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情緒状態と動きの投影 (3)

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Academic year: 2021

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(1)

情緒状態 と動 きの投影 (3)

―動きを感じる群と感じない群における イメージのちがいについて―

門 前 豊志子

目 的

情緒状態 と動 きの投影の関係について検討を重ねている一連の実験 として、

今回は、実験的に同 じ情緒状態 に置かれなが ら、刺激図形に対 して動 きを感 じ る群 (以下M群 と略記する) と、感 じない群 (以下非M群 と略記する) とがあ ることに注 目し、それ ら両群のイメージの投影の仕方にどのような違いが現れ るかを検討する。さらに、黒色系列 と灰色系列の2系列を使用 しているので、

各系列におけるM群、非M群の特徴 も把握することを目的 とした。

仮 定

1、M群 におけるイメージと非M群 におけるイメージとでは、イメージの内 容に相違があるかもしれない。

2、M群、非M群におけるイメージ内容 は、各系列によって も相違がでるで あろう。

3、表出されたイメージ内容か ら内的な投影のメカニズムを頬推することが できるだろう。

4、その投影の仕方 は、M群、非M群によって異なるか もしれない。

(2)

被験者 :女子短大生 (平均年齢、19.5才)

刺激図形 :15枚の幾何学図形。それぞれの図形は、 シンプルな形態を有 した幾 何学図形で黒色系列 と呼ばれる明度の低い黒色 と、それ以外は白色の図形の組 み合わせか らなる一組の図形の系列 と、同一の図形であるが、黒色の図形が明 度の少 し高い灰色になっている灰色系列 と呼ばれる図形の一組がある.(図 1)0

図形番号

1

2 3 4 6 7

図形番号 8 9 lO ll 12 13 14 15

図形刺激 (竺蒜 慧慧禁 色系列と灰色系列の)

情緒状態 :快 と不快の情緒状態をそれぞれ実験的に設定する。快状態は、協和 音か らなるエ レク トー ンの演奏を録音 したものであり、不快状態は、同様に不 協和音を録音 したものである。予備実験にて、すでに情緒状態の信頼 ・妥当性

は、検証 されている。

実額手続き ・'図形刺激を一枚ずつスライ ドにて部屋中央の大型スクリ‑ンに5 秒間ずつ提示する。一枚提示後、10秒間 にあ らか じめ配布 した記録用紙 に、

動いているか、動いていないか」について記載 させ、動いて いる場合 には、

その程度を5段階で評定 させる。 さらに動 きの速 さを3段階で評定 させる。ま た、動 きを感 じる被験者 も、感 じない被験者 も浮かんだイメージを自由に記述 するよう指示 される。図形刺激が15枚すべて提示 されて しまうまで同様の手続 きが繰 り返 される。実験中、黒色系列快群 (以下COl群 と略記す る) と灰色 系列快群 (以下CO2群 と略記する) には快的な音刺激が中程度の音量 で流 さ

(3)

れる。不快群 も (以下UCl群、UC2群 と略記する) も同様に不快な音刺激が 流 される。

実験計画 :以下の表の通 りである。

黒色系列 灰色系列

CO1群 M CO2 M (16名) M (18名) 如M UCl群 M UC2 M

(16名) M (16名) M

結 果

まず、各例列および異なる情緒状態におけるM群、非M群のそれぞれの度数 を比較検討 した結果は、図2か ら図5に示 される。 この結果をみてみると、系 列に関わらず快群では、非M (動 きをかん じない場合)を示す ことが多 く、不 快群では、M (動 きをかん じる場合)を示すことが多いことが分かる。図形刺 激別に概観 してみる。COl群では、 いずれの図形 に対 して も動 きを感 じる度 数が少ない。CO2群では、図形の7に動 きを感 じる度数が高い。UCl群では、

図形の2、 3、 4、 7、 912に動 きを感 じる度数が高い。UC2群で は、UC l群 と同様の図形に加えて、図形の5と14に対 しても動きを感 じる度数が高かっ た。図形の特性をみると、動 きを誘発 し易い形態の図形 と黒色図形及び不等辺 四辺形 に動 きの投影が集中 している。

図 2. COl群におけるM・非M群の度数の比較 (刺激図形別)

(4)

M非 M非 M手FM非 M手FM MうMEMヲFM手FM非 M非 M非 M非 M手F M M M M M M M M M M M M M M M 図 1区】2図3図 4 匹】516]7 図 8 匹】9図10EE11図12匹】13匹】14匡】15

