第二回 石油精製・流通研究会
石油流通業者による先物を活用した顧客ニーズへの対応と そのための環境整備について
2016 年 11 月 7 日
株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部
グローバルインフラコンサルティング部 上級コンサルタント
原田 純一
資料6
1.先物市場を活用するメリット
2.現金決済のメリット (現物決済との比較)
3.先物市場の一層の活性化に資する「現物スポット市場」の流動性改善の方向性
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先物を活用してフロー・ストックの価値変動を固定するメリット
石油製品は連産品であり、製品毎に需要の季節性が異なるため、生産から消費まで時間的なギャップが生じることがある。
入札や掛売りなどの顧客ニーズに伴う契約関係によって時間的ギャップが生じるケースもある。従って、石油ビジネスは、
先物を活用して売値・買値・利幅というフローの価値を固定しないとギャンブルになってしまう側面がある。世間では先物
=ギャンブルという印象論もあるが、むしろ逆であり、先物を使わずリスクを放置する方がギャンブルである。
①将来の売値を固定
(例)灯油の夏季在庫を冬に販売する
②将来の買値を固定
(例)掛売客や入札への応札で 販売価格が先に決定
③将来の利幅を固定
(例)クラックスプレッドを固定する
SS・商社等
冬の灯油販売
収入の下振れリスク
※先物市場で固定して
リスク回避夏の灯油仕入れ
仕入れコストは固定
SS・商社等
収入は落札価格で事前に固定 3か月後の仕入れ
3か月後の仕入れコスト上昇リスク
※先物市場で固定してリスク回避
元売
石油製品の販売
収入の下振れリスク
※先物市場で固定して
リスク回避原油調達
仕入れコストの上昇リスク
※先物市場で固定して
リスク回避④将来の資産価値を固定
(例)在庫評価損のリスクを回避する
3か月後の納品
在庫評価損
先物での利益
資産価値の維持
例: 「将来の仕入コスト」を固定するケース (現物決済型の先物を活用する場合)
10月に販売価格が確定した石油製品を、12月に仕入・納入する場合、12月時点の仕入コストが販売価格を上回り損 失が発生するリスクがある(入札で四半期後の石油製品納入を指値で落札したケースなど)。
10月にあらかじめ、先物市場で12月の買い価格を固定することによって、10月の現時点で利益を確定することができ る。
先物を「使わない場合」、コスト変動リスクを放置したことになり、ギャンブル的なビジネスになってしまう。現物取引の収入
売値が4500円で 先に固定された状況
12月に4000円程度で
仕入れると楽観的に予想して、
ヘッジしない場合
Aさんから灯油仕入
買値が5000円に上がっていたので 500円の損が出た
先物市場での収入
買いポジション20枚
12月に灯油を買うコストを4000円で買う権利を 10月の時点であらかじめ予約・固定。
利益を500円で確定できる。
500円の損失
500円の利益
買値5000円(時価)Aさんでなく、先物市場で権利を持つBさんから灯油仕入
-4000円
10月(現在) 12月
現物販売価格(12月渡し)=4.5万円/kl 現物スポット価格=5万円/kl 先物価格(12月限)=4万円/kl 先物価格(当月)=5万円/kl
油価高騰=コスト増の危機
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例: 現金決済でも同じリスク回避が可能 (「将来の仕入コスト」を固定するケース)
10月に販売価格が確定した石油製品を、12月に仕入・納入する場合、12月時点の仕入価格が販売価格を上回り損 失が発生するリスクがある(入札で四半期後の石油製品納入を落札したケースなど)。
現金決済を用いた場合、Aさんから灯油仕入するという物理的な取引には影響を及ぼすことなく、SSの経営安定・リス ク回避を実現できる。現物取引での収入
売値5000円
(12月の時価)
売値が4500円で 先に固定された状況
Aさんから灯油仕入コストが 5000円に増えて、500円の損。
先物市場での収入
買いポジション20枚
=12月に灯油をBさんから受ける権利
+4000円を払う義務
売りポジション20枚
=灯油を渡す義務+5000円貰う権利
=「5000円私が貰うので、
私の代わりに灯油を
Bさんから受けとって下さい」
=先物市場のポジションを解消
