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彩色・無彩色図形に 投影された動きの方向性

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Academic year: 2021

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(1)

彩色・無彩色図形に

投影 された動 きの方向性

志 子

動 きが投影 され るとき,その方向性は どのよ うな意味を もっているのであ ろ うか。

これまで動 きの投影について,イメージ内容の分析及 び投影を促す外的刺 激要因 としての図形の形態や色彩についての因子分析を試みて きた (門前,

1 9 8 3 ,1 9 8 4 )

。その結果,動 きは当然のことなが ら内的情緒状態 と外的刺激 要因 との相互の関係の下で成立するが,内的に快状態 と不快状態では明 らか に快状態の ときの方が不快状態の ときよ りも有意に高い動 きの投影が促が さ れ ることが明 らか となった。また,図形刺激特性の側面からは,形態の安定 性 と色彩の明度の高低が動 きの投影に影響を与 えることが明 らか となった。

動 きには,速 さと方向性の両面が考 えられるが,それ らは,図形の認知過 程のなかでイメージ内容に包含 されて外界 に表出される性質を有す るもので あると考えられる。

今回は,動 きの中の方向性に焦点を当て,いかなる方向性が,個体 のいか なる情動 と関係 しているのか ? また,外的刺激要因が,方向性を規定す る 場合はいかなる場合なのかを中心に,方向性のもつ意味を検討 してゆ きたい。

動 きの投影 と情緒状態 との関係について,一連の実験を試みなが ら,投影 のメカニズムを明 らかにしてゆ くことを目ざしているなかで,今回は,図形

5 1

(2)

の性質及び内的情緒状態 との関連から方向性のもつ意味を明 らかにす ること を目的 とした。

前回の実験で,図形刺激の内に描かれた縦横の実線が,動 きの方向性を規 定す るのに何 らかの影響を与 えているのではないか と示唆 さる結果を得たが, 今 回 は,そ れ らの点 もふ ま えて検 討 してみ る こ とに した。 また,門前

( 1 9 8 3 )

で明 らかなように,不快な情緒状態にある群では,黒色図形に対 し て,"すいこまれる〝"倒れる〝 とい う不安なイメージ内容 の投影が多 くなさ れ,且つ動 きの方向 としては,中心‑ひきこまれ る傾向を多 く示 した こと, それに対 し,快 の情緒状態にある群では,同じ黒色図形において,不安や不 快な動 きの投影が少 なかった こと,また,安定 した形態を もつ図形では,ゆ っくりとした回転の動 きが認め られ易かった ことなどを考 えて以下のよ うな 仮定を立ててみた。

仮定

1

図形 の形態の安定性 ・不安定性によって,方向性は異なるであろ う。

安定 した図形の形態では,同位置や中心に収束する方向が多 く,不安定な 図形の形態では,拡散す るよ うな中心か ら外‑向か う方向性をよ り多 く示す であろ う。

仮定

2

色彩 と方向性 との関係では,黒色系列では主 として収束す る方向 性を,灰色系列では主 として拡散する方向性を多 く示すであろ う。

被験者 :本学短大生

,1 1 9

名,年齢

1 8 ‑1 9

歳。被験者を無作為 に以下 の

4

群に分けて実験状況を設定 した (表 1)。

COl

群 とは,実験的に快状態 におかれ,黒色 と白色図形の組合せか らな る図形の系列を提示 され る群であ り

,CO2

群 は,同 じく実験的に快状態に

5 2

(3)

1

実 験 計 画

実 験 群 図 形 刺 激 . 情 緒 状 愚

CO 1

1 6

黒 色 系 列

UC 1

1 6

顛 色 系 列 不 快 状 態

UC . 2

4 4

灰 色 系 列 不 快 状 態

おかれるが,図形は,灰色 と白色の組合せか らなる図形の系列を提示 される 群である

。UC

l群 とは,実験的に不快状態におかれ,黒色系列の図形を提 示 され る群であ り

,CU2

群 とは,実験的に同 じく不快状態 におかれ灰色系 列の図形を提示され る群である。

図形刺激 :

