静岡大学教育学部研究報告 (教科教育学篇)第28号 (1997.3)157〜170
英詩理解のための設問形式 に関す る研究
A Research on the Questioning Method
for Further Understanding of the English Poetry
林
正 雄
MaSaO HAYASHI
(1996年10月 7日受理)
は じめに
これまで筆者 は、文学 テキス トに一連 の設間項 目を付加 し、その設 間に学生 がどのよ うに反 応 し、どのよ うな感想 を抱 き、どのよ うに回答 して くるものか とい う研究 を続 けて きた。 その きっか けは レデ ィング大学 で受講 した
TEFL(「
外国語 としての英語教授 法」)の
講 習 で あ った よ うに思 う。 この とき使用 されたテキス トは、日標言語 と しての英語 の発話 を促す ため に文学 作品が用 い られてお り、テキス トに添え られた設間 は、テキス トの内容理解 を 目的 と した もの だ けで はな く、テキス トを理解 した後で、そのテキス トの内容 に学生 が どのよ うに反応 す るか を問 うことを 目的 と して いた。1日本 の大学 における英米文学講読 の授業 は主 に作品理解 に重点 をおいた ものであ り、その あ との post‐reading activityに 関す る研究 はなぜか閑却 されて いる。おそ らくで きるだ け多 く の作品紹介を優先 させよ うとす る教師側の事情 によるものであろ うが、量を こなそ うとす るあ ま りに、学生 の理解状況を考慮 しないで許容範囲を超 え る教材 を詰 め込 む ことは、学生 の授 業 への興味を損ね る危険性 が多分 にある。海外 において も、文学部 の学生 に課す る読書 の量 の大 きさには驚か され るが、
TEFLに
おける文学教材 の扱 い方 には、はるか に時間的ゆ とりがあ り、学生一人一人が 自分 のペースで詩作品を鑑賞す ることがで きる。読書量 の ノルマに追 われて テ キス トの内容 を十分 に咀疇 しないままに読 み飛 ば してゆ くことが習慣づ くと、その弊害 は無視 で きない もの となる。一通 り読 み終 えて作品内容 を理解 したあ と、それで終 わ って しま うので はな くて、その理解内容 を元 にいろいろな文学的 テーマについて考 え させ るとい う文学講読 本 来 の 目標が見失 われているよ うに思われ る。詩作品をベースに創造的思考過程 を作業化す るた めに、知識 を詰 め込む ことか ら考 え させ る方向への方向転換、つ ま り、知識教育か ら発想教育 へ の転換 は、英米文学講読 の授業 において も要請 されているのである。
本稿第
1章
で は学生 が単 に設問項 目に答 えるばか りで はな くて、学生 自身 が設問作成 した と きの感想 につ いて ま とめた。第3章
で は、質 問 をPRQ(PerSOnal¨ Response QueStiOn)と RRQ(Reader‐ Response QueStiOn)と
に分 けて考察 し、それぞれが どのよ うな特質 を持 つかにつ いて分析 している。それぞれの質問が どのよ うな範疇 に入 るものなのか、なにを 目的 と し た ものなのか、適切 な設問作成 のために教官 は、質問の特性 につ いて的確 に把握 して いな けれ ばな らない と思 うか らである。第4章、第
5章
で は、そ うした考察を踏 まえた上 での設 間項 目 が例示 されてあ る。158 正 雄
第
1章 LEISURE
Lelsure
W. H. Davles
1870‑‑1940What is this life if, full of care, We have no time to stand and stare.
No time to stand beneath the boughs.
And stare as long as sheep or cows.
. No time to see, when woods we pass, Where squirrels hide their nuts in grass.
No time to see, in broad daylight, Streams full of stars like stars at night.
No time to turn at Beauty's glance, And watch her feet, how they can dance.
No time to wait till her mouth can Enrich that smile her eyes began.
A poor life this if, full of care, We have no time to stand and stare.
