資本、労働、生活水準 215
資本、労働、生活水準
児 玉 元 平
ユ
新古典派的成長モデルでは,経済の成長率は資本蓄積,労働人ロの成長,技術的進歩に 依存する。貯蓄率とは独立的にきまる。しかし,ここでも貯蓄率は均衡成長径路を構成す る経済変数の絶対的水準には影響する。そして,各均衡成長径路はそれに対応した構造を示 す。われわれは本稿で,これら均衡成長と生活水準との関係を新古典派的モデルで吟味し たい。ここで,生活水準は消費単位で測った人ロの平均所得水準で示される。
資本家生産の一生産物経済を想定し,産出量はネットで測ると,
Y(t)=C(t)十1(t) (1.1)
産出物は消費財にも資本財にも使用しうる。(1.1)については,コッブーダグラス的生 産関数を使用する。
(注1)
Y=emtLαKβNγ (1.2)
Lは労働の雇用量,Kは資本ストック, Nは土地, mはピックス的な意味の中立的技術進 歩率を示しヨ生産の弾力性については,0<α<1,0<β<1,0<ツ<1で,
α+β+ツ隅1 (1.3)
と仮定する。(1.2)より成長率を求める。
墓一←α豊÷+疇÷鴫録+m (・・4)
Yの比例的成長率をG(Y),しの比例的成長率をG(L), Kの比例的成長率をG(K),
:Nの比例的成長率をG(:N)で示すと,
G(Y)一αG(L)+βG(K)+γG(N)+m (1.5)
G(L)とmはモデルのパラメーターとする。さらに労働単位で測った現実の労働人口を L、で示と,完全雇用の仮定でL一:L、である。投資は,
誓一工(t) (・.6)
貯蓄は,
S(t)一sY(t) (L7)
エー誓一・Y(t) (・.8)
そこで,
sY(t)
(L9)
G(K)一 K(t)
いま,資本成長率の変化率を求める。貯蓄率を.不変として,
dG(K) 1
=G(Y)一G(K:) (1.10)
dt G(K)
(L5)を代入して,
鰹響G蚕「αG(L)+βG(K)+γG(N)+m−G(K) (・…)
G(N)一〇と仮定すると,
d等K)G毒)一αG(L)+(β」・)G(K)+m q・・2)
〃 =αG(L)一(α十γ)G(K)十m (1.13)
〃 一(α十ツ)(α黙血一G(K)) (・.・4)
三つのケースが求められる。
αG(:L)+m
>G(K)の場合,資本の成長率は上昇的である。(1)
α十γ
(2)亜餅m〈G(K)の場合,資本の成騨は低減的である・
(3)響皆m−G(K)の場合,資本の成長率は不変である・
(3)のケースでは
G(Y)一G(K)』醤m (・.・5)
となる。 (1.15)が均衡成長率を示す。労働単位で測った雇用労働人ロー人当りの所得
は,
G(Y)一G(L)一当響L響二号)・ (L・6)
この場合一γG(L)は固定的な土地に対する労働人ロの圧力を示している。一人当りの所 得水準が上昇するためには,技術的進歩の効果がこの圧力を圧倒するに足るものでなけれ
ばならない。即ち,m/γ>G(L)でなければならない。
ところで,各生産要素の報酬は各限界生産物に応じて支払われるとすると,各生産要素 の生産弾力性はまた所得分配率を示すこととなる。
w一{繕一αモ (・.17)
・一祭一β÷ (・.18)
n一器一γ着 (・.・9)
(1ユ7)より,
密一÷一G(Y)一G(L) 『 (・2・)
資本,労働,生活水準 21ワ
書÷一G(Y)一G(K) (L2・)
審÷一G(Y)一G(N) (・・22)
(1ユ8)は,
・一β÷一ξ餐一÷G(K) (・・23)
とおくことができる。そこで均衡成長では,資本利潤率は,
・一÷α讐チm一÷鰹跨m (・・24)
資本利潤率はmとG(L)が大であるほど高い。またβが大であるほど,γが小であるほ ど,sが小であるほど, rの水準は高い。ここでこのツは固定的な土地が資本生産力にあ たえるところの圧力と考えてよい。