先物市場で
1000円の利益 500円の損失
トータルで500円の利益が、
10月時点で確約されていた
-4000円
(10月時点の 予約価格)
+5000円
(12月の時価)
反対売買で ポジション解消
10月(現在) 12月
現物販売価格(12月渡し)=4.5万円/kl 現物スポット価格=5万円/kl 先物価格(12月限)=4万円/kl 先物価格(当月)=5万円/kl
相殺
10月時点であらかじめコスト固定
先物市場を活用した新たなビジネスのポテンシャル
【先物市場の本質的な特徴】
先物市場のメリットは、将来のフローもしくはストックの価値変動リスクによる損失を回避する点にある。
他方で、価値変動による利益を取り損ねる(ある意味で我儘な)リスクも抱えることになる。
その意味では、例えば健康保険に加入したことにより、①大病の治療の際に破産するリスクは回避できるが、②健康のまま 長寿を全うした場合、払った保険料がもったいなく感じてしまうのと同じ構図。
例えば、同業他社がヘッジしないビジネススタイルの場合、①自分だけヘッジしたことによりリスク回避できて競走優位に立 てる局面と、②自分だけ相場変動による利益を取り損ねて相対的な競争で不利になる局面の両方がある。【ビジネスチャンスの方向性】
・同業社間で同時に飛び込むことで、相対的な競争劣後のリスクを緩和できないか。
・リスク回避ニーズの強い顧客を巻き込めないか。
【ビジネスの可能性の例】
・トラック協会、漁協、製紙会社、生協等の需要家、特に地域的な連合組織、組合等が一括で購入+ヘッジする。 (原油価格 高騰対策の中小需要家救済予算が節約できるのではないか)
・官公需など、予算・費用が上振れるリスクを特に嫌う顧客に対して、中小SS組合が顧客ニーズに応えた固定価格の販売をし つつ、調達価格をヘッジする。
・中長期的な需要減で余るであろう油槽所タンクを生協等が買い取り有効活用。夏場に灯油を在庫して冬に周りより安売りす る。
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2.現金決済のメリット(現物決済との比較)
1.先物市場を活用するメリット
3.先物市場の一層の活性化に資する「現物スポット市場」の流動性改善の方向性
現金決済の利点①:「系列販売と商標権の関係」を気にせずに商社・SSのリスク管理が可能
先物市場でガソリン等を購入すると、系列SSにとって非系列玉の購入になる場合があり躊躇するとの声がある。
しかしながら、現金決済であれば、現物の商流・物流に影響を及ぼさずに商社・SSのリスク管理が可能。
なお、(先物市場に限らず一般的な意味で、)系列SSが系列玉以外の安価な業転玉を購入し、系列サインポールの下 で消費者に販売することにより、元売との商標権を侵害したとされるケースがある。ただし、元売による商標保護の目的 を越える制限(全量購入義務等)は、独占禁止法上問題になる可能性がある。Copyright(C)Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
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(参考)系列販売と商標権の関係について
<全国石油協会経営実態調査(平成27年度調査)より抜粋>系列SSの仕入れに占める非系列玉の比率
<公正取引委員会 ガソリンの取引に関するフォローアップ調査報告書(本年4月発表)より抜粋>
‐50
‐40
‐30
‐20
‐10 0 10 20 30
13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10
価格変動幅(円/ℓ)
原油価格 海上
RIM
価格 陸上RIM
価格 元売卸価格 小売価格‐40
‐30
‐20
‐10 0 10 20 30 40 50
3/1 3/4 3/7 /10 4/1 4/4 4/7 /10 5/1 5/4 5/7 /10 6/1 6/4 6/7 /10
価格変動幅(円/ℓ)
A社 B社 C社 D社
現金決済の利点②:価格指標の参照ニーズに応えるために必要な「タイムリー性」の発揮
原油価格・元売卸価格・スポット市場価格・小売価格の変動幅の推移
2015年当初から、石油元売の卸価格(次週の通知価格、交渉による値引き前)は、原油価格や非系列スポット価格より 高い水準で推移している。
2008年以降の一時期は、TOCOMの直近の価格に連動したフォーミュラを採用する元売とその系列特約店もあったもの の、今ではほぼ見られない。