1 5

枚の幾何学図形からなる。その うち円形及び円形の集合形が

5

枚,等辺形が

9

枚,不等辺

4

辺形が

1

枚である。等辺図形 は,正三角形, 正方形,正五角形,正六角形の

4

種類で,それぞれ彩色 (黒色及び灰色) と 無彩色 (白色) とか ら成 ってい る。不等辺図形 は台形で無彩色のみで ある

(図 1)0

情緒状態 :快状態 と不快状態 とを実験的に設定す るために,専門家によっ て作曲された協和音 (快) と不協和音 (不快)のエ レク トーンによる演奏を 録音 したテープを室内後方左右のスピーカーか ら音量を一定 にして,実験中

きかせる。

手続 き :室内前方中央スク リーンに,スライ ドにて

1 0

秒間図形刺激を提示 し,その後

5

秒間に,記録用紙に,動 きの程度,動 きの速 さ,動 きの方向性 について記入 させ る

。1 5

枚の図形刺激それぞれについて同様 の手続 きを くり 返す。実験中,既述 した通 り,快 ・不快の昔刺激が持続 して室内後方左右か

ら適量で流 される。

整理法 :動 きの方向性 と図形刺激 との間の関係について

4

群間の特徴を比 較検討するために, x2検定にて分析 を試みた。

53

(4)

図形番号

1 , 2 3

1

. a 6

/

図形番号

8 9 1 0

ll

1 2 1 3 1 4 1 5

1

図形刺激 (同一の図形で黒色 と灰色系列がある)

以上 の方法で実験 を試みた結果

, 4

群 間において

,

x2検定

p<. 0 5

で有意 差を示 した図形及 び方向性は,図

2‑5

に示す通 りである。

結果を整理す るに当って,各被験者の示 した方向性の種類を まとめた とこ

22

種類 の方向にまとめ られた. コンビ3.‑クーにてそれ らの方向性 と図形 及 び

4

群間の特徴 を ∬2検定で検定 し

. 0 5 %

水準以下で有意 な差 を示 した結果 を図示 したのが図

2‑5

である。

1 5

枚の図形刺激の うち

, 4

群間に有意な差を示 した図形刺激 は,図形

2,

図形

6

,図形

7

,及 び図形

1 0

4

枚 に集約 された。

・図形

2

は,二重円の無彩色か らなる安定 した形態の図形であ り,図形

6

は,

j i l ( ‑ ) 6 万l T . ] 1 6

2

形 2 における方向性

54

(5)

向6 方向16 方向17 図 3 図形

6

におけ る方向性

方向4 方向8

方向6 方向9

4

図形

7

における方向性

方向10

方向6

万両9 方向1 6

図5 図形1 0における方向性

5 5

(6)

