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語学教育用ソフトウェア開発に関する研究

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(1)

マルチメディア技術を基盤とする語学教育用ソフト ウェア開発に関する研究

松野, 了二

九州大学システム情報科学研究科情報工学専攻

https://doi.org/10.11501/3180423

出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(情報科学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)
(3)

語学教育用ソフトウェア開発に関する研究

2001年2月

松野了二

(4)

1 ti -- qJ vhd ハhu ny -

果成

び場ら成的景立な構目背の過ののの究経文究究研究論研研本研本

一諭1

2 3 4

5序L

L L し L

ti 1ょ っム

つ,,“

つiu つiU AιI Aせ A斗4 1EA --ム ーli --ム 11ム 11ム 11よ 11ム 1Eム vhυ v同υ ハhu

--ム 114 11ム マルチメディア技術の進展と英語教育ソフトウェアの変遷

2.1

マルチメディアコンビュータ

2.1.1

マルチメディアコンビュータ第1世代

2.1.2

マルチメディアコンビュータ第2世代

2.1.3

マルチメディアコンビュータ第3世代

2.1.4

マルチメディアコンビュータ第4世代

英語教育ソフトウェアの変遷

2.2.1

マルチメディアコンビュータ出現前

2.2.2

マルチメディアコンビュータ第1世代

2.2.3

マルチメディアコンビュータ第2世代

2.2.4

マルチメディアコンビュータ第3世代

2.2.5

マルチメディアコンビュータ第4世代

2.2 2

マルチメディアコンビュータを用いた英語発音・聞き取り練習用ソフトウェ

アの開発と部品化

17

3.1

背景

. • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 17

3.2

開発目標.

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 19

3.3

システム概要 .

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 23

3.4

試用評価.

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 29

3.4.1

教育効果についての評価 .

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • 30

3.4.2

使用感についての評価 .

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 33

再利用のための部品化 .

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 35

3.5.1

コンポーネントウェア .

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 35

3.5.2

教育用ソフトウェアとコンポーネントウェア .

• • • • • • • • 36

3.5

3

(5)

3.6

本章のまとめ

41

4

ソフトウェア部品を用いた英語教育ソフトウェアの開発と実装

43 4.1

マルチメディア技術を用いた英語教育のためのテスト作成支援シス

テムの開発

43 4.1.1

背景 .

43 4.1.2

開発目標.

45 4.1.3

英語能力判定試験問題の分析 "

46 4.1.4

システム概要

.

49 4.1.5

利用部品と新部品.

51 4.2

日本語学習者と英語学習者の双方を対象としたマルチメディア辞書

の開発 .

52 4.2.1

背景 .

52 4.2.2

開発目標.

53 4.2.3

システム概要 .

55 4.2.4

利用部品と新部品 .

57 4.3

本章のまとめ

59 4.3.1

教育用ソフトウェアとしてのまとめ .

59

4.3.2

教育用ソフトウェア部品活用についてのまとめ

60

5

ソフトウェア部品を前提とした英語教育ソフトウェアの設計一理系学生英 語読解力教育支援のためのソフトウェアの設計 62

5.1

作成済みのソフトウェア部品を前提とした英語教育ソフトウェア..

63 5.2

理系学生英語読解力教育支援のためのソフトウェア設計の背景 .

64

5.2.1

コンコーダンスとコーパスの教育における利用

65

5.2.2

本研究の立場

.

66 5.3

設計方針 .

67 5.3.1

英語読解力と語集力

67 5.4

開発目標.

69 5.5

システム概要 .

72 5.5.1

設計画面.

73 5.6

本章のまとめ

77

6 結論

78

6.1

本研究のまとめ .

78 6.2

関連研究

.

81 6.3

今後の課題と今後の研究の進め方 .

82

6.3.1

教育用ソフトウェアの評価における今後の課題

82

(6)

謝辞

86

参考文献

87

付録A部品一覧及び機能

96

付録B教育用ソフトウェア部品の活用例

102

B.1 プログラミング初心者が作成した英会話教育支援ソフトウェア .

• •

102

B.2部品を活用し手軽に作成できるソフトウェア例.

• • • • • • • • • • •

106

(7)

第1章

序論

1.1 研究の目的

これまでの研究で, テキスト, 音声, 静止画 , 動画を効果的に組み合わせて作成 した教材, いわゆるマルチメディア教材の利用 は, 単独のメディア教材よりも学習 効果が高いと いう知見が得られている. この知見を基に, アメリカをはじめとする , 情報技術先進国では教室でのマルチメディア教材の利用が当たり前のようになって いるが, 我が国 の教育現場においてはほとんど利用されて来なかった. そのため,

文部省(現文部科学省)では, 学校教育の情報化を我が園の重要な課題と捉え, 2000 年度から2005年度の6年計画で,「ミレニアム・ プロジェクト『教育の情報化�Jを

遂行中である[13]. このプロジェクトでは「すべての教室」の「すべての教科Jで のコンビュータとインターネット の活用を普及させることを目的として掲げ, その 方策として,

1) コンビュータの整備

2) インターネットへの接続

3) 教員研修の実施

(8)

4) 教科教育用コンテンツの開発

を唱えている. このうち, 1)と 2)については, 2005年度末を目標として, 全国の 小中高の各教室にコンビュータを設置し, 1.5Mbsでインターネットへの接続を計 画している. また, 3)については現在自分のためにコンビュータを使える教員の数 は全体の約半数であり, 授業における指導のためにコンビュータを使える教員の数 は, そのまた半数(全体の約 4分の 1)と少ないことから, 研修を積極的に行い, 双 方の教員の能力引き上げを計画・実施中である. 4)については,「15から30秒程度 の多くの動画コンテンツを活用して, 教科書を用いて行われる『各教科の授業』を

『わかりやすくする�Jということをミレニアム・ プロジェクトの趣旨とし, その趣 旨に沿ったプロジェクトを遂行中である. 4)において, 単に動画コンテンツの利用 に的を絞っている理由として, 同資料では,「時間のコストJ, 1現場のニーズ、」をあ げている. すなわち,「ただでさえ, 忙しい教員は, コンテンツ作成にあまり時間を 割けない」ことと「一部の『コンビュータおたく』のみでなく, だれでも(あまり コンビュータの知識がなくても )利用できる」ことを目標としている.

