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家庭生活と家族のコミュニケーションに関する

調査研究報告書

平 成 17 年 度

兵 庫 県

(財)21 世紀ヒューマンケア研究機構

家 庭 問 題 研 究 所

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はじめに

近年、家族の小規模化や共働きの増加、長時間労働、子どもの塾通い、個室の付与等、様々な理 由から、家族のコミュニケーション機会が減少傾向にあります。児童虐待やDV、高齢者虐待、子 どもの凶悪犯罪など、家族・家庭をめぐる様々な社会問題が顕在化していますが、この背景の一つ には、家族内のコミュニケーションの不足があるように思われてなりません。 情報化社会の進展により、携帯電話や電子メールなど、家族のコミュニケーションを支援できる 便利なツールが普及してきていますが、これも、家族のコミュニケーションを増やしていると肯定 的に評価される一方で、家族の顔と顔とをつきあわせたコミュニケーションを一層減少させている という否定的な評価もなされているところです。 こうしたツールを上手に使うことができれば、面と向かっては言いにくいことまでさりげなく伝 えられるツールとなりうる反面、もともと顔を合わせたくないような意識が強い家庭では、さらに 家族の関係を希薄化させる傾向を強めることにつながっているのかもしれません。 こうした状況があるなかで、家族関係が良好な家族とそうでない家族との分かれ目はどこにある のでしょうか。言い換えれば、家族の関係性を良好に保つコミュニケーションの秘訣はどこにある のでしょうか。 こうした問題意識の下、兵庫県では、「家庭生活と家族のコミュニケーション」について家庭問 題研究所に調査をお願いしました。 県では、この調査結果を受け、家族が良好な関係性を築き、家庭の持つ力を向上するための施策 等の検討をすすめて参ります。 最後になりましたが、この調査研究に携わっていただいた関係者の方々をはじめ、ご協力をいた だきました多くの方々に厚くお礼申し上げます。 平成 18 年3月

兵 庫 県

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まえがき

この報告書は、平成 17 年度において家庭問題研究所が兵庫県の委託を受けて実施した「家 庭生活と家族のコミュニケーションに関する調査研究」をまとめたものです。 家族の中のコミュニケーションについては、生活時間のすれ違いなどによる希薄化が指 摘される一方で、携帯電話(とくにメール機能)の普及によって、これまでなかった親子 のコミュニケーションが生まれるという論など、その変化が社会の注目を集めているとい ってよいでしょう。 価値観や規範が誰にとっても明らかなものとして存在しているときには、「阿吽(あうん) の呼吸」や「以心伝心」によって、意思の疎通が図れるかもしれません。しかし、さまざ まな環境で育った人同士が家族を作り、さらに各成員が、人生のさまざまな時期において、 また日々の生活において、それぞれ異なる(場合によっては複数の)組織に参加するよう になると、価値観や規範は自明のものではなくなり、家族を円滑に運営していくためにコ ミュニケーションが重要な役割を果たすようになると考えられます。 こうしたことから本調査研究では、対象を家族における諸関係のなかで比較的対等で自 立した個人同士の関係が成立しやすい夫婦の関係に絞りました。そして、アンケートにお いて、規範や価値観など家族に関わる意識、夫婦のコミュニケーションのありかた、家族 内外のネットワークやその満足度についての設問を用意し、その状況を明らかにするとと もに、それらの諸要因が個人の孤独感に与える影響についても分析しています。またイン タビューでは、選択式のアンケートではうかがい知れないような、コミュニケーションの あり方と夫婦関係の満足度との間の複雑な関係を描き出しています。 概してコミュニケーションやネットワークの豊かさが孤独感を低くしていることは男女 を問わず示されていますが、なかには興味深い男女差も見られます。男性には見られない 傾向として、女性では一人で過ごす時間が少ないほど家庭で感じる孤独感が高いという一 見矛盾するようであるが、家庭内で妻のおかれた立場について非常に示唆的な結果も示さ れています。また、若い世代であっても夫婦が、個人と個人のパートナーシップとしてで はなく性別による役割分化によって、一対となった社会的存在として日常生活を営んでい る兆候が読み取れることも重要な点です。詳細は本文をご参照ください。 最後になりましたが、アンケートにお答えくださった皆様、それに加えて長時間にわた るインタビューにご協力くださった皆様、そして調査にあたってさまざまな面からご協力 いただいた皆様に、厚くお礼申し上げます。 平成 18 年3月 家庭問題研究所 所長代行

中 里 英 樹

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研究体制

研究責任者 野々山 久 也 家庭問題研究所所長

甲南大学文学部教授

中 里 英 樹 家庭問題研究所所長代行

甲南大学文学部助教授

研究者 高 山 育 子 家庭問題研究所主任研究員

京都大学大学院教育学研究科博士後期課程

齋 藤 優 子 家庭問題研究所特別研究員

生活協同組合コープこうべ

加 藤 慎 吾 家庭問題研究所特別研究員

竹中工務店

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目次

序 調査研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第Ⅰ部 アンケート調査編 第 1 章 調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 第 1 節 調査の目的と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 第 2 節 分析対象者の基本属性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 第 2 章 調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 第 1 節 現代の家族のありかた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 第 2 節 夫婦の勢力関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 第 3 節 「家庭での孤独感」と夫婦のコミュニケーション・・・・・・・・・・・・・ 34 第 3 章 アンケート調査のまとめと考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 第Ⅱ部 インタビュー調査編 第 1 章 調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 第 1 節 調査の目的と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 第 2 節 調査対象者の属性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 第 2 章 インタビュー事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 第 3 章 インタビュー調査のまとめと考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 結語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 引用・参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68 第Ⅲ部 資料編 アンケート用紙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 基礎集計表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76

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序 調査研究の目的

新聞やテレビでは、毎日のように、児童虐待や高齢者虐待、ドメスティックバイオレンス など、家庭を舞台とする事件や事故が報道されている。あるいは子どもや高齢者、女性自 身が加害者となる事件も少なくない。また、フリーターやニート、ひきこもり、未婚化、 熟年離婚などが社会問題として語られる。こうした家族をめぐる「問題」が日常的に生じ、 語られているということは、家族の人間関係が変容しているということだけではなく、変 わりゆく社会状況のなかで、社会にとって、また、個人にとって「家族」という存在がも つ意味そのものが変化しつつあることを示しているだろう。 平均初婚年齢が上昇する「晩婚化」や、生涯を未婚で過ごす人の割合が増える「未婚化」、 婚姻を解消する人が増える「離婚率」の上昇、また、夫婦 1 組あたりが産む子どもの数の 減少・・・。これらの現象は、「家族」というものをそもそも形成していくのかどうか、ま た、形成するとして、いつ、どのような家族を形成するのか、そしてどのように家族を営 んでいくのかといった、家族をめぐるさまざまな決定が個人の選択に委ねられるようにな ってきているということ、またその選択の幅が増大している結果とみなすことができる (「家族の本質的個人化」山田 2004:341)。 本調査では、現代社会を、このような個人化の進展する社会として認識し、家族を構成す る基礎的な単位の 1 つとしての夫婦に着目する。当たり前のこととして結婚し、何らかの モデルや規範に従って家族を営んでいるのではなく、個人は意識的にパートナーを選択し、 家族に関する意識や社会的規範、性別役割に関する社会的慣習などを共有したり、修正し たりしあいながら、日常的にコミュニケーションをとりあうなかで、夫婦の関係性を築き 上げ、家族や配偶者に対する満足度を高めていると考えられるからである。 本研究では、アンケート調査とインタビュー調査の 2 種類の調査をおこなった。アンケー ト調査では、現在の兵庫県における家族や夫婦関係の全体的特性や変化を把握することを 主眼としている。インタビュー調査では、個々の夫婦の日常生活におけるコミュニケーシ ョンのありかたの理解を目指している。