(L20)は(1.16)と同じである。そこでm/γ>G(L)である限り,実質賃金率は一 人当りの所得と同じ率で上昇する。均衡成長の状態ではG(Y)一G(K)であるから,資本 の限界生産物はコンスタントである。技術的進歩が実質賃金率を上昇せしめるかぎりで は,ウイクセル的意味で発明は労働の味方である。もっとも,ウイクセルは発明は時には 労働の敵であることがあると付言している。この新古典派モデルでは成長率方程式には貯 (注2)
蓄率があらわれていない。しかし,貯蓄率の変化は各変数の絶対値に影響をあたえる。貯 蓄率の増大は資本の深化を生ぜしめることは明らかである。また,貯蓄率の増大は実質賃 金率の水準を高める。ウイクセルはこの点で資本家的貯蓄者は根本的には労働の味方であ
るといっている。以上は新古典的成長モデルの構造を最も単純に示したものである。
(注3)
2
経済の所得階級を労働賃金のみを取得する労働者階級と,資本利潤と土地地代のみを取 得する財産所有者階級一以下われわれは資本家階級と呼ぼう一とに分ける。中間的な 所得階級は存在しないと仮定しよう。いま,消費単位で測った資本家的人口を:L,,労働者 的人口をLwで示し,労働単位で測った労働人口を:L。,現実に雇用された労働人口をし で示すと完全雇用はL、一しで示される。財産所得をP,賃金所得をWで示すと,
Y=P十W (2.1)
W=wL=αY (2.2)
p=γK+nN=βY+ッY (2.3)
P=(β+γ)Y=(1一α)Y (2.4)
S諏Sp(1一α)Y (2.5)
・一二一・・(卜α) (2.6)
s,は資本家的人ロの貯蓄率を示す。労働者階級は貯蓄しないと仮定されている。
誓長一餐一αG麟里 (2.7)
そこで,
s・(1一αK)L嘱鴇面一αGl聖声m (2・8)
貯蓄率は資本家的人ロの平均所得の関数として第1図のごとく示そう。す,は貯蓄率の上 限を示し,OAではs。一1である。生活水準がOP、の高さでは貯蓄率はOBの高さと なる。 一
Sp A
Sp
B
0
E
幽
一 一 一 一 圃 幽 一 一
C
第
R
1 図
㌃
BA=(1−Sp) (2.9)
そこで,
BCEA一(1−s・釜,ユーα)呈 (2・)
は資本家人口の一人当り消費支出を示す。またこの人口の成長率はこの人口の生活水準の 関数として第2図のごとく示そう。極大人口成長率はくG(L,)で示され,生活水準がA 点をこえて高くなると人口成長率は石(L,)でコンスタントとなる。労働者人ロの成長率 (注4)
はまた,その生活水準の関数として第3図のごとく示そう。
ところで,生活水準は,
呈ト三舞 (2…)
この式でLw/L、は人口の依存率(dependency ratio)という。 Dで示そう。 L、一しであ (注5)
資本,労働,生活水準
るから,
αY αY l w
Lw L D D
219
(2.12)
G(Lp)
へ
G(Lp)
G(Lp)
0
1 1
1
屡
8
1
P A /Lp第2図
G(Lw)
台(Lw)
G(Lw)
8
奮一『一 u「一一一
l
I I I
璽 書1
0 C B W
第3 図
D
分
百
0 B W
第 4 図
労働者人口の生活水準は実質賃金率と依存率に依存する。ここでは,人口成長率が大であ るほど依存率も大であると仮定されている。出生率の上昇は時間的オクレをもって労働人 口L、の増大を生ぜしめるが,この時間的オクレの間は依存率は特に大である。第4図は wとDとの関係を示す。万は吾(Lw)に対応するようにえがかれている。完全雇用の仮定
では,
D一二ー与 (2ユ3)
そこで,成長率を考えると,
G(D)・=G(しの一G(:L) (2.14)