同じく無彩色のひし形の内に,対角線 をもつ図形である。図形

7

は,無彩色 で下に長 い不等辺

4

辺形で,且つその内に対角線を もつ図形で

,1 5

枚の図形 刺激の うち最 も不安定な形態を有す る図形である。

図形

1 0

は,正六角形であるが,黒色ないしは灰色の彩色図形で

,CO

1,

UC

l群では黒色 とな り

,CO2,UC2

群では灰色の色彩 となる図形であ る。

図形

2

,4

群 間 x2検定

p< . 0 2

で,図形

6

, p<. 0 0

1で,図形

7

p< . 0 0 5

で,図形

1 0

p< . 0 4

で,それぞれ有意な差 を示 した。上記以外に, 図形

3, 9 ,1 2

は,それぞれ

, p< . 0 9

で有意な傾 向を示す図形 として位置 づけ られた。図形

3, 9

はいずれ も大小の円形の集合形で,図形

3

は彩色, 図形

9

は無彩色図形であ り,図形

1 2

は正五角形の彩色図形である。

方向性の種類が

4

群聞及び図形刺激問で どのような特徴 を示 したかについ ても図

2‑5

で示 した通 りである。有意な差を示 した方向性は,方向 4

, 6

,

8, 9 ,1 0 ,1 6 ,1 7

7

方向である。

方向4は,右斜め下‑下降す る方向,方向6は回転す る方向,方向8は, 左斜め下へ下降す る方向であ り,それ らに対 して,方向

9

1 0

は上昇す る方 向性を示 し,方向

9

は, ま上‑の上昇,方向

1 0

は右斜め上への上昇の方向を 示 している。方向

1 6

は四方へ拡散す る方向を示 し,方向

1 7

は拡散 と収縮 を く

り返す動 きの方向を示 している。

1

図形刺激特性 と方向性 との関係

まず,図形刺激特性 と方向性 との関係について,その特徴的な結果を調べ てみる。図形

2

,図形

6

と図形

9

の三図形が類似の方向性を多 く示 している ことが判 る。方向

6

1 6

とが,上記三図形に共通 して認め られ る方向性であ ることが判 る。図形

6

では方向

1 7

が,図形

1 0

では方向

9

の上昇方向がそれぞ れ加わっているのが両図形の刺激特性を示す特徴 と考えられ る。更 に,無彩 色の安定 した形態を示す図形

2, 6

においては,回転す る方向を示す動 きと 拡散する方向を示す動 きの投影が顕著 に認め られることが明 らか となった。

5 6

(7)

それ らに対 して,図形

7

の不等辺

4

辺形は,上記三図形 とは異なる動 きの方 向性を示す ことが明 らか となった。方向

4, 8,1 0

は図形

7

に特有の方向性 を多 く投影 し, しかも,上昇,下降方向が上下だけではなく左斜め下や斜め 上 といった変化に富んだ五方向 とい う方向性を投影 しているのがその特徴 と いえる。

それぞれの図形の刺激特性 と方向性 との関係をまとめてみ ると,安定 した 形態を有す る図形刺激特性をもつ図形

2

では,回転する方向が,拡散す る方 向よりも多い傾向を示 していることが判 る。図

3

で明 らかな ように,図形

6

で も同様に,回転す る方向が,他の方向 よりlも多い傾向を示 したが,拡敏 と, 拡散および収縮 とは同 じ比率の出現率であった。

図形1

0

では,拡散す る方向が最 も多 く,次に,回転 と上昇方向 とが同 じ比 率で出現 していることが判明 した。

図形

7

の不安定な形態を有す る図形刺激では,上昇方向,下降方向及 び回 転す る方向 とい う三方向に大別 され, しか も,左斜め下 に下降す る方向が他 の方向 よりも有意に多い結果を示 しているのが特徴 といえる。

2 4

群間 と方向性 について

実験

4

群間 と動 きの方向性の結果を検討 してみる。

4

群 中で,有意差を示 した図形刺激について,'最 も多 く動 きの方向性を投 影 した群は

,CO2

群であ る。図形

2,6 ,1 0

については,回転す る動 きの 方向の投影 と拡散する動 きの方向を多 く示 し,図形

7

については,下降方向 の動 きの投影を多 くしてい ることが判 る

。CO2

群 につづいて

,UC2

群が 図形

2,7 ,1 0

に多 くの動 きの投影を している。

4

群問 と方向性の特徴の有無については

,CO2,UC2

群の方が

CO 1,

UC

l群 よりもよ り多 くの方向性を投影 しているとい うこと,これは,方向 性が動 きの投影の中で生 じる現象である故 に,灰色系列の快群が最 も多 く動 きの投影を し易い とい うことと関連 して くるし,灰色系列の不快群がそれに つづ き,黒色系列の快群が最 も低 く,黒色系列の不快群の方が快群 よ り多 く

5 7

(8)

動 きの投影 を しているのが注 目すべ き特徴 といえる。

以上 の結果 よ り,方向性にはどのよ うな意味が包含 されているのかを明確 にして,動 きの投影の メカニズムをしる手がか りとすべ く,考察 をすすめて みたい。

