建 設 マ ネ ジ メ ン ト研 究 論 文 集 Vol. 11 2004
国道 事 務 所 に お ける
知 識 の 共有 と利 活 用 の方 法 論 に 関す る― 考 察
国 土 技 術 政 策 総 合 研 究 所 ○ 高 橋 裕 輔*1、 上 坂 克 巳*1、 奥 谷 正*2 by Yusuke TAKAHASHI, Katsumi UESAKA, Tadashi OKUTANI
現 代 社 会 に お け る 新 た な 行 政 課 題 の 出 現 や 国 民 の 価 値 観 の 多 様 化 を 受 け 、 行 政 は こ れ ま で 以 上 に 多 様 で 幅 広 い 知 識 を 吸 収 し 、 行 政 が 提 供 す る サ ー ビ ス の 改 善 や 住 民 等 と 行 政 と の 良 好 な 関 係 の 構 築 に 活 用 し て い く 必 要 が あ る 。 国 土 交 通 省 の 国 道 事 務 所 で は 知 識 の 共 有 の 不 足 に 起 因 す る と考 え られ る 課 題 が 生 じ て い る が 、 そ の 原 因 と し て は 、 こ れ ま で の 取 り組 み が 情 報 ツ ー ル に 依 存 しす ぎ て い た こ と 、 業 務 プ ロ セ ス を 最 適 化 す る 方 法 論 を 確 立 で き て い な い こ と 、 さ ら に は こ う し た 方 法 論 に 基 づ く 業 務 の 再 構 築 が で き て い な い こ と が 考 え ら れ る 。 こ の た め 著 者 ら は 、 よ り よ い 行 政 サ ー ビ ス を 提 供 す る た め の 業 務 プ ロ セ ス の 構 築 を 目 指 し 、 組 織 的 に 知 識 を 共 有 し利 活 用 す る た め の 方 法 論 の 開 発 に 取 り組 ん で き た 。 方 法 論 の 仮 説 は1)目 標(ゴ ー ル)、2)推 進 体 制 、3)人 材 の 学 習 と 育 成 、4)知 識 、 共 有 の 場 、 か ら 構 成 さ れ る 。 本 研 究 で は 、 こ の 方 法 論 の 仮 説 を 国 道 事 務 所 の 業 務 改 善 に 試 験 的 に 適 用 す る こ と に よ り 、 そ の 有 効 性 を 実 証 し た 。 さ ら に 、 こ れ ら の 実 践 的 な 取 り組 み を 通 じ て 、 本 研 究 で 提 示 し た 方 法 論 の 仮 説 が 内 包 す る 課 題 に つ い て 考 察 を 加 え た 。
【キ ー ワー ド】戦 略 、 意 思 決 定 、 組 織 、 行 政 、 ナ レ ッジ マ ネ ジ メ ン ト、 業 務 改 善
1.は じめ に (1)研 究 の 背 景
現 代 の 日本 社 会 は 、 人 口減 少 や 高 齢 社 会 の 到 来 、 環 境 へ の 関 心 の 高 ま り、 ノ ウハ ウや 技 能 を含 む 知 識 が 労 働 者 や 企 業 の 競 争 力 の 源 と な る 知 識 社 会 へ の 発 展 、 そ れ に 伴 う都 市 構 造 の 変 化 な ど、 様 々 な 変 化 に 直 面 して い る。1),2),3)ま た 、国 土 交 通 行 政 の 主 要 な役 割 で あ る 国 づ く り、 地 域 づ く り に お い て は 、 政 策 決 定 プ ロセ ス の 透 明 性 の 向 上 や 多 様 な 主 体 の 参 加 等 が 強 く求 め られ て お り、 幅 広 い 国 民 の 知 識 を 行 政 が 十 分 に 取 り込 み 、 政 策 立 案 や 執 行 に利 活 用 して い く こ と が 期 待 され て い る 。4),5)こ れ らの 社 会 環 境 の 変 化 に 対 応 し、 行 政 は 迅 速 か つ 柔 軟 な 業 務 改 善 に
自律 的 に 取 り組 む 必 要 が あ る。
しか しな が ら国 道 事 務 所 の 現 状 を 鑑 み る と 、 目に 見 え る形 で 問 題 が 生 じな い 限 り現 状 維 持 志 向 が 強 く、
多 くの 知 識 が 属 人 的 あ るい は 組 織 タ テ 割 りで 保 有 さ
れ て い る 。 そ して 例 え ば 、類 似 の 苦 情 を 毎 年 繰 返 し 受 け る 、 同 一 の 国 道 事 務 所 内 で あ っ て も担 当者 に よ り住 民 に 対 す る 説 明 の 内 容 が 異 な る 、 人 事 異 動 に よ り重 要 な 知 識 の 引 き継 ぎ が 途 絶 え て し ま う等 の 、 こ れ ま で に 蓄 積 して きた 知 識 を組 織 の 意 思 決 定 に 十 分 に 活 用 で き て い な い とい う課 題 が 生 じて い る 。
