九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
導電性固体酸化物を用いた医療用N_2Oセンサに関す る基礎的研究
金沢, 英一
九州大学総合理工学研究科物質理工学専攻
https://doi.org/10.11501/3180458
出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
導電性固体酸化物を用いた医療用 N20センサに関する基礎的研究
平成13年1月
金沢 英一
第1章 序論
1.1 亜酸化窒素(N20)に関する諸問題
1.2 N20の性質
1.2.1 分子構造、 電子状態およびその他の性質
1.2.2 触媒作用による分解反応
1.2.3 分解反応における半導体の型と触媒活性との関係
1.3 地球環境に対するN20の影響
1.3.1 地球温暖化およびオゾン層破壊
1.3.2 温暖化防止策の現状
1.4 亜酸化窒素発生源の現状
1.4.1 生物的発生
1.4.2 医療分野からの発生
1.4.3 燃焼プロセスからの発生
1.4.4 自動車排ガスからの発生
1.5 麻酔薬が生命体に及ぼす影響(手術室内麻酔ガス汚染)
1.5.1 過去の報告
1.5.2 現在の基準
1.6 半導体ガスセンサ
1.6.1 半導体ガスセンサの分類と特徴
1.6.2 ガス検知機構
1.6.3 表面修飾によるセンサ特性の改善
1.7 国体電解質ガスセンサ
1.7.1 固体電解質センサの分類と特徴
1.7.2 混成電位の概念および混成電位型ガスセンサ
1.8 本研究の目的
参考文献
目 次
今L 43 弓コ
4 5
fo 勺I 00 00
9 9
nu t- 今,h
・・・A唱EEA--EA
A『
ζJ /0
・EEム4EEA唱a-A
第2章 N20検知のための金属酸化物半導体の探索
2.1 緒言
2.2
実験
2.2.1 金属酸化物試料の調製
2.2.2 焼結体型センサ素子の作製
2.2.3 センサ素子の応答・回復特性の測定
22
今ノM A『
A『
ウM 内,h 今ん
2.3 単独酸化物素子のN20応答特性
2.3.1 In203単独素子
2.3.2 Sn02単独素子
2.3.3 W03単独素子およびZnO単独素子
2.3.4 P型酸化物(CuO, C0304, Cr203)単独素子
2.3.5 その他の金属酸化物単独素子
2.4 本章のまとめ 参考文献
ζJ fo oo ny nU 唱ー
ウh今,,M
今ん つM 今3 43
第3章 Sn02への第二成分添加によるN20検知特性の改善
3.1 緒言
3.2 実験
3.2.1 貴金属担持試料の調製
3.2.2 金属酸化物添加試料の調製
3.2.3 センサ素子の作製および特性評価
3.3 貴金属によるN20検知特性の改善
3.3.1 貴金属担持によるセンサ特性の検討
3.3.2 貴金属担持Sn02素子
3.4 第二成分金属酸化物によるN20検知特性の改善
3.4.1 金属酸化物添加によるセンサ特性の検討
3.4.2 Ce02, C0304, Mn203, NiO添加系
3.4.3 CuO, Fe203, Pr6011 添加系
3.4.4 Bi203, PbO, Nd203添加系
3.4.5 SrO, CaO, Sm203添加系
3.4.6 Li20, Na20, K20, La203, Gd203添加系
3.4.7 MgO, BaO, ZnO添加系
3.5 本章のまとめ 参考文献
34
5 5 6 4『】
司、d 司、u
36 36
oo oo nu ti 今ム 刈斗 ζJ 勺I 弓コ 弓3 A『
AHV A『
A品T A斗 A『
第4章 半導体センサにおけるN20検知機構解明のための検討
4.1 緒言
4.2 実験
4.2.1 金属酸化物試料の調製
4.2.2 薄膜型センサ素子の作製
4.2.3 水蒸気存在下でのセンサ素子の応答・ 回復特性の測定
4.2.4 センサ材料のN20分解活性の測定
50
nu ハu ti -
声、d ζJ ζJ ζJ
4.3 Sn02焼成温度の検討
4.4 第二成分金属酸化物の最適添加量の検討
4.4.1 Bi203添加量依存性
4.4.2 PbO添加量依存性
4.4.3 SrO添加量依存性
4.5 Sn02薄膜型素子によるN20応答特性の検討
4.6 Sn02系焼結体型素子のセンサ特性に及ぼす水蒸気の影響
4.7 センサ材料のN20分解活性
4.7.1 乾燥雰囲気下でのN20分解活性
4.7.2 水蒸気存在下でのN20分解活性
4.8 N20検知機構に関する考察
4.9 本章のまとめ 参考文献
51
司、u d斗 AUT ζJ ζU 声、J ζJ 戸、d 戸、u ζJ
oo ny ハU 1i
,、u
《J ぷU ぷU
第5章 混成電位型センサによるN20検知特性の検討
5.1 緒言
5.2
実験
5.2.1 単独金属酸化物試料の調製
5.2.2 センサ素子の作製方法
5.2.3 センサ素子の応答特性、 分極曲線の測定
5.3 単独酸化物電極を用いた素子のN20応答特性
5.3.1 集電体の検討
5.3.2 P型およびn型酸化物電極を用いた素子のN20応答特性
5.3.3 Sn02電極を用いた素子のN20検知特性
5.4 第二成分を添加した酸化物電極によるN20検知特性の改善
5.5 N20応答機構の解明
5.6 本章のまとめ 参考文献
64
A品T ζJ ζJ ぷU ぷU KU
4u fO 勺f ny 今ノ釘 弓3 ぷU ぷU ぷU ぷU 勺/
勺I
第6章 総括
76第1章 序論
1.1 亜酸化窒素(N20)に関する諸問題
近年、 地球的規模での環境破壊がきわめて重要な問題となっている。 すなわち、 フ ロンガスなどによるオゾン層の 破壊、 二酸化炭素などによる地球温暖化、 窒素酸化物 などによる酸性雨がもたらす自然破壊(特に森林の衰退)などである。 これらの 環境 問題は、 すでに我々の生活を脅かし始めているが、 これらは人口増大や経済発展の追 求など人為的要素が主因であるだけに、 限られた地域や国境を越えて地球的規模で解 決しなければならない重要な課題である。 実際、 フロンガスについては規制・削減案 が国際的に実行に移され、 二酸化炭素についても現在対策が検討されている。
オゾン層破壊や地球温暖化をもたらすガスに対する対策が進む中で、 余剰ガスとし て大気中に放出されている亜酸化窒素(N20)はきわめて安定な性質を持ち、少なくと も低濃度では人体に対しでも殆ど無害なため、これまで殆ど無視されてきた。しかし、