1‐
1学
生が作成 した質問項目とその内容による分類この詩 は比較的分か りやすい詩なので、学生 自身に設問作成の作業を課 した。その中か ら数 点を取 り上 げて質問内容の違 いに注 目してみたい。
(1)詩
の構成に着 目した設問。○第
1連
は抽象的、第2連は対象が自然、第5連と第6連は対象が女性、第7連はまた抽象 的になっているが、作者 は何故 このような構成 にしたのか。u
(2)同
義語の使い分 けに着 日した設間。OStare,see,glance,watchを どのように使い分けているか説明 しなさい。
(3)作
者の意図を考察す る設問。(Personal‐
response question)○作者が このような人生に関す る詩を書 こうとした動機 は何だったのだろうか。
10
英詩理解のための設間形式 に関する研究
(4)読
者 の反応 を問 う設間。○ この詩 を読 んで、自分 の生活 はどうか考 えてみよ う。
◎設間を作成す る作業 は詩 に距離を置いて客観的に眺めることを要請す るものであり、詩 を 鑑賞す る自分なりの尺度を会得 させ るものであることが分かる。
1‐2質問事項を考える作業が持つメ リッ ト
学生 に質問項 目を考えさせ る作業の もつ意味を考えて もらった。その回答の中か ら特徴別 に 分類 したものを次に掲げる。
1‐
2‐ 1(教
育学部総合課程3年生)○作者の意図を深 く読 もうとす る姿勢を促せ る。質問とは答えを見つけた結果であるので、
「 もう一つ質問を作 ろう」と思 うと、ある程度で止まっていた詩 につ いての理解 の範囲、 も しくは作者の意図についての理解の範囲を越えることができるか もしれない。
○詩を離れて日常生活で も物事に対 して問題意識を常に持 とうという心構えを うむきっかけ とな りうる。
◎常 に答えることを強いられている学生 にとつて、設間作成 は逆 に人に問いかける作業であ る。受動的態度か ら能動的態度へのアティチュー ドの変化がある。これは学生にとって新鮮 に思えるものである。
◎設間作成 はまた、新たな知識を覚えるのではな くて、今理解 した文学 テキス トを素材 に設 問事項を作成 して行 く行為であり、ク リエイティヴな作業である。メンタルな意味において、
分析的
0批
評的姿勢か ら統合的 0創 造的姿勢へのパ ラダイム・ ンフ トがある。◎教員養成課程の学生 にとっては質問作成の実際的な トレーニ ングにもなるし、なによ りも 設問作成の理念的根拠 についての考察を促す きっかけを与えることができる。
1‐
2¨ 2(教
育学部教員養成課程3年生)○設間を考えるときに、単語一つ一つの意味を じっくりと考える。また、作者の気持 ちを理 解 しようとす る。また他人のつ くった設間に答えるより自分でつ くった設間に答えるほ うが 楽 しく、様々な答えがでて くる。
◎詩の表面的な意味を理解 しただけで読んだつ もりでいて も、設間を作成することで、それ まで気づかなかった詩の意味に思い当たることがよくある。表面的には設間を作成す る作業 の副産物 として、詩の理解の内容 についての考察が進展 したり、詩の理解を深めたりす るこ とができるようになるのであるが、この副産物 こそが最 も重要な果実であることはいうまで もないことである。
◎「他人のつ くった設間に答えるよりも、自分でつ くった設間に答えるほうが楽 しく、様 々 な答えがでて くる」との指摘 は、詩を材料に して詩 との間にイ ンターアクティヴな関係 を作 り上 げていると考え られる。詩 との対話があった後で、同輩 との意見交換をす ると、詩 の読 みがさらに深 まるし、作品解釈に幅があることか ら生まれる対話が進む ものである。 これ は 解釈 という作業の相対性に気付かせ、自分の解釈の正当性を如何に して根拠付 けるか とい う
トレーニ ングにもなる。
林
正 雄
第 2章 THE APOLOGY
The Apology
ヨ蛯dph Waldo Emerson
1803‑1882
Think me not unkind and rude
That l walk alone in grove and glen;
I go to the god of the wood To fetch his word to men.
