実に書き残したものかと見られ る。

蓮如本歎異抄

の強調表現 ─ 反語 ─

  ◦ 争

イカテカエン

得 入

イルコトヲ

ヱキヤウノ

行 一

ヱチモンニ

門 哉

(序

4)

(11)

◦法然ノオホせソラコトナラン (二

32)

◦善人ナヲモテ往生ヲトクイハン悪人ヲ (三

1)

◦イカニイハンヤ善人ヲ (三

3)

◦トリカヘサントマフスニ

(六 15)

◦ナニノ学問カハ往生ノ要

ナルヘキ

(十二

6)

◦ イ カ ヽ オ ラ ン ス ラ ン ト イ フ 証 文 モ   サ フ ラ ウ ヘ キ

( 十 二

18)

◦ミツカラワカ法ヲ破謗スルニアラス (十二

24)

◦タレノヒトカアリテアタヲナスヒキ (十二

39)

◦ワレライカテカ生死ヲハナルヘキ ト (十三

44)

◦サトルトハイヒマキラカスヘキ (十五

34)

◦アハレニサフラウヲ (十五

34)

◦ナニヲモテカ大小ヲサタムヘキ (十八

10)

◦同朋ヲイヒヲトサルヽニ (十八

22)

  いはんや ◦善人ナヲモテ往生ヲトク イハンヤ 悪人ヲヤ (三

1)

  いかにいはんやイカニイハンヤ 戒行恵解トモニナシトイヘトモ

(十五 14)

イカニイハンヤ 善人ヲヤ

(三 3)

  いかでか ◦ワレラ イカテカ 生死ヲハナルヘキヤト (十三

44)

  まして ◦ヨテ善人タニコソ往生スレ マシテ 悪人ハトオホせサフラヒ キ (三

17)

強調表現 ─ 願望 ─

   ◦ イカテカ 生死ヲ解脱スヘキトオモヒテ (二九

17)

強調表現 ─ 文末詞 ─

  ◦マタモテムナシカルヘカラスサフラフ (二

35)

◦ナンチハ誓願不思議ヲ信シテ念仏マフス マタ名号不思議 ヲ信スル トイヒオトロカシテ (十一

3・

4)

◦ヒトヘニ賢善精進ノ相ヲホカニシメシテウチニハ虚仮ヲイ タケルモノ (十三

60)

◦唯信抄ニモ弥陀イカハカリノチカラマシマストシリテ 罪 業ノミナレハスクハレカタシト (十三

65)

◦カヘリテコヽロヲサナキコト (十三

79)

◦往生ハカナフヘカラサル (十四

32)

◦断悪修善ノコヽチ (十六

4)

◦ 大 小 ノ 分 量 ヲ サ タ メ ン コ ト ア ル ヘ カ ラ ス サ フ ラ ウ

( 十 八

5)

◦ ミ ナ モ テ 信 心 ノ コ ト ナ ル ヨ リ コ ト オ コ リ サ フ ラ ウ

( 十 八

24)

強調表現 ─ 推量 ─

(12)

  ◦浄土ニムマルヽタ子ニテヤハンヘラ (二

16)

◦ 念 仏 ハ マ コ ト ニ 浄 土 ニ ム マ ル ヽ タ 子 ニ テ ヤ ハ ン ヘ ラ (二

17)

  らん ◦経論正教ヲハイカヤウニミナサレテサフラウ ラン

( 十 七

6)

  やらん ◦イカニトサフラウヘキコトニテサフラウ ヤラン

(九 5)

◦煩悩ノナキ ヤラン ト (九

33)

◦ヒキカケラレサフラウ ヤラン (十八

14)

強調表現 ─ 疑問 ─

  ◦ ヒ ト ヘ ニ 論 義 問 答 ム 子 ト せ ン ト カ マ ヘ ラ レ サ フ ラ ウ ニ (十二

57)

◦タトヘハヒト千人コロシテン

(十三

17)

◦ソレハ願ホコラルヽニアラス (十三

76)

◦イカナル悪カホコラヌニテサフラウヘキソ (十三

78)

◦説法利益サフラウニ

1十五 25)

◦ 摂 取 不 捨 ノ 誓 願 ハ ム ナ シ ク ナ ラ せ オ ハ シ マ ス ヘ キ ニ (十六

17)

◦コノ条   ナニノ証文ニミヘサフラウソ (十七

3)