ここ十年ほど主に地球環境学者の問で大気中の亜酸化窒素に関する研究が進めらた結 果、N20ガスは地球温暖化に寄与する温室効果ガスであるとともに、 オゾン層破壊の 原因物質1,2) であることがわかってきた。
N20は主に微生物活動と産業活動により発生し、毎年大気中に蓄積されるN20量は 最大3,,-4Mt/年程度と推定されている3)。 微生物の活動と関連するN20発生源は自然、
農業・家畜、排水・産業物処理等に分類することができ、 産業活動と関連するN20発 生源は化石燃料、 汚泥等の燃焼、 アジピン酸製造、 硝酸製造等の化学工業に分類する
ことができる。
地球環境に及ぼすN20の影響について、これまでは一部の 研究者によりその重要性 が指摘されていたが、1997年12月の温暖化防止京都会議(COP3 )の採択結果が公表さ れるまで国際的には余り注目されなかった。 新井らは、 気象庁が岩手県綾里観測セン ターで観測した1990年1月1日から1993 年12月31日までの4年間のN20データを検 討し、この間のN20年間上昇率が一般に知られている0.2",0.30/0より数倍程度大きいこ とを指摘し4,5)、 病院からの麻酔用笑気ガス(N20)の排出、 自動車排ガスに含まれる N20が有力な発生源であることを指摘した6,7)。 現在、N20の種々の発生源からの放出 を抑制することはきわめて困難であるが、 大気中への N20放出の防止対策としては、
N20分解除去用の高性能触媒8・lりが注目されている。 さらに最近、 麻酔用笑気ガスの 手術室空気汚染により、手術スタッフが慢性的な神経疾患や肝腎疾患などの健康障害 あるいは自然流産を引き起こす可能性が高いことがわかってきた。 その ため、手術室 内および手術室から排出されるN20濃度の監視システムの開発が強く望まれている。
本章では、N20発生源、N20がも たらす環境および健康への影響などについて現状 を把握するとともに、N20センサ開発のために用いた半導体ガスセンサおよび固体電 解質ガスセンサの特 性について概観し、 本研究の目的を最後にまとめた。
1.2 N20 の性質
1.2.1 分子構造、 電子状態およびその他の性質
一酸化二窒素(N20)は無色の気体で、 高濃度ではやや甘い味と甘い匂いがする。 こ れは長い間医療および歯科の治療の際に麻酔剤として用いられてきた。 空気中に混合 した少量のN20を吸入すると一種の興奮状態を引き起こす。 このため、このガスは笑 気という名が付けられた。
N20分子は中央のNに正電荷 を帯び、端のNおよびOは電子分布が大きく負電荷に なっている。特に0原子の負電荷
が大きい。反応に関係、の深い最高 NO
被占軌道、最低空軌道の分布とも
1.1506
N 0
N02
V34 3
\
N20
1.1282 1.1842
N一一一一一一N .一一一一一0
に端のNに大きいので、 共有(配 位)結合はN原子でおこると考え られる。 通常吸着種はM-N=N=O である。高原子価のカチオンとの イオン結合では酸素側で結
図1.1 窒素酸化物の分子構造
合するM+-O--N三N の場合 もあり得るが詳しい研究例 は少ない。 N20 分子の N-N 結合はN-O結合よりも強く N - N 結 合 は切れにくい。
N20 およびそれ以外の窒素 酸化物の分子構造を図1.1お よび性質を表1.1に示した。
これよりN20は他の窒素酸 化物と比較して非常に安定 であることがわかり、 また 吸着性が低く水に比較的溶 解しやすい性質であること がわかる。
表1.1 各種窒素酸化物の性質
分子量
融点(OC) 沸点CC)
密度(gll)
OOc, 760 mmHg 比重
(測定温度) 常温常圧の状態 色
反応性 毒性 吸着性
水に対する溶解度 (cm3(STP) / 100g)
NO Nitric oxide
30.01 -163.6 -151.7 1.3204
1.27 (-1500C)
気体 無色 中位 有毒 吸着する
7.34
N02 Nitrogen dioxide
N20 Nitrous oxide
46.01 44.02
-9.3 -90.8
21.3 ・88.5
1.977
1.448 (200C)
気体 気体
赤褐色 無色 高い 非常に安定
猛毒 a穴z吹 �主苧Z
非や常に吸着 吸着しにくい し すい
水と反応して 130.52
HON02を生成
1.2.2 触媒作用による分解反応
触媒反応は種々の素過程から成り、 そのどれが律速的であるかで半導体の寄与も異 なる。 電子や正孔が関与する段階が律速段階となるとき、 触媒の電子濃度や正孔濃度 が反応速度に影響する。触媒活性に対する半導体の電子構造の効果を調べるには、 (1) 半導体の電子的性質を系統的に変えて、 ある反応の触媒活性を調べる、(2)ある半導体 触媒について一連の異なる触媒反応の活性を比較する、(3)ある反応の触媒活性を広い 範囲の触媒について比較検討するなどの方法がある。実際にはCO の酸化反応など、数 多くの研究があるが、 その結果は矛盾するものが多く明らかではない。 これは、 触媒 と吸着種間の電子移行は主としてchemical な因子により決まり、 フェルミ準位の変化 などがきくのはむしろ特殊で、あり、広範な一般性は持たないためである。こ こでは、半 導体電子理論から酸化物上でのN20 分解反応について述べる。
N20 は酸化物触媒上において次式のようなN2 と02への分解反応が進行すると考え られる12,13)。また、 このN20 分解反応は高温であるほど進行し易く、 逆に低温の状態 では高温に比べて進行しにくい。
2N20(g)→2N2(g) + 02(g) (1.1)
この反応は次のような素過程から成り立っている。
N20(g) + e-→N20-(ad) (1.2) N20一(ad)→N2(g)+ O-(ad)
20一<ad)→02(g)+ 2e-
(1.3) (1.4)
吸着酸素の脱離は、0ーの被覆率が大きいときは次式のように起こると考えられている。
O-(ad) + N20(g)→N2(g) + 02(g) + e- (1.5)
式(1.3)はN20解離吸着反応である。また、 式(1.4), (1.5)の吸着脱離反応については 高温領域では式(1.4)による機構が優勢であり、 逆に低温領域では式(1.5)による機構 が優勢であるとする研究結果がある14)。
