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火力発電用耐熱鋼の高強度化に関する研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

火力発電用耐熱鋼の高強度化に関する研究

山﨑, 重人

https://doi.org/10.15017/1441288

出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

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氏 名:山﨑 重人

論文題名:火力発電用耐熱鋼の高強度化に関する研究

区 分:甲

論 文 内 容 の 要 旨

火力発電の蒸気条件は年々高温・高圧化してきており、蒸気温度 620℃、蒸気圧力 31 MPa で

42%の熱効率が実現されている。現在は更なる高効率化の目標として、蒸気温度 700℃、蒸気圧

力35 MPaの先進超々臨界圧(A-USC)プラント開発が進行しており、A-USCプラントが実現す

れば熱効率は46%まで上昇すると見込まれている。

蒸気温度を向上させるためには、使用温度での長時間使用に耐えうる十分な耐クリープ性を有 する耐熱金属材料の開発が不可欠である。また、材料開発に合わせて、材料に生じたクリープ変 形による損傷を評価する手法の確立も必要である。このような、更なる高強度耐熱金属材料の開 発やクリープ損傷評価を実現するためには、クリープ変形挙動の正確な理解が必要であり、その ためにはクリープ変形機構に関する知見が重要である。しかし、火力発電プラントの実用環境に 相当する低応力では、火力発電用耐熱金属材料のクリープ変形機構に着目して行われた研究例は 少なく、低応力域での具体的なクリープ変形機構はおろか、低応力域と高応力域でクリープ変形 機構の遷移が生じるかどうかさえも明らかになっていない。

本研究では、フェライト系耐熱鋼に関して、低応力におけるクリープ変形機構の遷移の有無を 明らかにするとともに、低応力域でのクリープ変形に及ぼす微細組織の影響を明らかにすること を目的とした。また、フェライト系耐熱鋼の低応力クリープ変形に関して得られた結論を基に、

窒化物によって分散強化した新規フェライト系耐熱鋼の創製を目的として試作鋼の作製し、微細 組織と力学特性を評価した。さらに、A-USCプラントへの適用が検討されているオーステナイト 系耐熱鋼やNi基耐熱合金に関して、微細組織観察に基づくクリープ損傷評価法を提案することを 目的として研究を行った。

第1章では、火力発電の現状や火力発電プラントの高温部材に使用される耐熱金属材料と、ク リープ変形について説明し、本研究の目的と論文の構成を述べた。

第2章では、本研究で使用した、特に低応力・低ひずみ速度のクリープ変形測定に特化された コイルばねクリープ試験法について、応力とひずみの算出方法などについて詳しく述べた。また、

材料の微細組織観察に使用した走査電子顕微鏡法の結存原理や観察条件について説明した。

第3章では、フェライト系耐熱鋼の低応力におけるクリープ変形に関する研究結果を述べた。

試料として用いた二種類のフェライト系耐熱鋼では、どちらの鋼種も低応力域と高応力域ではク

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リープ変形機構が遷移した。クリープ変形機構が遷移する応力値 650℃では両鋼種共にせん断応 力で40 MPa程度であった。また、フェライト系耐熱鋼のひとつであるGrade P92鋼に対して、1000

時間から10000時間の焼鈍を行うことで、微細組織の変化がクリープ変形挙動に及ぼす影響を、

組織要素ごとに評価した。その結果、高応力域と低応力域では微細組織の変化に対するクリープ 強度の変化が異なっており、高応力域ではマルテンサイトラス組織を微細にすることが最もクリ ープ強化に寄与しているが、低応力域では主要な析出物である M23C6を微細かつ高密度に分散さ せることがクリープ強化に最も寄与していた。低応力域における具体的なクリープ変形機構に関 して考察し、最小ひずみ速度に粒径依存性がないことや、粘弾性変形を除外したひずみ-時間曲 線にも遷移クリープ挙動が現れたことから、主たるクリープ変形機構としての粘性クリープ機構 の可能性を否定し、低応力域においても粒子の分散強化が有効であったことを考慮して、この応 力域においても転位運動がクリープ変形を支配していると結論した。

第4章では、第3章で得られた、低応力域においてM23C6を微細かつ高密度に分散させること がクリープ強化に有効であるという結論を踏まえて、窒化物粒子を微細分散させたフェライト鋼 の創製を目的として行った研究結果を述べた。窒化物を分散させるために不可欠な、鋼中への窒 素添加方法について検討し、固相窒素吸収法や加圧エレクトロスラグ再溶解法を用いることで、

鋼中に0.1 wt.%から0.6wt.%の窒素と添加することに成功した。また、この鋼を780℃から800℃

で焼戻すことで窒化物の微細分散させることに成功した。加圧エレクトロスラグ再溶解法によっ て作製した窒化物分散フェライト系耐熱鋼のクリープ強度を既存鋼と比較したところ、高応力域 では既存鋼よりも高強度であったが低応力域では既存鋼よりも低強度であった。したがって、作 製した耐熱鋼は低応力域でのクリープ強度をさらに上昇させる必要があり、窒化物の分散状態や 界面構造などに着目した研究を進めていくと同時に、窒化物の熱的安定性に関しても明らかにす ることが求められる。

第5 章では、A-USC プラントへの適用が検討されているオーステナイト系耐熱合金に関して、

微細組織観察からクリープ損傷を評価する方法の確立を目的として行った研究結果について述べ た。クリープ変形の進行に伴う材料の結晶方位変化に着目し、微細組織の評価方法として結晶方 位変化の定量的・統計的な評価が可能な後方散乱電子回折法による測定を行い、結晶粒内の方位 変 化を 表 す 手法 の ひ とつ で あ る Kernel Average Misorientation(KAM) 値 や Grain Reference Orientation Deviation(GROD)値とクリープひずみの間に線形関係があることを見出し、プラン ト実機材料のごく一部をサンプリングし、KAM値やGROD 値を測定したうえで上述した線形関 係に代入することによって、材料に生じているクリープひずみの推定が可能であることを示した。

また、結晶粒内が分散粒子によって強化された材料ほど、結晶粒界近傍に方位変化が集中するこ とを明らかにし、このような材料では結晶粒界近傍の方位変化のみを抽出することによってクリ ープひずみ検出感度を向上させ得ることを明らかにした。

第6章では、本研究で得られた結論をまとめた。

参照

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