地域産学連携における機械システム活用による 新事業創出促進に関する調査研究
報告書
平成19年3月
財団法人 機 械 シ ス テ ム 振 興 協 会 委託先 財団法人日本立地センター
平 成
19 年 3 月 財 団 法 人
機
委 託 先 財
18 ︱ R ︱
15
地 域 産 学 連 携 に お け る 機 械 シ ス テ ム 活 用 に よ る 新 事 業 創 出 促 進 に 関 す る 調 査 研 究 報 告 書
システム技術開発調査研究
18−R−15
序
わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件 は急速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、教育等、
直面する問題の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます多様化、高度 化する社会的ニーズに適応する機械情報システムの研究開発が必要であります。
このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人機械システム振興 協会では、日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、機械システムの調査 研究等に関する補助事業、新機械システム普及促進補助事業を実施しております。
特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先端技 術、あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要がありますの で、当協会に総合システム調査開発委員会(委員長 政策研究院 リサーチフェロー 藤正 巖 氏)を設置し、同委員会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究事業を実施 しております。
この「地域産学連携における機械システム活用による新事業創出促進に関する調査研究 報告書」は、上記事業の一環として、当協会が財団法人日本立地センターに委託して実施 した調査研究の成果であります。
今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえで、本調査研究の成果が一つ の礎石として役立てば幸いであります。
平成19年3月
財団法人機械システム振興協会
はじめに
本調査研究報告書は、財団法人機械システム振興協会より、財団法人日本立地センター が平成18年度事業として受託した「地域産学連携における機械システム活用による新事 業創出促進に関する調査研究」の成果をまとめたものである。
わが国が格差社会、少子高齢化という未経験な時代に突入している現在、国際競争力の 復活及び更なる強化はもちろんのこと、地域の時代といわれる中で地域間格差により地域 が疲弊しないように地域産業の活性化への対応策を早急にとることが必要で、そのために は地域中小・ベンチャー企業を活性化することが急務であり、活性化により継続的な地域 イノベーションの創出が期待でき、地域産業の活性化につながる。
リニアモデル時代からオープンイノベーション時代へと変化し、自社で基礎研究から製 品開発、販路拡大まで全てをまかなう時代から、適時適切に自社にない技術は外部から導 入する方向へと変革している。地域中小・ベンチャー企業は生産技術や加工技術には独自 の強みがあるが、新事業・新製品を検討する際には、マーケティング戦略の視点が希薄で、
自社で保有しない技術を外部からいかに導入し、自社技術とどのように組み合わせていく かの戦略と戦術も十分とはいえず、地域の大学や公設試験研究機関(都道府県立の工業試験 場他)等が産学連携で支援していくことが必要で、オープンイノベーション時代の現在では 川中の研究開発&応用開発支援と製品化支援の重要性がより高まってきている。
このような現況の中で、本調査研究では、リソースが限られている地域中小・ベンチャ ー企業が自社の強みを効果的に活かすには、地域の大学や公設試験研究機関等との産学連 携による成功事例から成功要因を分析すると共に、自社のコア技術等に組み合わせるのに 効果的な周辺技術を外部から導入していくことが肝要であるとの考えから、どの技術の組 み合わせがよいか等を鳥瞰できる補助ツールとして、コア技術と周辺技術を体系化した「技 術体系」を作成した。一連の調査研究については、「地域産学連携技術体系調査委員会」
を設置し、有識者による議論検討を行った。議論を通じて、また「技術体系」を作成、整理 する過程を通じて、地域中小・ベンチャー企業が外部に求める技術の傾向や、地域の産業構
目 次 序
はじめに
1.調査研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2.調査研究の実施体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3.調査研究の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
第1章 調査研究の方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 1.1 調査研究全体の企画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 1.2 地域産学連携技術体系調査委員会の設置と開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 1.3 地域における産学連携での新事業・新製品創出事例の・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 推薦・提供・整理
1.4 地域における産学連携での新事業・新製品創出事例を・・・・・・・・・・・・・・・ 10 成功とみなす成功要件の検討
第2章 成功要因・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 2.1 成功事例についてのヒアリング調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 2.2 成功要因分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
第3章 技術体系・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 3.1 「技術体系」の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 3.2 「技術体系」の作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 3.3 「技術連携表」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82
