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モニ ター商法 と抗 弁 の接続

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一一抗弁の接続の新たな限界について一一 都 筑 満 雄

大阪高裁平成 16年 4月 16日 判決 (消費者法ニユ ース 60号 37頁 ),神 戸地裁平成 16年 9月 21日 判決 (判例時報 1891号 115頁),岡 山地裁平 成 16年 12月 21日 判決 (最高裁判所 ホームページ),静 岡地裁浜松支部 平成 17年 7月 11日 判決 (判例時報 1915号 88頁 ),名 古屋地裁平成 17 年 10月 17日 判決 (最高裁判所ホ ームページ)

は じめ に

本稿 は株式会社 ダンシング (以下 Aと す る)の 行 なったモニ タ ー商法 に関す る一連の判決,す なわち大阪高判平成 16年 4月 16日 (消費者法 ニュース 60号 37頁 ),神 戸地判平成 16年 9月 21日 (判時 1891号 115 頁),岡 山地判平成 16年 12月 21日 (最高裁判所 ホ ームページ),静 岡地 浜松支判平成 17年 7月 11日 (判時 1915号 88頁 )お よび名古屋地判平 成 17年 10月 17日 (最高裁判所 ホームページ)の 総合判例研究である。

平成 9年 か ら平成 11年 にかけて展 開された Aの モニ タ ー商法は全国規

模で多数の被害者 を出 し,新 聞等 において も取 り上げ られ社会の耳 目を

引いた。本件一連の判決 はいず れ もこの Aの 商法 の被害者 であ る顧客

らを原告 とす るものである。いわゆる内職 。モニ ター商法は,不 況を背

景 に在宅で手軽 に副収入が得 られる といって誘引 し,仕 事 に必要である

か らとして高価 な商品を売 りつけ,近 年消費者 との間で多 くの トラブル

を生 じさせ て きたため,平 成 12年 には業務提供誘引販売取引 として特

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定商取引法お よび割賦販売法の規制の対象 になった取引である °

。 この 取引 においては,典 型的には仕事の提供が されずに期待 した収入が得 ら れず,ま た事業者が倒産 して収入が得 られず,結 局商品等の支払いの義 務 のみが残 るといった被害が生 じていた ② 。中で もモニ ター商法 は,近 年 において特 に多 くの消費者被害 を生 じさせて きた問題のある商法であ

り,本 件の他 にもこれまでに多 くの事件 を発生 させている °

。 ここでは, 同商法 を営む事業者が レポー トの提 出やチ ラシの配布 といった簡単 な業 務 を行 な うことで月々のモニ ター料 を支払 うとして顧客 を誘引 し,こ の 収入 で十分その代金 をまかな うことがで きるなどとして高額 な商品を購 入 させ,あ わせてこの商品の代金の支払いのために顧客 は信販会社 との 間で立替払契約 を締結す る。信販会社 は顧客 に代 わって商品の代金 を支 払い,そ の後顧客か ら同立替金 に手数料 を加 えた金員の分割払いを受け ることになるのである。 しか しこのモニター商法 は,モ ニ ター会員 にな る者が増 えれば増 えるほ どモニ ター料の支払が増大す る構造 になってお り,程 な く破綻 に至 る。そ して事業者の破産 によ り顧客 には信販会社 に 対す るほ とん ど未払いの立替金債務のみが残 ることになるのである。本 件 Aの 商法 は典型的なモニ ター商法であ り,本 件 において も Aは 破産 し,多 くの顧客が未払立替金債務 を抱 えることになった。 このモニ ター 商法が公序良俗 に反す ることは本件のみな らず公 にされた裁判例が一致 して認 める ところであるが,モ ニ ター商法 を構成す る売買契約 とモニ ター会員契約 (業務委託契約)と は別個の契約であ り,後 者が無効であっ て も商品の引渡 しがなされている以上前者 において抗弁 は生 じていない のではないか, また労せず してモニ ター料 を取得 し,契 約締結 について 落ち度のある顧客が割賦販売法 30条 の 4に 基づ く抗弁 の接続 を主張 し て信販会社 に対す る支払 を拒絶す るのは信義則 に反す るのではないか が,顧客が信販会社か らの支払 を拒絶す るにあたって問題 とされて きた。

本件各判決はこれ らの問題 について,モ ニター商法 を構成す る売買契約

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モニター商法と抗弁の接続 が無効であるとした上で,部 分的に しろ顧客が抗弁の接続 を主張 して信 販会社 に対する支払 を拒絶す ることを認めたのである。

ところで昭和 59年 の割賦販売法改正 により同法 30条 の 4に おいて明 文で認め られた抗弁 の接続 は,続 く平成 11年 の同法改正 によ りその適 用領域 を大幅に拡張 された。 これによりこれ まで抗弁の接続 をめ ぐる議 論の主戦場であった同条の適用領域外 の取引での抗弁の接続 の是非の問 題 はある程度の立法的解決 を見たわけであるが,こ れを受 けて抗弁の対 抗 を受けることになる与信者か ら今度 は顧客の落ち度等 を理由 として顧 客の抗弁の対抗が信義則に反するとの主張が裁判においてなされるよう

になり,こ の問題が抗弁の接続の新たな限界をめぐる問題 としてクロ ー ズアップされることになったのである。また多 くの場合抗弁の接続が問 題 となる事例において本件同様販売業者等は倒産 しているが,こ のこと は抗弁の対抗を受けて顧客か ら回収 しえなくなった与信者が販売業者等 から回収することも事実上不可能になったことを意味する。か くして抗 弁の接続は多 くの場合こうした販売業者等か らの回収不能のリスクを与 信者に転嫁することも合意 しているのであるが,顧 客に何 らかの落ち度 がある場合にはすべてのリスクを与信者に課さずに何 らかの方途でこの リスクを顧客 と与信者 との間で分担 させることができないかが問題 とさ れてきたのである。

ひるがえって本件事案をみるに,本 件においては与信者たる信販会社 が加盟店である Aが 悪質な商法を行 うことにより消費者である顧客 ら に損害を生 じさせないよう調査管理する義務,い わゆる加盟店調査管理 義務に違反 した一方で,顧 客 らの側においても本件 Aの 商法に取 り込 まれた点で落ち度が認められ,加 えて,信 販会社には顧客 との立替払契 約に基づいて顧客に代わって Aに 支払った立替金を顧客か ら回収でき ない場合 にはその分の損失が生 じる一方で,顧 客 らは Aの 商法に参加 することで事実上この立替金を原資として一定の利益を得てぃるという

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事情 も存在するように,本 件は抗弁の接続の限界事例にあたる ° 。本件 各判決は,単 一の取引を構成する一方の契約が公序良俗違反により無効 である場合の他方の契約の消長や加盟店調査管理義務の性質,さ らには 同義務の違反による信販会社の不法行為責任の成否についても興味深い 判断を含むものであるが,特 に上記のような特殊な本件事案のもとで, 顧客の抗弁の接続の主張の信義則違反如何の基準,お よび顧客の全額の 支払拒絶が認めがたい場合の抗弁の接続を通 じてのリスク配分のあ り方 という今後重要になるであろう抗弁の接続の新たな限界をめ ぐる問題に ついて,先 例の少ない中で貴重な判断を示 した点で重要であると考えら れる。

T 共 通 の事 案 の概 要

本件は Aか ら寝具を購入 し,当 該寝具のモニター会員になった Xら が,そ の代金の支払いにつ き立替払契約を締結 した相手方である Yら に対 し,上 記売買契約およびモニター会員契約が公序良俗に反 し無効で あ り,割 賦販売法 30条 の4に 基づ きAと Xら との間のこれら契約で生 じた事由を対抗 して,立 替金債務の不存在の確認等を求め, これに対 し Yら が Xら に対 し上記未払立替金の支払いを反訴 として請求 した事件 である。