現在のTOCOMの商品が現物取引型のメニューしかなく、最終取引日(納会日、毎月の25日前後)に決済しても、商品 の受け渡しは翌月末になるため、約1ヶ月のタイムラグが生じる。このため、卸価格指標として求められるタイムリー性 に関して、ユーザーのニーズに応えきれなかったと思われる。原油価格:貿易統計(財務省)
海上RIM価格:ジャパン石油製品(リム情報開発)
陸上RIM価格:ローリーラック(リム情報開発)
元売卸価格:元売各社の加重平均値
小売価格:石油製品小売価格調査(資源エネルギー庁)
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(参考)石油元売各社の卸価格決定方法
移行期日
対象油種
価格指標
コスト連動卸価格
湾岸戦争以降
ガソリン/灯油/軽油/A重油
原油価格
精製コスト等
月次 価格改定タイミング
市場連動卸価格
2008年10月出荷分より
ガソリン/灯油/軽油/A重油
TOCOM石油製品先物価格
国内製品スポット市場価格
週次市場+コスト連動卸価格
2010年度中より
ガソリン/灯油/軽油/A重油
国内製品スポット価格
原油価格
海外石油製品スポット価格
週次
2014年度中より
ガソリン/灯油/軽油/A重油
原油価格
海外製品スポット価格 コスト連動卸価格
週次 石油元売の卸価格決定方法の変遷出所)各種資料よりNRI作成
石油元売各社の卸価格決定方法はコスト連動→市場連動→コスト連動へと変遷。
2014年度以降、国内製品スポット価格が価格指標として参照しにくくなっていると言われるものの、引き続き、価格交渉 の際の重要な情報源としての機能は求められている。現金決済の最終決済価格としてどの価格指標を採用すべきか
リム情報開発 Platts OPIS
対象油種
ガソリン、灯油、軽油、A重油、LSA重油、LSC重油、HSC重油(海上)
ガソリン、灯油、軽油、A重油、LSA重油(陸上)
ガソリン、灯油、軽油、LSA重油、HSA重油(海上)
ガソリン、灯油、軽油(海上)対象地域
東京湾、西日本(海上)
北海道、仙台・塩釜、千葉、東京・埼玉、川崎、中京、阪神、四国、福岡(陸上)
東京湾、中京、阪神
京浜、阪神情報ソース
石油元売、商社、トレーダー、販売業者、需要家等(リムによる電話取材)
JOX、リムトレーディングボード
プラッツウィンドウ
市場参加者(OPISによる取材)
JOX、TT市場 リム情報開発・Platts・OPISの石油製品価格情報の特徴価格評価の 優先順位
①
成約価格(OTC市場/JOX/リムトレー ディングボード)②
売り・買い唱え③
売り・買い気配
成約価格(プラッツウインドウ)①
成約価格(OTC市場/JOX/TT市場)②
売り・買い唱え(売り・買い気配を含む)③
TOCOM先物価格 匿名性
売り手・買い手の名称、個別の価格・数量は非公開
売り手・買い手の名称、個別の価格・数 量は公開
売り手・買い手の名称、個別の価格・数 量は非公開
価格報告機関として、事実上のデファクトの地位を確立しているRIM社に加えて、本年4月以降、Platts社、OPIS社(JCRMEのTT市場)が相次いで参入。各社の価格アセスメント手法にはそれぞれ一長一短があるところ、先物市場の 現金決済のメニューを作るとしても、どの指標を最終決済価格に採用されるのか、石油業界の関心が高まっている。
ユーザーの利便性を考えれば、実際のビジネスで指標として参照されている価格が採用されると、ヘッジがしやすくな るメリットがある。Copyright(C)Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
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ベースとなる石油製品
油種間スプレッド
様々な石油製品 原油
(参考) NYMEX石油先物の多様性①
NYMEX石油先物と様々な石油製品の関連性
原油やベースとなる石油製品の先物を油種間スプレッド先物と組み合わせることで、様々な石油製品に対応した先物 取引が可能。RBOB Gasoline Crude Oil (WTI)
Brent Last Day Financial
NY Harbor ULSD
Gulf Coast HSFO (Platts)
Gulf Coast ULSD (Platts) Up-Down