4.調査研究の成果(まとめ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・111 4.1 産学連携のパターン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・111 4.2 成功要因分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112 4.3 「技術体系」と「技術連携表」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113 5.調査研究の今後の課題と展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・115 5.1 「技術体系」の活用について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・115 5.2 今後の新たなる課題と展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・117
【資料編】
1.調査研究の目的
(1)背景と必要性
わが国が格差社会、少子高齢化という未経験な時代に突入している現在、国際競争力の 復活及び更なる強化はもちろんのこと、地域の時代といわれる中で地域間格差により地域 が疲弊しないように地域産業の活性化への対応策を早急にとることが必要である。格差社 会是正のためには、企業雇用者の9割以上をしめる地域中小・ベンチャー企業を活性化す ることが急務であり、活性化により継続的な地域イノベーションの創出が期待でき、地域 産業の活性化につながる。
また、リニアモデル時代からオープンイノベーション時代へと変化し、自社で基礎研究 から製品開発、販路拡大まで全てをまかなう時代から、適時適切に自社にない技術は外部 から導入する方向へと変革している。
従来、地域中小・ベンチャー企業は大企業の下請けが主流で、「何を作るか」ではなく、
「どう作るか」に注力してきたので、生産技術や加工技術には独自の強みがある。しかし、
地域中小・ベンチャー企業が新事業・新製品を検討する際には、市場を見据えたマーケテ ィング戦略の視点が希薄で、自社で保有しない技術を外部からいかに導入し、自社技術と どのように組み合わせていくかの戦略と戦術も十分とはいえず、地域の大学や公設試験研 究機関(都道府県立の工業試験場他、以下「公設試」と略す)等が産学連携で支援していく ことが必要となる。
かつて、地域における新事業・新製品創出のために総合的支援体制としての地域プラッ トフォームが整備された。川上の基礎研究は研究も支援も主に大学・旧国研等が行い、川 中の研究開発&応用開発支援と製品化支援は主に公設試験研究機関が支援し、川下の経営 支援は産業支援機関(都道府県立の財団や商工会議所等)が実施した。支援ステージごと の完結型で、支援ステージ間の橋渡しや連携が脆弱であった。川下支援の経営支援等は比 較的手厚く実施されてきたが、オープンイノベーション時代の現在では川中の研究開発&
応用開発支援と製品化支援の重要性がより高まってきている。
一方、産業クラスター計画は今年度より第Ⅱ期に入り、知的クラスター創成事業は初年 度スタート地域では今年度が最終年で来年度からはポストクラスター期となり、地域の大 学や公設試験研究機関と地域中小・ベンチャー企業との産学連携により、実用化間近とい う状況が見受けられる。実用化には、不足している技術等を見極め、産学連携で導入方策 を検討することが必須である。
リソースが限られている地域中小・ベンチャー企業が自社の強みを効果的に活かすには、
地域の大学や公設試験研究機関等との産学連携による成功事例から成功要因を分析すると
の組み合わせがよいか等を鳥瞰できる補助ツールはほとんど見受けられない。コア技術と 周辺技術が体系化された「技術体系」があればより効率的である。
地域産学連携における新事業・新製品創出等の成功要因分析及び、「技術体系」を作成 することで、地域産業の活性化への参考となり、地域間格差是正につながるヒントを得る ことができると考える。
(2)調査研究の目的
そこで、本調査研究では、機械システム分野(機械材料分野、成形加工分野、メカトロ ニクス分野他)等における地域中小・ベンチャー企業関与の産学連携による新事業・新製 品創出成功事例から、コア技術に、マーケティング戦略を勘案しながら、いかなる周辺技 術を効果的に組み合わせたか等の技術面や、誰がどの時点でどのようなソフト支援を行っ たか等の成功要因を分析する。技術支援方策面では、客観性を持たせて産学連携進展の効 率化を図るための一つのツールとして、コア技術へ組み合わせる周辺技術を検討し、効率 的に新事業・新製品を創出するための「技術体系」のモデルを作成する。
各地域で産学連携による新事業・新製品を創出するのも、支援するのも人であり、「技 術体系」は、その人達が効率的に新事業・新製品を創出するための補助ツールという位置 づけである。本調査で作成するモデルとしての「技術体系」をベースとして、各地域に集 積している産業や技術に根ざした地域ごとの「技術体系」を地域の大学や公設試等が中心 となって作成し、活用されることで産学連携による地域中小・ベンチャー企業の新事業・
新製品創出の効率化が促進され、継続的な地域イノベーションが産み出され、地域産業が 振興し、地域間格差の是正に寄与することを目的とする。
基礎研究支援 製品化支援
新事業・製品化への産学連携支援 川下支援は充実
研究開発支援 応用開発支援
経営支援 マーケティング支援 資金支援
2.調査研究の実施体制
本調査研究は、財団法人機械システム振興協会の委託を受けて、財団法人日本立地セン ター立地総合研究所が、有識者から構成される「地域産学連携技術体系調査委員会」での 議論を踏まえつつ、機械システム分野の技術的な専門性が必要な「技術体系」作成の一部 は東北大学へ再委託し、以下の体制で実施したものである。
(委託)
財団法人日本立地センター 立地総合研究所
地域産学連携技術体系調査委員会
東北大学
財団法人機械システム振興協会 総合システム調査開発委員会
総合システム調査開発委員会委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長 政策研究院 藤 正 巖 リサーチフェロー
委 員 埼玉大学 太 田 公 廣 地域共同研究センター
教授
委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 金 丸 正 剛 エレクトロニクス研究部門
副研究部門長
委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 志 村 洋 文 産学官連携部門
