経済成長理論における均衡成長の安定性について
その他のタイトル On the Stability of Equilibrium Growth in the Theories of Economic Growth
著者 山本 繁綽
雑誌名 關西大學經済論集
巻 9
号 2
ページ 169‑196
発行年 1959‑06‑20
URL http://hdl.handle.net/10112/15593
169
経済成長理論における均衡成長の安定性について︵山本︶
七九
経済成長理論においては均衡成長という概念が規定され︑それを用いて理論が構成されている︒均衡成長とは有
効需要と生産能力とが均衡する様な︑または全体としての資本の需給が均衡する様な︑国民所得の成長︑社会の資本
( 1 )
の蓄積を意味する︒例えばハロッド︹
1 0 ︺における保証成長︑ドマール︹4︺における必要成長及び均衡成長︑ヒックス
︹1 2
︺における移動均衡
( m o v
i n g
e q u i
l i b r
i u m )
フェ
ルナ
ー︹
7︺における動的均衡︑或いはロビンソン︹
2 3 ︑
2 5 ︺における黄金
時代等色々なる名称が用いられているけれども︑それらはいずれもこAでいう均衡成長の概念である︒ところでわた
くしはかAる均衡成長概念の本質が次の二つの意味に解されると思う︒すなわち︱つには現実の経済成長を把握す
るための理論上の手段であるという意味と︑一っには現実の経済成長における政策目標であるという意味とである︒
従って︑均衡成長は現実の経済成長が達せられる範囲内になければならず︑しかも出来る限り現実の経済成長と接
近していることが望ましいことになる︒均衡成長概念の本質をこの様に解するのも︑もし現実の経済が達せられな
い様な或いは現実から全く遊離した様な均衡成長概念は凡そ無意味であると考えられるからであり︑
( 2 )
た一般に容認せられるところであろう︒
一︑序
説
山本繁 経済成長理論における均衡成長の安定性について
このことはま
綽
170
ハロッドの成長理論が世 ところで諸家の経済成長理論における均衡成長概念が事実どの様な性質を賦与されているであろうか︑そうしてその性質が先に明らかにした均衡成長概念の本質に照らして果して妥当な性質であろうかということが問題とされなければならない︒これを明らかにすることが小稿の︱つの目的である︒この場合︑均衡成長の性質ということは均衡成長が経路が安定的
( st a b le )
か︑不安定的
(u ns ta bl e)
か︑或いは︑中立的
( ne u t ra l )
かということであって︑
それはさしずめ通常規定されている様に任意の初期値から発した.現実の成長経路が均衡成長経路に時間的に収敏
するか︑発散するかへ或いは平行するかという意味である︒
さて︑現代の経済成長理論としてはハロッドから始めることには異論がないであろう︒
に出てから十年以上となるが︑その生産函数における仮定に関連した議論は比較的新しい問題で︑しかも成長理論
の本流的発展と考えられるものである︒以下第二節ではハロッド的成長理論について︑第三節ではそれに対する批
判から生れた代替的生産函数を用いた成長理論︵特にソロー・フェルナー︶
につ
いて
︑
それぞれ均衡成長概念の考察
されかつ批判される︒このあたりまでは比較的よく耕やされた分野であるが︑わたくしはその次の第四節では最も
新しいものとして代替的でしかも特異な生産函数を用いたロビンソンの資本蓄積論における均衡成長概念の性質を
論議する︒この意味において︑小稿はまた経済成長理論における学説展望を︱つの目的としている︒
この様に小稿は経済成長理論における諸学説の発展を均衡成長の安定性という面から考察するものであり︑
らの学説にとつて替る新しい経済成長理論を提示するものでもなく︑また諸学説をただそのまA紹介するものでも
ない︒このため諸説に意識的な修正が加えられるのみならず︑全体としての統一をはかるため︑実物分析であるこ
と︑財政貿易等を無視した封鎖体系であること︑及び天然資源の制約がないこと等両通の限定が入れられているこ
経済
成長
理論
にお
ける
均衡
成長
の安
定性
につ
いて
︵山
本︶
八〇
それ
..'.'
経済成長理論における均衡成長の安定性について︵山本︶
註
( 1 )
資本係数と貯蓄性向が不変であると考えると︑'有効需要と生産能力の均衡は資本の需給の均衡に等しく︑所得の成長面か
らの考察と資本の蓄積面からの考察とは区別されない︒
(2
)例えばフエルナーは﹁現実に観察される趨勢線は動的均衡の下方経路
(l ow er ed
pa
th
s)
であ る﹂ (F el ln er
︹7︺
p.
