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過圧密泥炭のせん断特性に関する実験的研究
対馬雅己
ExperimentalStudieson
ShearCharacteristicsofOverconsolidatedFbat
MasakiTSUSHIMA
(昭和59年10月31日受理)
Inthispaper, theinnuenceofstresssystemonshearcharacteristcsareinvistigatedexperi‑
mentally.
Resultsofanalysisaresummarizedasfollows;
l) Shearingresistances inoverconsolidateddrainedcompressionwerenotaffectedbythe
overconsohdationratio.
2) Dilatancycoefficientsofobtainedfromoverconsolidateddrainedcompressionwerefoundto bealmostequalvalues.
3) Shearingresistancesinoverconsolidateddrainedcompressionweregreatlyinnuencedbythe dilatancycoefficientsonoverconsondationratio.
表1 試料の物理的性質
l . ま えがき
泥炭性有機質土から成る地盤は,一般に知られて いるように,土質工学上軟弱地盤の最も典型的な事 例であって,構造物等の基礎地盤としてはきわめて 不安定なものである。 したがって,構造物等の荷重 強度がある程度大きくなると,基礎地盤としての泥 炭層は, その直接の支持力を失い,せん断による変 形が生じ, さらに破壊に到る場合もある。
さて,土の強度とともに定量的に把握しにくい原 因による強度減少を考えなければならない。たとえ ば,地盤改良のために用いたプレロード盛土の除荷 や掘削工事による地盤の応力開放などによって,せ ん断強度が時間の経過とともに減少する問題などが ある。このような問題を解明するための研究は,粘 土では,かなり行なわれているがぅ特殊土といわれ る泥炭性有機質土のそれについては,未だ見当らな
い。
そこで本研究は,正規圧密土の研究成果4)5) を基 礎として,泥炭性有機質土,粘土およびその混合士 について,過圧密排水条件下におけるせん断特性を 検討するものである。
実験に用いた試料は,秋田県雄物川流域から採取 したもので, 日本統一土質分類法による黒泥(Mk) と粘土(CH)である。更に, これらの試料のほかに,
黒泥,粘土の乾燥重量をそれぞれM, Cとしたとき 乾燥重量比としてM/(C+M)が50%になるように 混合した試料をも用いた(以下,泥炭性有機質土:
試料P,粘土:試料C,混合土:試料CPと呼称す る)。それらの物性は,表1に示すとおりである。こ れらの試料を液性限界以上の高含水比で十分練り返
したものを,気泡が混入しないように十分注意しな がら圧密容器に入れ,所定の圧力で約24時間予圧密 した。供試体は予圧密終了後,直径35.0mm,高さ 87.5mmの円柱形に成形し,圧密を促進するためにド レーンペーパーを供試体側面に巻いた。また供試体 上下端面における摩擦を軽減するために, シリコン グリースを塗ったドーナッツ型のメンブレーンを用 いた。すべての供試体について, 100kPaのバックプ レッシャーを圧密過程から適用した。
2. 試料および実験方法
試料 比重 液性 限界〃
塑性 指数
強熱減 量値〃
圧縮 指数
P 1.82 430 237 56 1.79
CP 2.17 201 96 34 1.32
C 2.68 68 32 6 0.30
試験は,等方圧密膨張排水試験である。60, 120, 180, 240の4種類の圧力で等方圧密した後,各圧力 について,それぞれ3, 9, 15, 21の過圧密比で等 方的に吸水膨張させ,排水三軸圧縮試験を行う。圧 密の終了は有効応力で規定し,残留間隙水圧が圧密 圧力の3%以下という条件で圧密の終了とした。等 方膨張過程では,圧力を一挙に所定圧まで下げて行 い,吸水膨張による体積変化量は,供試体の上端部 から吸水された量をビューレット (最大容量10cmJ, 最小目盛0.05cmi)によって測定した。また, この吸 水膨張における時間は, 24時間とした。軸方向変位 は,ダイヤルケージ,軸圧はプルーピングリングで 測定した。せん断過程における軸変位速度は8.5×
10‑4mm/min(ひずみ速度で約0.001%/min)で行 い,体積変化量は,供試体上端部から排水された量 をビユーレット (最大容量50cm@,最小目盛0.1cm') によって求めた。
以上のことをふまえ,各試料の'dについて過圧密 比をパラメータとして,詳しく整理すれば,図2と なる。同図には,各試料について正規圧密状態の排 水せん断試験から得られたせん断抵抗角についても 併示している4)。図からわかるように,各試料の排水 条件下におけるせん断抵抗角のdは, ともに圧密膨張 過程における過圧密比の影響を受けず,ほぼ一定と なI),正規圧密土のそれと同じ値を示す,各試料の 有機物含有量(代替指標としての強熱減量値Li)を パラメータとして,過圧密比ごとに検討すればわか るように,せん断抵抗角は有機物含有量による影響 を受けて増大する傾向を示す。