コーディネータ
委 員 東北大学 中 島 一 郎 未来科学技術共同研究センター
センター長
委 員 東京工業大学大学院 廣 田 薫 総合理工学研究科
教授
地域産学連携技術体系調査委員会委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長 東京大学 渡 部 俊 也 国際・産学共同研究センター 副センター長
先端科学技術研究センター教授
委 員 北海道大学 山 本 強 情報基盤センター センター長
大学院情報科学研究科教授
委 員 九州大学 安 浦 寛 人 システム LSI 研究センター センター長
大学院システム情報科学研究院教授
委 員 東北大学大学院 堀切川 一 男 工学研究科機械システムデザイン工学専攻教授
委 員 先端科学技術エンタープライズ株式会社 若 林 拓 朗 代表取締役ジェネラル・パートナー
委 員 北海道大学 鈴 木 耕 裕 創成科学共同研究機構客員助教授、リエゾン副部長
委 員 北海道立工業技術センター 宮 嶋 克 己 研究開発部長
委 員 神奈川県産業技術センター 唐 澤 志 郎 副所長
委 員 クリエイション・コア東大阪 成 瀬 俊 彦 チーフコーディネーター
3.調査研究の内容
第1章 調査研究の方法
1.1 調査研究全体の企画
前掲の調査研究の目的にかなった、調査研究全体の企画を立案した。調査の流れは次の 通りである。
○調査研究の流れ
調査研究全体の企画
委員から地域における産学連携での新事業・新製品創出事例を推薦・提 供・整理
第一回地域産学連携技術体系調査委員会開催
地域産学連携成功事例のヒアリング調査、技術体系作成、技術連携表作成
第三回委員会での議論を踏まえた技術体系作成、技術連携表作成等 地域産学連携成功事例のヒアリング調査、技術体系素案検討
第二回地域産学連携技術体系調査委員会開催
第三回地域産学連携技術体系調査委員会開催 地域産学連携技術体系調査委員会の設置
1.2 地域産学連携技術体系調査委員会の設置と開催
機械システム分野等の有識者から構成される「地域産学連携技術体系調査委員会」を設 置し、委員会を3回開催し、地域における産学連携での新事業・新製品創出事例から成功 とみなす成功要件、成功要因分析、技術体系、報告書のとりまとめの方向性等の検討を行 った。
○第一回委員会(平成18年12月5日)
検討内容:調査研究全体の企画について
産学連携での新事業・新製品創出での成功要件について
○第二回委員会(平成18年12月25日)
検討内容:成功事例のヒアリング調査からの成功要因分析について 作成中の技術体系について
○第三回委員会(平成19年2月2日)
検討内容:技術体系について
報告書取りまとめの方向性について
1.3 地域における産学連携での新事業・新製品創出事例の推薦・提供・整理
「地域産学連携技術体系調査委員会」委員へ、次項に掲載する成功要件に合致する地域 における産学連携での新事業・新製品創出事例の推薦を依頼し、事例を提供してもらった。
委員からの推薦・提供に際しては、産学連携を広義にとらえ、委員が参画した事例と、
委員の周辺で生じ、ある程度委員が見聞きして知っている事例とした。
産学連携を広義にとらえることとしたので「地域産学連携技術体系調査委員会」委員か らは、産学連携の組み合わせとして「大学・公設試・企業」「大学・企業」「公設試・企 業」等のいずれのパターンも推薦・提供された。
推薦・提供された事例は、ヒアリング準備として、関係情報等を各々探索し、それらを 整理した。
1.4 地域における産学連携での新事業・新製品創出事例を成功とみなす成功要件の検 討
地域における産学連携での新事業・新製品創出事例を成功とみなす成功要件は、産学連携 のタイプによって様々である。何をもって成功とみなすかは、様々な場面で議論されてい る。今回は第1回「地域産学連携技術体系調査委員会」で、地域における産学連携での新 事業・新製品創出事例を成功とみなす成功要件について議論を行った。その結果、本調査研 究における成功とみなす成功要件は、次の通りとした。
○産学連携で新事業・新製品を創出している地域中小ベンチャー企業にとって、売り上げ 増加、雇用創出、IPO、大企業による買収等。
○産学連携で研究会等を立ち上げて競争的プロジェクト(知的クラスター創成事業、都市 エリア、地域結集型、地域コンソーシアム、新連携等)に採択され、産学連携で研究開発 を進め、製品化・実用化していること、あるいは製品化・実用化が間近であること。
○競争的プロジェクトに採択されている以外の産学連携プロジェクトで研究開発を進め、
製品化・実用化していること、あるいは実用化間近であること。
今回の成功要件の特徴は、実用化間近も含めたことである。なぜならば、知的クラスタ ー創成事業においては、初年度スタート地域は今年度が最終年度であり、研究プロジェク トの中には実用化間近のものがある。また、新連携はスタートして間もないが、実用化と その先の販路開拓を見据えて採択されているため、実用化間近のものも見受けられるから である。
第2章 成功要因
2.1 成功事例についてのヒアリング調査
「地域産学連携技術体系調査委員会」委員から、成功要件に合致した地域における産学 連携での新事業・新製品創出事例として推薦・提供された中から、次の37テーマをヒア リング対象とした。
産学連携で製品化・実用化に至る開発プロセスについて、「アイディア」「主たる研究開 発」「技術課題解決」「評価試験」「製品化・実用化」「販路開拓等」の開発ステージのい ずれかを担った大学、公設試、企業等へ直接対面して、ヒアリングを実施した。
なお、ヒアリングの詳細な内容については、報告書(本編)の資料編に参考資料として 掲載する。
(1)ヒアリング対象とした37テーマ
次の事例1~事例37までの37テーマを、ヒアリング対象とした。ヒアリングは平成 18年12月~平成19年2月に実施した。
・事例1.軽量・高出力コアレス型プリントモータ搭載電動刈払機(デン・カル)の開発
・事例2.降雪センサの開発
・事例3.気象用小型マルチセンサシステムの開発
・事例4.形状記憶ゲルを用いた人工医療弁の開発
・事例5.バイオメタルファイバーを利用した凍結回避デバイスの開発
・事例6.クラックフリー硬質クロムめっきの開発
・事例7.廃タイヤを処理した微粉末への特殊メッキ加工による新たな電磁波ブロック素 材の開発
・事例8.火力発電所脱硫剤混練成形用スクリューの開発
・事例9.歯のバイオリサイクルの開発
・事例
10.着氷防止エアマットの開発
・事例
11.ユキハナ物語(雪の結晶型紙石鹸)の開発
・事例
12
.電気式卓上ジンギスカン鍋セットの開発・事例
13.保冷ランチボックス GEL-COOL
の開発・事例
14.地図データに基づく立体地図製作技術の開発
・事例
15.高齢者ドライバーサポートシステムの開発
・事例
18
.真空装置(研究開発支援機器)の開発・事例