TaЖ
not my sloth that IFold my arms beside the brook;
Each cloud that floated in the sky Writes a letter in my book.
Chide me not, laborious band, For the idle flowers l brought, Every aster in my hand
Goes home loaded with a thoughte
There was never mystery
But 'tis figured in the flowers;
Was never secret history
But birds tell it in the bowers。
One harvest from thy field
Homeward brought the oxen strong;
、 A second crop thine acres yield, Which l gather in a song.
注
10
15
le2 glen: A mountain‐vauey, usually narrow and forming the course of a stream.
1。5 tax: chargeD aCCuSe
L9chidet reproach in a usue mild and constructive manner, ・ laborious: industrious
l.20h:with the foFm Of
160
20
英詩理解のための設問形式に関する研究
2‐ 1質
問1.こ の詩 の主 旨につ いて説明 しなさい。
○森 や谷 を一人で歩 いていた り、小川 のほとりで腕 を組んで静かにたたずんでいた り、 たわ い もない花を家 に持 ち帰 って も、思想家・ 詩人 である私 を、ど うか怒 らないでほ しい
.私
は 怠 けて いるのではな く、神の声を聞 いていた り、それを皆 に伝 え るべ く詩 を作 って い るだ けなのです
.そ
れを認 めて ほ しい、とい う思 い。2.第
5連の内容 を説 明 しなさい。○強 い雄牛 は神 の土地 か ら一つの作物 を家 に持 って きた。そ して私 は神 の土地か ら神 の意志 を 自分 の言葉 に置 き換 えて、詩 とい う形 で第二 の作物を収穫 しているのだ。
◎屈強な牡牛 は畑 の収穫物 を家 に運 び、一方私 は第二の収穫物 と して この詩 を刈 り入 れ る。
3。 タイ トルの ̀Apology'は 、詩人が誰 に、どのよ うな点 を「 謝罪」 して い るのか説 明 しな さい。
○農作業 にいそ しむ人を始 め、毎 日懸命 に働 いている人 々に対 しての謝罪
.詩
作 にふ け って いるのを、怠 けて いるととられ るのが嫌 だか ら.4.3行日のgodは どのよ うな神か。
Godと
の違 いを説明 しなさい。2‐
2学生が追加 した質問1.詩
人が この詩を書 こうと した動機 はどのよ うな ものであ った と思 いますか。2。 aster(1.11)の 代わ りに
roseと
した らこの詩 はどのよ うに変 わ るで しょうか。3。 詩人が散策 した り、たたずんでいた りしている場所 にはどのよ うな ものがあ るか、各連 ごとに詩 の中の場所 を表す名詞を拾 い上 げなさい。
4.も っとも気 に入 った表現箇所 を書 き出 しなさい。
第
3章W00DMAN, SPARE ttHA丁 丁
REEWoodman, Spare That Tree
George Parkins Morris
1802‑‑1864
Woodman, spare that tree!
Touch not a single bough!
In youth it sheltered me, And I'1l protect it now.
'Twas my forefather's hand That placed it near his cot;
There, woodman, let it stand, Thy ax should harnl it note
林
正 雄
That old familiar tree, Whose glory and renown
Are spread o'er land and sea,
And wouldst thou hew it down ?
Woodman, forbear thy stroke ! Cut not its earth - bound ties;
O, spare that aged oak, Now towering to the skies !
When but an idle boy
I sought its grateful shade ;
In all their gushing joy Here too, my sister played,
My mother kissed me here;
My father pressed my hand- Forgive this foolish tear,
But let that old oak stand !
My heart-strings round thee cling, Close as thy bark, old friend!
Here shall the wild bird sing,
And still thy branches bend.
Old tree! the storm still brave!
And, woodman, leave the spot!