Aは その破綻に至るまで全国に多数の会員を有 し,Aの 商法による被

害者は全国に数多 く存在 し,本 件事件については多 くの同様の訴訟が提

起されているが,本 件事件の裁判例のうち公干Jされたものおよび筆者が

参照 しえたものは以下の五件である。①大阪高判平成 16年 4月 16日

(消費者法ニュース 60号 37頁 ),②神戸地判平成 16年 9月 21日 (判時

1891号 115頁),③ 岡山地判平成 16年 12月 21日 (最高裁半1所ホーム

ページ),④ 静岡地浜松支判平成 17年 7月 11日 (判時 1915号 88頁),

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⑤名古屋地判平成 17年 10月 17日 (最高裁判所ホ ームページ)。これら すべてにおいて被告および反訴原告は同一であ り,事 案内容もほぼ共通 するので,そ の共通の事業の概要をここでまとめてお く。

Aは 寝具等の販売を業 とする株式会社であ り,平 成 9年 8月 ころから いわゆるモニター商法 と呼ばれる販売方法により寝具の販売を行なって いた。寝具の価格はシングルサイズで 36万 円 (仕入れ価格は5万 円程 度),ダ ブルサイズで 46万 円 (仕入れ価格は7万 円程度)と 高額であっ たが,顧 客 になった者は同時に Aと の間でモニター会員契約なる業務 委託契約を締結 し,モ ニター会員になることができた。このモニタ ー会 員制度の内容は以下のようなものである。モニタ ー会員になった者は, 毎月一回本件寝具の感想や意見 をレポー トに書いて Aに 提出すること

と,毎 月 1000枚程度のチラシを配布することと引 き換えに,Aか ら3 万 5千 円のモニター料を24ヶ月間にわたって総額 84万 円受け取ること ができる。 したがってモニター会員は,Aか らモニター料が確実に支払 われる場合,本 件寝具をただで取得できるうえにさらに上記寝具の購入 代金 とこれを上回るモニター料 との差額を得ることができる。

以上がモニター会員契約の内容であ り,モ ニター会員は業務の対価 と してモニター料を受け取ることになっていたのであるが, しか しなが ら 会員の業務の実態は以下のようなものであった。すなわち, まずチラシ の配布については,Aが それを確認することがなかったため,会 員の中 にはチラシの配布をしない者 もあ り,結 果最終的にチラシの配布は廃止 されてしまった。次にレポー トの提出についても,そ の内容は簡単なア ンケー トで しかなく, これを提出しない者にもモニター料は支払われて いた。 したがって実際にはモニター業務はモニター料に見合 う経済的価 値 を生ずるものではなく,紹介業務 もモニター会員の増加を招 くのみで, 結局 Aの 負担になるモニター料 を増大 させ るもので しかなかったので ある。なおこのモニタニ料の原資は本件寝具を購入 した顧客から入る売

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買代金であ り,そ して顧客が後述のように信販会社 との間で立替払契約 を締結 している以上,結局信販会社が Aに 支払 う立替金がこのモニター 料の原資になっていたのである。

Xら は Aの 販売員か ら勧誘を受け,Aか ら本件寝具を購入 し,同 時に

Aと の間で上記モニター会員契約を締結 し,モ ニター会員になった者で

あ り,Aの 破綻に至るまで既に上記モニター会員制度に基づ き一定の金

員を Aか ら受け取っていた。 ところで Xら が Aの 販売員の勧誘を受け

て Aと の間で上記各契約を締結する過程には以下のような事情が見 ら

れた。すなわち販売員 らは Xら を勧誘する際に,本 件寝具の効用に加

えて,高 額な代金についてはモニター会員制度により代金を上回るモニ

ター料 を受け取ることがで き,モ ニター料の振込 日が後述の Yら に対

するクレジッ ト代金の支払 日よりも前 になるように設定 されるため X

らは一時的にせ よ金員を出捐する必要はないなどと説明し, これを受け

て Xら は上記各契約 を締結 していたのである。締結に際 しての Xら の

動機は様々であったが,Xら はいずれもモニター料がなければ寝具の代

金は支払えない,高 す ぎると感 じていたようであ り,実 際 Aの 顧客に

なった者の中で上記会員制度を利用 しなかった者は皆無であった。また

Aと Xら との間の契約書は,こ れ ら会員 になる合意 と商品を購入する

合意 とが一枚の書類に記載される形式であ り, ここには単に寝具を購入

するだけの選択をする欄は存在 しなかったのである。 ところで販売員か

らモニター会員制度について説明を受けた Xら を含む顧客の多 くは,

これでは Aに 何のメリットもないことか らその内容に疑問や不安を感

じていたが,販 売員 らは,会 員を通 じてロコミで宣伝する方が広告費用

が安 く宣伝効果 もある,モ ニター会員の人数を制限しているなど虚偽の

説明をし,そ のため顧客になった者は,そ の説明に半信半疑なが らも本

件寝具をただで取得できるうえにそれをはるかに超えるモニター料を取

得できることに目を奪われ,Aの モニター会員になったのである。

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また X ら 顧客 は,本 件寝 具 の売買代金 の支払 い に関 し,Yら 信販会社 との 間でそれぞれ立替払契約 を締結 していた。 ここで A,Xら , Y ら の 三者間の取引は以下の ように進行 してい くことになる。す なわち, まず あ らか じめ Aが Yら それぞれ との間で加盟店契約 を締結 し,次 に Aが Xら と上記各契約 を締結す る際 に同時 に Aが Yら を代行 して立替払契 約締結手続 きを行 い, これによって Xら とYら との間に立替払契約が 成立する。Yら が Aに 対 して本件寝具の売買代金の立替払いをした後, Xら が Yら に対 して この立替金 に手数料 を加 えた金員 を分割払 いす る のである。Xら は Aの 破綻 に至 るまで Yら に既 にこの金員の一部 を支 払 っていた。 なお通常信販会社 との間で立替払契約 を結ぶ際には,信 販 会社 は購入者 に対 し契約意思の確認のための電話 をかけるが,本 件 にお いて Aの 販売員 はモニ ター会員 になった者 に対 し,そ の際 にモニター 会員であることやモニ ター会員制度 を隠す よう指導 し,Xら モニ ター会 員はこれを忠実 に守 っていた事情が伺 われる。

ところで既述の ように Aと Yら とは加盟店契約関係 にあったのであ るが,Aの 破綻 に至 るまでの両者の間の取引経過 は以下の ようなもので あった。Yら は Aと それぞれ加盟店契約 を締結 していたが,Aの モニ ター会員制度採用以降 Yら の取扱件数が急増 した。 これ を不審 に思 っ た Yら は Aの 営業所 を数回訪れ,Aか ら Aの 商法 についての説明を受 けたが,そ の際にもまた加盟店契約締結時 にもモニター会員制度に関す る Aの 説明は,モ ニ ター会員数が限定 されているな ど:虚 偽の内容 を含 む ものであった。 しか しYら は Aの 説明 を受 けて特 に裏づ け調査等 を 行 なうことはな く,ま た Aか ら資料等の提 出を受けることもなかった。

その後 Aの 商法 に関す る顧客か らの問い合 わせ を受 けて,Yら は Aの 商法の実態 をある程度知 ることになったが,Aと の加盟店契約関係 を解 消す るのはそれか ら数 力月後のことであ り,そ の間 もモニ ター会員数は 増 え続 けていったのである。

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Aが 上述の取引形態 をとるようになってか ら,特 にモニタ ー会員の数 が急激 に増加 し,程 な くモニター料の支払いが大 きな負担 になるように なってい った。Aは 当初 モニ ター会 員 の数 を 1000名 程 度 としていた が,後 に 2000名程度に変更 し,さ らにこれを超過 して も特 に会員数 を限 定す る措置 を講ず るこ とはなかった。その結果 Aは モニ タ ー料等の支 払いを継続 したことによ り資金不足 に陥 り,平 成 11年 6月 30日 には, 約 92億 円の債務 について支払不能の状態 にある として,破 産宣告決定

を受 けたのである。 この時点で Aの モニ ター会員数は全国で 1万 4272 人にのぼっていた。モニター会員の中には既 に信販会社 に対す る債務 を 上回 るモニ ター料 を取得 していた者 もいたが,多 くは Xら の ようにこ れ を下 回るモニ ター料 の支払 しか受 け られず,結 局その分の Yら に対 す る債務が残 されることになったのである。