1.2.3 分解反応における半導体の型と触媒活性との関係
反応中n 型酸化物触媒では導電率(伝導電子)の減少がみれれ、 またp型酸化物触 媒では導電率(正孔)の増加がみられ、 これはO-(ad) などの負電荷吸着種を経由する 上述の式と合致する。Scmid およびKellerl5) は種々の半導体の触媒活性を比較した。活 性の順列は次のようであった。
CoO > ( CuO) > NiO > CeO > CaO > A1203 > ZnO > Fe203
また、 Hauffe ら16)、 Schwabら17) は、 次の結果を得た。
CuO > MgO > A1203 > ZnO > CdO > Ti02 > Fe203
「3
その結果、 触媒活性が半導体の型に依存することが1 つの特徴で、(1) 3500C以下で も活性な酸化物(CuO,CoO, NiOなどのp型酸化物 )、(2) 5500C以上で活性を示す酸化 物(ZnO,CdO, Ti 02, Fe203などのn型酸化物)、(3)両者の中間の活性を示す酸化物(MgOヲ CaO, A1203 などの絶縁体 ) の3群にわけることができ18)、p型はn型よりも高活性であ る 。 p型のNiOにLi+を添加してp型性を増せば活性はさらに増大 する。 n型酸化物の 活性が小さい理由の1っとしては、 n型上 での O-(ad) 生成が欠損型吸着であるこ とが あげられる。 すなわち、 この場合必要な電荷移行は、 深い位置にあるドナーとの間で 行われるため、付随して形成される空間電荷障壁は電荷移行とともに急速に大きくな り、 式 (1.2),(1.3)によって得られるO-(ad)の生成量も小さく、 このこ とがN20分解活 性を小さくするとみられる。 従って、n型半導体のときはN20は伝導帯から電子を取 るので、 高温でなれば活性を示さないと報告されている18)0 P型では必要な電子は価 電子帯から供給されるため低温でも活性を示し、O-(ad)濃度は大きい。Rog inskyl9) によ ればp型半導体上のN20分解で、はN20が充満帯の電子を取り出して正孔をつくり、次 に窒素が酸素から離れて気相にとび出すとともに酸素は吸着して残る。 次に、 酸素は 正孔と結合して電子を失うとともに脱離して気相に去ると説明している。 一方、 n型 半導体上のN20分解で、はN20が伝導体から電子を取り出してN20ーをつくり、次に、窒 素が酸素から離れて気相に とび出すとともに酸素は吸着して残る。 次に、酸素は電子 を失うとともに脱離して気相に去ると説明している。 従って、 各々の酸化物半導体が 示す触媒活性がN20分解反応に大きく影響を及ぼすものと考えられる。 すなわち、 高 活性な酸化物はN20の分解反応を進行させ、低活性な酸化物では逆に分解反応が進行 しにくい。 この様なことから、 抵抗値変化を信号として取り出す半導体センサに用い る酸化物半導体としては、分解反応過程で起こる式(1.3)で示される負電荷吸着酸素の 生成を促進させるような適度な触媒活性を示す材料が有効であると考えられる。
1.3地球環境に対するN20の影響 1.3.1地球温暖化およびオゾン層破壊
地球温暖化ガス としてはC02 以外にフロン、CH4、
N20等微量ガスの寄与が注目されており、地球温暖化 に対する寄与率は図1.2 に示すようにC02 が約65
%1,2,8)、 フロン等微量ガスの寄与率が約35%と推定さ れている。 N20は昔から大気中に含まれる微量成分の 一つであり20,21)、N20の大気中濃度は現在より150年
前から3000年前の長期にわたって285 i: 1 ppbで安定 図1.2 温室効果ガスの温暖化に 対する寄与(1997'"'-'98年)
していたことが明らかにされている22)。 しかし、1940年頃から近代工業の進展と共に 人為発生源からの発生が増加し、大気中のN20濃度は急激に増加傾向が強まっている。
最近100年間で年率約0.8 ppb、すなわち約 0.3%/年の割合で着実に増加しており、1988 年には 307 ppbに達した21,22)。 現在、 N20の大気中の濃度は約310 ppbであり、 このま ま増加し続ければ、 2100年には大気中濃度が約480 ppbに達すると推測されている。
N20の環境に対する影響は主にオゾン層破壊と温室効果の2 つであり、 このうちオ ゾンの分解は、次のような連鎖反応で表されるようにN20が成層圏で励起酸素原子と 反応して一酸化窒素(NO)を生成し、 これがオゾン( 03)と反応することによって起 こ
る。
N20 + hv→N2 + 0 (1.6) N20+0→2NO (1.7) NO+03→N02 + 02 (1.8) N02+0→NO + 02 (1.9)
ただし、 この反応はフロンガスによるオゾン分解反応よりも遅く、従って、 オゾン層 破壊に関してはフロンガスなどの方がはるかに重要である1,2,23)。 一方、 温室効果につ いては、 主要原因ガスである二酸化炭素(C02、 大気中濃度約340 ppm)、 あるし、はCH4 に比べて濃度は低いが、 単位濃度に対しての N20の温室効果(温暖化係数)はC02の 約300倍強し1と言われている20,23)。 そのため、 地球温度上昇に及ぼす影響度合いは温 室効果ガス全体の約10% (文献によりか15%)と評価されている。
また、 N20の大きな特徴は、 大気中で非常に安定なことである。 大気中に放出され たN20は主に紫外線による光分解によって消失し、一部は上記のように励起酸素原子 と反応してNOを生成することによって消失するが、これらの反応はゆっくりであり、
このため N20の大気中での寿命は約150年と推定されている20,21,23)。 これは他の環境 汚染ガスと比べても圧倒的に長い。従って、今現在排出されているN20は22世紀半ば まで大気中に蓄積されることになる。
1.3.2 温暖化防止策の現状
産業革命以後の人類の経済活動は、石炭や石油などを燃やして得られるエネルギー を大量に消費 することによって発展 してきた。 これに伴ってC02を主とする温室効果 ガスの排出が増加し、一方、 人口増加などにより森林が減少してC02消失が低下して いる。 気候変動に関する政府間パネノレ(IPCC)が 1995年に出した第二次報告書によれ ば、現在のエネルギー消費の伸び、率のまま対策をとらずにいれば、21世紀半ばには大 気中のC02濃度は産業革命以前の 2倍の 550 ppmに達し、 気温は現在よりも20C上昇
