予算管理の適合性について
広原雄二*
SuitabilityforBudgeting
HIROHARAYuji
1.はじめに
管理会計論は,企業の経営管理者が自らの意思決定および部下の業績評価 に必要な会計情報を提供する情報システムを研究領域としている.この管理 会計論が,米国において成立(廣本[1993],p.42.)して以来,様々な技法が生 まれてきた.これには,伝統的な技法として予算管理,直接原価計算,CVP 分析,標準原価計算,設備投資の経済性計算などがある.また,1980年代以 降に台頭し,現在では,管理会計技法として確立しているものとしてABC,
ABM,ABB,BSCなどがある.
いずれの技法においても,経営管理者に有用な会計情報を提供する技法と 考えられている.とりわけ,予算管理については,過去に行われたアンケー ト調査において,ほぼ全数に近い値で企業に採用されていることが明らかに されている(三木他[2003],pp.125-151,大槻他[2013],pp.154-176.).
予算管理は,一般に中長期の利益計画に基づき,次年度の利益計画を達成 する手段として用いられる.具体的には,組織の各部門に対して予算を配分し,
各々がその配分された予算(目標)を達成する手段として用いられる.ここ での予算(目標)は,財務諸表を構成する貸借対照表と損益計算書に計上さ
* 東北文化学園大学総合政策学部教授
れる数値に集約される.
このような技法であるため,これまでほとんどの企業において,予算管理 が用いられてきた.しかし,企業環境の急速な変化に伴って,予算管理が上 手く機能しなくなっている企業も見受けられるようになってきた.例えば,
技術革新の著しい企業では,ある製品を3 ヵ月後に販売しようと企画開発(予 算の配分)を行っていても,3 ヵ月後には市場の環境が著しく変化してしまい,
その製品を販売できないといったことがしばしば生じるという.
このようなことから,これまでのように予算管理がどの企業,言い換えれば,
どの業種においても有用な技法になるとは限らない.
そこで,本稿では,予算管理が適した企業とそうでない企業を一定の範囲 において明らかにしていくことにする.一言に予算管理といっても,その範 囲は広範囲にわたる.ここでは,その中で,主たる収益となる売上の予測に ついて取り上げる.
予算については,企業の内部情報であるため,入手することが極めて困難 である.そのため,ここでは,決算短信の予測データは予算管理のデータと リンクしているものと仮定し,そこに示されている予測情報を用いて分析を 行っていく.これは,予算上の数値がそのまま,決算短信の予測データに用 いられることはないにしても,タイトネスなどを考慮し一定の関係をもって いると考えられるからである.ついで,その結果に基づき,経営戦略論やレ ベニュー・ドライバーの観点から考察を行い,一定の結論を導き出すことに する.このため,本稿では次のような仮説を設けている.
仮説:売上収益の予測と実績の差異は,業種により異なる.
2.先行研究
決算短信の予測データを用いた研究については,利益調整の分析において 様々な研究がある.これらは,投資家すなわち外部の利害関係者に向けたも のであると考えられる.一方,このような予測データを用いて経営管理者す なわち内部の利害関係者に向けた研究はほとんどないように思われる.
そこで,ここでは利益調整の研究において用いられている分析方法を取り
上げ,本研究に用いることができるか否かを検討することにする.これは,
目的の相違はあるものの,分析方法そのものは,本研究においても十分に役 立つものと考えているからである.
⑴ 利益調整に関する研究A(首藤 [2010] ,pp.115-135.)
この文献では,日本企業の経営者が減益と損失を回避するために利益調整 を行っていることを明らかにしている.その上で,3つの仮説を設定し詳細な 分析を行っている.ここでは,そのうちの一つに着目していくことにする.
仮説:経営者は決算短信における利益予想値を達成または予想誤差を減少 させるために報告利益を調整する.
この仮説の分析を行うにあたり,以下の数値を使用している.
売上高予想誤差=(t期の売上高の実績値-t期に関する売上高予想値)/
t-1期の総資産
経常利益予想誤差=(t期の経常利益の実績値-t期に関する経常利益予想値)/
t-1期の総資産
当期純利益予想誤差
=(t期の当期純利益の実績値-t期に関する当期純利益予想値)/
t-1期の総資産
これらの数値を用いた分析を通して,売上高予想誤差の分析から企業は売 上高調整を行っていないことが示されている.その理由として,この研究で は売上高を調整するための会計的な手法が少ないことなどを挙げている.一 方,経常利益予想誤差および当期純利益予想誤差の分析から企業は利益調整 を行っていることが示されている.
