漢字教材用データベースの活用
加藤扶久美 0岩本阿由美 0遠藤祥子 ・永山香織 ・横堀慶子 Practical Use ofthe Databases forTeaching MateHals ofKltti
KATOH Fukumi,IWAMOTO Ayumi,ENDO Shoko, NAGAYAMA KaoH,YOKOHORI Keiko
要 旨
筆者 らは,本 学の 日本語学習者 (漢字圏・ 非漢字圏)が ,各 々の能力 とニーズに合 った漢字学習ができるように, 漢字教材用データベースの作成を目指 して,漢 字データベースを完成 し,そ の利用方法を解説 したマニ ュアル 『漢 字データベース (DB)の 使い方』 を作成 した。本稿では,漢 字データベースの概略について述べ,そ の作成過程 で新 しく考えた 「優先部首」,「 もどき部首 (M)」 について紹介する。 さらにデータベースを活用 して作成 した漢 字教材 「 漢字の形か ら覚える日本語能力試験漢字 リス ト」 ,「 ピンイ ンか ら覚える漢字の音読み」 を紹介 し,今 後の 課題 と展望について述べる。
【 キーワー ド】 漢 字データベース,体 系的,漢 字学習,優 先部首, もどき部首 (M)
1 は じめ に
外国人留学生 に対す る 日本語教育 においては,文 法 を中心 と した総合的な 日本語能力を体系的 に身 に つ けさせ るためにメイ ンテキス トを使用 し,そ れ に加えて漢字教科書 0教 材等 による漢字教育 が行 われ ることが多 い。
初級 レベル においては主 に 『みんなの 日本語初級 I, Ⅱ』 (以下,『みんな I, Ⅱ』 と略す),中 級 レ ベル においては 『文化 中級 日本語 I, Ⅱ』 (以下,『文化 中級 I, H』 と略す),『現代 日本語 コース中級
I, Ⅱ』 (以下,『CMJ I, Ⅱ 』 と略す)な どが メイ ンテキス トと して使用 されている。
漢字学習 においてよ く使 われ る教科書 は,『Basic Kanji Book Vol.1』(以下,『BKB l』 と略す),『Basic Kanji Book Vol.2』(以下,『BKB 2』 と略す),『Intermediate Kanji Book Vol.1』(以下,『IKB l』
と略す),『Intermediate Kanji Book Vol.2』(以下,『IKB2』 と略す),『漢字 の道』 な どである。
ところが, これ らのメイ ンテキス トと漢字教科書 を ともに使用す る場合,漢 字圏 ・非漢字圏の出身者 であるか,漢 字能力 は どの くらいあるか, どのよ うな教育機関で どのよ うなテキス トを使用 して きたか な ど,さ ま ざまな背景 を持つ学習者 に対応す ることは,一 般 に困難 であ る (加納 0酒 井 2003)。また, 書字教育一つ取 って も,そ の必要性 につ いての論議 は未 だ定 ま って いない (川瀬 1988, 玉村 1993, 市川 1998, 和田 2002)が ,学 習者 の漢字学習 の主 た る目的である読解 のための漢字運用能力獲得 (小 林 1998)に は,辞 書検索能力 を身 につ け,語 構成 につ いての認識 を深 める必要 があ る (カイザー 1998)
と考 え られ る。
このよ うな状況 の中で,筆 者 らは,外 国人 日本語学習者 (漢字 圏 ・非漢字圏)が ,各 々の能力 とニー ズ に合 った体系 的漢字学習 が 出来 るよ うにす る為 に,漢 字教材用 デー タベ ー ス作成 が最適 だ と考 え, FileMakbr Pr05.5を使用 し漢字 データベニス及 び語彙 データベースを作成す ることに した。
本稿 では,ま ず完成 した漢字 データベースの概要 を述 べてか ら,学 習者 と教師 のそれぞれを対象 に,
その利用方法 を解説 したマニ ュアル 『漢字 デー タベ ース (DB)の 使 い方』 につ いて説 明す る。次 に, 具体 的な活用例 として作成 した 「漢字 の形か ら覚 え る 日本語能力試験漢字 リス ト」,「 ピンイ ンか ら覚え