While I've a hand to save, Thy ax shall hurt it not
iT
l。12 And: and yet
l.12 hew:to fell by blows of an axく<〜a treel>
1.13 forbear: to hold oneself back from with an effort
l.10 grateful: acceptable, comforting, refreshing。
3‐ 1
質問1。 23‐24行には作者 の どのよ うな心情 が こめ られて るか説明 しなさい。
2.幼
年時代 の楽 しい思 い出にはどのよ うな情景 が思 い出 されますか。3。 この詩 で はオークの木が詩人 に幼年時代 を思 い出させています。あなたの幼年時代 の記 憶 を思 い出 させ るきっか けとなるものにどのよ うな ものがあ りますか。
4. 8行
日を ̀I'を 主語 に して書 き換 えなさい。5。 第
1連
で詩人 は誰 になにを して くれ と懇願 しているのですか。10
15
20
25
30
英詩理解のための設問形式に関する研究
6.foolish(1。 23)は次 の何番 目の意味で用 い られているで しょうか。
7。 17行で省略 されて いる語句を補 いなさい。
3¨ 2 Porsona卜
Responso ApproachとReader‐ RespOnse Approach
文 学 テ キ ス トを 扱 う際 に 、 personal‐
response approach(PRA)と
reader̲responseapproach(RRA)と
い う概念を導入 して設間の種類を考えてみた。mPRAに
よる設間 は、文学 テキス トの中に埋 め込 まれて いるとい う前提 の元で、読者 によ っ て読 み とられた作者 の意図つ いて、そ してまたテキス トの中に確固 として存在す ると仮定 され た種 々の意味 につ いて設間が作成 され る。 この作業 の最 も重要 な目的 は、作者 によ って書 か れ たテキス ト(author's text)に 内在す ると仮定 された作者 の意図、あるい はテキ ス トの意 味 を 解 き明かす ことであ り、読者 のテキス ト解読能力 が問題 にされ、読者 自身 の感懐 や読後 感 に第 一次的意味が与 え られ ることはない。作者 あるいはテキス トが優先 され、読者 は二次的 な位置に置かれ る。
一方
RRAに
おいて問題 となるのは、読者(学
習者)と原 テキス ト(original text)と の間 の 読 み込 み作業 の結果創造 され る「読者 のテキス ト」(reader's text)であ る。 この「 読者 の テキ ス ト」 は固定的な もので はな くて、読者 の独断、偏見、思 いこみ、それまでの経験 の違 い、 な どによ って相 当な開 きがでて くる。「 読者 のテキス ト」 は読者 が作 り上 げ る もので あ り、読者 が第一義的役割 を果 た し、テキス トはそのための素材 にす ぎない。このよ うに、
PRAと RRAと
は何 を質問の対象 とす るか とい う点 において対照的 な立 場 に 置かれている。それぞれに基づ く設問形式 に も大 きな相違 が生 じて くる。 しか しこれ らは、設 問作成 のためのテキス ト分析 の視点 と して、その何れが優 れて いるか とい う問題 として捉 え る よ りも、学習者 の語学的0文
学的 レヴェルの相違、文学教育 なのか、語学教育 を 目標 に置 いた 質 問作成 なのか等 々の相違 に応 じて使 い分 けるべ きものであ る。3‐ 3 RRAと PRAに
よる質問の分類PRAと RRAの
相違 を具体的 に明示す るために この分類概念 を3‑1の
質 問項 目に当て はめ てみ ると次 のよ うになる。1。 23‐24行には作者 の どのよ うな心情 が こめ られて るか説明 しなさい。
◎ これは、
PRQで
ある。幼年時代に両親や兄弟 と一緒 に遊んだ楽 しい日々を思 い出 してい る。そのような思い出を心に浮かばせるきっかけとなるオークの木を切 り倒 さないでほ しい と頼んでいる。涙が出るほどに懐か しんでいるところをみると、共 に遊んだ人々は、遠 くに いって しまったか、あるいはもうこの世を去 って しまったのか もしれない。2。 幼年時代の楽 しい思い出にはどのような情景が思い出されますか。
◎ このた ぐいの質問は詩を読む前の準備段階の作業(pre̲reading activity)と して相応 しい ものである。読者の個人的な思い出を語 らせる質問であり、RRQである。
3。 この詩ではオークの木が詩人に幼年時代を思 い出させています。あなたの幼年時代 の記憶 を思 い出させ るきっかけとなるものにどのようなものがあ りますか。
◎読者の個人的体験を問 う質問であり、RRQである。
4.8行
日を ̀I'を 主語に して書 き換えなさい。◎I should nOt let you harm it。 文法的知識を問 う質問。
164 林
正 雄
5.第 1連
で詩人 は誰 になにを して くれと懇願 しているのですか。◎詩人はきこりに、思い出の樹木を切 り倒 さないで くれと懇願 している。内容把握力 を問 う 質問。
6。