以下 の よ うな観点か ら検討 してみる。

1

方向性 に投影 され る情縮状態の特徴について

2

方向性 を規定する図形刺激特性 について

3 4

群 聞及び図形刺激特性 と方向性 との関係 について まず第

1

の点 について考 えてみ る。

1

方向性 に投影 され る情緒状態の特徴について

方向性を示す とい うことは,動 きをかんじることを意味 してい るわ けであ るか ら,動 きの投影を促 し易い情緒状態 とは どの よ うな状態 か とい うことと 深 く関連 して くる。方向性において有意差を示 した情緒状態をみてみ ると,

CO2

群 (灰色系列快群)に回転す る動 きの方向を示す比率が高い ことが注 目され る。

今回の実験結果 の分析 では,動 きの方向性 と速 さの関連性 について検討を 試みていないので,速 さの要因を度外祝 して考 えてみ る。回転す る方向や拡 散す る方向の投影 が快状態で多 くなされてい るとい うことは,個体 内の躍動 感や リズム感が外的刺激状況 によって誘発 され,喚起 させ られ ることを示唆 していると思われ る。おそら く,個体の過去 の体験のなかで,回転木馬 に乗 った心地 よい感覚や, メ リーゴーラン ドでの楽 しい感覚が,快状態で よびお こされ反応 となって表出 されたのであろ うと考 えられ る。

快状態での動 きの方向 としても う1つの特徴的な方向は,拡散的 な方向を 示す投影の され方である。外へ向 って広がるかん じ (ふわ っとしている,潔 っているな ど)の投影は,や ゝ不安定 な漠然 とした要素を内包 しなが らも‑

5 8

(9)

ネルギーの解放,発散を暗示 しているととらえてよいであろ う。ゆ りかごや 、ソモ ックでゆ られ漂 っている拡散的方向での動 きの投影が,情緒的にや ゝ 不安定な状態の

UC2

群 に多 く認め られることも,門前

( 1 9 8 3 )

のイメージ 内容の結果 と考 え併せてみると理解 され易い。

快状態では,明 らかに回転す る動 きの投影がなされ易いことが結論づけ ら れたが, しかしなが ら,実験的に快状態におかれても,外的刺激が不快感 を 惹起 させ ると考 えられる黒色系列の

COl

群では,内的には快状態であ りな が らも,外的には不快な情緒が喚起 させ られ るため,内的な快状態 に従 うこ とに抵抗が生 じた り,快 と不快 のはぎまで葛藤状況に陥 り,その結果,回転 する動 きはもちろん,その他の動 きも抑制 され易い状態にあることが明 白 と なった。 このことは門前

( 1 9 8 3 )

のイメージ内容の実験結果のさいに も指摘 した ように

,CO

l群は,動 きを伴わない中性的な反応内容を多 く投影す る とい う考察 と今回も合致 した もの といえる。個体が,快 ・不快の葛藤状況や 桔抗状態におかれた ときに,それ らの情緒場面を適応的 ・合理的に解決す る

1つの反応様式であると判断で きるであろ う。

不快状態で多 く出現す る方向 として,上昇下降方向がある。 この ことは,

UC2

群や図形

7

の不等辺

4

辺形,及び黒色図形における反応の結果 か ら推 察 された結論である。個体が内的 ・外的に不快な状態におかれた場合,それ らが もた らす不快感や不安感を どのように処理 してゆ くのか とい う情緒の処 理の仕方を示す ものであ り,ひいては,投影のメカニズムの一端を明示す る

もの と解 される。

図形 との関連を検討 してみると,不安定な状態が強 くなる程下降方向が頭 著にな り,不安感や不快感が少 な くなる程度 に応 じて,上昇方向が有意に多 くなると考 えられた。 このことは,個体が不安定感を解消す る最大 の方法 と して上昇方向を志向することによって,努めて気分の高揚をはかろ うとす る 意図的な意味が こめ られているのではないか と考えられ る。他方,刺激状況 として不快感を解消 した り,それに対抗す ることがで きない位,不快状態が

5 9

(10)