この Aの 破産 によりこれ以降モニ ター料の支払 を受 け られな くな り, 他方 Yら に対 して は依 然未 払立替金 の支 払義務 を負 い続 ける こ とに

なった Xら が,同 債務の不存在,同 債務の取立禁止お よび同債務の支払 を拒絶で きる地位 の確認 を求めて訴 えを提起 し,こ れに対 し既 に Aに 対 して立替金 を支払 った もののい まだ Xら か ら立替金 の支払 をほ とん

ど受けていない Yら が Xら に対 して,そ の支払 を求めて反訴 を提起 し たのが本件一連の訴訟である。

その主 な争点 は,(1)Xら の Aに 対す る抗弁事 由の存否,(五)売買契約 とモニ ター会員契約 との関係,liiil Xら の割賦販売法 30条 の 4に 基づ く 抗弁の接続の主張の信義則違反如何,で ある。

各 争点 につ いての Xら お よび Yら の主張 は大要以下 の とお りで あ

る。Xら は以下の ように主張す る。 まず本件モニタ ー商法は,Aに とっ

てはモニター料の支払 による損失が増 える 一方であ り,破 綻必至である

ことか ら,公 序良俗 に反 し無効である。次 に本件寝具の購入契約 と本件

モニ ター会員契約 は契約当事者の意思の上で もまた客観的な契約構造の

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上 で も不可分一体 の関係 にあ る一つ の無名 契約 であ り,モ ニ ター会員契 約 部分 の無効 は売買 契約 部分 を含 む全体 に及 び,   また仮 に一つの契約 と 評価 す る こ とはで きな くて も両 契約 は密接 に連結 しモ ニ ター会 員 契約 の 無効 は売買契約 にも及ぶ ことか ら,い ずれにせ よ Aと Xら との間の本 件売買契約 は無効 である。そ して Xら と Yら との間の本件立替払契約 は割賦販売法 30条 の 4の 割賦購入あっせんにあた り,ま た Aと Xら と の間で生 じた この抗弁 は同条の抗弁 にあたるため,Xら は Yら に対 し て立替金の支払 を拒絶で きると主張 したのである。

これに対 しYら は以下の ように主張す る。 まず本件 Aの モニ ター商 法 につ いて,そ の破綻 はモニ ター会員数 を増 や しす ぎた Aの ず さんな 経営 に原因があ り,そ れ 自体必ず しも破綻必至の ものではないため,公 序良俗 に反するもの とはいえないき また本件売買契約 とモニ ター会員契 約 とはそれぞれ別個独立の契約であ り,仮 に後者が無効であるとして も 前者 にその影響が及ぶ ことはない。次に Xら が割賦販売法 30条 の 4に 基づ く抗弁 の接続 を主張す ることについて,Xら が Aか らモニ ター料

を得 たのは明 らかな不労取得 であ り,ま た Xら は Yら か らの立替払契 約締結 に際 しての確認の電話 にも勧誘者の指示 どお りに答 えるな ど単純 な保護 されるべ き消費者 とはいえず,仮 に Xら が支払 を免れる とXら は Yら の立替金 を原資 とす る Aか ら受領 したモニ ター料 とYら に対す る既払額 との差額お よび本件寝具 を利得す ることになって不当であるか ら,Xら が抗弁の接続 を主張す ることは信義則 に反す ると主張 したので ある。 この Yら の主張 に対 しては,本 件 の ようなク レジ ッ ト契約 シス テムは販売業者が無責任 な販売活動 に走 りやすい構造的危険性 を有 して お り,このことか ら信販会社 は加盟店契約締結時には販売業者 を調査 し, 同契約後 も加盟店 を調査 し,管 理する責任 を負 っているが,本 件 におい て Yら は,Aの 商法の違法性 に気づ きなが らこれを放置 し,ま た適正 な 調査 をしていれば容易 にこれを知 りえたのにもかかわ らず これを怠 り,

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この責任 を果 た さなか ったの で あ るか ら,Yら に Xら の信 義則 違 反 を い う資格 はない との反論が X ら か らなされている。

二  各 争 点 に つ い て の 各 裁 判 所 の 判 断

以上が本件一連の訴訟 に共通す る事業の概要 と各争点についての当事 者 の主 な主張であった。上記各判決は上記事案の もと各争点 について以 下の ような判断をしている。

第一 に,争 点(i)Xら の Aに 対する抗弁事 由の存否 について,各 判決 は Xら の主張 を容れ,本 件売買契約 と業務委託契約である本件モニ ター 会員契約か らなる Aの モニ ター商法が公序良俗 に反す ることを認めて いるbこ れによれば,Aの モニ ター商法 においては Aが Yら か ら立替 金の支払 を受けた として もモニ ター会員 らにこれを大幅に上回る金員 を 支払 わねばな らず,ま たモニ ター会員 にならず に本件寝具のみを購入す る者 は本件寝具の価格 か らも考 えがた く,購 入者が増 えるほ ど Aの 支 払 は増 える一方であ り,加 えてモニ ター料 の対価 であるはずの Xら に よる業務 はなん らの経済的価値 を生ず るものではなかったか ら,同 商法 は破綻必至 な反社会的な取引である。 また Aの 販売員が顧客の勧誘 に 際 して同商法 の実態 を隠 し,組 織 的かつ巧妙 な勧誘方法で もって Xら

を引 き込んだ点で詐欺的商法 といえる。 したがって同商法は公序良俗 に 反す る違法 な取引であるとす るのである。

第二に,争 点(五 )本件売買契約 と本件モニター会員契約 との関係 につい

て,Yら は両契約が二個の独立 した契約であ り,モ ニ ター会員契約で生

じた事由 (公序良俗違反による無効)は 売買契約 には及ばない旨主張す

るが,こ の点について も各判決は Xら の主張 を容れて,本 件売買契約が

無効であることを認める。 これによれば,Xら は本件寝具の購入のみ を

意図 していたのではな く,モ ニ ター会員契約 も締結することで売買代金

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を上 回 るモニ ター料 を取得 す るこ とがで きる と考 えて, 売 買 契約 ととも にモ ニ ター会員契約 を締結 したのであ り, こ の点で両契約が締結 され ま た履 行 され て初 めて X ら の契約 の 目的 を達 成 す る こ とが で きた もの と い うことがで き,こ の ことは Aと Xら の共通認識であった もの と認め られる。実際 Aの 顧客 中売買契約のみ を締結 した者 は皆無であ り,ま た Aの 契約書の体裁 自体が売買契約 だけが締結 されることを想定 して いない ものであった。そ して以上か ら,本 件売買契約 とモニター会員契 約 は,法 形式上 は別個の契約であるが,密 接不可分 に結びついたない し は不可分一体の契約であ り,両 契約 を全体 として観察 してそ こに無効事 由が存在すれば売買契約 にもこれが存 し,各 契約 は全部無効 になるとす る (①③④⑤判決)。

なお この うち②判決のみは法律構成 について他の判決に比 してやや異 なる説示 を行 なっている。す なわち,「本件布 団売買契約 とモニ ター会 員契約 とは別個 の契約であるが,両 契約 は密接不可分 に結びついた契約 であ り,本 件モニター会員契約の公序良俗違反 による無効,詐 欺取消, 錯誤無効,債 務不履行解 除,ク ー リングオフ解除を理 由に,本 件布団売 買契約の無効,取 消,解 除を主張す ることがで きると解す るのが相当で ある」 とし,そ の上で この判断が,同 一当事者 間で リゾー トマ ンシ ョン の売買契約 とスポーツクラブの会員契約が締結 され,後 者の債務不履行 を理 由に前者 を解 除す ることがで きることを認めた最三判平成 8年 11 月 12日 民集 50巻 10号 2673頁 か らも支持 されるとして,同 判決の以下 の判 旨を引用す る。 これによれば:「同一当事者 間の債権債務関係が,そ の形式 は甲契約及び乙契約 といった二個以上の契約か らなる場合であっ て も,そ れ らの 目的 とするところが相互 に密接 に関連付 け られていて, 社会通念上,甲 契約又 は乙契約のいずれかが履行 されるだけでは,契 約