以上から,収益の側面では利益調整が入りにくい一方,費用の側面では利 益調整が入りやすいことが見て取れる.本研究において決算短信の予測デー タを用いる場合には,収益の側面では決算短信の数値をそのまま用いること ができる一方,費用の側面では決算短信の数値に何がしかの調整を加える必
要がある.
⑵ 利益調整に関する研究B(清水 [2007] ,pp.80-96.)
この文献では,売上高予想,経常利益予想および純利益予想のバイアスが 継続していることを明らかにしている.ここでは,次の仮説を設けている.
仮説:過去において達成度の高かった(低かった)企業では,平均的に将 来の達成度も高い(低い).
この分析を行うに当っては,以下の数値を使用している.
売上高達成度=(t期の売上高の実績値-t期に関する売上高予想値)/
t期に関する売上高予想値
経常利益達成度=(t期の経常利益の実績値-t期に関する経常利益予想値)/
|t-1期の自己資本の実績値|
当期純利益達成度=
(t期の当期純利益の実績値-t期に関する当期純利益予想値)/
|t-1期の自己資本の実績値|
これらの数値を用いた分析を通して,経営者の予想値と実績値の乖離に着 目し分析を行っている.各々の達成度の数値については,予想値と実績値が 一致した場合には0,強気・楽観的な予想値であった場合には負の値,そして,
保守的な予想値であった場合には正の値になる.分析の対象となるデータに ついては1996年から2006年までの11年分が用いられており,全体の平均値と して1%程度の負の達成度が示されている.
この中で,売上高の達成度に着目すると,全体の平均値と同様,1%程度 の負の達成度が示されている.これは,経営者が売上高について平均的に強気・
楽観的な予想を行っていることを示している.しかし,11年の間には5%程度 の負の達成度が示されていることもある.また,年によって若干,正の達成 度が示されている.その理由について,この文献では主にマクロ要因である としている.
結果として,上記の仮説が継続しているとの結論を導いている.すなわち,
経営者が売上高を予想する場合には,一定程度のバイアスを入れていること が確認されている.
このことは,利益を予想する場合にも同様なことが確認されている.この 結果については,後に行われた利益を対象とした分析においても同様な結果 が得られている(浅野[2009],p.87.).
⑶ 利益調整に関する研究C(森,関 [1997] ,pp.99-112.)
この文献では,決算短信において公表される予測利益がどの程度,正確で あるのかを明らかにしている.ここでは,その結果を業種別に調査している.
この分析を行うに当っては,以下の数値を使用している.
相対予測誤差率=(予想営業利益-実際営業利益)÷実際営業利益 絶対予測誤差率=|予想営業利益-実際営業利益|÷実際営業利益
相対予測誤差率では,予測利益が過大なのかまたは過小なのかが,その程 度とともに明らかとなる.また,絶対予測誤差率では,予測利益と実績利益 との乖離の程度が明らかとなる.
結果として,食料品においては予測利益が過大であることが明らかにされ ている.また,業種によって予測利益の精度に差があることも明らかにされ ている.
3.リサーチ・デザイン
⑴ データ
ここでは,まず,分析の対象を明らかにしていく.経済のグローバル化に 伴い,多くの企業は様々な国々で事業を展開している.このため,わが国に 基盤を置く企業だけでなく,それ以外の数多くの企業を含めて分析したほう が,よりよい結果を得ることができるかもしれない.しかし,それは,統計 学でいう母集団すべてを対象にすることと同じで現実的ではない.そこで,
ここでは,対象をわが国に基盤を置く企業に限定する.
そして,これらの企業を業種ごとに分類し,分析を行っていくことにする.
わが国における業種の分類方法には,日本標準産業分類のほか,証券コード 協議会における分類,いわゆる東証33業種などがある.ここでは,決算短信 に示されている予測情報を用いて分析を行うことから,後者の分類を用いる.
各々の業種には,数多くの企業が属しており,当然のことながら,その数 にも偏りがある.ここでは,その偏りを除くために,対象を東証1部に上場 している企業に限定する.そして,この中で,各々の業種ごとに売上高上位 10社を取り上げ,これをサンプルとして用いる.これは,業種ごとにランダ ムに企業を選択するよりも売上高上位の企業を選択する方が,その業種の特 徴を反映させることができると考えているからである.
決算短信の予測情報には,連結ベースのものと単独ベースのものがある.