これ らの 課 題 の 背 景 に あ る 共 通 の 原 因 と し て 、 組 織 横 断 と時 間 の 経 過 とい う二 つ の 面 か らの 組 織 的 な 知 識 の 共 有 と利 活 用 の 不 足 が あ る と考 え られ る。6) そ して 、 組 織 的 な 知 識 の 共 有 や 利 活 用 が 円 滑 に 推 進 で き な い 本 質 的 な 原 因 は 、 情 報 技 術 を 用 い た ツ ー ル に依 存 しす ぎ た た め 、 知 識 を 共 有 し利 活 用 す る た め の 体 制 整 備 や 現 場 で 知 識 を 取 り扱 う職 員 の 能 力 の 向 上 を 含 め た 、 組 織 的 に 知 識 を 共 有 し利 活 用 す る た め の 方 法 論 を 確 立 で き て い な い こ と、 さ ら に は こ う し た 方 法 論 に 基 づ く戦 略 的 な 業 務 の 再 構 築 が で き て い
な い こ とに あ る と考 え られ る 。
*1国 土 交 通 省 国 土 技 術 政 策 総 合 研 究 所 高 度 情 報 化 研 究 セ ン タ ー 情 報 基 盤 研 究 室tel 029‑864‑4916
*2国 土 交 通 省 四 国 地 方 整 備 局 土 佐 国 道 事 務 所
な お 、 著 者 は 知 識 を 「 意 思 決 定 を支 援 す る た め に 必 要 な 知 見 、 意 思 決 定 の根 拠 と な る知 見 」 と定 義 し て い る。6)本 論 文 で 論 じて い る知 識 は 、情 報 よ り も 付 加 価 値 が 高 く、 意 思 決 定 の 根 拠 に な る ノ ウハ ウや 知 見 を 意 味 す る 。
(2)研 究 の 目 的 と概 要
本 研 究 は 組 織 的 に 知 識 を 共 有 し利 活 用 す る た め の 方 法 論 を確 立 し、 そ れ を 国 土 交 通 省 の 国 道 事 務 所 に 適 用 す る こ と に よ り行 政 サ ー ビス の 質 と効 率 の 向 上 を支 援 す る こ と を 目的 と した 。
本 研 究 で は 、 高 橋 ・奥 谷(2003)7)で 報 告 し た 情 報 基 盤 研 究 室 に お け る試 験 的 な 取 り組 み の 結 果 に 基 づ き 、目標(ゴ ー ル)・推 進 体 制 ・人 材 の 学 習 と育 成 ・ 知 識 共 有 の 場 か らな る 方 法 論 の 仮 説 を 定 め た。 国 道 事 務 所 の 業 務 を 対 象 と し て こ の 方 法 論 の 仮 説 を 試 験 的 に 適 用 し 、 国 道 事 務 所 に お け る知 識 の 、 共 有 と利 活 用 及 び そ れ に よ る業 務 の 再 構 築 の た め の 方 策 を 提 案 した 。さ ら に 、これ らの 実 証 的 な 取 り組 み に 基 づ き 、 本 研 究 で 定 め た 方 法 論 の 仮 説 が 内 包 す る課 題 に つ い て 考 察 した 。
な お 業 務 の 再 構 築 は 、 現 行 の 行 政 の 仕 組 み を べ ー ス に 実 現 可 能 な 内 容 とす る こ と を基 本 に お い た 。
2.行 政 に 期 待 さ れ る 知 識 の 共 有 と 利 活 用
民 間 企 業 に お い て 知 識(ナ レ ッ ジ)は 重 要 な 経 営 資 源 で あ り、 そ れ を組 織 的 に 共 有 し利 活 用 す る こ と に よ り新 しい サ ー ビス の 開 発 や 業 務 の 改 善 に 取 り組 む こ とが で き る とい う認 識 が 拡 が っ て き て い る 。6), 7)本 研 究 の 対 象 で あ る 国 道 事 務 所 が 取 り扱 う必 要 が あ る 知 識 は 多 岐 に わ た る 。 こ こ で は住 民 や 道 路 利 用 者(以 下 、 住 民 等 とい う)と 行 政 との 関 係 の 強 化 ・
改 善 を 支 援 す る た め に 重 要 と考 え られ る 知 識 を 事 例 に 、 国道 事 務 所 が 知 識 を組 織 横 断 的 に 共 有 す る 必 要 性 に つ い て 論 じ る 。
(1)新 しい 行 政 マ ネ ジ メ ン トの 登 場
国 づ く り、 地 域 づ く りに お い て は行 政 の 透 明性 の 向 上 、 多 様 な 主 体 の 参 加 と合 意 形 成 等 が 求 め られ て い る 。 こ の よ うに 行 政 活 動 に 住 民 等 が 主 体 的 に 参 加 す る とい う傾 向 は 先 進 諸 国 の 社 会 で も広 く 見 受 け ら れ る 。 近 年 の 行 政 改 革 を進 め る 際 の 考 え 方 の 一 つ と
して 、 ニ ュ ー ・パ ブ リ ッ ク ・マ ネ ジ メ ン ト(NPM) 理 論 が あ る。