19.自販機型グルメ料理ロボットの開発
・事例
20.コンブ醸造酢「白い北国のコロンブ酢」の開発
・事例
21.「ナガノスペシャルタイプ1」ボブスレーランナーの開発
・事例
22
.無潤滑直線運動軸受けの開発・事例
23.タケコート(TAKECOAT)の開発
・事例
24.抗酸化型「有用微生物群+セラミックス」腐敗防止システムの開発
・事例
25
.マイクロコロニー自動計数装置の開発・事例
26
.ソダ・ゾーンクリーンユニットの開発・事例
27.陰圧型感染防止空気清浄機の開発
・事例
28
.シナジーウォーターの開発・事例
29
.金属ナノ粒子の工業生産の開発・事例
30
.フットケア製品、ダイナミック・ウォーキング・ナビゲーション、圧力分布測定器 の開発・事例
31
.パルスインジェクターシステムの開発・事例
32
.CMOS RF LSI
等の開発・事例
33.ブースマスターの開発
・事例
34.不揮発メモリ PermSRAMTM
の開発・事例
35
.TestPowerOptimizerTM
の開発・事例
36.超小型軽量アクチュエータ/サーボアンプ(多指ハンド)の開発
・事例
37.上肢用 CPM
の開発37の事例を製品化・実用化を担った企業が立地する地域別で見てみると、以下の通り である。
・北海道(旭川、小樽、札幌、函館):事例1~事例
20 20
件(54.1%)・山形:事例
21
~事例22
2
件(5.4
%)・東大阪及び周辺:事例
23
~事例31
9
件(24.3
%)・九州(北九州、福岡、八代):事例
32~事例 37 6
件(16.2%)に努めた。
1)産学官連携による製品化・実用化までに関するヒアリング項目
・産学官研究開発による製品化・実用化テーマ
・産学官連携タイプ
・産学官研究開発による製品化・実用化概要
・研究開発経緯
・(研究開発が開始した際の)アイディア(担った機関、大学教員等)
・主たる研究開発(担った機関、大学教員等)
・技術課題解決(担った機関、大学教員等)
・評価試験(担った機関、大学教員等)
・製品化・実用化(担った機関、大学教員等)
・販路開拓等(担った機関、大学教員等)
・研究開発期間
・研究開発に活用した主な競争的資金
・成功のポイント
・その他
2)製品化・実用化企業情報
・製品化・実用化企業名
・企業概要として所在地
・企業概要として設立(年)
・企業概要として資本金
・企業概要として代表者
・企業概要として従業員(数)
・企業概要として主要業務内容
・企業概要として研究開発&産学連携実績 等
(3)成功事例ヒアリング調査結果分析による地域産学連携の現況把握 1)現況把握の前提条件
①産業構造の違い
地域において産学連携を実施するにあたり、産業構造の違いがあることを踏まえる必要 がある。従来からその地域に集積している既存産業については裾野産業が広く、産産連携
大学や公設試等へ相談する前に、自然と技術課題解決が地元企業ネットワーク内で行われ ている。このような地域では、企業間の近接性も高く、Face to Face で会う機会も多く、
地域間の水平分業が行われ、信頼関係が成熟した地元企業ネットワークが構築され、技術 課題に直面した場合のファーストコンタクト先が地元企業であり、大学や公設試等ではな い。今回ヒアリングした地域では東大阪及び周辺(以下「東大阪」と記す)がこのタイプ で、地元企業ネットワークが構築され、産産連携が見受けられた。
既存産業、特に工業があまり集積していない地域では、地域内における製造業分野の産 産連携が行われにくい。そのような地域では、技術課題に直面した場合には自ずと大学や 公設試等へ相談する傾向が見受けられる。今回ヒアリングした地域では、北海道がこのタ イプで、知的クラスター創成事業による実用化が間近の企業群や、新連携に採択されてい る企業等は産産連携を行っているが、概ね大学や公設試へ相談している。
産業構造の違いにより、産産連携で技術課題が解決できれば、大学や公設試等へ相談す る頻度が自ずと減り、産学連携が一見活発でないように見受けられる場合もあることを認 識しておく必要がある。このような地域においては、産学連携が活発でないからといって、
企業の技術開発力が低いわけではない。反対に、大学や公設試が地元に立地していないか ら、産産連携で技術課題を解決し、技術力を研鑽しているともいえる。
②大学や公設試の立地や取り組み等の違い
上記①では産業構造の違いを論じたが、地域に大学(特に製造業系企業の技術課題解決 に対応可能な工学部等の理系学部等)や公設試等の立地の有無も、産学連携が活発化する かどうかに影響する。経営リソースの限られている地域中小・ベンチャー企業にとって、
気軽に短時間で相談できる先が存在しているかどうかが重要なファクターであり、企業と 大学や公設試等との近接性が産学連携活発化の要因の一つと考えられる。
実際に今回ヒアリングを実施した37テーマについて、大学や公設試等の立地の有無に より、産学官それぞれの担う役割が異なっているように見受けられた。今回のヒアリング から、工業があまり集積していない北海道では、公設試(北海道立工業試験場、北海道立 工業技術センター)が産学連携に深く参画しているケースがいくつもあった。
れた公設試研究員に熱心さ、技術的スキルの高さ、指導力が備わっていたことはいうまで もない。この事業を活用している企業の中には、公設試に頻繁に出向き、日頃から研究員 とのネットワークを深め、日常会話を通して公設試の重点研究テーマを知り、その一つを 自社の研究開発に活用したいと考え、公設試が主たる研究開発を担い、川下では販路開拓 等の技術営業まで公設試研究員が同行し、大企業への導入に成功したケースもある。
○北海道立工業技術センター
北海道立工業技術センターは北海道函館市に立地し、工業技術の高度化を促進するため に、 北海道が函館地域の中核的試験研究機関として開設し、財団法人函館地域産業振興財 団がその管理運営を行っている全国でも珍しい「公設民営」の試験研究機関である。概ね の研究員は、民間出身である。企業活動を支援する各種事業を展開するとともに、地域資 源である「ガゴメ」「イカ」の研究を中心に、函館エリアの都市エリア産学官連携促進事業 等の中心として地域企業を牽引している。中核機関を財団法人函館地域産業振興財団が担 い、核となる大学等公的研究機関を北海道大学大学院水産科学研究科と北海道立工業技術 センターが担っている。都市エリア等のプロジェクトの中心を公設試が担うのは珍しいケ ースであり、公設民営の利点をうまく活かしている。都市エリアの研究グループリーダー の一人である北海道大学大学院水産科学研究院安井肇助教授が、ガゴメの研究推進役とし て啓発活動等を担う一方で、北海道立工業技術センターが研究全体のコーディネーション を行っている。また、北海道立工業技術センターへ企業が製品開発等の希望を持って相談 した場合には、少額であっても企業との共同研究をまず開始し、研究開発の状況次第で、