さて,過圧密状態におけるせん断抵抗角に関する 研究は,せん断時の排水条件が異なるが,泥炭性有 機質土については,森ら6),粘土については, 中瀬 ら7),Henkel8)などによって報告されており,今回用 いた試料P,試料CPおよび試料Cの過圧密状態に よるせん断抵抗角の挙動とほぼ同様な傾向を示す。
偏差応力による体積ひずみEaは,非排水条件では 全応力(△ぴi") と発生間隙水圧(△")より,ダイレ
イタンシー相当量E として4),
ed"=3cs(△〃−△o;") ………(1) 排水条件では,ダイレイタンシ−量E として4)
E =E"−3c腕△ぴ加 ………(2) となる。ここで, とりは応力変化にともなう全体積ひ ずみ, 3cinは平均有効主応力の変化による土要素の 骨格構造の体積圧縮率であり,次式のようにして求 められる4)。
C lOg,o(Onf+△グポ)/グボ
3c'''=rr¥zヲ △。疵, ……(3)
ここに鉛は間隙比, Cは。〜log,。o"/関係の直線部の 勾配であって圧縮指数Cbまたは膨張指数Cbとよばれ ているものである。
等方圧密土を基礎とした式(1)および式(2)のダイレ 3. 実験結果および考察
図1は,等方圧密膨張によって過圧密状態にある 試料Pについての排水せん断破壊時の(α−os) /2 と (。i'+os')/2の関係を示したものである。図中に は,既報4)の正規圧密状態(OCR=1)における試 験結果も併示している。正規圧密状態の泥炭性有機 質土が, モール・クーロンの破壊規準に従うことは 他の研究者1) 3)および著者の研究報告4)5)によってす でに明らかであるが,図1から過圧密試料について もモール・クーロンの破壊規準が成立し, 多少ばら つきはあるものの,原点を通る一本の直線で表すこ とができる。また図には示していないが,他の試料 すなわち試料CPおよび試料Cについても,図1の それとほぼ同様な傾向を示すことが認められた。
60
50
⑩ の ④
(、 ⑩ 価
伽
(。)40
J 届
う U
30
20
OCR
、 瓢X》 4【X】 副X】
(、.+ ')/2(kPa)
図1 (a−o3)/2と(びi'+os')/2の関係 図2 のαとOCRの関係
秋田高専研究紀要第20号
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過圧密泥炭のせん断特性に関する実験的研究
0.4 tbct/dom' 0.6
0.2 0.8 1.0
0
、q幸
02 00
−0
堂心亀§
霊霊琴
−0.04 E
−0.
SampleP(CD)
鈎詫︺p4″〃″k壼釦卸皿抑R二CpOPOの①●
06
−008
10 I
−0
図3 eddとて"/ぴ魂の関係
0.4 てbci/o伽′ 0.6 0.8 1 0
0 0.2
−馴一一一−一 00000000 2468024600001111 −
’ ’
図4 E"と畦#/o";の関係
は,前述したように式(2)によって述められる。ここ で体積圧縮率3c加は式(3)で示され, この式の係数C としては,排水せん断過程における応力経路の状態 から考えて,圧縮指数Cbを用いた。そこで試料P, 試料CPおよび試料Cについて,過圧密後の排水せ ん断過程におけるダイレイタンシーEdaと正八面体 面上の応力比て。ct/ぴ耐との関係を示せば,図3〜11 となる。なお, これらの図は,過圧密比3, 9, 21 について示したものである。さて,図には示してい
0.2 0.4 oct/om; 0.6 0.8 1.(1
0
イタンシー基本式については,異方圧密非排水およ び排水条件下におけるそれに拡張して適用すること が可能であることを実証した5)。そこで式(2)のダイ レイタンシ−基本式を用い,過圧密排水条件下にお いてもその適用が可能かどうか検討を加え, さらに 同条件下におけるダイレイタンシー性状を調べるも のである。
せん断過程において,排水状態で作用応力を受け たとき,偏差応力成分によるダイレイタンシ一Eda
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一(1.10 16
18 20
図6 Eddとて。cf/ぴ"/の関係 図5 E血とて。c ん"/の関係
奎奎皇士焉壼
一SampleP(CD)
二OCR=21
‐ ◎Pp=60kPa
一① 120〃
① lHO〃
=● 240〃
−−トー−
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0.2 0.4 ocw/o"l O.6 0.8 10
0 0
三宝士二
SampleCP(CD)二二
OCR=21
.Pp=60kPa
① 120〃
① 180〃
● 240〃
−0 −0 00肥皿
26
−0
E
−0
︵U八U
−E− L挽刑首 ①鞍①①﹄
000−一 00
図7 E血とて"/ぴ流fの関係
て"/◎加′
図8 E血とr"t/嘘の関係
て。Cl/ぴ息 0.4
0.2 0.6
0 0.8
0.8
1
−0.04−0.02E 麻ハー①● 180〃40〃 ー $o ・50血0−E一
頚撫
ー
6800
■●00−一
q■■
●
−0 06
図9 eddとて"t/ の関係
図10 E"とで"t/呪の関係 ないが,既報4)により各試料の正規圧密状態におけ