強調表現 ─ 同語反復 ─ ヨク〳〵

ヨク〳〵 キカルヘキナリ (一   6 ◦ カ ノ ヒ ト ニ モ ア ヒ タ テ マ ツ リ テ 往 生 ノ 要

33)

カヘス 〳〵 モ

(六   2 ◦ カ ヘ ス 〳〵 モ ア ル ヘ カ ラ サ ル コ ト ナ リ

116)

イヨ 〳〵

〳〵 往生ハ一定オモヒタマフナリ   7 ◦ ヨ ロ コ フ ヘ キ コ ト ヲ ヨ ロ コ ハ ヌ ニ テ イ ヨ

(九 141)

ソモ〳〵

コゝロサシヲシテ (十   1 ◦ ソ モ 〳〵 カ ノ 御 在 生 ノ ム カ シ オ ナ シ ク

167)

モロ 〳〵

教ハ本願ヲ信シ念佛ヲマフサハ   1 ◦ 他 力 真 実 ノ ム ネ ヲ ア カ セ ル モ ロ 〳〵 ノ 正

(十二 214)

イカニモ〳〵

ヘキナリ (十二 ハ イ カ ニ モ 〳〵 學 問 シ テ 本 願 ノ ム ネ ヲ ル   1 ◦ マ コ ト ニ コ ノ コ ト ハ リ ニ マ ヨ ヘ ラ ン ヒ ト

218)

タマ〳〵

テ念仏スルヒトヲモ (十二   1 ◦ タ マ 〳〵 ナ ニ コ ゝ ロ モ ナ ク 本 願 に 相 應 シ

273)

ヤウ〳〵

リニ ヤウ 〳〵 ( 二 様 )ニオモフハ

フタヤウ

  1 ◦ 善 悪 ノ フ タ ツ ニ ツ キ テ 往 生 ノ タ ス ケ サ ハ

(十 201)

ナン〳〵

  1 ◦ 道 場 ニ ワ リ フ ミ ヲ シ テ ナ ム 〳〵 ノ コ ト

(13)

シ タ ラ ン モ ノ ヲ ハ 道 場 ニ イ ル ヘ カ ラ ス (十三

337)

コト〳〵ク

コト 〳〵 ク 如来大悲ノ恩ヲ報シ   1 ◦ 一 生 ノ ア ヒ タ マ フ ス ト コ ロ ノ 念 仏 ハ ミ ナ

(十四 378)

ホレ〳〵

ト (十六   1 ◦ タ ゝ ホ レ 〳〵 ト 彌 陀 ノ 御 恩 ノ 深 重 ナ ル コ

470)

カマヘテ〳〵

(十八 シ ク サ フ ラ ウ 大 切 ノ 證 文 ト モ 少 々 ヌ イ テ   1 ◦ カ マ ヘ テ 〳〵 聖 教 ヲ ミ ミ タ ラ セ タ ナ フ マ

561)

ナク〳〵

〳〵 フテヲソメテコレヲシルス   1 ◦ 信 心 コ ト ナ ル コ ト ヲ ナ カ ラ ン タ メ ニ ナ ク

(十八 613)

強調表現 ─ 強意語 ─ ◦ 惣シテ 以テ存知セサルナリ (二

18)

◦コノ条 頗ル 不足言ノ義ト (十二

2)

強調表現 ─ 語順の変更 ─ ◦ ツ ヽ シ ン テ オ ソ ル ヘ シ 先 師 ノ 御 コ ヽ ロ ニ ソ ム ク コ ト ヲ (十二

64)

◦カ子テアハレムヘシ弥陀ノ本願ニアラサルコトヲ

(十 二

65)

強調表現 ─ 換置法 ─ ◦念仏ハマコトニ浄土ニムマルヽタ子ニテヤハンヘランマタ 地獄ニオツヘキ業ニテヤハンヘルラン (二

16)

強調表現 ─ 誇張法 ─ ◦ヨキヒトノオホせヲカフリテ信スルホカニ別ノ子細ナキナ リ (二

14)

強調表現 ─ 文体での強調 ─ ◦念仏ハマコトニ浄土ニムマルヽタ子ニテヤハンヘランマタ 地 獄 ニ オ ツ ヘ キ 業 ニ テ ヤ ハ ン ヘ ル ラ ン 惣 シ テ モ テ 存 知 セ サ ルナリ (二

16)

  ソノユヘハ ◦ 弥 陀 ノ 本 願 ニ ハ 老 少 善 悪 ノ ヒ ト ヲ エ ラ ハ レ ス タ ヽ 信 心 ヲ 要 ト ス ト シ ル ヘ シ 罪 悪 深 重・ 煩 悩 至 常 ノ 衆 生 ヲ タスケンカタメノ願ニマシマス (