る漢字 の音読 み」 につ いて紹介 し,さ らに今後の課題 と展望 につ いて述べ る。
2 漢 字データベース (漢字 DB) 2.1 漢 字データベースの概要
図 1は漢字 DBの カー ドの例である。以下,図 の中の各フィール ドについて説明する。
(1)見出 し漢字
見 出 し漢字 〔(1)‑1〕 は総数 2094字 で,以 下 の ものか ら成 る。
〔 (1)‑2〕
2036字 (第 1水 準漢字 1926字 ,第 2水 準漢字 110字 )〔(1)‑4〕
③ 『外国人留学生の 日本語能力の標準 と測定 (試案)に 関す る調査研究について』 より55字
〔 (1)‑5〕
「『外国人留学生の 日本語能力の標準 と測定 (試案)に 関す る調査研究 について』 よ り」の 55字 は, 常用漢字表にはないが人名,地名によ く使われる漢字である。 〔 (1)‑3〕 は,学年別漢字配当表に基づき, 小学校の学習漢字 (1006字)を 学習する学年である。学習漢字以外は 「 一般」 とした。
字体は手書 きに近い教科書体を使用 した。
(21通し番号
見出 し漢字の通 し番号は,ま ず常用漢字の 1945字,次 に 1級 漢字表の 2036字のうち常用漢字表にな いもの,そ の後に 『外国人留学生の 日本語能力の標準 と測定 (試案)に 関する調査研究 について』か ら の 55字 がナ ンバ リングしてある。
(3)字体
見出 し漢字の教科書体 と対照できるように,(3)の フィール ドには新聞や雑誌の活字 に使われる明朝 体が入れてある。
①常用漢字表
② l級漢字表
19451諄
図 1 漢 字 DB
(4)画数
『日本語大辞典』 に基づ いた総画数。
(5)読み
常用漢字表 を もとに音読 みがカタカナで,訓 読 みがひ らがなで入れてある。音読 み,訓 読 みのいずれ か一方 の もの もあ る。訓読 みの漢字部分 の読 みは太字,送 り仮名 の部分 は標準 に してある。漢字部分 の 読 みが同 じものは同 じ行 にまとめてある。
(6)ピンイ ン
中国語 を母語 とす る学習者 は漢字 か ら大体 の意味 を理解す ることができ,非 漢字 圏の学習者 よ り有利 な面 はあるが,漢 字 の読 みにおいて中国語 の発音が影響 し,か え って困難 を感 じる場合 もある。 そのよ うな中国語話者 が独習す る時,漢 字 の読 みを素早 く調べ られ るよ うに,中 国語 (北京語)の 発音 を基 に した ピンイ ン (中国式 ローマ字つづ り)か ら漢字 が検索で きるよ うに,こ の フィール ドを作成 した。
ピンイ ン入力 につ いては 『中国人 のための漢字読 み方ハ ン ドブ ック』 を参考 に したが,四 声 (中国語 の 4つ の声調)の 示 し方 につ いては,中 国語 を入力す る場合 に多 くとられている方法 (アル ファベ ッ ト の後 に数字 で入 れ る)を 採用 した。
ma =) ma l
ma 2
ma 3
m a 4
また,[y]の音を表す 「 u」に関しては,入 力の便宜上:学 習者が使っている以下のような方法を取 り 入れた。
① t→ v tt nt→ nv
② tO→ ve,ue tt nte→ nve,nue
(「 ve」,「ue」ぃずれ も使用 されていることか ら,併 記 した)
「 畑」や 「 塀」など日本で作 られた漢字は, ピンインがないため,「国字」 と入れてある。国字の中に は 「 働」な どのように中国語 に取 り入れ られているもの もあるが,本 DBで は 「国字」 と入れてある。
げ)部首
『康熙字典』を基 にしている 『日本語大辞典』を基準に,部首名が入れてある。異なるテキス トを使 っ てきた学習者の便宜を考慮 し,1段 目に 『日本語大辞典』の部首名が,2段 目に 『IKB l』 の字形索引 用部首 リス トの中で 『日本語大辞典』と異なる部首名が入れてある。そのほか,「しんにょう」,「しんにゅ