均衡成長ではG(L)はコンスタントでなければならない。G(Lw)がコンスタントでDが コンスタントであればG(L)もコンスタントである。そこで,wがきわめて高水準では Dで不変,否(Lw)で不変であるからG(L)もコンスタントとなる。反対にwが低い水準 でもG(Lw)一G(L)でG(D)一〇となるような場合も考えうる。もっともδ(Lw)に達し た以後では実質賃金率は人口成長率を一定して限りなく上昇しうるが,低い実質賃金率で は人ロの成長率が産出量の成長率にひとしいと,その水準でwは停滞することとなる。
G(Y)一G(L)一」暫甥処・ (2・・5)
そこで,この場合m〒ツG(L)ぞある。技術進歩の効果と固定的な土地に対する入口増加 の圧迫的効果とが丁度相殺し合った場合である。生活水準はこの場合コンスタントである。
wが限りなく上昇するケースは,既述のごとく,m>ッG(L),即ち,技術進歩の効果が
資本,労働,生活水準 221
固定的な土地に対する人ロ増加の圧迫の滅殺しうる以上のものである場合である。
資本家的人ロを吟味する。均衡成長の状態では貯蓄率Sは不変でなければならない。仮 定により,αは不変であるかs,がコンスタントでなければならない二つの場合が考えら れる。この生活水準がきわめて高い水準に達するとs,一百,でコンスタントである。冨,で
コンスタントの範囲では生活水準は限りなく上昇しうる。つぎに低い生活水準を考える。
去一(1一α)÷ (2・・6)
αが不変であれば,Y/L,がコンスタントであるとP/L,もコンスタントとなる。 G(Y)
一G(L,)
αG(L)+m
−G(:し,)
1一β
(2.17)の値はG(L)の値に依存する。石(Lw)=吾(L)であると,
α否(Lw)+m G(Y)一
=G(:L,)
1一β
また,G(Lw)=G(L)一m/γであると,
∠撃静一G(L・)
G(Y)=G(L)=m〃=G(Lp)
となる。ところで, (2ユ8)は,α+β+ツ=1であるから,
α警睾m一訴γd(L、.)+α隼γ夢
となり,この場合のG(Y)の値は百(Lw)と1n/γとの間に存在する。
(2.17)
(2.18)
(2.19)
(2.20)
(2.21)
3
各均衡成長径路はそれに対応した生活水準のパターンをもつ。その条件を吟味したい。
生産関数は新古典派的な要素代替可能性をもち,その弾力性は1とする。均衡成長の状態 では資本家的人口と労働者人口の成長率はコンスタントでなければならない。これらは,
資本家二人口の生活水準と労働者人口の生活水準とが或る臨界的水準をこえると成立しう ることは前節で示した。先ずこの場合を考察しよう。P/L,の水準は否(L,)を成立せし ある水準に達していなければならない。wの水準は否(Lw)を成立せしめる水準に達して いなければならない。この範囲ではP/L,,wは上昇的である。
G(Y)>G(Lw) (3.1)
でなければならない。G(Lw)=谷(Lw),そこでG(L)=否(Lw)。したがってm>αG(L)。
P/L,が上昇的であるためには,(2,16)でG(Y)>G(:L,),G(L)=石(L。)であるから,
α否(Lw)+m
>石(Lp) (3.2)
1一β でなければならない。
ところで,w≧OBであるような高い水準であるためには,生産関数の技術的条件によ り∂Y/∂しが高い水準で上昇せしあるに足るほど,労働人口の絶対的水準が他要素に比し て相対的に小でなければならない。同様にP/L。≧OAであるような高い水準であるため には,生産関数の技術的条件によって,資本は高い生活水準を実現せしめるにたるほど一一 土地は固定的と仮定としている一十分に小でなければならない。G(Y)一G(K)である
から,
S・(1一αK)L嘱睾m>否(瑞) (3・3)
この条件が成立するような資本,労働,土地の間の関係が成立していなければならない。
つぎに,労働人口の生活水準が停滞的で資本家人口の生活水準が上昇的なケースを考え る。まずつぎの条件を必要とする。
m/γ=G(L)一G(Lw)一G(Y) (3.4)
