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岡田裕正

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(1)

環境適合理論と会計システム

−管理会計システムを中心として−

岡田裕正

t.はじめに

組織と会計システムとの関連を考察するとき,大きく分けて2つの方法が あるように思われる。ひとつは組織の中の人間や集団の存在に焦点をあて,

それらと会計とのかかわり合い,すなわち一方から他方への影響を見たり,

相互の関係を検討する方法である。これに対して,組織の構造に焦点をあて,

組織構造に応じてどのように会計システムが決まってくるかを検討する方法 がある。

環境適合理論に基づく会計システム論は,このうち後者に属するものとい うことができるが,Laugh1in=Lowe[1990]によると,この会計システム論 は組織をオープンシステムでしかもラショナルシステムとして捉えたものと

1)

して分類されている。これまで,この環境適合理論に基づく会計システム論 についての考察は管理会計システムを中心に行なわれている。そこで本稿で

はWaterhouse=Tiessen[1978],Otley[1980]およびTiessen=Waterhouse

[1983]の所説を中心に,環境適合理論に基づく会計システム論の展開を見 ていくことにする。

1)Laughlin=Lowe[1990]pp・28−29・

(2)

2  .環境適合理論に基づく管理会計システム論

周知のように環境適合理論とは,有効な組織の構造やプロセスは,技術や 環境という組織のコンテクストに依存して決まるものであり,さらにこの組 織構造に依存して組織のコントロールのあり方が決まるというものである。

このとき組織構造は目的を持って設計されたメカニズムと見なされている。

そして,このフレームワークの下で,会計システムはこのコントロールのあ り方と要求に基づいて決まると考えられている。

そこで,それぞれの内容とそれらの関係が問題になってくるのであるが,

これらの点について, Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J に基づいて整理してみ よう。

( 1   ) 組 織 コ ン テ ク ス ト ‑ 技 術 と 環 境 ‑

まず組織コンテクストは,上記で述べた技術と環境に対応した技術変数と 環境変数という 2 つの状況変数に分けて考察されている。これらの内容は論 者によって統ーした見解があるわけではないが, Waterhouse =  Tiessen  [ 1 9 7 8 J では次のように考えられている。

技術変数に関しては,これをルーティン的技術から非ルーティン的技術と いう連鎖で捉えている。さらに,この技術の内容は,①原材料を変換すると きに生じる例外の数と,②例外が生じたときに用いられる調査プロセスの性 格という 2 つの変数から構成されるものと理解されている。①は,技術を原 材料の性格という点から捉えたものであり,例外の数が少数しかない状態か ら多数の例外が存在する状態までの聞の値をとる。②は,技術を調査プロセ

2) Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 ]   p .   6 6 。同様の指摘は O t l e y [ 1 9 8 0 ] においてもなされて

いる ( p . 4 1 9 ) 。なお,組織構造を決定する要因として,技術と環境以外に規模も指摘

されるが,これについての言及は本稿で検討の対象とした所説ではなされていない。

(3)

スの性格という点から捉えたもので,論理的,システマティック,分析的,

プログラム化可能,非常に非構造的という値をとる。このように 2 つの変数 に分けて技術が構成されると考えた場合,ルーティン的技術とは例外がほと んどなく,例外があったとしてもそれはシステマティックに分析できる状態 であり,非ルーティン的技術とはシステマティックな調査を適用できない例 外が多数発生する状態と理解されている。)

技術を 2 つの下位変数から構成して考えるのは,技術がルーティン的な状 態と非ルーティン的な状態との聞を動くときのメカニズムを明らかにしよう とするためで、あると思われる。それは次のようなプロセスをたどるものとさ れている。

①  経済や政治の変動というような環境ファクターが生じる。

②  それが経営者をして組織とアウトプットの変更を余儀なくする。

①  アウトプットの変更は原材料変換の例外ケースをもたらす。

①  例外が生じると調査プロセスが始まる。

①技術変数の状態が変わる4l

すなわち, Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J では,単に環境の変動が生じた ならば,すぐにそれに応じて技術変数が変化するとは考えていないのである。

したがって,環境の変化が生じても,技術の変化が生じない可能性があるこ とを示唆していると理解することができる。

他方,環境変数は予測可能な状態から予測困難(不可能)な状態という連 鎖の中で変化するものと考えられている。 Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J は , この環境をさらに,①組織内部の心理的・社会的ファクターから成る内部環 境と②組織外部環境の 2 つに分類している。さらに,組織の中の部門の立場 から環境を考えると,②の外部環境は,下位部門にとっては外的ではあるが,

3) Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J   p .   6 7

4 )  Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J   p .   6 7 。

(4)

組織全体から見ると内にある環境と,下位部門にとっても組織全体にとって も外的な環境に分けられている。

このように分類される環境であるが,いずれの環境に関しでも, W a t e r h o u s e

=Tiessen [ 1 9 7 8 ] では,環境を①単純か複雑かという点と②静的か動的かと いう点から捉え,このうち,②に関しては,時の経過に伴って生じる変化に 諸ファクターが従属する程度が,意思決定における不確実性を引き起こす重 要な要因となるかどうかで定義されるとしている。環境がもっとも予測可能 な状態は,環境が単純で静的な状態であろうし,予測困難な状態とは環境が 複雑で動的な状態であるということができるであろう。

以上が,技術と環境に関する W a t e r h o u s e=  T i e s s e n 口 9 7 8 J の説明である。

いずれの変数も 2 つの要素から構成されると理解されている。しかしながら,

以下の議論において W a t e r h o u s e=  T i e s s e n [ 1 9 7 8 J では,技術は単にルー ティン的か非ルーティン的かということで捉えられ,環境は単に予測可能か 予測不能かということで捉えられている。

このように技術と環境という 2 つの状況変数を捉えているのであるが,こ のような状況変数に取り固まれる組織を分析する単位として W a t e r h o u s e