3. CO2群におけるM・非M群の度数の比較 (刺激図形別)

M ヲ

FM非 M非M手FM与M MMFM非 M非 M非 M与巨rvl非 M非 M手F M M M M M M M M M M M M M M M 匡11匹】2 匹】3匹】4 図 5GZl67匹】8 匹19 匹110Ⅰ望】11匹112匡】13図14匹115

4. UCl群におけるM・非M群の度数の比較 (刺激図形別)

M M M M M M M M M M M M M

M M M M M M M M M M M M M

MSFM}E

M M M M M M M IV1 1>l lVI

EE)1 図2 3 回 4 5 回 6 匹)7 8 囲 9 10llEZ]1213 回 14 匹】15

5.UC2群におけるM・非M群の度数の比較 (刺激図形別)

つぎに、投影されたイメージ内容を内容別に分頬 した結果は、図6に示され る。イメージ内容 は、大別 して肯定的内容、否定的内容、中性的内容 とその他 に分け られた。各系列、各群をカイ自乗検定で検定 した結果Ⅹ 2‑29.4491 P<0.01で有意差が認め られた。肯定的イメージ内容は、CO2群のM群に多 く、

(5)

ポ イ ン ト 度 数 (※)

0 10 20 30 40 50 60

col CO2 UCI∪C2

col CO 2 UcllUc 2】

coll co2 l ∪cl lUc2 l

col CO2 Uc1

Col co2 l∽ 1 ∪C2

col l co2 l Ucl Uc2 l 4群のM、非 Mにおいて、示されたイメージ内容を分類する基準 として 井 UC2群のM群に

.以下のような基準で算定 した。

25%未満 :1ポイン ト度数 とした。

25%〜50% :2ポイン ト度数 とした。

50%〜75% :3ポイン ト度数 とした。

75%〜100% :4ポイン ト度数 とした。

6.イ メー ジ内容 の分 類別4群 のM・非M群 の比 較

おいて、否定的イメ ージとは断定 しに く いイメージが10ポイ ン トあった。それ ら は入っていない。

否定的イメージ内容は、UCl群のM群に多 く、中性的内容 は、CO2群 の非M 群 とUC2群のM群に多かった。

さらに、具体的なイメージ内容について図形刺激別に同一図形内に出現 した イメージ内容の頻度を%で示 し、各群を比較 したのが、図7‑1、 2、 3、 4 である。 この結果を見 ると各群における図形別イメージの特徴がイメージ内容 の中に投影されていることが分かる。

(6)

0

50 100 150 比率

coll co2lucll uc2 1

coll co2l

1

co2l ucl l Uc2 l

図形2拡大 .レコード他収縮 MMMMMM

col l co2 Iuc21

cuo叫c1co2 Iucl l

Ucl luc2l

◎ 2

uc2fucll

col lco2luclr uc2 l

col co2 3

. ' L' .

Uc2 1

図形4 MMM

col 卜 co2 l Uc2l

co1l co2 l ucl l uc2 coll Ucl luc2

7‑1IM群 ・非M群 にお け る刺激図形別 イメー ジ内容 の比 較 (図形1‑ 4)

(7)

0

50 100 150 比率

図形5ま わ る ま る 非M非M非MMMMM

col l ucll uc2 l col lco2lUcll

collco2l

告 5

万 華 鏡 非M CO2

図形6あ が突 出 す るピラミッド他 非M非M非MMMM cUolccooc22o2u c2 lucll

+ 6

図形7上にあがる M coll ucl l uc2 l

非MM 倒れる、と ぴ 出 すおちる 非M非MM

不 安 定 M coll uc2 l

co2

7

非M COl

図形8吸い込まれる不安なかんじ 非M非M非MMMM

col l co2 ‑ ucl l

ccool l2 ‑Uc2co2 1 ucl l

8

uccll

■ ■

7‑2 M群 ・非M群 にお け る刺 激図形 別 イ メー ジ内容 の比 較 (図形5‑8)

(8)

0

50 100 150 比率

図形9曇 り 空明 る く、花た の しい非M非MMMMM col l co2lucl l Uc2 l

col lco2lUc2】

co2 .000809.