戸、d
する24)。
しかしながら、C02の封ド出 は経済活動と密接に関係、し ているだけに、その削減は困 難で、経済を停滞させる危険 性もある。 国際的にみても、
省エネの 進 ん で い るヨ ー ロッパ諸国、高エネルギー消 費が浸透し きっているため C02排出権を買ってでもエ ネルギーを 消費し 続けよう とするアメリカ、経済成長へ
表1.2 日本および世界のN20の年間排出量
日本(103t/yr) 世界(103 tJyr) 人為発生源
工業用石油燃焼 71.4 2880
自動車などの石油燃焼 17.9 300
廃棄物焼却 2.18 - 5.73
バイオマス燃焼 0.03 - 0.07 1300 - 2700
施肥土壌 0.6 - 3.3 5030
開墾土壌 200・600
人為総排出量 90 - 98 9700 - 11300
自然発生源
自然土壌 13.8 - 27.5 2980 - 6910
水域 1914 - 2076
自然総排出量 16 - 30 6800 - 11000
総計 106 - 128 16500 - 22500
の影響を強く恐れる発展途上国、C02の発生源で、ある石油の輸出に頼る産油国など、各 国の思惑が入り乱れ、今後の C02削減目標の設定もきわめて難航しているのが現状で ある25)。
このように C02排出抑制の見通しが決して甘くない中、 N20に関して言うと、 N20 の発生源は表1.2に示す通り、自然発生源と人為発生源で その年間推定発生量は世界的 には大体同程度である21,26)。 大気中 N20増加の主原因は人為発生源であるが、 このう ち工業あるいは自動車などの石油燃焼によるものの削減にはC02と同様の問題が絡ん でくる。 ある試算によれば27)、 現在のこの様な人為的 N20発生が続けば、 2100 年には N20濃度は 484 ppbに達し、 N20だけで地表温度は 0.370C 上昇する。 従って、 温度上 昇の上限の0.lOC110年を達成するには、N20の人為的排出を2050年までに現在より80%
削減する必要がある。
このように、 N20も地球環境に重大な影響を与えることが知られてきており、 環境 保全の進んだヨーロッパ諸国で、は、例えばオランダのように窒素化学肥料の使用削減 により、 ここからの N20発生を減少させる対策をすでに実施している国もある28)。 た だ、 N20には C02やフロンガス、 NOx、 COといった他の大気汚染物質と異なり、 一般 的な規制策は未だ打ち出されていなし、。
1.4亜酸化窒素発生源の現状 1.4.1生物的発生20,21,29)
生物体を構成している C, H, N, P, S等の元素は自然界では有機態、 無機態の相互変 化をしながら循環している。 この循環には微生物が重要な役割を果たしている。図1.3
は自然界の窒素循環における 微生物 の役割を模式的に示した30)。 窒素固 定菌により固定された有機態Nは 従 属栄養微生物によってNH3, NH4+に 無機化される。 NH3および NH4+は 硝化菌によって最終的に N03ーに酸 化され(硝化過程) 、N03-は 脱窒菌に よってN2に還元される (脱窒過程)。
これらの窒素循環過程においてN20 は硝化反応と脱窒反応の両方から発 生し、 その発生を抑制する ためには 硝化及び脱窒反応条件を適切に制御 する必要がある。
(脱窒)
自 I N02- N20
引 |
亜硝酸生成菌かーメ |
NH3.
↑
NH4+(分解、 アンモニア化)
仁コ:関与する生物 ( ) :作用や条件 図1.3 自然界における窒素の生物的循環
森林、草原、 農地および、水域の沿岸部等にはこれらの微生物が広く増殖している。森 林の伐採による土壌環境の変化、 酸性雨による土壌の酸性化、 農耕における 窒素肥料 の過剰 使用などは 、 結果として硝化菌及び脱窒菌の反応過程に影響を及ぼし、 N20の 発生量が増加する。例えば、陽らによれば硫酸アンモニアの施肥から20日後、 N03-濃 度が1.8倍になったと報告されており31) 、 窒素肥料の施肥とN20発生との因果関係、が 伺われる。 稲村らによれば生活排水の生物学処理において、 窒素負荷、 処理液のpH,
N03-濃度等がN20の発生に影響を及ぼし、 N20は 硝化過程で発生しやすく、 その量 は脱窒過程のそれと比較して約4倍に達する と報告している 32,33)。
1.4.2医療分野からの発生
外科手術時の全身麻酔に使うガスの主成分は笑気ガス(N20)である。 笑気ガスは現 在日本で年間約1500トン生産され、 このうち麻酔手術に1200�1300トンが使われてい ると推定されている。これは日本におけるN20年間排出量の約2%に相当しており、日 本でのほぼすべての農業活動による排出量に匹敵している。
アメリカ麻酔学会の1974年の調査によれば、余剰N20ガスの慢性吸入が手術勤務者 に様々な影響を与えることが報告されており、 日本麻酔学会もアメリカ職業安全衛生 局の基準に習ってその許容限界値はN20で、25ppmとしている。実際の外科手術室から は、 日本の許容限界以下では ある が、 高濃度のN20が検出されており、 その従事者に 対する 影響も懸念、されている。
- 7 -
1.4.3燃焼プロセスからの発生
化石燃料、 汚泥等の燃焼場において、燃焼中のN分は反応初期に急速に NH3あるい はHCNとして放出され、 その一部がN20へ変換される。 その際、NH3あるいは HCN からのN20への転換率は共存成分で、ある H2,COラHC,02等の成分の 濃度分布に 影響さ れるほか、 反応温度などにも強く影響される。 石炭燃焼の場合は、 Char中の窒素分か らもN20が生成される。 気相反応によるN20の 生成・消滅と関連する主要な反応とし て次の反応がある。
NH2+NO→N20 + H2 (1.10) NCO+NO→N20 + CO (1.11)
国内で測定された商用の燃焼ボイラー出口で、のN20平均濃度は大気中のN20濃度に 近い0.3ppm であり、 燃料別では石炭: 0.5 ppm (0.1,...,0.8 ppm)、 重油:0.3 ppm (0.1,...,0.8 ppm)、 LNG : 0.1 ppln (< 0.2 ppm) であり7)、 燃焼温度が高い燃焼場からN20が生成し
にくいことを示唆している。
