「重要な他者」と関連した作動自己概念の活性化とその持続性 [ PDF
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(2) 2.手続き 1) 質問紙の実施 自己概念の測定法として「自己概念尺度(加藤・高木,. を実施した。これらの項目は重要な他者の特徴を表した 先行研究の記述(Tatar, 1998; Frey & Rothlisberger,. 1980a)」を選定した。この尺度では人間の性質や状態を. 1996 など)から抜粋された。. 表す 60 項目からなり,「反社会性」「意欲性・活動性」. 3) ロール・レタリングを用いた実験. 「きちょうめんさ・清潔さ」「明朗性・友好性」「情緒性. 重要な他者と対話する方法としてロール・レタリング. (感情的被影響性)」 「誠実さ」の 6 因子(各 10 項目)で構. (春口, 1987, 1995)もしくは想定書簡法(福島・牛久,. 成されている(Table 1)。実験前(pre),実験後(post),一. 1995)を使用する。この方法は心理療法場面における「ク. 週間後(follow)で実施される。. ライエントに内在化された重要な他者との対話」に近づ. 2) 重要な他者の想起教示と特徴の判定. けることを試みたものと言え,より生態学的妥当性. 重要な他者を想起してもらうための教示方法は「現在. (Bronfenbernner, 1979)が高いと考えられる。. のあなたにとって,とても大きな存在で,重要な人物を 一人思い浮かべてください。その人物は,今までに何度 か会ったことのある人で,あなたに強く印象づけられて. Ⅴ 結果と考察 重要な他者の特徴を測定する質問項目(Table 2.)の平. いる人物です。(Hinkley ら, 1996 より抜粋,日本語訳後,. 均値,①13.24(SD=3.19),②12.81(SD=3.06)を基準に. 一部改変)」であった。また想起された重要な他者の特徴. 「情緒・現実的 SO 群(13 名),情緒的 SO 群(16 名),現. を判定するために,①「情緒的な」重要な他者,②「現. 実的 SO 群(14 名),両低 SO 群(19 名)」の 4 群に分類し. 実的な」重要な他者についての各 4 項目の質問(Table2). た。. Table 1.自己概念尺度(加藤・高木, 1980)の因子名と項目内容 Ⅰ.反社会性 1.無作法 2.冷酷 3.ひねくれ 4.生意気 6.高慢 7.狭量 8.軽率 9.怠惰 Ⅱ.意欲性・活動性 11.消極的 12.決断力がある 13.意志が弱い 14.個性的 16.統率力がある 17.依存的 18.議論好き 19.活動的 Ⅲ.几帳面さ・清潔さ 21.きちょうめん 22.きれいずき 23.規則正しい 24.正確・確実 26.清潔 27.慎重 28.努力家 29.冷静 Ⅳ.明朗性・友好性 31.陽気 32.にこやか 33.ユーモアがある 34.人なつっこい 36.暗い 37.無邪気 38.打ちとけない 39.友好的 Ⅴ.情緒性(感情的被影響性) 41.寂しがる 42.あこがれる 43.興奮しやすい 44.感傷的 46.涙もろい 47.思い悩む 48.衝動的 49.情熱的 Ⅵ.誠実さ 51.良心的 52.誠実 53.まじめ 54.あたたかい 56.責任感が強い 57.正直 58.地味 59.すなお. 5.無責任 10.反抗的 15.自主的 20.独創的 25.ていねい 30.勤勉 35.おおらか 40.孤独 45.嫉妬ぶかい 50.悲観的 55.親切 60.温和. Table 2.重要な他者の特徴判定のための質問項目 ①「情緒的な」重要な他者についての項目 (情緒的SO) 1 その人物はどんな内容の話でも暖かく聴いてくれる 2 その人物は自分と違う考えを持っていたとしても,私の考えを暖かく聴いてくれる 3 その人物は私なりの考えや気持ちを尊重してくれる 4 その人物は私の話を否定しようとしない ②「現実的な」重要な他者項目についての (現実的SO) 5 その人物は私にとってモデルとなっている 6 その人物の身振りや言葉の使いかたを参考にして,自分に取り入れている 7 その人物の考えや態度を参考にして,自分に取り入れている 8 その人物の言うことにしたがっていれば,大抵は間違いないと思う.