を締結 した 目的が全体 としては達成 されない と認め られる場合 には,甲 契約上の債務の不履行 を理由に,そ の債権者 は,法 定解除権 の行使 とし

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て,甲 契約 と合わせて乙契約 も解除す ることがで きる。……」 とされて いる。

以上の ように各判決 は結論 として Aと Xら との間の売買契約が無効 であ るこ とを一致 して認 めるわけであるか ら,次 に問題 になるのは X

らが割賦販売法 30条 の 4に 基づいてこの売買契約で生 じた抗弁 を立替 払契約の相手方である Yら に対抗 し,立 替金の支払 を拒絶で きるかで ある。各判決はいずれ も,本件立替払契約が割賦購入あっせ んにあた り, また本件寝具が指定商品にあたることか ら,本 件 に割賦販売法 30条 の 4の 適用があることを認める。その上で本件 においてはその事案の特殊 性 か ら,さ らに争点liiil Xら の同条 による抗弁 の接続 の主張の信義則違 反如何が問題 となる。各判決の態度が分かれ,本 件事件の主要な争̀点に

なっているのはこの点である。

まず Xら の主張が信義則に反 しないとの判断をした①判決の説 くと

ころを要約 ・引用 しよう。これによれば,「購入者が割賦購入あっせん業

者に対 して抗弁を対抗することが信義に反すると認められる特段の事情

がある場合には,抗 弁対抗が許されないことは信義則の法理に照 らし当

然のことである」。 ところで,私 法上の重大な特則 として割賦販売法 30

条の4の 抗弁の接続の規定が設けられたのは,「①割賦購入あっせん業

者 と販売業者 との間に購入者への商品販売に関して密接な関係が継続的

に存在 していること ② このような密接な関係が存在するため,購 入者

はいわゆる自社割賦 と同様に,対 抗事由が存する場合には支払請求を拒

みうることを期待 していること ③割賦購入あっせん業者は,継 続的な

取引関係を通 じて販売業者を監督することができ,損 失を分散転嫁する

能力 を有 していること ④ これに対 して,購 入者は,購 入の際に一時的に

販売業者 と接するにす ぎず,ま た,契 約に習熟 していないし,損 失負担

能力が低いなど,割 賦購入あっせん業者 と比較 して格段の能力差がある

ことなどの諸事情にかんがみ,消 費者の利益 を保護するという社会的要

(13)

請 (法一条の 目的)に 応 えるために必要不可欠な枠組みであるとされた か らである」。 この規定の趣 旨お よび 目的に照 らす と,本 件事実関係 の 下 において抗弁の接続 を主張す ることが信義 に反す るとして制限される 場合 とは,本 件立替払契約締結 に際 し,Xら に何 らかの過失や不注意が あることを指す のではな く,Yら において Aの モニ ター商法 につ き加 盟店 に対す る調査管理 の義務 を尽 くしたか どうか を も考慮 に入 れた上 で,「購入者 (消費者)で ある Xら において,販 売店である Aの 本件モ ニ ター商法が公序良俗 に反するものであることを知 り,か つ,ク レジッ ト契約 の不正利用 に よって信販会社 に損害 を及 ぼす ことを認識 しなが ら,自 ら積極的にこれに加担 した」 というような背信的事情がある場合 をいうものと解するのが相当である。そしてまず Xら について,「Xら は,消 費者の軽率さ (落ち度)や 経済的弱み等を利用 した A(販 売店) の組織的でかつ巧みな勧誘によって,本 件モニター商法に引き込まれた ものであるから,Xら に上記各契約に際 して何 らかの落ち度があったと しても,公 平の理念にかんがみ,そ の落ち度をもって信義則に反するも のであるということはできない」 とし,ま たモニター商法の実態につい ては Yら において加盟店調査管理義務 を尽 くすことによりこれを把握 すべ きであ り,Xら に立替払契約上の義務 としてこれを告知する義務が あったわけではない とする。なお Xら の本件モニター料の取得につい ては,「本件モニター契約の内容は,手 軽であって,そ のモニタ ー料も, 顧客 (消費者)で ある Xら にとって,実 入 りの良いものであることは否 定できないが,本 件モニター料の取得をもって不労取得であると断定す ることはで きない」 としている。その上で Yら の加盟店調査管理義務 について,「Yら が加盟店の調査,管 理の義務を尽 くしたかどうかは,法 30条 の4の 規定に基づ くXら の抗弁対抗の主張が信義に反するもので あるかどうかを判断するについて,一 つの重要な考慮要素」であ り,「こ のことは,① 信販会社は,割 賦販売システムをめ ぐる消費者 トラブルの

(155)

(14)

未然防止は又は拡大防止を図るため,… …加盟店が行なう商品等の販売 又は役務提供の方法を具体的に把握 し,消 費者に対する電話意思確認に おいて……販売方法等を慎重に把握すべ きものとされていること ②信 販会社が継続的に提供するクレジットシステムにより悪質販売業者の不 適正な販売行為が助長 されている関係があること ③ こうした信販のシ ステムがはらむ構造的な危険 (病理現象)に ついては,シ ステムの開設 者である信販会社が信販のシステムが悪用 されないよう加盟店の調査 ・ 監督義務を徹底することにより対処することが期待 されていることなど

に照 らせば,当 然の事理であるといわなければならない」。そこで Yら が加盟店に対する調査,管 理の義務をつ くしたかを検討するに,Yら は モニター会員およびビジネス会員の存在を Aの 説明から知 り,Aと の 取引高が異常な伸びを示 していたにもかかわらず,こ れに対 し特段の調 査等を行なわず,Aと の加盟店契約関係 を継続 したのであ り,Yら は A の本件モニター商法の実態を知っていたか,知 らなかったとしても加盟 店の調査,管 理の義務を尽 くしていればその実態を容易に知 りえたはず であるとする。そ して結局本判決は加盟店に対する調査,管 理の義務を 尽 くさなかった Yら が Xら の抗弁の接続の主張が信義則違反である旨 主張するのは道理に反するとして,Xら の同主張が信義則に反 しないと するのである。

これに対 し,他 の四判決は Xら が未払立替金の支払を全額拒絶する ことまでは認めず,Yら が Xら に対 してその一部分の支払を請求 しう ることを認める。

このうち③④⑤判決は,と もに結論として,Xら は Yら の未払立替金 の支払請求のすべてを拒絶することは信義則に照 らして許されないが, このうち本件寝具の取得価額 (鑑定によリシングルサイズはおよそ 5〜

6万 円程度,ダ ブルサイズはおよそ 7〜 8万 円程度 とされる)に Aか ら

取得 したモニター料 を合計 した額か ら既に Xら が Yら に支払った立替

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金 額 を控 除 した額 を超 え る額 に 限 って これ を拒 絶 す る こ とが で きる とす る。

まず③判決は,① 判決と同様に消費者が抗弁を対抗することが信義に 反すると認められる特段の事情があるときは抗弁の接続が許されないと した上で,本 件におけるこの特段の事情の有無について,Aの 販売員の 話に疑問や不審を感 じなが ら,そ の巧みな説明を受け,モ ニター料に目 を奪われて本件各契約 を締結 した Xら に不注意はあるものの,特 段の 事情を認めるに足 りる故意または重過失があったとまではいえず,反 対 に Yら に加盟店調査管理義務の違反があったことを①半1決同様に認め, ただ Xら が本件寝具の取得価額およびモニター料等 を労せず取得 して いるとして,こ の限度で Aの 本件モニター商法に伴 う危険を Xら は負 担すべ きであるとする。