本稿の目的を鑑みた場合,後者のデータを用いることが適当であると考えら れる.しかしながら,情報の入手可能性の観点から,連結ベースのデータを 用いて分析を行うことにする.
また,四半期決算を前提とする場合,決算短信の予測情報は,有価証券上 場規程(東京証券取引所)の第405条に規程されているように,四半期ごとに 予測の修正等が行われる.利益調整の分析では,このことを考慮に入れた分 析が行われる.しかし,ここでは,予算管理の有用性を検討するため,あえ て単年度決算(年度期首の予測値と年度期末の実績値)のデータを用いるこ とにする.
⑵ 計算式
前節の先行研究で触れたように,利益調整の分析では,主たる収益である 売上高の予想誤差と各種の費用を差し引いた利益の予想誤差について検討が 行われている.その中で,主たる収益である売上高の予想誤差の分析では,
売上高の調整を行っていないとの結論が得られたり,売上高の予想に一定程 度のバイアスを入れていることが確認された.
本稿の目的は,先行研究のそれとは異なるが,計算式そのものは本研究に おいても役立てることができると考えている.そこで,ここでは,先行研究 でも用いられた次の二つの計算式を使用することにする.前者は,予測が過
大なのかまたは過小なのかを,その程度とともに示している一方,後者は,
予測と実績との乖離の程度を示している.
①売上高達成度=(t期の売上高の実績値-t期に関する売上高予想値)/
t期に関する売上高予想値
②売上高達成度=|t期の売上高の実績値-t期に関する売上高予想値)| / t期に関する売上高予想値
4.分析
⑴ 単年度データに基づく業種間の傾向分析
ここでは,2017年度のデータに基づいて,売上高の予想に関して業種間に 相違があるのか否かを分析していく.
図1は,各業種における売上高達成度を示したものである.各々の達成度は,
2018年版東洋経済業種別ランキングの売上高上位10社の平均を取ったもので ある.基本は,2018年3月期の実績値を用いているが,決算期が3月でない企 業においては,それ以前のデータを用いている.
図1 各業種の売上高達成度
まず,図1は①売上高達成度をグラフにしたものである.これによれば,売 上高達成度が最も高いのは,電子デバイス製造装置の12.74%である.ついで,
機械・装置の5.54%,アパレル・娯楽用品の5.22%となっている.逆に,売上 高達成度が最も低い(ここでは0%に違いものを最も低いとみている.)のは,
通信サービスの0.00%である.ついで,エレクトロニクスの0.08%,外食・娯 楽サービスの0.20%となっている.これらの比率は,各業種の売上高上位10社 の平均値を取ったものである.
これらの比率をみても明らかなように,業種によってかなりの相違がある ことがわかる.売上高達成度の高い業種は,収益の予測の誤差が大きいこと を示している.一方,売上高達成度の低い業種は,収益の予測の誤差が小さ いことを示している.
このことから,収益の予測がしやすい業種とそうでない業種のあることが 見て取れる.なお,これらの値は,データ収集時に最も新しいものを用いて いる.使用するデータには,その年の景気動向など,企業を取り巻く環境によっ て大きく変化してしまう業種のデータが含まれる可能性がおおいにある.こ こでは,あえてそのことを考慮せずにこのデータを基準に分析を行っている.
図2 各業種の売上高達成度(絶対値)
ついで,図2は②売上高達成度(絶対値)をグラフにしたものである.これ によれば,売上高達成度(絶対値)が最も高いのは,電子デバイス製造装置 の13.77%である.ついで,アパレル・娯楽用品の9.13%,機械・装置の5.73%
となっている.逆に,売上高達成度(絶対値)が最も低いのは,小売りの1.30%
である.ついで,ソフトウェア・情報技術の1.94%,住宅の2.07%となっている.
これらの比率は,各業種の売上高上位10社の平均値を取ったものである.
これらの比率をみても明らかなように,業種によってかなりの相違がある ことがわかる.売上高達成度(絶対値)の高い業種は,多少の順位の入れ替 わりがあるものの先ほどの図1とあまり変化はない.一方,売上高達成度(絶 対値)の低い業種は,図1の業種とは異なっている.
このことから,売上高達成度の低い業種については双方の業種について分 析の必要性がある.
⑵ 過去5年間における上位と下位の売上高達成度の傾向
まず,ここでは図1に基づき,売上高達成度が最も高い電子デバイス製造装 置と売上高達成度が最も低い通信サービスについて,時系列的にその傾向を みていくことにする.