19
4)
とい う︒
こAではハロッド︹9︑
1 0 ︺
︑ド
マー
ル︹
4︺
︑ヒ
ック
ス︹
1 2 ︺
︑ハ
ンバ
ーグ
︹
8︺等の成長理論の一っとしてハロッドの﹁動
態経
済学
序説
﹂︹
︺を挙げる︒履々ハロッド1 0
1
1ドマール理論といわれているがこAでドマールを取り上げなかったの
ハロッドが資本の需給の均衡という面から均衡成長を捉えたのに対し︑
という面から捉えただけで問題そのものは同じであるからであり︑其の上ドマールはハロッドの様な人口増加によ
つて規定される成長を考えていないだけ弱いと考えられるからである︒
このことは後に明らかにされる様に充分現実的な仮定である︒ ドマールは有効需要と生産能力の均衡
ハロッドは﹁動態経済学序説﹂︹
︺において︑第一講で資本の需要を︑第二講で資本の供給1 0
を︑そうして第三講で資本の需給の均衡より得られる諸結果をそれぞれ考察している︒こAではハロッドに従って
第一講第二講第三講と進めていくことにしよう︒なお以下この項においては利子率︵及び賃銀率︶
先ず第一講の資本の需要側の分析をハロッドの説明の順序に従って行おう︒ ハロッドの成長理論 はヽ
二 ︑
とを断つておきたい︒
ハ ロ ッ ド 的 成 長 理 論
八
ハロッドは人口︑技術及び資本量を
一定
を仮
定す
る︒
成長する経済の三つの基本的要素とし︑第一次接近として人口と技術を独立変数︑資本量を従属変数とすれば必要
172
資本量は人口の増加と中立的技術の進歩が可能とする所得と同じ率で増加しなければならないという︒単位期間の
所得に対する必要資本量の比率を必要資本係数
C r と呼べば︑必要資本係数は常に一定でなければならない︒この資
本係数一定ということは後に明らかにされる様に大きな意味を持つ︒
(1 .1 )
K I
1 , 1
"
"
︽
ヽ1
••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••
Yー
b Y l=CrL:,.Y
…•…
••9.
,………
(1.
2)
すなわち技術の進歩が中立的な場合必要資本量は所得の増加に資本係数を乗じたものに等しい︒
孫のための個人貯蓄及び企業の貯蓄︵株主の個人貯蓄と見倣される部分を除く企業の剰余金︶
する︒先ず︑自己のための個人貯蓄は自己一生の間にのみ必要な貯蓄であって
hu mp s a v i
n g と名付ける
(H
ar
ro
d
一生の初めの期間に蓄積され後の期間に使消されるという特殊の形態をとる︒すなわち第t年の自
己のための個人貯蓄を劾とすると
である︒また︑ n H
81
(t
)
110
………
••(1.3)
t!1
eを消費効用曲線の平均弾力性︑Tを翌年の単位効用と同程度に選好される現在の効用︑Rを現在
の単位貨幣の一年後における元利合計とすれば
(1
.3) ︒ ︺ ︹1
p.
49
)様
に︑
第二講は資本︵貯蓄︶ 従つて
の制約の下で効用の極大と求めて︑ の三つに分けて考察 の供給側の分析である︒ハロッドは貯蓄をその動機に従って︑自己のための個人貯蓄︑子 (1.1)より一般に次の式が容易に導かれる︒
経済成長理論における均衡成長の安定性について︵山本︶
八
経済成長理論における均衡成長の安定性について︵山本︶
S1
1
sY
し︑社会全体としての資本の供給︵貯蓄︶函数は簡単に
一応行動原理から導かれたものである︒ ることが判る︒更に︑ハロッドはe︑¢及びTもyの函数と考えている
より
S l
はy︑e︑T
︑ ︑
八
に進んで資本の需給を の函数でR︑
5 2 は
¢︑
Tの函数であ
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( 1 .
4)
を得
るこ
とが
出来
る︒
︵宮
崎︵
︹
︺1 8
一五
入ー
一六
八頁
︶貯
蓄が
自己
のた
めの
貯蓄
のみ
とす
れば
︑
Aは︵から
r ( J
を差引けば求め
s Y
られるであろう︒次に子孫のための貯蓄ふは︐eを子孫のための貯蓄効用曲線の平均弾力性とすれば同様に
S2 (1
) 1 1
S2 (t
1 ) {
│ e︑
( 1
ー
T i
ー
1 ) }
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︵
1 .