= T i e s s e n [ 1 9 7 8 ] は,組織全体ではなく,その中の部門を考察の単位にしよ うとしている。それは,操業職能と管理職能という 2 つの職能が組織には存 在しているが,それぞれに対する状況変数の影響を考えることができるから

5) Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J   p .   6 6

0

なお , Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J では,環 境の具体的な例は明示されてはいないが, S c o t t [ 1 9 8 1 J によると,インプットの源泉 とアウトプットの市場,顧客,競争会社,同盟会社,法規制,規制官庁が環境の例と して示されている ( S c o t t [ 1 9 8 1 J p .   4 1 3 ) 。

6) Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J   p .   6 6

Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J では,環境が単

純か複雑かということについて特に説明されていないが, S c o t t [ 1 9 8 1]では外部から

得る情報の処理や資源の入手ということにかかわらせて理解している ( S c o t t [ 1 9 8 1 ] p .  

4 1 3 ) 。

(5)

である。ここで,操業職能とは,できるだけ効率的かっ効果的に,特定の組 織の課業が達成されるように保証するプロセスのことであり,これは,組織 のインプットをアウトプットに変換する際に用いるべき手続きを明示し,遂 行し,調整することに関わる。これに対して,管理職能とは,実行されるべ き課業の明確化,組織単位によって用いられるべき材料および労働力の調達,

製造される製品の販売の保証,操業職能の調整指揮,下位部門聞のコンフリ クトの解決,階層聞のコンフリクトの解決,境界にまたがる活動の調整など を行うことによって,組織の操業職能を管理する責任を持つものである。そ して,操業職能の構造とプロセスには主に技術変数,管理職能の構造とプロ セスには主に環境変数が影響するものとして理解されている。ただ,このよ うに組織を 2 つの職能に分けて考察する場合,両者の相互関係が問題になっ てくると思われるのであるが Waterhouse=  T i e s s e n  [ 1 9 7 8 J では,この点 について特に考察されていなし

1

( 2 )   組織構造

以上が組織の状況変数の内容であるが,これらの変数は組織構造とどのよ うに関係するのであろうか。この点について, Waterhouse=Tiessen[1978J  では,両者の聞をつなぐものとして,権力と権限が考えられている。ここで,

権力は組織が直面する技術や環境の不確実性と関連すると考えられている。

すなわち,権力は個人が不確実性にどの程度対応する能力を持っているのか ということをその源泉としているのである。この権力は個人の知識や技能と,

必要なときに適切な情報を入手する能力とに基づくものである。そして,組

7) Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 ]   p .   6 8 。なお. Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 ] では明言

されていないが. 0 t 1 e y [ 1 9 8 0 ] によると. Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 ] における操業

職能は Anthony のオペレーショナルコントロール,管理職能は戦略的計画の一部とマ

ネジメントコントロールに対応するものと説明されている。

(0

t 1 e y [ 1 9 8 0 ] p .   4 1 8

0 ) 

(6)

織内の権力の分布は,環境不確実性と非ルーティン的技術が個人が権力を実 現することができる基礎を形成可能にする程度に応じて,組織の下位部門の 状況に依存する。

しかし,組織構造はこの権力と直接に関係するのではなく,それが組織内 部で正当化され,規範的に遂行されることが期待される権限になることが必 要である。権限は,所有者の目標を組織内の個人や組織が実現することがで きるようにするために,組織内の個人や集団に認められるものである。そし て,組織構造というのは,この権限の分配のあり方,つまり,集権から分権 という連鎖の中で捉えられる。)このように権限は企業の所有者の目標の実現 のために認められたものと考えられているのであり,ここに Waterhouse

=  T i e s s e n [ 1 9 7 8 ] における企業観を見ることができるのであるが,権限の分 配はこの所有者の目標をもっとも有効に実現できるように決められることに なる。

どのような権限をどのくらい認めるかという分権化のあり方,つまり組織 構造を決めるためには,組織内の個人が権限を持っている活動のタイプを明 確にしていなければならない。すなわち,先に述べた組織内の 2 つの職能に 分けてその点を見ると,管理職能の場合には環境の不確実性に対応して分権 化が生じるのにたいして,操業職能の場合には技術の非ルーティン性に対応 して生じると考えられているのである。なお,集権的組織と分権的組織につ いてもう少し具体的に説明すると次のようになる。

集権的組織は,組織の下位レベルに活動を委譲する手段と考えられている。

このことは下位レベルの個人にたいして,遂行すべき手続きを明確にするこ とを必要とする。遂行すべき手続きを明確にすることが可能となるためには,

8) Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J   p p .   68‑69

9) W a t e r h o u s e = T i e s s e n [ 1 9 7 8 J   p .   6 9 。

1 0 )   Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J   p .   6 9

(7)

操業職能に関しては,技術が既知でありかつ比較的安定していること,つま りルーティン的であることが必要であり,管理職能に関しては,環境が比較 的予測可能で安定していることが必要である。いずれの職能についても,集 権的組織の場合には,手続きの明確化ということが重要なポイントとなる。

また手続きが明確にされると,組織内の個人の権限を明確にすることができ,

それは裏返すと権限を限定することができるということにもなる。) これに対して,分権的組織は,環境が不確実,または技術のルーティン性 が低い場合に見られる。このとき,集権的組織に見られるような手続きの明 確化が困難となり,手続きに関する知識とその適用は,管理・操業職能の問 題解決に対する訓練や経験を積んだ個人に帰属してしまうごとになる。この ような個人は,問題解決や課業の遂行にあたって,自由裁量を発揮しなけれ ばならなくなる。このことは,これらの人の組織における権力を高めること になり,それが分権化の採用につながるのである。