著者も,「時間のコスト」と「現場のニーズ」の点では, 文部省資料と同じ意見で あり, また, 教育分野におけるコンビュータの有効利用はこれからの重要な課題と 捉え, いくつかの教育用ソフトウェアを開発してきた([8],[49], [50], [52], [26]) . し かし, 全教員に対しての動画コンテンツ利用支援策のみを推し進めるだけではコン ビュータの有効活用とはいえない. 意欲のある教員に対しては動画コンテンツを含 むマルチメディア教材の開発支援策, さらには, マルチメディア教材開発支援のた めのソフトウェア開発支援策も並行して推し進める必要がある. 動画コンテンツ利 用者からソフトウェア開発者までのすべての層を嵩上げしなけば,「現場のニーズ」

に対応することは困難であり, 真のコンビュータ有効活用は実現できない. すなわ ち,「時間のコスト」と「現場のニーズJという一見矛盾するような目標を達成する ためには, 単に利用するグループのみでなく, 教育現場において「現場のニーズ」

に対応したソフトウェアの開発が可能なグループを育成し, そのグループが「時間

(9)

のコスト」をかけず, 手早くソフトウェアの開発が可能な環境の構築が必要である.

この環境構築の手段のーっとしてコンポーネントウェアがある. コンポーネント ウェアとはオブジェクト指向に基づきソフトウェア部品を組み合わせてシステムを 開発する技術である[1]. 専門的な知識と高度なプログラミング知識を必要とするソ フトウェアでも部品化して提供されれば, その部品を利用することにより, 初心者

でもこれまで不可能であった高度なソフトウェアの構築が可能となる.

本研究では, 教育用ソフトウェアの部品化による「マルチメディア教材開発支援」

のためのソフトウェア開発環境を試験的に構築することを目的とする. 本研究では,

教育分野の中でも, もっともコンビュータに対する需要が高い語学教育に的を絞り,

英語発音・聞き取り学習用ソフトウェア(HPP: Hypermedia Pronunciation Power

の開発を行うと共に, その構成要素を部品化し, それを活用した語学教育用ソフト ウェアの設計と開発についてまとめた.

1.2 研究の背景

現在, 教員がコンテンツを作成する手段として以下がある.

1) I数学教育J , I英語教育」等の特定用途向け教育ソフトウェアの利用 2) オーサリングソフトウェアの利用

3)自作のソフトウェアの利用

1)の特定分野向けソフトウェアを利用すれば「時間のコスト」は節約できるが,

一般的に高価であり, しかも毎年のように更新され新たな対価を伴うものが多い.

またお仕着せのソフトウェアが多く,「各教育現場のニーズ」の点でも難がある. 2) のオーサリングソフトウェアを利用すれば, ある程度「時間のコスト」は節約でき,

また, ある程度「教育現場のニーズ」にも対応可能である. しかし, 特定用途向け ソフトウェアと同様に高価であり, また,「教育現場のニーズ」に合うようにするに

(10)

は, スクリプトと呼ばれる一種のプログラミング言語を必要とする. また, オーサ リングソフトウェアでは, 部品開発の概念がなく, 開発済みの部品を組み合わせて 新たな教育材料を作ることは困難である. 3)はプログラミングの知識が必要であり,

開発しようとする分野における高度な知識も必要である. さらに, 一般的に多くの 時間を必要とし,「時間のコスト」の点で問題である. しかし,「教育現場のニーズ」

に合わせた, きめ細かいソフトウェアの作成が可能であるという利点もある. その 他, 1)から3) すべてに共通の問題点として, マルチメディアコンビュータの進歩 が速すぎることが挙げられる. すなわち, せっかく苦労して作成したコンテンツも すぐに古くなってしまうということもマルチメディア教材作成の推進を妨げる大き な要因である.

このように1)から3)それぞれ一長一短はあるが, 「教育現場のニーズJ , 費用,

保守の点を考慮すると, 3)の自作ソフトウェア開発の手段が最も現実的である. し かし, そのためには当然何らかの「時間のコストJを節約できる環境の構築, マル チメディアコンビュータの急速な進歩にも対応可能な仕組みの構築が重要な課題と なってくる.

表1.1は, 平成12年3月に文部省が行ったコンビュータ活用等に関する教員の 実体である[13]. 表1.1から分かるように, ワープロと表計算等のいわゆる「コン ビュータリテラシ」程度の運用能力を備えたリテラシーグループの教員が66.1%,

学習指導等において教育用ソフトウェアを使用したコンビュータ活用授業のできる 初級グループの教員が31.8%である. 同文献では, プログラミング能力のある教員 数については触れていないが, 同文献の別の表に小中高に「ソフトウェアの整備方 法別種類数」があり, この表によると, 自作ソフトウェアの割合が6.1%を占めて いることと, 熊本県立大学で平成12年7月に行った高校教員向けの情報免許講習 会に参加した教員70名中約6 割の教員がVisual Basicによるプログラミング経験 があったことからプログラミング開発可能な教員も相当数いるのではないかと類推

(11)

表 1.1: コンビュータ活用等に関する教員の実態

教員数 コンビュータを操作 割合 コンビュータで操作 割合 できる教員数 できる教員数

(A) (B) B/A (C) C/A

小学校

395,953 249,381 63.0 144,396 36.5

中学校

234,636 157,670 67.2 69,642 29.7

高等学校

202,796 149,764 73.8 57,074 28.1

特殊教育諸

53,378 28,939 54.2 10,926 20.5

学校

合計

886,768 585,754 66.1 282,038 31.8

文献[15], 4(1) 教員の実態(表1)を基に作成

できる. このようなプログラミング可能な教員グループが, 教育現場のニーズに合 わせて,「リテラシーグループが簡単にマルチメディア教材を作成できるソフトウェ アJを手軽に作成し, リテラシーグループに提供できるような仕組みが構築できれ ば, 与えられた動画を単に利用した教育よりもさらに教育効果の高い結果が得られ ることが期待できる.

以上のことを踏まえ, 本研究ではリテラシーグループを対象とした実用的な英語 教育用ソフトウェアを実際に開発する. また, その開発と同時に英語教育用ソフト ウェアの構成要素を抽出し プログラミング可能な教員グループへの提供を念頭に おいたソフトウェアの部品化を行うことを目的とする.