図3 電子デバイス製造装置と通信サービスの売上高達成度
図3は,両者の売上高達成度をグラフにしたものである.電子デバイス製造 装置は,その範囲が-0.44%から10.57%,通信サービスは,その範囲が-2.88%
から1.57%になっている.この図によれば,電子デバイス製造装置の売上高 達成度が通信サービスの売上高達成度よりもばらつきが大きいことが分かる.
これについて,統計分析でよく用いられる標準偏差を求めてみても電子デバ イス製造装置が4.19,通信サービスが1.60となり,これを裏付けることができ
る.
この結果に基づけば,通信サービスは,電子デバイス製造装置に比べて収 益の予測がしやすい環境にあることが推測される.なお,データの集計につ いては2015年の通信サービス1社に異常値と思われるデータがあったため,そ の値を除いている.
ついで,図2に基づき,売上高達成度が最も高い電子デバイス製造装置と売 上高達成度が最も低い小売りについて,時系列的にその傾向をみていくこと にする.
図4 電子デバイス製造装置と小売りの売上高達成度
図4は,両者の売上高達成度をグラフにしたものである.比較の対象が,図 3では通信サービスであるのに対し,図4では小売りとなっている.これは,
売上高達成度の値が絶対値の値とそうでない値とで異なるためである.
これによると,電子デバイス製造装置は,その範囲が2.71%から11.60%,
小売りは,その範囲が1.30%から4.60%になっている.図4によれば,電子デ バイス製造装置の売上高達成度(絶対値)が小売りの売上高達成度(絶対値)
よりもばらつきが大きいことが分かる.これについて,統計分析でよく用い られる標準偏差を求めてみても電子デバイス製造装置が3.11,小売りが1.05と なり,これを裏付けることができる.
この結果に基づけば,小売りは,電子デバイス製造装置に比べて収益の予
測がしやすい環境にあることが推測される.
このように,ここでは,売上高達成度について二種類の指標を用いて分析 を行った.限られたデータに基づいた結果であることを踏まえなければなら ないが,予算管理が有益に機能する業種とそうでない業種が存在することは 理解できる.
予算管理のシステムを実務に展開する場合には,この点に関して注意が必 要であることがわかる.
5.考察
上記の結果を踏まえ,ここでは,経営戦略論の中で取り上げられた経営モ デルおよびレベニュー・ドライバーの観点から考察を加えていく.
⑴ 経営戦略論で取り上げられた経営モデル
これまで,経営革命,経営破壊,脱予算経営など,経営戦略の分野で様々 な経営モデルが台頭してきた.どれもが,その時代の企業環境の変化に対応 するために生まれたものと考えられている.
例えば,経営革命では,10%の削減であるとか,20%の向上ではなく,
90%の削減といった目標を達成することを革命として位置づけ,その内容を 展開している1).
また,経営破壊では,「~を超えて」という副題がついているところに特徴 がある.そこでは,ある章において例えば「あらゆるものを廃棄しよう」と 述べたりするなど,全体にわたって当時,注目されていた経営モデルに代わ る一つの経営モデルを提案している2).
そして,脱予算経営では,これまでの伝統的な予算管理の問題点か示され ている.そこでは,「予算が抱える問題点を克服して企業が戦略を成功裏に遂 行するために,変化適応型で分権化して権限を委譲した組織を作り上げるこ と」と定義している3).タイトルからすると予算管理の仕組みを放棄するかの
1)ピーターズ[1989a,1989b]を参照のこと.
2)ピーターズ[1995]を参照のこと.
3)ホープ,フレーザー著[2005]を参照のこと.
ようにみられる.現に,著書の中では,予算を廃止しているケースが多く見 受けられている.しかし「脱予算経営の目的とするところは,予算を廃止す ること自体にあるのではなく,環境変化に適切かつタイムリーに対応する組 織を作り上げること」にある(清水[2009],p.279.).あくまでも,予算管理の 仕組みを現在の企業環境に合わせることが本来の目的である.
ここでは,数ある経営戦略論のうち,私見で当時,注目を浴びていたと思 われる経営モデルを3つ程取り上げた.いずれの経営モデルについても当時,
企業の経営戦略に多大な影響を与えたものと考えられている.したがって,
経営戦略の実行手段である管理会計に影響を与えていることは自明である.