次に⑤判決 も同様に,Xら に強い非難に値する不注意がな く,反 対に Yら に加盟店調査管理義務違反があることを認めつつ,Xら の上記取得 について,本 件モニター商法の破綻の一因となり,そ れゆえ本件売買契 約が公序良俗違反 とされるゆえに,Xら がこれを保持する結果 となる主 張をすることは信義則に反するとする。本判決は以上の説示に続けて以 下のような理由付けも述べている。すなわち,「確かに Xら が Aか ら返 還請求を受けた場合 これに応 じなければならない立場にあるならば,X

らに抗弁権の接続を全面的に許すことも考えられなくはないが,本 件に おいては,Aは すでに破産 してお り,同 請求がなされることは考えられ ない上,た とえ同請求があったとしてもXら は不法原因給付 としてこ れを拒むことができると考えられることによると,全 面的に抗弁の接続 を認めることは相当でない」 と。

また④判決は,顧 客が信販会社に抗弁を対抗することが信義則に反す る場合 とは,顧 客が加盟店の公序良俗に反する取引に積極的に関与 して 巨額の利益を得ているとか,信 販会社に損害を与える目的で加盟店と共

(157)

(16)

謀 して取 引 に参 加 した な ど顧 客 が加 害者 的 な立場 にあ る,も し くは信 販 制 度 を悪用 す る意 図 を有 していた ときに限 るべ きで あ る と して,明 確 に

①判決が示 した解釈指針 を採用 した うえで,Xら にこの ような事情がな い ことに加 えて,Yら の加盟店調査管理義務違反の事実 を総合考慮する と,本 件 では Xら の抗弁の対抗 が信義則 に反す る とす るほ どの背信 的 な事情 は認 め られ ない とす る。その うえで一定の落 ち度 はある Xら が 全額の支払拒絶 を して本件寝具お よび Yら の立替金 を原資 とす るモニ ター料 を Yら の損失 において利得す ることは信義則上認め られない と す る。

ところで,上 記各判決の結論 は結局 Xら 顧客 に本件寝具お よびモニ

ター料 に相 当する価額 を既払金 を除いて保持 させ ないことにあるわけで

あるが,仮 にすでに既払金が上記価額 を上 回っていた場合, この結論 を

維持す ることは困難 になる。 この点について,上 記各判決中④判決のみ

は,Yら の加盟店調査管理義務違反が立替払契約上の善管注意義務違反

を構成 し,Yら は Xら に対 して債務不履行 または不法行為 に基づ く既

払金分 の損害賠償責任 を負 うとい う原告 Xら の主張 を受 けて,以 下の

ような判断 をな している。す なわち,信 販会社 の加盟店調査管理義務 は

行政指導上信販会社 に求め られた要請に とどま り,立 替払契約 を締結 し

た個 々の消費者 との関係での個別具体的な義務 とはいえず,同 義務違反

は債務不履行責任 としての義務違反や不法行為責任 としての義務違反 を

構成するものではないが,同 義務違反につ き重大 な落ち度があった場合

には,信 販会社が行 なっている立替払契約 によ り悪質な販売業者の不適

正 な販売行為 を助長す る結果 に結びついて しまい, しか もそれが個 々の

消費者の被害によって信販会社が経済的な利益 を得 るといった結果 とな

ることを考 えると,こ の ような場合 には信販会社 は個 々の消費者 に対す

る関係 において も一定の限度で不法行為責任 を負 うとい うべ きであ り,

本件 では Yら に重大 な落 ち度が あった こ とは明 らかであ るか ら,Yら

(17)

は X ら に対 し X ら が損 害 を被 った 限度, つ ま り既 払金 が上記金額 を上 回っている額の限度で不法行為責任 を負 うべ きであるとする。

以上に対 し,② 半J決は Xら に Yら に対する未払立替金全額の支払の 拒絶 を認めない点では③④⑤半J決と同様であるが,Xら とYら の実質 的損失の負担割合 を双方の事情を勘案 して定め,こ れを超える金額につ いてのみ抗弁を対抗することができるという特異な判断を行なっている 点でこれ らと異なる。同判決はまず Xら の諸事情 として,も しXら に 立替金の支払義務がまった くないとするとXら は労せず してモニタ ー 料 と本件寝具を取得することになることや,Aの モニター商法に引っか かったことについては Xら にも落ち度があったこと,Xら が販売員の 指導のもとYら に対 してモニター商法の実態を隠 したため,Yら が早 期 に加盟店契約 を解消することがで きなかったことを指摘する。次に Yら の事情 として,他 の四判決同様に Yら が加盟店調査管理義務を負っ ていたことを認めたうえで,Yら それぞれの同義務の履行状況を詳細に 検討 し,Yら にもそれぞれ同義務について落ち度が,ま た加盟店契約期 間中 Yら が Aの モニター商法の実態を知った時点以降は重大な落ち度 があったことを認める。そして,本 件で問題 となっているのは,Aの モ ニター商法による損害を消費者であるXら と信販会社であるYら のど ちらが負担すべ きであるのか,そ れとも双方が一定割合で負担 しあうか であ り,仮 にYら が全 く未払立替金の支払いを受けられないとすると, Xら には Aの モニター商法に引っかかった落ち度があ り,結 果的に A のモニター商法に協力 しているのに,労 せず してモニター料 と本件寝具 を取得することがで きることにな り,他 方 Yら の立替金請求がすべて 認容 されると,Yら は加盟店調査管理義務に落ち度があるのに手数料収 入をあげることができ,い ずれにしろその結論が健全な通常人の社会常 識に著 しく反することになるとする。そこで Xら とYら が Aの 商法に より被った実質的な損失をYら が Aに 対 して支払った立替金からXら

( 1 5 9 )

(18)

が Aか ら得 たモニ ター手数料 と本件寝具の価額 (シングルお よそ 5万 円,ダ ブルお よそ 7万 円 と認定)の 合計額 を控 除 した残額であるとした 上で,Xら とYら の上記諸事情 を比較考量 して,こ の実質的損失額の負 担割合 を,Yら の加盟店調査管理義務 に落ち度があった ときの立替払契 約の分 については Xら 一 に対 して Yら 一,Yら の同義務 に重大 な落 ち 度があった ときの分 については Xら 一 に対 しYら 二 とし,結 局 Xら は 上記負担割合 を超 える金額 については,割 賦販売法 30条 の 4に 基づ き 売買契約の無効 を対抗 して,Yら の未払立替金の支払請求 を拒 むことが で きる としたのである。

三  検 討

1 モ ニター商法の公序良俗違反如何 および売買契約 とモニター会員 契約 との関係 について

(1)以 下個別の争点について検討す る。 まず争点の(i)本 件の ようなモニ ター商法が公序良俗 に反するかについて,本 件各判決は,同 取引が破綻 必至 で多数 の顧客 に損失 を被 らせ るに至 る反社会 的で違法 な取 ヲ│であ り,ま た事業者が この事実 を隠 し巧妙 に顧客 を引 き込んでいる点で同商 法は詐欺的な取引であるとして,こ れを肯定 している ⑤

本件以外で同様のモニター商法の破綻 によ り多数の顧客が被害 を被 っ

た事件 については,東 京地判平成 14年 7月 24日 (判夕 1139号 171頁)

や山口地判平成 15年 3月 31日 (最高裁判所ホームページ)な どい くつ

かの判決が公 にされているが,そ のいずれ もが同取引が公序良俗 に反す

ることを認めている。例 えば超音波美容器等の本件 同様のモニ ター商法

について,前 者の東京地判平成 14年 7月 24日 は,同 商法が破綻必至で

あることやマルチ商法的性格 も有す ること,勧 誘方法が詐欺的であるこ

と等 を指摘 して,これ を公序良俗 に反す る違法な取引であるとしている。

(19)

(2)次 に争点の(五 )売買契約 とモニ ター会員契約 との関係 について,前 記 の ように本件商法が公序良俗 に反す る性格 の ものであるとして も,同 商 法 を構成する売買契約 とモニ タ ー会員契約が別個独立の契約であ り,同 商法 の公序良俗違反性 は後者のモニ ター会員契約 にのみ存 し,単 なる商 品の売買の合意に過 ぎない前者 の売買契約 自体 にはなん らの瑕疵 も存せ ず,同 契約 は無効ではない, したが って顧客 は信販会社 に対 し売買契約 上の抗弁 を対抗することがで きないのではないか との疑義が生ずる。実 際モニ ター商法 に関す る裁判例 において,訴 訟の相手方である信販会社 や事業者 はいずれ もその旨の主張 を展 開 している。