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第 1 章 調査の概要

第 1 節 調査の目的と方法 1.調査の目的 「序」でも述べたように、本調査では、家族関係のなかでも、特に夫婦間のコミュニ ケーションに焦点をあてる。現代の夫婦のパートナーシップと、夫婦間のコミュニケーシ ョンの特質、そして、夫婦間のコミュニケーションと家族関係の安定性について検討する。 家庭問題研究所ではこれまでにも「家庭の機能・役割に関する調査」(1994 年)「夫婦 の勢力関係に関する調査」(1995 年度)、「家族の多様化に関する調査」(1997 年度)、「家 族の共有時間の確保と活用に関する調査」(1997 年度)、「家族行事に関する調査」(1998 年度)、「家族のきずなに関する調査」(2001 年度)、「成人期の親子関係に関する調査」 (2004 年度)など、家族のあり方に関する調査を継続的におこなってきた。本調査を設 計するにあたってはこうした調査を参照した。兵庫県民を母集団とするこれらの貴重な調 査の結果について、比較可能なものは比較し、家族関係についての変化の早い側面や、変 化の遅い側面について考察を加える。 2.調査の方法 調査はアンケート(質問紙)調査法とインタビュー調査法の 2 つの方法でおこなった。 アンケート調査の実施概要は以下のとおりである。なお、インタビュー調査の概要につい ては本報告書第Ⅱ部 インタビュー調査編(pp.49-66)に記している。アンケート調査は高 山が、インタビュー調査は齋藤と加藤が主として担当した。 3.アンケート調査の調査設計 3-1. 調査地域 兵庫県全域 3-2.調査対象 35 歳から 64 歳までの男女 『住民基本台帳』にもとづき、2005 年 12 月末日現在において 35 歳から 64 歳までの 男女をサンプルとして抽出した。 3-3.アンケート配布数 3,000 票 3-4.抽出方法 層化二段無作為抽出法 地域(10 地域)と人口規模(6 種類)の 2 つの基準で兵庫県全体を層化し、兵 庫県全域から無作為にサンプルを抽出した。 υ 抽出の手順 ①兵庫県内の市町村を、県民局を単位とした 10 地域に分類(表 1-1-1 参照)。

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表 1-1-1 地域区分 地域 該当市・郡 神戸 神戸市(東灘区、灘区、中央区、兵庫区、北区、長田区、須磨区、垂水区、西区) 阪神南 尼崎市、西宮市、芦屋市 阪神北 伊丹市、宝塚市、川西市、三田市、川辺郡 東播磨 明石市、加古川市、高砂市、加古郡 北播磨 西脇市、三木市、小野市、加西市、美嚢郡、加東郡、多可郡 中播磨 姫路市、飾磨郡、神崎郡 西播磨 相生市、龍野市、赤穂市、揖保郡、赤穂郡、佐用郡、宍粟市、宍粟郡 但馬 豊岡市、養父市、美方郡、朝来市 丹波 篠山市、丹波市 淡路 洲本市、南あわじ市、淡路市、津名郡 ②各市、郡を人口規模により 6 層に分類(表 1-1-2 参照)し、各世帯数1に応じ て 3,000 票を配分した。 表 1-1-2 人口規模別市・郡 人口規模 該当市・郡 サンプル数 ①100 万人以上の市 神戸市 900 ②30 万人以上 100 万人 未満の市 姫路市、尼崎市、西宮市 790 ③20 万人以上 30 万人未 満の市 明石市、加古川市、宝塚市 440 ④10 万人以上 20 万人未 満の市 伊丹市、川西市、三田市 240 ⑤10 万人未満の市 高砂市、芦屋市、三木市、赤穂市、加西市、小野 市、豊岡市、篠山市、龍野市、洲本市、西脇市、 相生市、養父市、丹波市、南あわじ市、淡路市、 宍栗郡、朝来市 410 ⑥郡 川辺郡、美嚢郡、加東郡、多可郡、加古郡、飾磨 郡、神崎郡、揖保郡、赤穂郡、佐用郡、宍栗郡、 美方郡、津名郡 220 ③調査地点の抽出とサンプル数の決定 調査地点を無作為に抽出し、各調査地点の世帯数に応じてサンプル数を決 定した。 ④調査対象者の決定 『住民基本台帳』から調査対象者を無作為に抽出した。 調査地点の人口 調査地点のアンケート配布数 1 2005 年 5 月 1 日現在の推計世帯数を使用。 抽出間隔=

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3-5.調査内容 ① 家族に関する一般的な意識 ② 家族との共有行動や家族関係について ③ 個人的状況、コミュニケーションの志向性 ④ 夫婦間のコミュニケーション ⑤ 子どもの教育 ⑥ 個人属性・家族構成 ⑦ その他(自由回答) 3-6.調査方法 郵送法によるアンケート調査(自計式) 3-7.調査時期 2005(平成 17)年 8 月上旬 3-8.実施機関 (財)21 世紀ヒューマンケア研究機構 家庭問題研究所 3-9.回収数・有効回収数・回収率 総回収票は 711 票(回収率は 23.7%)。回答者の属性を示すフェイスシート項目が すべて無回答であるもの、および全質問項目の半分以上に対して無回答であるものを 無効票とした結果、有効回収票数は 692 票(有効回収率は 23.1%)となった。 地域別および男女別のアンケート配布数および有効回収数、有効回収率は、表 1-1-3 に示すとおりである。地域別では、丹波地域の回収率が低く(16.0%)、但馬地域の 回収率が高い(36.7%)が、おおむね県内の地域別の世帯分布と、有効回収票の回答 者分布は一致している。 表 1-1-3 地域別回収状況 地域 アンケート 配布数 有効 回収数 有効回収率 (%) 地域別 回答者分布(%) 地域別 世帯分布(%) * 神戸 900 193 21.4 27.9 30.0 阪神南 590 119 20.2 17.2 19.8 阪神北 370 89 24.1 12.9 12.3 東播磨 370 92 24.9 13.3 12.2 北播磨 130 26 20.0 3.8 4.4 中播磨 290 77 26.6 11.1 9.7 西播磨 130 38 29.2 5.5 4.4 但馬 90 33 36.7 4.8 2.9 丹波 50 8 16.0 1.2 1.7 淡路 80 16 20.0 2.3 2.5 合計 3,000 692 23.1 100.0 100.0 注)「地域別世帯分布」は、2005 年 5 月 1 日現在の推計世帯数にもとづく。 3-10. 分析手続き

統計処理は、SPSS for Windows ver.13.01J を用いておこなった。 分析に用いた統計的検定の手続きについては、以下の通りである。

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2 つの変数(離散変数)間の関連を調べる場合はカイ二乗(χ2)検定をおこない、 「母集団において関連がない」という仮説を有意水準α=0.05(*)または 0.01(**) および 0.001(***)で棄却できる(有意確率 p<0.05、p<0.01、p<0.001)場合に 有意な関連があるとした。ただし、2 つの変数を用いてクロス表を作成した際に各セ ルにおける期待度数が 5 未満になる場合には、検定を施さなかった。また、グループ 間での平均の差の検定には分散分析を行ない、これも同様に有意水準α=0.05(*) または 0.01(**)、0.001(***)とした。これらの検定の結果は、それぞれの図表中 に示した。 なお、百分率で集計した結果を示す際には、まるめのため合計が 100.0%にならな い場合がある。また、複数回答形式(M.A.)の項目については、回答者全体(または 男性回答者全体、女性回答者全体)を 100.0%として集計した。 第 2 節 分析対象者の基本属性 有効回収票 692 ケースを分析の対象とする。以下、分析対象となる回答者の基本属性を 確認しておく。 1.性別 アンケートは、男女同数になるよう配布したが、回答者は表 1-2-1 に示すように、女性 が 61.0%、男性が 39.0%である。2005 年 5 月 1 日現在の 20 歳以上の推計人口は女性 52.1%、 男性 47.9%であるから、分析対象は母集団にくらべて男性が少ない。このような母集団と サンプルの男女の構成比のずれについては留意を要する。 表 1-2-1 回答者の男女比 回答者 人 % 推計人口 2005.5.1 現在(%) 女性 422 61.0 52.1 男性 270 39.0 47.9 合計 692 100.0 100.0 2.年齢層 つぎに、表 1-2-2 に示すように 35 歳から 10 歳きざみで 3 段階に分けてそれぞれの割合 をみると、女性、男性ともに 35-44 歳の比較的若い世代の回答者が少ない。平均年齢は、 女性 50.2 歳(標準偏差は 7.9 歳)、男性 50.8 歳(同 8.5 歳)であった。 表 1-2-2 回答者の性別年齢層 女性 男性 合計 人 % 人 % 人 % 35-44 歳 116 27.5 70 25.9 186 26.9 45-54 歳 152 36.0 89 33.0 241 34.8 55-64 歳 151 35.8 111 41.1 262 37.9 不明 3 0.7 0 0.0 3 0.4 合計 422 100.0 270 100.0 692 100.0 注)「不明」を除く平均年齢:女性 50.2 歳(S.D.=7.9)、男性 50.8 歳(S.D.=8.5)