foolish(1.23)は
次の何番 目の意味で用いられているで しょうか。語彙力を問 う質問。1: lacking in sense,iudgment, or discretion 2: absurd, ridiculous
3: insignificant, trifling, humble
◎ 1
7。 17行で省略 されている語句を補 いなさい。文章構成力を問 う質問。
◎When l was but an idle boy
3¨
4英問英答 に した場合上 の質問を英語で質問 した場合 の ことを考 えてみたい。質問 は次 のよ うになるだろ う。
1. What poet's feelings can you read in the lines 23‐ 24?
2. If you have some sweet memories in your childhood, explain them briefly.
3. In this poem the oak tree makes the poet remember the happy days of his
childhood.
Is there some particular obieCtS that makes you recall your childhood.?
4. Rewrite the line 8 beginning with ̀I'。
5. In the first stanza, what and whom does the poet asking?
6.In which meaning is the word ̀foolish'used? Choose a number fronl the following
definitions.
1: lacking in sense,judgment, or discretion 2: absurd, ridiculous
3: insignificant, trifling, humble
7. Supplement the words abbreviated in the line 17.
さて 、言語習得 を目的 と して、質問事項 を英問英答 にす るとどのよ うな ことにな るので あろ うか。
PRQも RRQも
共 に学習者 の英語 によ る発話 を促す ことを 目的 と して るが、 この二 種 類 の質 問形式 の間に生 まれ る相違点を考えてみたい。PRQは
、一連 の設 間形式 が、段階を踏んで理解 を深 めるよ うに設定 された ものであ る とき には、学習者 にとって大 いにテキス ト理解の助 けとなる。 しか しなが ら、学習者 の英 語 によ る 発話 に関 して言 えば、質問項 目に答えればそれで応答 が終 わ るので、学習者 自身 の発想 を英語 で表現す るよ うに促す もので はない。質問内容 が単 に学習者 の理解 の程度を試す よ うな内容 の ものであれば、質問 に答えた後で学習者 はノルマを果 た し終 えたかのよ うに文学 テキス トか ら 離 れて しま うか もしれない。 これは学習者 とテキス トの間の イ ンター ラク シ ョン(?)が外 的強 制 と学習者 に感 じられた ときに起 きる。質問の内容 は言語教育 を 目的 と した もの、内容 理解 を 目的 とした ものなど機能的に多様 な ものが可能 である。 しか しなが ら、質問の難易度 が高 す ぎ るときに学習者 は受動的 にな り、テキス トヘ の興味を失 うおそれがある。他方
RRQは
、学習者 自身の体験 や感想を 目標言語 で表現す ることが第一義的 目的 とな るよ英詩理解のための設間形式に関する研究
うに設間が作成 される。学習者の感想や判断、判断基準、根拠について問いかけるRRQに対
する回答 は、Yes‐no questionsの ようにそっけない回答に終わるのではな く、相 当に長 い表 現が求められるので外国語による表現の練習 としては適当であるが、学習者 にあ らか じめ相 当 な語学力が求め られる。
"今
述べた設問内容による二種類の分類 は、それぞれの特徴があ り、テキス ト内容に応 じて使 い分けをすることによって効果的な設間作成が可能 となる。
何れの場合で も、英問英答問題を作成する際に留意 しなければならないことは、多 くの 日本 入学生にとって英答すると言 うことは深層構造部分か ら英語 によって表出される想念があるわ けで はないとい う点 で あ る。母 国語 によ って構成 され たあ る想念 が あ って それ をtarget language(英語
)に
トランス レー トす るのである。V従
って、 日本人学生 を対象 と したTEFL
において、コ ミュニケーション能力の養成 とは、スピーディーな トランス レーション能力 の養 成 と考えてよいのではなかろうか。
第4章 丁
HE OLD FAM:LIAR FACES
Old Familiar Faces Charles Lamb
1775‑‑1834
I have had playmates, I have had companions,
In my days of childhood, in my joyful school-days;
All, all are gone, the old familiar faces.