う」は,「 しんにゅう」に統一 した。 また,同 じ名称で異なる部首を示す場合は,「ひへん (火)」「ひヘ ん (日)」のように意味が分かるように してあるё
/
ma =→
⇒
⇒
∨ a
\ a
m m
(8)字形パターン
部首の知識がな くて も字形の特徴か ら漢字が検索できるように,字 形パタ ーンが設けてある。左右 (A, B),上 下 (D,E),た れ (G),か まえ (H),に ょう (I),全体 (J)の Aか らJに 大別 した。例えば,「畑」
のように,部 首が Aの 「へん」か Bの 「つ くり」かが分か らない場合は,パ ター ンCを 選択すればよ いようにな っている。
それぞれの漢字の字形パター ンの決定にあたっては,部 首 にとらわれず,学 習者が選ぶ可能性が高い ものが選んである。
(9)漢字テキス ト
初級か ら中級で使用 されている漢字テキス ト (『 BKBl,2』 『IKBl,2』 『漢字の道』)に ついて,そ れ らの漢字テキス トの提出課が示 してある。『BKB』 は Vol.1か らVol.2にかけて一続 きの課構成 になっ ているため,ひ とつにまとめてある。見出 しの漢字が 『 IKBl,2』 でコラム欄 と復習ページに提出され ているものについては,そ れぞれ 「コ 1」 ,「Rl」 としてある。
2.2 字 形 パ ター ン
2.2.1 字 形 パ ター ンの分類 基準
字形パター ンは,部 首名がわか らな くて も,字 形の特徴か ら漢字を検索できるよう設 けたフィァル ド である。
2094字の漢字を A〜 Jの 10のパター ンに分類す るに当た り,次 のような基準を設 けた。
まず,「にんべん」「くさかんむ り」など,よ く使われる部首を 「優先部首」 とし,そ の部首を含む漢 字を優先的にその部首のある字形パター ンに分類 した。「 優先部首」は A,B,D,E,G,H,Iの パター ンにあ り,全 部で 30種 類ある。すべての部首名を覚える必要はないが,一 般的な部首名を知 ることが 漢字学習の助けになるとも考え,適 度な数を選定 した。
A さ んずい に んべん て へん き べん ご んべん い とへん く ちへん か ねへん こざとへん り っしんべん つ ちへん つ きへん の ぎへん ぎ ょうにんべん おんなへん じ めすへん
B り っとう お おがい ぼ くにょう お おざと
D う かんむ り く さかんむ り な べぶた た けかんむ り E こ ころ か い
G ま だれ や まいだれ H も んがまえ
I し んにゅう
次 に,左 右の Aか B,上 下の Dか Eを 選ぶ際は,よ り画数の少ないものや,学 習者が初期に学習す ると思われる漢字がある方のパター ンに分類 した。学習者は,知 っている漢字を目安にパターンを選ぶ と思われるか らである。『漢字データベース (DB)の 使い方』には,優 先部首か,簡 単な漢字 0部首が ある場所が黒 くなっていると,説 明 してある。
また,Aか BI Dか Eを 選ぶ際,ど ちらにも決定的な判断材料がな く,ど ちらとも決めかねる場合は, C,Fに 分類す ることとした。
さらに,分 割できない漢字や,そ の漢字 自体が部首 になるものは,Jの パター ンに分類 した。ただ,
画数の多い漢字 も 1つ の部首 として Jに 分類す ると,」 パター ンに分類 された漢字の総数が多 くな り,
検索す る時, 日標の漢字になかなか到達 しに くいため,部 首 になるものの中で分割できそうな ものは分
割 して,他 の字形パター ンに分類 した。
分類例
A 田 例
B □ 例 C □ 例 D □ 例 E 目 例 F 日 例 G □ 例 H 日 ■ ■
I 口 例 J □ 例
確, 敗 , 晩 , 焼 , 狭 , 配 動, 歌 , 難 , 親 , 朝 , 印 飲, 加 , 現 / 弱 , 報 , 疑 暑, 電 , 今 , 岩 , 置 , 売 型, 点 , 盛 , 肯 , 緊 , 委 学, 男 , 要 / 予 , 冬 , 農 友, 存 , 屋 , 原 , 産 , 肩
起, 建 , 処 , 題 , 直 , 勉
出, 天 , 必 / 金 , 月 , 雨