5)
と求
めら
れる
︵天
野︹
2︺
八頁
︶以
上の
二式
( 1 .
4) ( 1
. 5)
(H
ar
ro
d
︹ さ ︺
p.
53
)から結局自己のための貯
蓄及び子孫のための貯蓄すなわち個人貯蓄は所得及び利子率の函数と表わすことが出来る︒最後に企業の貯蓄は企
業家の企業拡張のための準備とされるものであるから必要資本量に依存し︑
(H
ar
ro
d︹ さ ︺
p.
53
)
また利子率は反応す
る ︒
(H
ar
ro
d︹ さ ︺
p . 4 8 )
ただし
(1
.1
)
が示された必要資本量と国民所得との一義的な関係より︑企業の貯蓄も利子率
の函数であるのみならず所得の線型の函数である︒以上の結果に︑利子率一定の仮定を入れ︑且つ貯菩性向をSと
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
—-n-
と示される︒しかしこの式は単純な総体関係を示すものではなく︑
これで資本の需要函数及び供給函数が求められたので︑愈々第三講
一致させる均衡成長の状態を求めよう︒
( 1 .
2)
( 1 .
6)よりl=Sであるためには
C(
J)
1 1
C (t )
{ 1
1e
(1
ー エ ? ︶
︸
﹁動態の基本原理﹂
174
Hもし
Gv
>G w
であ
れば
︑
Gも
>G
>G
で︑好況が進行する︒⇔もしw
Gs
>G
てn
あれ
ば︑
Gs
>
G
^ G n
で︑不況が進
行する︒これはハロッドの得た結果よりも若干厳重な解釈がなされているが︑要するに保証成長率と自然成長率と ハ
ロッ
ドは
いう
︒︵
この
点は
次項
にお
いて
証明
され
る︶
さて
︑
この三つの成長率から︑次の結果が得られるであろう︒ という傾向は存しないが︑ なる式を得る︒Gすなわち自然成長率
( na t u ra l r at e f ogro
wt
h)
はaを直接の関係はなく︑また必ずしも一致しない︒
なる式で表わされる︒
︵こ
れよ
りハ
ロッ
ドに
おい
ては
要求
され
る貯
蓄と
事後
的貯
蓄と
が等
しい
と仮
定さ
れて
いる
︶
Gすなわち
現実成長率
( ac t
u al
r at e
o f
gr
ow
th
)
は生産者の試行錯誤による結果であり︑
逆に上下に益々乗離する生産が採用されるという傾向が存する﹂
(H
ar
ro
d
︹ さ ︺
p. 87
)と ﹁がG
G t に接近する生産が採用される
CC
1 1 1 s
最後に資本の需給の事後的恒等関係は GトC
II
Or
*s
可能な数値として与えられるとすれば︑ なる式を得る︒Gすなわち保証成長率
(w
ar
ra
nt
ed
r at e f ogro
wt
h)
は資本の需給を均衡せしめる所得の成長率である
ハロッドは﹁生産者が現在の行動に満足している状態を示す﹂
( P 月且︹1
︒ ︺
p. 81
成長率であるという︒しかし)
ハン
バー
グも
︵︹
8︺
p. 64
)指摘する様に初期条件として資本の完全利用状態が前提とされるのでなければ両者は必ずし
も一致しないから︑ がヽ
こAでは右のハロッドの定義を無視する︒次に成長率が人口の増加と技術の進歩によって最大
Ge C
r 1 1
s
経済
成長
理論
にお
ける
均衡
成長
の安
定性
につ
いて
︵山
本︶
八四
経済
成長
理論
にお
ける
均衡
成長
の安
定性
につ
いて
︵山
本︶
こAで要求される投資と貯蓄との差をD
とす
れば
︑
Dは が一致しない限り︑その大小によって好況と不況が一方的に進行することになるのである︒
保証成長の不安定性
と思う︒すなわち︑ こAではハロッドにおける保証成長経路がどの様な性質を持つかを一層詳細に考察しよう
ハロッドにおいて現実成長率が保証成長率よりも大であるとすれば︑仮定によって事前の貯蓄
と事後の貯蓄とが同一であるから︑
I t 1 1
C,
(Y
t
ーEー
1 )
八五
このことは現実資本係数が要求資本係数より小さい︑すなわち事後における投
資が要求される投資に至らなかったことを意味する︒その結果資本ストックの不足が生じ︑生産者は投資を増加し︑
経済は拡張することになるのであろう︒かくして現実成長率は益々保証成長率から上方に乖離するのである︒逆に
現実成長率が保証成長率より小さいとすれば︑それは事後における投資が要求される投資を超過したことを意味し︑
結果遊休資本が生じて︑投資従つて生産の減退が予想される︒そうして現実成長率は益々保証成長率から下方に乖
離するのである︒このことは成長経路についても同様であってハロッドの保証成長は最初に述べた意味での不安定
的な成長経路である︒
( 3 )
この均衡成長の不安定性は一層厳密に次の様に証明される
(A
le
xa
nd
er
︹1︺
pp
.7
24
ー7
39
,H
am
be
rg
︹8︺
pp
.