I have been laughing, I have been carousing,
Drinking late, sitting late, with my bosom cronies;
All, all are gone, the old familiar faces.
I loved a Love once, fairest among women:
Closed are her doors on me, I must not see her- All, all are gone, the old familiar faces.
I have a friend, a kinder friend has no man:
Like an ingrate, I left my friend abruptly;
Left him, to muse on the old familiar faces.
Ghost-like I paced round the haunts of my childhood,
Earth seem'd a desert I was bound to traverse, Seeking to find the old familiar faces.
10
15
林
正 雄
Friend of my bosonl, thou more than a brother, Why wert not thou born in my father's dwelling, So nlight we talk of the old fanliliar faces,
How some they have died, and some they have left me,
And some are taken from me; all are departed; 20 All, all are gOne, the old falniliar faces.
注
1.1l ingrate : person not feeling or showing gratitude; ungrateful, unthankful person l.4 carouse : To drink ̀all out', drink freely and repeatedly.
1.5 sitting late : Used of pers6ns seated (usually at a table)for the purpose of, or while engaged in,eating, drinking, gaming, etc.
crony:=crone:親
友I.13 :haunts : places frequently visited
l。14 traverse: To cross(a mountain, river, sea)in travelling
l。19 some they : some of them
4‐ 1質
問1.11行日、
̀a kinder friend has nO man'の
省略された語句を補 って、書 き直 しなさい。No man
2.こ の詩 には詩人のどのような心境が描かれているか、説明 しなさい。
3.時
間的展開 について配慮 しなが ら、1〜
5連で取 り上 げ られている主題 につ いて考 えて、その簡単 な要約 となる名前を付 けなさい。
(例 )第 1連
…幼 な じみ と無邪気 に遊んだ幼年時代。4.第 1連
と最終連 におかれた対比的要素 はどのよ うな ものか説明 しなさい。4¨
2 解答例1.11行日、̀a kinder friend has no man'の 省略 された語句 を補 って、書 き直 しなさい。
No man
◎詩行の省略された語句を補い、正確にシンタックスを読みとる練習。
No man has a kinder friend(than l have)。
2.こ の詩 に は詩 人 の どの よ うな心境 が描 かれて い るか、説 明 しな さい。
◎Personal̲Response‐ QueStiOnの 具体例。
晩年 になって同輩が皆他界 し、ただ一人取 り残 された詩人の寂 しい心境が描かれている。
3.時
間的展開について配慮 しなが ら、1〜
5連で取 り上 げられている主題 につ いて考 えて、その簡単 な要約 となる名前を付けなさい。
(例 )第 1連
…幼な じみと無邪気に遊んだ幼年時代。英詩理解 のための設間形式 に関する研究
◎詩を構成 している時間的展開に気づかせ、内容を要約す ることを目的とした設間。
第
1連
…何の憂いもな く遊 び戯れた幼年時代。第2連…夜遅 くまで飲み歩いた青年時代。
第3連…実 らなか った恋愛感情を残 した青春時代。
第
4連
…友情が破綻 した記憶を残す壮年時代。第5連…幼児期の友の面影を求めてさまよい歩 く老年時代。
4。 第
1連
と最終連におかれた対比的要素 はどのようなものか説明 しなさい。◎作品中の対立要素に注 目させる質問。なんの憂いもな く遊 び戯れることのできた幼年時代 の楽 しい思いでと、その時期の友をすべて失 って一人取 り残 された寂 しい老境の想 いが対比 されている。
第 5章 A MEMORY
A Memory
William Allingham 1824‑‑1889
Four ducks on a pond, A grass bank beyond,
A blue sky of spring, White clouds on the wing;What a little thing 5
To remember for years‐‐‐To remember with tears!