例 : 可 , 式 / 医 , 国 , 円 , 画
2.2.2 字形パ ター ンを使 つて検索する方法
① 優先部首がある → 優 先部首のある場所 (A,B,D,E,G,H,Iか ら選択)
例 「泳」 「 さんずい」が優先部首なので, A□
② 優先部首 が 2つ ある → ど ち らも選ぶ (例 AI□ と B'口 か DEヨ と EEち
例 「利」 「 のぎへん」 と 「りっとう」の 2つ が優先部首なので,
「 憲」 「 うかんむ り」 と 「こころ」の 2つ が優先部首なので,
「田」が簡単 なので,D□
■ □
A□ と B□
D□ と E目
③ 優先部首 はないが,簡 単 な漢字 ・部首 が 1つ ある → 簡 単 な漢字か部首 のある場所 (例 Aか B,
Dか E)
例 「異」
④ 優先部首はないが,簡 単な漢字 ・部首が 2つ ある → C口 か F`日
例 「精」 優 先部首はないが,「米」 と 「 青」はどちらも簡単な漢字なので,C□
「胃」 優 先部首 はないが,「 田」 と 「月」 は どち らも簡単 な漢字なので,F日
⑤ 優先部首 も簡単な漢字 ̀部首 もないが,分 け方はわかる
例 「愛」 わ かる漢字 0部首がない二 FE]
→ C□ か F日
⑥ 分けられない → 」□
ffit [fi-] - JE
⑦ 部首表 Dに ある → J 例 「斤」→ J
③ 部首表にあるが,分 けられる → 」 と (A〜 I か ら選択 選 択の基準は上 と同 じ) 例 「非」 部 首表にあるが,優 先部首 はな く,簡 単な漢字 ・部首がない → J と C
検索の際,2つ のパ ター ンを選ぶ ことによって 目標の漢字に到達 しやす くなる。
さらに,漢 字に 「 優先部首」がある場合は,そ の部首名を入れ,そ の部首がある場所 (A,B,D,E, G,H,I)に チェックを入れ検索す ることで,早 くみつけることができる。
2.2.3 も どき部 首 (M)
もどき部首 というのは下の例にあるように,部 首名に 「 M」 をつけて,そ の部首名 と同 じように扱 う ものである。全部で 150あ るが,作 った目的によって,2つ のグループに分 けられる。
Iグ ループ (合計 60)
学習者か ら見て形が同 じであるが,部 首名が異なるものを含む漢字を,1つ の部首名で一度 に全部検 索できるように 「 M(も どき)」を設定 した。
字形パター ンA□ の黒い部分が 「月」の漢字は全部で 35字 あるが,そのうち 32字 (91.4%)は 「つ
きへん M」 である。つ きへんM(32) 肝 脚 胸 肢 脂 臓 胎 胆 脱 肪 胞 膨 膜 脈 腰 腕 腫 膝 肘 股 脇 脹 腸 胴 脳 肺 肌 肥 腹 騰 謄 豚 お うへんM(=た まへん)(5) 環 珠 琉 珍 斑
かたへんM(=ほ うへん)(3) 旗 施 於
とりへんM(=ひ よみの と り)(9)酵 酷 酌 酢 酬 醜 醸 酔 酪 ぼ くに ょうM(=の ぶん)(8) 枚 徴 徹 撤 微 赦 致 牧 ひとあ しM(=に んに ょう)(2) 克 充
Ⅱグルー プ (合計 90)
学習者 か ら見て漢字 の中に部首 と同 じ形 を含 むのに,そ の部首 の漢字 として扱 われていない漢字があ る。 そのよ うな漢字 を, も ともとその部首 の漢字 とされている漢字 と同様 に,そ の部首名 で検索 できる よ うに 「M」 を設定 した。
字形パ ター ンDEヨ の黒 い部分が 「工」の漢字 は全部 で 39字 あるが,そ の うち 33字 (84.6%)は 「な
べぶた M 」 である。
ぎ ょうにんべん M(2)衡 衝 おおがい M ( 2 ) 瀬 煩
りっとう M ( 1 ) 測 ス、ると りM ( 1 ) 唯
なべぶた M ( 3 3 ) 衣 意 育 音 棄 玄 言 高 豪 斎 市
充 ( ひ とあ しM ) 商 辛 衰 斉 卒 率 畜 帝 童 蛮 文 変 方 褒 忘 夜 裏 立 竜 恋 六
うかんむ りM ( 1 0 ) 究 窮 空 穴 窃 窓 窒 窯 突 賓 くさかんむ りM ( 5 ) 南 幕 募 墓 慕
