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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

土地利用ゾーニングによる森林減少の削減効果 : ミャンマー全土を対象とした解析

ケイ, カイン, ルイン

http://hdl.handle.net/2324/4110552

出版情報:Kyushu University, 2020, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

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氏 名 Kay Khaing Lwin

論 文 名 A country scale analysis on effectiveness of land use zoning on reducing deforestation in Myanmar(土地利用ゾーニングによる森林減少の削減効果

~ミャンマー全土を対象とした解析~)

論文調査委員 主 査 九州大学 教 授 溝 上 展 也 副 査 九州大学 准教授 太 田 徹 志 副 査 九州大学 准教授 藤 原 敬 大

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

熱帯林の減少は地球規模の環境問題として重要視されており、森林減少の削減に向けて国際的に も国内的にも多くの対策が講じられている。多くの熱帯諸国では土地利用ゾーニングとして恒久林

(Permanent Forest Estate:PFE)を法的に指定することで森林の永久的な維持が図られている。さ らに、PFE内は木材生産のための生産林(Reserved Forest:RF)や保護地域(Protected Area: PA)等 のゾーンに区分されている。これまで、PFE、RFやPA などの土地利用ゾーニングによる森林減少 の削減効果については地域的な事例研究が多くみられるが、一国全土を対象としたときの土地利用 ゾーニングの効果や森林減少の傾向についてはほとんど知られていない。そこで本研究では、森林 減少が著しいミャンマーの全土を対象として、土地利用ゾーニングによる森林減少の削減効果を検 証し、森林減少の地理的な傾向を明らかにすることを目的としている。

まず、ミャンマーの全土における森林減少を図化するために、Hansen ら(2013)が開発した全球 森林変化図の精度を検証している。この森林変化図では森林と非森林を区分するために、衛星画像 から得られる樹冠疎密度の閾値を指定する必要があるが、地域や森林タイプによってどの閾値を用 いるべきかは十分に分かっていない。そこで本研究ではミャンマーの5つの森林タイプおよび全土 としての閾値の最適値を検討している。精度検証に供する標本として層化無作為抽出によって合計 1600点を選定し、各点毎に70m×70mの領域においてGoogle EarthやBing Mapsなどの複数の画像 情報を用いて森林・非森林の目視判読を行っている。その結果、全体精度が最も高くなるときの樹 冠疎密度の閾値は森林タイプによって異なること、その閾値は、熱帯雨林で80%、熱帯混交落葉林 などそれ以外の4つの森林タイプでは10~40%の範囲にあることを明らかにしている。全ての森林 タイプを含んだ全土を対象にした時には閾値が 40%のときに高精度になることを明らかにしてお り、全土を対象とした以下の解析では、この閾値を採用している。

次に、ミャンマーの全土を対象として、2006年~2017年までの12年間の森林減少地図を作成し、

PFEにおける森林減少の削減効果を PFE以外の林地(non-PFE)と比較している。また、PFE を構 成しているRF、PAおよびPublic Protected Forest(PPF: 地域消費のための生産林)についてもnon-PFE との比較を行っている。その際、PFEなどの土地利用ゾーンの非ランダムな配置を考慮して、標高、

傾斜、人口密度および道路・河川・鉄道・都市までの距離を交絡因子とした傾向スコアマッチング により交絡の影響を除外している。その結果、12 年間の森林減少率は non-PFE と比較して PFE の 方が 3.36%低く、同様に、PA、RF、PPF の森林減少率は、non-PFE と比較してそれぞれ、5.42%、

3.63%、3.42%低いことが明らかになり、土地利用ゾーニングによって森林減少率の削減効果がみら

れると結論づけている。しかしながら、森林減少率を12年間の時系列でみると、PAではほぼ一定

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で推移していたが、RF および PPF の生産林では増加傾向にあり、生産林での森林減少対策が急務 であることを指摘している。

さらに、ミャンマー全土における 12 年間の森林減少地図を利用して、森林減少が PFE および

non-PFEのどのような場所で生じやすいかについて検討している。PFEと non-PFEそれぞれについ

て、2005年に森林であったピクセルの内、1%のサンプリング強度でランダム抽出した約192万点 と約321万点を対象に、12年間の森林減少の有無を応答変数としたロジステック回帰モデルを構築 している。使用した説明変数は標高、傾斜、都市・村・道路・河川・国境・PFE境界までの距離お よび土壌型である。その結果、PFE内では、標高が低く傾斜が緩やかで都市・村・道路・国境に近 いほど、そして、人口密度が高く河川からの距離が遠いほど、また、農地に適した土壌において森 林減少確率が高いことを明らかにしている。non-PFEでもPFE での結果と同様の傾向が得られたが、

non-PFE で特異的な結果として、PFE 境界までの距離が有意な変数として選択され、PFE 境界から

離れるほど森林減少確率が大きいことを明らかにしている。この結果から、PFE内での森林官によ るパトロールなどの森林保全活動が影響して、non-PFE においてもPFE境界に近いほど森林減少が 抑制されていると考察している。一方で、PFE、non-PFE ともに国境に近いほど森林減少確率は高 い結果となり、保安上、森林官による活動が制限される国境付近での森林減少対策は今後とも課題 となることを指摘している。

以上、要するに本研究は、一国全土のスケールで解析し、土地利用ゾーニングによる森林減少の 削減効果と地理的傾向を初めて明らかにしたものであり、森林計画学ならびに森林政策学の発展に 寄与する価値ある業績と認める。よって、本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有するもの と認める。

参照

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