Gulf Coast Jet (Platts) Up-Down RBOB Gasoline Brent Crack Spread
Gulf Coast Unl 87 Gasoline M2 (Platts) vs. RBOB Gasoline
Gulf Coast Jet (Platts) Gulf Coast ULSD (Platts)
Gulf Coast Unl 87 Gasoline M2 (Platts)
Gulf Coast HSFO (Platts)
vs. European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) WTI-Brent Financial
: 先物(現金決済)
: 現物価格指標
: 先物(現物受渡可)
出所)NRI
NYMEX原油・石油製品先物の最終決済価格
No. 先物契約名 現物受渡 最終決済価格
1 Crude Oil Future
可2 RBOB Gasoline Future
可 直近月・最終日14:00-14:30の成約価格の加重平均値3 NY Harbor ULSD Future
可4 Brent Last Day Financial Future
なし 直近月・最終日の翌日の公表価格5 WTI Financial Future
なし7 WTI-Brent Financial Future
なし 直近月・各営業日の決済価格の単純平均値12 RBOB Gasoline Brent Crack Spread Future
なし6 Gulf Coast HSFO (Platts) Futures
なし13 Gulf Coast HSFO (Platts) vs. European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Futures
なし 直近月・各営業日の最高/最低価格の単純平均値19 Singapore Gasoil (Platts) Future
なし8 Gulf Coast ULSD (Platts) Up-Down Future
なし10 Gulf Coast Jet (Platts) Up-Down Future
なし18 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Crack Spread Future
なし20 Brent Crude Oil vs. Dubai Crude Oil (Platts) Future
なし9 WTI Midland (Argus) vs. WTI Financial Future
なし11 LLS (Argus) vs. WTI Financial Future
なし15 Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) Crack Spread Future
なし 直近月・各営業日の最高/最低価格の単純平均値(Argus)と直近月・各営業日の決済価格の単純平均値(Brent Future)の差
14 Mars (Argus) vs. WTI Trade Month Future
なし16 WTI Midland (Argus) vs. WTI Trade Month Future
なし17 LOOP Crude Oil Storage Future
現物のみ-
直近月・各営業日の最高/最低価格の単純平均値(Platts)と
直近月・各営業日の決済価格の単純平均値(NY Habor ULSD)の差 直近月・各営業日の最高/最低価格の単純平均値(Platts)と
直近月・各営業日の決済価格の単純平均値(Brent Future)の差 直近月・各営業日の加重平均価格の単純平均値(Argus)と 直近月・各営業日の決済価格の単純平均値(WTI Future)の差
直近月・各営業日の加重平均価格の単純平均値(Argus)と 直近月の前月のWTIフォーミュラ価格の差
(参考) NYMEX石油先物の多様性②
NYMEX石油先物の最終決済価格の決定方法には、主に3つのパターン(+それらの組み合わせ)がある。注)建玉数が多い原油・石油製品先物の上位20品目を掲載 出所)NYMEXデータよりNRI作成
① 当月最終日のNYMEXでの成約価格平均
② 当月中のNYMEXでの決済価格平均
③ 当月中の各価格指標の平均
②と③の組み合わせ
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3.先物市場の一層の活性化に資する「現物スポット市場」の流動性改善の方向性