競争的資金の獲得にトライアルし、充実した研究開発から製品化を実現している。
一方、工業が従来から集積し、企業間ネットワークが成熟している東大阪では公設試は 立地しておらず、産産連携が根強い。
大学や公設試の立地の有無はもちろんのこと、地域の大学に産学連携への理解が深い先 生方が存在していることや、公設試の研究員のコミュニケーション能力や当事者意識が産 学連携の推進を左右する場合が多いことも念頭におく必要がある。
③産業支援機関等のコミット
大学や公設試は、研究・技術課題解決・評価試験を担う場合が多いが、産業支援機関(地 方公共団体の外郭団体、商工会議所等)ではアイディアの前段階となる研究会メイキング やプロジェクトメイキングを行っているケースが見受けられる。従来、産業支援機関は資 金面の支援や経営支援等川下支援を担ってきた。近年では産業支援機関の機能が広がり、
ライアルし、競争的資金を獲得し、製品化・実用化につなげているケースがある。
○クリエイション・コア東大阪
クリエイション・コア東大阪がまさにこのケースで、研究会を立ち上げ、研究会に参画 する企業間ネットワークの機会と場を提供している。
クリエイション・コア東大阪は、技術力の高いものづくり企業が集積している大阪東部 地域において、中小ものづくり企業のイノベーションの促進を目的に、ものづくりに関す る総合的な支援施設として開設された。大阪府東大阪市荒本北に立地している。
公設試が立地していない東大阪で、産学連携による研究開発の拠点となっているクリエ イション・コア東大阪の果たしている機能は大きく、地元企業を知り尽くした地元商工会 議所の元役員が、クリエイション・コア東大阪の産学連携のチーフコーディネーターに就 任し、研究会メイキングやプロジェクトメイキングの中心となっている。
以上①②③で論じたように、日本全国どの地域でも一律に同様の産学連携を推進できる わけではなく、地域による産業構造のちがいや、大学や公設試等が立地しているかどうか、
大学や公設試等の産学連携担当者や関係者のモチベーション等、産業支援機関のコミット 等、産学連携の前提条件が介在していることを認識する必要がある。
2)地域産学連携の現況把握
これまで産学連携といえば大学の研究シーズを企業へ移転するという、大学の研究シー ズありきが主流であったが、今回ヒアリングを実施した産学連携成功事例では、企業のア イディアからスタートしたテーマが37テーマ中22件と最多で、59.5%であった。
大学のシーズからは9テーマで24.3%であった。ヒアリング事例は、産側は概ね地域 中小・ベンチャーであり、今回の事例においては、地域において成功している産学連携事 例が、必ずしも大学のシーズありきでないことが明らかとなった。
○今回ヒアリング実施の37テーマに関するスタートのアイディアを出した機関別割合 大学のシーズから 9テーマ (24.3%)
2.2 成功要因分析
ヒアリングから、地域産学連携における成功要因を分析した。ヒアリング項目の成功の ポイント等を中心に、「企業・大学・公設試に共通する成功要因」「企業における成功要 因」「大学における成功要因」「公設試における成功要因」別に、地域産学連携の成功要 因を分析し、一般化を試みた。なお、コア技術にいかなる周辺技術を組み合わせたか、技 術の組み合わせが誰によって検討されたか等は後掲する「技術体系」で述べることとする。
(1)企業・大学・公設試に共通する成功要因
1)信頼関係が成熟しているヒューマンネットワークの広さと深さ
産学連携ではどの開発ステージでも各種の課題が生じ、それらを解決するためには、様々 な人々の知恵や技術等を借りる場面が多い。どこの先生が、公設試が、企業がこの技術に は強く、外部へも対応してくれる等の情報は、インターネットや公開されているデータベ ース等から探せることはまれで、ヒューマンネットワークを通して求める相手に出会える ものである。信頼関係が成熟しているヒューマンネットワークの広さと深さが、企業・大 学・公設試に共通する成功要因である。
2)コミュニケーション能力の高さ
産学連携は単独で行うものではなく、他との知識や技術のやりとりで成立するものであ る。したがって、人と人とのコミュニケーション能力の高さは必須であり、企業・大学・
公設試に共通する成功要因である。
3)目標及び問題意識の明確さと共有
産学連携は手段であり、それが目的ではない。したがって、産学連携でどういう成果を 出したいのか、産学連携で何を解決したいのかという目標と問題意識を明確にしておくこ とが必須である。さらに、明確にした問題意識を産学連携に関与するメンバーが共有して、
同じ目標へのベクトルをあわせていくことが重要である。目標と問題意識の明確さと、そ れらを共有していくことが、企業・大学・公設試に共通する成功要因である。
4)問題解決意欲
単独では製品化・実用化することが難しいから産学連携をしているわけで、その過程は 乗り越えねばならない障壁が多く、容易なものではない。産学連携に参画するメンバー各々 が強い問題解決意欲、いいかえればモチベーションを持ち続けることが、企業・大学・公
5)知識共有の上手さ
産学連携の参画メンバー間で繰り広げられる知識のやりとりは、頻繁である。本来、産 学連携プロジェクトを一貫してマネジメントするプロジェクトマネジャーが必要である。
そのプロジェクトマネジャーに知識や情報を集中させておければ、プロジェクトがある程 度スムーズに進捗すると期待できる。しかし、通常、競争的資金獲得の大型プロジェクト の一部を除き、産学連携プロジェクトのプロジェクトマネジャーは存在しない。そこで、
参画メンバー間で産学連携プロジェクトの進捗に必須な知識を、適時適切に上手に共有し あっていくことが、企業・大学・公設試に共通する成功要因である。
6)主体的な当事者意識
産学連携ではアイディアを出した機関や人が当事者として製品化・実用化まで高いモチ ベーションを維持することが見受けられるが、他の参画メンバーがあまりに他人ごとでは 連携がスムーズに進捗するものではない。参画メンバー全員が主体的な当事者意識を継続 的に保有していくことが、企業・大学・公設試に共通する成功要因である。
(2)企業における成功要因
1)企業が技術課題解決相談先を確保していること(相談先とのネットワークの強さ)
企業が平素から技術課題解決のための相談先として公設試、大学、近接する他企業等の 組織を確保していること、さらには、公設試の特定の研究員、大学の特定の教員、他社の 経営者や技術者等との個人的ともいえる強いネットワークを構築していることが、企業に おける成功要因である。
企業が各種技術課題に直面した際に、気軽に立ち寄り、気軽に相談や話ができる関係を 公設試、大学、他社それぞれの特定の個人と個別に構築しているケースが、今回のヒアリ ングよりいくつも見受けられた。