202 │
20
4)︒
仮りにハロッドの成長モデルをとり︑資本︵貯菩︶の需要函数及び資本の供給函数を定差形で表わす︒
S 1 1 1
sY
1
D t
1 1
, C
(Y
, ー
Y ,
ー1 )
1 s
Y1
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(1 .1 1)
と示される︒これよりfをDの単純増加函数として
Gt
1 1
G t ‑ 1
+f(Dt-1)
…•…••………
(1.12)
176
と変更される︒この
(1 .1 4)
を
(1 .1 1)
なる式を得る︒この式より
C r
は正の数値であるからY
D t とaとは同符号を持たなければならない︒こAで
(1 .1 2)
よりD社が仮りに正であれば
G ,
+ 1>
G,
︑負であれば
c , +
1^
Gこで︑一方保証成長率さは不変であるから︑現実成長率G
と保証成長率は益々乖離することになり︑両者の初期値が同一であるとすれば成長経路そのものについても同様に
( 4 )
考えられる︒これが保証成長経路の不安定性の証明である︒
以上の保証成長の不安定性を保証保証成長率と現実成長率との関係において説明したが︑次に自然成長率を入れ
るとこの不安定性の説明はどの様に変更されるであろうかということを考えよう︒われわれは前項の終りのところ
で︑もし
G.
>G w
であれば
G.
>G
>G w
であり︑逆にもしGも
>G .
であればG
も°
>G
>G .
であると迩べた︒この であることより
(1 .1 3)
はー
Y 1
‑ Y 1 ' 1 Y ,
さて
︑ G ,
ー
る ︒
D ‑ 1 1
a C
, Y 1
に代入することによって
Y ,
11 s
︵1
C 1ー
汀 ー a ) Y ,
" "
+ a
s C
,
G ,
ー を得る︒もしDが零となれば
G i はt如何に拘わらず一定で︑従つて
G w に等し
< s
‑ C
r である︒もしが零とならなけD
れば
G t は
と一致せずその差をaとする︒なお︑G w
がG t
aより大きければは正︑小さければaは負となるようにすG w
………
•••u
••
Lo)
経済成長理論における均衡成長の安定性について︵山本︶
………••…
•(1.
14 )
八六
経済成長理論における均衡成長の安定性について︵山本︶ ことから
GGG n はの発散の限界でありの
G w Gからの乖離はが
G n に等しくなれば止まなければならないことが判る︒
かくして保証成長の不安定性ということは保証成長率が自然成長率と一致していないために生じることになる︒
以下︑われわれは均衡成長の不安定性ということを︑
八七 この様に保証成長率と自然成長率が一致する傾向がないとい
さて︑シェーリングはハロッド的成長理論における均衡成長の不安定性について次の様に批判する
( Sc h e ll i
n竺26︺
pp
.
