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国際経済上の諸問題の類型化に関する一考察

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(1)

経 営 と経済 第

87

巻 第

3

2007

12

123

国際経済上の諸問題の類型化に関する一考察

成 田 康

Abs t ract

To da ywef a c eanumbe ro fi nt e r na t i o na lpr o bl e msa ndi s s ue sr e l a t e d t oe c o no my,mo s to fwhi c hc a nbec a t e go r i z e di nt oa tl e a s to neo ft he f o l l o wl ngS e ve nf i e l d s;t r ade,i nve s t me nt ,f o r e l gne xc ha n ge ,f i na nc e , e nvi r o nme nt ,de ve l opme nta s s i s t a nc e,a ndna t ur a lr e s o ur c e.I nde ve l o p‑

1 ngc ount r i e s ,do me s t i ci s s ue so fpo ve r t yr e duc t i onande c o nomi c gr o wt ha r ec o nne c t e dt ot he m.

Thi spa pe rdi s c us s e swhe t he rs pe c i f i ct he me sa ppl yt oe ac ho ft he s e ni nef i e l dso rno t .Fo ri ns t a nc e,whe t he rago ve r nme ntpl a ysama j o r r o l eo rno t ,a nda ni nt e r na t i o na lo r ga ni z a t i o nc o mpr e he ns i ve l yde a l s wi t ht hei s s ueo rnota r ee xa mi ne d.I ti sa l s oi de nt i f i e dt ha te n vi r o n‑

me nt ,na t ur a lr e s o ur c e,a ndpo ve r t yr e duc t i o na r et het hr e ema j o rf i e l ds t ha tne e dur ge nta c t i o ns.

Ba s e do nt he s ea na l ys e s ,i ti sc o nc l ude dt ha tar e gl O na la ppr o a c ht o a d dr e s s l ngi nt e r r e l a t e di s s ue si si de a l ,i na ddi t i o nt ot heo ngo i nggl o ba l di s c us s i o na ndne go t i a t i o no fe a c hi s s ue・

Keywords:t r a de,i nve s t me nt ,f o r e i gne xc ha nge,f i na nc e,e nvi r o n‑

me nt ,de ve l o pme nta s s i s t a nc e, na t ur a lr e s o ur c e, po ve r t yr e duc t i o n,e c o ‑ no mi cgr o wt h,i nt e r na t i o na lo r ga ni z a t i o n,r e gl Ona lf r a me wo r k

1 .国際経済上の諸問題

グローバル化が進展す る今 日の国際経済 においては,様 々な現象や問題が

(2)

出現 し,その促進または解決のために二国間,多国間,あるいは民間 レベル で協議 ・討議が行われている。

その主たるもの としては,貿易,投資,為替,金融,環境,開発援助,質 源が挙げ られる。実際問題 としては, 日々報道 される国際経済関係の事象は これ らの うちの少な くともいずれか一つの範噂 に入 る1といって も過言では ない。また,厳密には国内問題であるが,これ らと密接 に関連するもの とし て,各国の経済成長及び発展途上国の貧困削減がある。

2 .諸問題の類型化

上記 9 つの事象,すなわち貿易,投資,為替,金融,環境,開発援助,質 源,貧困削減,経済成長について,い くつかの軸をもとに,ある程度の類型 化を試みてみる。

(1 )主 体

貿易,投資,為替,金融については,主体,客体 ともに大宗が民間である。

次 に開発援助 については,通例は 「 政府開発援助 ,Of f i c i a lDe ve l o pme nt As s i s t a nc e 」 という語 に象徴 され るとお り政府が主体

2

であ り,客体 もまた 政府である

3

。資源については,開発主体は石油メジャーなどの民間であ り, それ らに対 して権利を付与するのは政府であるという形態が多い。

環境については,一方で汚染原因の形成は民間によるところが多 く,他方 で対策の計画や法令を政府が策定 し,また政府や関係機関が率先 して環境対 策を実施することも少な くない。

1 強 いていえば,た とえば国際的な労働移動 はいずれの範時 にも直接 には入 らない。

2

民間 に よる援助 も金額的 に多 く重要 であ るが,公的援助 は 1件 あた りの金額 ,対象範 囲の広 さな どの点で民間援助 と異なる面が多 い。

3

政府開発援助 は,多国間援助 ( 国際機関を通 じた援助) と二国間援助 に分け られ る。

(3)