燃焼と関連するN20発生源として注目されているのは、窒素含有量が高く燃焼温度 が低い石炭の流動層燃焼や汚泥の焼却処理場からのN20生成である。石炭の流動層燃 焼は 、高度なNOx制御と炉内脱硫に 必要な石炭石の利用効率の向上が可能なことから 一般産業用ボイラーに急速に普及しているが、脱硫が最大になる800,..,9000Cで運転し ていることからN20が生成されやすしゅ。 従って、 流動層燃焼において窒素酸化物に 伴う大気汚染を防止するために は、従来のようにNOx発生量の低減ばかりでなく、NOx
とN20両者の同時抑制技術を開発する必要がある。
1.4.4自動車排ガスからの発生
ガソリンエンジンを理論空燃比付近で運転した場合、排ガス中に はNOx ,CO, HC, H2 成分と 02が含まれている。 この排ガスを触媒に 流すとNOx 還元と CO、 HC酸化によ り三つの有害成分を一つの触媒で処理ができ、 この触媒を三元触媒と言う。三元触媒
はPt,Pd, Rh, Ru等が単独または組み合わされて用いられている。
ガソリンエンジンにおける燃焼過程で、のN20生成機構は化石燃料の固定発生源と同 様に思われるが、エンジン燃焼室内での 高温燃焼では生成されたN20はすぐに 分解さ れ、触媒を持たないガソリンエンジンの排気に 含まれるN20はわずかであり34)、三元 触媒車からの N20はほとんど触媒反応によって生成される。
三元触媒車からのN20生成機構はまだ不明なところが多いが、NOの COによる還元 反応からの N20生成によって説明されている。
2NO+ CO→N20 + C02 (1.12)
M. Prigentらは自動車排ガスを模擬したCOとNO混合ガスを三元触媒に流し、触媒
温度によるN20生成傾向を調べ、N20 が生成しやすい温度領域が存在することを示し た35)。 また、Bauerleらは酸素存在下におけるCOとNOとの反応に関して種々の銅ベー スと貴金属触媒のNO低減を調べ、 全ての触媒が 4000C 以下の温度で、N20 を生成する と報告している36)。 小池らは触媒及び模擬 ガスの実験結果から、 各自動車から放出す るN20量にはNOの還元によるN20生成以外に、次式のNH3の生成および酸化による N20生成が 存在することを報告している37)。
2NO + 5H2→2NH3+2H20 (1.13) 8NO + 5CH4 + 2H20→8NH3 + 5C02 (1.14) 4NH3 + 502→4NO + 6H20 (1.15) 4NH3 + 402→2N20 + 6H20 (1.16)
1.5 麻酔薬が生命体に及ぼす影響(手術室内麻酔ガス汚染) 1.5.1過去の報告
手術室の麻酔ガス汚染と手術室勤務者の健康問題が研究報告38引)として取り上げら れたのは1960年以降である。自然流産の発生率が ナース麻酔医と看護婦に高いことが 報告され39)、 更に妊娠中に働いたナース麻酔医に奇形児の発生率が 高いことが 発表さ れた57)。 これらの報告は小規模な調査研究で、あったため、 引き続いて大規模な調査が 行われて、女性麻酔科医が妊娠中に勤務すると自然流産が対照群より1.5,..,2倍に発生す る危険性があり、 先天奇形の発生率が 2 倍であることが報告された58)。 また、Buringら 41) は5つの報告 をまとめて自然流産と先天奇形の発生率の相対危険値を発表した。 そ れによると、 自然流産は麻酔ガス曝露環境従事者のほうが非曝露環境従事者に比べて 約1.3 倍有意に発生する。
さらに、麻酔ガス吸入が関係すると思われる健康障害は、出産異常だけではなく、麻 酔ガス曝露環境従事者にリンパ系や網内系組織の悪性疾患による死亡率が高いとか自 殺率が高いという報告 59) や慢性の神経疾患や肝腎疾患が多いという報告 60,61) にも現 れている。
1.5.2現在の基準
麻酔ガス汚染による健康障害が 科学的に証明されたわけで、はないが 過去のデータ から麻酔余剰ガスによる健康被害を無視するわけにはし、かないため、 アメリカの国立 産業安全保険研究所(NIOSH)は手術室のガス汚染の環境被爆基準を発表した。亜酸化 窒素を25ppm以下、 ハロゲン化麻酔薬を単独で、2ppm、 亜酸化窒素と併用した場合に
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0.5 ppm以下に抑えるように勧告を出した。それにより、余剰ガス排池装置は全ての麻 酔器で装着を義務づけられるようになった。 現在では、 手術室環境はほぼ亜酸化窒素 を25ppm以下、 ハロゲン化麻酔薬を 0.1ppm以下に減少させることが可能で、ある。 し かし、麻酔器の余剰ガス排准装置で、はマスク麻酔時や蛇管を気管チューブからはずし た時などに室内が一時的に高濃度に汚染されることまでは防げない。 その結果、 麻酔 科医や看護婦は知らず知らずのうちに高濃度の麻酔ガスを吸わされ、健康に対する被 害を受けているかもしれない。
1.6半導体ガスセンサ
1.6.1半導体ガスセンサの分類と特徴
ガスセンサは、 気体中 (多くは大気中)の特定ガスの成分濃度あるいは組成を検知 し、 それによってもたらされる物理的、 化学的効果を電気信号あるいは光信号に変換 して、 記録、 モニ夕、 警報、 制御、 処理などの電気回路部に送り込むデ、バイスである 62,63)。 そのためには、特定ガスを感度よくかっ選択的に認識する機能(ガス認識機能)
とそれを効率よく信号に変換する機能 (信号発生機能)が必要であり、 ガス検出素子 はこれら両機能が結合し、 調和して初めてセンサ機能を発揮する。セラミックスを用 いたガス検出素子には、 表1.3に示すように種々のタイプのものがある。ガス識別は、
通常、ガスが吸着あるいは反応するときの吸着力や反応性の違いといった化学的な相 互作用を利用して間接的に行われる63,64)。半導体ガスセンサは、 ガス雰囲気の変化に より半導体の導電率などが変化することを利用してガスを検知する。ガスの認識はガ スの吸着あるいは反応によって行われ、信号発生はセンサ素子の抵抗変化などにより 行われる。表1.4に示すように半導体ガスセンサは、表面制御型とバルク制御型に大別
表1.3 主な固体ガスセンサ
種類 方式 代表的な素子 対象ガス
電気抵抗式 Sn02 (焼結体) 可燃性ガス、 03 I 半導体センサ ダイオード式 Pd-Ti02 H2