5‐ 1質
問1。
1行
か ら4行
にか けて色彩 に関係 す る単 語 とその色彩 名 を指摘 しな さい。2.4行 日の What a little thingの 内容 を説 明 しな さい。
3.4行 日の セ ミコロ ンの機能 につ いて説 明 しな さい。
4.7行 日で、詩 人 が涙 す るの は どの よ うな理 由 に よ る ものだ と考 え られ ます か。
5‐
2 解答 例1。
1行
か ら4行
にか けて色彩 に関係 す る単語 とその色彩 名 を指摘 しな さい。◎ducks‐白、grass‐緑 、blue sky‐青 、
white clouds‐
白。2。
4行
日の What a little thingの 内容 を説 明 しな さい。◎上
4行
に描かれた長閑な春の風景。3。
4行
日のセ ミコロンの機能について説明 しなさい。◎上
4行
の内容をまとめている。168 正 雄
4。 7行日で、詩人が涙するのはどのような理由によるものだと考え られますか。
◎故郷を追われた追放者だか ら。
◎記憶にある長閑な風景 と比較 して現在の詩人は苦境にあるか ら。
5‐
3 感想長閑な故郷の風景を思い出す とき、人 はなぜか涙に咽ぶほどに感動することがある
.過
ぎ去 っ た幼年時代を懐か しむノスタルジア、今 と比べ純粋な気持 ちでいることのできた時代への郷愁、取 り戻す ことのできない時間への名残惜 しさ、などの理由によるものである。この詩 は、分か りやすい言葉遣いの中で、そのような郷愁の思いを生み出す。31字で作 られた英詩 は例外的 に 短 いものであり、余韻翔々として日本の俳句を思わせるものがある。
まとめ
講読対象 のテキス トに設間項 目を付加 させ ることか ら得 られ る作品理解 の上 での メ リッ トは 少 な くない。学生 に対す るア ンケー ト調査の回答 を元 にまとめてみた。設問付加 の メ リッ トに つ いて は、次 の二種類 の意味か ら扱 わなければな らない。
まず第一 に、学生 が付加 された設間 に回答す る場合。設間 に答 え ることで詩 をいろい ろな角 度 か ら
(表
題、単語 の象徴的意味、詩形 など)か
ら総合的に評価す ることがで きる。詩 を読 む とい う行為 は、穴だ らけの不完全 なテキス トを元 に読者 自身の体験 と想像力 を手 がか りに独 自 な概念 を構築 してゆ く作業である。通 リー遍 の読 みでは、詩 の奥深 い意味を くみ取 ることは と うていで きない。設間項 目作成 の目的 は、何 にポイ ン トを置 いて詩 を読 むべ きか焦点 を絞 って 提示す ることにある。代名詞 の対応関係 や文法的知識を問 う質問 も必要 であ るが、それ は詩 全 体 のテーマを総合的 に把握す るための質問であ るべ きであろ う。従 って項 目が多す ぎて焦点 が 曖味な設間 は、読者 に不必要 な負担 を強 いるだけで、かえ って詩 を楽 しむ興味を削 ぐ恐 れが あ る。文学作品 は特 に、読者がそれぞれの立場で好 き勝手 に読 んでゆけばよい ものであ るに も拘 わ らず、質問項 目を設 けて唯― の正解を押 しつ けるよ うにな って しまって は本末 を転倒 した も のにな って しま う。せ っか くの良 い詩 が設問項 目を付加す ることによってつ ま らない詩 に変 わ る危険性 がないわけではない。必要最小限で、焦点 の絞 られた設問作成 には相 当な修練 を要 す る ものであ る。第二 に、学生 が設間を作成す る場合。質問を作成す るためには、自分 が十分 にその詩 を理 解 していなければいけないので、詩を繰 り返 し読む ことにな り、結果的 に詩 を深 く理解す る こと がで きる。付加 された設問事項 に答 えた後で も、自分が設間を考案 しよ うとす ると、一 段深 い 読 みが必要 であることを学生 は実感 している。設間に答え るだけな らば、学生 の立場 の延長 で 不都合 はないが、設間を作成す るとい う体験 は、すでに教師の立場 に立 っている行為であ る。