ところで本件事件後特定商取引法お よび割賦販売法の改正がなされ, これによ りこの問題が解決 を見た との指摘がなされている。そ こで本件 各判決の解説 には直接関係 しないが この改正 について 一言 してお くこと にす る。同改正法は,相 次 ぐ内職 。モニター商法 に関す る トラブルの発 生 を受けて,平 成 12年 11月 10日 に成立 し,平 成 13年 6月 1日 か ら施 行 されるに至 っている ⑥

。 これは,改 正前 においては,旧 訪問販売法第 二章 (訪間販売,電 話勧誘販売)に ついて 「営業のため もしくは営業 と して」行 われた行為 を適用除外 としていたため同商法の被害者 に同法の 適用が困難であった, また同商法 による商品の購入が内職 1モ ニ ター等 の営業のために行 なわれると考 えられることか ら形式的には購入者のた めに商行為 になるものにあた り割賦販売法の規定が適用 されない恐れが あったため との ことである °

。同改正 によ り具体的には,特 定商取引法

に業務提供誘引販売取引に関す る定義規定や禁止行為,広 告規制,ク ー

リングオフ等 に関する規定が設け られ,ま た割賦販売法 において も業務

提供誘引販売取引 に同法の規定が適用 されることが明 らかにされたので

ある (例えば 30条 の 4)。 とはいえこの改正 によって も上記問題の解決

が明文 をもってなされたわけではない。抗弁の接続 との関係で も書J賦販

売法 30条 の 4第 4項 第 2号 に業務提供誘引販売取引が同条の適用が除

(161)

(20)

外 される商行為 とはならない との規定が追加 されただけである。 しか し なが ら同改正 について言及す る論者 の中には,改 正特定商取引法が 内 職 。モニ ター商法の業務委託契約 と売買契約 とを不可分一体の業務提供 誘引販売取引 として扱 い規制 していることや,改 正割賦販売法 30条 の 4 も これ らを一体視 していること等か ら,こ の改正 によ り両契約が密接 不可分である以上,業 務委託契約 について生 じた事 由を売買契約上の抗 弁 とす ることが認め られた と評価す る者 もある °

。 これに対 し立法担 当 者 は本改正 によって業務委託契約 に生 じた事由を即売買契約上の事由 と して対抗す ることがで きるようになった とは考 えていない ようであ る°。これによれば,業 務委託契約に事由が生 じている場合であっても あ くまで売買契約上事由が生 じていることが必要 とされ,た だ両契約の 一体性,密 接不可分性が認められれば,前 掲の最三判平成 8年 11月 12 日などを媒介に,売 買契約上事由が生 じたことを認めることができる場 合 もあるとされる。ただこの見解によったとしても,本 改正を経た両法 が業務提供誘引販売取引を一体の取引として扱っていることは,少 なく

とも同取引を構成する両契約が密接不可分の関係にあることを示す証左 となり,具 体の取引が同取引であると認められればこれを構成する各契 約がこうした関係にあることが認められやす くなると考えられないか。

したがって本改正が上記問題になんらの影響 も与えなかったとはいえな いであろう。

とはいえ本件は改正前の事案であ り,い ずれにしても上記改正法の適 用はない。この点について本件①判決の原審判決である神戸地姫路支判 平成 14年 3月 29日 (判例集未登載)° の

は,モ ニター会員契約が公序良俗 に反 し無効であるとしなが ら,本 件売買契約の適正な販売価格を越える 部分のみが無効であるとしたが,本 件各判決は Xら の主張 どお リー致 して本件売買契約の全体が無効であることを認めている。このうち①③

④⑤判決は,Xら とAは ともに売買契約 と合わせてモニター会員契約

(21)

が締結 され また履行 され る こ とで契約 を締結 した 目的 を達成す る こ とが で きる と認識 してお り,ま た実 際 に売買契約 のみ を締 結 した者 はほ とん どお らず,契 約書面の体裁 も売買契約のみが締結 されることを予定 して いないことか ら,両 契約 は法形式上別個の契約であって も密接不可分 に 結 びつ き,両 契約 を全体 として観察 してそ こに無効事 由があれば売買契 約 にもこれが存 し,各 契約 は全部無効 になる等 とす るのである m)。

この点については,売 買契約 と組み合 わされた連鎖式金銭配当契約 を 法律 で禁止 された無限連鎖講の実体 を備 え公序良俗 に反 し無効である と しなが ら,売 買契約 を有効 であるとした名古屋高金沢支半J昭和 62年 8 月 31日 (判時 1254号 76頁 )や名古屋高金沢支判昭和 62年 8月 31日 (判 時 1279号 22頁 )の ような裁判例 も存在するが,こ れに対 し前述の東京 地判平成 14年 7月 24日 は,本 件 同様モニ ター商法が問題 になった事案 において,顧 客 らが売買契約 と業務委託契約 をそれぞれ別法人 と締結 し た場合 について も,両 者が実質的には一体の法人であるとした上で,同 様 に両契約が実質的に不可分一体であ り,こ れ らが公序良俗 に反 し違法 であるとする。同判決は,密 接不可分 に結 びついた両契約,つ ま りこれ らが構成するモニター商法 とい う取引が全体 として違法であると判断 さ れるがゆえに,こ れを構成す る各契約が公序良俗 に反 し無効であるとす るのである。

そ してこの点が まさに問題 になった と考 えられるのがいわゆる芸娼妓

の前借金の約束の効力 に関す る著名な一連の判例である。 ここでは両親

が抱主か ら金銭 を借 り (前借金),娘 が酌婦 としてこの抱主の元で働 き,

その稼 ぎを前借金の弁済 に当てるとい うことが行 なわれていたわけであ

るが,そ の実態は全体 として娘の人身売買 に他 な らず,公 序良俗 に反す

るゆえに酌婦稼動の部分のみな らず前借金の部分 も無効 になるかが争わ

れたのである0。 この問題 について当初大審院の判例の大勢は,こ こに

は酌婦稼動契約 と消費貸借契約の二個の契約が存在 し,前 者が公序良俗

( 1 6 3 )

(22)

に反 し無効になっても後者が無効になるわけではないとしていたが° め , これに対 し最二判昭和 30年 10月 7日 (民集 9巻 11号 1616頁)は ,前 借金受領は公序良俗に反する酌婦稼動を前提 とし両者は密接不可分の関 係にあるから,契 約の一部である稼動契約の無効はひいては契約全部の 無効を来たすと判示 し,本 件取引を稼動契約 と消費貸借 とに分解 しつつ も,稼 動契約が無効であるからそれを目当てとする金員貸与 も無効であ るとして, この問題に終止符を打ったのである ° °

。ここでは違法な稼動 契約 と組み合わされることで消費貸借 も全体 としてみて公序良俗に反 し 無効であるとの判断がなされたものと考えられる。 したがって以上から 本件各判決 (①③④⑤)お よび前述の平成 14年の東京地裁判決は上記最 高裁判決を先例 とし,こ の判例法理に新たな適用事例を加えたものと評 価することができるであろう。

これに対 し本件各判決のうち②判決の判示は他の判決とは若干異なる ものである。これによれば,売 買契約 とモニター会員契約 とは別個の契 約であるが,密 接不可分に結びついた契約であ り,前 者の公序良俗違反 による無効,詐 欺取消,錯 誤無効,債 務不履行解除,ク ーリングオフ解 除を理由に,売 買契約の無効,取 消,解 除を主張することができ,こ の 判断は前掲の平成 8年 の最高裁判決からも支持されるとしている。 しか