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3.配偶者の有無 現に配偶者がいるかどうかをみると、表 1-2-3 に示すように男女とも約 85%に、現に配 偶者がいる。配偶者がいない人の内訳をみると(表は省略)、女性は高齢世代ほど多く、逆 に男性は若い世代ほど多い。設問の設計上、無配偶者が未婚者であるのか離死別者である のか区別できないが、年齢や子どもがいるかどうかから推測すると、無配偶者の内訳は男 女で異なっており、女性は離死別者が多く、男性は未婚者が多いと思われる。 表 1-2-3 性別・配偶者の有無 女性 男性 合計 人 % 人 % 人 % 有配偶 354 83.9 234 86.7 588 85.0 無配偶 68 16.1 36 13.3 104 15.0 合計 422 100.0 270 100.0 692 100.0 4.子どもの有無 子どもの有無ついては、表 1-2-4 に示している。男女とも回答者の約 8 割が、現に配偶 者と子どもがいる人である。 表 1-2-4 性別・配偶関係別子どもの有無 子どもあり 子どもなし 合計 人 % 人 % 人 % 有配偶 324 77.0 30 7.1 353 83.8 無配偶 39 9.3 29 6.9 68 16.2 女 性 小計 363 86.2 59 14.0 421 100.0 有配偶 215 79.6 18 6.7 234 86.7 無配偶 8 3.0 28 10.4 36 13.3 男 性 小計 223 82.6 46 17.0 270 100.0 注)表中、子どもの有無が不明の 1 ケースは省略している。 5.就業状況 まず、収入をともなう仕事に就いているかどうかをみると、女性の 62.1%、男性の 84.1% が、現在、何らかの仕事をしている。 回答者本人の職業についてみてみると、表 1-2-5 に示すように、女性では「無職」がも っとも多く、全体の 35.8%である。収入をともなう仕事に就いている人でもっとも多いの は「臨時雇用者」(全体の 27.0%)で、「常時雇用者」(同 16.8%)よりも多い。一方、男 性は回答者全体の約 6 割(59.3%)が「常時雇用者」で、「無職」は 13.0%である。女性の 有職者でもっとも多い「臨時雇用者」は、男性では全体の 3.7%にすぎない。 表 1-2-5 には、回答者の配偶者の職業も示しているが、男女別の職業構成比は、回答者 本人の職業構成比とほぼ同じであることが確認できる。

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表 1-2-5 性別仕事の状況 (%) 女性 男性 回答者本人 (422 人) 配偶者 (234 人) 回答者本人 (270 人) 配偶者 (354 人) 経営者・役員 3.1 1.3 7.4 8.8 常時雇用者 16.8 13.7 59.3 56.8 臨時雇用者 27.0 29.5 3.7 5.1 派遣社員 0.9 0.4 1.5 0.8 嘱託社員 1.9 1.3 2.6 1.4 内職 0.7 0.0 0.0 0.0 自営業主 3.1 1.3 7.8 8.5 家族従業者 4.3 4.3 0.7 0.6 自由業 1.7 1.7 0.4 0.6 その他 1.9 1.7 0.7 1.4 無回答 0.7 0.0 0.0 0.6 現在就い ている 小計 62.1 55.1 84.1 84.5 無職 35.8 41.5 13.0 11.0 無回答 2.1 3.4 3.0 4.5 合計 100.0 100.0 100.0 100.0 6.世帯の種類 表 1-2-6 は、2000 年に実施された『国勢調査』の世帯分類にもとづく「一般世帯人員」 と、本調査回答者の世帯構成別人数を比較したものである2。国勢調査と本調査では年齢構 成が異なるため大まかな比較になるが、本調査回答者の家族構成に、それほどゆがみはみ られない。 2 世帯の分類については、以下の 2 点に留意する必要がある。第 1 点は、「世帯」は現に一緒に 暮らしている家族成員にもとづいて分類されるため、進学や単身赴任などで家族と離れて暮らし ている家族成員は含まれない。そのため、日常的に当事者が抱いている「家族」の概念と「世帯」 の概念とは異なっている。表 1-2-7 は、本調査の回答者を国勢調査における「世帯」と同様の定 義に従って分類した(問 1 による)結果である。2 つめは、本調査における世帯分類に際して、 「夫婦」が指しているものが、調査回答者本人夫婦、親夫婦、子ども夫婦の 3 種類あるという点 である。国勢調査の世帯分類は、夫婦を基本とする分類様式となっている。そのため、回答者が 配偶者と一緒に暮らしておらず、かつ、両親と暮らしているか、あるいは一緒に暮らしている子 どもに配偶者がいる場合は、そのどちらかの世代の夫婦が「夫婦」として分類の基礎となる。た とえば回答者の両親と回答者、回答者の子どもが一緒に暮らしている場合、普通にイメージする のは三世代同居であるが、この分類では、「夫婦と子どもとその他の親族」という分類になる(こ の家族構成に回答者の配偶者が含まれていれば、「夫婦、子どもと両親」になる)。

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表 1-2-6 世帯の分類 兵庫県(2000 年) 本調査 一般世帯 人員 構成比 人数 構成比 差 A親族世帯 4,953,656 90.5 656 94.8 4.32 Ⅰ核家族世帯 3,863,330 70.6 488 70.5 -0.05 (1)夫婦のみ 824,849 15.1 125 18.1 3.00 (2)夫婦と子供 2,650,365 48.4 321 46.4 -2.02 (3)男親と子供 58,417 1.1 8 1.2 0.09 (4)女親と子供 329,699 6.0 34 4.9 -1.11 Ⅱその他の親族世帯 1,090,326 19.9 168 24.3 4.36 (5)夫婦と両親 31,035 0.6 8 1.2 0.59 (6)夫婦とひとり親 84,340 1.5 23 3.3 1.78 (7)夫婦,子供と両親 287,956 5.3 47 6.8 1.53 (8)夫婦,子供とひとり親 403,554 7.4 38 5.5 -1.88 (9)夫婦と他の親族(親,子供を含まない) 15,694 0.3 4 0.6 0.29 (10)夫婦,子供と他の親族(親を含まない) 62,310 1.1 14 2.0 0.88 (11)夫婦,親と他の親族(子供を含まない) 17,668 0.3 3 0.4 0.11 (12)夫婦,子供,親と他の親族 92,296 1.7 9 1.3 -0.39 (13)兄弟姉妹のみ 25,125 0.5 4 0.6 0.12 (14)他に分類されない親族世帯 70,348 1.3 18 2.6 1.32 B非親族世帯 13,376 0.2 1 0.1 -0.10 C単独世帯 507,753 9.3 32 4.6 -4.65 不明 - - 3 0.4 - 総数 5,474,785 100.0 692 100.0 0.43 注)兵庫県の値は、2000 年の国勢調査より引用。

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第 2 章 調査結果

第 1 節 現代の家族のありかた 1.家族に関する意識 1−1.夫婦関係の尊重 家族に関する一般的な意識として、親子関係や、夫婦関係、結婚などについて、合計 14 項目を挙げ、賛否を尋ねた。各項目に対する回答は巻末の基礎集計表(巻末表:問 8)に掲 載しているので、ここでは、35-44 歳、45-54 歳、55-64 歳の 3 つに分けて世代別の回答傾 向をみておこう。 表 2-1-1 は、選択肢に賛成=1 から反対=5 までのスコアを与えて年代別平均を求め、一 元配置の分散分析をおこなった結果である。F 値は、その値が大きいほど、世代による回答 傾向に差があることを示すものであり、また、「その後の検定」では、3 つの年代のどこに 格差があるかを示すものである。「その後の検定」欄の、「n.s.(no significance)」はどの 年代の間にも有意な差がないことを、*(アスタリスク)が上段ある場合は、「35-44 歳」 と「45-54 歳」のあいだに、中段にある場合は「35-44 歳」と「55-64 歳」のあいだに、下 段にある場合は「45-54 歳」と「55-64 歳」のあいだに差があることを示している。なお、 *の個数は統計的有意性の水準を示しており、*<0.05、**<0.01、***<0.001 である(以 下、本報告書では同様に用いる)。 「(4)結婚しても、自分の生き方を大切にするべきだ」、「(7)女性も職業をもつべきだ」、 「(11)子どもは親の恩に報いるべきだ」、「(12)夫婦は、二人でいる時間を大切にするべき だ」、「(13)子どものいる夫婦は、自分たちのことよりも、子どものことを第一に考えるべ きだ」、「(14)たとえ夫婦でもプライバシーは尊重するべきだ」の 6 項目については、年代 による差はみられない。 このうち、「(4)結婚しても、自分の生き方を大切にするべきだ」(「賛成」+「どちらか とえいえば賛成」:63.6%)、「(7)女性も職業をもつべきだ」(同:58.8%)には約 6 割が、 また、「(12)夫婦は、二人でいる時間を大切にするべきだ」(同:74.0%)、「(14)たとえ夫 婦でもプライバシーは尊重するべきだ」(同:82.2%)には約 8 割の人が賛成しており、多 くの人が、夫婦関係の対等性を支持し、夫婦関係を尊重していることがわかる。また、「(13) 子どものいる夫婦は、自分たちのことよりも、子どものことを第一に考えるべきだ」は約 5 割(同:46.5%)が賛成しており、「どちらともいえない」を選択している人も約 4 割(41.2%) いる。夫婦 2 人の関係を重視していても、夫婦にとって子どもは特別な存在である。 1−2.家族規範からの距離 上記 6 項目を除く 8 項目では、年代による差がみられた。なかでも、「(5)子どもは家を 継ぐべきだ」については、3 つの世代で明確な格差が確認されており、若い世代ほど、はっ きりと反対する人が多い(「反対」:35-44 歳 18.3%、45-54 歳 10.8%、55-64 歳 6.1%)。 そのほか、「(3)家族は血のつながりが大事だ」(「反対」+「どちらかといえば反対」:35-44 歳 17.7%、45-54 歳 10.0%、55-64 歳 4.2%)、「(6)子どもが 3 歳くらいまでは、母親は仕 事をもたず育児に専念するべきだ」(同:35-44 歳 14.6%、45-54 歳 4.6%、55-64 歳 5.8%)、 「(10)結婚したら子どもをもつほうがよい」(同:35-44 歳 1.6%、45-54 歳 0.3%、55-64 歳