国際経 済上 の諸 問題 の頬型 化 に関 す る一考察 1 2 5

貧困削減については,国際支援を受けつつ,政府が主体的に解決すべきも のである。

経済成長は,要素的には民間の寄与が大 きいのが通例であるが,他方で成 長のための戦略策定や,想定外の事態になった ときの財政出動や金融政策 と

い う面で公的部門の役割が大 きい。

(2 )専門的国際機関の有無

いずれの事項についても,多かれ少なかれ国際機関の場で議論が行われて きているが,貿易 と開発援助については,包括的かつ専門的な国際機関が存 在 しているという意味で特徴的 と言える。

① 貿 易

世界貿易機関 ( WTO , Wo r l dTr a deOr ga ni z a t i o n) が ,1 9 9 5 年の創設

4

以 莱,関税 ・貿易障壁の軽減,自由 ・無差別な国際貿易の推進を行ってきた。

その中核 となるのがいわゆるラウン ド交渉であ り ,2 0 01 年以来 ドーハ ・ラウ ン ドで討議が重ね られて きている。ただ し,交渉の進捗状況は, とくに最近 は順調 とはいかず,その ことを一因 として後述の FTA (自由貿易協定)が 多数締結されるに至 っている。

② 開発援助 ( 及び貧困削減)

世界銀行 ( 国際復興開発銀行 ,I nt e r na t i o na lBa n kf o rRe c o ns t r uc t i o na nd De ve l o pme nt ) が ,1 9 4 5 年の創設以来,途上国に対する開発援助を扱 って き ている。なお,地域を限定 したアジア開発銀行 ( As i a nDe ve l o pme ntBa nk) , 米州開発銀行 ( I nt e r ‑ Ame r i c anDe ve l o pme ntBa nk) ,アフ リカ開発銀行

4

世界貿易機関創設以前においては,ガ ッ ト ( 関税及び貿易に関する一般協定

,General AgreementonTariffsandTrade)

が存在 し,その もとでもラウン ド交渉が行われていた

が,ガ ット自体は正式な国際機関ではな く, 自発的な国際規約 と位置づけ られていた。

(4)

( Af r i c a nDe v e l o pme n tBa n k) も存在 し,各地域 内の開発援助 を行 ってい る。 これ らの開発援助は,貧困削減に大 き く貢献す る。

また,以下 に挙げる国際機関等 については,それぞれの分野 において重要 な存在であるが,包括的に扱 っている

5

とは言い難い面が指摘で きる。

① 通 貨

通貨に関 しては,国際通貨基金 ( I MF,I n t e r n a t i o n a lMo n e t a r yFu n d) が 1 9 4 5 年の設立以来,国際通貨協力の推進を行 ってお り,また国際収支上困難 に陥 る国への融資 も実施 している。 もっとも,通貨協力のための具体的施策 は, もっぱ ら経常取引のための通貨の免換性確保義務をいわゆる 8 条国に課 した り, 4条 コンサルテーシ ョンを各国 と実施 した りす ることであ り, 日々 の膨大な通貨取引に関することを直接 に扱 っているわけではない。

② 環 境

環境 については,まずオゾン層破壊,海洋汚染,土壌劣化,森林な どの分 野 においては,国連環境計画 ( UNEP , Uni t e dNa t i o nsEn vi r o nme n tPr o ‑ gr a m) が 1 9 7 2 年の創設以来,対策策定 に努めてお り,その成果は,オゾン 層保護に関するウィーン条約,生物多様性条約等に具現化 されている。

次 に,地球温 暖化 問題 については,気候 変動枠組 み条約 の締約 国会議 ( COP , Co n f e r e n c eo fPa r t i e s ) が ,1 9 9 4 年以来,地球温暖化問題を扱 って お り ,1 9 9 7 年には法的拘束力のあ る 「 京都議定書」を締結 させた。もっとも, 同議定書は発展途上国の参加がな く,またアメ リカは批准 していない。

さ らに ,地 球 温 暖 化 問題 に関 して は気 候 変動 に関 す る政 府 間パ ネル

5

本稿 にい う 「 包括的」 は諸 々の問題 を完全 に網羅 す る とい う意味ではな く, したが っ

て 「 包括的」 と 「包括 的ではない」 は相対的な差異 と帰結 される。 しか しなが ら,かか

る 「 差異」 は相 当程度 明確な ものであ る。

(5)