( 3 )   コントロール

このように組織構造は権限の分配として捉えられるのであるが,このこと が組織におけるコントロールプロセスの理解にも関わりを持ってくる。この 場合のコントロールとは,権限を与えられた人間の逆機能的な行動に対する ものである。つまり組織は所有者の目標を実現するために存在すると考えら れているので,権限を持った個人や集団が自らの目標の実現を目指して行動 することによって,所有者の目標や組織目標を損なわないようにすることが 必要になるのである。そこで,集権的組織と分権的組織とに分けて,そこに おけるコントロールがそれぞれどのようなものか見てみよう。

集権的組織では,手続きが明確にされているので,そこにおけるコントロー

1 1 )   Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J   p p .   69‑70 。

1 2 )   Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J   p .   7 0 。

(8)

ルは,この明確にされた手続きが遵守されているかどうかを見ることによっ て遂行できる。またコントロールのためのデータの生成と利用は,行動が容 易に予測でき観察測定できるので,比較的簡単なことである。

分権的組織では,集権的組織に見られるような手続きの明確化に基づくコ ントロールをすることができない。組織における問題解決や意思決定は権限 を委ねられた個人によって行われるようになるので,コントロールは計画や 内部の資源配分,組織構成員の活動から生じるアウトプットのモニター,組 織構成員の選抜,社会化,専門化ということに焦点があてられるようになる。

コントロールの焦点は意思決定への直接的なコントロールから,意思決定の 前提へのコントロールに移っているのであり,可能な程度で意思決定のイン プットとアウトプットに移るのである。

(  4 )   管理会計システム

このように,組織の構造が決まると,それに応じたコントロールの形が決 まってくると考えられている。管理会計システムはこのコントロールのため の手段として見なされているので,コントロールのあり方に依存してそのあ り方が決まってくることになる。 Waterhouse=Tiessen[1978J では,管理 会計システムの特徴を計画と業績評価に分けて論じている。

1 3 )   Waterhouse=Tiessen [ l 9 7 8 J   p .   7 0 。

1 4 )   Waterhouse=Tiessen [ l 9 7 8 J   p p .   70‑71

0

この点について . Waterhouse =  T i e s s e n   口 9 7 8 J では,たとえば,大規模会社の製造部門において管理を担当する下位部門は,

利用可能な資源が明示され,それらの資源を利用できる範囲が明らかにされた予算計

画設定プロセスを通じてコントロールされるが,部門と会社経営者が協同で参加する

このプロセスは,当該予算期間において,相当数の明示されない部門意思決定をする

ときの前提や指針を明らかにし,また相互に承認できるアウトプットの測定尺度を明

確にできると述べられている ( p . 7 1 ) 。

(9)

まず計画に関してであるが,集権的組織の場合には,手続きが明確化され ている。この手続きはいったん明確化されると,比較的長期にわたり,その 手続きが活動と下位目標とを予め決めてしまうので,手続きの明確化を基に した計画は効率的であり,予算編成を通じた計画よりも信頼性が高くなると,

W a t e r h o u s e  = T i e s s e n [ 1 9 7 8 ] では仮定している。さらに,操業職能や管理 職能の意思決定のために必要な知識は集権化された意思決定者が持っている ことを手続きの明確化は意味している。集権化された意思決定者は所有者の 目標を実現するために存在すると考えられているので,所有者の目標は最小 限のコンフリクトで操業上の下位目標に分解されていくであろう。つまり,

計画設定の過程は,下位のメンバーからはさほどの知識を必要としないので,

非参加的なものとなる。

他方,分権的組織は所有者やその代理人には利用することのできない情報 に管理者や操業者が接近できるゆえに存在する。このことは,所有者が調整 や操業に関する効果的な手段についての

t

情報を管理者や操業者に依存しなけ ればならないことを意味している。管理会計システムを明確に設計運用する という視点から見ると,このことはコンフリクトなく操業上の下位目標を設 定することが困難であることを意味している。そのため,下位目標を形成す るプロセスは交渉とコンフリクトを含むことになり,それゆえにこのプロセ スが参加的という特徴を持つようになると仮定する。また,設定される予算 は暗黙裡に存在する組織目標を代替的に明示したものと見なすことができる ので,予算目標は集権的組織における明確化された手続きよりも広範で,明 確性に欠けるであろうと仮定される。

また,計画というのは,予算という形を採ろうと明確化された手続きとい

1 5 )   Waterhouse=Tiessen [ l 9 7 8 J   p .   7 2 。

1 6 )   Waterhouse=Tiessen [ l 9 7 8 J   p .   7 2 。分権的組織において発生するコンフリクトの例

として,予算スラック,裁量的資源概念 ( c o n c e p to f  d i s c r e t i o n a r y  r e s o u r c e )

や移転価

格の問題が例示されている。

(10)

う形を採ろうと,組織内の活動を調整する手段である。予測可能な環境に直 面するとき,管理的な調整ルールは,よく定義され安定した構造の形を採っ て公式化され文書化されるであろう。しかし予測不可能で変化する環境に直 面しているときじは,調整のルールは反応時間を減らし,最終的には組織に とって逆機能的に作用することになる。そこで環境不確実性が増大するにつ れて,組織は次第に「時間的に制約された調整計画」に依存することになる であろうと仮定されている。たとえば,予算はそれが明示された時間内で展 開され,その時間中に組織やその下位組織にとって望ましいレベルのインプ ットとアウトプットを定めるという意味で,時間的に制約された調整計画で あると考えることができるのである。このことは不確実性や変動する環境に 対する組織的な対応として,予算修正や変動予算の重要性を指摘することに

もなる。

このように計画を建て,それに基づいて資源配分をしたとしても,コント ロールのプロセスはフィードバックによる実績と計画の比較がないと不完全 である。収益・コスト・その他数量的変数の会計的測定が主要部分を構成す る業績評価は,それらが支持や報酬を与えるために利用されるのに応じて,