1970年 代 以 降 の 経 済 成 長 の 鈍 化 、相 互 に 矛 盾 す る 多 様 な 政 策 課 題 の 出 現 等 に よ り公 共 部 門 が 国 民 の 信 頼 を 失 い つ つ あ っ た とい う社 会 情 勢 を 背 景 に 、1980 年 代 か らOECD諸 国 を 中心 にNPM理 論 に 基 づ く行 政 改 革 が 登 場 して き た 。 宮 川 ・山 本(2002)8)や 大 住(2002)9)に よ れ ば 、NPM理 論 の 基 本 原 理 の う ち 主 要 な も の は 、 成 果 志 向 、 顧 客 志 向 、 市 場 機 構 の 活 用 、 分 権 化 の 四 点 とい え る。 成 果 志 向 は 、 予 算 や 手 続 き を 重 視 す る考 え方 か ら業 績 評 価 等 に よ る 国 民 に 対 す る ア カ ウ ン タ ビ リテ ィ を 重 視 す る考 え 方 へ の 変 化 で あ る。 顧 客 志 向 は 、 政 府 と国 民 や 住 民 との 関 係 を 民 間企 業 と顧 客 の 関 係 と 同 様 に 見 な し、 行 政 サ ー ビ ス の 改 善 に取 り組 む とい う変 化 で あ る
。 市 場 機 構 の 導 入 は 、公 共 部 門 に 競 争 原 理 や 民 間 企 業 に お け る 経 営 管 理 手 法 を 導 入 す る とい う変 化 で あ る。 分 権 化 は 、 国 と地 方 との 間 の 地 方 分 権 、 公 共 と民 間 と の 間 の 規 制 緩 和 と い う変 化 で あ る。 い ず れ の 変 化 も 、 政 府 の み に よ る一 元 的 な 統 治 か ら多 様 な 主 体 の 協 働 に よ る 統 治 へ と 、 社 会 と政 府 との 関係 や 役 割 を 見 直 す も の で あ る。
以 下 で は 、 住 民 等 と行 政 との 知 識 の 共 有 に 大 き く 関 連 す る 、 顧 客 志 向 及 び 多 様 な 主 体 の 協働 に 着 目 し て 論 を進 め る。
(2)行 政 に お け る顧 客 志 向 と 対 応 の 困 難 性
顧 客 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 重 視 や 顧 客 の ニ ー ズ の 把 握 は
、 公 共 部 門 よ り も 民 間 部 門 に お い て 早 く か ら強 く意 識 され て い る。 民 間 部 門 は顧 客 に対 し て 物 品 や サ ー ビス を提 供 して 対 価 を獲 得 し、利 益 を 得 る とい う こ と を 基 本 的 な 業 務 と して い る の だ か ら 当 然 の こ とで あ る。 例 え ば ドラ ッカ ー(1954)10) や 伊 丹(1984)11)は 、 事 業 の 成 否 は 顧 客 が 握 っ て お り、 企 業 は 顧 客 の ニ ー ズ の 本 質 や そ れ を 満 た す た め に 提 供 で き る サ ー ビス の 本 質 を 考 え な け れ ば な ら な い と い う こ と を述 べ て い る。
本 研 究 で は 、 住 民 あ る い は顧 客 か ら受 け た 問 い 合 わ せ や 苦 情 等 の 知 識 を 、 組 織 的 に 共 有 し利 活 用 して い る 先 進 的 な 事 例 を 把 握 す る た め 、 公 共 部 門(三 重 県 、 札 幌 市)と 民 間 部 門(キ ヤ ノ ン 、東 京 電 力 、 ラ イ オ ン)に 対 して ヒ ア リ ン グ及 び 文 献12)〜17)に よ る 調 査 を 実 施 した 。
まず 民 間 部 門 に お い て は 、 近 年 は 大 半 の 消 費 財 が
概 ね 消 費 者 の 間 に 行 き渡 り、 消 費 者 の 購 買 動 機 づ け
が 多 様 化 、 個 性 化 して き た こ と か ら顧 客 志 向 は ま す ま す 強 ま っ て お り、 カ ス タ マ ー ・リ レー シ ョ ン シ ッ プ ・マ ネ ジ メ ン ト等 の 手 法 を用 い て 顧 客 の 好 み を適 切 に 抽 出 し、 そ れ に 適 した サ ー ビス を 迅 速 に提 供 す る こ とに 取 り組 ん で い る。 例 え ば 、 コー ル セ ン タ ー の 対 応 履 歴 の 活 用 、 消 費 者 ア ン ケ ー トの 実 施 、 新 製 品 の ニ ー ズ に 関 す る顧 客 へ の 聞 き 取 り調 査 の 実 施 に よ り、 顧 客 と の 良好 な 関 係 の構 築 に努 め 、 顧 客 か ら 得 られ る様 々 な 情 報 を顧 客 サ ー ビス の 改 善 や 新 製 品 の 開 発 に 活 用 し て い る 。
ま た 地 方 公 共 団 体 に つ い て は 、 例 え ば2003年4 月 か ら札 幌 市 が 市 民 向 け の コー ル セ ン タ ー を 立 ち上 げ て い る。 札 幌 市 は 、 市 の 行 政 に 関 す る 一 般 的 な 問 い 合 わ せ を コ ー ル セ ン タ ー で 受 け付 け る こ と に よ り 市 民 の 利 便 性 を 向 上 させ 、 さ ら に コー ル セ ン タ ー で 受 け付 け た 対 応 の 履 歴 を 全 庁 の 部 局 に フ ィ ー ドバ ッ ク す る こ と に よ り 自 ら の 業 務 の 改 善 に活 用 して い る。