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1.5%)、「(2)家族を(経済的に)養うのは男性の役割だ」(同:35-44 歳 11.8%、45-54 歳 6.2%、55-64 歳 2.7%)に対しては、若い人ほど反対する傾向があり、「(9)夫婦が別姓を 選択できるようにするべきだ」(「賛成」+「どちらかといえば賛成」:35-44 歳 32.3%、 45-54 歳 20.4%、55-64 歳 18.3%)は、若い世代ほど賛成する人が多い(以上、年齢別回 答表は省略)。 表 2-1-1 家族意識における年代差 一元配置の 分散分析 度数 平均値 標準偏差 F 値 その後 の検定 (4)結婚しても自分の生き方を大切にするべきだ 35-44 歳 184 2.20 0.86 45-54 歳 237 2.18 0.88 55-64 歳 255 2.16 0.85 合計 676 2.18 0.86 0.118 n.s. (7)女性も職業をもつべきだ 35-44 歳 184 2.21 0.84 45-54 歳 237 2.21 0.85 55-64 歳 255 2.16 0.93 合計 676 2.19 0.88 0.240 n.s. (11)親の恩に報いるべきだ 35-44 歳 183 2.69 0.99 45-54 歳 236 2.59 0.96 55-64 歳 253 2.62 0.85 合計 672 2.63 0.93 0.550 n.s. (12)夫婦の時間を大切にするべきだ 35-44 歳 184 1.95 0.83 45-54 歳 237 1.88 0.84 55-64 歳 254 1.82 0.79 合計 675 1.88 0.82 1.205 n.s. (14)夫婦間のプライバシーを大切にするべきだ 35-44 歳 184 1.76 0.75 45-54 歳 236 1.69 0.80 55-64 歳 256 1.82 0.79 合計 676 1.76 0.78 1.487 n.s. (13)夫婦のことより子どものことを第一に考えるべきだ 35-44 歳 184 2.46 0.86 45-54 歳 237 2.54 0.94 55-64 歳 256 2.57 0.95 合計 677 2.53 0.92 0.890 n.s. (1)生涯独身は望ましくない(反転) 35-44 歳 184 3.32 1.06 45-54 歳 236 3.50 1.04 55-64 歳 257 3.82 1.12 合計 677 3.57 1.09 12.680*** n.s. *** *** (3)家族は血のつながりが大事だ 35-44 歳 184 2.82 0.94 45-54 歳 237 2.58 0.91 55-64 歳 254 2.33 0.91 合計 675 2.55 0.94 14.770*** * *** ***

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一元配置の 分散分析 度数 平均値 標準偏差 F 値 その後 の検定 (5)子どもは家を継ぐべきだ 35-44 歳 183 3.31 1.06 45-54 歳 237 2.95 1.04 55-64 歳 256 2.60 1.06 合計 676 2.91 1.09 24.454*** *** *** *** (10)結婚したら子どもをもつ方がよい 35-44 歳 184 2.07 0.87 45-54 歳 235 1.77 0.80 55-64 歳 254 1.66 0.86 合計 673 1.81 0.85 13.004*** *** *** n.s. (2)経済的扶養は男性の役割だ 35-44 歳 184 2.57 1.05 45-54 歳 237 2.35 0.91 55-64 歳 256 2.19 0.87 合計 677 2.35 0.94 8.592*** * *** n.s. (6)子どもが 3 歳くらいまでは母親は育児に専念するべきだ 35-44 歳 184 2.49 1.13 45-54 歳 237 1.95 0.96 55-64 歳 255 1.82 1.02 合計 676 2.05 1.07 24.677*** *** *** n.s. (8)高齢者介護は家族でおこなうべきだ 35-44 歳 184 2.97 1.03 45-54 歳 236 2.85 0.85 55-64 歳 257 2.74 0.95 合計 677 2.84 0.94 3.064* n.s. * n.s. (9)夫婦別姓選択制を制定すべきだ 35-44 歳 184 2.87 1.14 45-54 歳 235 3.20 1.15 55-64 歳 255 3.34 1.18 合計 674 3.16 1.17 8.917*** ** *** n.s. 注)平均値は、賛成=1 ∼ 反対=5 として算出。ただし、(1)は賛成=5、反対=1 と 反転して算出。 その後の検定は上段:35-44 歳と 45-54 歳、中段:35-44 歳と 55-64 歳、下段:45-54 歳と 55-64 歳の平均値の差に対する検定結果。 1−3.家族意識の類型化 −「家族」の自明視と、主体的選択としての家族− 主成分分析をおこなって、上述の 14 項目にわたる家族に関する意識を決定する成分を抽 出すると3、固有値が 1 以上の成分が 4 つ抽出された(表 2-1-2)。項目別に、固有ベクトル (表 2-1-3)の絶対値がもっとも大きい項目を挙げると、第 1 主成分の値がもっとも大きい 項目は「(2)家族を養うのは男性の役割」、「(10)結婚したら子どもをもつほうがよい」、 「(5)子どもは家を継ぐべき」、「(3)血のつながりが大事」、「(8) 高齢者介護は家族が行う べき」、「(6)3 歳までは母親は育児に専念するべき」、「(9)夫婦別姓選択制に賛成」(−)、 「(1)生涯独身は望ましくない(反転)」(−)などの8つである。これらの項目を統合する 3 賛成=1、どちらかといえば賛成=2、どちらともいえない=3、どちらかといえば反対=4、反 対=5 として計算。ただし、「 (1)生涯を独身で過ごすのは望ましい生き方ではない」は賛成と 反対の数値を逆転させた。

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と、結婚をして子どもをつことや夫婦間での役割分業を自明視ししているだけではなく、 世代の継承も重視するような家族意識が浮かびあがってくる。そこで第 1 主成分を「家族 の自明性」と名づける。 表 2-1-2 固有値・寄与率・累積寄与率 成分 固有値 寄与率(%) 累積寄与率 (%) 1 3.663 26.2 26.2 2 1.599 11.4 37.6 3 1.048 7.5 45.1 4 1.012 7.2 52.3 表 2-1-3 固有ベクトル 第 1 主成分 第 2 主成分 第 3 主成分 第 4 主成分 家族の 自明性 個人志向 血縁重視 恋愛結婚 主義 (2) 家族を経済的に養うのは男性の役割 0.70 -0.13 -0.10 0.17 (10) 結婚したら子どもをもつほうがよい 0.69 0.16 -0.03 -0.23 (5) 子どもの 1 人は家を継ぐべき 0.67 -0.03 0.33 0.11 (3) 家族は血のつながりが大事 0.66 0.13 0.22 0.30 (8) 高齢者介護は家族の役割 0.59 0.13 0.16 0.03 (6) 3 歳までは母親は育児に専念すべき 0.55 -0.02 -0.29 0.28 (9) 夫婦別姓選択制に賛成 -0.50 0.30 0.23 -0.11 (1) 生涯独身は望ましくない(反転) -0.61 -0.06 0.12 0.22 (7) 女性も職業をもつべき -0.19 0.68 0.14 -0.18 (14) 夫婦でもプライバシーは尊重すべき -0.08 0.66 -0.38 0.19 (4) 結婚しても自分の生き方を大切にするべき -0.08 0.65 0.12 0.45 (11) 親の恩には報いるべき 0.47 0.14 0.52 -0.27 (13) 夫婦のことより子どもを第一に考えるべき 0.38 0.04 -0.39 0.01 (12) 夫婦でいる時間を大切にするべき 0.32 0.32 -0.31 -0.58 注)賛成=1、どちらかといえば賛成=2、どちらともいえない=3、どちらかといえば反対=4、反対=5。 表中では、項目ごとに固有ベクトルの絶対値がもっとも大きい主成分を で囲っているが、各主成 分の特性はすべての項目の固有ベクトルから総合的に読み解くものであり、 で囲われた項目のみ が、各主成分を構成しているというわけではない。 第 2 主成分は、「(7)女性も職業をもつべきだ」、「(14)夫婦でもプライバシーを尊重す るべき」、「(4)結婚しても自分の生き方を大切にするべき」の 3 項目の固有ベクトルの絶 対値が大きい。これらは、家族を形成するのか、また、家族をどのように営んでいくのか といった「家族」そのものとは関係なく、個人のライフスタイルを重視したものと考えら れることから、「個人志向」と名づける。第 3 主成分は「(11)親の恩に報いるべきだ」、「(13) 夫婦は子どものことを第一に考えるべきだ」(−)の 2 項目の値が大きく、そのほか、「(5) 家を継ぐべき」、「(14)夫婦でもプライバシーを尊重するべき」(−)、「(9)夫婦別姓選択 制に賛成」、「(3)血のつながりが大事だ」などの絶対値が大きいことから、「血縁重視」と 名づける。最後に、第 4 主成分を特徴づけているのは「(12)夫婦二人の時間を大切にする べき」、あるいは「(4)結婚しても自分の生き方を大切にするべき」であるが、その他にも 多くの要素が混ざっていて意味の解釈が困難である。夫婦の役割や血縁など家族について の自明性をもちながら、生涯独身でいることや結婚しても必ずしも子どもをもたなくても