1.先物市場を活用するメリット
2.現金決済のメリット(現物決済との比較)
国内先物市場の流動性を高めるには現物スポット市場の流動性向上が重要
満期前建玉決済(プリコンバージェンス)の発生メカニズム
先物価格は、最終取引日(納会日)が近づくにつれて、現物価格に収斂していく。
現物スポット市場の流動性が欠如していると、満期前建玉決済が多発し、先物取引の流動性が低下してしまう。価格
時間 10月31日 10月渡しの最終取引日 現物価格
先物価格
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国内石油製品市場の現状
国内生産(100%)
ガソリン:5,500万kℓ 灯油: 1,600万kℓ 軽油: 4,200万kℓ 輸入(2.3%)
ガソリン:120万kℓ 灯油: 85万kℓ 軽油: 56万kℓ
輸出(12.3%)
ガソリン:400万kℓ 灯油: 50万kℓ 軽油: 940万kℓ
国内供給(90%)
ガソリン:5,200万kℓ 灯油: 1,600万kℓ 軽油: 3,300万kℓ
市場取引玉(海上)
市場取引玉(陸上)
系列玉
元売業転価格出し玉
国内供給の約4%
国内供給の約5%
国内供給の約80%
系列SS
系列・非系列SS
国内石油製品取引構造(平成27年度)
出所)資源・エネルギー統計年報(資源エネルギー庁)、業界ヒアリング等よりNRI作成
海上マーケット
元売7社
商社20社程度
市場規模:30~40万kℓ/月陸上マーケット
元売7社
商社20社程度
地場販売業者30~40社
市場規模:40~50万kℓ非系列取引(国内供給の約20%)
現物スポット市場の現状
海上マーケット価格と元売市中購入量の推移
出所)リム情報開発データよりNRI作成
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000
‐14,000
‐12,000
‐10,000
‐8,000
‐6,000
‐4,000
‐2,000 0 2,000 4,000 6,000 8,000
月間元売市中購入量(kℓ)
対前月価格変動幅(円/kℓ)
価格変動 市中購入量
海上マーケットには、元売7社・商社20社程度が参加、推定取引成約数は50~60件/日。東燃G・昭和シェルが売りポジ ション、JX・出光・コスモ・太陽が買いポジションであり、市場価格は元売市中買いの影響を受けやすい。
陸上マーケットには、元売7社・商社20社程度に加えて、地場販売業者30~40社程度が参加。推定取引成約数は700~800件/日。元売が売りポジション、販売業者・最終需要家が買いポジションであるが、商社・販売業者の間で高い市場 流動性が確保されている。
海上・陸上マーケットの取引構造
出所)業界ヒアリング等よりNRI作成
陸上マーケット
元売
商社 商社
販売業者 販売業者
販売業者 最終需要家
海上マーケット
元売
(売りポジション)
元売 (買いポジション) 商社
元売市中買い
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石油タンクと石油市場の流動性
石油製品の世界的な現物取引市場(ロッテルダム港、ニューヨーク港、シンガポール等)には大規模な石油貯蔵能力が 整備されている。
これらの地域では、石油取引に参加しない独立系タンク業者が保有・賃借する石油タンクも多く、現物の受渡しが容易 な市場環境が整っている。通常は大規模な石油貯蔵タンクを持たない流通業者や金融機関も現物受渡場所としての石 油貯蔵能力を容易に確保することができる。
金融機関等の非当業者が貯蔵能力を確保し現物スポット取引を行うメリットとして、以下の3点をあげることができる。•
現物受渡がボトルネックとなって生じる取引価格の歪みを回避できる。•
現物取引を行わなければ知りえない情報を得ることができる(流通業者が買い増したいのか、買い控えようとしてい るかなど)。•
現物取引に参加できると、同業他社や投資家等の非当業者だけでなく、市場に対する見通しが違う様々な市場参 加者との取引が可能になり、現物・デリバティブを組み合わせてより有利な投資ポートフォリオを構築できる。
ゆえに、十分な石油貯蔵能力は現物スポット市場へのより多くのプレーヤーの参加を促し、石油市場の流動性に寄与 する。
