解析 II ・講義ノート
第14回
(2021年 1月26日(火)配信分)
§14. 相補公式の証明
相補公式の証明は、解析IIの範囲を逸脱してしまうのですが、
気になる人もいるのではと思いますので、一応お話しておきます。
期末試験前の大変な時期と思いますので、忙しい人は今回パスしてもらって 構いません。
1
2 ≤ x < 1 ( 0 ≤ 2x − 1 < 1 ) について示せば十分です。基本 関係式でy = 1 − x とおけば、
Γ(x)Γ(1 − x) = B(x, 1 − x)Γ(1) = B(x, 1 − x)
= 2 Z π/2
0 sin2x−1 θ cos2(1−x)−1 θdθ
= 2 Z π/2
0 sin2x−1 θ cos1−2x θdθ
= 2 Z π/2
0 tan2x−1 θdθ
ですが、ここで t = tan θ と置換すると、0 ≤ θ < π 2 で 0 ≤ t < +∞, dt = (1 + tan2 θ)dθ よりdθ = dt
1 + t2 なので Γ(x)Γ(1 − x) = 2 Z +∞
0
t2x−1 1 + t2dt
となります。
ところが、この被積分関数は、0 < 2x − 1 < 1 のとき、一般に
は原始関数を初等関数で表すことはできません。しかし、後に複 素解析で学ぶ、留数定理を用いた定積分の計算法を適用すること ができます。その詳細をここでお話することはできませんが、計 算の流れだけご紹介しておきましょう。
まず、複素関数
f(z) = z2x−1 z2 + 1
を考えます。(この x は z の実部ではありません。)
この関数は複素平面の上半平面(虚部が正の部分)ではi 以外の
点で、また実軸上でも 0 以外の点で、複素関数の意味で微分可能
(正則)で、i では極と呼ばれる特異点を持ちます。これは i の近
くで、 1
z − i の定数倍で近似されるくらいの意味で考えておいて 下さい。
この定数を f(z) のz = i における留数と呼びます。そして i の
回りを(他の特異点の周囲を避けて) 左回りに一周する閉曲線に沿 う f(z) の線積分の値がこの留数の 2πi 倍になると言うのが留数 定理の主張です。
ここで閉曲線のとり方を限定していないのは、線積分の値がそ のとり方に依らないためです。この事実はコーシーの積分定理か らの帰結なのですが、この講義の言葉で説明すると、f(z) の実部
虚部共に調和関数なので、グリーンの定理より従う事実と言うこ とになります。
その留数ですが、極限計算を用いた公式により、次のように求 められます。
limz→i
(z − i)(z2x−1)
z2 + 1 = lim
z→i
z2x−1
z + i = i2x−1
2i = e(2x−1)πi/2 2i
または、 1
z2 + 1 の部分分数分解 1
z2 + 1 = −2i
z − i +
i 2
z + i
より
z2x−1
z2 + 1 = −2iz2x−1 z − i +
i
2z2x−1 z + i
で、ここで右辺第1項の分子にz = i を代入しても
−i
2z2x−1
z=i
= −i
2i2x−1 = i2x−1
2i = e(2x−1)πi/2 2i
のように同じ値が得られます。
こちらの計算の方が、i の近くで、 1
z − i の定数倍で近似される
ことが理解しやすいでしょう。
ここで、中心が i で半径が ϵ ∈ (0, 1) の円周 Cϵ : z = i + ϵeiθ (0 ≤ θ ≤ 2π)
に沿って 1
z − i を線積分すると、dz = ϵieiθdθ より
Z
Cϵ
dz
z − i = Z 2π
0
ϵieiθdθ
ϵeiθ = Z 2π
0 idθ = 2πi
が成り立つことから、i の近くでその留数倍で近似されるf(z) の
線積分は、ϵ に依らず留数の 2πi 倍
Z
Cϵ f(z)dz = 2πi e(2x−1)πi/2
2i = πe(2x−1)πi/2
になるのですが、この事実をきちんと理解するには、テイラー展 開を一般化したローラン展開を理解する必要があるため、ここで はこれ以上の説明は省略し、直観的理解にとどめたいと思います。
さて、次に1 < R < +∞ に対し、次の線分または曲線を順につ ないでできる閉曲線をCR とします。
CR,1 : z = t ( 1
R ≤ t ≤ R), CR,2 : z = Reiθ (0 ≤ θ ≤ π), CR,3 : z = t (−R ≤ t ≤ − 1
R), CR,4 : z = 1
R ei(π−θ) (0 ≤ θ ≤ π)
すると、留数定理により次が成り立ちます
Z
CR f(z)dz = 2πi e(2x−1)πi/2
2i = πe(2x−1)πi/2
0× - x y 6
i◦
C
- R -
I
CR,3
CR,4
CR,1
CR,2
1
R R
i R
iR
−R1
−R
6Cϵ
さらに右辺の値は R に依らないので、
R→lim+∞
Z
CR f(z)dz = πe(2x−1)πi/2
も成り立ちます。
ここで実はz = Reiθ に対して
|f(z)| = |(Reiθ)2x−1|
|(Reiθ)2 + 1| ≤ R2x−1 R2 − 1
さらにdz = Rieiθdθ より|dz| = Rdθ なので
Z
CR,2 f(z)dz ≤ ZC