国際経済上の諸問題の類型化に関する一考察 1 2 7

( I PCC,I nt e r go ve r nme nt a lPa ne lo nCl i ma t eCha nge ) があ り,科学者な ど専門家が分析や予測を とりま とめているが,政策提言は行 っていな

い 。

③ 資 源

資源 につ いて は ,た とえば原油 について , OPEC ( Or gani zat i onof pe t r o l e umExpo r t i ngCo unt r i e s ,石油輸 出国機構)が存在す る。 しかしなが

ら,その主たる業務は生産国間での生産調整や価格交渉力維持であ り, した がって消費国をも含めた原油問題解決のための機関ではない。

(3 )二国間における取組みの有無

以下の事項 については,二国間,ない しは数 カ国問における取組みが一般 的に広 くみ られる。

① 貿 易

当事 国間の関税障壁 を大幅 に撤廃/ 軽減す る自由貿易協定

6

( Fr e eTr a de Agr e e me nt ) が顕著な増加を見せている。日本を例 に とる と,既 にシンガポー

ル,メキシコ,フ ィリピン,タイ等の国々 と締結済みである。

( 参 開発援助

二国間の援助 として,無数の組み合わせが存在する。例 えば 日本の円借款 はアジア,アフ リカ,南ア メリカな どの計 95 ヶ国に対 して供与されている。

(4 )対外的な負の影響

以下の事項 については,国内的な問題が,意図することな く対外的に負の 影響を及ぼす ことが指摘で きる。

6

二 国間のみ に よる,いわゆ るバ イ

(bilatera

l )の 自由貿 易協定の ほかに,数 カ国に よるマ

ルチ

(multilatera

l ) の 自由貿易協定 も数多 く締結 されて いる。

(6)

① 金 融

金融については,古 くはブラックマンデーが世界恐慌を引 き起 こした例, また最近ではサブプライム ・ローン問題が世界の市場等 に不安定感をもた ら

した とみ られる例の ように,負の影響が他国に及ぶ ことがある。

L 2 1 環 境

環境については,温室効果ガスが地球温暖化をもた らし,またフロンガス がオゾン層破壊 を引 き起 こしていることに代表 されるとお り,ある国の環境 問題が他国の同種の問題 と結合す る形 となって地球規模の問題 となるに至 っ ている。

さらに,近隣国問で も負の影響 がもた らされるケースが多い。例 えば,国 際河川においては,水質汚染が他国にも及ぶ という例が理解 しやすいが,そ の他にも,上流国において森林破壊や土壌管理上の問題がある場合に,下流 国で洪水 が起 きることがある

7

。 とくに,下流 国 よ りも上流国の方が相対的 に大国である場合には,問題解決 はよ り困難 となることが多い。森林火災が 近隣国の大気汚染を もた らす場合や,近年西 日本で観測される光化学スモ ッ

グ も例 として挙げることがで きよう。

この ように,大気の流れや,降水,河川 ・海洋 といった水の流れを介する 形で,環境 に係 る負の影響は数多 くの例が指摘 される。

③ 貧 困

貧困については,国内 ( 以下 「 A 国」 とす る)の貧民 が越境 した結果, 越境先の国 ( 「 B 国」 とす る)における貧困問題が加重 されることが少な く

ない。 とくに, A ・B 両国の所得格差が極めて大 きい場合や,それ と現実に は重複す るこ とが多 いが B 国において工業の 目覚 ま しい発展 な どによ り雇

7 さ らに,定義上 は環境問題 には含 まれないが,上流 国で水が大量 に使用 された場合 に

は下流国の水の供給 に支障 を もた らす ことがある。

(7)

国際経済上の諸問題の類型化 に関す る一考察 1 2 9

用機会が大 き く伸びている場合が典型的である。 さらに, A ・B 両国の経済 発展度が比較的近 い場合であって も,国境 に比較的近い A 国内地域 に貧困 層が多い として,当該地域か ら A 国の経済的中心地までの距離 よりも,B国 の経済的中心地までの距離の方がはるかに短い場合にも起 こりうるものであ る。

この ように,金融,環境については近隣国のみならず世界的に,また貧困 については近隣国に対 して負の影響がもた らされる。そ こで,そうした負の 影響を防止す る手段の有無が問題 となる。

まず金融については,一方で金融手法が極めて複雑化,国際化,コンピュー タ化 している今 日,問題の発生そのものや,いったん発生 した場合の波及を 絶対的に防止する手段の構築は容易ではないが,他方で監督当局や市場関係 者 に共通意識がある限 り,相当程度防止で きる手段を構築することは理屈の 上では可能であろう。 しかしなが ら,複雑化,国際化 しているが故に投資家 の間に不透明感や不安感が広がれば問題が悪化するという,いわば心理面の 影響が少な くない という点が指摘できる。