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よいなど、個人的選択も支持する傾向がある。これらは、理想の結婚生活をイメージして いてかつすべての結婚は恋愛結婚であるべき(だからふさわしい相手に出会うまでは結婚 しない)という「近代的恋愛観」(山田 2004:116-134)に近いイメージを示していること から、「恋愛結婚主義」と名づける。 主成分分析は、その分析上の特性により、第 1 主成分は家族に関する意識を総体的に決 定づける要因として抽出される。この第 1 主成分によって示される家族意識には、夫婦を 単位とし、性別役割分業をおこない、子どもを中心に考えるといった「近代家族」(落合: 2004:103)に相当する項目だけではなく、血縁に基づく世代間の関係性も重視する、「直 系家族制」に相当する意識項目も含まれている点が興味深い。 また、性別および年齢別に見ると(表 2-1-4)、若い世代と女性は、第 1 主成分である「家 族の自明性」から距離をおいていることが示されている。また、第 4 主成分「恋愛結婚主 義」も男女差があり、女性に強くみられる意識である。 ここで抽出された家族に関する意識の 4 つの主成分については、第 3 節で改めて分析に 用いる。 表 2-1-4 「家族意識」主成分スコアの基本統計量(性別・年齢別) 平均値 標準偏差 最小値 最大値 F 値 第 1 主成分 女性(407 人) 0.244 0.988 -2.039 4.548 男性(253 人) -0.392 0.891 -2.531 4.334 合計(660 人) 0.000 1.000 -2.531 4.548 69.568 *** 35-44 歳(182 人) 0.368 1.055 -2.308 4.548 45-54 歳(231 人) -0.011 0.888 -2.035 2.904 55-64 歳(244 人) -0.270 0.978 -2.531 4.334 合計(657 人) -0.002 1.001 -2.531 4.548 22.555 *** 第 2 主成分 女性(407 人) -0.049 0.985 -2.365 3.503 男性(253 人) 0.079 1.020 -2.400 2.639 合計(660 人) 0.000 1.000 -2.400 3.503 2.550 n.s. 35-44 歳(182 人) 0.051 0.977 -2.295 2.717 45-54 歳(231 人) -0.017 0.921 -2.365 2.409 55-64 歳(244 人) -0.013 1.088 -2.400 3.503 合計(657 人) 0.003 1.000 -2.400 3.503 0.287 n.s. 第 3 主成分 女性(407 人) 0.031 0.971 -3.184 3.268 男性(253 人) -0.050 1.046 -3.773 4.175 合計(660 人) 0.000 1.000 -3.773 4.175 1.012 n.s. 35-44 歳(182 人) 0.001 0.997 -3.184 2.808 45-54 歳(231 人) 0.050 1.081 -2.868 4.175 55-64 歳(244 人) -0.050 0.922 -3.773 3.268 合計(657 人) -0.001 1.000 -3.773 4.175 0.583 n.s. 第 4 主成分 女性(407 人) -0.065 1.077 -3.962 3.325 男性(253 人) 0.105 0.853 -2.131 2.335 合計(660 人) 0.000 1.000 -3.962 3.325 4.530 * 35-44 歳(182 人) 0.127 1.032 -2.373 3.295 45-54 歳(231 人) -0.043 1.051 -3.739 3.325 55-64 歳(244 人) -0.056 0.924 -3.962 2.277 合計(657 人) 0.000 1.002 -3.962 3.325 2.060 n.s.

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2.現実の家族のありかた 2−1.親との関係−選択的別居・同居率、夫方同居と妻方同居の趨勢− 表 2-1-5 は、有配偶者 588 名について、現に父母と暮らしているかどうか(巻末表:問 1) と、現在、父母がいるかどうか(巻末表:問 2)から算出した、妻、夫それぞれの父母との 同居率である。つまり、選択的に親世代と同居している割合を算出している。これによれ ば、選択的夫方同居は約 30%、選択的妻方同居は約 5%である。 結婚後経過年数別に集計すると(表 2-1-6-①および表 2-1-6-②)、結婚してしばらくは どちらの親とも同居しないで、夫婦を中心とする核家族を営むが、結婚後 10∼20 年経過す ると親世代と同居する人が増えるという傾向を示している。日本では夫婦を基礎とする核 家族が増加しているものの、それは人口学的要因(きょうだい数が多い)や都市化による 一時的別居によるものであり、「直系家族制」そのものが崩れているためではないとする、 「修正直系家族制」を支持する観察結果(加藤:2003)と、また、先にみた「近代家族」 と「直系家族制」の規範意識が混在している家族意識とも一致する結果である。 表 2-1-5 性別・親との同居率 妻の父 妻の母 夫の父 夫の母 a b 同居 率(%) a b 同居 率(%) a b 同居 率(%) a b 同居 率(%) 女性 149 6 4.0 229 14 6.1 117 32 27.4 154 56 36.4 男性 90 4 4.4 142 9 6.3 86 25 29.1 105 34 32.4 合計 239 10 4.2 371 23 6.2 203 57 28.1 259 90 34.7 注)a:親がいる人の数 b:親と同居している人の数 同居率:b/a×100 表 2-1-6-① 結婚後経過年数別・妻の親との同居率 妻の親 結婚後経過年数 生存 うち 選択的同居率 死亡 無回答 合計 0-9 年(41 人) 92.7 0.0 7.3 0.0 100.0 10-19 年(137 人) 86.9 7.6 12.4 0.7 100.0 20-29 年(177 人) 76.8 5.1 23.2 0.0 100.0 30-39 年(198 人) 47.5 7.4 52.5 0.0 100.0 40-49 年(20 人) 30.0 16.7 70.0 0.0 100.0 無回答(15 人) 53.3 12.5 46.7 0.0 100.0 合計(588 人) 68.2 6.2 31.6 0.2 100.0 注)妻の親:妻の父母のうち、どちらか 1 人でも存命であれば「生存」、2 人とも死亡していれば「死 亡」。 選択的同居率:妻の親が存命である人のうち、妻の親と同居している人の割合。

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表 2-1-6-② 結婚後経過年数別・夫の親との同居率 夫の親 結婚後経過年数 生存 うち 選択的同居率 死亡 無回答 合計 0-9 年(41 人) 87.8 13.9 12.2 0.0 100.0 10-19 年(137 人) 80.3 18.2 19.0 0.7 100.0 20-29 年(177 人) 70.6 36.8 29.4 0.0 100.0 30-39 年(198 人) 39.4 35.9 60.6 0.0 100.0 40-49 年(20 人) 25.0 20.0 75.0 0.0 100.0 無回答(15 人) 26.7 50.0 73.3 0.0 100.0 合計(588 人) 60.9 28.5 38.9 0.2 100.0 注)夫の親:夫の父母のうち、どちらか 1 人でも存命であれば「生存」、2 人とも死亡していれば「死 亡」。 選択的同居率:夫の親が存命である人のうち、夫の親と同居している人の割合。 2−2.現代の夫婦のありかた 2−2−1.夫婦のパートナーシップ 結婚の類型(巻末表:問 14)、結婚までの交際期間(巻末表:問 15)、夫婦共通の友人(巻 末表:問 25)から、現代の夫婦のパートナーシップについてみてみる。 まず結婚の類型からみると、55 歳以上では、見合い結婚が 43.4%、恋愛結婚が 53.1%と ほぼ同数であったのに対して、若い世代ほど恋愛結婚が多い(巻末表:問 14)。「35-44 歳」 では、83.8%が恋愛結婚である。次に、結婚にいたるまでの交際期間は、各世代とも 1 年 未満が最も多いが、若い世代ほど交際期間が 6 ヶ月未満であった人が減り、4 年以上交際を した人が増える(巻末表:問 15)。平均交際期間は 35-44 歳では約 2.7 年、45-54 歳では約 2.2 年、55-64 歳では約 1.7 年である(表 2-1-7)。長い恋愛期間のあいだにお互いのことを よく知り、結婚する夫婦が増えていることが推測される。また、夫婦共通の友人がいると 回答した人も、わずかながら、若い世代ほど多い(巻末表:問 25)。 こうしたことは、夫婦の対等性や恋愛感情のもとづく「友愛結婚」が増加していること を示している。 表 2-1-7 年代別・結婚までの交際期間 (年) 平均値 標準偏差 最小値 最大値 35-44 歳(150 人) 2.69 2.16 0.25 12 45-54 歳(197 人) 2.18 2.19 0.25 19 55-64 歳(217 人) 1.70 1.48 0.25 11 不明(3 人) 1.67 0.58 1 2 合計(567 人) 2.13 1.97 0.25 19 注)わからない、無回答はのぞく。 3 ヶ月未満=0.25、6 ヶ月未満=0.5、1 年未満=1、2 年未満=2、3 年 未満=3、4 年未満=4、4 年以上=各年数として計算。 年齢不明を除く F 値=11.811*** では、年齢や学歴、所得(就業状態)などといった変数について、夫婦間の対称性/非 対称性はどうなっているのだろうか。 年齢をみると、カップルの 73.6%は、夫が年長である。妻が年長のカップルは 10.2%で