1.3 本研究の立場

本研究では, コンポーネントウェアの手法を用いる. コンポーネントウェアでは,

ボタンのような小さ な部品から, いくつかの部品を組み合わせ, ビデオの取り込み

(12)

部をそっくりフレームとして提供したり, 音声ファイルを与えるだけで, 音声解析 を行い, そのスペクトログラムを表示するフレームを提供するなど部品の粒度を自 由に設定することができる. このことは, 一般的に自分で部品の開発が可能な中級 以上のグループは自由度の大きい小さな部品を自分の好きなように組み合わせたり,

また, オブジェクト指向プログラミングの継承機能を利用して, 使いやすいように 改良可能であることを意味する. また, 初級者は自由度は低くなるが, 半完成品と もいえるフレームを用いることにより, 高度のプログラミング知識なしに, 数十ス テップのプログラミングで優れたソフトウェアを開発できることを意味する. なお,

一般的にビジネス用ソフトウェアの場合には, 失敗は許されないのでコンポーネン ト化するにあたって, 様々な場合を想定し厳密な設計を行う必要があり, 開発に時 間がかかる. 本研究では, 教育用ソフトウェアの場合には少々の失敗の許される場 合と許されない場合の二つがあるという立場をとる. 失敗の許されない場合とは,

主に, コンテンツに関する部分に起こる. 例えば教材の内容に間違いがあった場合 で, これは生徒が間違った知識を覚え込む可能性があり, 注意すべきである. ボタン の位置がずれていたり, 表示部に若干の乱れがあったりする場合などは, 少々の失 敗が許される場合に相当し, ここに多くの時間をかけ完全を目指すよりも, 簡単な プログラミング知識で素早く教材を作成できることの方がより重要である. そのた めに, 部品を組み合わせることにより, 簡単に教材を開発できる環境の提供を行う.

1.4 研究経過ならびに成果

本研究では, はじめにマルチメディアコンビュータを用いた英語発音・聞き取り学 習用ソフトウェア

(

HPP: Hypermedia Pronunciation Power

)

を開発した

) [19] [50] [51] [14].

従来英語発音 ・ 聞き取り用の機器としては, カセットテープやCDが用いられてき た. これらの機器では, 聞き取り練習はできても, 自分の発音が正しいかどうか分 からず, 発音練習は困難であった. 本ソフトウェアで、は, 発音に重要な要素となる唇

(13)

の動きや舌の位置を動画で見ることができ, また, 耳だけでは判断しにくい音の違 いをスペクトログラフを用いて視覚的に比較することが可能である. 本ソフトウェ アの開発後, 発音・聞き取り能力の改善と操作性の両面について外国人教師による オーラルコミュニケーションの授業の中で試用評価を行った. なお, オーララルコ ミュニケーションの授業において聞き取り・発音練習は重要ではあるが, それだけ がすべてではなく他のアクティビティ(例えば, ディ ベート演習)も行う必要があ る。 そのため, 本システムの評価にあたっては, 計3回(練習は2回)でどれだけ 改善できるかを確かめることを評価目的のーっとした. この評価結果で発音・聞き 取り能力の改善について有効性が認められ, また, 操作性についても高い評価が得 られたので, このソフトウェア開発の成果を活かすために, 他のソフトウェア開発 への再利用を視野にいれた見直しを行い, 部品化を行った.ここで抽出した部品は,

基本部品(シャツフル, 高精度タイマ, 遅延タイマ, ファイル操作, 拡張リストボッ クス, 拡張ラベルグループ), 音声関連部品(音声録音・再生, 音声解析, 音声波 形表示, 音声スペクトル表示, 音声ミキサー, 音声変換, 音量調節), 動画関連部 品(動画録画, 動画再生), テスト関連部品(選択問題生成・正誤判定?得点表示),

マルチメディアデータベース部品である.

次に, 前述のソフトウェア部品を利用して以下の二つのソフトウェアを開発した.

1)マルチメディア技術を利用した英語教育のためのテスト作成支援システム

[52][53]

2)日本語学習者と英語学習者の双方を対象としたマルチメテ。イア辞書[23][24]

1 )では英語の能力試験判定に広く利用されているTOEFLとTOEIC形式の問題 を, プログラム言語の知識なしに作成できるようにした. 本ソフトウェアでは, 上 記部品のうち, 基本部品の, シャツフル部品, 拡張リストボックス部品, 拡張ラベル グループ部品, ファイル操作部品, 音声関連部品の音声録音・再生部品, 音量調節 部品, 動画関連部品の動画録画部品, 動画再生部品, とマルチメディアデータベー

(14)

ス部品を再利用した. また, 穴埋め問題など各種の問題を生成する問題生成部品と 問題のレベルや難度を管理するテスト用データベース部品を新たに作成した. 2)で は英語初級学習者と日本語初級学習者を対象としたパイリンガル辞書がその中核を なしている. 本ソフトウェアでの再利用部品は, 基本部品のファイル操作部品, 拡 張リストボックス部品と音声録音・再生部品, 音量調節部品, 動画再生部品, マル チメディアデータベース部品であり, 新たに全文検索部品, 辞書部品, 文章読み上 げ部品, 漢字ひらがな変換部品を開発した.

上記の ソフトウェアとは別に著者らはLETS

(A

Language Ed ucational Tool for Speaking-up)と名付けた英語教育支援システムの開発を行っている [70][71]. アメ リカで発売されるレーザディスクやビデオには, 目の不自由な人々のために英語字 幕を組み込むことが法律で定められている. この英語字幕は, 映像信号の隙聞を利 用してレーザディスクやビデオに組み込まれ, キャプションデコーダと呼ばれる字 幕表示装置を用いることにより, テレビ画面上に表示することができる. LETSは,

英語の構文検索機能を備え, 組み込まれた英語字幕の位置からレーザディスク装置 の再生位置を検出できる英会話教育支援システムである. LETSは, この英語構文 検索部品の他にも, 単語の統計情報(頻度順など) 部品を備えているので, LETS のこの二つの部品も教育用ソフトウェア部品として利用する. なお この二つの部 品は共同研究者の堤が開発したものである[70][71].