強化 される場合においては,む しろ不安定な状況に抵抗 しないで,その状況 の中で不快 な気分を投入 してゆ く方が安定感を得やすいことを意味 している

と考 えられ る。

2

方向性 を規定する図形刺激特性について

動 きの方向性を規定す る図形刺激要因について,仮定

1

で考 えた図形の形 態の安定性,不安定性 との関連性について検討 してみる。

有意な差を示 したそれぞれの図形の特性を考 えてみると,門前

( 1 9 8 4)

因子分析で も明 らかになったように,図形の形態上の特性や構造 が動 きに与

える影響を無視す ることはで きない。

安定 した図形の形態では,総 じて快的でゆった りした動 きの投影を促 し易 いし,不安定 な形態を有す る図形では,不快な情緒を喚起 し,否定的なイメ ージ内容の投影を惹起 させ易い。それでは,方向性 との観点か らはいかなる 特徴があるのかを検討 してゆ く必要がある。安定 した形態 とい うのは円形及 び円形の集合形,またはそれに類似の形態を有する図形である。

外的刺激 として安定 した図形刺激が与 えられた場合

,CO2

群 では,文句 なしに同位置での方向性及 び拡散す る方向性を示 していること, また,不安 定な図形の形態的特性をもつ と考えられ る図形

7

において

,CO2,UC2

群が共に,上昇,下降の方向性を示 して,安定 した図形の形態 とは異なる方 向性を有意な差で示 している点を考慮す ると,仮定

1

は支持 され,仮定

1

考えた ように,方向性のちがいは,内的情緒が方向性の中に内包 されて現わ れた結果であると判断 して差 しつかえがないもの と思われる。従 って,回転 する方向には快的で安定 した情動が内包 されて投影 されていると考 えられる し,上昇,下降の方向のなかには不安で不快な情動が内包 されて投影 されて いると推察 される。回転す るような明確 な動 きの方向性 を示 しえないが,漢 然 とした回転の方向を示す と解釈で きる拡散,収縮の方向性 は,漠然 とした 不安定感の投影を意味 していると解 され るし, また,上昇,下降の方向性は, 不快 ・不安に対応 して,それ らの内的情緒を処理 してゆ こうとす る個体の刺

6 0

(11)

激に対する反応の方向性を意味 していると判断 される。

次に色彩の刺激特性 と方向性 について考 えてみると,黒色系列 と灰色系列 に示 される両系列のちがいを明 らかにす ることによって,色彩が方向性 に与 える意味を とらえることがで きると思われる.

本実験で明 らかとなった ことは,色彩を有 した図形の中で,唯ひ とつ図形

1 0

にのみ有意な差が認め られた点である。門前

( 1 9 8 4 )

も指摘 した よ うに, まず外界の刺激を知覚 し,認知する場合,色彩が先 に把握 され,つづいて形 態が,最後 に色彩 と形態の統合過程でイメージが想起 されるとす ると,.黒色 の図形は,実験の結果から,動 きのあるイメージを想起 させ難 くしていると 考 えられるOそれに対 して灰色系列の図形では,情緒状態にかかわ らず, よ り多 くの拡散や回転する方向,及び上昇す る方向が認め られている。黒色の 色彩 よ りも,灰色のように明度の高い色彩を有する図形 の方が動 きの投影 を させ易いし,また下降方向がほ とん ど認め られない点,外へ向か うエネルギ ーの方向を暗示 していると考 えられる。黒色系列の

CO

1

,UCI

群 の結果 をみてみると,動きの投影 自体が基本的に抑 えられていることが明 らかであ る。特に

COl

群においてほ,ほとんど方向性を示す反応が生 じなか った こ とを考えると,図形の系列の継時的な流れが個体の反応様式を規定 し,認知 スタイルや情緒に影響を与 えていることが推察 され る

。COl

群 は快状態に おかれている群であるが,第

1

提示図形か ら黒色の図形刺激を断続的にみせ られてゆ くと,黒色が不快感や不安感を喚起 させる反面,内的な快状態 とは 矛盾や葛藤をひきお こす結果,両者の中間的な反応,つ ま り,快で も不快で も.ない中性的な反応様式にとどまざるを得なかった と解 され る

