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アンケート調査のまとめと考察

ドキュメント内 Microsoft Word - 報告書-訂正.doc (ページ 46-50)

 

  アンケート調査は、①現在の家族に関する意識、②現実の家族のあり方、③夫婦の勢力 関係、④「家庭での孤独感」と夫婦のコミュニケーションという 4 つのテーマに分けて分 析してきた。本章では、これらの分析により得られた結果をまとめておこう。 

 

1.家族に関する意識について 

―家族に関する規範意識の不在― 

アンケート調査では、家族に関する意識として、「イエ」の存続に関する意識や、婚姻に 関する意識、夫婦関係に関する意識、子どもに関する意識などについて尋ねている。これ らの意識は、日常生活から社会規範まで多様なレベルでの意識が含まれていると同時に、

さまざまな家族成員間の関係に関する意識も含まれている。 

こうした多様な意識について、まず、世代間の格差をみたところ、「夫婦は二人でいる時 間を大切にするべき」や「結婚しても、自分の生き方を大切にするべき」、「夫婦でもプラ イバシーは尊重するべき」など、夫婦関係における男女の平等性や個別性を尊重する意識 は各年代に共通している一方で、若い人ほど、家の継承や夫婦の姓、夫婦の性別役割分業 など、家族の「あるべき姿」、「望ましい姿」というものから自由になっていることが明ら かになった。 

後者の、「あるべき家族」というものからの自由という結果は、ある程度予測された結果 であるが、夫婦関係における平等性や個別性を尊重する意識が 60 代も、30 代にも共通して いるという結果は意外なものであった。夫婦の平等性や個別性を尊重する意識が世代を問 わず共通した意識であるということは、高齢になって夫婦の平等性・個別性を重視する意 識が高まったか、あるいは、若い世代で夫婦関係についての意識が変化していないかのど ちらかである。前者の場合は、「夫婦が歳をとって子どもが巣立ち、夫婦 2 人の生活を営ん でいく中でお互いの存在を尊重するようになった」など「年齢効果」、あるいは「ライフコ ースの変化」として解釈されうる。一方、後者の場合は、「イエ」を存続させるために、あ るいは子どもを産み、育てるために、あるいは家族を「形成する」ことが当たり前のこと と考えられていた時代の家族意識は弱まったが、そうした意識にとってかわるほど、夫婦 を中心とするような家族意識や家族のイメージが現れていないことになる。 

そこで、家族に関する意識について主成分分析をおこなった。その結果、若い世代は、「家 族の自明性」を失いつつも、新たな家族についての意識やイメージを確立できないでいる ということが明らかになった。 

 

2.現実の家族のあり方 

―夫婦の選択性と自明性― 

夫婦のパートナーシップについて分析を行った結果、長い交際期間を経て恋愛結婚する 夫婦は若い世代ほど多く、配偶者を主体的、選択的に決定している人が増えていることが 示された。 

しかしながら、結婚当初の生活に関することがらについては、夫婦で(意識的に)話し

合うことで決められている場合よりも、自然に決まることのほうが多い。特に、「夫婦の家 事分担」や「夫婦の姓」については、女性が家事を切り盛りし、夫の姓を名のるという決 定をしている人が約 9 割にのぼることから、結婚当初の夫婦は、性別に関する社会的慣習 や規範にもとづいてさまざまなことがらを決定し、家族を形成し始めていることが示され た。さらに、労働状態や収入、学歴、年齢という「資源」を比較したところ、若い世代で は、学歴は同等であるが、労働状態や収入、年齢という「資源」は、妻よりも夫の方が優 っている夫婦が多く、実際の夫婦関係においては、性別による非対称性がみられた。 

これらの結果からも、1.で述べた 2 つの解釈のうち、「若い世代で夫婦関係を中心とす る家族意識が強まっているわけではない」という仮説が支持される。現状では、日本の夫 婦は、パートナーとしての配偶者は主体的に選択するが、結婚後は、個人対個人の関係と してパートナーシップを形成しているというよりは、主に性別による役割分化をおこない、