(3) された(Figure4)。. Figure 1 自己概念下位尺度得点の推移 自己概念尺度の下位因子について 1 要因 3 水準(測定時. 37. 期)の分散分析を行った結果,全ての因子で 5%以下の水. 36. 準で有意差が認められたため,仮説ⅰ検証のため LSD. 35. 法による多重比較を行った。主な結果は Figure 1 参照。. 34. 結果より「内在化された重要な他者イメージは,自己 概念の多くの側面と密接に関係しており」かつ「重要な. 情緒・現実的SO群. 33. 情緒的SO群. 32. 現実的SO群. 31. 他者の想起と対話によって,活性化が持続される」と考. 30. えられる。これは仮説ⅰを支持する結果であるといえる。. 29. 次に仮説ⅱの検討のため,重要な他者の特徴群 4×測. 28. 両低SO群. 定時期 3(pre-post-follow)の分散分析を行った結果, 「意. Pre. 欲性・活動性」F(6.116)=4.39, p<.01, 「几帳面さ・清潔. Figure 2. さ」F(6.116)=3.08, p<.05 ,「誠実さ」F(6.116)=5.69, p<.01 の 3 因子に交互作用がみられた。他の「反社会性」 「明朗性・友好性」「情緒性」因子では測定時期の主効 はほぼ半数の側面に仮説ⅱを支持する結果が確認され. 34. Follow. 群別の「意欲性・活動性」得点の推移. 情緒・現実的SO群 情緒的SO群 現実的SO群 両低SO群. 33. 「現実的 SO 群」に自己概念の即時的な活性化(pre-post,. 32. p<.05), 「情緒・現実的 SO 群」 「情緒的 SO 群」に自己. 31 Pre. 概念の遅延的活性化(post-follow, p<.05), 「情緒・現実的 SO 群」 「情緒的 SO 群」 「両低 SO 群」の 3 群に活性化. -. 36 35. 「意欲性・活動性」因子では「情緒・現実的 SO 群」. -. 37. 果のみが確認された。本研究の自己概念尺度の因子中で た。. Post. Figure 3. Post. -. -. Follow. 群別の「几帳面さ・清潔さ」得点の推移. の持続性(pre-follow, p<.05)が確認された(Figure 2)。 「几帳面さ・清潔さ」因子では「情緒・現実的 SO 群」 「現実的 SO 群」 に自己概念の即時的活性化(p<.05), 「情 緒的 SO 群」に自己概念の遅延的活性化(p<.05), 「情緒・ 現実的 SO 群」 「情緒的 SO 群」 に活性化の持続性(p<.05) がみられた(Figure 3)。 「誠実さ」因子では「現実的 SO 群」に自己概念の即 時的活性化(p<.05), 「情緒・現実的 SO 群」 「情緒的 SO 群」に自己概念の遅延的活性化(p<.05), 「情緒・現実的 SO 群」 「情緒的 SO 群」に活性化の持続性(p<.05)が確認. 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31. 情緒・現実的SO群 情緒的SO群 現実的SO群 両低SO群. Pre. Post. -. -. Follow.