870ー
s1 2)
l l ! R
Iに
祖
8中K
の均
g返界は無数の生産者によって遂行される分散された行為であるから︑総ての投資家が現
在の成長率を将来の成長率に投影すると期待する理由はない︒従って現実成長率が毎年益々大きく或いは小さく乖
離していくとは実際上考えられない︒第二に不安定的な︑すなわち妨害に対して持続し得ない様な均衡成長はいわ
ば孵蛎的な存在で実用的な重要性を持たず︑従って政策目標となることが出来ない︒この様にシェーリングによれ
ば現実接近としての基準からも︑政策目的としての基準からもハロッドにおける様な常に不安定的な均衡成長の概
生産函数に関する特殊な仮定こAではハロッド的成長理論においてはどの様な生産函数が仮定されているかと
いう問題を取扱う︒かAる問題はビルビン︹
2 2 ︺
ソロ
ー︹
2 8 ︺等によって充分解明されたところであり︑それらに従って
説明しよう︒
前にも述べた様にハロッド的成長理論に重要な仮定は資本係数一定の仮定である︒このことは資本量と産出量と
の間に線型の比例的な関係のあることを意味する︒次に労佑量と産出量との間の関係についてはハロッドでは特に
指定されていないが︑資本の場合と同様線型の比例的な関係があると考えよう︒この二つの関係を︱つにしてKー 念は不適切なものとなるのである︒ う表現で表わすことにする︒
I 78
ることが判る︒これがハロッド的成長理論における生産函数に関する特殊な仮定である︒
以上われわれは前項でハロッド的成長理論における均衡成長の不安定性を証明し︑またこの項では非代替的な生
産函数の仮定を明らかにした︒しかしこれだけでは均衡成長の不安定性が非代替的な生産函数の仮定の結果である
と容易に断定し得ないことはいうまでもない︒
註
(1 ) ハロッドは以前の﹁経済理論研究﹂(‑九三九︶の冒頭で﹁私が展開せんと提起する理論の原理的基礎は三つの命題から なる︒すなわち
0
社会の所得の水準は貯蓄の供給の最も重要な決定要素であること︑
m社会の所得の増加率は貯蓄の需
要の重要な決定要素であること︑及び︑出需要は供給に等しいことである﹂
(H
ar
ro
d
︹9︺
p.
25
4)
といつている︒
(2
) ただしハロッドの根本的な主張は現実には
G
がaょり大きいから停滞的で︑a
を引き下げるたゆには国内的には利子率
資本 /•
i /
/ ︐
f I I
一一一‑
﹃‑一3 k
01
K2r··-1--·-✓,
‑‑‑‑> /!
K i
L
02
2
9 9 9 )
‑ L
3
99,
' ‑
L
第一図 Pilvin〔泣〕 p.547
労イカ
労佑との間に代替性の全然ない生産函数が
i m p l i c i t
に仮定されてい さい方の数値を意味する︒これらの結果からハロッド的成長理論においては資本と労佑の使用が固定比率において定められ︑従つて資本と a
は資
本係
数︑
bは労佑係数で固定されており
mi n(
︶は括弧中小
01 1m
i士 ︵ 予
i )
︹ 器 ︺
p .
73
)
第一図の様な生産函数はソローによって次の式に示される︒
(S
ol
ow
直角L字型をなし︑その各頂点が原点を通る直線上にある図である︒ L平面に投影すれば第一図の様に示される︒それは生産無差別曲線が
経済成長理論における均衡成長の安定性について︵山本︶
八八
. ・.; ';
経済成長理論における均衡成長の安定性について︵山本︶
ソローは普通のダグラス型の生産函数を用いて︑
格変化による内生的な代替とが区別されるであろう︒
八九
一般に生産要素使用の可変比率︵すなわち
が低下しなければならないが︑利子率はその儘では非弾力的であるので︑政策的に引き下げ︑ひいては零にせよという
\のである︒︵特に第五購︶︑従って︑︐利子率一定を仮定していると見てよいが︑利子率を無視しているとはいえない︒
(3 ) 主としてハンパーグに従ったがハンパーグの証明には数式上の誤謬が多く︑それらはこ4では訂正されている︒ (4 )
更に企業家の投資態度から均衡成長の不安定性の証明が置塩︵︹
2 1 ︺八三ー九0
頁︶
森嶋
︵︹
1 9 ︺一四三ー一四六頁︶助教
授によってなされている︒こ4では本文の証明で十分と思われるから立入らない︒
前 節 で わ れ わ れ は ハ ロ ッ ド 的 成 長 理 論 に お け る 均 衡 成 長 の 不 安 定 性 と
︑ 非 代 替 的 な 生 産 函 数 の 仮 定 と を 明 ら か に した︒そこでもし代替可能な生産函数を仮定すればこの様な不安定性は変更されるであろうか︑ひいては安定的な均 衡 成 長 が 得 ら れ る で あ ろ う か と い う こ と が 考 え ら れ る
︒ も し そ う で あ る な ら ば ハ ロ ッ ド 的 成 長 理 論 に お け る 不 安 定 性 の 原 因 が 非 代 蒋 的 な 生 産 函 数 の 仮 定 は あ る こ と が 間 接 的 に 示 さ れ る で あ ろ う
︒ 既 に 代 替 的 な 生 産 函 数 に よ る 成 長
理論としてはロビンソン︹23︑25︺を別としてピルビン︹
︺2 2
︑ト
ービ
ン︹
29
︺︑
ソロ
ー︹
28
︺︑
フエ
ルナ
ー︹
6︑7︺︑及び稲葉︹13
︺の業績が見られる︒こ
A
で は そ の う ち ソ ロ ー の 成 長 理 論 の フ エ ル ナ ー の 成 長 理 論 と を 紹 介 し よ う
︒ 同 じ く 代 替 的 な 生 産 函 数 を 用 い た 成 長 理 論 で あ っ て も ソ ロ ー の 様 に 技 術 の 進 歩 に よ る 外 生 的 な 代 替 と フ エ ル ナ ー の 様 に 要 素 価 ソ
ロ ー の 成 長 理 論 代替可能な︶の場合におけるハロッド的経済成長の問題︑すなわち保証成長率と自然成長率との関係を巧妙に分析し
dK
て い る
︒ 先 ず 記 号 を 純 産 出 盪
Y ( t
︑)
貯 蓄 性 向
S︑
資 本 ス ト ッ クK (
t ) ︑
及 び 純 投 資
(1
1k
)
と定める︒
dt
二
︑ 代 替 的 生 産 函 数 に よ る 成 長 理 論
. . .