相談したい時に相談できる先があれば、直接回答を得られずとも、適切な相談先を教え てもらえる。また、ネットワークが構築してあれば、相談したい時、気軽に、臆すること なく気軽に相談できる。
自社製品の開発を目途に中小企業経済同友会の「オンリーワン研究会」へ参画した東大
がある。そのために直面している技術課題を解決したいという熱意が、企業における成功 要因である。
技術課題を解決することで、従来保有していなかった新たなコア技術を獲得できる場合 や、新たに獲得したコア技術が高度で、ニッチな場合に、新たな受注が生じる場合も見受 けられる。
3)新たな製品開発・実用化へのチャレンジ精神
自社製品開発への旺盛な意欲とも類似するが、保有しているコア技術や新たに獲得した 技術を自社の強みとし、それらを新たな製品開発や実用化へ活用していこうとする地域中 小・ベンチャー企業のチャレンジ精神は、企業における成功要因である。
4)大学や公設試とのつきあい方の上手さ・活用の上手さ
大学や公設試へ共同研究を依頼した際に、相手先へお任せ状態にせず、
face to face
で顔 をあわせる努力を企業側が行い、真剣さを相手に伝えるととともに、共同研究の開発状況 を常時フィードバックしあう等、大学や公設試とのつきあい方の上手さは、企業における 成功要因である。企業は大学や公設試と産学連携を行っていることによる信用度の向上等、大学や公設試 が持っているオプション(大学のブランド、大学教員のネットワーク、公設試研究員のネ ットワーク等)を上手に活用している。これも、企業における成功要因である。
5)大学や公設試からの高水準要求技術レベルを乗り越える努力
大学や公設試からのアドバイスとして要求される技術レベルが高い場合、企業側の従来 保有している技術ではそれを乗り越えるのが難しくとも、要求される技術レベルに到達す るための企業側の努力が、企業における成功要因である。
要求される高い技術レベルを、試行錯誤しながらクリアーすることで、社員の人材育成 にも繋がる。
6)積極的な地域企業連携
企業間における仕事の融通や、技術に限定しない課題の相談と解決、新分野等の研究会 発足と維持等を積極的に地域企業連携で行っている地域が見受けられる。長年にわたって、
地元で構築された企業ネットワークにおける地域企業連携は、企業における成功要因であ る。
各企業同士が互いの強みを知っており、わからないことがあれば相談しあい、頻繁にデ
(3)大学における成功要因 1)産学連携への認知
個々の教員が産学連携に参画するかどうかは別問題として、教育と研究同様に、産学連 携も大学のミッションの一部に加わっていることへの教員らの認知が、大学における成功 要因である。
2)大学の産学連携における役割への柔軟な認識(シーズのみならず、評価試験も)
前掲したように、本調査研究では地域中小・ベンチャー企業における産学連携成功事例 を分析したところ、大学のシーズをベースとした産学連携よりも、企業のアイディアをベ ースとした産学連携の方が多かった。産学連携先企業の規模や、地域の産業構造のちがい はあるものの、大学の産学連携における役割として、大学シーズを企業へ移転することだ けではなく、適時適切なアドバイスや、コンサルティング等を行うことや、保有している 高額測定機器や市販されていないような特殊分析機器等を活用した評価試験等を行うこと で開発案件の信用度を向上させる等、大学の果たせる役割、求められる役割は広範囲であ る。実際に大学で評価試験を担った教員は、産学連携での研究開発へ投入する時間よりも 短時間で貢献できるメリットを強調していた。すなわち、大学の産学連携における役割へ の柔軟な認識が、大学における成功要因である。
3)地域の公設試との連携
大学と公設試が両者立地している地域では、企業が技術相談対応先を見極めていない場 合が見受けられる。どんな相談案件であっても大学へ相談に出向く企業があるが、現場に 近い技術指導を仰ぎたい場合には、公設試の方が望ましい。このあたりは、企業側への PR が必要ではあるが、企業側で判断できるものではない。そこで、大学と公設試が連携を深 め、大学が地元公設試の重要研究テーマや強みを知っていれば、大学への相談案件の内容 次第では公設試を適切に紹介することができるので、地域公設試との連携が大学における 成功要因である。
実際に、北海道大学と北海道庁は人事交流として、北海道大学創成科学共同研究機構リ エゾン部へ副部長として北海道立工業試験場から人材を派遣している。北海道大学リエゾ
4)地域の主力産業等におけるシンボリックパーソンの存在
地域によっては主力産業等の分野で大学教員がシンボリックパーソンとなり、その主力 産業振興に貢献するとともに、産学連携のネットワークのハブ機能やブランド機能を担っ ている。大学人たるシンボリックパーソンの存在は、地域産学連携における大学での成功 要因である。地域産学連携の推進に重要な人物である。
例えば、平成17年度における北海道の情報産業は売上高3,243億円で、5年連続 の増加傾向にある。平成17年度の従業員数は16,476人で、北海道の食料品製造業 に次ぐ雇用規模となっている。この北海道の情報産業が発展したベースは、1976年現 在の北海道大学名誉教授青木由直先生が開いたマイコン研究会に端を発する。情報産業を 札幌に集積させようという産学官の思いが一致し、次々と情報産業の核となる札幌テクノ パークと札幌エレクトロニクスセンター、新しいメディアを活用した地域活性化をめざす ネットワーク・コミュニティフォーラム(NCF)、2000 年には札幌 BizCafe がオープンし、
札幌情報産業はサッポロバレーとして全国的なブランドとなった。その中心人物が現在の 北海道大学情報基盤センターセンター長山本強教授である。札幌地域知的クラスターの研 究統括をはじめ、各種情報産業振興への中心的な役割を担っている。青木名誉教授、山本 教授とシンボリックパーソンの存在は大きい。
福岡県知事麻生渡氏は、九州、韓国、上海、台湾、香港、シンガポールを結ぶシリコン シーベルト地域と連携し、システムLSIの世界的な設計開発拠点を目指す「シリコンシ ーベルト福岡」プロジェクトを推進し、付加価値の高い設計・開発拠点を構築し、シリコ ンシーベルト地域の頭脳部分を担う研究機関・企業等の集積を図ることを目指ざしている。
シリコンシーベルトには多くの半導体関連の企業・大学・研究機関が集積し、世界の半導 体生産の約5割を担っており、九州には約60の半導体生産工場が立地している。福岡地 域の知的クラスター創成事業の研究統括の九州大学システムLSI研究センターセンター 長安浦寛人教授が中心となり、システムLSI設計開発者の養成を目指した福岡システム LSIカレッジを開設するなど、システムLSI産業の振興をはかっている。同様に福岡 大学工学部友景肇教授はデバイス実装研究会の設立、半導体実装国際ワークショップ「M AP2001」実行委員長、知的クラスターの研究代表者等、半導体実装分野でのリーダ ーシップ力が大きい。安浦教授、友景教授ともにシンボリックパーソンである。