これ は学生 に とって は新鮮 な作業 であ ると同時 に、将来選択す る職業 と深 く結 びつ いて い る作 業 であ るだ けに、教え る側 に も教 えを受 ける側 に も真剣 さが加味 され る。 こうした体験 は特 に 将来教 師 と して種 々の問題作成 を実践 してゆかなければな らない教育学部 の学生 に とって は、
貴重 な体験 であ る。
設間を作成す るとい う作業 は実 は教師に とって も大 きなメ リッ トがある。何 の 日標 も持 たず にただ漠然 と読 み過 ごして しま うか もしれない詩作品で も、設間を作成す ることにな ると、詩
英詩理解のための設問形式に関する研究
の内容・ テーマについて は言 うまで もな く、作品の構成様式、タイ トルの象徴的意味等 々につ いて総合的な日配 りが必要 になって くる。筆者が これまでに着眼 した もので、テキス ト理解 に 有効 であ った設 問項 目を列挙 してみ る。具体的な設間 は個 々のテキス トによ って異 なるが、一 般 的手法 を挙 げれば次 のよ うな ものが考え られ る。
0代
名詞 の指示す る語句を指摘 させ る。・ 主題 の要 旨を述 べ させ る。
0英
詩 において、倒置 した語順を並 び換え させ る。0対
比 されて いる観念・ 語句 などを指摘 させ る。0カ ラー 0シ ンボ リズムについて考 えさせ る。
0孤
島、夫婦、誕生、等 々のあ りふれた普通名詞 が持つ象徴的意味 について考 え させ る。●タイ トルの もつ象徴的な意味 について考えさせ る。
・ キーワー ドの意味を はっきり理解 させ るための質問形式 を用意す る。
O Pre‐reading activityの ための設間を作成す る。
・Post‐reading activityの ための設間を作成す る。
・ テキス トの主題 によって連想 した自己の体験 につ いて感想文を書かせ る。
漫然 とした目標 を持 たない読み とはちが って、明確 なモーチベー ションに裏付 け られた読書 態度 は文学作品の理解 に深みを与 えて くれ るよ うに思え る。
後注
i Alex Martin and Robert Hill, Mο
ごarれ Poθιry, Cassell Publishers Lilnited, 1991。John McRare&Luisa Pantaleoni,Cん apιer&Иttsc,Oxford。 などのテキス トを用いた。
五
〇 は学生 の回答、◎ は教官 の コメ ン トを示すサイ ンとす る。
i Cf.
凪 r Jo rれαJ,vol.50,No。 2,pp.127‐134.市
拙論参照 の こと。林正雄
(1995):設
問形式 を利用 した英詩導入方法の研究 、静 岡大学教 養部研究報告(人
文0社
会科学篇)第
30巻第2号、pp.31‐
32.v Cf.「
もともと母語 で記憶 に保存 されている分野 の トピックにつ いて書 くときに は母語 で 書 いた ものを後か ら英語 になお した方が内容的 に豊かな作品がで きるとい う研究結果」 あ る ことを指摘す るだけに とどめてお く。 (静哲人、「 パ ソコ ン 0ラ イテ ィ ング」、『 英語展 自昌』, 1996. p。 32.)
林