労働所得の分配率はこの低いwの水準でコンスタントである。技術進歩の効果は固定的な 土地に対する労働人[コ成長の圧力(7G(L)を丁度相殺するに足るものである。 P/:L,が 上昇的であるためには,G(Y)〉否(L,),そこでrn/γ〉否(L,)である。技術進歩の効果 は固定的な土地に対する資本家二人口成長の圧力(ツG(L,))を相殺する以上のものでなけ ればならない。したがって,労働人口は他要素に比して相対的に大きく,資本家的人ロ は,高いP/L,の水準を実現せしめるに足る程相対的に小でなければならない。
G(L)=G(Y)一m/ッ (3.5)
であると,
G(K)一面一二・( 蚕α)Y−G(Y)一m/γ (3・6)
(3.6)を成立せしめるY/Kの比率,またその条件を成立せしめるに十分な資本調整が なければならない。
資本家的人ロの生活水準が低い水準で停滞的で,労働者人口の生活水準が高い水準で上 昇的であるケースを考える。w一αY/しが上昇的であるためにはG(Y)>G(L),そこで m/γG(L),技術進歩の効果が労働人証増加の圧力を相殺して尚あまりあり,生活水準が 上昇的であるためにはαY/LwよりG(Y)>G(Lw)であらねばならぬ。そこで, m>γ否
(Lw)。 G(L)=否(Lw)であると,
αG(Lw)十m
(3.7)
G(Y)一
1一β
資本家的人口の生活水準が停滞的であるためには,G(Y)=G(L,)である。この場合,
δ(L・)≧α否1睾m (3・8)
でなければならない。労働人口はw≧OBを成立せしめるに足るほどに他要素に比して 相対的に小でなければならない。また,資本家的人口はその生活水準を低い水準にて維持 せしめるほど十分に相対的に大であらねばならぬ。資本はまた,つぎの条件を成立せしめ
資本,労働,生活水準 223
るよう他要素と調整していなければならない。
s・(1長α)Lα否讐m (3・9)
最後に,資本家的人ロと労働者人口の生活水準が共に低い水準で停滞的である場合を見 る。αY/Lwがコンスタントであるためには, G(Y)=G(Lw),そして, m/γ=G(:L)=
ハG(Lw)であらねばならぬ。これはG(Lw)≧rn/γめ範囲で成立しなければならない。資 ム本家的人平の生活水準が停滞的であるためにはG(L,)≧m/γの範囲内でG(Y)=G(L,)
が成立しなければならない。G(Y)一m/γであると, m〃一G(L,)である。又, wと P/L,の水準が低い水準で停滞的であるたあに1さ,資本家的人口と労働者人口とは,その 状態を実現せしある程大であらねばならぬ。均衡成長では,
Sp(1一α)Y
=G(Y)一rn/γ (3ユO)
K
(3.10)とそれに対号するY/K:を実現せしめるに十分な資本調整が存在しなければなら ない。いままでの分析で人[]の絶対的な大きさがその生活水準の高さをきめるに重要であ ることは,固定的な土地の存在という仮定に依存する。所与の技術一定量の土地の下で は,大なる人口は低い生活水準と結びつき,小なる人口は高い生活水準と結びつく。この 結合の濃度は技術進歩の効果に依存する。土地要素の生産弾力性γの値が大であり,労働 人口の成長率も大であり,そしてまた,技術進歩率が小であるならば,資本蓄積の大なる 先進経済にあっても,その実質賃金率wは低い水準で停滞的となるかもしれない。
4
ここで,生産要素の技術的代替の弾力性が零の場合に転じよう。生産要素の生産力係数 は固定的と仮定される。なお,技術的進歩はハロッド的な労働増大的技術進歩とする。そ (注6)
こで,能率単位で測った労働量をτで示そう。
÷一・・÷一b (4・・)
そして,
τ=emtLa (4.2)
いま,資本と労働でYを生産しうるとする。生産関数は,、
Y=rnin(bK, aemもL。) (4.3)
現実の雇用労働をしで示すと,
Y=bK=aemtL≦aemtL、 (4.4)
とおくことができよう。労働と資本の完全使用では,