がんだれ M ( 2 ) 灰 暦
まだれ M ( 8 ) 慶 麻 摩 磨 魔 鹿 唐 腐 とだれ M ( 2 ) 肩 戸
とらが しらM ( 2 ) 慮 膚
ほこづ くりM ( 7 ) 威 栽 裁 戴 式 弐 武
どうがまえ M(8) 向 冊 尚 商 (なべぶた M)両 岡 南 丙 か くしが まえ M(2) 匠 臣
かんに ょう M(1) 幽 しんに ゅう M(1) 巡
Iグ ループの場合 も, Ⅱグループの場合 も,学 習者 に とっては同 じ形 に見 え るに も拘 わ らず,部 首名 が異 な っているため,学 習者 が認識 した部首名で検索 して も,日 標 の漢字 にた ど り着 けない ことがある。
Mを 設定す ることによって,そ うした事態 を防 ぐことが出来 る。
2.3『漢字 デ ー タベ ース (DB)の 使 い方』
学習者及 び教師を対象 に本 DBの 活用の仕方を説明 したマニ ュアル 『 漢字データベース (DB)の 使 い方』2)を作成 した。その内容は以下のとお りである。
『漢字データベース (DB)の 使い方』の内容 学習者のみなさんへ
1。この DBに 入 っている漢字 2.カー ドにつ いて
見 出 し漢字,常 用漢字 ・学習漢字 ・日本語能力試験 の級 の表示方法,通 し番号,字 体,画 数, 読 み, ピ ンイ ン,部 首,字 形パ ター ン,漢 字 テキス トにつ いて説 明
3.利用 の仕方 1)検 索 の方法
2)カ ー ドを並べかえ る方法 3)読 み方が知 りたい とき
4)漢 字 テキス トの各課 の学習漢字 を知 りたい とき 注 1優 先部首
1)優 先部首 とは ? 2)優 先部首 の使 い方 注 2字 形パ ター ンの選 び方 注 3検 索条件 の 「記号」 の使 い方
先生方へ 利用方法の例
1)異 な った漢字 テキス トで勉強 して きた学習者 の既習 0未 習漢字が知 りたい場合 2)テ ス ト作成時 に,テ ス トに使用可能 な漢字 を把握 したい場合
3)部 首や読 みが同 じ漢字 を集 めたい場合 4)選 択式問題 の混乱肢 を考え る場合
5)該 当級 の漢字 の中で未習 の ものが知 りたい場合 具体例 とその操作方法 の説明
1)コ ース途 中で入 って きた学習者 のための補習教材作成 2)学 習漢字が異 な る学習者 に対す る授業
3)選 択式問題作成 注 1ピ ンイ ンにつ いて 注 2部 首 につ いて
2。4 漢 字 デ ー タベ ー ス の 活 用
本 DBに は 1枚 のカー ドにそれぞれの漢字の読み,総 画数,ピ ンイ ン,部 首な どの情報が含 まれ るため, 通常 の漢字字典 と同 じよ うに,そ れぞれの漢字 につ いてのいろいろな情報 を得 るために使 うこともでき るが,全 2094字 の漢字 のなかか ら指定 した条件 に合致す る漢字 を全 て リス トア ップす ること も可能で あ る。 また,そ れぞれの漢字 は 4種 類の漢字 テキス ト (以下 「漢字 テキス ト」 は特 に断 らない限 り, こ の DBで 扱 った 4種 類 の漢字 テキス トを指す もの とす る)の うち,どのテキス トの どの課 で学習す るか, 日本語能力試験 ・学習漢字 な どの どの級, どの学年 に該 当す るか も知 ることができる。 そのため,漢 字 テキス トや小学校 の教科書 を用 いた学習, 日本語能力試験受験 を 目指 した学習 な どに活用す ることもで きる。具体的 には,例 えば以下 のような利用 が可能であ る。 なお,そ れぞれの教材作成 の詳 しい手順 は, 本 DBの マニ ュアル 『漢字 データベース (DB)の 使 い方』 を参照 されたい。
(1)日 本語能力試験受験 に向けて漢字 テキス トを用 いて学習す る場合
一般の漢字 テキス トでは, 日本語能力試験の 4級 の漢字か ら順 に 3級 ,2級 ,1級 の順 に提示 さ れているとは限 らない。 また,出 題基準 にある漢字すべてが漢字 テキス トで学習 で きるとも言えな い。 したが って,各 級 の出題基準 の漢字 を効率 よ く学習す るためには,そ の漢字が漢字 テキス トの どの課 に出て くるか,テキス トにない漢字 は何か とい うことを リス トア ップす ることが必要である。