180
を導入し︑それを時間について微分して とであるが︑ モデルの構成が完了したので︑ が成立しなければならない︒ これを
(2 .3 )
成長率n
次にこれによって可能な成長経路を考察しよう︒それは
(2
.
5)
k ̀
L
ソ ロ ー は こ の 場 合 特 に 資 本 労 佑 比 率
( ca p i ta l la bo r ra ti o)
r
11
│
ー に代入すると
を得
る︒
(2.3)は二つの未知数を持つ方程式であるが︑この場合ソローはハロッドの精神に沿うものとして人口の
L(t)11Loent
………
•••(2.4)
K=sF
( K
, L
0
en1)
………•••…
(2.5)
︵ハ
ロッ
ドの
G n に当る︶を独立に与える︒ を(2.1)に代入して
K •
=s
F(
K,
L)
そして
(2 .2 )
については
c o n s
t a n t
r e
t u
r n
t o
s c a l
e (すなわち一次の同次性︶が仮定される︒以上の結果より
(2 .2 )
Y1
1F
(K
̀L
)
さて︑貯蓄投資の均衡関係より
K=sY•
………
(2.1)
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
—‘·ヽ•一
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ‑ , J ‑
であり︑生産函数は前に述べた如く次の様に表わす︒
経済
成長
理論
にお
ける
均衡
成長
の安
定性
につ
いて
︵山
本︶
の解を求めるこ
なるターム
(S ol ow
︹ 器 ︺
p .
68) 九0
.
経済成長理論における均衡成長の安定性について︵山本︶
I I I I
=k
第二図 Solow (2的← P701lT SF(r.l)
号
位相空間に表わして解いている︒すなわち
(2
7) . 数とする非線型の微分方程式に表わされる が得られるが︑ を作る︒これを
(2
.5)
九
の右辺は
資本は人口と
(r
+m
r)
Lo
en
t1
1 s
F(
K,
L0
en1)
………;…
•(2.6)
こAで生産函数における
c o
n s
t a
n t
re
tu
rn
to
s c a l
e
の仮定を考慮して整理すると(2.6)はrを変 に代入すれば
.
.
KI
I(
r+
m︑
)L
oe
nt
r 1 1 s
F ( r ,
1 )
ー
1 2 r
⁝
⁝
⁝
⁝
⁝
⁝
⁝
⁝
⁝
⁝
⁝
⁝
⁝
⁝
(2 .
7)
これがソローの基本方式で︑その儘では解けないが︑ソローは第二図の様に
sF
( r
, 1)
と
nr
との二つの項から出来ているが
s F ( r
,
1 )
はダグラス生産函数と同様縦軸に
凸に描かれるし︑ミ︑は原点を通りnの匂配を持つ直線である︒第二図より次
の結果が得られるであろう︒日?
I I r *においては
r 1 1 0
で ︑
同じ率ミで増加し︑
c o n s
t a n t
r e
t u
r n
t o
s c a l
e
の仮定によって産出量もまた同
じ率ミで増加する口芯
> r rは負となりは:'まで減少しなけれ*であれば.r
ばならない︒国
r^
r*
であ
れば
.
rは正となりr
は戸まで増加しなければな
らない︒この結果如何なるrの初期値から出発しようと︑rは必ず戸に収緻
( 1 )
'
し︑この意味において戸は安定均衡点である︒戸はハロッドの用語法におけ