次に環境については,負の影響が大気の流れや,水の流れを介 した物理的 な ものである以上,いったん問題が発生 したな らば負の影響の防止は極めて 難 しい と言わざるを得ない。 したがって,問題の発生 自体を防止することが 不可欠である。

貧困層の越境については,いったん発生 した場合には,強制手段を別 とす

れば原状復帰は難 しいが,他方で未然にある程度防止することは不可能では

ない。それは, A 国か ら越境 して B 国に入 るケースでいえば, A 国 と B 国

の国境 に近い A国内地域 に,新たに工業団地 を造成 し,B国の製造業を誘

致する とい う手法であ り, これを B国が技術的 に,場合によっては金銭的

に支援することが想定で きる 。B 国の有力製造業が多 くの種類の部品を組み

立てる形のものであれば,当該部品産業を誘致することは経済的合理性が十

(8)

分にあ りうる。

(5 )深刻度 ・対策の緊急度

次に,それぞれの問題の深刻度 ( あるいは,その裏返 しである対策の緊急 皮)についてみてみると,以下の項 目が深刻度の極めて高いもの として挙げ

られる。

( ∋ 環 境

環境については,地球温暖化,森林破壊,砂漠化,種の絶滅,酸性雨な ど, 深刻度や対策の緊急性が高いものを列挙すると枚挙にい とまがないほどであ

る。世界各地で増加 し,悪化 し続ける異常気象が環境問題 に起因するところ 大である とすれば尚更である。

地球温暖化を例に とれば,気候変動 に関す る政府間パネル ( I PCC)の部 会が本年 4 月に とりま とめた報告書に,将来的に,食糧難,数億人に対する 水不足,沿岸湿地の最大 3割減少,生態系への影響などが列挙 されている。

② 資 源

地下資源については,原油をは じめ として可採年数,すなわち埋蔵量/ 午 間生産量 という数値が算出される。 もっとも当該数値は減少一方ではな く, 一時的に上昇することもある. これには,新たな鉱山 ・鉱脈の発見のほか, 価格の高騰 によって採掘 コス トが経済的に合理的になる場合な どが要因 とし て考えられる。

したがって,当該数値が一人歩 きする形で問題の緊急度が論 じられること は一般に考 えられるほどには多 くない。しかしなが ら,資源問題 については, 深刻であ り対策の緊急性が高いことには変わ りはない。

その理 由は,一つには 「いずれにしても有限である」 という単純な理屈で

あ り,もう一つには資源が環境に及ぼ し得 る影響が大 きく直接的であるとい

(9)

国際経済上 の諸問題 の類型化 に関す る一考察

う点にある。

1 3 1 1

( 診 貧困削減

貧困には,量的貧困 と質的貧困がある。

量的貧困,すなわち所得の不足は,貧困者の定義 として しば しば 「1 日 1 ドル以下で生活 している者」が使用 されることか らも,貧困の典型例である。

また,質的貧困については,明確な定義はないが,安全な水へのアクセス 不足,伝染病の蔓延,十分な医療 に接する機会の不足,教育機会の不足な ど が挙げ られる。いずれ も,生命や教養 ・人格の形成 といった,いわば人間の 根幹 に関わるものであ り, MDG ( Mi l l e n ni um De v e l o pme ntGo a l )が 201 5 年 までに実現することを掲げている 目標 として 「安全な水の非アクセス人 口 比率を半減す ること」 , 「全ての こどもに対する初等教育」 , 「エイズ,マラ リ アな どの新規蔓延の防止」を挙げていることは,質的貧困の深刻 さや削減の 緊急度 を端的に示 している。

量的貧困,質的貧困

8

ともに現状は深刻で,対策は急務であると言 える。

3. EU における問題の取組み状況

既 に各問題 が国際機関において取 り扱われている状況を概観 したが,地域 的機関の中には,取組みを行 う例はある。

日本が参加 している例 でみる と, ASEAN+3 や APEC9 ( アジア太平洋協 力会議, As i a n‑ Pa c i f i cEc o no mi cCo o pe r a t i o n) があ り,これまで論 じて き たテーマについて も閣僚級会合や事務 レベル会合を開催 している。