Y=bK=aemtL=aemtLガ (4.5)
資本の成長率は,
G(K)一審一・b (4・6)
また,
G(Y)=G(K)=m十G(L) (4.7)
均衡成長では,D−L。/L、はコンスタントである。完全雇用ではし.一L,そこで, G(L)
一G(:Lw)である。労働者は貯蓄しないと仮定すると,
G(Y)鷲G(K)一bβs,=m+G(Lw) (4.8)
この式でβは資本所得の分配率を示す。
m+G(Lw)
(4.9)
β=
bSp
・一β」虻鷺G(Lw)一 (4…)
上の二式は資本と労働の完全使用を維持するに必要な所得分配率を示す。賃金率は,
÷一・げ・,過冷)L(・一β)・ず・ (4.・ユ)
(1一β L)Lw一…二郷麹一ae・・ (4・・2)
資本利潤率は,
・一二一一響一m+£(Lw) (4・・3)
ハロッド成長モデルにそくしていえば,m+G(L)は自然成長率, s。βbは適正成長率で
ある。
まず,労働者人ロの生活水準と資本家的人口の生活水準が共に上昇的なケースを考え る。生活水準が上昇的であるためには各人口成長率が百(Lw)と鳶(L,)となる程高いw とP/L,の水準に達していることが必要である。 (4.8)より,
G(Y)=bβSp−m+G(Lw) (4.14)
資本所得の分配率は,
m+石(Lw)
(4.15)
β.=
bすP 労働所得の分配率は
b百『一Inて∫(Lw)
(4.16)
1一β=
bすP
ところで労働所得の分配率が非負であるためには,
て}(Lw)〈b至一p_m (4.17)
でなければならない。
b>亙(;坦+m (4ユ8)
Sp
(4ユ8)の右辺は資本利潤率を示すから,資本の生産力係数は資本利潤率より大でなけれ
資本,労働,生活水準 225
ばならない。また,否(Lw)が大であればあるほどbとmが一定であれば(1一β)が非 負であるためには,す,も大とならねばならない。 (4.9)式で貯蓄率の低下は資本利潤 の分配率を上昇せしめる。これはカルドア的なWidow s Cruse効果である。
βがコンスタントであると,資本家的人口の生活水準は,
÷一(m+否(Lm b百P L「))Y
で上昇的であるためめためにはG(Y)>G(L,)。このケースでは,
m+百(Lw)〉石(L,)
(注7)
(4.19)
(4.20)
でなければならない。生産力係数は固定的であるから,完全雇南の労働人口に対応した資 本の最適章が存在しなければならない。
ae皿tL、
(4.21)
K=
b
資本家的人口の生活水準がその人口成長率をコンスタントならしめる水準,即ち,臨界 的水準第2図OAより小であってはならないためには,
(P:Lp)謹三≧・A (4・22)
(G(鴇+m)bK≧。A (4.23)
Lp
(百(Lw)+m Sp) (書)≧』 (4・24)
資本家的人口は上の式をみたすものでなければならない。その人口があまりに大であると その生活水準は上昇的となりえない。賃金率の水準についても同様にその臨界的水準より 小ではあってはならないから,
w一興一暴r否(Lw)ae・・≧厨 (4・25)
そこで,
ae・・≧瓦一芸≒(』)茄 (4・26)
技術進歩が上式の条件をみたすものでなければならない。
つぎに,資本家的人ロの生活水準が上昇的であるのに労働者人ロの生活水準が停滞的な ケースを考える。賃金率は,
w一r異し(・一β)ae・・ (4.27)
コンスタントであるためには,
讐÷一d(1一β) 1dt (1一β)+m一・し (4.27)
−d(1一βdt)r無二rm (4.28)
労働増大的技術進歩率と同じ率で分配率が低下しなければならぬ。労働人口の成長率が資 本の成長率と同一であると賃金率は一定の水準で停滞的であ。技術進歩の経済効果はすべ て資本家に帰属することとなり, (1一β)は漸次零に近づく。利潤分配率は1に近づ