(4)公設試における成功要因
1)従来型の技術指導・相談対応の域を出た産学連携への認識
従来から公設試の第一のミッションは、地域企業への技術指導や相談対応を行うことで あった。近年、技術指導や相談対応、あるいは共同研究の発展型として、産学連携による
技術課題解決や評価試験までを公設試のテリトリーと限定することなく、職務規程で可 能な限り、企業のニーズがあれば、従来の技術指導・相談対応の域を出た川下支援まで産 学連携の一貫支援として行うことが重要であるとの認識を持つことが、公設試における成 功要因である。
2)コーディネート力
地域中小・ベンチャー企業に最もフロントで接している公設試研究員が、産学連携プロ ジェクトの川上から川下までの各ステージの橋渡しをコーディネートしたり、適時適切な 参画者を見つけてくる等、公設試研究員の磨かれたコーディネート力が、公設試における 成功要因である。
コーディネート力を発揮するためには、地元大学との強力なネットワーク構築はもとよ り、地元の産産連携の実態等を把握しておくことも重要である。
3)組織対応力と個々の研究員の研究力・指導力
産学連携はもとより様々な場面において、大学の教員は個人名で参画・対応するが、公 設試は組織として対応する。これは、大学教員と公設試研究員のミッションや価値観の違 いはもとより、各々の長い歴史文化や哲学等が絡み合っていることで、どちらが良いとい うたぐいのものではない。公設試としては組織としての対応力が強みであり、それに加え て、個々の研究員の研究力や指導力が、公設試における成功要因である。
特に、企業ニーズからスタートし、主たる研究開発を公設試が行う場合、担当の研究員 が研究開発に注力するが、専門分野以外については他の研究員の専門知識が必要となる。
研究員同士のディスカッションもあれば、担当以外の研究員が企業へ助言や指導すること もある。課題解決の際に、公設試内の横の連携がスムーズに行われていると、技術課題の 解決がすみやかに行える。これは、外部へは組織対応力の良さであり、その原動力は個々 の研究力・指導力である。
(5)成功要因と反対の課題
ヒアリング等より、地域産学連携成功事例から成功要因を分析してきたが、次に示すよ
携わった人たちの間で認識されている。
2)売る専門家の必要性
産学連携による製品化や実用化が図られたとしても、川下での販路開拓は技術者や研究 者等には難しいカテゴリーである。1999年施行された新事業創出促進法で構築された 地域プラットフォームの中核となった産業支援機関は川下支援を担い、その後競争的資金 の管理法人を担当する等、役割を拡大・変化させているが、売る専門家としての機能へ特 化することは難しい。実際には、製品化できても販路開拓ができないケースは多く、売る 専門家が必要になってきている。
3)失敗事例から
ヒアリングを実施した37事例以外の失敗事例には、大学のシーズありきでスタートし ている場合も、企業のニーズありきでスタートしている場合もある。世界に一つのすばら しい技術であるとの思い込みから、市場性がないのに製品化したり実用化したりするケー スが以外に多く、需要のないものをどうやって売っていくか思案している企業が見受けら れる。
企業ニーズありきでスタートした失敗事例には、企業側が産学連携を何としてでも成功 させようという強い信念が欠如しているように見受けられる。企業ニーズからスタートし ている場合には、製品化・実用化の当事者である企業が消極的になると、産学連携プロジ ェクトを推進する意味合いが薄れてしまう。企業が消極的なのに、大学と公設試のみが熱 心に取り組むということはあまり見受けられず、企業が消極的では成功はしない。
第3章 技術体系
3.1 「技術体系」の検討
(1)「技術体系」作成の考え方
委員から推薦・提供のあった地域産学連携成功事例としての37テーマのヒアリングか ら抽出したコア技術と周辺技術を中心に、同分野で同じ階層の技術等を付加しながら、機 械システム分野等における「技術体系」を作成した。ある事例のコア技術が、別の事例で は周辺技術にかわる場合もあるので、「技術体系」にはコア技術、周辺技術という区分け はしていない。
また、部品数が数万点になる自動車のようなものをゼロから作るという事例は今回推 薦・提供がなかったため、「技術体系」にはアーキテクチャや技術戦略というカテゴリを 設けていない。ヒアリングの対象となっていない分野については、「技術体系」に原則あ まり盛り込んでいない。あくまで、本調査研究において作成した「技術体系」はヒアリン グ結果から作成したものである。
3.2 「技術体系」の作成
ヒアリングから各産学連携事例で使われた技術を取り出し、「技術の大分類」「技術の 中分類」「技術の小分類」「技術の細分類」「技術の詳細分類」の5階層とし、「技術の 詳細分類」に個別の№を付与し、各々については詳細技術に関する技術用語の説明や最新 の関連等を盛り込んだ「技術体系」を、財団法人日本立地センターと再委託先である東北 大学工学研究科機械システムデザイン工学専攻堀切川研究室で作成した。技術の詳細分類 は170にカテゴライズした。
「技術体系」は、次頁から「表1 機械システム分野等における技術体系」として掲載 する。本来「表1 機械システム分野等における技術体系」は、「技術の大分類」「技術 の中分類」「技術の小分類」「技術の細分類」「技術の詳細分類」「技術の詳細分類№」
「詳細技術に関する技術用語説明および最近の関連する特許等」までが1シートになった 表である。「技術体系」は膨大なため複数頁にわたるため、報告書掲載の編集上、「技術 の詳細分類№」を見開き左右頁の中心よりにそれぞれ掲載し、見開きで一つの表とした。
見開きは左の偶数ページに「技術の大分類」から「技術の詳細分類№」までを、右の奇数 頁に「技術の詳細分類№」と「詳細技術に関する技術用語説明および最近の関連する特許 等」を掲載している。
表1 機械システム分野等における技術体系
技術の大分類 技術の中分類 技術の小分類 技術の細分類 技術の詳細分類
技術の 詳細分類
No.
企画・開発作業における技術 企画・マーケティング技術 企画技術 シーズからの企画発想技術 ・シーズオリエンテッド発想 技術
1 ニーズからの企画発想技術 ・ニーズオリエンテッド発想
技術
2 マーケティング技術 質的・量的調査解析技術 ・ヒアリング・アンケート調
査実施解析技術
3 テストマーケティング技術 ・テスト販売技術 4 研究開発における技術 研究・開発系技術 試作・シュミレーション技術
実験・解析・評価技術 状態計測・解析・評価技術 ・材料の機械的性質評価 技術
7
・組成分析技術 8
・状態分析技術 9
・表面分析技術 10
・結晶構造分析技術 11
・形態分析技術 12
・分離分析技術 13 5
・光造形技術
仮想シュミレーション技術 ・3次元モデリング技術 6 モデル製作技術
技術の 詳細分類
No.