15)

◦ タ ト ヒ 法 然 聖 人 ニ ス カ サ レ マ ヒ イ ラ せ テ 念 仏 シ テ 地 獄 ニ オ チ タ リ ト モ サ ラ ニ 後 悔 ス ヘ カ ラ ス サ フ ラ ウ 自 餘 ノ 行 モ ハ ケ ミ テ 仏 ニ ナ ル ヘ カ リ ケ ル 身 カ 念 仏 ヲ マ ウ シ テ 地 獄 ニ モ オ チ テ サ フ ラ ハ ヽ コ ソ ス カ サ レ タ テ マ ツ リ テ トイフ後悔モサフラハメ (

43)

◦ 善 人 ナ ヲ モ テ 往 生 ヲ ト ク イ ハ ン ヤ 悪 人 ヲ ヤ シ カ ル ヲ 世 ノ ヒ ト ツ 子 ニ イ ハ ク 悪 人 ナ ヲ 往 生 ス イ カ ニ イ ハ ン ヤ 善 人 ヲ ヤ コ ノ 条 一 旦 ソ ノ イ ハ レ ア

ル ニ ニ タ レ ト モ 本 願 他 力 ノ 意 趣

(14)

ニ ソ ム ケ リ 自 力 作 善 ノ ヒ ト ハ ヒ ト ヘ ニ 他 力 ヲ タ ノ ム コ ヽ ロ カ ケ タ ル ア ヒ タ 弥 陀 ノ 本 願 ニ ア ラ ス シ カ レ ト モ 自 力 ノ コ ヽ ロ ヲ ヒ ル カ ヘ シ テ 他 力 ヲ タ ノ ミ タ テ マ ツ レハ真実報土ノ往生ヲトクルナリ (

65)

◦ 親 鸞 ハ 父 母 ノ 孝 養 ノ タ メ ト テ 一 返 ニ テ モ 念 仏 マ フ シ タ ル コ ト イ マ タ サ フ ラ ハ ス 一 切 ノ 有 情 ハ ミ ナ モ テ 世々生々ノ父母兄弟ナリ (

92)

◦ 親 鸞 ハ 弟 子 一 人 モ モ タ ス サ フ ラ ウ ワ カ ハ カ ラ ヒ ニ テ ヒ ト ニ 念 仏 ヲ マ フ サ せ サ フ ラ ハ ヽ コ ソ 弟 子 ニ テ モ サ フ ラ ハ メ 弥 陀 ノ 御 モ ヨ

リ ( ウ ヒ ト ヲ ワ カ 弟 子 ト マ フ ス コ ト キ ハ メ タ ル 荒 涼 ノ コ ト ナ ホ シ ニ ア ツ カ テ 念 仏 マ フ シ サ フ ラ

105)

◦ コ レ ハ 十 悪 五 逆 ノ 軽 重 ヲ シ ラ せ ン カ タ メ ニ 一 念 十 念 ト イ ヘ ル カ 滅 罪 ノ 利 益 ナ リ イ マ タ ワ レ ラ カ 信 ス ル ト コ ロ ニ オ ヨ ハ ス 弥 陀 ノ 光 明 ニ テ ラ サ レ マ ヒ ラ ス ル ユ ヘ ニ 一 念 発 起 ス ル ト キ 金 剛 ノ 信 心 ヲ タ マ ハ リ ヌ レ ハ ス テ ニ 定 聚ノクラヰニオサメシメタマヒキ (

370)

◦ 故 聖 人 ノ 御 モ ノ カ タ リ ニ 法 然 聖 人 ノ 御 ト キ 御 弟 子 ソ ノ カ ス オ ハ シ ケ ル ナ カ ニ オ ナ シ ク 御 信 心 ノ ヒ ト モ ス ク ナ ク オ ハ シ ケ ル ニ コ ソ 親 鸞 御 同 朋

ノ 御 ナ カ ニ モ テ 御 相 論 ノ コ ト サ ントマフサハコソヒカコトナラメ ( ナ ラ ラ ヒ ケ レ ハ 聖 人 ノ 御 智 慧 才 覚 ヒ ロ ク オ ハ シ マ ス ニ 一