く。 (4.8)より 一 G(Y)=βb百。=m+G(Lw) (4.29)
βが1に近くから,G(Y)はb百,に近づく。そしてG(Lw)はb言,一mに近づく。勿論こ・
の場合労働人口の圧力が賃金率を停滞的ならしめるほど大であるべきだから,極大人ロ成 へ長率についてはG(Lw)≧bす一mでなければならない。資本家的入口の生活水準は継続
的に上昇し,β一1に近づく。そのためには,
去一一聾 (4・3・)
により,G(Y)>G(L,)でなければならぬ。そして, G(Lp)一否(Lp)であるからbず,〉
否(L,)でなければならぬ。資本と労働とは完全使用であるためには,
吾ギt (4・3ユ)
資本と労働の存在量はこの式をみたすものでなければならない。資本家的人ロの生活水準 が継続的に上昇してゆくためには,生活水準は臨界的水準(第2図を見よ。OAで示す。)
にひとしいか,またはそれより大でなければならない。
丑一華γ≧・A (4・32)
そして,また,βは殆んど1に近づいているとY=bKであるから,資本家人口は,
L,≒錠K (4.33)
賃金率については,
w一( 士β】L(ユーβ)・♂・ (4・34)
W
(4.34)
β一1−
ae蹴
そこでβが殆んど1に近い状態では,G(Y)は殆んどbす,の値に近い。技術進歩の程度 はw/ae蹴が殆んど零に近い水準に低落せしめているものでなければならない。
資本家人ロの生活水準が停滞的で労働者人口の生活水準は継続的に上昇するケースを考 える。wが上昇的であるためにはG(L)=否(Lw)そこで, G(Y)=rn+G(Lw)。この場 合,技術進歩の効果は労働者人ロに帰属する。資本三人ロの生活水準がコンスタントでる ためにβがコンスタントであるならばd(Y)=G(L,)でなければならない。
G(Y)=G(K)一s,βb=否(Lw)+m (4.35)
であるから,
資本,労働,生活水準
G(Lp)=石(Lw)一m
が成立するような資本家的人ロは成長しておらねばならない。また,
・一β」s・一憲石(L立 ところで, (1一β)>0であるためには,
bs,一m>石(L。)
でなければならないし,
るためには,極大人口成長率との関係は,
ム
G(Lp)≧否(Lw)十m
22ワ
(4.36)
(4.37)
(4.38)
(4.36)を成立せしあるような資本家紫電ロの生活水準が存在す
(4.39)
でなければならない。また資本と労働の完全使用が成立しているためには,
吾一a害も ゾ (4・4・)
の関係を成立するような存在量でなければならない。L,の大きさは, P/L,が停滞的で あるためには,
心際 (4・4・)
(4.35)より,
、葺一(否(Lw)+m bSp Lp)Y 醐
L・」(七慧1柳p恐 (4・43)
停滞的な生活水準で上式をみたすようなし。でなければならない。技術進歩によって労働 者人口の生活水準は継続的に上昇するから,技術進歩については,臨界的賃金水準斎とす
ると,wはこの水準にひとしいか,またはこれより大でなければならなぬから,
W=(1一β(aemt≧w (4.44)
の式より,
ae・・≧玉、,一吉≒(L評 (4・45)
この式をみたような技術進歩でなければならないであろう。
最後に,資本家人口と労働者人口の生活水準が共に停滞的である場合を考えよう。労働 増大的技術があり,しかも,実質賃金率が停滞的であるためには,技術的進歩率にひとし い率で(1一β)が低下しなければならない。このことは,技術進歩による効:果がすべて 資本家人口に帰属することを意味する。ところが,資本的人口の生活水準も停滞的である ならば,G(Y)二G(L,)でなければならない。恒常的な成長状態はβが殆んどユに近い場 合に成立するから,この場,G(Y)=bs,であるから,
G(Y)一bsp−G(:Lw)十m=G(Lp) (4.46)
G(Lp
b5P
G(Lp)
C
0 bSp
,
@f 1
1!