この場合,検 索 モー ドで 「能力試験 出題基準」 の受験級 をチ ェック して検索 した上で, ソー トを 使 って漢字 テキス トの課 の順 に並べかえれば リス ト化できる8リ ス トにはまずテキス トにない漢字 か ら並: ぶ。
(2)異 な る漢字 テキス トを使用 してきた学習者 が クラスで学習 を始 め る場合
各漢字 テキス トで学習漢字 の提 出順が異 な るため,ク ラスでは学習済 みであ って も新 しい学習者 にとっては未習 とな る漢字がある。 その漢字 を クラスでの学習 開始時点 で明 らか に して,補 習 な ど の措置 を取 る必要がある。
この場合,ク ラスの既習漢字 リス トのファイルを作 ったあと,メ ニ ューバーの 「レコー ド」 >「 対
象 レコー ド削除」を用いて新 しい学習者の既習漢字を リス トか ら削除すれば,補 習すべき漢字の リ ス トを作 ることが出来 る。
(3)レ ベル別 あるいは漢字圏 ・非漢字圏別 に異な うたテキス トを用いる複式授業で,特 定の部首 な どをテーマに して一斉授業を行 う場合
一斉授業の中でテーマに合 った既習漢字の例を挙げるには,各 学習者が使用 している全テキス ト で学習済みの漢字か ら当該漢字を リス ト化 してお くことが必要である。
この場合,検 索モー ドで各漢字テキス トの課の範囲を記入 し,読 み,部 首,ピ ンイ ン・ 字形パター ンなどテーマに沿 った条件を記入 して検索する。
(4)適 当な漢字を選ぶ選択式の問題を作 る場合
選択肢 として正答のほかに読みや部首,字 形パタァ ンな どの点が正答 と共通 した適当な混乱肢が 必要になる。
この場合,テ キス トの出題範囲を指定 したうえで,正 答の漢字 と部首などの面で共通 した漢字を 検索 して,そ の中か ら選ぶ ことができる。tt DBの 場合, ピンイ ンのデータが入 っているので,そ れを考慮 して中国語話者 にとってより適切な混乱肢を選ぶ ことができる。 また,部 首で検索 した場 合,Mで 部首名が入 っている漢字 もリス トア ップされるので,部 首が類似 した漢字 も含めて,よ
り広い範囲か ら混乱肢を選ぶ ことができる。
3「 漢字 の形 か ら覚 え る 日本語 能力試 験 漢字 リス ト」
本漢字 DBの 具体的な活用例 として,教 師や学習者が同 じ部首を もつ漢字を整理するために役立つ資 料を作 ってはどうかと考えた。そこで,まずは代表的な部首である優先部首 ごとに漢字 リス トを作成 し,
「 漢字の形か ら覚える日本語能力試験漢字 リス ト」 としてまとめた。
優先部首を持つ漢字数 (1142)は漢字 DBに ある漢字総数 (2092)の 54.5%を占める。
各漢字 リス トの構成 としては, 日本語能力試験の級を基準に して,易 しい 4級 か ら順に並べ,試 験の 範囲外の漢字は,図 2の ように,「常用漢字一般」「その他」 として,4級 ,3級 ,2級 ,1級 の次 に加え た。 また,そ れぞれの漢字数 も括弧内に記 した。図 3の 「もんがまえ」を例 にとると,ヘ ッダーにある
「 Hl」 は字形パター ンHの 中の優先部首の 1つ 目にあたることを示 し,「13字」は, もんがまえを部首 とする漢字の総数である。
図 2 お んなへん (日本語能力試験範囲外 の漢字のみ)
常用漢字 一 般 (1字 )″
その他 (1字 )♂
H l も んが まえ ( 1 3 寧 }
4 軸 ( 2 寧 〕 1 軸 〔5 字 〕
3 緞 ( 3 字 〕
プ慾骰齢曇轟輻 轟轟
覇目鷺轟轟塵去鑢ril,鶴 i 靭 議朧
2 軸 ( 2 寧 〕
図 3 も んがまえ
4「 ピンイ ンか ら覚 え る漢字 の音 読 み」
4.1 試 作 意 図