ヒトツ

人 ノ 御 信 心 ニ 善 信 房 ノ 信 心 ヒ ト ツ ニ ハ ア ル ヒ キ ソ ト サ フ ウ ス 御 同 朋 達 モ テ ノ ホ カ ニ ア ラ ソ ヒ タ マ ヒ テ イ カ テ カ 聖 ツ ナ リ ト オ ホ せ ノ サ フ ラ ヒ ケ レ ハ 誓 願 房 念 仏 房 ナ ン ト マ フ ラ ヒ ケ リ 善 信 カ 信 心 モ 聖 人 ノ 御 信 心 モ ヒ ト

520)

◦ 聖 人 ノ オ ホ せ ニ ハ 善 悪 ノ フ タ ツ 惣 シ テ モ テ 存 知 せ サ ル ナ リ 如 来 ノ 御 コ ヽ ロ ニ ヨ シ ト オ ホ シ メ ス ホ ト ニ シ リ ト ヲ シ タ ラ ハ コ ソ ヨ キ ヲ シ リ タ ル ニ テ モ ア ラ メ 如 来 ノ ア シ ト オ ホ シ メ ス ホ ト ニ シ リ ト ヲ シ タ ラ ハ コ ソ ア シ キ

ヲ シ リ タ ル ニ テ モ ア ラ メ ト 煩 悩 具 足 ノ 凡 夫 火

ホせハサフラヒシカ ( ト ナ キ ニ タ ヽ 念 仏 ノ ミ ソ マ コ ト ニ テ オ ハ シ マ ス ト コ ソ オ ハ ヨ ロ ツ ノ コ ト ミ ナ モ テ ソ ラ コ ト タ ワ コ ト マ コ ト ア ル コ 宅 無 常 ノ 世 界

585)

◦ マ コ ト ニ ワ レ モ ヒ ト モ ソ ラ コ ト ヲ ノ ミ マ フ シ ア ヒ サ フ ラ フ ナ カ ニ ヒ ト ツ イ タ マ シ キ コ ト ノ サ フ ラ ウ ナ リ 念 仏 マ フ ス ニ ツ イ テ 信 心 ノ オ モ ム キ ヲ モ タ カ ヒ ニ 問 答 シ ヒ ト ニ モ イ ヒ キ カ ス ル ト キ ヒ ト ノ ク チ ヲ フ サ キ 相 論 ヲ タ ヽ ン カ タ メ ニ マ タ ク オ ホ セ ニ テ ナ キ コ ト ヲ モ オ ホ せ ト ノミマフスコトアサマシクナケキ存シサフラウナリ

596)

(15)

  ユヘニ ◦ シ カ レ ハ 本 願 ヲ 信 セ ン ニ ハ 他 ノ 善 モ 要 に ア ラ ス 念 佛 ニ マ サ ルヘキ善ナキ ユヘニ 悪ヲモオソルヘカラス (

19)

◦彌陀ノ本願ヲサマタクルホトノ悪ナキ ユヘニ ト云々

( 21)

◦ ヒ ト ヘ ニ 他 力 ニ シ テ 自 力 ヲ ハ ナ レ タ ル 行 者 ノ タ メ ニ ハ非行非善なりと云々 (

130)

◦ 念 佛 ニ ハ 無 義 ヲ モ テ 義 ト ス 不 可 稱 不 可 説 不 可 思 議 ノ トオホセサフラヒキ (

166)

◦ 如 来 ノ 御 ハ カ ラ ヒ ナ リ ト オ モ ヘ ハ ス コ シ モ ミ ツ カ ラ ノ ハ カ ラ ヒ マ シ ハ ラ サ ル カ 本 願 ニ 相 應 シ テ 實 報 土 ニ 往 生 スルナリ (

194)

◦ 邊 地 懈 慢 疑 城 胎 宮 ニ モ 往 生 シ テ 果 遂 ノ 願 ノ ツ ヰ ニ 報 土ニ往生スルハ名號不思議ノチカラナリ (

207)

◦ 一 文 不 通 ニ シ テ 經 釋 ノ ユ ク チ モ シ ラ サ ラ ン ヒ ト ノ ト ナ ヘ ヤ スカランタメノ名號ニオハシマス ユヘニ

行トイフ

( 224)

◦ ソ ノ ユ ヘ ハ 弥 陀 ノ 光 明 ニ テ ラ サ レ マ ヒ ラ ス ル 一 念 発 起 ス ル ト キ 金 剛 ノ 信 心 ヲ タ マ ハ リ ヌ レ ハ ス テ ニ 定 聚 ノ ク ラヰニオサメシメタマ

ヒキ

371)