公 共 部 門 と 民 間 部 門 と で 共 通 す る 部 分 と し て は 、 組 織 が よ り良 い サ ー ビ ス を 提 供 す る た め に 有 意 義 な 知 識 を住 民 あ る い は 顧 客 が保 有 して い る こ と、 そ の 知 識 を組 織 的 に 共 有 し利 活 用 す る こ と に よ り住 民 あ る い は顧 客 の 立 場 か ら 自 ら の 業 務 や 行 政 サ ー ビ ス を 見 直 す こ とが で き る こ と等 が 挙 げ られ る 。
ま た 、 公 共 部 門 と民 間 部 門 とで 異 な る 部 分 と して は 、 民 間 部 門 は 経 営 効 率 を 向 上 させ る た め に 適 切 に 顧 客 を 絞 り込 む こ と が で き る が 、 公 共 部 門 で は 全 て の住 民 を対 象 と し な け れ ば な らな い 。 ま た 、 顧 客 に とっ て の 民 間 部 門 は 、 例 え ば 自動 車 を購 入 す る 際 に は トヨ タ 、 日産 、 ホ ン ダ な ど複 数 の メ ー カ ー か ら選 択 す る こ と が で き る が 、 住 民 に とっ て の 公 共 部 門 は 引 っ越 しで も しな い 限 り他 に 選 択 肢 は な い 。 選 択 肢 が な い とい う観 点 か らは 公 共 部 門 に は 民 間 部 門 よ り も強 い 顧 客 志 向 が 求 め られ る が 、 一 方 で 住 民 の 利 害 関 係 が 多 岐 に わ た る とい う観 点 か らは 公 共 部 門 は 民 間 部 門 ほ ど明 確 に住 民 の 意 見 に 対 応 した 改 革 を 打 ち 出 し に く い と い え る。
従 来 の 公 共 部 門 は 後 者 の 観 点 か ら現 状 維 持 志 向 が 強 く な りが ち で あ っ た 。 今 後 は 、 そ れ らの 利 害 関 係 を調 整 しつ つ 、 個 々 の 住 民 等 の ニ ー ズ を敏 感 に 感 じ取 り行 政 サ ー ビス を 改 善 し て い く必 要 が あ る 。 こ れ を 実 現 す る た め の 手 段 の 一 つ と し て 、 住 民 等 との 信 頼 関 係 に基 づ く協 働 関 係 の 実 現 を 目指 す こ とが 考
え られ る。
(3)住 民 等 と の 協 働 と知 識 の 共 有
中部 地 方 整 備 局 の 「 未 知 普 請 」 や 三 重 県 、 札 幌 市 を は じ め と して 、 多 く の 地 域 づ く り、 ま ち づ く りの 現 場 で 住 民 等 と の 協 働 とい う言 葉 が 用 い られ て い る。
住 民 等 と行 政 と の 協 働 と い う概 念 は 様 々 な 形 で 整 理 され て い る 。 例 え ば 荒 木(1990)18)や 世 古 (2001)19)は 、異 な る 主 体 間 の 協 働 の 要 件 と して 、 相 互 に 平 等 な 立 場 に 立 つ こ と 、 相 互 に理 解 し違 い を 認 め 合 うこ と、 共 通 の 目標 を設 定 す る こ と、 助 け 合 っ て 課 題 の 解 決 に 取 り組 む こ と等 を 提 案 し て い る 。 ま た 、 西 山(1993)20)や 卯 月(2001)21)は 、 住 民 参 加 の 程 度 を 住 民 等 が 保 有 す る権 限 ・権 利 と い う 観 点 か ら分 類 して お り、 住 民 等 が提 案 ・対 案 を提 出 で き る こ と、 住 民 等 が あ る程 度 の レベ ル の 意 思 決 定 に 関 与 す る こ と を 協 働 権 と して い る。 い ず れ の 概 念 に お い て も 、 関 係 す る多 様 な 主 体 は サ ー ビ ス の 受 益 者 で あ る と 同 時 に 、 サ ー ビ ス の 供 給 者 で あ る。 受 益 者 と供 給 者 の 双 方 の 立 場 を よ く理 解 す る こ とで 、 よ
り実 現 可 能 な 内 容 で 、 行 政 サ ー ビ ス の 改 善 に取 り組 む こ とが 可 能 に な る と考 え られ る。
従 来 型 か ら 協 働 型 へ と住 民 参 加 の 質 が 変 化 し て い く と 、住 民 個 人 、NPO、 住 民 団 体 、 民 間 企 業 や 行 政 等 の 多 様 な 主 体 間 に お け る知 識 や 情 報 の 共 有 が 必 須 で あ る と考 え られ る。 ま た 住 民 等 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョン に よ っ て 得 られ た 知 識 を行 政 内 部 で組 織 的 に 共 有 し、 適 切 に 活 用 す る必 要 が あ る 。 そ の 理 由 と