中国か らの留学生が多いにもかかわ らず, ピンイ ンと日本語の漢字学習をつなげる練習問題はあま り ない。そこで今回,漢 字 DBの 活用例 として,「 ピンイ ンか ら覚える漢字の音読み」(練習問題)を 試作
した。本 DBは 同 じピンイ ンや似た ピンイ ンの漢字をす ぐに リス トア ップできるので,効 率的にこのよ うな教材が作成できる。
4.2 内 容
本練習問題 は全 20シ ー ト (四択問題が 7シ ー ト,三 択問題が 13シー ト)で , 1シ ー トあた り8〜
10問 (四択の最後のシー トのみ 6問 )あ る。
1つ の問題には ピンイ ンが同二の漢字が挙げてあ り,そ の中か ら日本語の音読みが異なるものを選択 す る問題である。
=霧 鸞
詳
一一 .●
●L
l
<問 題例 >
ピンイ ン :」ing4
選択肢 :境 鏡 競 浄
(「境」「鏡」「競」 は 「キ ョウ」 と読 むのに対 し,「浄」 のみが 「ジ ョウ」 と読 むので,「浄」 が正解)
各問題 には,選 択肢 の漢字全 ての熟語例が 1〜 3ず つ挙 げてある。
<熟 語例 >
境 :環 境 (かん き ょう)国 境 (こっき ょう)
鏡 :望 遠鏡 (ぼうえん き ょう)顕 微鏡 (けんびき ょう) 競 :競 争 (きょうそ う)競 技 (きょうぎ)
浄 :浄 化 (じょうか)洗 浄 (せん じょう)
熟語例 を挙 げる際,次 のような語彙 を中心 に入れた。
① 『みんなの 日本語初級 I・ Ⅱ』,『文化 中級 I・ Ⅱ』,『現代 日本語 コース中級 I・ Ⅱ』 で使用 され ている語彙
② 日 常的 によ く目にす ると考 え られ る もの
③ (複 数 の例 を挙 げる場合)漢 字 の持つ意味が異 な る語彙
<例 > 惑 :惑 星 (わ くせ い)迷 惑 (めいわ く)
④ 難 しい語彙 だが,留 学生活上必要 であると考え られ るもの
なお,問 題 の試作版作成 には WEB問 題作成 ツール (http://wwWoiWai―h.edojp/javascript/webquiZ/) を利用 した。
5 今 後 の 課 題 と展 望
漢字教材用 DB作 成 に向けて,当 初,漢 字 デー タベースと語彙 DBを 連動 させて作業を進めていた。
ところが,「部首 の知識がな くて も字形 か ら漢字が検索できるように」 と考 えて設 けた 「字形パ ター ン」
の決定 に当た り,ひ とつ ひとつ の漢字 を検討す る必要がでてきて予想以上 の作業量 とな ったために, と りあえず漢字 DBを 完成 した。
この漢字 DBを 学習者 と教師の両方 に利用 して もらうために,『漢字 データベース (DB)の 使 い方』
を作成 したので,多 くの人 に利用 して もらうために PRと 試用の機会 を持 ちたい と考え る。
太 田他 (2002)の ように,学 習漢字 (日本語能力試験 2級 レベル)の データベースと連動 させた種 々 の教材作成 には及 ばないが,「 ピンイ ンか ら覚 え る漢字 の音読 み」 の問題作成 時 には,漢 字 DBと 語彙 DBを 連動 して活用す ることがで きた。本練習問題 の試用版 は富 山大学留学生 セ ンター 「日本語学習支 援 サイ トRAICHO」 に入 れ る予定 であ る。今後,試 作版 を学習者 に利用 して もらうことによ って, ピ ンイ ンと日本語 の漢字 の音読 みを関連付 けるこの練習問題 が どれ ほど学習者 の記憶 の助 けにな るか,そ の効果を計 りたい と考えている。
また,「漢字 の形 か ら覚 え る 日本語能力試験漢字 リス ト」 に語彙 DBを 連動 させ ることがで きれ ば, よ り利用価値が高 まると思 われ る。
今後,引 き続 き本漢字 DBの 活用例 を示 していければ と考え る。
注 1)『 日本語大辞典』漢字音訓一覧の部首表 に基づ いた。
2)本 DBを 教 師の指導 を受 けず単独 で使用す る学習者 は ,あ る程度漢字学習 および 日本語学習 が進 んでいる と考 え られ るため,「学習者 のみな さんへ」 の部分 の 日本語 の レベル は初級修了 レベル とな ってい る。