◦ 信 心 ノ 行 者 ス ク ナ キ 化 土 ニ オ ホ ク ス ヽ メ イ レ ラ レ サ フラウヲ (

487)

◦ 佛 法 ニ コ ト ヲ ヨ セ テ 世 間 ノ 欲 心 モ ア ル 同 朋 ヲ イ ヒ ヲ トサルヽニヤ (

512)

  ユヘナリ ◦ 罪 悪 モ 業 報 ヲ 感 ス ル コ ト ア タ ハ ス 諸 善 モ オ ヨ フ コ ト ナ キ ヘナリ ト云々 (

125)

◦ ヨ キ コ ヽ ロ ノ オ コ ル モ 宿 善 ノ モ ヨ ホ ス ユ ヘ ナ リ 悪 事 の オ モ ハレセラルヽモ悪業ノハカラフ ユヘナリ

287 288)

◦願ニホコリテウクランツミモ宿業ノモヨホス ユヘナリ

( 342)

  ユヘナレハ ◦ コ レ ス ナ ハ チ 誓 願 不 思 議 ノ タ ヽ ヒ ト ツ ナ ル ヘ シ (

209)

親鸞自筆書状 の強調表現

  親鸞の自筆書状も歎異抄に見られる強調表現が多い。一例を示 す。

  そのゆへは

1例、ゆへに

12例、ゆへは

1例、ゆへと

1例

四月七日の御ふみ五月廿六日 たしかに〳〵み候ぬ。さては おほせられたる事信

(16)

の一念行の一念ふたつ   なれども信をはなれたる   行もなし行の一念をは   なれたる信の一念もなし。

  そのゆへは 行と申は本願の   名號をひとこゑとなえて   わうじやうすと申ことを   きゝてひとこゑをもとなへもし   は十念をもせんは行なり。この   御ちかいをきゝてうたがふこゝろ   のすこしもなきを信の一念と   申せば信と行とふたつと   きけども行をひとこゑする   をきゝてうたがはねば行をは   なれたる信はなしときゝて候。

  又信はなれたる行なしと   おぼしめすべしく候。これみな   みだの御ちかいと申ことを   こゝろうべし。行と信とは

  御ちかいを申なり。あな   かしこ 〳〵 。いのち候はゞ

  かならず〳〵のぼらせ給べく候     五月廿八日        花押    覺信御房   御返事   右の親鸞の書状は親鸞八四歳の建長八年(一二五六)に下野国 の門弟覚真への返書である。信の一念と行の一念の分別について の質問には信を離れた行も行の一念を離れた信の一念もないと答 え て い る。 「 そ の ゆ へ は 」 以 下 そ の 論 拠 を 示 し て い る。 歎 異 抄 も この論法が多く見られるのである。

3、敬語表現

蓮如書写本

歎異抄

  以下の敬語が見られ る

注6

。特に「はんべり」は中世以降、雅語意 識 を 持 っ た 文 書 語 で あ り、 親 鸞 遺 文 に は 見 ら れ な い 語 彙 で あ る。 蓮如の御文にも「はんべり」が使われており、歎異抄のこの敬語 は書写者蓮如の言語が顏を出したものとみられる。

  はんべり  

3

◦マタ法文等ヲモ   シリタルラントコヽロニクヽオホシメシテ オハシマシテ ハンヘラン ハ   オホキナルアヤマリナリ ◦念仏ハマコトニ浄土ニムマルヽタ子ニテヤ   ハンヘラン マタ

(17)

地 獄 ニ オ ツ ヘ キ 業 ニ テ ヤ   ハ ン ヘ ル ラ ン 惣 シ テ モ テ 存 知 セ サ ルナリ 侍り

0

131

サフラフ(本動詞)

45

サフラフ(補助動詞)

86

蓮如自筆御文の敬語

  御文には「はんべり」が多い。以下に示すように他者には「は んべり」の使用が見られない。蓮如と同時代の世阿弥文書にも見 ら れ な い。 「 は ん べ り 」 は 蓮 如 独 特 の 敬 語 法 で あ る。 歎 異 抄 で の 使用は蓮如の持つ言語の反映であろう。 ◦クハシクウケタマハリ ハンヘラン トオモフナリ ◦人ニハツネニコノ事ヲノミカタリ ハンヘリシ ◦今度此當山ヱコヱラレケルカトモオホヘ ハンヘリ ◦一シホアハレニモイトタフトクモオモヒ ハンヘリ ◦アシカリケリトオモフナリトイヒ ハンヘル トオホヘテ ◦アシカリケリトオモフナリトイヒ ハンヘル トオホヘテ ◦今世後世ノ往生極楽ノ得分トモなり ハンヘル ヘキモノナリ ◦アリカタク コソ (墨消し) ハンヘレ トテ ◦ソレコソマコトニモテ聖人ノ報謝ニモアヒソナハリツヘクオ   ホヘ ハンヘレ ◦ソレコソマコトニモテ聖人ノ報恩謝徳ニモアヒソナハリツヘ クオホヘ ハンヘレ ◦爰以不思議之願力トハ申シ ハンヘレ