R,2 |f(z)||dz| ≤ Z0π R2x−1
R2 − 1 Rdθ
= π R2x
R2 − 1 → 0 (R → +∞)
より
R→lim+∞
Z
CR,2 f(z)dz = 0
が言えます。
またz = 1
R ei(π−θ) に対して
|f(z)| = |(R1 ei(π−θ))2x−1|
|(R1 ei(π−θ))2 + 1| ≤ R−2x+1
1 − R12 ≤ R−2x+3 R2 − 1
さらにdz = 1
R (−i)ei(π−θ)dθ より|dz| = 1
R dθ なので
Z
CR,4 f(z)dz ≤ ZC
R,4 |f(z)||dz| ≤ Z0π R−2x+3 R2 − 1
1
R dθ
= π R2(1−x)
R2 − 1 → 0 (R → +∞)
より
R→lim+∞
Z
CR,4 f(z)dz = 0
も言えます。
一方、実軸の閉区間上での積分の極限は、広義積分の定義その ものなので
R→lim+∞
Z
CR,1 f(z)dz = Z +∞
0
t2x−1
1 + t2dt,
R→lim+∞
Z
CR,3 f(z)dz = Z 0
−∞
t2x−1 1 + t2dt
が成り立ちます。
ただし、CR,3 では t < 0 なので、t2x−1 は実数の範囲では定義
されません。ここでは
t2x−1 = {(−1)(−t)}2x−1 = {eπi(−t)}2x−1 = e(2x−1)πi(−t)2x−1
と考えます。そして −t = s と置換すれば、−∞ < t ≤ 0 で +∞ > s ≥ 0, −dt = ds より
Z 0
−∞
t2x−1
1 + t2dt = e(2x−1)πi Z 0
−∞
(−t)2x−1 1 + (−t)2dt
= e(2x−1)πi Z 0
+∞
s2x−1
1 + s2(−ds)
= e(2x−1)πi Z +∞
0
s2x−1 1 + s2ds
となります。
これらをまとめると、
R→lim+∞
Z
CR f(z)dz = Z +∞
0
t2x−1
1 + t2dt + Z 0
−∞
t2x−1 1 + t2dt
= (1 + e(2x−1)πi) Z +∞
0
t2x−1 1 + t2dt
を得ます。
以上より
Γ(x)Γ(1 − x) = 2Z +∞
0
t2x−1 1 + t2dt
= 2
1 + e(2x−1)πi lim
R→+∞
Z
CR f(z)dz
= 2
1 + e(2x−1)πi πe(2x−1)πi/2 = 2π
1+e(2x−1)πi e(2x−1)πi/2
= 2π
e−(2x−1)πi/2 + e(2x−1)πi/2
= π
cos (2x−21)π = π
cos πx − π2
= π
sin πx
で、相補公式を得ます。
第13回練習課題の解答
Γ(x)Γ(y) = 4 Z +∞
0 e−u2u2x−1du Z +∞
0 e−v2v2y−1dv
= 4 lim
a1→+0 lim
b1→+∞
Z b1
a1 e−u2u2x−1du
× lim
a2→+0 lim
b2→+∞
Z b2
a2 e−v2v2y−1du
= 4 lim
a1→+0 lim
b1→+∞ lim
a2→+0 lim
b2→+∞
Z b2 a2
Z b1
a1 e−u2−v2u2x−1v2y−1dudv
(被積分関数が正値なので、ここでは極限をとる順序について、気を付ける必要 はありません。)
ここで(u, v) = (r cosθ, r sin θ) と変数変換(置換)すれば、
0 < r < +∞, 0 < θ < π
2 で0 < u < +∞, 0 < v < +∞, ヤコビ行
列式は r ですが、さらに任意の0 < a1 < b1, 0 < a2 < b2 に対し、
{(r cos θ, r sin θ) | a3 ≤ r ≤ b3, a4 ≤ θ ≤ b4}
⊂ {(u, v) | a1 ≤ u ≤ b1, a2 ≤ v ≤ b2}
⊂ {(r cos θ, r sin θ) | a′3 ≤ r ≤ b′3, a′4 ≤ θ ≤ b′4}
を満たす0 < a′3 < a3 < b3 < b′3 , 0 < a′4 < a4 < b4 < b′4 < π
2 がと
れて、さらに
a3 → +0, b3 → +∞, a4 → +0, b4 → π
2 − 0
=⇒ a1 → +0, b1 → +∞, a2 → +0, b2 → +∞
=⇒ a′3 → +0, b′3 → +∞, a′4 → +0, b′4 → π
2 − 0
を満たすので、
= 4 lim
a3→+0 lim
b3→+∞ lim
a4→+0 lim
b4→π/2−0
Z b4 a4
Z b3
a3 e−r2(r cosθ)2x−1(r sin θ)2y−1rdrdθ
= 4 lim
a3→+0 lim
b3→+∞ lim
a4→+0 lim
b4→π/2−0
Z b4 a4
Z b3
a3 e−r2r2x+2y−1 cos2x−1 θ sin2y−1 θdrdθ
= 4 lim
a3→+0 lim
b3→+∞
Z b3
a3 e−r2r2(x+y)−1dr
× lim
a4→+0 lim
b4→π/2−0
Z b4
a4 cos2x−1 θ sin2y−1 θdθ
= 4 Z +∞
0 e−r2r2(x+y)−1dr Z π/2
0 cos2x−1 θ sin2y−1 θdθ
= Γ(x + y)B(x, y)