組織権限構造の重要な部分となる。

業績評価というのは,結果の可視性をもたらすものである。 Waterhouse = 

T i e s s e n [ 1 9 7 8 ] では,この可視性を高める手段が,組織の有効性を高めるで あろうと述べている。しかし管理会計システムの観点に立ったときに注意す べきことは,業績評価の手続きは管理会計以外にも存在しているということ である。たとえば,人事考課や同僚または専門家による検査というものであ る。そして,管理会計以外の代替的な報告手続きが存在しうる可能性がある ということは,業績評価手続きに基づく管理会計システムの有用性は,組織

1

7)羽

T a t e r h o u s e = T i e s s e n [ 1 9 7 8 Jp .   7 3

1 8 )   Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J   p .   7 3 。

(11)

の特徴や環境に依存して変化することを意味しているのである。

ところで, Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 ] では管理会計システム部門にお ける権限についても考察されている。内部的な資源配分は情報技術や情報処 理と密接に関係するものである。この資源配分が効率的でなくなるのは,集 権的な意思決定者が生産・コスト・収益の関数に関して不完全な情報しか持 っていないためである。これらの情報が集権的な意思決定者にとって利用可 能であるほど,非効率的な資源配分は減少してくるであろう。しかし,情報 技術の適用は専門的な判断を必要とするので,組織内の権力が操業職能や非 会計的な管理職能から管理会計システム部門に移行する可能性がでてくる。

だが,さらにこの管理会計システムの職能が合理化されると,管理会計シス テムのルーティン化と管理会計システムの手続きの明確化が達成されること になるので,最終的には管理会計システム部門の権限も低下し,再び権限の 集中が生じることになると予測できるのである。

( 5 )   環境適合理論に基づく管理会計システム論の問題点

以上,環境適合理論に基づく管理会計システム論の枠組みを示した。管理 会計システムのタイプや用途は,技術や環境,組織構造やコントロールのあ り方によって決まってくると考えているので,この理論によると管理会計シ ステムは組織毎に異なっているということになる。このことはまた,時間の 経過にともない,技術や環境が変化すると管理会計システムのタイプや用途 が変化することを意味するであろう。

しかし Tiessen=Waterhouse [ 1 9 8 3 ] によると,現実の観察は管理会計 システムのタイプや用途は組織毎にかなりの類似性を示し,技術や環境が変 化しでも管理会計システムは比較的安定しているように見えると述べ,環境

1 9 )

T a t e r h o u s e = T i e s s e n [ 1 9 7 8 Jp p .  73‑74

2 0 )   W a t e r h o u s e = T i e s s e n [ 1 9 7 8 J  p .  7 3 。

(12)

適合理論による現実の説明能力に限界があることを指摘している。そして,

このような限界を克服するためには,環境適合理論をいっそう精徽なものに することが必要であるとしているのである。

また, 0 t 1 ey [ 1 9 8 0 ] では,本節で取り上げたWaterhouse =  T i e s s e n   [ 1 9 7 8 ]   の論文を含めたいくつかの環境適合理論に基づく管理会計システム論を検討

しているが,その結果,従来の管理会計システム論は暗黙のうちにつぎのよ うな枠組みを仮定していると述べている。

第 l段階 コンティンジェント変数 ( e .g . 技術,環境)

第 2 段階 組織設計 ( e .g . 形,集権化,相互依存性)

第 3 段階 会計情報システムのタイプ ( e .g . 技術的,行動的特徴)

第 4 段階 組織の有効性

0 t 1 e y [ 1 9 8 0 ] によると,従来の環境適合理論に基づく管理会計システム論 はこの 4 つの段階をすべてつなげて検討していないことが問題としてまず指 摘されている。特に組織の有効性に関する研究は少ないのであるが,この研 究は,いくつかのコンティンジェント変数が特定の会計情報システムと結び ついて存在するというだけでは主張として弱いので,どうしても必要である と考えている。確かにこれまで見てきた Waterhouse =  T i e s s e n  [ 1 9 7 8   ]でも,

2 1 )   T i e s s e n 二Waterhouse [ 1 9 8 3 ]p .  2 5 4

2 2 )   0 t 1 e y [ 1 9 8 0 ]  p p .  419‑420 。

2 3 )   O t l e y [ 1 9 8 0 ]   p .   4 2 0 。なお,組織の有効性を測定した研究のひとつに H a y e s [ 1 9 7 7 ] がある。これは,組織内の部門業績が, ( 1 ) 部門内部の要因(生産性,原価態様など), 

( 2 ) 部門聞の相互依存関係(信頼性,協同など), ( 3 ) 企業外部の環境(計画能力,市場シ

ェアなど)という 3 つによって影響されると仮定した上で,それを経験的に検証した

ものである。

(13)

上記の枠組みの第 3 段階までは述べられているが,第 4 段階の議論はなされ ていなし、また,論者によっては,前掲の図において,組織設計という媒介 変数が必要か否かということを検討せずに,コンティンジェント変数と会計 情報システムとを直接に結び付けていることも問題とされている。最後に会 計情報システムが組織のコントロール構造の唯一の部分であると考えている ことが多いということも問題とされている。特にこの最後の問題に関して,

0 t 1 e y [ 1 9 8 0 ] では,組織コントロール戦略には,組織構造の考察,他の経営 情報の作成,計画設定とコントロールシステムが会計情報システムの他に含 まれていると考えられている。つまりコントロール概念を明確にすることが 必要であると考えているのである。

以上のように環境適合理論に基づく会計システム論についての問題点が指 摘されているのであるが,つぎに,これらの問題をどのように解決しようと しているのかということを, O t l e y [ 1 9 8 0 ] , Tiessen=Waterhouse [ 1 9 8 3 ]   の順に見ていくことにしよう。