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ある。同年齢∼夫が3歳年長はそれぞれ1割強ずつで(同年齢 14.3%、1歳差 11.7%、2 歳差 13.8%、3歳差 12.2%)、夫が 5 歳以上年長のカップルも 26.2%いる。妻が年長の場 合を−(マイナス)としたカップルの年齢差の平均値は 2.88 歳で、年代による有意差はな い。 表 2-1-8-① 夫婦の年齢差 人 % 妻が年長 −3 歳以上 13 2.2 (10.2%) −2 歳 14 2.4 −1 歳 33 5.6 同年齢 84 14.3 夫が年長 1 歳 69 11.7 (73.6%) 2 歳 81 13.8 3 歳 72 12.2 4 歳 57 9.7 5 歳以上 154 26.2 不明 11 1.9 合計 588 100.0 注)「夫-妻」を年齢差として計算。 +は夫が年長であることを、-は妻が年長であることを示す。 表2-1-8-② 夫婦の年齢差(年代別平均値) 平均値 標準偏差 35-44 歳(153 人) 2.96 4.07 44-54 歳(202 人) 2.88 3.28 55-64 歳(222 人) 2.83 2.82 全体 2.88 3.34 n.s. 労働状態(表 2-1-9)は4、全体では、夫婦ともに仕事をしているカップルは約半数(51.0%) で、男性のみが仕事をしているカップル、つまり男性が働き、女性が家庭にいるという性 別役割分業型のカップルは 32.3%、女性のみが仕事をしているカップルは 4.8%、2 人とも 仕事をしていないカップルは 6.0%である。女性の年代別にみると、44 歳までの世代は、 男性のみが仕事をしているカップルが多く(58.9%)、55 歳以上世代では有職同士のカップ ルが相対的に少なく(34.5%)、無職同士のカップルが多い(15.0%)。 また、ともに仕事をしている場合でも、夫の年収の方が多いカップルは 80.1%、妻の年 収の方が多いカップルは 7.3%、夫と妻が同程度の年収であるカップルは 7.8%である(表 2-1-10)。 学歴では(表 2-1-11)、夫と妻が同じ学歴であるカップルは 43.3%、夫の方が学歴が高 いカップルは 38.8%、妻の方が学歴が高いカップルは 16.5%である。年齢や年収にくらべ ると学歴の場合は、比較的同質性(対称性)が高い。 4 回答者本人の労働状態と、配偶者の労働状態についての回答をあわせて、性別に集計。

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表 2-1-9 夫婦の労働状態 男性労働状態 女性労働状態 有職 無職 合計 44 歳以下 有職 58.9 1.2 60.1 (168 人) 無職 38.7 0.6 39.3 小計 98.2 1.8 100.0 45-54 歳 有職 61.5 4.3 67.8 (208 人) 無職 27.4 1.4 30.3 小計 89.4 6.3 100.0 55 歳以上 有職 34.5 8.3 48.1 (206 人) 無職 31.6 15.0 47.6 小計 68.9 23.8 100.0 全体 有職 51.0 4.8 58.3 (588 人) 無職 32.3 6.0 39.1 女性年齢 合計 84.9 11.1 100.0 注)表中、年齢および労働状態への無回答ケースは省略。 表 2-1-10 夫婦の年収 (人) 男性 収入 はな い 100 万 未満 -200 万 -300 万 -400 万 -600 万 -800 万 -1000 万 -1200 万 1200 万以 上 わか らな い 無回 答 合計 収入はない 1 3 5 15 23 36 31 26 18 10 2 1 171 100 万未満 1 4 8 11 19 44 48 22 10 12 3 4 186 100-200 万 5 0 8 11 11 13 8 15 4 6 1 2 84 200-300 万 2 2 1 10 7 5 6 1 2 2 0 3 41 300-400 万 0 1 0 1 2 4 4 3 1 2 2 2 22 400-600 万 1 0 0 1 3 9 3 4 0 5 1 0 27 600-800 万 1 0 1 1 0 0 7 8 2 2 1 0 23 800-1000 万 2 1 0 0 0 1 1 3 0 0 0 0 8 1000-1200 万 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 1200 万以上 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 2 わからない 0 0 1 2 1 0 3 0 0 1 1 1 10 女 性 無回答 0 0 0 0 2 2 3 0 1 0 0 4 12 合計 13 11 24 52 68 114 115 82 39 41 11 17 587 注)濃い網かけ:男性の方が女性よりも年収が多い場合。 薄い網かけ:女性の方が男性よりも年収が多い場合。 表 2-1-11 夫婦の学歴 男性学歴 中学校 高等 学校 専門 学校 短大・ 高専 大学 大学院 その他・ 無回答 合計 中学校 2.2 2.6 0.0 0.3 0.2 0.0 0.2 5.5 高等学校 3.4 25.2 1.5 1.5 10.9 0.3 0.3 43.3 専門学校 0.0 3.2 1.7 0.3 4.1 0.5 0.2 10.1 短大・高専 0.2 5.8 2.2 0.7 13.3 1.0 0.0 23.2 大学 0.0 1.0 0.5 0.0 13.3 2.2 0.3 17.4 大学院 0.0 0.0 0.0 0.0 0.2 0.2 0.0 0.3 女 性 学 歴 その他・無回答 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.2 0.2 0.3 合計 5.8 37.8 6.0 2.9 41.9 4.4 1.2 100.0 注)有配偶者 587 人に対する%。 網かけは夫婦の学歴の程度が同じ場合。

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2−2−2.結婚当初の話し合いについて 結婚当初の「家事の分担」、「住居」、「親との同居・別居」、「夫婦の姓」の 4 つのことが らについて、誰がどのように決め、どのような決定になったのか、また、その決定に対し てどの程度満足したのかを尋ねている(巻末表:問 22)。 家庭内の家事分担(「自然に決まった」:女性 81.1%、男性 74.8%)や夫婦の姓(同:女 性 86.4%、男性 78.2%)などの夫婦に関することがらは、話し合いではなく、「自然に決 まった」とする人が約 8 割と多い。この 2 つのことがらについては、夫婦 2 人が共通して 抱いているイメージや価値観、あるいは慣習に基づいて決められるようである。その結果、 多くの人は、夫の姓を名のり(女性 93.2%、男性 91.4%)、妻が家事をする(女性 88.4%、 男性 89.3%)という生活を営んでいる。 家事の分担決定に対する満足感は男女で異なっている。女性は約半数の 51.1%が「どち らでもない」と回答し、不満であった人は約 1 割(「とても不満」4.8%+「やや不満」8.5%) いる。これに対して、男性は 7 割以上が満足した(「とても満足」25.2%+「まあ満足」40.2%) と回答しており、不満であると回答した人は 2.2%であった。「家事は女性がするもの」と 思っていればこそ、「自然に決まった」と回答したのであろうが、そうした家事の分担に「満 足」しているのは、実際には負担のない男性の方である。 夫婦の姓にの決定について、「不満」と回答した人はごく少数である(女性 2.2%、男性 1.3%)。男性は「満足」と回答した人が約 6 割と多く(「とても満足」32.9%、「まあ満足」 26.9%)、女性は「どちらでもない」(女性 47.2%、男性 36.3%)と回答した人と「満足」 (「とても満足」28.5%、「まあ満足」18.9%)と回答した人がほぼ同数であった。 どのような住居に、誰と住むかについては、「夫婦で話し合って決めた」とする人がもっ とも多い(女性 38.7%、男性 45.7%)。「話し合って決めた」と回答した人がもっとも多か ったのも、この「住居」に関する決定である。ついで「住居」は夫が決めたとする人が多 い(女性 21.2%、男性 19.2%)。一方、妻が決めたとする人は少ない(女性 1.4%、男性 1.7%)。 親との同居・別居については、夫側の親と同居した人は男女とも 2 割程度(女性 22.7%、 男性 21.8%)おり、夫側の親との同居は「自然に決まった」と回答した人が多い(女性 58.8%、 男性 52.9%)。一方、妻側の親との同居は、絶対数が少ないものの(27 人)、「夫婦で話し 合って決めた」と回答した人が多い(女性 64.7%、男性 50.0%)。 男女とも、最も多いのは、「自然にどちらの親とも同居しないことになった」と回答した 人である(女性 41.8%、男性 37.6%)。出生地と就業地が離れているなどの地理的要因や、 すでにきょうだいが親と同居しているなどの人口学的要因、および親との同居をはじめか ら考慮しないという脱「イエ」規範という 3 つの要因により、親との同居・別居が選択肢 としてはじめから存在していない人も多いようである。 親と同居をするにしても、しないにしても、それが夫の親である場合、「自然に決まった」 と思うぐらい、家族の環境や家族成員の考え方・思いをお互いに推量しあうということが 「決める」ということなのであろう。 2−2−3.日常のコミュニケーションについて アンケートでは、夫婦の 1 日の会話時間を尋ねているが(巻末表:問 26)、「ほとんど会 話をしない」と回答した人は 7.5%であった。30 分未満 21.9%、30 分∼1 時間 31.3%、1