して は 、各 主 体 間 の 協 働 関係 は 相 互 の透 明 性 の 確 保 、 つ ま り知 識 や 情 報 の 公 開 ・共 有 、 を通 じた 信 頼 関 係 に基 づ く も の で あ る か らで あ る。 ま た 住 民 等 か ら得 られ た 知 識 の 中 に は 、 住 民 等 が 抱 え る 問題 の 本 質 的 な原 因 が 潜 在 し て い る 可 能 性 が 高 く、 行 政 が 住 民 等 との 信 頼 関 係 を 築 くた め に は 、 これ ま で 以 上 に そ れ らの 原 因 を 組 織 内 で 共 有 し、 行 政 サ ー ビ ス の 改 善 に 活 用 して い く必 要 が あ る か らで あ る 。
住 民 等 と行 政 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 、 情 報 公 開 制 度 の 導 入 や 地 域 づ く りへ の 住 民 参 加 の 促 進 に よ
り徐 々 に 改 善 さ れ て き て い る。 しか し行 政 内部 に お
け る 知 識 や 情 報 の 共 有 に つ い て は 、 組 織 的 に 十 分 な
対 応 が な され て い な い 。 特 に住 民 等 の 立 場 か ら の 利
便 性 を 向 上 す る た め 、 組 織 横 断 的 に 連 携 しや す い 体
制 や 業 務 の 流 れ を構 築 す る こ と が 必 要 で あ る 。
以 上 の 点 を踏 ま え 、3.で は 、 行 政 内 部 、 特 に 国 道 事 務 所 内 部 に お け る 知 識 の 共 有 と利 活 用 の 方 法 に つ い て 検 討 を加 え る。
3.知 識 の 共 有 と 利 活 用 に 関 す る 基 本 的 な 考 え 方 (1)国 道 事 務 所 に お け る 知 識 の 共 有 と利 活 用 の 意 義
これ ま で 論 じて き た よ うに 、 国道 事 務 所 が 住 民 等 へ の 行 政 サ ー ビス を改 善 して い くた め に は 、 従 来 に も ま して 、 顧 客 で あ る 住 民 等 との 良 好 な 関 係 を 構 築 し、 そ れ か ら得 られ た 知 識 を 組 織 内 で 共 有 、 利 活 用 す る 必 要 が あ る 。 そ の た め 著 者 ら は 、 野 中 ・竹 内 (1995)22)に よ る組 織 的 知 識 創 造 理 論 を は じ め と して 、 組 織 的 な 知 識 の 共 有 と利 活 用 を 円 滑 に す る た め の 理 論 や 事 例 を研 究 し、 実 践 的 な 取 り組 み を進 め て き た 。6),7)
これ ら を総 括 し、 国 道 事 務 所 に お け る 知 識 の 共 有 と利 活 用 に よ る 業 務 の 再 構 築 の 概 念 を 図1に 示 す 。 図1の(i)〜(iv)は 新 しい 時 代 ニ ー ズ に応 じ た 業 務 の 再 構 築 の 取 り組 み を 示 して い る が 、 著 者 らは これ らの 全 て の プ ロセ ス に お い て 、 蓄 積 され た 知 識 の 共 有 と利 活 用 が 必 要 不 可 欠 で あ る と考 え て い る。 な ぜ な ら、 住 民 等 か ら の 問 い 合 わ せ や 苦 情 の 中 に 、 既 存 の 業 務 の 体 制 や 進 め 方 を 改 善 し た り、 新 しい 施 策 や 行 政 サ ー ビ ス を創 造 した りす る た め の ニ ー ズ や ア イ
デ ィ ア が 含 ま れ て い る と考 え られ る か らで あ る 。 (2)方 法 論 の 仮 説
高 橋 ・奥 谷(2003)7)に お い て 報 告 した 方 法 論 の 仮 説 を は じ め とす る これ ま で の研 究 か ら得 られ た 知 見 を 反 映 し、 組 織 的 に 知 識 を共 有 し利 活 用 す る た め の 方 法 論 と して 、 「目標(ゴ ー ル)を 設 定 し、推 進 体
図1.国 道事務所における知識の共有と利活用による業務の再構築の概念
制 の 設 置 ・人 材 の 学 習 と育 成 ・知 識 共 有 の 場 の 構 築 に組 織 的 に 取 り組 み 、 各 項 目 を バ ラ ン ス 良 く改 善 し て い く こ と に よ っ て 実 現 され る 」 とい う仮 説 を提 示 す る。 以 下 に そ れ ぞ れ の 考 え方 を示 す 。
a)目 標(ゴ ー ル)
知 識 の 共 有 と利 活 用 は そ れ 自 体 が 目 的 な の で は な く、 組 織 が 目指 す べ き 目標 を 達 成 す る た め の 手 段 で あ る。組 織 の 将 来 像 や 使 命 等 を 目標 と して 設 定 し 、 構 成 員 の 間 で 共 有 す る必 要 が あ る。
目標 は 一 般 的 す ぎ て も 、 限 定 的 す ぎ て も 良 くな い 。 組 織 の 規 模 や 使 命 等 か ら見 て 、 個 別 業 務 を 改 善 す る た め の 方 向 性 を 定 め る こ とが で き る よ うな 目標 を設 定 す るべ き で あ る。 ま た 目標 は 、 少 な く と も5年 は 変 更 す る 必 要 が な い も の が 望 ま しい 。 目標 が 短 期 間 で 変 化 す る と組 織 や 施 策 の 一 貫 性 が 取 れ な い し 、 末 端 の構 成 員 の 混 乱 が 深 ま るた め で あ る。