3 .   O t l e y [  1 9 8 0 J の所説

前節で述べたように, 0 t 1 e y [ 1 9 8 0 ] では,コントロールということが重視 されている。ここで,組織的コントロール戦略には,会計情報システムに加 えて,組織設計,会計以外の経営情報の作成,計画設定とコントロールのシ ステムが含まれている。これらの要素は部分的に代替可能で, したがって同 じようなコントロールの成果を生み出すこれらの要素の組み合わせがいくつ

2 4 )   O t l e y [ l 9 8 0 ]   p .   4 2 0

O t l e y [ 1 9 8 0 ] では,このように主張している論文のひとつとし て W a t e r h o u s e = T i e s s e n [ 1 9 7 8 ] をあげている。しかし既に見たように, Waterhouse 

= T i e s s e n [ 1 9 7 8 ] では環境・技術という変数と管理会計システムとの間に組織構造を 考えているので,この批判は W a t e r h o u s e=  T i e s s e n [ 1 9 7 8 ] に関しては,必ずしもあた

らないと思われる。

2 5 )   O t l e y [ I 9 8 0 ]   p .   4 2 0

(14)

も存在しうる可能性があるので,会計情報システム設計のために有用な環境 適合理論を創出するためには,いっそう広範な視野が必要であると考えられ ている。つまり,会計情報システムは広範囲の経営情報システムの一部とし て見なされなければならないのであるが,この経営情報システムはまた経営 計画・コントロールシステムの一部であり,これらすべては全体的な組織コ ントロールパッケージの一部でしかないのである。

このように,組織のコントロールパッケージの一部として会計情報システ ムを捉えることによって,適切な会計情報システムを構築するものは組織が 達成しようとしている目標と他のコントロールプロセスの両方によって影響 されるということ,コントロール戦略以外にも組織業績に影響する広範な要 素が存在すること,外部から押し付けられる基準ではなくむしろ組織自身の 目標によって部分的にせよ有効な組織業績を構築するものが決定されなけれ ばならなくなることが分かるのである。そうであるとすると,会計情報シス テムの有効性というのは比較的小さなものであり,もしその効果を測定しよ うとするならば,充分注意深く統制された研究を必要とするであろう。)

そして,このようなことを考慮した上で O t 1 ey [ I   9 8 0   ]では次のページに 示すような環境適合理論の枠組みを示している。

この枠組みにおいて,コンティンジェント変数とは組織のコントロール外 にあると考えられている変数である。逆に組織によってコントロール可能と 信じられている変数はコンティンジェント変数には含めないで,組織コント ロールパッケージの一部と考えている。ただ,組織目的だけは,組織有効性 を評価する基準としての性格を持っているので,例外的にコンティンジェン ト変数に含められている。組織は,組織を有効な業績に導くであろうと期待

2 6 )   0 t 1 ey [ 1 9 8 0 ]   p .   4 2 1 0  

2 7 )   0 t 1 ey [ 1 9 8 0 ]   p .   4 2 1 。

2 8 )   0 t 1 ey [ 1 9 8 0 ]   p .   4 2 1 。

(15)

コンティンジェント変数

組織によって影響されない変数

J

組織目的

組織コントロールパッケージ

AIS 設計←→他の MIS 設計←→組織設計←→他のコントロールアレンジメント

媒 介 変 数

↓  その他のファクター

組 織 有 効 性 │ 

(目的との関連で測定される)

して,自らコントロールできる要素をコントロールパッケージの中に配列す ることによって,直面している状況に適応しようとする。もちろん,潜在的 に生起する可能性がある業績のレベルは,コントロールパッケージにとって コンティンジェントな変数でもある環境によっても影響されることはいうま でもない。

上の図に示したようにコントロールパヅケージには,会計情報システム ( A I S ) 設計,経営情報システム C M I S ) 設計,組織設計と組織のその他のコ ントロールアレンジメントが含まれているが,これらは全体として評価する ことだけが可能であるということを認織していなければならない。特に AIS 設計とこのパッケージの他の要素のそれぞれとの間には広範な相互依 存関係がある。また企業にとっては基礎的なコンティンジェンシーを代表す るものとして現れる組織目的もこのパッケージには明確に組み込まれる必要

2 9 )   U t l e y [ 1 9 8 0 ]   pp.421‑422

(16)

がある。

ここに示した枠組みは単純なものである。組織コントロール戦略の一部は その環境にも影響することになるであろうし,重要な外部資源に組織が依存 するパターンや他の組織との相互依存関係などは考察されていなし、からであ る。しかし, 0 t 1 e y [ 1 9 8 0 Jでは,この枠組みによって,目的を所与として受 け取り,それを達成するもっとも有効な手段に関心を向けさせることを強調 しているのである。ただし,このことはある特定の目的が重要であると仮定 するものではない。たとえば顧客サービスを最適にする組織では,株主に対 する報酬を最大にしたり,従業員のために作業環境を豊かにすることを求め る組織とは異なった別のコントロールのアレンジメントが適切となるであろ うからである。

このように O t l e y [ 1 9 8 0 Jでは,会計情報システムが企業の多様なコント ロールの手段の一部として, しかも他のコントロール手段と相互に代替でき かっ依存し合うものとして捉えている点に特徴がある。このように考えるこ とによって,異なる会計システムであっても,他のコントロール手段との組 み合わせによって同じような有効性を持つことが考えられるようになり,単 純にある環境にはある会計システムが対応するとはいえなくなるのである。

しかしこの考えでは,会計情報システムの有効性を他のコントロールの手段 と切り離して評価することが困難になってしまうので,会計を越えたいっそ う広範な研究が必要になってしまうのである。前節で 0 t 1 ey [ 1 9 8 0 J が組織 有効性の研究の重要性について述べていることを見たが,その研究が O t 1 ey [ 1 9 8 0 Jでは特になされていないのはこのためであろう。