トランジスタ式 Pd・MISFET H2, C2H4 電気抵抗式 MgCロ04・Ti02(焼結体) 湿度
絶縁体センサ 電気容量式 A1203 (陽極酸化膜) 湿度
接触燃焼式 白金線を埋めた触媒ビーズ 可燃性ガス 濃淡分極式 Ptlß・AI2031 Pt S02 + S03 国体電解質センサ 混成電位式 Pt ISb205onH201 Pt H2.CO
限界電流式 Pt IYSZI Pt拡散層 02
圧電体センサ 共振周波数式 水品振動子+吸着媒 水蒸気、 NH3 表面弾性波式 ZnO+吸着媒 H2S、 スチレン 光ファイバセンサ 光吸収式 光導波路+ガス感応膜 H2
蛍光発光(消光)式 光ファイバ+ガス感応膜 02, C02
表1.4 半導体ガスセンサの諸方式
型 注目する物性 センサ材料 作動温度 対象ガス
表面制御型 電気抵抗 Sn02, Pd-Sn02, ZnO, W03 室温-4500C 可燃性ガス、 NOx
(表と面での吸着 表面電位 Ag20 室温 メルカプタン
反応) 整流特性 Pd-Ti02, Pt-Ti02, Pd-CdS 室温-2000C H2, CO,エタノール
しきい値電圧 Pd-MOSFET 1500C H2, H2S, NH3 バルク制御型
電気抵抗 Lal ・xSrxCo03,Ti02, 300-4500C 可燃性ガス、エタノーノレ、
(格子欠陥) CoO-MgO, Sn02 7000C以上 02
される。 表面制御型は、 ガス吸着などによる表面導電率や仕事関数などの変化を利用 するものであるが、このうち導電率変化を利用するものが清山ら65)の研究やその他の 初期のいくつかの開拓的な研究66-68)以来最もよく研究されている。この方式のものに はSn02やZnOなどのn型酸化物半導体が用いられ、家庭用ガス漏れ警報器に代表され る各種可燃性ガス検知用センサとして実用化され、 その有用性が証明されている。 一 方、 バルク制御型は、 高温で作動させバルクの導電率変化を利用するもので、 自動車 空燃比制御や燃焼制御のための酸素センサとして研究されている69・72)。 他に、 導電率 変化を測定しない方式としてダイオード式7 3,74)やトランジスタ式75,7 6)が挙げられる。
これらの諸方式のうち、 表面導電率変化を応答として取り出す方式のものは、 作動 温度が比較的低いこともあって金属微粒子により増感や選択性の変化を受けやすい。
ここでは、 本研究で主に用いたこの方式の半導体ガスセンサについて以下に述べる。
1.6.2ガス検知機構
表面導電率式半導体ガスセンサの検知 機構については、多くの成書77,78)や総説 (a) 79・83)に詳しく述べられている。本タイプ
のセンサ素子材料には、 Sn02やZnOな (b) どの n型酸化物半導体が主に用いられて
いる。
半導体ガスセンサの導電率変化には半 導体表面への酸素吸着、 被検ガス吸着、
吸着物聞の表面反応などが複雑に関与し ている。半導体表面には種々の表面準位 (格子欠陥や吸着原子に起因するもの) が存在し、それらがアクセプターまたは ドナーとなって半導体と電子をやりとり
電子欠損層 イオン化ドナー
電子蓄積層
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表面からの距離
図1.4 Sn02表面における空間電荷層
(a)電荷分布、(b)伝導帯付近のバンド構造、
(c)伝導帯の電子濃度n(z)
EF:フェルミレベル Vs:表面ポテンシヤノレ
S:吸着種の表面準位 nB:バルクの電子濃度
川町鱒伴脚
- 11 -
する。 例えば図1.484) に示すよ うに 、 酸素がSn02のよう なn 型半導体表面に 化学吸着する とき 、酸素は負に帯電して表面 アク セプターとなり電子を捕 捉する。その 結果、 半導体表面 近傍には正電荷を帯びた空間
電荷層(電子欠損層) が形成さ (a)接触粒界における電位障壁
図1.5 粒界およびネック部における電気伝導
(b)ネック部分のバンド構造
れ、エネルギ一帯は上方に湾曲
する。 逆に 、 電子供与性ガスが吸着すると表面ドナーとなって電子を放出し 、 表面近 傍に電子蓄積層が形成される。これら の空間電荷層の深さ(デ、パイ長さ)は、 数μmに 達する場合もある。 ガスセンサが一般に使用される空気中では、 酸素の負電荷 吸着 が おこっている。 例えばSn02の場合、 α1 (物理吸着酸素、 800C)、 α2 (02一、 1500C )、p (0ーまたは02一、 5200C)、 y(02一、 格子酸素、 6000C以上) の4 種類の表面酸素が存在 する。 ここで括弧内は吸着酸素種とその脱離温度 を表す。 このうち、 センサの使用温 度(通常300,...,5000C) などからPおよびy酸素がガス検知に大きく関与していると考
えられる85)。
n型半導体表面にこ のように酸素が負電荷吸着 した状態では電子欠損層が形成され 表面導電率は低くなっている。 一方 、 これに可燃性ガスが 接触して燃焼反応が起こる と 、 表面吸着酸素が消費され 、 酸素にトラップされていた電子 が 半導体に戻され表面 導電率は大きくなる。 また 、 素子抵抗を考えるにあたっては、 センサ素子の微細構造 の影響も考慮に入れな ければならない。 センサ素子は多く の酸化物結晶子(一次粒子) が集まって構成されており、 おのおの の粒子はネックや粒界 (空間電荷層部分) を介 して連結したり接触したりしている(図1.5)86,87)。粒子表面に形成される 電子欠損層の 深さ (デ、バイ長さ)は半導体酸化物のドナー密度や温度によって決まる半導体固有の ものであり88) 、 Sn02のデ、パイ長さは3nmと報告されている89)。 一次粒子 の粒径がデ パイ長さよりも大きな場合には、ネック部 の導電チャンネノレの大きさや粒界における 電位障壁の高さ が 素子全体 の電気抵抗を支配する ことになる。 従って 、 ネック部や粒 界の数や構造の制御が優れた感度を与えるために重要であると考えられている90)。
1.6.3表面修飾による センサ特性 の改善
センサの感度や選択性は、 表面 の反応性によって も大きく左右される。 表面反応性 の改質は、 種々の表面修飾9ト99) (貴金属 の添加、 金属酸化物の添加、 表面処理、 表面
コーティング)により行われている。修飾 の例 を挙げれば、 Bi203添加Sn02100)や BaO・Y203添加Sn02101)は高いCO感度お よび選択性を示すし、La203添加Sn02102) は高いC2 H50H感度および選択性を示す。