図形10広 が る 非MM

co2 Jucl luc2l col

M col

非M ucl

M あ が る 非MM

ij 1coU2c2

ー ● 1 0

図形11 非MM 九、●

l l

ば らついている.

窓、箱、/ヽン力チ などば らついている○

[ コ

図形12の ぼ る 非M非M非MMMM col luclluc2l

7‑3 M群 ・非M群における刺激図形別イメージ内容の比較 (図形9‑12)

(9)

0

50 100 150 比率

図形13飛ぶあがる 非M非M非MMMM

col lco2l ucl L uc2

co2 col

Uclcol

‑ △ 1 3

図形14広 が る 非MMM

col l co2 luclluc2

co2 l ucl l

1 4

非M col lco2l ucl l

図形15明 る い 非MM Colco2 lu

上へのぼる 非MMM

不 安 定 非M uculcl U1c2 l

○ 1 5

近 :COl、CO2 UCl、UC2は

(

を示す COI

。。2 ..ニー # M を示す UCl

UC2

7‑4 M群 ・非M群 における刺激図形別 イメー ジ内容 の比較 (図形13‑15)

(10)

考 察 以上の結果に基づいて考察をする。

まず、今回の実験の目的であり、仮定にたてたように動 きを感 じているM と、動 きを感 じていない非M群 とでイメージ内容に違いが生 じたか否かを検討 する。違いが生 じていれば、その違いは、どういう意味を持 っているのかを併 せて考えてみる。

1、M群、非M群にイメージ内容の相違か認められたか否かについて

6で分かるように、全体でとらえた場合、M群では、肯定的、否定的、中 性的なイメージ内容の出現頻度が非M群に比べて高い。非M群では、中性的イ メージ内容が一番多 く、肯定的、否定的イメージは、M群に比べかなり低い。

また、各群別にみて も、M群では、肯定的イメージ内容の出現す るのはCOl、

CO2群に多 く、否定的イメージ内容 は、UCl、UC2群に多い。 このことか ら、

動 きを感 じるM群では、動 きの中に感情を移入 して、イメージへ と発展させ投 影させていることが明 らかであるといえる。情緒状態が快的なときには、肯定 的のイメージに、不快なときには、否定的なイメージに置き換えることによっ て、情緒状態を享受す る柔軟さがみ られる。それに対 し、非M群は、感情を移 入する手だてがな く感情を移入 しない形でのイメージとして結果的に中性的な イメージ内容が多 くなったのではないかと考え られる。動いている感 じを持っ ことは、刺激の中に自分 自身を投入 して、情緒を開放 してゆくことができたり、

内的情緒を処理 したりしてゆくことができることを示唆 している。動 きを感 じ ない場合は、刺激と自分 自身 とは隔離されていて、情緒を開放 していったり、

処理 してい く方法 として刺激との有効な関係を もたず、情緒を抑えたり、逆に、

刺激を無視 した りして刺激 と情緒 との間に円滑な相互作用が生 じにくくなって いるのではないかと考え られる。臨床的な観点か らこの結果を考えてみると、

人間関係を含め、人が置かれた状況で、刺激との相互関係の中で情緒を開放 し ていったり、情緒を受 け入れていくことができる方が、そうできないよりもよ り適応的な関係を持てるのではないかと考えられる。動 きが刺激 と情緒 との媒

(11)

体の役割を しているともいえる。つまり、 日常では目の動 きや喜怒哀楽などの 表情の変化、声の動 きとしての抑揚、身体の動 きとしての身ぶ り手振 りなど様々 な動 きの中で日常では情緒を発散させているといえよう。

2、系列によってイメージ内容に違いが認められるか否かについて

今回の実験では、黒色系列 と灰色系列の2系列におけるM群と非M群のイメー ジの特徴について検討 してみたところ、系列によって、イメージの出現率に差 があることが分かった。黒色系列では、COl群 のM群が少な く、灰色系列 で 、UC2群の非M群が最 も少ない。イメ ージの出現率よ りも、 む しろイメー ジの内容にそれぞれの系列による特徴が認められている。黒色系列のイメージ では、重い、暗い、不安定、闇夜、月食時の太陽t明か りのついていない家 と いった総体 に暗い重苦 しい内容のイメージが多い. これは、黒色系列の刺激図 形の色調のなかの黒色を した図形刺激の影響を否めない。黒色をいかにうまく