3 0 )   O t l e y [ 1 9 8 0 ]   p .   4 2 2 。なおその他のコントロールアレンジメントの例として,集団的 同意,選抜,昇進と報酬システム,外部での陳情が例示されている。

3 1 )   O t l e y [ 1 9 8 0 ]   p .   4 2 2 0  

(17)

4 .   Tiessen  =  Waterhouse[  1 9 8 3 J の所説

2 節で述べたように, Tiessen= Waterhouse [ I 9 8 3 Jでは,環境適合理論 をより充実したものにすることが必要であると述べているが,そのために,

エイジェンシ一理論と市場一組織理論を検討し,そこから管理会計システム を理解する上で必要な意義を取り出して,環境適合理論をいっそう情微なも のにしようと試みている。その理由は,これらの理論が情報,構造,コント ロールを強調している点で,管理会計システムと関連性を持つと考えている からである。)本節では, Tiessen= Waterhouse [ I 9 8 3 J に基づいて,その所 説を見てみることにする。

まず,エイジェンシ一理論に関しては, Tiessen=Waterhouse [ I 9 8 3 Jで は,プリンシパルとエイジェントの両者が契約の条項について同意すること,

つまり契約協定の自発性という性格が強調されている。そしてこの自発的に 結ぼれる契約の連鎖が企業の本質であると理解されている。この契約の自発 性という性格は,管理会計システムを変更するという提案をしたとき,その 変更についてプリンシパルとエイジェントの双方がベネフィットを認めない ならば,その変更は認められないことを意味するものである。したがって,

環境変化や組織構造の変化などに応じて会計方針やシステムの変更をすると しても,それが及ぼす契約上の意義を考慮していないならば,組織内でそれ らの変更を受容する人を見いだすことができないであろうと述べている。

T i e s s e n  =  Waterhouse [ I   9 8 3 J では,このような点から管理会計システムの 変更が生じにくい理由を説明しているのである。

3 2 )   T i e s s e n = W a t e r h o u s e [ 1 9 8 3 J   p .   2 6 2 。

3 3 )   T i e s s e n =  W a t e r h o u s e [ 1 9 8 3 J   p .   2 5 7

0

なお, T i e s s e n =  W a t e r h o u s e [ 1 9 8 3 J では,エ

イジェンシ一理論は抽象性が高いので,このモデルが基づいている仮定によって表さ

れてはいない状況に,このモデルの結果を外挿することはできないことをことわって

いる。

(18)

このことに加えて,さらに T i e s s e n =W a t e r h o u s e [ 1 9 8 3 ] では,エイジェ ンシ一理論から,不確実性には事前不確実と事後不確実の 2 つの種類がある こと,それに応じて,管理会計情報にも事前不確実に対応する会計情報と事 後不確実に対応する会計情報の 2 つがあるとしている。

事前不確実性とは,技術や環境に関する不確実性のことである。これらの 不確実性は,分権的組織構造の必要性を生み出す。この状況における情報の ひとつの役割は,意思決定者が技術や環境をよりよく予測できるようにする ことによって,事前不確実性を減少させることである。これは主として,計 画設定に関連する役割であり,この計画設定のための情報の価値は環境と技 術の不確実性に依存するであろう。不確実性が高ければ高いほど,計画設定 のための情報から実現されるベネフィットの潜在性は高くなるのである。

これに対して,事後不確実性とは,エイジェントがとった行動と実現した 成果または発生した状態に関する不確実性である。この不確実性を減らす情 報は,契約を促進することにその価値がある。このような情報が事後に利用 可能となるであろうということを契約当事者たちが知っていれば,そのこと が事前に契約に同意することを可能にするからである。また,事後情報の価 値は組織構造やコンテクストにも依存していると考えられている。高度に構 造化されている活動では,どのような行動が採用されたかを観察することが 容易である。組織構造と監督がしっかりしていれば,事後情報はそれほど必 要ではないであろう。中程度に構造化された組織では,事後情報はどのよう な行動が採られたかを推測するために有用であり, したがって効果的なリス クとペイオフの分担とインセンティブ契約の制定を容易にする。しかし,行 動が容易に観察されず状態の生起と行動が成果に及ぼす影響を容易に分離す ることができないとき,事後情報は契約促進のための価値をほとんど持たな い。このときは別のコントロール手段が用いられることになるであろう。そ

3 4 )   Tiessen= Waterhouse [ l 9 8 3 J   p p .   2 5 7  ‑258

3 5 )   T i e s s e n  =  Waterhouse [ 1   9 8 3 J   p .   2 5 8 。

(19)

して,ここに市場一組織理論に基づく研究の必要性がでてくるのである。

次に市場一組織理論に関してであるが, Tiessen= Waterhouse [ 1 9 8 3 J で は,特に内部労働市場の形成との関係で管理会計システムに対する意味を検 討している。 T i e s s e n=  Waterhouse [ 1 9 8 3 J では,内部労働市場を一種の契 約とみなし,不確実性/複雑性と制約された合理性とが結合し,少数者取引 関係が機会主義的な行動と結合し,さらに情報が偏在しているような状況が 生じているときに,コントロールを促進するために育まれるもので,雇用関 係を構築し機会主義的な行動に対するインセンティブを取り除くことによっ て協調を促す試みとみている。この契約に基づく協調が内部労働市場では不 可欠と考えられている。このとき組織内の個人は,同じ組織内の他の人間が 進んで協調しようとしていると感じることができるときに自らも協調しよう とする。自分の利害を追求するよりも,協調した方が得るものが多くなると 感じるからである。そこで,組織は,ある個人が他人も自分と同じルールに 従い,集団的な利得を獲得できるということを知覚できるようなルールを設 定する必要がある。そのルールは組織内のすべての人が見て理解できるもの でなければならず,内部労働市場の境界を明示し,その内部での資源の配分 と価格付けを統制する厳密性を持つ反面,裁量的な部分も持っていなければ ならないとされている。このようなルールの特徴は,会計情報を含む情報収 集と利用に関するルールにも適用されることになる。 T i e s s e n=  " ¥ V a t e r h o u s e   [ 1 9 8 3 J では,この点について,事前情報と事後情報に分けて述べている。