し本判決の引用するこの平成 8年 の最高裁判決 ° "は

,全体 としてリゾー

トマンションの購入 という目的を達するためにマンションの売買契約 と

スポーツクラブの会員契約が締結 されたというように,両 契約の目的と

するところが相互に密接に関連 し,い ずれかが履行されただけでは契約

を締結 した目的が全体 としては達成されない,つ まリー方のみが履行さ

れても無意味な場合には,他 方の契約に不履行があったとき,た とえそ

の契約 自体に不履行がなくても,こ れら双方を解除することを認めたも

のであって,両 契約がこのような関係にある場合に,一 方の契約の公序

良俗違反による無効や詐欺取消,錯 誤無効,ク ーリングオフ解除を理由

(23)

モニター商法と抗弁の接続 とする他方の契約の無効や取消,解 除までも認めたものではない。先述 のように取引全体 より見ての個別の契約の公序良俗違反如何の問題の先 例は,前掲の昭和 30年 の最高裁判決であって,引 用されるべ きは同判決 ではなかったか。また判示のうち一方の契約の詐欺取消,錯誤無効,クー リングオフ解除を理由とする他方の契約の取消や無効,解 除の部分は先 例を欠き,そ の法的根拠は不明である。

ところで周知のように単一の取引を構成 し密接不可分の関係にある複 数の契約,す なわち複合契約に関する近年の議論は前掲の平成 8年 の最 高裁判決を契機 とするものであるが, これまでの議論 も,ま たこれ以後 に出された下級審判決 も, もっぱら同最判が提起 した他の契約の債務不 履行による両契約の解除如何に関するものであった ゛ °

。 しか し密接不可 分の関係にある各契約が単一の取引を構成 し,各 契約がその達成を目的 としている場合において, この各契約が締結された目的を解除のみなら ず契約の処遇の様々な場面において考慮することにこの複合契約を規律 する法理の本質があるとし 0,そ の上で前掲の平成 8年 の最高裁判決を その一つの場面での表れとみ ①

, このような一般的な視座に立って本件 個別の契約の公序良俗違反如何の事例 もこの中に位置づけた場合,お の ずと②判決の評価 も異なるものになろう。他方の契約の消滅を導 くため の法的根拠の是非はお くとしても,違 法なモニター商法中の売買契約の 公序良俗違反を理由付けるにあたって平成 8年 の最高裁判決を引用 した 本半J決は,同 最高裁判決を特定の局面での例外的な判断をなしたもので はなく,複 合契約一般に及ぶ法理を含んだものと理解する一裁判例 と位 置づけることも不可能ではないだろう。

2 Xら の割賦販売法 30条 の 4に 基づ く抗弁の接続の主張の信義則 違反如何について

(1)以 上のように,法 的構成に若干の違ぃはあるものの,本 件各半J決は

(165)

(24)

A と の売 買 契約 が無効 に な る こ とで一致 して いた。そ の上 で本件 にお いて は,こ の売買契約 の無効 とい う売買契約 で生 じた事 由 を,割 賦販売 法 3 0 条 の 4 に 基 づ い て X ら 顧 客 が Y ら 信 販 会 社 との 間 の 立 替 払 契約 にお い て対抗 し,同 契約 に基 づ く Yら の支 払請求 を拒 絶 す る こ とが信 義則に反 しないかが問題 となる。これが争点の(血 )である。このように本 件ではその事案の特殊性から単なる同条の適用如何 を超えて抗弁の接続 が認められる限界が問われているのであ り,そ れゆえにその検討は同条 の趣旨を踏まえた上でなされなければならないであろう。そこで以下に おいては, まず,抗 弁の接続がいかなる理由によって認められたのかを 中心に,今 日までに形作 られてきた抗弁の接続の形成過程をごく簡単に 振 り返ってみたい ° の

昭和 50年 代において個品割賦購入あっせん取引が普及すると,信 販 会社の中には経営基盤の弱い販売店 と結びつ くものが現れ,結 果商品が 引 き渡されないのに信販会社か ら支払の請求が来るなどの トラブルが急 増 した。そこでは顧客が売買契約において生 じた事由を理由に信販会社 からの立替金の支払請求を拒絶できるかという抗弁の接続が問題になっ ていたのである。また訴訟になったほとんどの事例において販売業者が 倒産 してお り,顧 客の支払拒絶を認めた場合に信販会社は加盟店契約関 係等を通 じての販売業者か らの回収ができないため,こ の問題は顧客に 支払拒絶を認めることで信販会社にその分の未払立替金の回収不能のリ スクを課するかという問題をも合意 していたのである。この問題につい ての公干J裁判例の多 くは信販会社の支払請求が信義則に反するなどとし て顧客の支払拒絶を認め Cの

, また学説 も様々な法律構成でもって顧客の 支払拒絶を認めることを主張 していたのである ° ⇒

以上のような裁判例および学説を背景に昭和 59年 には割賦販売法が 改正され,抗 弁の接続が同法 30条 の 4に おいて明文をもって認められ ることになった ②

。改正法の立法担当者は,こ の抗弁の接続の規定を設

(25)

けるに至った理由として,以 下のようなおおむね従前の裁判例や学説が 顧客の支払拒絶を認めるうえで挙げていた理由と同様の理由を挙げてい る 1231。

すなわち,① 割賦購入あっせん業者 と販売業者 との間には購入者 への商品の販売に関して密接な取引関係が存在 していること,② そのた め,購 入者は割賦販売の場合 と同様に商品の引渡 しがなされない等の場 合には支払請求を拒みうることを期待 していること,③ 割賦購入あっせ ん業者は販売業者を継続的取引関係を通 じて監督することができ, また 損失を分散転嫁する能力を有すること,④ これに対 して,購 入者は購入 に際して一時的に販売業者 と接するに過 ぎず,ま た契約に習熟 していな い,損 失負担能力が低い等割賦購入あっせん業者に比 して不利な立場に おかれていることである。以上の理由に基づいて設けられた抗弁の接続 の規定は,し か しなが ら適用対象取引が政令で指定された商品を目的物 とする割賦購入あっせんに限定されているなど限界をも有 していたので ある。

同改正以後において抗弁の接続 をめ ぐって主 として問題 になったの は,指 定商品外の役務や不動産を目的 とするローン提携販売 僻)の よう な法 30条 の 4の 適用のない取引についても抗弁の接続が認め られるか であった。ここでは同条の法定性質をめ ぐって,同 条が民法上の法理を 確認 したものであ り, したがつて同条はこれらの取引について広 く類推 適用 されるべ きであるとの見解 (確認的規定説)のと,同 条は消費者保護 のため特別に創設された規定であ り,そ の適用対象 も限定されるとの見 解 (創設的規定説)° ①とが対立していた。そして同条の適用のない取引 においての抗弁の接続の可否についてはじめて判示 した最三判平成 2年 2月 20日 (判時 1354号 76頁)②は,昭和 59年 の改正以前であったため 同改正法の適用のない事案において,法 30条 の4の 規定は法が購入者 の保護の観点か ら新たに認めたものに他ならないとして,法 的性質につ いて創設的規定説の立場をとることを明らかにしたうえで,同 条の適用

(167)

(26)

のない取引においては,立 替払契約 において特別の合意があるか, また は販売業者の不履行の結果 をあっせ ん業者 に帰せ しめるのを信義則上相 当 とす る特段 の事情のあるときに限 り,顧 客 はあっせ ん業者 の履行請求 を拒絶す ることがで きるとして,適 用対象外の取引に対する同条の類推 適用 にも民法上の支払拒絶 にも否定的な立場 を示 したのである ° °

。そ し てこれ以降の公干U裁判例のほ とん どは抗弁の接続 を否定す るもので占め られることになる。

しか しこの間の裁判例 において もっぱ ら争 われていた法 30条 の 4の 適用 のない取引での抗弁の接続如何 の問題 は,平 成 11年 の割賦販売法 の再度の改正 により,ロ ー ン提携販売 にも抗弁の接続が認め られ, また 指定商品に指定役務 ・権利が加 え られることで,あ る程度の解決 を見 る