るE血の挙動は,圧力比の増加にともなって,すべ て収縮(正)することが確認された。そこで各試料に ついて,過圧密比をパラメータとしてE血の挙動を 検討してみる。過圧密比3における試料P,試料CP および試料cのど の性状は,各試料とも先行圧密 圧力に関係なく,応力比の増加にともなってほぼ線 形的に膨張(負)し,ある応力比の領域を越えるとe は膨張から収縮に変化する傾向を示す。そしてこの 傾向は,有機物含有量が増大するほど顕著であるこ とが認められる。これは,過圧密比力:3程度では正 規圧密に近い状態,すなわち不安定な応力状態であ ることが一つの要因と考えられ, これに各試料の構 成材料の相違によって, さらに複雑な挙動を示した
ものと判断される。
次に各試料について過圧密比9以降のダイレイタ
ンシ一性状を検討してみる。これらの図で示される ように,各試料のe趣は, ともに先行圧密圧力に関係 なく,応力比の増加にともなって,ほぼ線形的に膨 張(負)し,破壊に近づくにつれて急激にその傾向が 大きくなる。
著者は,すでに等方圧密,異方圧密後の非排水お よび排水条件下におけるダイレイタンシ−を次式で 表示できることを示した4)5)。
ed=D(型哩二7旦) ……・・……….……(4)
ぴ疵
ここで, どaはダイレイタンシ−, てりはせん断応力rbCt がこの応力以下では,ダイレイタンシ−がほとんど 生じないという限界値, Dはダイレイタンシ一係数 である。
そこで,式(4)で示される過圧密排水条件下におけ るダイレイタンシ一係数の適用性について検討して みる。
ダイレイタンシ一係数Ddは,図3〜11の性状か らわかるように,ほぼ線形的な膨張部分(負)に式(4) を適用(fo=0)することによって,求めることが 可能であると考えられる。そこで各試料について,
同条件下から得られたダイレイタンシ一係数Dd (絶
r唾t/
0 0.2 0.4 0.6 0.8 .O
−0.02
−0.04
E錘
−0.06
−0.08
−0.10
図11 E血とて"/ の関係
秋田高専研究紀要第20号
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過圧密泥炭のせん断特性に関する実験的研究
60 0.12
0.10
0.08
IDdlO.06
50
ゆば 40
(。)
30
1 3 9 15 Zl
OCR
図12 DdとOCRの関係
20 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12
IDJ│
図13 αとDdの関係 対値表示)を過圧密比に対応して示せば,図12とな
る。この図には,正規圧密状態における各試料のダ イレイタンシー係数についても併示している4) 。ま た,同図の中で示されていないが,過圧密比1<
OCR<3までのダイレイタンシー係数,すなわちダ イレイタンシ−edaは,この過圧密比が移行する過程 で,収縮(+)から膨張(一)へ推移することが予測 される。このため,同図から示される各試料のダイ レイタンシー係数は, それぞれ過圧密比の範囲によ って異なり,過圧密比が3以上では,それによる影 響を受けず,ほぼ一定となることが認められる。
過圧密土のせん断特性を明らかにするために,せ ん断抵抗角とダイレイタンシ一係数とを直接対比し て示せば,図13となる。正規圧密4)および過圧密排 水条件下におけるせん断抵抗角は,前図で示される
ダイレイタンシー係数の挙動から,正規圧密4)なら びに過圧密比3以上では,それらのダイレイタンシ 一係数と密接に関係し,ダイレイタンシー係数の増 加にともなって大きくなることがわかる。また各試 料について,正規圧密および過圧密(OCR≧3)に
よるせん断抵抗角がほぼ等しいことは, これらのダ イレイタンシ一係数が一致することによる。このよ うに,過圧密土の排水せん断試験による強度定数は,
正規圧密土と同様4),せん断過程中におけるダイレ イタンシ一特性(OCR≧3)と深くかかわり合って いることが認められる。
2)過圧密状態においても,応力が作用した場合の 全体積ひずみは,等方応力成分と偏差応力成分の重 ね合わせとして表示され, その結果としてダイレイ
タンシ−が定量的に把握された。
3)各試料のダイレイタンシ一係数Ddは, ともに過 圧密比による影響を受げず(OCR≧3) ,一定とな ることが認められた。
4)正規圧密および過圧密(OCR≧3)によるせん 断抵抗角のαは,それらのダイレイタンシ一係数Dd
と密接に関係し,ダイレイタンシ一係数の増加にと もなって大きくなる傾向を示した。
参考文献
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Conf. 'Ibch. Memo. 71,PP.36〜54.
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7) 中瀬明男・小林正樹・勝野克(1969) :圧密お よび膨張による飽和粘土のせん断強度の変化,
4. 結 論
泥炭性有機質土のせん断特性におよぼす応力履歴 の影響について解析した結果の一端を示したもので ある。これらを要約すると次のようになる。
1)泥炭性有機質土,粘土およびその混合土のせん 断抵抗角のdは,過圧密比による影響を受けず,ほぼ 一定となった。
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︵UO①①②●
「港湾技術研究報告」, vol.8,No.4,PP.103 143.
8) Henkel,D.J. (1956) : 、Theeffectofovercons‑
olidationonthebohaviourofclaysduringshe‑
ar",Geotechniquevol.6,PP. 139〜150