以上に述べた部品を組み合わせることにより(若干の部品開発は必要かも知れな いが), 別の英語教育用ソフトウェアを開発可能である. いくつかの例を挙げると,

プログラムの初心者は, 音声録音・再生部品, 動画再生部品を組み合わせた英会話 練習プログラムやシャツフル部品を利用した英単語もぐらたたきゲームなどは追加 部品なしで簡単に作成可能であろう. プログラムの中級者は, 辞書部品を利用した クロスワードパズル自動作成ソフトウェアや読み上げ部品を利用した書取練習ソフ トウェアなどが追加部品なしで作成可能であろう. 英語教育以外の分野への応用と しては, 音声スペクトル表示部品は物理現象の表示や, 音痴の子供への教育への応

(15)

用などが可能である. さらに, クイズ部品はあらゆる科目のクイズ生成に応用可能 である. 例えば, 社会科を例に取ると, 各地域の特産物などをデータベース化して おくことで, 動画とその説明を連動させることが可能であり 単なる動画の再生よ りも, より効果的な授業を行うことができる

本研究では, 部品を組み合わせたソフトウェア開発例として, 理系学生のための 専門書読解力向上支援のためのコンコーダンス作成ソフトウェアを取り上げ, その 設計を行った. 近年インターネットの普及もあり, 学生が英語の専門書や記事を読 む必要性が高まっている. 最近の研究で, 学習者が本の内容を理解するには, 語集 力を身につけることが重要であるということが分かり そのための教育方法の研究 も始まっている. 本ソフトウェアは、 使用頻度の高い語集を効率よく獲得するため の支援ソフトウェアである. 教員が専門語を追加したり、 学生が新しい単語や用法 を学習するのを支援する. 本ソフトウェアで再利用する部品は, 基本部品, 音声録 音・再生部品, マルチメディアデータベース部品, 全文検索部品, 辞書部品, 文章 読み上げ部品であり, 新たに開発する部品は英語構文検索部品を利用したコンコー ダンス部品のみである。

1.5 本論文の構成

本論文の構成は以下の通りである. 第2章では 「マルチメディアコンビュータの 進展と英語教育ソフトウェアの変遷」について述べる. 第3章では,「マルチメディ ア技術を用いた英語発音・聞き取り学習ソフトウェア�HPP�Jの開発と部品化に ついて述べる. 第4章では, HPPから抽出した部品をベースにし開発した二つの ソフトウェア,

1)

Iマルチメディア技術を利用した英語教育のためのテスト作成 支援システム」と, 2) I日本語学習者と英語学習者の双方を対象としたマルチメ ディア辞書」の概要と部品化について述べる. 第5章では, これまでに開発した部 品を利用して設計した「ソフトウェア部品を前提とした英語教育ソフトウェアの設

(16)

計Jについて述べる. 第6章では, 結論および今後の課題についてのべる. 付録A では, 本研究で開発した各教育用ソフトウェア部品のインタフェースと機能につい て, また付録Bでは, プログラミングの初心者が教育用ソフトウェア部品を用いて 開発した英会話学習ソフトウェアについて述べる.

(17)

第2章

マルチメディア技術の進展と英語教育 ソフトウェアの変遷

英語教育の分野では, ネイティブスピーカ の発音を直接聞くことができることや 映画やテレビの番組を利用した教材が得やすいことから, 古くからカセットテープ 装置(以下カセットと呼ぶ)やレーザ、ディスクなど, その時代, 時代の新しいメディ アを教育ヘ利用することが試みられてきた. また, コンビュータの利用も盛んに試 みられている. 本章では, マルチメディア技術の進展とその進展により, マルチメ ディア技術を用いた英語教育がどのように変遷していったかについて述べる.

2.1 マルチメディアコンビュータ

マルチメディアコンビューティングの立場から見ると, MIT (マサチューセッツ工 科大学)では1980年代の中頃から1990年代のはじめにかけてAthenaプロジェクト と呼ばれるマルチメディアワークステーションやビデオサーバを組み合わせた巨大 マルチメディアコンビューティングシステムを構築している. これは, DECとIBM から莫大な援助を受け8年がかりで1億ドル以上をかけて構築したもので, 高い評

(18)

価を受けている[35]. 一方, 一般ではそのような環境の構築を望むべくもなく, 時代 時代において入手できる一般向けのパーソナルコンビュータ(以下単にコンビュー タと呼ぶ)を利用した教育用ソフトウェアの開発も行われてきた. ここでは後者の 一般向け普及型コンビュータ(時代時代における最多販売価格帯のコンビュータを 普及型コンビュータと呼ぶ)を対象とし, その進展について述べる. また, マルチ メディアの定義は分野により様々である. ここでは?「音声, 静止画, 動画, 通信の 二つ以上のメディアを同期し, 会話型で利用可能なもの」と定義づけ, 同期を可能 とするコンビュータをマルチメディアコンビュータとして定義する. 以下に, マル チメディアコンビュータをその上で利用できるディジタル技術の観点から分類した ものを示す.

2.1.1 マルチメディアコンビュータ第1世代

一般向けのコンビュータとして, 1977年にコモドール社のPETとアップル社の AppleIIをはじめとするいくつかの機種が発売された. このうち, AppleIIは解像度 は低いもののグラフィック機能を備えたはじめての一般向けコンビュータであった.

第1世代のコンビュータでは, 低解像度の静止画をコンビュータ上に表示可能で,

音声と映像はアナログであった. 外部機器としてはRS-232Cやセントロニクスイ ンタフェースを通して, コンビュータから制御可能なカセットやビデオテープ装置 (以下ビデオと呼ぶ)があり, コンビュータと接続したソフトウェアが作成されたが,

巻き戻しゃ早送りなどの操作性の点で問題があり, あまり利用されなかった[7].

2.1.2 マルチメディアコンビュータ第2世代

1 984年には, アップル社がグラフイカルなユーザインターブエースを備えた Macintoshを発売した. Macintoshは HyperCardHyperCardと呼ばれるカード型の オーサリングツールを備えており, 比較的簡単にコースウェアを開発することがで

(19)

きるようになったことと, 外部機器としてランダムアクセスが可能なレーザディス クが発売されたこともあり, 多くの教育用ソフトウェアが開発された. しかし, 音 声はディジタル化されたが主記憶装置やハードディスク装置の容量不足から大きな サイズの音声を取り扱うのは困難であった. そのため, 第1世代と同じく, RS232C インタフェースを用いた映像, 音声ともアナログ機器の利用が主でありシステムと しては大きくなる欠点があった.