そ して,地 域 的 国際機 関 としての取組 みが最 も進 展 して い るの は EU

8

無論 ,量的貧困 と質的貧困が重複 しているケースは多 く, とくにアフ リカの貧困国で は極めて多い。

9

これ らについては,定義上は国際機関ではな く,国際協力の枠組み と称すべ きである。

(10)

( Eu r o pe a nUni o n) である。

まず, 2 (5) において深刻度,緊急度の高い項 目として挙げた ものにつ いてみる と,貧困はそ もそ も EU とは事実上関係 が薄いが,残 る環境 と資 源 に関 しては,一部拘束力を含む内容の方策を策定済み,ない しは策定の方 向にある。以下,具体的な例を記す。

① 環 境

温暖化ガスの排出については ,2 0 2 0 年 までに 1 9 9 0 年比 2 0 % 削減する とい う 目標を定めている。

地球温暖化対策 として有力視 されるバ イオ燃料

10

について,本年 3月に, 輸送用燃料に占めるバ イオ燃料の比率を 2 0 2 0 年 までに 1 0 % とす る目標が設定

され,各加盟国はこれを達成することが義務付け られている。

そ して,バ イオ燃料を安定的に調達すべ く総合的な政策を実施する方向に あ り,具体的には,原料生産の促進 を加盟国に求め ることや,次世代の研究 開発 ( 例 :木 くずや茎な どか らバ イオエタノールを製造する技術)を各国共 同で進めるといった内容が指摘 される。

さらに,環境被害の防止の面で も,行動計画を来年までに策定することに なっている。具体的には,地球温暖化や気候変動 による被害について,既 に 地中海地域で年間降水量が最大で 4 割減少する,猛暑による死者が 1 0 万人あ た りで最大 3 0 人増加するな どの予測をたてているが,加盟国が共同で, よ り 正確な被害予測を立てることが想定 される。 また,被害を最小限にする具体 策 として,干ばつに耐 える穀物の開発,水の効率的な分配の調整などが検討

されてい くもの とみ られる。

10

バ イオ燃料 とは,主 として,さ とうきび, とうもろこし,小麦 な どか ら製造するバ イ

オエタノール と,パーム油な どか ら製造す るバ イオデ ィーゼル燃料の こ とである。バ イ

オ ・エ タノールは,ブ ラジル とア メ リカにおいて特 に製造 が盛んであ り, 日本で も既 に

ガソ リンにバ イオエタノールを混合 した燃料が一部で供給 されているほか,沖縄 な どで

バ イオエタノールの試験的製造が開始 されている。

(11)

国際経済上 の諸問題の類型化 に関する一考察 1 3 3

② 資 源

E U は,イギ リスの原油など一部の例外 を除いては輸入に依存する割合が 高 く

1

1 , したがって資源政策 というよりはエネルギー政策 と称する方が正確 である。

E U は,エネルギーについて,共通政策を策定することで既に合意 してお り,その具体策 として,原油や天然ガスの主要な輸入先であるロシア とヨー ロッパを結ぶパ イプラインを監視 し,緊急時な ど必要 に応 じて融通 し合 うこ と,電力業界やガス業界に対する新規参入を促進すること,などが考えられ る。

E U は,一般に 「 超国家的国際機構」 と称 される。 これは ,E U として成 立 させた E U法が,加盟 国の国内法 に優先することを指 して用い られ るも のであ り, しかも当該 E U法は,成立のためには一定の多数決で足 りる, すなわち全会一致を要 しないものである。

E U がこの ような強力な一体性を保持で きる背景 としては,民族,言語, 社会な どの共通性や類似性が高いこと,古 くから陸上や海路 において高度な 輸送網が発達 していることに加えて,二度 にわたる世界大戦の主戦場 となっ て域内全域が疲弊 したことの反省にたって,戦争を再発 させないためには強 力な域内国際磯関の存在が有意義であるという認識が共有されていることが 指摘で きる。

こうした背景全てを同様 に保有 している地域は他に例がな く,したがって E U のみが超国家的国際機関 と称 される地域国際機関 として存在 していると 言える。

1

1 エネルギーのおよそ半分を輸入に依存 している。

(12)