(4) Figure 4 群別の「誠実さ」得点の推移. も発達的変化(小学校から大学生)を見出していないため,. 重要な他者の特徴で分けられた 4 群による自己概念の. 一般的な標本では発達の初期の段階から反社会性の低. 活性化と持続性の違いが記述され,それぞれが特徴的な. さは硬く維持されているものと考えられる。よって基本. 自己概念の推移を見せること(仮説ⅱ)が確認された。. 的な自己改善動機(伊藤, 2002)による一時的な変化はみ. それぞれの群に特徴的な側面については以下のよう な 2 つの仮説的説明が導き出せる。①「情緒的・サポー. られたものの,全体的に持続性が確認されなかったので あろう。. ティブ・あたたかさ・受容的」などの特徴を持つ重要な 他者を思い浮かべ,心の中で対話をすることによって,. Ⅵ 本研究の問題点と今後の課題. 個人は自己の理想と現実に強く直面化することなく,ゆ. 本研究の最も大きな問題点は,「情緒的な」重要な他. っくりとした自己概念の活性化(遅延的な活性化)が生ま. 者, 「現実的」な重要な他者の 2 軸による分類では捉え. れる,②「現実的・指示的・規範的・モデル・教師的」. きれない側面に関する問題である。 「両低 SO 群」と命名. な重要な他者を感じることによって,個人は自己の現実. された人数が他群に比べて多かったことは,このことを. と理想の違いに強く直面し,一時的で急激な自己概念の. 明確にあらわしていると思われる。. 活性化(即時的な活性化)が生まれる。この 2 つの仮説的. 質問紙などによる調査でははっきりと捉えることが. 説明の組み合わせによって,4 つの群にみられた傾向の. できなくとも両親,きょうだいなどの肉親は個人にとっ. 違いが理解が可能である。 「情緒・現実的 SO 群」では強. て重要な他者であることは言うまでもないであろう。ま. く現実と理想に直面しながらも「みまもられる眼差し(梶. た自分を敵対視する人物や,自分に興味を持っていない. 田, 1985)」によってそのギャップを修正しようという努. 人物,自分を馬鹿にしたがる人物などを,重要な他者と. 力(Carver ら, 1981)が支持されつづけたという説明がで. して選択する一群(2%~10%)がいること(Tater, 1998)も. きよう。 「情緒的 SO 群」では実験場面でははっきりとし. 指摘されており,今後は「個人にとっての心理的な成長. た自己への直面かが為されず,重要な他者から見守られ,. につながるポジティブな」重要な他者に限定しない研究. 受けとめられた影響が 1 週間後の自己概念の変化に繋が. が望まれる。. ったと考えられる。 「現実的 SO 群」ではモデル化,理想 化された他者からの触発や,現実的・規範的な特徴を持. 主要引用文献. った重要な他者からの視点によって,自らの現実と理想. Carver, C. S., & Scheier, M. F. (1981) Attention and. のギャップが強く意識されたため,自己概念を修正する. self-regulation: A control theory approach to. ために一時的な努力が為されたのであろう。それが持続. human behavior. Springer-Verlag, 1981.. 性を持ちえなかったのは,Greenberg ら(1986)の自己注. Greenberg, J., & Pyszczynski, T. (1986) Persistent. 目理論によって説明が可能であろう。彼らによると自己. High Self-focus after Failure and Low Self-focus. の理想と現実に大きなずれを感じた時,個人は精神的消. after Success: The Depressive Self-focusing style.. 耗を回避するために自己の姿から注意をそらすことが. Journal of Personality and Social Psychology,. 指摘されており,これが本研究の「現実的 SO」にみら. 50(5), 1039-2044. れた持続性の低さに当てはまると考えられる。 ただし自己概念の他の側面「反社会性」「明朗性・友. 加藤隆勝・高木秀明 (1980a) 青年期における自己概念の 特質と発達傾向 心理学研究 51(5), 279-282.. 好性」 「情緒性(感情的被影響性)」には群の差は見られな. Markus, H., & Kunda.Z. (1986) Stability and. かった。つまり仮説ⅱが支持されなかった自己概念の側. Malleability of the Self-Concept. Journal of. 面である。中でも「反社会性」 「情緒性(感情的被影響性)」. Personality and Social Psychology, 51(4), 858-866.. の二つの側面は,実験による活性化(得点の減少)の揺り. Swann,. W.,. &. Read,. S.. J.. (1981). Acquiring. 戻しが大きい点が他の側面と異なっていた。この両側面. Self-knowledge: The Search for Feedback That. は比較的ネガティブな自己の側面であるために,どの群. Fits. Journal of Personality and Social Psychology,. においても上記の自己注目理論(Greenberg ら, 1986)が. 41, 1119-1128.. 当てはまった結果とも考えられる。しかし本研究の協力. Tatar,. M.. (1998). Significant. individuals. in. 者が一般の大学生であることを考慮すると,もともとの. adolescence: adolescent and adult perspectives.. 得点(Pre)が他の側面より低かったという要因が一番に. Journal of Adolescence, 21, 691-702. 挙げられる。特に「反社会性」因子では,加藤ら(1980a).
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