2.1.3 マルチメディアコンビュータ第3世代

1 990年代に入り, マルチメディアコンビュータの高性能化, 低価格が進み,

MacintoshではQuickTÌllle形式, またWindows系ではAVI形式として音声, 映像 ともディジタル化され, オペレーティングシステムレベルでサポートされるように なった. このため, テキスト, 音声, 映像をコンビュータ内のハードディスクにファ イルとして蓄積し, 必要に応じてコンビュータ上で手軽に利用できようになった.

また, CD-ROMもコンビュータに内蔵されるようになり,

CD-ROMをコンビュー

タから制御することにより, 動画も簡単に扱えるようになり個人レベルのマルチメ ディア利用が実用レベルでやっと可能になったといえる.

2.1.4 マルチメディアコンビュータ第4世代

ここでは, 現在の状況をマルチメディアコンビュータ第4世代として捉えている.

第3世代で, 一応マルチメディアの手軽な利用が可能になったが, 記憶媒体の容量 の点で問題があり, 細切れの動画しか扱えなかった. 現在では, DVDの出現, 大容 量ハードディスクの低価格化により, 映画など大容量の動画をそのままコンビュー タで扱えるようになり, 教育への利用も行われ始めている. また, インターネット の整備, それに伴う各種の動画や音声圧縮技術もすすみ, インターネット経由のマ ルチメディア教材配信もごく普通となってきた. しかし, 実際にマルチメディア教

(20)

材を利用してみると, 通信回線の貧弱さから動画の配信には相当の時間が必要であ り, 利用者に忍耐を強いる結果になっている.

2.2 英語教育ソフトウェアの変遷

2.2.1 マルチメディアコンビュータ出現前

マルチメディアコンビュータの出現前は, ラジオ, テレビ, カセット, ビデオが 利用された. 特に, カセットやビデオの出現により, ネイティプスピーカの発音を 見ながら, 自分の発音も録音可能となったことから幅広く利用されるようになり,

これらの視聴覚機器を用いた英語教育に関する論文も数多く発表されている(例え ば,

[

48

]

[

27

]

[

37

]

) . また, 米国では聴覚障害者のための字幕付きテレビ放送も盛 んであり, 同じく聴覚障害者のために映画などを市販ビデオとして販売する際には,

字幕の挿入が義務づけられている. この字幕は, キャプションデコーダと呼ばれる 機器を通すことにより, テレビスクリーンへの字幕表示の挿入・非挿入を制御でき ることから, 英語教育に利用されるようになり, 教育成果をあげることができると

報告され(

[

18

]

[

29

]

[

57

]

), 現在でも利用されている.

2.2.2 マルチメディアコンビュータ第1世代

第1世代では, 教育用ソフトウェアとしては, ビデオ教材とコンビュータを組み 合わせた例も見られるが

[

67

]

, 先に述べたとおりに巻き戻しゃ必要な箇所を頭出し するのに時間がかかり それほど利用されていない.

(21)

2.2.3 マルチメディアコンビュータ第2世代

第2世代では, グラブイカルなユーザインターフェースが登場し, 数多くの英語 教育用ソフトウェアが開発されている. 利用法としては レーザディスクを用いな い単独のコンビュータを用いたものでは, 文章の読み書き能力を対象にしたものが 多く, スペルチェ、ソクや単語当て問題の形式をとっているものが多い(例えば, [46],

[60], [33]) . レーザディスクを用いたものでは, その特性を活かし聞き取り練習用 の英語教育システムが開発されている(例えば, [40], [61]). 著者らも, レーザディ スクとそ れに組み込まれている英語字幕を利用した英会話教育支援システムの開発 を行っている. 著者らのシステムは主に教室での利用を想定しており, あらかじめ レーザディスク字幕をコンビュータ上に取り込みデータベース化しておくことによ り, 英語教員が教えたい構文(例えば, it,.._ that )を指定すれば, 該当する場面 を検索し再生することが可能である [70][71]. その他, 竹蓋らはコンビュータとレー ザディスクの代わりに, Rcpeat Learning Systemと呼ばれるカード型の音響機器を 接続した英語聞き取り練習用システムを開発している[11].

2.2.4 マルチメディアコンビュータ第3世代

第3世代では, コンビュータレベルで動画が扱えるようになったので数多くの種 類の英語教育用ソフトウェアが開発されている. また, コンビュータのCPUの性 能が格段によくなったことにより, ただ単にビデオやレーザディスクのような動画 再生のみでなく, 音声の周波数解析を用いた英語発音教育システムも開発されるよ うになった. 著者らも音声解析や動画を効果的に利用した発音改良支援プログラム を開発しており[19][50], これについては次章で詳しく述べる.

(22)

2.2.5 マルチメディアコンビュータ第4世代

現在では, インターネット上における英語教育システム開発が盛んに行われ, 無 数の英語教育用サイトが存在している. 種類としても英語の読み, 書き, 聞き取り,

発音教育もすべてが存在しているが, 音声や動画を用いたものはレスポンスタイム が遅く利用しづらい. このためテキストベースものが必然的に多く運用されている が, 内容的にはマルチメディア第1世代~第2世代に逆戻りした感がある. これを 解決するには圧縮技術や通信技術の発展が必要であり, もう少し時間が必要である.

著者らは, この聞を埋める手段としてCD-ROM, ハードディスクとインターネット のハイブリッドによる運用が有効であると捉え, マルチメディア教材をCD-ROM で配布し, 更新部をインターネット経由で配布するハイブリッド型の英語教育支援 システムを試作している[51].

(23)

第3章

マルチメディアコンビュータを用いた 英語発音・聞き取り練習用ソフトウェ アの開発と部品化

本章では, マルチメディア技術を用いた教育用ソフトウェアの例として, 英語発 音・聞き取り練習用ソフトウェアの開発ならびにその評価について述べたあと, 再 利用のための部品化について述べる.

3.1 背景

近年マルチメディアコンビュータの高性能化・低価格化によりマルチメディア技 術を用いた英語発音・聞き取り練習ソフトウェアが数多く見られるようになってき た. これには二つの流れがある. 一つは, 英語教育者の方から発達してきたもので,

他は音声音響学者の方から発達してきたものである.