。UCl

群 で 紘,黒色系列の流れの中で,いわば共感的に感情移入がなされ,不快感を享 受 し,受け入れてゆ くのに抵抗の少ない下降方向での反応様式が多 くとられ た と解 され る。それに対 して

CO2,UC2

群 では,明度の高い灰色 と白色 の図形の継時的な流れのなかで,た とえ内的には不快状態であって も,不 当 に不快感や不安感が増幅 されず,矛盾や葛藤 も黒色系列 に比 して少 ない状況

6 1

(12)

におかれる結果

,UC2

群では漠然 とした不安感の投影 として拡散す る方向 や不安感に対抗 してゆ く反応 としての上昇方向が多 く認め られた もの と判断

され る。

従 って仮定

2

で考 えた黒色系列では収束す る方向を とらなかったため,黒 色系列については支持 されなかったが,灰色系列については仮定で考 えた方 向性を とりうることが明 白となった。

3 4

群問 と図形刺激 との関連性 について

4

群間 と図形刺激 との関連性をまとめてみ ると,黒色系列では,快状態で あっても動 きが投影 されにくく,従 って方向性の特徴 も認めることはできな かった。快状態におかれなが ら黒色系列 を提示 された個体 は,快 と不快の狭 間で葛藤が生 じ,快 ・不快の葛藤が援和 された り,相殺 されるだけで,積極 的に快の動 きの方向を投影す るに至 らなかった ものと考 えられ る。黒色図形 の色彩が形態 よ りもより有意に個体 の情動に働 きかけて,認知の仕方に影響 を与 えることが確認 された といえる。

黒色系列不快群では,不安定な状況が強め られ る場合にはそれ らの不快感 に抵抗す る方向 (上昇) と従 う方向 (下降) に分かれた反応が とられ易い傾 向にあることが判 った。

灰色系列の快群が

4

群 中,最 も活発な動 きの方向性を示す ことが明 らか と なった。灰色は黒色程不安感や不快感を喚起 しないことか ら快的な状況に個 体がおかれれば,回転す る方向,拡散の方向,拡散一収縮す る方向な ど,外 へ広がってゆ く動 きの方向性が顕著 に認められた ことは,内外の情緒的葛藤 や矛盾が少な く,内的な快状態か らくる安定感の方がむしろ個体を強 く支配

して,内面の躍動感を積極的に投影 させたものと理解 され る。それに対 して, 灰色系列不快群では,不快状況 と不快刺激 とが黒色系列程深刻 に影響を与 え

なかったが,不安感が強化 され易い状況 におかれてい るため,上昇方向で不 安を解消 しよ うとす るはたらきが多 く認め られた と判断される。

以上の点 より,快的な情動を投影 させ る方向 として,回転す る方向が考 え

6 2

(13)

られ,や ゝ不安定な情動の状態になると,拡散,拡散一収縮の方向が投影 さ れ易 くなるといえる。 また外的に不安定な図形の形態や色彩 を認知 した場合, 内的な情緒状態 として,外的刺激に対抗できる場合には,上昇方向の投影が 可能 とな り,対抗で きに くい場合には下降方向が とられ るか,あるいは,い ずれの方向の投影 もなされない といえよう。図形内の対角線 も上昇 ・下降の 方向性を規定す る

1

要因ではないか と考 えたが (門前,1

983 ),

今回の実験 からは,対角線 とは無関係の方向が認め られた点,直接り関係は結論づけ ら れないま ゝになった。今後の課題のひとつになろ う。

引 用 文 献

門前 豊志子

1 9 8 3

彩色 ・無彩色図形におけるイメージの投影について 本学紀 要 創刊号

5 5 ‑7 2 .

門前 豊志子

1 9 8 4

彩色 ・無彩色図形における刺激特性について‑ 因子分析に よる試み‑ 本学紀要 第

2

1 0 5 ‑1 2 0 .

6 3

表 1 実 験 計 画 実 験 群 人 数 ■ 図 形 刺 激 . 情 緒 状 愚 CO 1 群 1 6 黒 色 系 列 快 状 態 UC 1 群 1 6 顛 色 系 列 不 快 状 態 UC

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