論文の内容の要旨
氏名:高 橋 啓 子
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:左心房における自律神経叢と心外脂肪組織の分布及びこれらの心房細動の発生・維持への役割 を解明するための研究
発作性心房細動(paroxysmal atrial fibrillation: PAF)に対する肺静脈隔離術(pulmonary vein isolation:
PVI)は確立した治療法であるが、リモデリングの進行したAF患者に対してPVIに加えて行うアブレー ションストラテジーには確立した方法がない。一方、心臓周囲の自律神経叢 (ganglionated plexus: GP)
はAFの発生および病態の進行との関連性が近年注目されており、PVIにGPへの焼灼を加えるとAFの 治療成績が向上すると報告されている。また、心外脂肪組織(epicardial adipose tissue: EAT)もAFの発 生・維持に関与しているという報告がある。GPはEATの中に分布していると解剖学的に報告されている がヒト心房筋において実際にGPの存在部位がEATの分布と関連しているかは解明されていない。また、
AFの機序としてGPの重要性は多く報告されているが、AF患者ではGP反応が亢進しているか否か不明 である。
以上の問題点を明らかにするため研究①から③を行った。
まず研究①ではEATを3次元CT画像により臨床的に描出することが可能であることから、GPの位置関 係と3次元CT上に描出されたEATの分布を比較しGPとLA-EATの分布が密接に関連していることを 明らかにした。
さらに、研究②ではAF患者と非AF患者でHFSに対するLAGPの反応性を比較した。非AF患者におい てGP陽性部位はAF患者よりも少なく、異なる反応性を呈した。従来からGPは健常人、AF患者に関わ らず存在していると考えられていたが、この所見は非AF患者においては刺激に対するGPの反応性が乏 しいことを示した。最後の研究③ではPVIに付加的に施行するアブレーションストラテジーとして、EAT- based LA ablationを施行し、長期予後について検討した。本法では、術前にCTを施行することで容易に EATの分布を把握することができ、その分布に沿って焼灼することで術前にGPの反応性を検討せずにGP 部位を網羅して焼灼することが可能である。さらに本法は、EAT内に存在するGPのみならずAFの発生 維持に関与するEAT本体も同時に焼灼するため、術後に心房細動周期の延長を認めた。これらの付加的な 効果により、EAT-based ablationでは他のストラテジーと比較して高い洞調律維持を示したと考えられた。