詳細技術に関する技術用語説明および最近の関連する特許等
1 自社生産資源や副産物利用発想技術,自社技術資源を用いた企画発想技術,自社人的資源を用いた企画発想技 術,自社販路資源を用いた企画発想技術
2 既存商品の不満や課題からの企画発想技術,新しい用途やシーンからの企画発想技術,時代課題的観点からの企 画発想技術,外部資源活用発想技術
3 セグメンテーション,ターゲッティング,多変量解析など
4 新商品の本格的な市場導入に先立ち、地域や期間を限定して試験的に実市場で販売する技術
光照射によって形状加工を行う技術.感光性樹脂に紫外線,レーザ光などを照射し,光化学反応jにより立体物を製 作する.通常光照射は,コンピュータ制御または原図フィルムを透して行われ,液状の感光性樹脂を局所硬化させ る.
・特許公開2007-023250 光学的立体造形用放射線硬化性液状樹脂組成物及びそれを光硬化させて得られる光 造形物
・特許公開2006-348214 光造形用光硬化性液状組成物、立体造形物及びその製造方法
・特許公開2006-348210 光造形用光硬化性液状組成物、立体造形物及びその製造方法
・特許公開2006-314580 顎模型の造形方法
・特許公開2006-297953 光造形装置
二次元の画面に三次元のモデルを表示する三次元グラフィック技術などがある.三次元グラフィック技術では,三次 元のモデル線を用いて表現するワイヤフレーム,面を用いて表現するポリゴンモデルまたはソリッドモデルなどの表 現形態がある.また,より現実に近い映像表現を得るために,ポリゴンにビットマップでーたを貼り付けるテクスチャ マッピングなどが行われている.さらに,視差による立体視を可能とするディスプレイの利用により,三次元の表現も 可能になってきている.
・特許公開2006-072837 製品設計方法、製品設計装置、製品設計システム及び製品設計プログラム
・特許公開2005-037379 三次元モデリング方法と装置
・特許公開2004-264937 三次元モデリング方法および装置
・特許公開2003-343697 歯車の三次元モデル作成方法
・特許公開2003-271928 三次元モデリング装置及びその方法及びそのプログラム
7 引張り試験,曲げ試験,圧縮試験,シャルピー衝撃試験,疲労試験,硬さ試験,スクラッチ試験,摩擦・摩耗試験,耐 食性試験など
8 分光光度計,蛍光光度計,蛍光偏光装置,りん光測定装置,時間分解蛍光光度計,蛍光寿命計,レーザー励起蛍 光光度計,化学発光分析形,フレーム原子吸光分光光度計,電気加熱原子吸光分光光度計,還元気化原子吸光分 光光度計,水素化物発生原子吸光分光光度計,誘導結合プラズマ発光分光光分析装置,マイクロ波誘導プラズマ 原子発光分光光分析装置,炎光分光光度計,スパーク放電発光分析装置,波長分散型蛍光X線分析装置,エネル ギー分散型蛍光X線分析装置,四重極型質量分析計,二重収束型質量分析計,飛行時間型質量分析計,タンデム 質量分析計,pH計,酸化還元電位計,直流ポーラログラフ,電解分析装置,電量分析装置,隔膜電極式酸素計,導 電率計,バイオセンサー,ガスセンサー,オプティカルセンサー,温度滴定装置,光度滴定装置,電気滴定装置,水 分測定装置,γ線測定装置など.
9 全反射蛍光顕微鏡,分散型赤外分光光度計,非分散型赤外分光光度計,顕微測定用フーリエ変換赤外分光光度 計,近赤外分光光度計,FT-ラマン分光光度計,顕微ラマン分光光度計,旋光計,旋光分散計,円二色性分光計,
光音響分光装置,光音響顕微鏡,核磁気共鳴装置,電子スピン共鳴装置,パルス電子スピン共鳴装置(フーリエ変 換ESR法),熱重量測定装置,示差熱分析装置,示差走査熱量計,熱機械分析装置,熱量計,比熱測定装置,メス バウアー分光装置など
10 電子線マイクロアナライザー,全反射蛍光X線分析装置,X線反射率測定装置,X線光電子分光装置,オージェ電子 分光装置,電子線回折装置,二次イオン質量分析計など
11 粉末X線回折計,単結晶回折計,粉末中性子回折装置,X線吸収分光装置,X線応力測定装置など
12 透過電子顕微鏡,走査電子顕微鏡,分析電子顕微鏡,光学顕微鏡,走査トンネル顕微鏡,原子間力顕微鏡など 13 高速液体クロマトグラフ,分取液体クロマトグラフ,イオンクロマトグラフ,液体クロマトグラフー質量分析計,液体クロ
マトグラフー核磁気共鳴装置,ガスクロマトグラフ,ガスクロマトグラフー質量分析計,超臨界流体クロマトグラフ,薄 層クロマトグラフ,等速電気泳動装置,等電点電気泳動装置,ゾーン電気泳動装置,ゲル電気泳動装置,フローイン ジェクション分析装置,向流分配クロマトグラフなど
14 数学式,物理・工学などの現象を記述する基礎方程式やモデル方程式を離散化してコンピュータを用いて数値的に 解を得たり,現象の再現・予測・解明を行う技術.高精度な解を効率よく求めるためには適切なスキームおよび現象 を正確に記述することのできるモデルを使用することが重要であり,またそれらを構築する必要がある.一般に数値 計算では実数を有限桁の浮動小数点として扱うので,計算機の丸め誤差などについても十分考慮する必要がある.
製品の応力解析,流体解析,電磁場解析などに用いられる.
5
6
表1 機械システム分野等における技術体系
技術の大分類 技術の中分類 技術の小分類 技術の細分類 技術の詳細分類
技術の 詳細分類
No.
研究開発における技術 研究・開発系技術 実験・解析・評価技術
・性能評価・官能検査技 術,臨床試験
設計における技術 デザイン技術
・3次元CAD技術、CGシュ ミレーション技術
18 3次元形状設計技術、色彩デザ
イン、カラーコーディネート技術 意匠デザイン技術
15
・製品に対する検査技術・
検査装置技術
機械設計 機械要素・機能要素・機械シス テム設計技術
17
・機械要素・機能要素技 術,システム設計技術,
16 性能評価・官能検査・計測技術