  侍り

17

  候

22

  候フ(本動詞)

7

  候フ(補助動詞)

120

親鸞自筆書状

  はべり(本動詞)

0   はべり(補助動詞)

0

  候(本動詞)

21

  候(補助動詞)

54 世阿弥自筆   風姿花伝

  はべり(本動詞)

0   はべり(補助動詞)

0

  候(本動詞)

0

  候(補助動詞)

0 世阿弥   直筆書状   二通

  はべり(本動詞)

0

(18)

  はべり(補助動詞)

0

  候(本動詞)

1

  候(補助動詞)

46 世阿弥直筆能本   柏崎

  はべり(本動詞)

0

  はべり(補助動詞)

0

  候(本動詞)

3

  候(補助動詞)

26

四、語彙

1、漢文訓読語

     漢 文 訓 読 語 の 受 容 に つ い て

注7

、 築 島 裕 博 士 の『 平 安 時 代 語 新 論 』 で示された漢文訓読語と和文語との二型対立を指標として取り上 げる。二型対立とはゴトシ─やうなり、シム ─ す・さす(使役) 、 ザ ル ─ ぬ( 打 消 し 連 体 形 )、 ザ レ ─ ね( 打 消 し、 已 然 形 ) 等 で あ る。 (片仮名は漢文訓読語、平仮名は和文語) 蓮如自筆歎異抄

  以下の

29語が使用されている。延べ語数に於いては和文語、漢

文訓読語の使用は同程度であり、歎異抄の文体は漢文訓読語色が 強いものではない。以下で示すように歎異抄の漢文訓読語が御文 よりは少ない傾向にあり、蓮如書写の祖本の反映が漢文訓読語の 使用と見られる。  

1助動詞

・ 接 尾 語 ・ 助 詞 の 類 、 ゴトシ、シム、ザル、ザレ

 

2接続詞、

シカラバ、シカルニ、シカルヲ

 

3陳述副詞、

イマダ、イハムヤ

 

4程度副詞、

スコブル、ホボ

 

5情態副詞、

ア ル イ ハ 、 コ ト ゴ ト ク 、 タ ガ ヒ ニ 、 タ マ タ マ

 

6形容動詞語幹、

スミヤカ 、 ヒソカ

 

7形容詞、

 

8動詞、

ア タ ハ ズ 、 オ ソ ル 、 オ ヨ ブ 、 カ ク 、 キ ハ ム 、 ケ ス 、 コ ゾ ル 、 ソ ナ フ 、 フ サ グ 、 ホ ド コ ス 、 マ ジ ハ ル

 

9名詞

トモガラ 和文語 漢文訓読語

  ( 1)助動詞・接尾語・助詞の類

18

37   (

2)接続詞

5

7   (

3)陳述副詞

0

4   (

4)程度副詞

7

2

(19)

  ( 5)情態副詞

10

4   (

6)形容動詞語幹

2

3   (

7)形容詞

0

0   (

8)動詞

37

20   (

9)名詞

5

5

84

83

  ①やうなり

  2

│ゴトシ

5

   さす

  9 ─ シム

4

   す

1

   ぬ

  5 ─ ザル

21

   ね

  1 ─ ザレ

7

  ②されば

  5 ─ シカラバ

3

   されど

  0 ─ シカルニ

2

   ─ シカルヲ

2

  ③まさに(…むや)

  0 ─ イハムヤ

1

   まだ

  0 ─ イマダ

3

  ④いみじく

  0 ─ スコブル

1

   おほかた

  0 ─ ホボ

1

   いよいよ

  7 ─ マスマス

0

  ⑤かねて

  3 ─ アラカシメ

0

   あるは

  0 ─ アルイハ

1

   いま

  3 ─ イマシ

0

   すべて

  2 ─ コトゴトク

1

   かたみに

  0 ─ タガヒニ

1

   たまさかに

  0 ─ タマタマ

1

   やうやう

  2 ─ ヤウヤク

0

  ⑥わづか

  1 ─ スコシキ

0

   はやし

  1 ─ スミヤカ

2

   しのびに

  0 ─ ヒソカ

1

  ⑦(なし)