b)推 進 体 制
知 識 は 個 人 や 組 織 に 囲 い 込 ま れ や す い 。 な ぜ な ら ば個 人 や 組 織 が 保 有 して い る知 識 を 他 者 の た め に 役 に 立 っ よ うに提 供 す る とい う行 為 は 、 特 に 暗 黙 知 の レベ ル に な る と、 知 識 を 提 供 す る側 の者 に 非 常 に 大 き な 負 荷 を課 す こ と に な る か らで あ る。 ま た 、 知 識 が 個 人 や 組 織 の 強 さ の源 泉 に な る と い う こ とを 皆 が よ く知 っ て い る た め に 、 有 益 な 知 識 を 他 者 に 提 供 し た が らな い とい う傾 向 も あ る 。 この よ うな 知 識 を 組 織 的 に 共 有 し利 活 用 す る こ と に 対 す る抵 抗 を 乗 り越 え て い く た め に は 、 知 識 の 共 有 と利 活 用 を 業 務 の 一 環 と して 位 置 づ け る こ とが 必 要 で あ る。
推 進 体 制 に は 、 取 り組 み 全 体 を推 進 す る た め の 体 制 と 、個 別 の 改 善 方 策 を 実 現 す る た め の 体 制 が あ る 。
どち らの 体 制 も、 適 切 に構 築 し運 営 す る こ とが 重 要 で あ る。 そ れ ぞ れ の 体 制 を 検 討 す る 際 に は 、 以 下 の 三 項 目 を 明 確 に す る こ とが 必 要 で あ る。
第 一 に 、 組 織 の トッ プ の リー ダ ー シ ップ と、 中 間 層 の 協 力 で あ る 。
組 織 の トップ は 、 達 成 す べ き 組 織
の 目標 を 示 し、 そ れ を 達 成 す る た め
に 各 構 成 員 が 保 有 す る 知 識 の 共 有 と
利 活 用 が 必 要 で あ る とい うこ と を 強
調 し 、 重 要 な 知 識 の 提 供 を促 す こ と
が 必 要 で あ る。
これ と と も に 、 取 り組 み の 実 効 性 を 上 げ る た め に 組 織 の 中 間 層 を 動 か す こ と が 必 要 で あ る 。 中 根 (2002)23)に よれ ば 、 日本 社 会 は リー ダー が 権 力 を 発 揮 しづ らい 社 会 で あ り、 リー ダ ー が 組 織 を 変 え よ う とす る場 合 は 幹 部 層 の 協 力 を 取 り付 け る こ とが 重 要 で あ る。 ま た 、 実 際 の 業 務 の進 め 方 を 見 て も達 組 織 の 中 間 層 が 最 新 の 知 識 を 多 く保 有 して お り、 組 織 の 中 間 層 の 主 体 的 な 参 加 が 理 想(経 営 サ イ ド)と 現 実(現 場 サ イ ド)の両 面 を 見 る た め に 必 要 で あ る。
第 二 に 、 知 識 の 共 有 と利 活 用 を 推 進 す る体 制 を 構 築 し、 継 続 的 に 運 営 して い く こ とで あ る。
知 識 の 共 有 と利 活 用 は 組 織 の 本 来 業 務 で は な い の で 数 名 の 体 制 で 十 分 で あ る が 、 組 織 的 に 位 置 づ け られ た 体 制 の も とで 知 識 の 共 有 と利 活 用 の 取 り組 み を継 続 的 に 推 進 して い くべ き で あ る。
第 三 に 、 各 人 が保 有 す る暗 黙 知 を 形 式 知 化 し、 共 有 す る とい う作 業 を 、 通 常 の 業 務 プ ロセ ス の 中 に 組 み 込 む こ とで あ る 。
他 者 に提 供 す る とい うだ け の 目的 の た め に 、 自 ら の 業 務 の 時 間 を 割 い て 形 式 知 化 す る の は 相 当 の 負 担 で あ る 。 自 らの 暗 黙 知 を 他 者 の た め に形 式 知 化 した 事 例 と して 書 籍 が あ る が 、 著 者 に は 名 誉 や 金 銭 とい う見 返 りが 存 在 す る。 知 識 の 提 供 に 対 す る 見 返 り を 与 え な い 場 合 は 、 相 互 に 知 識 を 提 供 し合 う と い う体 制 を構 築 す る こ と よ っ て 、 他 者 に提 供 す る 代 わ り に 自分 に も提 供 して も ら う とい う相 互 依 存 の 関 係 を 明 確 に す る こ とが 重 要 で あ る。
c)人 材 の 学 習 と育 成
知 識 の 共 有 と利 活 用 の 取 り組 み を 組 織 に 定 着 さ せ る た め に は 、 実 際 に そ れ を行 う人 々 が 自発 的 に 知 識 を 共 有 し、 業 務 の 改 善 に 取 り組 む 組 織 を 形 成 す る こ とが 必 要 で あ る。 そ の た め に 組 織 が 個 々 の 構 成 員 の 自律 的 な 学 習 を支 援 し、研 修 等 へ の 参 加 の 機 会 を 確 保 す る こ と に よ り構 成 員 の 能 力 の 育 成 に 努 め る こ
