九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
大豆タンパク質由来ペプチドの多面的生理機能の解 明に関する研究
中森, 俊宏
https://doi.org/10.15017/1441352
出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(農学), 論文博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
氏 名 : 中 森 俊 宏
論文題目: 大豆タンパク質由来ペプチドの多面的生理機能の解明に関する研院 区 分 : 乙
論 文 内 容 の 要 旨
大豆は世界的に最も栽培されている油糧種子であり、栄養価の優れたタンパク質源であるにもかかわらず食品用 途の利用が進んでいない。その一方で、肥満の増加による生活習慣病予防の重症化は世界的な問題となっている。
大豆タンパク質に悶旨質代謝調整機能があることが見いだされ、米国食品医薬品局在
DA)は大豆タンパク質を含 む食品にヘルスクレームの表示を認めている。日本においても豆乳や豆乳ヨーグルトの特定保健用食品がコレステ ロールの高めの方むけに販売されている。しかしながら、大豆タンパク質の生理 1 鮪巨を解明する研究拭動物や人 での機能謝面に終始していたおり、生体内で大豆タンパク質中のどの様な成分科鮪
Eを発揮するのか、十分に解明 されていなかった。
大豆タンパク質を酵素分解した大豆ペプチドにはタンパク質より強い血中トリグリセイド(
1G)低下作用や肥満 抑嗣励果があること科医告されている爪これまでに有効成分を単離同定したとの報告はない。従って、本研究で は具体的な有効成分の単離同定を試みるとともにペプチドの体内で発現する多面的な生理機能の解明を試みた。
大豆タンパク質の一次構造は、親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸が局在化する点に注目し、酵素鍋物を疎水性 吸着樹脂により苦味ペプチドとうま味ペプチドに分画することに成功した。次にどちらが強い生理機能をもつかを
O回Eラットと
Hqi32ヒト肝ガン細胞を用いて検証したところ、うま味ペプチド側で、肝臓のホスファチジン酸ホ スホヒドロラーゼザ
'AP活性、脂肪酸合成活性(臥S )、グルコースふリン酸デヒドロゲナ一世
α>PD瑚舌性、加幽
C町 四eを有意に低下させるなどの幅広い樹蒔で肝臓の百合尉 r p 制活性を抑制することを示した。腸管膜から吸収され肝 臓に到達しバイオアビリティを発揮するのは、ジペプチドかトリペプチドであることから、うま味ペプチド中のジ、
トリペプ子ド画分から単離同定を試み、
7種類のジペプチドを単離し同定することに成功した。特に
SYはカゼイ ンの一次構造には見られず大豆タンパク質の
7SllSに幅広く存在する大豆タンパク質に特有の配列であることから、
τ ロ低下作用を示す主要ペフ子ドの一つであると考えられる。
次に脂質イ切に関係する大豆ペプチドの脂鵬目織に対する影響を調べた。その結果、
hm では血中アディポネ クチンの分泌を有意に増加させることを見いだした。アディポネクチンは肥満と逆の相関をすることが知られてい るアディポサイトカインであり、肥満に伴うインスリン抵抗性などを改善することカ湖待される。h曲。試験では、
白色脂鵬田胞中の脱共役タンパク質(
U臼1)の発現上昇を誘導した。
UCPlは褐色脂肪細胞において熟産生に寄与 することが既に知られているが白色脂肪細胞において
Browi:時化が誘導される可能性が見いだせた。
肥満は消費するより過剰な食事を摂取することで余分なエネルギー洲旨肪に寄責されることで進展する。食事か らのエネルギー摂取を抑えるため胃の叡責を小さくする手術などが知られているが、身体的な負担が大きい。最近 の研究で消化管ホルモンが食欲調整に関わっていることが明らかになってきた。陶
a等は大豆ペフ。チドのペプトン タ滞納が動物においてコレシストキニンの分泌を促進させ満腹中枢を刺激することで摂食抑制状態を作り出すこ とに成功した。そこで、ヒトでの実証試験を行うため、酵素をスクリーニングしたところブロメラインの分解物が 風珠に優れコレシストキンの分泌活性も高いことを見いだし、ヒトでの実証テストを行った
oVAS試験により
8コ ングリシンのブロメライン分解助によって満腹感作り出せることを実証した。
高齢化の進展に伴い急速に老人性認知底患者の数カ漕速に増えている。却
12年度の時点で白歳以上の高齢者の方
の
4人一人は認知症かその予備群となる数値が発表され、.政府には早急な対応が求められている。記憶などに関係
している前頭前野部分を活性化すれば認知症の発症を遅らせることが実証されている。脳機能に影響を及ぼす食品
素材も見いだされており、大豆ペプチドが脳機能に及ぼす影響を検証した。その結果、大豆ペプチド摂取により脳
活動の負荷を軽減させ、新しいタスクに対して作業効率の改善に寄与する可能があることが見いだせた。
1987
年に国内で大豆ペフ子ドが販売されて以来、様々な形態でペプチドが利用されている。なかでも簡易性の点 で飲料形態カ可憂れている。しかしながら、酸性条件下で冷蔵保存するとときおり澱が発生する場合がある。そこで
澱成分を調べたところ、 β コングリシンの αサブユニットの 31~3位番の配列由来の高う汗ペプチドが顎謀説殿する