事前情報は,企業が様々な下位部門の活動を調整し計画設定をするときに 必要であるが,環境や技術が変動している状況では,この情報は組織内の個 人にとっては個人の利害のために戦略的に開示されるようになる。しかし,

内部労働市場は個人の協調を促進するために設定されるものであるから,そ のためには環境や技術に関する情報の事前開示が重要である。管理会計シス

3 6 )   Tiessen=Waterhouse [ 1 9 8 3 J   p p .   259‑261

(20)

テムにおける計画設定は,この情報の開示を個人に促すことによって,組織 内の情報の偏在を減らそうとするものである。そしてそのために情報収集と 利用に関するルールが必要となる。

事後情報は業績評価に関連するものである。しかし,この事後情報に関し て,アウトプットがしばしば数人の協同から生じるものであるために,誰が 何をしたのかという情報が,そのアウトプットの責任者によって歪められて しまう可能性があること,およびすべてのアウトプットが活動と統制不能な いしは部分的にしか統制できない外部事象との結果であることの 2 つの問題 から歪められてしまう可能性がある。これに対して内部労働市場は,やはり 協調を促すような構造を提供することによって,この偏在する情報を機会主 義的に利用しようとする傾向に対抗しようとする。そしてその一環として,

各人の過去の業績の測定と蓄積が必要となり,ここに管理会計システムが重 要な役割を果たすことになるので,この業績にかかわる個人のデータを収集 するためにルールの設定が必要となるのである。

さらに,会計システムのルールの性格について,つぎのようにも述べてい る。不確実性が高くなってくると,詳細な契約を締結することが困難になっ てくるが,このとき事後情報はアウトプットに焦点が移ってくる。特に下位 部門のアウトプットが直接に観察可能ではなく, しかも協同的な活動の産物 であるようなとき,信頼できる業績測定をするシステムの開発が必要になっ てくる。このときコントロールが部分的にせよアウトプットの測定によって 遂行されている場合には,会計のルールとコンペンションが内部労働市場を 促進し維持するために,大きな役割を果たすようになる。業績測定や配分に

3 7 )   Tiessen=Waterhouse [ 1 9 8 3 J   p .   2 6 1

3 8 )   Tiessen=Waterhouse [ 1 9 8 3 J   p p .   261‑262 。このように事前情報と事後情報につい

て分けて述べられているが,事前情報を進んで開示しようとする態度は部分的には事

後情報が公平かつ公正な知覚を生み出す程度に依存しているので,それぞれの情報開

示は関連しあっていることはいうまでもない ( T i e s s e n = W a t e r h o u s e [ 1 9 8 3 J p .   2 6 4 ) 。

(21)

関するルールやコンペンションが明示され,測定それ自身が論争の余地がな いように同意される必要がでてくるのである。このことは,ルールがしばし ば変更されると,測定値に対する信頼性が疑問視されることになるので,あ る程度の期間は厳密でコンスタントでなければならないことを意味する。さ らに頻繁なルールの変更は内部労働市場の変更をもたらし,そのことはコス トがかかるであろう。このように Tiessen=  Waterhouse  [ 1 9 8 3  J では,会計 ルールの必要性とその安定的な性格が生じる理由を市場一組織理論からも述 べている。さらに踏み込んで,会計のルールはどんなにそれが怒意的なもの であるとしても,内部労働市場を支えるものであり,内部労働市場にある他 のルールは会計測定がもたらす望ましくない影響を補償するために調整され るにすぎないとのべ,積極的に会計ルールの重要性を主張しているのであ る 。

このように, Tiessen= Waterhouse [ 1 9 8 3 J では,エイジェンシ一理論と 市場一組織理論の検討を通じて,コントロールのためには事前情報と事後情 報が必要であることを指摘した上で,管理会計システムの役割を論じている。

そしてその上で,事前情報と事後情報がそれぞれ持たなければならない特質 が明らかにされている。すなわち事前情報は,環境と技術の変動に関する不 確実性を減らすものであるから,この目的のためには,事前情報は予測可能 性という特質を持つ必要がある。これに対して,事後情報は,業績評価のた めのものであるから,明確性と識別可能性が主たる特質となる。

ところで,事後的な業績評価に関連して Tiessen=  Waterhouse[  1 9 8 3 J で は,業績測定の手段の数が多いとき,恋意的にその中のひとつの手段が採用 されることになり,このことが識別可能性の評価を困難にすることになると

3 9 )   T i e s s e n = W a t e r h o u s e [ 1 9 8 3 J   p p .   264‑265 。

4 0 )   T i e s s e n = W a t e r h o u s e [ 1 9 8 3 J   p p .   262‑263 。なお,ここで述べた T i e s s e n =

W a t e r h o u s e [ 1 9 8 3 J

の事後情報の特質は井尻

[ 1 9 7 6 J p p .   51‑76 によっている。

(22)

述べている。しかし,どのような測定手段が採用されるべきであるのかとい うことを判断する明確な基準も存在していないのである。このように多くの 管理会計における業績測定手段が本質的に怒意的なものであるなら,それに 基づく測定値が識別可能で明確性を持つという知覚は,物的または経済的な

プロセスから生まれるというよりは,社会的なプロセスから生まれるこ土~ 

なるであろう。そうすると,このような管理会計システムの測定がいかにし て合法性を獲得するのかということが問題になる。 T i e s s e n=  W a t e r h o u s e 口 9 8 3 J では,この点について,準法的な身分にある人が会計測定を承認したり,会 計担当者の専門的な地位,組織外部の代表者が管理会計システムの測定値に 対して置く信頼性ということに由来すると考えられている。