と が 必 要 で あ る 。
さ らに 、 学 習 や 育 成 を組 織 と して 推 奨 す る こ と に よ り、 構 成 員 が 自律 的 に新 しい 行 政 サ ー ビ ス の 提 供 や 改 善 に 挑 戦 す る こ と を 良 し とす る組 織 文 化 の 醸 成 ・定 着 に 取 り組 む べ き で あ る。
d)知 識 共 有 の 場
知 識 の 共 有 と利 活 用 を 行 うた め に は 、 対 面 式 で 行 う方 法 、 情 報 技 術 を利 用 す る 方 法 が あ るが 、 い ず れ
の 方 法 で あ っ て も知 識 を 共 有 し利 活 用 す る た め の 場
「 知 識 共 有 の 場 」 を設 置 し、 運 営 す る こ とが 必 要 で あ る。 知 識 共 有 の 場 に は 、例 え ば 対 面 に よ る方 法 で あ れ ば 国道 事 務 所 内 の 工 程 調 整 の 会 議 、 情 報 技 術 を 利 用 す る 方 法 で あ れ ば イ ン トラ ネ ッ トを 利 用 した 電 子 掲 示 板 が あ る。
知 識 は 人 の 頭 の 中 や 手 の 感 覚 等 に 属 す る 暗 黙 知 の 部 分 が 大 き い た め 、 構 成 員 が 対 面 して 時 間や 経 験 を 共 有 す る場 を 持 つ こ と が 望 ま しい 。 しか し、 対 面 の 場 は 時 間 や 空 間 の 制 約 を 受 け る。 この 制 約 を 外 す た め に 近 年 急 速 に 発 達 して き た 情 報 技 術 を 用 い 、 電 子 掲 示 板 等 を 利 用 した 場 を活 用 す る こ と も効 果 的 で あ る 。 情 報 技 術 を利 用 す る 場 合 は 、 組 織 の 構 成 員 の 情 報 リテ ラ シ ー を 考 慮 し、利 用 で き る レベ ル の 情 報 ツ ー ル を 利 用 目的 に 合 わ せ て 選 定 す る こ と が 必 要 で あ る 。
実 際 に 場 を設 置 す る 際 は 、 これ らの 場 を業 務 や 知 識 の 特 性 に 合 わ せ て 組 み 合 わせ 、組 織 的 な 知 識 の 共
有 と利 活 用 を進 め る こ とに な る。
e)ま と め
目標(ゴ ー ル)・ 推 進 体 制 ・人 材 の 学 習 と 育 成 ・ 知 識 共 有 の 場 の 関係 を 図2に 示 す 。 目標 が 頂 点 に あ っ て 、 そ の 達 成 を 残 り の 三 項 目が 支 え る とい う構 造 で あ る 。 目標 が 明確 に 定 ま ら な い と、 他 の 三 項 目は 改 善 の 方 向 性 を 見 失 い バ ラバ ラ に な っ て しま う し、
三 項 目の 一 つ で も 欠 け る と 、 目標 の 達 成 を 安 定 的 に 支 え る こ とが で き な い 。 こ の よ うに 方 法 論 の 仮 説 の 四 つ の 項 目 は相 互 に補 完 す る 関 係 に あ り、 これ らを バ ラ ン ス 良 く改 善 す る こ とが 必 要 で あ る。 例 え ば 知 識 を共 有 す る た め に 高 度 な 情 報 技 術 を用 い た ツ ー ル
図2.相 互 に補 完 す る四 項 目
を 導 入 して も 、 職 員 が 利 用 で き な け れ ば 意 味 が な い 。 知 識 の 共 有 を 実 現 す る た め に は ツ ー ル の 導 入 だ け で は 不 十 分 で 、 な ぜ 知 識 を 共 有 す る必 要 が あ る の か と い う職 員 の 意 識 付 け 、 知 識 共 有 を 組 織 的 に 支 援 す る 推 進 体 制 の 設 置 、 ツ ー ル を使 い こ な せ る よ うな職 員 の ス キ ル ア ップ 等 に 統 合 的 に 取 り組 む 必 要 が あ る 。
4.国 道 事 務 所 に お け る 実 践 的 な 取 り組 み (1)知 識 の 流 通 プ ロセ ス の モ デ ル
国 道 事 務 所 は 、 住 民 等 か ら受 け る 問 い 合 わせ や 苦 情 、 受 注 者 か ら受 け 取 る 図 面 や 現 場 の 情 報 、 職 員 各 自が 保 有 す る ノ ウハ ウや 技 術 等 の様 々 な 知 識 を 組 織 的 に 流 通 させ て 、 日常 の 業 務 を 遂 行 して い る 。 住 民 等 と国 道 事 務 所 と の 間 に お け る知 識 の 流 通 プ ロ セ ス をSECIモ デ ル6),22),注)を 用 い て 模 式 的 に 表 現 し た も の が 図3で あ る。
図3.住 民等と国道事 務所との間の知識 の流 通プロセスのモデル