ことになったのである 1291。

以上が今 日までに至 る抗弁の接続の制度の成 り立ちである。割賦販売 法の昭和 59年 の改正法は,従 前の裁判例お よび学説の展 開を受 けて,上 記趣 旨の もと法 30条 の 4に おいて明文で抗弁の接続 を認めたが,そ の 適用領域外 の取引 について,判 例 は同条 を消費者保護のために特別 に設 け られた規定であるとして抗弁の接続 に厳格 な態度 を示 した。 しか し後 の平成 11年 の同法の再度の改正 によ り,同 条 は現在広範 な適用領域 を 有するに至っている。また上記法 30条 の 4の 新設の趣 旨の③やい くつ かの学説が示 しているように m),抗

弁の接続を認めることは与信者に未

払立替金の販売業者か らの回収不能のリスクを負わせることをも合意 し

ていた。結局今 日の立法お よび判例 において抗弁の接続 とは,指 定商

品 ・役務 ・権利の割賦購入あっせんやローン提携販売 といった取引にお

いて,顧 客が売買契約上の事由を抗弁 として与信者に対する支払を拒絶

し, もって与信者にその負担を帰することを,消 費者たる顧客の保護の

ために特別に認めた制度であ り,ま た以上の経緯で法 30条 の 4の 適用

領域が拡大されるのに伴い,同 条の適用を前提にどのような顧客にまで

(27)

その主張を許すのかという抗弁の接続の信義則違反如何の問題が抗弁の 接続の新たな限界の問題 としてその重要性を増すことになったのであ る。

(2)本 件各判決 (特に①③⑤)に おいても,上 記立法担当者が法 30条 の 4を 設けるにあたって述べた理由①②③④ に鑑み,消 費者の利益を保護 するという社会的要請に応える趣旨で同条が設けられたことが明らかに されている。また本件において も販売会社である Aが 破産 し,Xら 顧 客 に抗弁の接続 を認めることは,Yら 信販会社に Aか らの回収不能の 負担を負わせる帰結をもたらすことになる。そのうえで判決は購入者が 割賦購入あっせん業者に対 して抗弁を対抗することが信義に反する場合 には,こ れが許されないことは信義則の法理に照 らし当然のことである とし,信 義則違反の有無を上記同条の立法趣旨を踏まえて判断すべ きで あるとするのである。

顧客は販売業者 との間で生 じたあらゆる抗弁を与信者に対抗できるわ けではない ・ D。

特に抗弁事由の発生に顧客の側にも原因があることでこ の者が抗弁を対抗 して与信者か らの支払を拒絶することが信義則に反す ると認められる場合に, これが認められないこと自体について異論はな いであろう。法 30条 の 4の 立法担当者 もそのように考えていた し 1321, 後述の信義則違反を理由に抗弁の接続を認めない多 くの裁判例の存在 も このことを物語っている。問題はいかなる場合に信義則に反するとする かである。以下 においてはこの点について判示 した これまでの裁判例 を 検討す る。

裁判例の中心 を占めるのはいわゆる名義貸 しの事例である ①

。例 えば 個品割賦購入あっせ んにおける名義貸 しは,多 くの場合,資 金繰 りに窮 した販売店が消費者の名義 を借 り,架 空の売買があったことにして,立 替払契約 を成立 させ,信 販会社か ら立替金の支払 を受けた り,信 用が低

(169)

(28)

い ため に信用供与 を拒 絶 された者が別 の消 費者 の名義 に して立替払契約 を成 立 させ た りす る こ とに よって行 なわれ る。名義借 人 であ る販売店や 他 の顧 客 が信販会社 に支払 を してい る間は問題 が ないが,販 売店が倒産 す る な ど して支払 が止 ま り,名 義貸人 であ る顧客 に支払 の請求が され る ようになると問題が表面化する。 こうした名義貸 しは,大 きくは名義人 の承諾な く与信契約が締結 される場合 (名義冒用)と その承諾を得て与 信契約が締結 される場合 (狭義の名義貸 し)と に分け られる。 この うち 名義 冒用 の場合 には,そ もそ も与信契約が成立 しないまたは無権代理 に よ り無効 になることに異論はないが,狭 義の名義貸 しの場合 には,名 義 貸人の心裡留保や錯誤の成否,表 見代理の成否 など与信契約 自体が有効 に成立 しているか, またこれが有効 に成立 していることが認め られると して,顧 客が販売店 との間の売買契約が虚偽表示や心裡留保 によ り無効 である等の抗弁 を法 30条 の 4に 基づいて与信者 に対抗す ることが信義 則 に反 しないかが問題 になる ° °

。後者の問題 については以下の公干U裁判 例がある。

この うち顧客 による抗弁の対抗が信義則 に反 しない とした もの として

長崎地判平成元年 6月 30日 (判夕 711号 234頁 )が挙 げ られる。本件 は,

ク レジ ッ トの知識のない未成年者 Yが ,信 販会社 か ら信用供与 を断 ら

れた職場の先輩である Mと 販売会社 Aの 従業員 Bか ら依頼 されて,こ

れ を断ることがで きず Aと の間の売買契約 と信販会社 Xと の間の立替

払契約 において債務者 としての名義 を Mに 貸す ことを承諾 し,Xの 商

品購入確認の電話 に対 して Bの 指示 に従 って購入 した旨答 えたが,そ の

後 Mが 立替金の支払 を怠 ったため Xか ら立替金の支払 を請求 された も

のである。本判決 は AY間 の売買契約が虚偽表示 によ り無効であるこ

とを前提 に,顧 客の作 出 した一方的なまたは積極的な関与 に基づ く事由

は抗弁事由に該当 しないが,虚 偽表示であって も,販 売業者が詐欺的な

言動 によって顧客 をして名義貸 しをなさしめた場合 など,そ の名義貸 し

(29)

F︲

モニター商法と抗弁の接続 をなす に至 った事情如何 によってはこれを与信者 に対抗す ることは信義 則上許 されない ものではない とし,Aが 虚偽 の売買契約 を積極 的に作 出 しYの 関与が消極的な本件 において,Xが Yの 連帯保証人である Yの 母親 には意図的に電話確認 を しなかった事情 も勘案 して,Yの 主張 を信 義則 に反 しない としたのである D。

なお本件の上告審である福 岡高判平 成元年 12月 25日 (NBL489頁 )は ,法 30条 の 4が 購入者の利益 を与信 者 の利益 に優 先 して保護す るため に特 に設 け られた規定であ ることか ら,購 入者 による抗弁の対抗が信義誠実の原則 にもとるときはその立法 趣 旨に照 らしその利益 を受けることがで きない もの とい うべ きところ,

自らの意思で Xと 立替払契約 を締結 した Yが Xと 直接 関わ りのない内 部事情 を もって Xの 支払請求 に対抗す ることは信 義誠実の原則 に反す る として上記判決 と反対の結論 に至 っている。

これに対 し顧客 による抗弁の対抗が信義則 に反するとした裁判例 に以 下がある。

第一 に東京地判平成 5年 11月 26日 (半 J時 1495号 104頁)は ,自 動車 販売業者 であ る Aの 従業員 Bが Mに 売 った 自動車 の販売代金 を着服 し,そ の穴埋 めのために,友 人である Yの 名義 を借 りて与信者 Xと 同 じ車 の代金 について立替払契約 を締結 し,Xか ら Yに 対 して支払請求 が なされた事案 において,名 義貸 しをした Yが Xに 対 して 自動車が引 き渡 されていない として支払停止の抗弁 を援用す ることは信義則 に反 し 許 されない とした ゛ ω 。

第二 に東京地判平成 6年 1月 31日 (判夕 851号 257頁 )は ,Yが 友人

である Mか ら懇請 されて Yの 名義で販売店 Aと 自動車の売買契約 を,

金融機 関 Bと 金銭消費貸借契約 を,信 販会社 Xと 保証委託契約 をそれ

ぞれ締結 したが,後 に Mが Bへ の支払 を怠 ったため Bに 代位弁済 を し

た Xか らYが 求償請求 を受 けた事案 において げ),Bか らの融資金 は結

局 Mら の手 に渡 っている ように本件 は担保 のない者が金銭 を借 り受け

( 1 7 1 )

参照

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