英語教育者の間では 補助教材または先生の代替としてカセットやビデオなどの メディアが用いられてきた. カセットは教育材料を手軽に作成できること, また可

(24)

搬性に優れていることからLL 教室, 個人利用の両方で利用されてきた. また, ビ デオは発音に重要とされる唇の動きや舌の位置[41]を確認できることや, 映画等を 題材にしたいわゆる活きた英会話教育が可能なことから利用されてきた. また, メ ディアの発達とともに, より操作性のよいコンパクトディスク(CD)やレーザディ スク(LD)も利用されるようになったがいずれも片方向のメディアであるという欠 点がある. さらに, コンビュータを利用すれば, 双方向の教材を提供できることか ら外部接続のビデオやLDをコンビュータを用いて制御する方式の英語発音・聞き 取り教材も開発されたが[32][74][62], 高価であり装置も大きくなる欠点があった.

一方, 音声音響学者の聞では古くから音響学的分析子法を用いた音声合成や音声 認識の研究が行われてきた. 特に, 1940年代はじめにPotterらが開発した音声ス ペクトログラフ[58]は, 時間を横軸に, 周波数を縦軸にとり, 音声をスペクトログ ラムとして視覚的に表示することができ, 音声の音響学的分析手法は急速に進展し た [43]. しかしながら, 音声スペクトログラフ は高価であり, 主に話者を特定する ために, いわゆる声紋分析装置として犯罪捜査に利用されたものの 教育への利用 までにはいたっていなかった. その後マイ クロコンビュータの発達に伴いサウンド スペクトログラムを利用した聴覚障害者の発話練習教育機器も見られるようになっ てきたが[9], 演算速度の問題から高価なDSP(Digital Signal Processor)を搭載し た専用のハードウェアを必要とするものが多く,また,メモリの容量も少ないため,

特定の訓練しか行えず汎用性に欠け, ユーザインターフェ ースも悪かった [5].

しかしながら, 近年マルチメディアコンビュータが高性能化・低価格化し, 安価 なコンビュータでも音声や動画を取り扱えるようになってきた. この高性能化・低 価格化してきたコンビュータの出現により, これまで, カセットやビデオを用いて 行われていた英語発音 ・ 聞き取り練習方法がマルチメディアコンビュータ上で実行 できるようになってきた.

本ソフトウェアは,高性能化・低価格化してきたマルチメディアコンビュータを用い て,英語教育者と音声音響学者が今まで、個別に行ってきた方法を融合化し,両方の特

(25)

徴を活かした英語発音・聞き取り教育ソフトウェア(HPP:Hyper media Pr onunciation Power, 以下HPPと呼ぶ)の構築を目指した. 一例をあげると, HPPは映像, 音声 を含む多くのマルチメディアコンビュータを利用し, また, コンビュータの特徴を 活かし, 練習問題をランダムな順序で出題したり, 任意の単語 を指定し発音・聞き 取り練習を行う機能, 音声を周波数分析することにより, 声だけでは比較しにくい 部分を視覚的に比較する機能などを備える.

3.2 開発目標

マルチメディアコンビュータを用いた言語教育(MCALL: Multimedia C omputer Assisted Languagc Lear ning)の効果については, Heinichや800がíMCALLの効 果は如何にその目的に適合したシステムを構築できるかどうかで決まる」と述べて いる[31][65]. また, これまで行われてきたさまざまな英語発音・聞き取り教育の練

習方法については8mithが表3.1のように整理している[64].

表3.1において4)以外の 英語発音・聞き取り練習方法は教師の直接指導による 練習方法, または補助教材としてカセットやビデオなどの従来のメディアを用いた 練習方法である. 4)のIBM Viewer はもともとは聴覚障害者用の発話練習用に開発 された方法で, マルチメディアコンビュータを用いて音声を周波数解析し, 模範発 音と 学習者の発音を視覚的に比較できるようにしたものである. 3.1節でも述べた ように近年マルチメディアコンビュータの性能が急速に向上したことにより, 普及 型の コンビュータでもリアルタイムで音声の 周波数解析が可能となってきた. それ に伴い, 聴覚障害者の発話教育のみでなく, 英語発音・聞き取り教育への応用も経 済的に可能になってきた. 我が国でもATRのグループが同様の手法を用いた英語 発音 ・聞き取り練習ソフトウ ェアを開発し発売している [16][17]. HPPを設計・開 発するにあたっては, 表3.1の練習方法をすべて実現することを基本におき, 1)学 習者への対応, 2)教師への対応, 3)コンビュータへの対応に大別し, それぞれにつ

(26)

表3.1:英語発音・聞き取り練習方法

l)Listen and imitate/repeat technique …いわゆるリッスン&リピート式練習

2) Mirroring …鏡を見て自分の唇の動きを確認

3)

Video Imitation …ビデオで教師の模範発音を見て真似.

4)IBM Speech Viewer …聴覚障害者用に開発された教育用ツールで音声パター ンのマッチングによる確認

5)Speech Recorder …録音による聴覚的比較 6)Dialog Imitation …会話形式による発音練習

(27)

いての要求項目を検討し, 以下に述べる10項目を開発目標に設定した.

1)学習者への対応

(a)表3.1の練習方法1)

�6) を単独でも組み合わせても利用可能な練習方

法を提供する. 1) �6)はそれぞれ単独で行われてきた方法であるが, マ ルチメディアコンビュータの特性を活かせば, これらの方法を融合化し たものを提供できる. 例えば, 学習者が教師の模範発音を見て(練習方

法3), コンビュータに接続されたカメラで自分の唇の動きを確認しなが ら声を録音し(練習方法 2, 5), 音声処理した結果を聴覚的・視覚的に 比較する(練習方法4) ことを可能とする.

(b)毎回異なったパターンで実力判定クイズを出題し, 学生が暗記するのを 防ぐ. カセットや, CDを用いた英語発音・聞き取り練習用機器に収録 されている実力判定クイズでは毎回同じパターンでしか出題できない.

従って何回も練習していると, 正解の位置(番号) を覚えてしまい, 学 習者の実力が判定できない. 本ソフトウェアでは, それらの欠点をなく すために毎回異なったパターンで問題を出題し, また, 選択式の場合正 解の位置も毎回異なるようにする.

(c)中級者用に, 車の音や他人の話し声など, さまざまな環境雑音下で練習 できるようにする. 従来の発音・聞き取り練習用ソフトウェアは, ノイ ズのないクリアな音を使用しているものが多い. これは, 初心者には重 要な点であるが, 実世界ではさまざまな音が同時に入り込んでくる. 本 ソフトウェアでは, 環境雑音を付加することにより実社会に近い環境の 中での聞き取り練習を可能とする.