4 . 発展途上国における各事項相互間の関連

これまで取 り扱 って きた諸問題は,お互いに独立 ということは少な く,む しろ相互連関が多かれ少なかれ指摘で きる。

とくに,発展途上国においては,その主要な事項 ・問題である貧困削減, 経済成長 ,開発援助,環境,資源 は相互 に深 く連関 している。

一例 として貧困削減 と環境 とい う組み合わせを とると,具体的に下記の よ うな関係が指摘で きる。

① 産業公害

発展途上国では, 工場 に隣接す る地帯 に貧民が居住することが少な くない。

そ して, 工場が十分な環境対策を講 じていない場合 には公害問題が発生 して, それが貧民を直撃する結果 となる。

② 大気汚染

発展途上国の大都市圏では,車やバスの台数が増 えた結果,排ガスが健康 被害を及ぼす程度 に達 している

12

ことも少な くない。そ して,地方か らの流 入者 を含めて路上生活者

13

である貧民に対 しては,かかる健康被害が最 も深 刻 にもた らされ ることとなる。

③ 水質汚濁

発展途上国の大都市 におけるスラム衝は,河川の流域に形成 されることが 少な くない。そ して,生活排水は処理 されることな く河川 に流入することか

ら,水質汚濁が進行することとなる。

12

燃料の質に係 る規制が不十分 な場合 には,健康被害は よ り深刻 となる。

1 3 熱帯 ・亜熱帯 にあ る発展途上 国の路上生活者 は, 日光 の直射や ス コール を避 け るため

に高架下 に居住す ることも多 く, したがって排ガスの被害 も増幅 され る結果 とな りうる。

(13)

国際経済上 の諸問題の類型化 に関する一考察 1 3 1 5

④ 森林減少

地方 に 目を転 じる と,貧民による焼 き畑農業が森林の減少を もた らしてい る。 しかも,木を焼いていったん確保 した区域 も,地力が衰 えると放棄 され て別の区域の木が焼かれることとなる。

以上のうち① と( 丑は,環境問題が貧困問題を悪化 させ るケース,また③ と

④は貧困問題 が環境問題 を引 き起 こすケースであ り,いずれにして も負の連 関である。その一方で,下記( 亘の ような正の連関の例 もある。

⑤ エコ ・ツー リズム

貧困地域の貧困削減策 としては様 々な選択肢があるが,観光業を主力 とす ることも有力である。そ して, 自然環境が豊かな場合 には,エコ ・ツー リズ ム として,環境を保護 しつつ観光客,観光業を誘致す るとい う. 方策が現実的 という場合 もある。貧民が観光関連業務に従事す ることによって貧困削減効 果 も期待で きることとなる。

5 .各問題の一体的解決の可能性

2. において論 じてきた各事項の類型化か らは,下記の結論が導 かれ る。

まず,主体 として政府が大 きな役割を果た している事項 ・問題 として,環 境,開発援助,資源,貧困削減,経済成長 を挙げたが,そのなかに,深刻度 や解決のための緊急度が高い もの として挙げた環境,資源,貧困削減は全て 含まれる。

さらに,発展途上国において相互連関が深いもの として環境,開発援助, 資源,貧困削減,経済成長を挙げた。

こうした ことか ら,発展途上 国の経済上の主要問題 は,相互連関性に注意

することが必要である一方で,政府がメジャーな主体であることか ら,関係

(14)

当局が問題解決のための真撃な姿勢を持てば,一体的解決は理屈の上では不 可能ではない といえよう。

もっ とも,発展途上地域ない しその周辺 には ,E U に匹敵す るような強力 な地域国際機関は存在 しない。その関連で注 目され るのは,開発援助 に関す る包括的国際機関 として挙げた地域開発金融機関である。 しか し,それ らの 機関には政治的中立 を守 るとい う原則があるため,資源,環境な どの問題 に ついて も,開発援助 に関係する限度において関与で きるに とどまる。

他方で,開発援助 には二国間 という枠組み も存在する。

以上の ことか ら,理想論 としては,各問題 について世界 レベルで解決策 に ついて議論 を深めるの と平行する形で,アジア,アフ リカ,南北アメリカ と いった各地域 ( あるいはそれ らの中の主要なサブ地域) において,地域国際 機関,地域開発金融機関,そ して二国間を 3 つの主要な軸 として各問題を一 体的に議論 し, 一体的な解決策を模索 してい くことの重要性が指摘で きよう。

それが現段階で現実的 とは言い難いが,近い将来に一つの方策 として考慮 さ れることを期待 したい。

( 参考記事)

・日本経済新聞 2 007 年 6 月 3 0 日

・日本経済新聞 2 007 年 8 月 27 日

参照

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