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∼2 時間 25.9%で、ほとんどの人が、1 日に 30 分から 2 時間程度は夫婦で会話をしている ことになる。「夫が退職して家にいるようになってからは、ほとんど一緒にいるので、ずっ と話をしています」という回答がみられたが、1 日に 2 時間以上会話をしている人は高齢世 代に多い(35-44 歳 6.5%、44-54 歳 11.3%、55-64 歳 17.5%)。また、会話時間を数値化5 て平均値を算出すると 35-44 歳は 1.00 時間(S.D.=0.746)、45-54 歳は 1.16 時間(S.D. =1.377)、55-64 歳は 1.39 時間(S.D.=1.430)であり、高齢世代ほど平均時間も長い(F 値=0.364*)。 夫婦関係に対する満足度(巻末表:問 7)と会話時間の関係をみてみると、おおむね、会 話時間が長いほど満足度が高い(表 2-1-12)。さきほどと同様に会話時間を数値化し、夫婦 関係に対する満足度を満足=1∼不満足=5 として、相関係数を算出しても、やはり、会話 時間が長いほど満足度が高いという関係が確認された(ピアソンの相関係数=−0.306***)。 夫婦関係が良ければ、それだけコミュニケーションの頻度が高まるから会話する時間が 長くなるのか、あるいは会話する時間が長いと夫婦の関係が良くなるのか、統計的な分析 で両者の因果関係を特定することはできないので、自由回答から夫婦のコミュニケーショ ンと会話時間の関係について描き出してみよう。 表 2-1-12 夫婦関係への満足度と 1 日の会話時間 1 日の会話時間 夫婦関係に対する満足度 ほとんど しない 30 分 未満 30 分- 1 時間 1-2 時間 2 時間 以上 無回答 合計 満足(220 人) 0.9 11.8 25.9 36.8 22.7 1.8 100.0 どちらかといえば満足(174 人) 1.7 24.7 36.2 29.3 7.5 0.6 100.0 どちらともいえない(116 人) 12.9 29.3 36.2 15.5 5.2 0.9 100.0 どちらかといえば不満足(45 人) 22.2 42.2 24.4 4.4 6.7 0.0 100.0 不満足(26 人) 53.8 26.9 19.2 0.0 0.0 0.0 100.0 合計(581 人) 7.6 22.2 30.6 26.2 12.4 1.0 100.0 ピアソンの相関係数=−0.306*** 夫婦のコミュニケーションをうまくとるための工夫を、自由に記入してもらっている(問 24)。「あいさつや感謝の言葉を口にする」、「相手の様子をうかがって会話のタイミングを はかる」、「相互に思いやる」、「共通の趣味や話題をつくる」、「自然体が大切」、などの回答 がみられたが、「一緒に過ごす時間を確保する」と回答した人が最も多かった(61 名)。一 緒に過ごす時間は、「食事を 1 日に 1 回は一緒にしてきた」(60 代女性)や「車で買い物に 出かけたときに話し合ったりする」(50 代女性)など、毎日の食事や日用品の買い物など、 日常の活動をともにすることで確保しているようである。また、日常的に時間がとりにく い場合は、休日に一緒に外出する(「休暇が同じ日はできるだけ 2 人で外出する」(50 代男 性))、メモを活用する、電話やメールをする(「帰宅時間の連絡やスケジュール変更は携帯 メールでやりとりする」(50 代男性)などの工夫をしているが、総じて、夫婦関係に対する 満足度が高いのは、一緒に過ごす時間があると思っている場合のようである。たとえば、 5 会話時間を「ほとんどしない」=0、「30 分未満」=0.5、「30 分-1 時間未満」=0.75、「1-2 時 間未満」=1.5、「2 時間以上」は具体的数値が記入されている場合はその値を、記入されていな い場合は 2 として算出した。

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「何でも話す」ことを心がけていると記述した人(16 名)や、「夫婦は自然体であることが 大切」と回答した人(21 名)の夫婦関係の満足度が高い。 一方で、「お互いに思いやることが大切」だと回答した人(17 名)や、「日々のあいさつ や感謝の気持ちを言葉にして伝えている」と回答した人(17 名)の満足度もおおむね高い。 だが、「相手に合わせる」という記述には、「常に感謝し、相手の立場に立って考える」(50 代女性)など、相手の気持ちを尊重するという場合から、「配偶者の言うことに対して反発 するとけんかになるので、ついつい言葉を飲み込んでしまう」(40 代女性)など、けんかや 対立をおそれて配偶者に従う場合までその内容はさまざまであると思われ、満足度とは必 ずしも一致していない。 2−2−4.家族の話し合いについて―非日常の重要性― 次に、どのようなことを、夫婦で話し合って決めているのかについてみてみよう(巻末 表:問 23)。夫婦の小遣い、子どもの教育、年末の過ごし方など合計 14 の項目について、 それぞれそれらについて話し合うかどうかを尋ね、つづいて夫婦のどちらが最終的に決定 するかを尋ねている。「話し合う」と回答した人が多かったのは「(1)自家用車の購入」 (90.0%)、「(5)家族連れでの外出」(89.8%)、「(9)香典」(86.9%)などであった。「話 し合う」と回答した人がもっとも少なかったのは「(8)日常の家事分担」(19.4%)であっ た。家事分担や夫婦の小遣い(自分 31.1%、配偶者の小遣い 38.8%)、貯金(44.6%)日 用品の買い物(44.7%)など日々の暮らしのなかのできごとはあまり話し合われず、日々 の暮らしの中ではあまり生じないこと、たとえば自家用車の購入や香典の額、あるいは家 族の長期的設計である「(14)子どもの教育方針」(83.0%)や「(13)子ども数」(70.1%) などが話し合われている。 このようにしてみると、「話し合う」と回答した人が 9 割にのぼる「(5)家族連れでの外 出」は、家庭生活のなかでは、非日常的な活動として位置づけられているように思われる。 家族連れでの外出の非日常性、あるいは家族連れで外出することが家族関係にもたらす意 義は、「ご家族での思い出に残る行事や出来事がありますか。その行事や出来事の内容と思 い出に残っている理由をお書きください」という質問への回答からうかがうことができる。 「年に 1 度の家族旅行です。行き先からスケジュールを家族で話し合い、行った後にテ レビなどで旅先が紹介されると、家族で共通の思い出話になります。できるだけ続けてい きたい行事です」(40 代男性) 「子育ての時期、夏休みなど長期休暇があると、家族全員で日程を合わせて、毎年 1 回 は必ず 1 泊(または 2 泊)旅行に出掛けていた。それは我が家の行事としていたので、上 の子が大学へ行くまで続けた。おかげで、配偶者が居なくなった今でも楽しい思い出とし て時折思い出している。子等の成長をたのもしく見ることもできる」(60 代女性) 「家族で毎年 1 週間くらい、いつも同じ場所に旅行に行っている。同じ場所だが子ども が大きくなるに従い過ごし方が違ってきて、楽しみ方も多様になってきている」(40 代女 性) 「お互いの両親を連れて旅行に行ったこと。今までよりもお互いに親しみがわき、両家