知 識 に は 国 道 事 務 所 内 部 に お け る流 れ と 、 住 民 等 と国 道 事 務 所 との 問 の 流 れ が あ る。 国 道 事 務 所 が 住 民 等 か ら受 け た 問 い 合 わ せ や 苦 情 へ の 対 応 を 事 例 に 用 い て 、 組 織 的 な 知 識 の 流 通 に よ る行 政 サ ー ビ ス の 改 善 プ ロセ ス をSECIモ デ ル に 基 づ い て 説 明 す る 。 共 同化 ①:住 民 の ニ ー ズ 等 の 暗 黙 知 を 、 問 い 合 わ せ 、 苦 情 、 会 合 や 電 話 等 を通 じて 住 民 等 と 職 員 と の 間 で 共 有 す る。
表 出 化:住 民 等 と共 有 した 暗 黙 知 と国 道 事 務 所 が 既 に保 有 して い る 暗 黙 知 を 組 み 合 わ せ 、 住 民 等 と共 有 し た 暗 黙 知 の 本 質 的 な 意 味 を 理
解 し、 形 式 知 化 した 上 で 住 民 等 へ 適 切 に 対 応 す る。
連 結 化:形 式 知 化 し た住 民 等 へ の 対 応 を 、 国 道 事 務 所 内 で 体 系 的 に 集 約 し、 共 有 す る。
内 面 化:共 有 した 形 式 知 を 他 部 門 の 職 員 が 暗 黙 知 と して 自分 の 中 に 取 り込 み 、 自 らが 担 当 す る行 政 サ ー ビ ス を 改 善 す る 。
共 同 化 ②:内 面 化 し た 暗 黙 知 を 他 の 職 員 と共 有 し、
事 務 所 全 体 の 行 政 サ ー ビ ス の 改 善 とい う新 た な価 値 を創 造 す る.さ ら に こ の 暗 黙 知 は 、 別 の機 会 に 住 民 の ニ ー ズ 等 を 住 民 等 と職 員
の 間 で 共 有 す る た め に 活 用 され る 。 こ の よ うに 知 識 は 、図3の モ デ ル に した が っ て 組 織 内 を循 環 しな が ら高 度 化 して い く と考 え られ る 。 な お 、 受 注 者 や 他 の行 政 機 関 か ら受 け 取 っ た 知 識 に つ い て は 、 知 識 の 内 容 や 量 は 異 な る も の の 、 知 識 の 流 れ と い う意 味 で は 住 民 等 か ら受 け た 知 識 と同 様 に 扱 う こ とが で き る。
ま た 、 知 識 が 住 民 等 の 間 を 流 れ る プ ロセ ス(点 線 側)も そ れ が組 織 で あ れ ば 国 道 事 務 所 の 内 部 と同 様 で あ ろ う と想 像 す る が 、 本 研 究 で は 対 象 外 とす る。
(2)取 り組 み の 具 体 事 例
本 研 究 で 構 築 し た 方 法 論 の 仮 説 を 、 あ る 一 つ の 国 道 事 務 所 の 実 業 務 を 事 例 と し て 適 用 し、「 行 政 サ ー ビ ス の 質 と効 率 の 向 上 」、「 慣 例 や 組 織 文 化 の 変 革 」、「 住 民 や 道 路 利 用 者 と の 対 話 と協 働 に よ る み ちづ く りの 実 践 」 を 目的 と した 業 務 の 改 善 を 検 討 した 。 業 務 の 改 善 は 自律 的 で な い と効 果 を得 られ に くい の で 、 具 体 的 な 改 善 方 策 は 国 道 事 務 所 が 自 ら検 討 す る よ うに し た 。 著 者 らは 、 取 り組 み 全 体 の 進 行 、 課 題 の 分 析 を 通 じて 、 国 道 事 務 所 を 支 援 した 。 ま た 、 方 法 論 の 仮 説 を 国 道 事 務 所 に適 用 す る 際 に は 、 職 員 の 考 えや 国 道 事 務 所 の組 織 文 化 に適 合 す る よ うに 方 法 論 の 仮 説 を 補 足 し た。 実 践 に あ た っ て 補 完 した 点 、 留 意 し た 点 を 以 下 に説 明 す る。
a)検 討 の 場 の 立 ち 上 げ
最 初 の 関 門 が 現 状 の 課 題 を 把 握 し改 善 方 策 を 検 討 す る た め の 場 の 立 ち上 げ(方 法 論 の 仮 説 で い う 「 推 進 体 制 」)で あ っ た 。本 事 例 で は 、組 織 の トップ で あ る 事 務 所 長 が 取 り組 み の 旗 振 り役 を行 い 、 そ の 下 に 国 道 事 務 所 の 課 長 級 の職 員 を 中 心 的 な 構 成 員 とす る 事 務 局 と、 係 長 級 の 職 員 を 中 心 的 な 構 成 員 とす る検
注)SECIモ デ ル と は 、 野 中 郁 次 郎 氏 が 提 唱 した 、 組 織 に お い て 知 識 が 創 造 さ れ る プ ロ セ ス の モ デ ル で あ る 。 プ ロ セ ス は 共 同 化(SocializatioN)、 表 出 化 (Extemahzation)、 連 結 化(Combination)、 内 面 化 (Internahzation)と い う4つ の 段 階 か ら 構 成 さ れ て お り 、 各 段 階 の 頭 文 字 を 取 っ てSECIモ デ ル と 呼 ば れ て い る 。