自我に統合 していくかが課題 となろう。黒色の色調 に圧倒されて拒否的になる とイメージは浮かびにくくなるし、浮かんで も 「変な模様、穴凹」 といった中 性的で苦 し紛れに表現するといった感 じが顕著にみ られる.灰色系列のイメー ジでは、全体に広がっていくイメージ、拡散 してい くイメージ内容 と、明るい イメージ内容やボーとした明るさやほんのりした明るさを伴 ったイメージ内容 が多いといえよう。灰色の色調が与える温かい感 じの影響が大きいだろう。黒 色に比べて、灰色の方がすんなりとその色調を受け容れやすいことがイメージ を想起 させやすい一因になっていると考え られる. また、系列による色調の遠 いと図形刺激特性及び情緒状態 との関係 という相乗的影響を無視することはで きないと考えられる。特に同一の系列で も情緒状態の違いによって、イメージ 内容にちがいがみ られるし、M群、非M群において も差が見 られることか ら、

系列だけか らではなく、図形刺激特性な らびに情緒状態 との関係についても次 に検討 してみる。

(1)黒色系列 (COl群、UCl群)におけるM群、非M群 のイメージ内容 の 比較検討

(12)

COl群では、黒色の図形に対する反応 と白色の図形 に対す る反応 に特徴が あることが分かる。黒色図形刺激では、吸い込 まれる感 じやゆっくりした動き が投影 されているのに対 して、 白色図形刺激では、軽い感 じ、上に飛んでいく あるいは、上 に昇 る感 じが投影 されている。 また、図形の形態 との関係では、

不安定な形態を有す る図形刺激に対 しては、不安定な動 きの投影がみ られるも のの、下降傾向よりも、上昇す る弾んだ動 きが多 く投影されている点で、UCl 群のM群のように、「倒れる、迫 る、重 くのしかかる、迫 りなが ら上にあがる」

といった不安定な重 い感 じの投影のされ方 とは異なっていることが分かる。白 色図形に対 して も落ちる、渦巻 きが広がる、崩れてゆ くといった不安な内容が 多 く、黒色 という色調だけではなく、情緒的に不快な状態 との相乗的な影響を 受けていると考え られる。非M群に関 しては、COl群、UCl群 ともに重 い、

暗い、圧迫 されるなどの不安定なイメージが多いが、UCl群では不気味な感 じ、淋 しい感 じ、厳 しい感 じや冷たい感 じの投影が多 くされている点、Col 群 とは異なる情緒状態に置かれているが故の感情の投影がなされていると判断 できよう。

このように見て くると、動きのあるイメージとして想起される場合 と、 され ない場合を考えてみると、刺激を受けて動 きを感 じ、動 きの中でイメージを想 起 させてい くプロセスでは、主体的に刺激の中に自分自身の感覚や感情を融合 させていけることが必要なのではないかと思われる。つまり、刺激状況にいか に乗れるかということである。刺激 と主休 とが心理的に遊離 した関係では、刺 激 は刺激、主体 は主体 として別々のまま隔絶され刺激状況を共有できていない ため、刺激に圧倒 されたり、刺激を拒否 したりして、十分に相互の関係を享受 していない結果がイメージ内容に現れているものと考え られる。動 きを感 じら れることは刺激に対 して、あるいは、刺激状況に対 して主体的な関わりを意味

していると考えて もいいだろう。

(2)灰色系列 (CO2、UC2群)におけるM群 と非M群のイメージの特徴 灰色系列 におけるイメージは、M群では、否定的内容 と肯定的内容の両方が

(13)

出現 している。外に向かって広がる感覚、飛び出す感覚 と何かお化けのような 得体の知れない、とらえ所のないものが出て くる不安な感覚 とが動 きの中に投 影されているのが特徴的で、 これは漠然 とした灰色の色調が肯定、否定の両側 面の投影を促 しやすかったと考え られる。非M群では、遠 くか ら見た建物 とか 雨の ピラミッドといった通景的なイメージやガラス、金平糖といった透明感の あるイメージが多いこと、不快状態の非M群では、中性的内容が多い反面動 き を感 じる被験者 も多 く、灰色の色調は、黒色よりも動 きを感 じやす くさせ、動 きを通 して不快感の解消を促 しやすいのではないかといえる。