例えば、欧州の石油取引の中心地(ARA地域)に位置するロッテルダム港の石油製品貯蔵能力は2,800万kℓ(日本国内 の総石油貯蔵能力は2,600万kℓ)にも及ぶ。そのうち、独立系タンク業者(Vopak、Odifjell、Petroplus、Oiltankingなど)の 貯蔵能力が全体の34%を占める。
過去のエネルギー関連の審議会においても、石油業界は既に他のエネルギー業界に比べて貯蔵設備の第三者利用が進 んでおり競争の厳しい業界として、他業界が見習うべき商慣習が紹介されている。
例えば、ガスシステム改革の議論においても、石油業界の先進的な取組・ノウハウを、ガス業界に提供・共有している。
欧州でも、LNG基地は需要が減少しており今後の新規投資が少ない分野ということもあり、第三者利用を求められている。現物スポット取引の活性化に寄与するタンク等貯蔵施設の有効活用(第三者アクセスの確保)
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20
0 5,000 10,000 15,000 20,000 元売油槽所
元売共同油槽所 商社系油槽所 流通業者系油槽所 農協系油槽所
貯蔵能力(千kℓ)
国内需要減少に伴う余剰タンクの有効利用のポテンシャル
73%
9%
13%
4%
1%
石油製品タンク能力(平成27年度)
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600
貯蔵能力(千kℓ)
元売共同/商社系/流通業者系/農協系油槽所のタンク能力(平成27年度)
会社名 所在地
ジャパンオイルネットワーク 苫小牧 75,240 N.A.
青森 30,033 N.A.
八戸 28,849 N.A.
松本 13,194
清水 38,918 357,271 N.A.
福井 32,500 N.A.
小倉 18,135 N.A.
福岡 97,430 N.A.
八代 22,972 N.A.
苫小牧埠頭 苫小牧 299,264 2,000 ~ 6,000
石狩 206,840 5,000 ~ 6,000
丸紅エネックス 千葉 153,756 6,000 ~ 85,000
名古屋 49,044 9,970 ~ 37,282
堺 274,770 9,500 ~ 113,000
門司 19,925 1,300 ~ 30,000
合計 1,360,870
着桟能力(DWT)
- 貯蔵能力(kℓ)
506,104
497,495
出所)石油設備調査(資源エネルギー庁)、ガソリンガイドブック(リム情報開発)等よりNRI作成
スループット契約により第三者にタンク賃借を行っている主要タンク業者
大半は自社取引・販売に 使用されている
元売共同 商社系 流通業者系 農協系
石油製品タンク能力の大半は石油元売が所有・使用、タンクを保有しない現物市場参加者が新たに賃借可能なタンク能力 は現時点では多くはない(下記タンク能力には、重油タンクや既契約中のタンクも含まれる)。
今後、国内需要の減少が中長期的に見込まれることから、元売・商社・特約店ともに余剰タンク容量が自然と増えてくる。そ れら既存資産を有効活用するビジネス・モデルを構築するのは有効ではないか。先物市場の流動性向上のための参加者の多様性拡大
先物市場において、石油当業者の中では需給の状況に応じて、ポジションの方向(売りor買い)が揃ってしまう傾向がある。
幅広いヘッジニーズを持った需要家を先物市場に巻き込むことにより、石油当業者の経営安定を実現できる。日本の先物 市場も、エネルギーの需要家や個人投資家の巻き込みをより一層進めることが望ましいのではないか。出所)「What drives crude oil prices? (US-EIA、2016年7月)」
石油当業者のNYMEX・WTI原油先物のポジション推移
建玉数(千枚)
注)当業者=原油生産者、精製会社、販売会社、大口ユーザー スワップディーラー=当業者等とスワップ取引を行う金融機関等
ファンド=コモディティ取引により顧客の資産運用を行うファンド・CTA等 その他大口=CFTCに報告義務があるその他の大口取引者
WTI原油の参加者の多様性と裾野の広さ
0 20 40 60 80 100 120
2016/1 2016/2 2016/3 2016/4 2016/5 2016/6 2016/7 2016/8 2016/9 2016/10
参加者数
当業者 スワップディーラー ファンド その他大口
出所)CFTCデータよりNRI作成 買いポジション
(先高予想)
売りポジション
(先安予想)
売り・買いの正味 のポジション