(d)練習したい単語や例文の任意選択を可能とし, 操作性のよいものを提供 する. カセットはいうまでもなく, CDですら一定のブロック単位での 練習は可能であるが, 単語単位での練習は不可能である. すなわち, 学

(28)

習者が不得手な単語や例文のみ繰り返し練習したいと思っても不可能で ある. 本ソフトウェアは, 学習者が練習したい任意の単語や例文を選択 し, その部分のみ練習することを可能とする.

(e) ビデオの取り込み機能がついたコンビュータでは録画も可能とする. こ の機能を使えば教師が簡単にビデオクリップを用意したり, 学習者が自 分の発音を録画し, 模範発音の唇の動きと比較したりすることが可能と なる.

2) 教師への対応

(f)新しい練習用単語およびミニマルペア("light"と"right"などの間違いや すい単語対)を容易に追加できるようにする.

(g)新しいクイズを容易に迫加できるようにする.

これまでのメディアでは拡張性がなく(f),(g)とも困難であった. 本ソフ トウェアでは, データベースの編集機能を教師に与え, 新たな練習用単 語やクイズの追加, 削除を可能とする. 教師は, 自分の授業目的に応じ たデータベースを構築できる.

(h)生徒の学習履歴を確認でき, 指導できるようにする.

3) コンビュータへの対応

(i)普及型のコンビュータで, 利用者が待ち遠しくない応答速度を達成する.

(j)将来新しいメディア形式が出現しても対応可能な仕組みを組み込み, そ れまでの蓄積が無駄にならないようにする. 英語教育に限らず, これま で多くの教育ソフトウェアが開発されてきたが, その寿命は短いものが 多い. これは, 新しいメディアが出ると, 古いものは陳腐に見えて, 見 向かれなくなるからである[7]. しかし, 本質的な部分はそれほど変化す るわけではなく, このような仕組みを組み込むことは重要である.

(29)

3.3 システム概要

前節の要求項目に従って, 学習者用 に, 1) Explanation部,

2)

Listen and Repeat部,

3)Visual Voice部, 4 ) Minimal Pair Practice部, 5)Quiz部, の5つのメニューを,

教師用として, 6)Management部を用意した. さらに, マルチメディアコンビュー タの進化ヘ対応するために, ユーザインターフェースとなるUserModule,マルチメ ディア技術 の変化とは無関係の各種プログラムからなるCoreModule, マルチメディ ア技術と密接に結び付いたMultimedia Module, さらにデータベース部Database の4部に分割した構造とした. システムの概要を図3.1に, また, 以下に各部の説 明を示す.

USER MODULE

Minimal-Pair Practice Section

CORE MODULE for Students

Llsten and Repeat Section

Quiz Section

Word-Search, Word-Shuffle, Timer, etc

for Teachers

Teaching Meterials Management

MUL TIMEDIA MODULE

Visual-Voice Section

Management Section

d________.",,__

司司町一一一一一一市....-

DATABASE

SOUND VIDEO TEXT

図 3.1: HPP Overview

(30)

-・・Eヨ・・・・・・圃圃・・量

3.2: Explanation

1) Explanation部(図3.2)

英語を正しく発音するのに必要な基礎知識(舌の動き、 唇の動き等)を学ぶ。

2) Listen and Repeat部(図3.3)

ここでの目的は, 学習者が各音素(母音・子音)に分類された単語群を聞き,

それぞれの音の違いを耳で感じ取る練習を支援することである. そのため, 特 に操作性を考慮した. カセットやCDなどの従来のメディアとの違いは,

-練習を行いたい単語(群)を単語単位で細かく指定でき, また, 必要な ら繰り返し練習も可能である. すなわち, 苦手な単語のみ練習可能なの で, 練習効率がよくなる.

・単語聞の再生間隔の調整が可能である. この機能は教師の模範発音を真似 て発声する, いわゆるリッスン&リピート式練習を行うのに便利がよい.

-動画を用いて, 教師の模範発音を見ることができる. この機能は発音に 重要な要素となる, 唇の動きや舌の位置等を確認できる.

(31)

!:;;i t:fil--fd?ljf(rjT i引. 瞬時 1 音素選択

再生間隔

単語群 j覇尺

図3.3:

Liste n and Repeat

3) V isual Voice部(図3.4)

ここでは, 学習者が各音素ごとに発音の基本を身につけることを目的として いる. 学習者は, 各音素を取り出したもの及びその音素を含む単語について教 師の模範発音を動画で見て唇の動き等を確認し, 自分でも発音してみる. 教 師の模範発音と録音された学習者双方の音声波形と音声スペクトルが画面に 表示されるので, 学習者は教師の模範発音と自分の発音を聴覚的・視覚的に比 較することが可能である. ここで, 音声スペクトルとは音声を周波数分解し,

時間軸とともに表示したものである. これは, 各音素がそれぞれ特有の周波数 成分を持っていることを利用して音声の分析に用いられる手法であり,

HPP

もこれを利用している. 図3.5(a),(b

)に英語の音素("

l'γ冶")の音声波形, (c) に"jab"と"job"のスペクトログラムを示す.

(32)

ji熱-竺 1 1

� 3.4: Visual Voice

(a) Waveforrn of

1

"

sonnd

(b) Waveforrn of

æ

"

sound

(c) Spectrograms of ぺjab" and "job"

3.5: Waveform & Spectrogram

(33)

図3.6: Minimal Pair Practi

4)

Minimal Pair Prac ticc部(図3.6)

間違いやすい 音の組み合わせ、 例えば母語を日本語とする人にとっては, “th"

と"s"の"think"と“sink"や" 1"と" r"の"light"と"right"などの対をミニマ

ルペアとよぶ. ここでの 目的は, これ らの ミニマルペアをならべて 聞くこと により, 微妙な音の違いを聞き分ける練習を行うことを目的とする. ここで も, “Listen

&

Repeat"部と同様な操作性を付加し苦手なミニマルペアのみ練 習することが可能である.

5)

Quiz部(図3.7)

ここでのは, 学習者が自分のリスニングカを確認することを目的とする. す なわち, 学習者は, HPP が出題するクイズに答えることにより自分の 聞き取 り能力を判断できる。 クイズの出題は 音声のみを利用する。 これは, 動画を 表示すると 、 例えば, “th-sound"と“s-sound" などは舌の位置で 判断できる ので、 それを避けるためである(あとで, 間違えた部分を動画で 確認するこ

(34)

El1li圃函圃園圃圃

-・・・・・・・・・・・ ��...