このようなことから,本稿で取り上げてきた予算管理についても,このよ うな影響は少なからずあるものと思われる.しかし,わが国ではアンケート 調査の現状および前節の分析結果から,経営戦略論で取り上げられてきた経 営モデルが如何に変遷しようとも,その実行手段である管理会計システムと りわけ予算管理については業種の相違はあるものの,その有用性は失われな いものと考えられる.
⑵ レベニュー・ドライバー
レベニュー・ドライバーとは,レベニューすなわち収益に影響を及ぼす作 要因をいう.これは,ABCの中で用いられているコスト・ドライバーすなわ ち原価に影響を及ぼす作要因に対して用いられるようになったと考えられて いる.
コスト・ドライバーを単に配賦基準として捉える場合には,レベニュー・
ドライバーは,収益の勘定科目を増減させる作要因となる.具体的な例とし て売上高を上げれば,その場合のレベニュー・ドライバーは,売上数量となる.
したがって,このレベニュー・ドライバーを上手く管理することが,企業の 経営管理に求められることになる.これは,ABCでいうところのコスト・ド ライバーのレベニュー・タイプと考えると理解がしやすい.
さらに,レベニュー・ドライバーには,このような作要因としての意味合 いだけでなく,マーケティング・ミックスの決定においても用いられている.
そこでは,収益に影響を及ぼす作要因の分析を行うことで,収益の増加を 図ることが行われる.具体的には,大手リゾートホテル・チェーンによるレ
ベニュー・ドライバーの分析が参考となる(浅田他[2005],p.321.).これは,
ABMでいうところのコスト・ドライバーのレベニュー・タイプと考えると理 解がしやすい.
このようにレベニュー・ドライバーには,おおよそ二つの思考がある.い ずれにしても,それらを経営管理に役立てるためには,そこで扱うデータの 予測がしやすいほうがよいといえる.
したがって,前述の分析に基づけば,収益性の予測がしやすい環境にある 業種において,レベニュー・ドライバーによる経営管理がより効果を発揮す ると考えられる.
6.おわりに
本稿では,予算管理が適した企業とそうでない企業を一定の範囲において 明らかにした.使用したデータは決算短信の中の売上収益の予測データとい う極めて限定的な情報に基づき分析を行った.
結果は,売上収益の予測値と実績値との差から,予算管理が適した業種と そうでない業種が存在することを明らかにした.第4節で具体的な業種を説明 しているが,データの取り方によって,その内容は変化するものと考えられる.
今後,ある程度,長期的な視点に立って再検討する必要がある.
また,いくつかの経営モデルやレベニュー・ドライバーの観点からも考察 を行った.このことについては,前節で述べたように,経営モデルが如何に 変遷しようとも予算管理の有用性は変わらない.したがって,ここでは,予 算管理が適した業種であるか否かにかかわらず,その関係は重要であると結 論づけた.
参考文献
浅田孝幸他[2005]『管理会計・入門〔新版〕』有斐閣アルマ,p.321.
浅野敬志[2009]「経営者の利益予想バイアスと市場の反応」『会計・監査ジャーナル』,No.653DEC,p.87.
大槻晴海他[2013]「わが国企業予算制度の実態(平成24年度)(1)アンケート調査の集計結果とその 鳥瞰的分析」『産業經理』,第73巻第1号,pp.154-176.
清水康弘[2007]「経営者予想に含まれるバイアスの継続性とミスプライシング(特集証券アナリスト の役割と情報)」『証券アナリストジャーナル』,第45巻第8号,pp.80-96.
清水孝[2009]「脱予算経営における経営改革の方法」『早稲田商学』,第418・419合併号,p.279.
首藤昭信[2010]『日本企業の利益調整 理論と実証』中央経済社,pp.115-135.
トム・ピーターズ著,平野勇夫訳[1989a]『経営革命上』ティビーエス・ブリタニカ, トム・ピーターズ著,平野勇夫訳[1989b]『経営革命下』ティビーエス・ブリタニカ.
トム・ピーターズ著,平野勇夫訳[1995]『経営破壊』ティビーエス・ブリタニカ.
廣本敏郎[1993]『米国管理会計論発達史』森山書店,p.42.
ジェレミー・ホープ,ロビン・フレーザー著,清水孝監訳[2005]『脱予算経営』生産性出版.
三木僚祐他[2003]「わが国企業予算制度の実態(平成14年度)(1)アンケート調査の週計とその鳥瞰 的分析」『産業經理』,第63巻第1号,pp.125-151.
森久,関利恵子[1997]「経営者予測利益の正確性の業種別比較」『會計』,第152巻第2号,pp.99-112.