3、仮定3および4で考えたように、イメージ内容から内的な投影のメカニズ ムが類推できるか誉かについて検討 し、M群、非M群で特徴が見られるかを検 討する。

動 きのあるイメージを投影する場合 とそうでない場合とでは、内的な状態が 異なるように思われる。動 きの中に自己を投入できるか否かが一つの大 きな違 いである。 さらに、動 きを投入 した場合に外的刺激をどのように処理できるか ということが もう一つの違 いである。動 きと情緒 はなかなか切 り放せない関係 にあるのではないかと思われる。すでに述べたように情緒の様相は、動きになっ て表出されやすいし、動 きのなかで情緒は変容 し、昇華されうる。動 きの中に いかに自己の情緒を投入 し、イメージとして変容させていくかが自己の置かれ た情緒状態や刺激状況を享受できるかということにつながっているように思わ れる。快的な情緒状態に置かれればその中で快的な感 じを十分楽 しめるかどう かということになる。不快な状態に置かれてもその不快さを拒否するだけでな く、不快な状況を不快 として受 け容れなが らその中での楽 しみ方を見つけられ るかどうかが動きのなかでのイメージ内容 となって現れてきているように思わ れる。M群では、動 きの中に自己の感情移入を しなが ら、動 きの速 さや方向性 で もって不快感の解消をはかったり、内的葛藤の調整をはかったりしているが、

M群では、動 きを感 じることがで きない、 外的刺激 のなかに動 きを感 じ ることができない群であるということは、主体 の感情 と刺激 との間に距離が

(14)

あることを示 しているように思われる。なぜ距離を感 じるのかは、内省報告を 十分聞 いていないので憶測の域を免れないことを許 していただ くとして、 自分 をす ぐに状況 に応 じて開放 していける性格でないとか、動いていない図形 に対 して動 きを感 じる必然性がないといった知的な判断などが情緒の自由な活動を 阻止 していると考え られはしないだろうか。

情緒 は、快、不快だけではな く両者 の葛藤 もあるし、 さらに快 といって もた の しさ、のんび りしたりしたおだやかさ、ゆ った りしたかん じ、わ くわ くした かん じ、喜 びの感 じや うれ しさの感 じなど様々な快の状態があることがイメー ジ内容か らよみ とれる。同様に不快 といって も不安な感 じ、不気味な感 じ、寂 しさ、厳 しさ、不安定 な感 じ、倒れそ うな感 じ、迫 って くる感 じなど内的に不 快な感 じが生 じて くる場合 と、内的にはさほどで もないが、外か らの影響で不 快感がおそって くる場合があることが明 らかである。本実験 におけるイメージ が単 なる空想 と異 なる点 は、主体が置かれた情緒状態を何 らかの形で処理せざ るを得ないということだろう。処理の仕方 は、仮定 したように、M群、非M で違 いがあるように思われる。M群では、動 きの速 さや方向性 といった動 きの 質的側面を うま く利用 しなが ら不快感を解消 したり、快的感 じを もっと強化 し ているのに対 して、非M群では、刺激を拒否 したり、刺激に圧倒 されて動 きが 抑制 されて中性的なイメージ内容に置 き換えようとする傾向が非常 に強いこと がわか る。 その理由として、情緒的な刺激に巻 き込 まれ るのを敬遠する性格 と か、予期せぬ情緒状態をす ぐに受け容れかねるため らいの憩 さとか、あるいは 不快な場合では、不快な感 じに自由な情緒の動 きが拘束 され不快感のみに支配

されて他の情緒の活性化が縛 られて しまっていることなどが考え られる。

このようにみて くると、主体が自らの情緒を受 け容れその情緒に浸 りなが ら、

縛 られることな く情緒か ら閑放 されることがよりいきいきとした感覚を享受で きる原点なのではないか と示唆 された。その意味で、動 きは情緒 と主体 とを内 的世界か ら外的世界へ と導 いていく媒体 としての役割を果た しているのではな いかということが示唆 されたように思われる。

(15)

今後はさらに詳 しく情緒 と動 きのメカニズムの解明を試みていきたい。

(この論文は、 日本心理学会第57回大会 (1993)での発表を基にさらに検討を 加えたものであることを報告 しておきます。)

参考文献

水島恵一 ・小Jll捷之編 イメージの臨界心理学 誠信書房 1985

門前豊志子 1983 彩色 ・無彩色図形 におけるイメージの投影について 信州 豊南女子短期大学 第1,55‑72.

安田一郎 感情の心理学 青土社 1993

参照

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