また 、 Zn O添加Sn02103)は1 ppm以下の H2SやCH3SH を検出でき、 非常に高感度 となっている。 これらの添加物はSn02 よ りも塩基性が強く、 Sn02 表面を塩基性に 改質することにより酸性ガスに対する高 選択性を得ていると理解される。 半導体 ガスセンサのガス選択性を完全に制御す ることは困難であるが、 表面修飾によっ てかなり感度や選択性を制御することが できるようになってきている。 表 1.5には 選択性改善のための表面修飾法を大別し、
それぞれの応用例や対象ガス種をまとめ た100-125)。 表面修飾法は添加物使用、 表面 処理、ならびに表面コーティングの3通り に分類される。 表面添加物による修飾は、
貴金属や金属酸化物を感ガス体である酸 化物半導体表面に担持することにより行 われる。その添加方法を表1.6�こ示すが、最 も一般的で簡便な方法は酢酸塩や塩化物 など を酸化物に含浸する方法である。 Pd やPtなどの貴金属の使用例が最も多く、こ の場合の検知対象ガスは、 水素、 メタン、
プロパンのような可燃性ガスが主である が、 Ru添 加 に よ りトリメチルアミン (TMA)といった魚か ら発生するにおい成 分を検知するセンサの研究例112・114)もあ る。
表面処理による修飾は、 完成したセン
司4d唱EEA
表1.5 種々の表面修飾の方法 1. 表面添加物
貴金属添加
センサ 貴金属添加量 対象ガス
Pd-Sn02 0.5wt%
Pt-Sn02 0.5wt% CH4, C3H8
Ag-Sn02 0.5wt% (300 ・ 4000C) Pd・MgO-Sn02 lwt%
Pd-AlSiOx-Sn02 1.5wt% (4000C) CH4
Pt-Sn02 0.05wt%
Pd-Im03・A1203・ lwt% C3H8
Y203・Sn02 (3000C)
Pd-Sn02 0.5wt%
Pt-Sn02 0.5wt% H2
Ag-Sn02 0.5wt% (R.T.- 4000C) Pd-ZnO
Pt-Sb-Sn02 4mol%
Pt・Sn02 lw刊令
Au-Ti4+ -Fe203 5atom% CO
Au-Sb・MgO・Sn02 l atom%
Pd-Sn02 O.4wt%
Pd-Sn02 0.2wt% C2H50H
Pd-Pt-Sb-Sn02 lmol% SiH4
Ru-Ti02 0.5wt% TMA
酸化物添加
センサ 貴金属添加量 対象ガス Bi203・Pd-Sn02 15wt%
BaO-Y203・Sn02 CO
CaO-Sn02 4mol% C2H50H
La203・Sn02 5wt%
ZnO・Sn02 H2S
AIOx-ZnO NH3
Im03・Sn02 10wt% N02
2.表面処理
センサ 表面処理 対象ガス
Pt-Sb-Sn02 ジクロロシラン H2
Pd-Pt・Sb-Sn02 処理
Sn02 疎水性シリカ混合
Sn02 S02処理 H2S
ZmGe04 NH3処理 NH3
Ce-Im03 ((CH3)3Si)20処理 03
Fe203 PH3処理 PH3
3.表面コーティング
センサ
|
対象ガスPd-AI203/附n02
I
CH4 (アルコール無害化)V20シMo03/ZnO Iフロンガス(フロン分解)
サ素子を種々のガス雰囲気に曝して処理し、
センサ素子表面に何らかの表面層を形成させ る方法である。表面層は妨害ガスを除去して 選択性を高める働きを持ったり、表面層自身 が感ガス層となる。
表1.6 貴金属や酸化物の添加方法
l原料粉末(塩化物、 酸化物)の混合、 焼成 2.金属塩含浸法
3.共沈法
4.有機金属化合物溶液の噴霧熱分解
5.物理的付着法(スパッタリング、 真空蒸着)
表面コーティングによる修飾は、センサ素
子表面に触媒層をコーティングし、妨害ガスの除去や不活性ガスの分解を行う方法で ある。この方法はアルコールの妨害のない都市ガスセンサやフロンガスセンサに適用 されている。
1.7固体電解質ガスセンサ126)
1.7.1固体電解質センサの分類と特徴
電荷の担体がイオンである電気導電体をイオン導電体という。水溶性塩の水溶液は よく知られたイオン導電体であり、 電解質である。固体中においてイオンが移動しや すい状態をつくると、イオン導電性が生じる。融点よりもはるかに低い温度において、
イオン導電率が高い固体は固体電解質と呼ばれる。ここで、 固体電解質となり得るの は、(1)伝導電子、 正孔などの電子的なキャリアの濃度が小さいこと、(2)イオン性の 格子欠陥濃度が大きいことを満たすイオン結晶である。固体電解質の中で、 イオン輸 率が0.99よりも大きいものをイオン導電体と定義し、これより小さいイオン輸率を持 つ化合物を混合導電体と呼ぶ。
国体電解質には、液漏れの心配がないこと、 伝導に寄与するイオンが特定のもので
表1.7 固体電解質センサの検知方式による分類
検知方式 使用する固体電解質(導電イオン種) 測定対象 Zr02(+Y203, CaO, MgO)[02・],Bi203・M003[02・],
02 (高温)、 空燃比 Ce02(+Y203, CaO)[02-]
L匂4ls[Ag+], PbC12[Cr], PbBn[B(] I2,C12,Bn 平衡起電力 K2S04・Ag2S04[K+],N但S04・Y2(S04)3[Na+], S02, S03
NASICON[Na +]
K2C03・Ag2A04[K+],Ba(N03)2・AgCi[Ba2+] C02, N02 HU02P04・4H20[H+],SrCeO.9S YbO.OS03 [H+] H2. H20 混成電位
Zr02・CaO[02・] CnHm, CO (高温)
Zr(HP04)2'nH20[H+], LaF3[F] H2, CO (常温) Zr02・Y203[02-],Zr02・Yb203[02・] 02、 空燃比
電解電流 LaF3[F], YF3[F] 02, S02, N02
短絡電流 Sb20S・4H20[H+] H2, CO(常温)
あること、 移動度が小さいので電荷の偏在、 分極を起こさせやすいなど種々の特徴が あり、 電池をはじめ、 ガスセンサ、 イオン濃度センサ、 電気二重層素子など多くのよ
うとが開けつつある。