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の深いきずなができたと思う」(30 代男性) 家族全員のスケジュールを調整し、行き先や日程などを話し合うことそのものが、家族 のコミュニケーションの場となる。また、出かけた先では家族それぞれの考え方や性格を 再発見したり、子どもの成長ぶりに改めて驚いたりするなど、非日常の場面であればこそ 感じられる家族のきずなを再確認する。さらに、日常生活に戻ってからも、共通の記憶と なり家族をつなぐ思い出となっている。また、新婚旅行や夫婦の親戚を交えた旅行、定年 退職を祝う夫婦の旅行などは、新しい家族の関係を築くための重要な契機となっている。 このように、家族づれでの旅行や外出は、平日ともに働いている夫婦や、一緒に暮らして いない夫婦や家族、あるいは成長するにつれて、親の手を離れるようになった子どもと親 の関係などにとって、重要な役割を果たしている。 日常のコミュニケーションと非日常的なコミュニケーションとの関係については、イン タビュー調査の事例についても参照されたい。 2−2−5.配偶者を「頼りにする程度」 「あなたは、次のようなことが起こったとしたら、主に、どのような人(機関)に相談 したり、頼ったりしますか」として、「介護が必要になったら」、「交通事故の加害者になっ たとき」、「ペアで海外旅行に行くとしたら」、など 5 つのことがらについて尋ねた(巻末表: 問 4)。この設問への回答から、配偶者を「頼りにする程度」についてみる。 すべての項目において、配偶者を選択した人がもっとも多かった。そこで、配偶者/配 偶者以外/誰にも相談しないという 3 つに再コード化して、男女差をみた(表 2-1-13)。「(1) 介護を必要とするようになったら」(女性 68.5%、男性 81.5%)および「(4)ペアで行く海 外旅行に当選したら」(女性 67.8%、男性 82.8%)は、女性よりも男性に、「配偶者」を選 択した人が多い。逆に、「(2)交通事故の加害者になってしまったら」は、女性 77.7%、男 性 66.3%と、男性よりも女性に、「配偶者」を選択した人が多い。 「(3)急にお金(100 万円程度)が必要になったとき」(女性 12.8%、男性 12.0%)およ び「(5)宝くじ(1 億円)に当たったら」(女性 11.3%、男性 17.3%)の 2 項目は「誰にも 相談しない」と回答した人が総体的に多い。このような傾向は、本人の年収によらない。 まとめると、多くの人が、思いもよらないことが生じたときには配偶者をあてにすると 回答しているが、その生じた内容に応じて、また、性別によって配偶者に頼る内容が異な っていることが示されている。 表 2-1-13 相談したり頼ったりする相手 (1)介護 (2)交通事故 (3)100 万円 (4)海外旅行 (5)宝くじ 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 (378 人) (243 人) (382 人) (240 人) (397 人) (251 人) (395 人) (250 人) (390 人) (248 人) 配偶者 68.5 81.5 77.7 66.3 61.7 65.7 67.8 82.8 64.6 71.8 配偶者以外 31.0 16.9 21.2 30.4 25.4 22.3 31.6 15.2 24.1 10.9 誰にも相談しない 0.5 1.6 1.0 3.3 12.8 12.0 0.5 2.0 11.3 17.3 合計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 注)有配偶者。(1)χ2 =16.813***、(2)χ2 =11.704**、(3)χ2 =1.114 n.s.、(4)χ2 =24.180***、(5)χ2 =19.191***。

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つぎに、「配偶者」を選択した項目数をカウントすると、5 つの項目全てで「配偶者」を 選択した人はおよそ半数にのぼる(女性 48.8%、男性 53.6%)。逆にいずれの項目でも配 偶者を選択していない人は 5%程度(女性 5.8%、男性 4.1%)いる。男女間に有意な差は ない(表 2-1-14-①)。年代別に見ると(表 2-1-14-②)、高齢世代ほど 5 項目すべてに対し て「配偶者」を選択した人が多い傾向があるが、統計的に有意な差はない。 表 2-1-14-① 配偶者に頼る項目数(性別) 女性 (342 人) 男性 (222 人) 合計 (564 人) 0 項目 5.8 4.1 5.1 1 項目 3.5 2.3 3.0 2 項目 8.2 4.5 6.7 3 項目 12.3 15.3 13.5 4 項目 21.3 20.3 20.9 5 項目 48.8 53.6 50.7 合計 100.0 100.0 100.0 平均値 3.86 4.06 3.94 標準偏差 1.48 1.31 1.42 F 値 2.706 n.s. 注)有配偶者。χ2 =5.856 n.s. 表 2-1-14-② 配偶者に頼る項目数(年代別) 35-44 歳 (149 人) 45-54 歳 (196 人) 55-64 歳 (216 人) 合計 (561 人) 0 項目 4.7 5.6 5.1 5.2 1 項目 1.3 4.1 3.2 3.0 2 項目 8.7 7.1 5.1 6.8 3 項目 12.8 12.8 14.4 13.4 4 項目 25.5 18.9 19.9 21.0 5 項目 47.0 51.5 52.3 50.6 合計 100.0 100.0 100.0 100.0 平均値 3.94 3.90 3.94 3.94 標準偏差 1.35 1.48 1.41 1.42 F 値 0.159 n.s. 注)有配偶者。年代不明はのぞく。年齢を数値として求めたピアソンの相関係数=0.006 n.s. 「配偶者」を選択した項目数を 0∼4 個/5 個に分けて、夫婦関係に対する満足度との相 関をみると(表 2-1-15)、5 つの項目全てで「配偶者」を選択している人ほど、夫婦関係に 満足していることが示されている。コミュニケーションの場合でも示されていたが、この 場合も、「何でも」相談できる、頼りにできるということが、夫婦関係の良好さや満足の源 泉といえるのかもしれない。

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表 2-1-15 配偶者に頼る項目数×夫婦関係に対する満足度 満足 どちらか といえば 満足 どちらと もいえな い 不満足 合計 χ2 35-44 歳 0-4 個(78 人) 23.1 29.5 19.2 28.2 100.0 5 個(70 人) 52.9 31.4 12.9 2.9 100.0 小計(148 人) 37.2 30.4 16.2 16.2 100.0 24.391*** 45-54 歳 0-4 個(94 人) 22.3 34.0 20.2 23.4 100.0 5 個(101 人) 42.6 33.7 18.8 5.0 100.0 小計(195 人) 32.8 33.8 19.5 13.8 100.0 18.099*** 55-64 歳 0-4 個(100 人) 31.0 21.0 32.0 16.0 100.0 5 個(112 人) 53.6 28.6 16.1 1.8 100.0 小計(212 人) 42.9 25.0 23.6 8.5 100.0 25.737*** 全体 0-4 個(273 人) 25.6 28.2 24.2 22.0 100.0 5 個(285 人) 49.5 31.2 16.1 3.2 100.0 合計(558 人) 37.8 29.7 20.1 12.4 100.0 65.798*** 注)有配偶者。「不満足」=「どちらかといえば不満足」+「不満足」

表 1-1-1  地域区分  地域  該当市・郡  神戸  神戸市(東灘区、灘区、中央区、兵庫区、北区、長田区、須磨区、垂水区、西区) 阪神南  尼崎市、西宮市、芦屋市  阪神北  伊丹市、宝塚市、川西市、三田市、川辺郡  東播磨  明石市、加古川市、高砂市、加古郡  北播磨  西脇市、三木市、小野市、加西市、美嚢郡、加東郡、多可郡  中播磨  姫路市、飾磨郡、神崎郡  西播磨  相生市、龍野市、赤穂市、揖保郡、赤穂郡、佐用郡、宍粟市、宍粟郡  但馬  豊岡市、養父市、美方郡、朝来市  丹波  篠山市、丹波
表 1-2-5  性別仕事の状況                  (%)  女性  男性  回答者本人  (422 人)  配偶者  (234 人)  回答者本人 (270 人)  配偶者  (354 人)  経営者・役員  3.1   1.3   7.4   8.8   常時雇用者  16.8   13.7   59.3   56.8   臨時雇用者  27.0   29.5   3.7   5.1   派遣社員  0.9   0.4   1.5   0.8   嘱託社員  1.9   1.3   2.
表 1-2-6  世帯の分類      兵庫県(2000 年)  本調査  一般世帯 人員  構成比  人数  構成比  差  A親族世帯  4,953,656  90.5  656  94.8   4.32   Ⅰ核家族世帯  3,863,330  70.6  488  70.5   -0.05   (1)夫婦のみ   824,849  15.1  125  18.1   3.00   (2)夫婦と子供  2,650,365  48.4  321  46.4   -2.02   (3)男親と子供   58
表 2-1-6-②  結婚後経過年数別・夫の親との同居率  夫の親  結婚後経過年数  生存  うち  選択的同居率  死亡  無回答  合計  0-9 年(41 人)  87.8   13.9   12.2   0.0   100.0   10-19 年(137 人) 80.3   18.2   19.0   0.7   100.0   20-29 年(177 人) 70.6   36.8   29.4   0.0   100.0   30-39 年(198 人) 39.4   35.9   60.6
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