ここで述べた T i e s s e n=  Waterhouse [ 1 9 8 3  J では,エイジェンシ一理論と 市場一組織理論から,管理会計システムがルール化される必要性と管理会計 システムが比較的安定的な理由を述べている点で意味があると思われる。企 業内部で経理規程が定められたり,制度的にも会計原則などが定められる理 由を説明するときに示唆を与えてくれるものと思われるのである。

5  .結びに代えて

以上,環境適合理論に基づく会計システム論を, Waterhouse=Tiessen  [ 1 9 7 8   , ] O t l e y [ l 9 8 0 J ,および T i e s s e n=  Waterhouse [ 1 9 8 3   ]を中心に紹介 してきた。環境適合理論では,管理会計システムは,技術と環境の変化,組 織構造およびそこにおけるコントロールということと関連づけて議論されて いる。このように企業における会計システムをとりまく条件を明らかにし,

その条件の変化に応じて様々な会計システムが存在する可能性を示したこと は,それが明確ではないとしても,ひとつの考え方を示したという点では環 境適合論の意義であるということができるであろう。

4 1 )   Tiessen=Waterhouse [ 1 9 8 3 J  p .   2 6 3 。

(23)

だが, Waterhouse=Tiessen [ 1 9 7 8 J に見られるような研究では,環境や 技術の変化や組織構造の変化に応じて管理会計システムはその姿を変えるこ とになり,一般的に普遍的な管理会計システムは存在しないということを意 味しているが,既に見たようにこのことが現実の会計システムの状態には必 ずしも当てはまっていないということが問題であり,その点を克服するため に , 0 t 1 e y [ I 9 8 0 J ではコントロール概念を明確にすることで対応し, T i e s s e n  

=  W a t e r h o u s e [ I 9 8 3 J では,エイジェンシ一理論と市場一組織理論にその解 決の糸口を見いだそうとしているのである。

ところで,ここで検討した議論は,既に述べたように管理会計システムを コントロールの手段として位置づけている。このこと自体を否定するつもり はないのであるが,この考えをそのまま適用すれば,管理会計システムより も優れたコントロールの手段が開発されるならば,それが管理会計システム にとって代わってしまうことになるであろう。このことは,これらの会計シ ステム論の基にある環境適合理論が,多様な環境のなかでなぜ組織は分権化 とか集権化という構造を採るのか,どのような組織構造が有効なのかという ことに焦点をあてるものであり,会計システムはその一環としてしか捉えら れていないことに由来すると考えられる。しかし,このような議論の住方で は,組織論的に会計システムの機能を説明することにはなっても,積極的に 会計システムがなぜコントロールの手段として役立つのかということ,つま り企業における会計システムの独自性を説明していないように思われる。そ してこの点を明確にすることが現実の会計システムを説明する上で必要では ないかと考えられるのであるが,その点については今後の課題である。

[ 参 考 文 献 ] 1.井尻雄士 [ 1 9 7 6 JI 会計測定の基礎」東洋経済新報社.

2 .   Hayes ,  D .  C . [ 1 9 7 7 J The C o n t i n g e n c y  Theory o f  M a n a g e r i a l  Accounting"  The 

A c c o u n t i n g  R e v i e w ,  Vo l .   5 2 ,  N o .   1 ,  p p .   22‑39. 

(24)

3 .   L a u g h l i n ,  R .  C .  a n d  E .  A .  Lowe [ l 9 9 0 J A C r i t i c a 1  An a 1 y s i s  o f  A c c o u n t i n g  T h o u g h t :   P r o g n o s i s  and P r o s p e c t s  f o r   U n d e r s t a n d i n g  and Changing A c c o u n t i n g  Systems  D e s i g n "  i n  D .  ] .   C o o p e r  a n d  T .  M. Hopper ( e d s . )   C r i t i c a l  A c c o u n t s ,  The Macm i 1 1 a n   P r e s s ,  p p .  1 5 ‑ . 4 3 .  

4 .   O t 1 e y ,  D .  T . [ l 9 8 0 J The C o n t i n g e n c y  Theory o f  Management A c c o u n t i n g :  A c h i e v e ‑ ment a n d  P r o g n o s i s "   A c c o u n t i n . ι Or g a n i z a t i o n s  a n d  S o c i e

Vo l . 5 ,  N o .  4 ,  pp.413‑

4 2 8 .  

5 .   S c o t t ,  W. R . [ l 9 8 I J D e v e 1 0 p m e n t s  i n   O r g a n i z a t i o n  Theory ,  1 9 6 0

1 9 8 0 "A m e r i c a n   B e h a v i o r a l  S c i e n t i s t ,  Vo l .   2 4 ,  N o .   3 ,  p p . 4 0 7 ‑ 4 2 2 .  

6 .   T i e s s e n ,  P .  and  J .   H .  W a t e r h o u s e 日 9 8 3 J TowardsA D e s c r i p t i v e  Theory o f  Manage‑

ment A c c o u t i n g "   A c c o u n t i n g ,  O r g a n i z a t i o n s  and S o c

たから

Vo l . 8 ,  N o .   2/3 ,  pp.251‑

2 6 7 .  

7 .   W a t e r h o u s e ,  ] .   H .  a n d  P .  T i e s s e n [ l 9 7 8 J A C o n t i n g e n c y  Framework f o r  Manage‑

ment A c c o u n t i n g  S y s t e m s  R e s e a r c h "   A c c o u n t i n g ,  Or g a n i z a t i o n s  a n d  S o c i e t y ,  Vo l .   3 , 

N o .   1 ,  pp.65‑76. 

参照

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