固体電解質ガスセンサは、被検ガスや溶融金属などに含まれている検出したい化学 成分を反応物質とするような固体電解質電池をつくり、その電池の起電力あるいは取 り出せる電流の大きさから目的とする化学成分の濃度を知ろうというものである。最 も代表的な例がジルコニア酸素センサである。代表的な固体電解質センサを表1.7に示 したが、この中でセンサとして実用化されているのは、 安定化ジルコニアを用いた酸 素センサのみである。
1.7.2混成電位の概念、および混成電位型ガスセンサ127,128)
一対の単純電極系から構成されるガルバニ電池の両端子聞に適当な外部電源を可逆 的に接触して外部電源からの電池の起電力に等しい電圧を加えると、電池の内部を流 れる電流は0となり、 系全体は1つの電気化学的平衡状態を保つ。 この時、 個々の電 極、 溶液界面を通過する電流は0に等しく、 各電極面で進行する電極反応もまた電気 化学的な平衡状態にあるものだと考えられる。 このような条件における電極電位を、
その電極反応に対応する平衡電位としづ。 電極電イ立は、 化学的組成の異なる2相間の 内部電位の差であるから、 その値を実測することはできない。 しかし、 適当な理論考 察を加えることによって、 平衡電位の性質を推論することができる。 系が単純電極で ない場合には、 上記の電流0の条件は特定の電極反応の平衡状態には対応せず、 その 電極面で進行するすべての電極反応に伴う部分電流の総和が0に等しいとし1う条件に 対応する。 このような電極電位は、 混成電位と呼ばれている。
補助相を有する固体電解質センサでは、固体電解質と補助相がイオン伝導により連 結され、 その化学ポテンシヤルの変化を電位として計測する。 この時、 酸素イオン導 電体である安定化ジルコニアとPt電極を用いた02センサは、 良好なネルンスト挙動 を示すが、02を含む被検ガス中に微量の還
元ガスが共存した場合には、 非ネルンスト 的な異常電位を示す。 この異常電位を利用 して、 空気中の微量のガスを検知する方式 のセンサが混成電位型ガスセンサである。
この混成電位検出方式ガスセンサは、 貴金 属を検知電極として用いた場合ガス選択性 が問題となるため、 補助相に酸化物触媒を
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Gir,
Pt I YSZ I Oxi州図1.6 酸化物/YSZ界面におけるH2検知モデ、ル
用いるのが一般的に行われている。
混成電位型固体電解質 ガスセンサの酸化物電 極におけるガス検知モテ、ルは、図1.6のように表 すことができる。例えば、H2を検知する場合、02 との共存下での異常電位はYSZと酸化物との界 面での式(1.17)に示すカソーディックおよび式 (1.18)に示すアノーディックな電気化学的反応に
起因していると考えられる。 これらの 2つの反
応は局部電池を形成し、 いわゆる混成電位を与える。 さらに、 この混成電位 は、 図1.7 に示すようなカソード分極曲線とアノード分極曲線との交点によって決定されること
ιー・田ーーEM Potential 分極曲線の模式図 図1.7
冨ωヒロυ
になる。
(1.17) ( 1.18) 02+4e →202-
H2 + 02-→H20 + 2e-
1.8本研究の目的
亜酸化窒素(N20)は、近年その人為的発生源 の増加により大気中濃度が年々増加し、
N20が及ぼす地球温暖化およびオゾン層破壊といったような地球環境に対する影響が 懸念されている。 このような背景から、 その防止対策に取り組むことが望まれている。
しかしながら産業活動が進展するのに伴い、 年々N20 排出が増加傾向にある以上、 そ の発生源を減少させ大気中への排出量を削減することはかなり困難な問題であるのが 現状である。 そこで、 その対策法として最近で、はN20分解除去用の高性能触媒の開発 が進められている。イヂiJえば、即νZSM・5,即νZnOなどの悶1触媒は比較的低温で、N20分 解(N20→N2+ 1/202)に対して高活性を示すことが報告8・11) されており、 今後、 実用 化が期待されている。
また、 N20 は空気中に混合した少量を吸入すると一種の興奮状態を引き起こす。 こ のため、 このガスは笑気ガスと呼ばれており、 この性質を利用して長年の問手術時の 全身麻酔用ガスとして使用され続けており、現在においても最も広く用いられている。
手術室では手術中に大量 のN20 ガスが使用され、 使用後には後処理されることなく大 気中に放出されている。 一方、 手術室内では前述したように麻酔科医や看護婦が高濃 度のN20を気づかないうちに吸入することにより、 麻酔ガス非曝露従事者と比較して 高い確率で様々な健康障害を引き起こしている可能性 があるというような数多くの報 告例がある38・61)。
従って、 手術室内および手術室から排出されるN20 濃度のモニタリング用として、
N20センサの開発が望まれている。 N20のモニタリング用としては数十~数百ppmの 濃度を検知することが必要で、あるが、 これまで、ppmレベルの濃度の検知が可能な医療 用N20センサの報告例はほとんどない。 一方、N20の濃度分析は赤外線分光分析法あ るいは GC法などに代表されるような様々な分析法により現在行われているが、 いず れも高価、 大型であることと測定が簡便で、はないというような欠点があげられるため 広く普及していない。
そこで、 これまで種々の還元性ガスあるいは酸化性 ガスに対して良好な応答特性を 示すことが数多く報告されている表面導電率式の半導体型ガスセンサによるN20検知 の可能性について調査を行った。 本研究は、 半導体N20センサの開発を目的として、
まず初めにN20検知のための金属酸化物半導体(n型酸化物および、p型酸化物 )の探索 を行うことによりベース材料を決定し、 次に、 第二成分(金属酸化物、 貴金属)の表 面添加によるセンサ特性 (ガス感度)の改善を行った。 さらにセンサ素子の作製条件 の検討、 水蒸気が及ぼすセンサ特性への影響及び、 センサ素子のN20応答機構につい て検討を行った。 最後に、 半導体型センサの N20検知が可能で、あるという結果を応用 して、安定化ジノレコニアに金属酸化物を電極として組み合わせた混成電位方式のガス センサによる N20検知の可能性について検討を行った。
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