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耐候性鋼のさび安定化補助処理に関する研究

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

耐候性鋼のさび安定化補助処理に関する研究

小森, 務

https://doi.org/10.15017/1470561

出版情報:Kyushu University, 2014, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

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(様 式 2)

氏 名 :小森 務

論文名 :耐候性鋼のさび安定化補助処理に関する研究 区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

鋼 構 造 物 のライフサイクルコスト低 減 およびミニマムメンテナンスの要 望 から,耐 候 性 鋼 の需 要 が増 加 している。耐 候性 鋼が適 用される橋梁 などの鋼構 造物 は,人 目に触れ,鋼 構造 物だけでなく,その周辺 環 境 での美 観が要 求 される。この課題 を解決 するためにさび安 定化 補 助処 理が広く使用 されている。し かし従 来 のさび安 定 化 補 助 処 理 は処 理 膜 下 でゆっくりとさびを形 成 させるために,処 理 膜 が風 化 してさ び面 となるまでに長 期 間 が必 要 で,その間 のさび置 き換 わりによる外 観 のムラが問 題 となる。また,従 来 のさび安 定化 補助 処 理剤 ではクロム化合 物 などの環境 負荷の大きい重 金属 化合 物を使用 しており,環 境 保 全 の観 点 よりこれらの化 合 物 を使 用 しないさび安 定 化 補 助 処 理 剤 が望 まれていた。そこで本 研 究 では,環 境 負 荷 物 質 を使 用 せず,緻 密 なさびを優 先 的 かつ確 実 に形 成 することにより,耐 候 性 鋼 の本 来 有 する防 食 機 能 を早 期 に実 現 するさび安 定 化 補 助 処 理 を開 発 するために,さび形 成 過 程 における 共 存 さびの影 響 を調 査 し,さらに塩 化 物 イオンの透 過 を抑 制 するためにモリブデン酸 を混 合 した被 膜 を 耐候性鋼表面に形成 して,屋外暴 露を行い処理 膜 下で形成されたさびの組成や電気化学的 特性を調 査し,新型 さび安定化補 助処理の設計指針を明らかにした。

本論文は 7 章から成 る。第 1 章では,日本における耐候性鋼適用の歴史と耐候性鋼特有の表面 処理 技 術であるさび安定 化補 助 処理の現状 と課 題について調 査 した結果 をまとめ,本研 究の目 的 およ び本論文の構成を示した。

第 2章では,耐候性鋼 表面にγ-FeOOH およびα-FeOOH の粉末を乗せた状態での乾湿繰り返し腐 食試験 を行い,腐食により形 成されたさび層 を詳 細に調査 した。その結果 ,①さび形 成過 程で存 在 する 鉄 さびと同 じ結晶 構 造のさび形 成が助 長 されること,②保 護 性 さびと同 質の人 工 微 細 さびは,微細 なα -FeOOHを優先的に形成 し,γ-FeOOHやβ-FeOOHの形成を抑制する効果があること等が分かった。

さらに,保 護 性 さびと同 質の人 工 微 細 さびと水 蒸 気透 過 性 の高 い樹 脂 を混合 して作 製 した処 理 剤 を耐 候 性 鋼 表 面に塗 布 して大気 腐 食 環 境に暴 露する事 により,暴 露 初 期 段 階から樹 脂 被 膜 下で緻 密 なα

-FeOOH を主体とするさび層を形成させることに成 功した。また,腐食電 位およびアノード分極曲線を測

定して,アノード電流 密度 が暴露 16 年後の耐候性鋼の保護性さびと同等レベルまで小さくなることおよ び1年という短 期 間の暴露 で腐 食速 度の低 下 をもたらす保 護 性の高いさびが形 成されていることが分か った。以 上 のことより,早 期 に保 護 性 さびを形 成 するための新 型 さび安 定 化 補 助 処 理 として,保 護 性 さ びと同質の人工微細さびを含有する樹脂皮膜を活 用することが有効であると結論した。

第 3 章では,処 理膜に塩化物イオンの透過抑制機能を付与するために,処理膜へのモリブデン酸添 加 の影 響 を検 討 した。その結 果 ,処 理 膜 へのモリブデン酸 の添 加 により,①モリブデン酸が処 理 膜 中 の みでなく,処 理 膜 下 のさび層 にも分 散 すること,②処 理 膜 下 への塩 分 透 過 が抑 制 されて,β―FeOOH の形成が抑制 され,α―FeOOH を主体 とするさび層となること,③形 成されたα―FeOOH のさび結 晶 子が小さくなり,さび層が緻密化すること等を見出 した。

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第 4 章では,第 3 章で設計した新型のさび安定化補助処理の特性を小 型サンプルや橋梁模擬体 を 製作 して評価 した。処理 膜はさび形 成に伴い保 護 性さびの色 調(茶褐 色)に戻るため,長期に亘 って大 きな色 調 変 化がなく,色調 安 定 性に優れていることが分 かった。また,暴 露初 期 段 階 から処 理 膜 下では 腐食が進行し,処理膜下 に結晶性の低い数 nmレベルの微細なさび層を形 成することや裸使用の場合 よりも腐食量は少ない状 態で腐食速度が低下することが判明した。

第 5章では,長期暴露 による処理膜下のさび層の変化,処理膜が風化した後のさび層の特性につい て検 討 した。処理 膜が風化 した後のさび層 は,①高 耐 候 性鋼の場 合 ,地 鉄と密 着 した連 続 的 な消 光層 を形成し,鋼 材成分であるNiが濃化しており,地鉄界面への Cl 透過を抑 制すること,②通常の耐候性 鋼の場合,不連続な消光 層のさび層が形成され,地鉄界面でClが濃化すること,③処理膜に添加した モリブデン酸 はさび層 に分 散 していないこと等 が分 かった。また,さび組 成 および電 気 化 学 的 特 性 の点 から,同 じ鋼材 を裸 使用で同 じ期 間 暴 露した時に形 成 されるさび層 とさび組成 が同 質になり,電 気 化学 的 特 性 も同 等 であった。これらのことより,処 理 膜 が風 化 した後 には処 理 膜 から供 給 される成 分 の効 果 はなくなり,裸 使用で長期 暴露したさび層と同質になると結論した。

第6章では,第3章で設 計した新型のさび安定化補助処理について,実際 の鋼構造物への適用性の 観点から検 証した。処 理 膜の特性に影響 を与える処理現 場の環境や下層 処理と上 層処 理の塗装 間 隔 などの推奨 条 件 を明確にし,九 州 から北 海 道まで多 くの鋼 構 造物に適 用 した。新 型 さび安 定 化 補助処 理は、実 橋梁での美麗な外観を保持 しながら,早 期に処理膜下で保護性 さびを形成するさび安定 化 補 助処理として有望であることを示した。

第 7章は結論 であり ,各章で得られた 結果 をまとめている。

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