夫婦が一対となった社会的存在として日常生活を営んでいるといえる。 

 

3.夫婦の勢力関係 

  日常的な決定事項についての分析から、夫婦の権力構造を、「夫優位型」、「妻優位型」、

「一致型」、「自律型」の 4 つに類型化した。夫婦が同等に権威を配分している「一致型」

が増加している一方で、妻に強い権威がある「妻優位型」も増えていることが確認された。

これらの勢力類型と、学歴や収入などの資源との関係は見いだされなかった。 

夫婦関係への満足度との関連をみると、「妻優位型」夫婦における妻の満足度が低く、

「一致型」あるいは「自律型」での妻の満足度が高い。現在の日本社会において、「一致型」

あるいは「自律型」の夫婦関係、社会的に支持される夫婦関係であるということであろう。 

 

4.「家庭での孤独感」について 

家庭で「孤独感」を感じないためには、裏返して言えば、家庭での「やすらぎ」を得る ためには、夫婦関係が重要であることが示された。そして、その夫婦関係に対する満足度 を高めてくれるのは夫婦のコミュニケーションであるが、コミュニケーションは時間など の「量」と、情緒的サポートなどの「質」という両方が満たされる必要がある。 

男性は家族での団らんが重要であるのに対して、女性は友人や一人で過ごす時間がある など、家族関係以外のネットワークがあることも、家庭でやすらぐために重要な要因であ る。結婚した男性は、夫婦、あるいは家族を中心とした生活にやすらぎを感じている。し かしながら、女性は家族を越えたネットワークの存在が、家庭でのやすらぎにも影響を与 えているのである。このような男女差が生じているのは、女性は、配偶者や家族に対して も、「個人」にとってのネットワークと同じように接しているからであるのか、女性が日常 的に家庭以外の生活をもつためには、意識的にネットワークを広げる必要があるからなの か、このどちらによるものであるのかによって、評価と対応が異なる。前者であれば女性 が主体的また選択的に家族を営んでいることになり、個人化が進展する社会において「家 族」が独自の意義や役割をもっていることを示唆してくれる。後者の場合であれば、女性 にとって家族はあるべきもの、あるいはもっと言えばメンテナンス(家事や育児)しなく てはならないものであっても、やすらぎや充足感、満足感をそれ自体として与えてくれる ものではないことになる。職業をもたない女性が多いこと、また、家内領域における性別

役割分業が存在している現状から判断する限りにおいては、後者の可能性が高いと考える のが妥当であろう。 

 

5.まとめ 

  これらの分析結果から、個人化する現代社会において、実際に夫婦を営んでいる人は、

個人対個人として夫婦関係を構築し、維持しているのではなく、夫婦を一対として考え、

そうした夫婦を中心として家族を営んでいる場合が多いといえる。 

しかしながら同時に、夫婦関係は、個人の家族生活にとって核となる、重要な関係性で あることも示されている。多くの夫婦はうまくバランスをとりながら、夫婦関係を持続さ せている。 

一方で、家族に関する規範意識が薄らぎ、一方で、男女が平等であることや対等である ことの重要性が認識されつつある現代の日本社会にあって、夫婦を一つの単位として構成 される家族は親密性と孤独感を生み出す諸刃の剣のような存在であるといえる。そして、

そのような「家族」のあり方は、これから家族を形成する人々にとっては、そうした家族 を営むのか、それともはじめから家族をあきらめるのかという二者択一の選択肢を提示し ているように思われる。 

特定のかたちの家族を営むことが、ときに家族病理や家族問題を生み出してきたことも 確かである。「ねばならない」家族意識から解き放たれたわたしたちは、主体的、選択的に 家族を営むことができるようになったはずである。少子化や未婚化など、家族と社会の接 点で「問題」が生じるのであれば、社会に求められているのは多様な個人、多様な夫婦、

多様な家族が暮らしやすい環境を整えることである。 

 

                           

第Ⅱ部  インタビュー調査編 

           

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