!m l G
P 1
! 8
ノI 1
!
brp ノ
@ ,
航1
Il
ノ ,
1
D A
G(Lp)
肱
第 5 図
である。G(L,)がbs,となるような水準を第5図で求める。グラフではODの生活水準と OC成長率が求あられる。資本の成長率と能率労働の成長率とが相ひとしいと, G(L。)一 bs,一mである。このG(Lw)の値でwとDの水準が求められる。つぎの条件が示され
ハ ム
る。G(Lw)≧bs,一mでなければならない。もしG(Lw)<bs,一mであると,賃金率 を停滞的ならしめる程高い労働人口成長率が存在しないこととなる。資本家的人口の生活 水準が停滞的であるためには, (4.46)式の関係が成立しておらねばならない。これは G(L,)曲線とbs,曲線で求められた。ところで,もし, G(L,)曲線が全ての生活水準に とってbs,曲線の左側に位置するようであれば,資本家的人口の生活水準を停滞的なら しめるような高い人ロ成長率は存在しないであろう。
資本と労働の同時完全使用が成立するためには,
考「一a誓t (4・47)
の条件式をみたさねばならない。資本家的人口の大きさは,技術的進歩にもかかわらず停 滞的であり,而も技術的進歩の効果は全て資本的人口に帰属するこのケースでは,βは殆 んど1に近くなっている。そこで,Y=bK:より,
丑一警 (4・48)
四一誓 (4・49)
資本ストックKに対してこの式をみたすようなし,の大きさでなければならない。
資本,労働,生活水準 229
以上の分析は,所与の人口成長率曲線,貯蓄率曲線の下で,労働者は貯蓄しないという 仮定でなされた。ところで,労働者の生活水準が技術的進歩の効果によって,継続的に上 昇するような場合,いつまでも労働者は貯蓄しないという仮定を保持しうるであろうか。
もし,労働者が貯蓄し,その貯蓄の結果として資本を所有するにいたるならば,労働者は また資本所得を取得し,資本家的性格をもつにいたるであろう。パシネッティー問題が生 じるであろう。賃金貯蓄が投資資金の調達に使用されるならば,そして,労働者が賃金と (注8)
その投資に対する利潤を取得するにいたるならば,所得階級としての労働者階級と資本家 階級と,賃金と利潤との所得カテゴリーとの間の対応関係が不明確となる。労働者人口の 貯蓄曲線の導入が必要となるであろう。さらに,生活水準の長;期的な変動パターンが人ロ 成長関数のシフトを生ぜしめ,このシフトの反作用の吟味が問題となるであろう。
注
(1)このタイプの生産関数を経済分析において陽表的に使用した最:初の人はウイクセルであった。
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(2)J.K. Wickse11, Lectures, Volulne One, P.164.
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