  ⑧え…ず

  0 ─ アタハズ

1

   おはす

  2 ─ イマス

0

   おはします

9

   おづ

  0 ─ オソル

3

   いたる

  0 ─ オヨブ

3

   なし

26   ─ カク

5

   いたる

  0 ─ キハム

1

   けつ

  0 ─ ケス

1

   かぎる

  0 ─ コゾル

1

   まうく

  0 ─ ソナフ

1

(20)

   ふたぐ

  0 ─ フサグ

1

   たまふ

  0 ─ ホドコス

1

   まじる

  0 ─ マジハル

2

  ⑨ひとびと

  5 ─ トモガラ

5

   やうなり

   ◦念仏マフスヘキ ヤウニ

アルヒハ    ◦自然トイフコトノ別ニアル ヤウニ

ワレモノシリカホニ

   ゴトシ

   ◦

シカレトモ

オモフカ

コトク

タスケトクルコト

   ◦

大慈大悲心ヲモテ

  オモフカ コトク   衆生ヲ利益スルヲ

   ◦

不便トオモフトモ

存知ノ コトク   タスケカタケレハ

   ◦

ワレラカ

コトク   下根の凡夫

   ◦

釈尊ノ コトク   種々ノ応化ノ身ヲモ現シ

蓮如自筆御文

  以下の

28語が使用されている。延べ語数では漢文訓読語の使用

が 多 い。 御 文 は 和 文 語 よ り は 漢 文 訓 読 語 使 用 の 強 い 傾 向 に あ る。 親鸞から二百年後の蓮如の法語消息は、門徒集会で読み聞かせら れたものであり、その文章に漢文訓読語が多いのは、民衆への漢 文訓読語の浸透が窺えるものであろうか。或いは蓮如が格式ばっ た言語使用として漢文訓読語を使用したのであろうか。  

1助動詞・接尾語・助詞の類、ゴトシ、シム、

 

2接続詞

シカラバ、シカルニ、

 

3陳述副詞

アヘテ、イマダ、イハムヤ

 

4程度副詞

マスマス

 

5情態副詞

アルイハ、コトゴトク、シキリ ニ、スデニ、タマタマ、タヤス ク、ママ、ヤウヤク

 

6形容動詞語幹

スミヤカ

 

7形容詞

イシガハシ、

 

8動詞

オヨブ、カウブル、カク、キタ ル、 ソ ナ フ、 フ ケ ル、 フ サ グ、 マジハル、マジフ

 

9名詞

トモガラ 和文語 漢文訓読語

  ( 1)助動詞・接尾語・助詞の類

59

74   (

2)接続詞

20

14   (

3)陳述副詞

2

8   (

4)程度副詞

6

1   (

5)情態副詞

5

65

(21)

  ( 6)形容動詞語幹

2

7   (

7)形容詞

2

1   (

8)動詞

35

34   (

9)名詞

6

3

137

207

  ①やうなり

  0 ─ ゴトシ

19

   さす

  0 ─ シム

55

   す

11

   ぬ

48   ─ ザル

0

  ②されば

20   ─ カレ

1

   されど

  0 ─ シカルニ

13

  ③など

  2 ─ アニ

0

   え…ず

  0 ─ アヘテ

1

   まさに(…むや)

  0 ─ イハムヤ

1

   まだ

  0 ─ イマダ

6

  ④いみじく

  1 ─ スコブル

0

   いと

1

   いたく

1

   いとど

  1 ─ マスマス

1

   いよいよ

2

  ⑤かねて

  1 ─ アラカジメ

0

   あるは

  0 ─ アルイハ

20

   すべて

  1 ─ コトゴトク

6

   しばしば

  0 ─ シキリニ

2

   はやう

  0 ─ スデニ

26

   たまさかに

  0 ─ タマタマ

3

   たはやすく

  0 ─ タヤスク

3

   ときどき

  0 ─ ママ

4

   もしは

  3 ─ モシクハ

0

   やうやう

  0 ─ ヤウヤク

1

  ⑥すこし

  1 ─ スコシキ

0

   わづか

1

   とし

  0 ─ スミヤカ

7

  ⑦いそがし

  0 ─ イソガハシ

1

   うるはし

  2 ─ イサギヨシ

0

  ⑧ぬ

  8 ─ イヌ

0

   いたる

15   ─ オヨブ

5

   かづく

  0 ─ カウブル

5

   なし

  0 ─ カク

4

   く

  1 ─ キタル

4

(22)