参 考 文 献
(1)市 川伸一 (1998)「認知心理学 と日本語教育」『平成 10年 度 日本語教育学会秋季大会』
(2)梅 樟忠夫他監修 (1989)『日本語大辞典』講談社
(3)大 越美恵子 ・高橋美和子編 (2002)『中国人 のための漢字読 み方 ハ ン ドプ ック』 ス リーエーネ ッ トワー ク (4)大 田亨 ・藤 田佐和子 ・中村朱美 (2002)「上級漢字教材作成 プロジェク トにつ いて」 『金沢大学留学生 セ ンター
紀要』第 5号 pp.69‑96
(5)外 国人 の 日本語能力 に関す る調査研究協力者 (1982)「『外国人留学生 の 日本語能力 の標準 と測定 (試案)に 関す る調査研究 について』 の報告」文化庁
(6)カ イザ ー シュテ フ アン (1998)「非漢字 圏 =悲 観事 圏」 脱却 へ の道―漢字教育か ら語彙教育ヘ ー」『平成 10年 度 日本語教育学会秋季大会』
(7)加 藤扶久美 ・岩本 阿 由美 ・遠藤祥子 ・永 山香織 ・横堀慶子 (2004)「漢字教材用 デー タベース作成 に向けて」『富 山大学留学生 セ ンター紀要』第 3号 pp.22‑31
(8)加 納千恵子 ・清水百合 ・竹 中弘子 ・石井恵里子 (1999)『Basic Kanji Book Vol.1』第 3版 ,凡 人社 (9)加 納千恵子 ・清水百合 ・竹 中弘子 ・石井恵里子 (1999)『Basic Kanji Book Vol.2』第 3版 ,凡 人社 (10)加 納千恵子 ・清水百合 ・竹 中弘子 ・石井恵里子 (2001)『Intermediate Kanii Book Vol.1』第 3版 ,凡 人社 (11)加 納千恵子 ・清水百合 ・竹 中弘子 ・石井恵里子 (2001)『Intermediate Kanji Book Vol.2』凡人社
(12)加 納千恵子 ・酒井 たか子 (2003)「漢字処理能力測定 テス トの開発」『筑波大学留学生 セ ンター 日 本語教育論集』
第 18号 pp.59‑80
(13)川瀬生郎 (1988)「日本語教育 にお ける漢字」『漢字講座 12 漢 字教育』 明治書 院 pp.273‑296 (14)国際交流基金 ,日 本国際教育協会 (1994)『日本語能力試験 出題基準』凡人社
(15)小林 由子 (1998)「漢字授業 における漢字学習 一認知心理学的モデル による検討 一」『北海道大学留学生 セ ンター 紀要』第 2号 pp.88‑102
(16)ス リーエーネ ッ トワー ク (1998)『みんなの 日本語初級 I』 ス リーエーネ ッ トワー ク (17)ス リーエーネ ッ トワー ク (1998)『みんなの 日本語初級 Ⅱ』 ス リーエーネ ッ トワー ク
(18)玉村文郎 (1993)「日本語教育 におけ る漢字 一その特質 と教育 ―」『日本語教育』80号 pp。1‑14 (19)豊 田豊子 (1990)『漢字 の道』凡人社
(20)内閣 (1981)「常用漢字表」 内閣告示第一号
(21)名古屋大学 日本語教育研究 グルー プ (1998)『現代 日本語 コース中級 I』・
名古屋大学 出版会 (22)名古屋大学 日本語教育研究 グルー プ (1999)『現代 日本語 コース中級 Ⅱ』名古屋大学 出版会
(23)濱 田美和 ・後藤寛樹 ・深澤 のぞみ (2004)「日本語学習支援 サイ トの役割 と効果 一大学 における総合的 日本語学 習支援体制 の構築 とサイ トの開設 一」『富 山大学留学生 セ ンター紀要』第 3号 pp.1‑14
(24)文化外 国語専 門学校 日本語課程 (1999)『文化 中級 日本語 Ⅱ』凡人社 (25)文化外 国語専 門学校 日本語課程 (1999)『文化 中級 日本語 Ⅱ』凡人社
(26)文部省 (1993)「小学校学習指導要領」『小学校学習指導書 国 語編』 ぎ ょうせ い
(27)和 田衣世 (2002)「中国人学習者 向 け漢字 教材 の必要性 につ いて」『北海道大学留学生 セ ンター紀要』第 2号 pp.88‑92