-・・・・・・・・・・f']JYN

図3.7:

Quiz

とも可能である) .

なお, 問題の出題順序等を毎回ランダムに指定することにより、学生は答え を暗記できないようにしている。 例えば、 ミニマルペアを例にとると、"This sentence is wrong"と"This sentence is long"のどちらを読み上げるかは毎回ラ ンダムに選ばれる。 さらに、 中級者用に車の音など環境雑音を付加すること もできる。

6)

Management 部

ここでは, 教師が新しい単語, ミニマルペア, クイズの 管理を行うことを目 的とする. 教師はあらかじめコンビュータに取り込み済のビデオクリップ, 音 声クリップ, または, 自作のビデオクリップ(ビデオ取り込み機能つきのコン ビュータが必要) , 音声クリップを利用して 新しい練習用単語やクイズを付加 したり , 不要の単語を消去できる. また, 学習者の学習履歴もここで管理す る予定であるが, この部分は未作成である.

(35)

3.4 試用評価

HPPを利用した発音・聞き取り能力の改善について、 オーラルコミュニケーショ ンの授業に取り入れ、 延べ3週に渡って試用評価を行った. 以下に評価方法につい て述べる. なお, 評価に費やした時間と被験者の人数の多寡については本章の終わ りで著者の見解を述べる.

実施者:熊本県立大学講師

Gilbert Richard

ならびに著者 被験者:熊本県立大学総合管理学部1年生22名

-第1週

-表3.2の内容でプレテスト

一本ソフトウェアの聞き取り練習部の説明(10分間) 一本ソフトウェアを用いて聞き取り練習(40分間) -第2週

一本ソフトウェアの発音練習部の説明(15分間) 一本ソフトウェアを用いて発音練習(40分間) -第3週目

ープレテストと同じ内容でポストテスト

ーテスト終了後本ソフトウェアの使用感に関するアンケート調査

(36)

チスト

間き取り

発音

3.2:プレテストおよびポストテスト

チスト内容

ミニマルペア11組〈ドリJ [or-er1 [�-ee1 [ee・01[信-(\1[0・(\1

[ð-zl

[8-s1

[f-吋J [v -b1 [l汁〉について, アメリカ人教師がよそれぞれ3í固の単語を

読み上げ, どちらの音素に属するかを答えさせる。

2つの母音ベア[0・官] [官- (\1 2つの子音ベア[r-l], [8・4について,

その音素が含まれている文章を読ませ, アメリカ人教師が正誤の判断 を行う

3.4.1 教育効果についての評価

表3.3に個人ごとのリスニング改善率について, 表3.4に各音素のリスニング改 善率について, t検定による解析結果を示す. 表3.3ではt =-4.45(p<0.01), 表3.4 ではt =-3.11 (p<O . 05) であり, 練習後は練習前に比べてリスニング能力に改善が見 られることが分かる. また, 表3.4に発音能力の改善率を示す. 表の結果から分か るように平均点は倍近くまで上昇しているがp>0.05であり, 帰無仮説を棄却でき

ない. これについては図3.8に音素ぺアごとのプレテスト・ポストテスト結果を示

す. この図から全ぺアとも改善はされているが, 音素ペアによって改善率の違いが 大きいことが分かる. 例えば, [0-記]ペアはプレテストでは区別できない学生が 多かったが, 少しの練習で区別できるようになった. 一方,[記-^]ぺアについてはあ まり改善が見られなかった.

(37)

表3.3:個人ごとのリスニング改善率

Pretest Posttest t -value Mean (SD) Mean (SD)

70.5 (11.06) 79.1(9.59) -4.45 p=0.00022

表3.4:音素に対するリスニング改善率

Pretest Posttest Mean (SD) Mean (SD)

67.4(15.2) 79.1(11.1 ) p=0.011

表3.5:発音改善率

Pretest Posttest Mean (SD) Mean (SD)

42.0(20.0) 78.3(18.4) p=0.081

t -value

-3.11

t -value

-2.26

(38)

言1∞

、---

U L-1

fD

〈 C

40

q ヒ j 3)

υ 。

a-æ 8.ぅ-1\. θ-5 M inima I-p airs

下-1

ロPre-t巴st

・P03:-test

図3.8:各ぺアのプレテスト・ ポストテスト

表3.6:他のメディアとの比較

本ソフトウェアの順位

1位(人) 2位(人) 3位(人) 平均順位 練習したい項目にすぐ行ける

1 1

手軽さ(どこででも練習可能であ

る)

発音機構の理解しやすさ

1 2

録音して自分の発音を確認できる

1 2

映像を見ながら発音を確認できる

1 2

総合的に判断してどれが一番いい

1 1

4 。 1.3

3 6 3.1

3 1 1.3

1 3 1.4

1 2 1.3

2 1 .2

(39)

3.4.2 使用感についての評価

この節では「他の発音練習機器との比較」とíHPPの使用感Jについての評価に ついて述べる.

他の発音練習用機器との比較

表3.6に学習者による本ソフトウェアと他のメディア( カセット, ビデオ, CD,

LD)との使用感に対する比較結果を示す. この表から分かるように"手軽さ"以外の 項目ではいずれも本ソフトウェアがl位を占めている "手軽さ"に関してはカセッ

トが1位, CDが2位とな っている. カセットやCDはベッドの中でも車の中でも 利用できることを考えると当然の結果である

HPPの使用感についての評価

HPPの使用感について7つの項目について5点法(5. 強くそう思う, 4. そう思

う, 3. どちらともいえない, 2. あまりそう思わない, 1. 全くそう思わない )で評 価を行った . 表3.7に結果を示す. 調査項目のうち, 5 ) , 6)の"音声の視覚化"に 関するものが評価3 で, それ以外は4 以上の評価であった "音声の視覚化"の部分 の評価があまり高くなかったのは, アンケートの自由コメントから判断して波形の 見方がよく分からない学生が多かったのが原因であり, あらかじめ波形の見方を説

明するなりソフトウェアに組み込むべきであった.

表 1.1: コンビュータ活用等に関する教員の実態
図 3.5: Waveform  &amp;  Spectrogram
表 3.2:プレテストおよびポストテスト

参照

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