   まうく

  0 ─ ソナフ

1

   ねがふ

  4 ─ コヒネガフ

0

   かぎる

  1 ─ コゾル

0

   ねがふ

  4 ─ コヒネガフ

0

   まうく

  0 ─ ソナフ

1

   ならぶ

  2 ─ ツラナル

0

   すさぶ

  0 ─ フケル

3

   ふたぐ

  0 ─ フサぐ

1

   まじる

  0 ─ マジハル

1

   まず

  0 ─ マジフ

1

  ⑨ひとびと

  0 ─ トモガラ

3

   め

  6 ─ マナコ

0

親鸞直筆書状

  以下の

19語が使用されている。延べ語数においては和文語の使

用が多い。親鸞書状は東国の門徒へ発せられたものであり、そこ には漢文訓読語の受容が受信者には十分行われていないことを配 慮した親鸞の漢文訓読使用が窺われる。二百年後の蓮如の御文も 門徒に向け発せられた消息であるが、蓮如の漢文訓読語使用が多 いのとは異なっている。親鸞書状も歎異抄も漢文訓読語が多くな く同傾向が見られるのである。  

1助動詞・接尾語・助詞の類、ゴトシ、シム、ザル、ザレ、

 

2接続詞、

コノユヱニ、シカウシテ、シカ ルニ、シカルヲ

 

3陳述副詞、

イマダ、イハムヤ

 

4程度副詞、

(なし)

 

5情態副詞、

スデニ、モシクハ

 

6形容動詞語幹、

スコシキ

 

7形容詞、

カク

 

8動詞、

イマス、マシマス、オヨブ、キ ハム、タタフ

 

9名詞

(なし) 和文語 漢文訓読語

  ( 1)助動詞・接尾語・助詞の類

30

6   (

2)接続詞

2

4   (

3)陳述副詞

0

3   (

4)程度副詞

0

0   (

5)情態副詞

1

1   (

6)形容動詞語幹

1

0   (

7)形容詞

17

0

(23)

  ( 8)動詞

10

4   (

9)名詞

10

1

71

19

  ◦ゴトシ(如・若)

    1 ─ やうなり

3

かけのかたちにおえるか ことく してはなれたまはすとあかせ り (第三通

63行)

  ◦ズシテ(不)

    2 ─ で

0

へたて すして 往生はかならすゝるなりとしるへしとなり (第三通

44行)

  ◦しむ(尊敬)

    1 ─ す

14

彌陀如来二尊の御はからいにて發起せ しめ 給候とみえて候へ は (第九通

20行)

むすび

  仏教者親鸞は、王朝時代が終焉して種々言語変化しつつあった 時代の鎌倉時代の初中期に自己の表記法を確立している。親鸞は 他者の著書を転写するときも、自著と同じ表記法で書写し直して い る

注8

。 自 己 の 表 記 法 は 自 著 本 と 転 写 本 に 渡 っ て 統 一 さ れ て い る。 文節位置の句読点や本稿で見て来た和語と漢語の表記法、和語の 仮名遣い 等

注9

である。歎異抄は唯円の著 書

注1

であるが、多くの表記法 は親鸞に学んで伝承していると見られる。蓮如書写歎異抄の仮名 遣い、和語・漢語の仮名・漢字の表記、強調表現としての係助詞 の結びの活用形、種々の強調表現法等は親鸞のものが伝承されて いると見てよかろう。漢文訓読語使用が少ないのも蓮如より親鸞 の方に近いと言えよう。唯円書写の歎異抄は親鸞の言語表現の伝 承によって成り立ち、蓮如もまた忠実にそれを書写して伝承して 来たものであろう。別には敬語の「はんべり」等は親鸞には見ら れないことから蓮如の持つ言語が顏を見せたものであろう。

記を主として─」(新潟大学教育学部長岡分校研究紀要第 ・「親鸞聖人遺文の表記研究(一)─自筆書簡に於ける語の漢字表 1 拙稿で論じた漢語の表記

25号、

一九八〇年)・「親鸞聖人遺文の表記研究(二)─自筆自筆書簡・親鸞写法然書簡・法然自筆書簡の比較を通してみた語の漢字表記について─」(新潟大学教育学部長岡校園研究論考

25号、一九八五年)

・「蓮如書写本歎異抄の表記について─語の漢字表記を視点として─」(『言語表現研究』五、一九八七年)

参照

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