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超低出生体重児にみられた高肺血流性先天性心疾患に対する段階的治療

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Academic year: 2021

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超低出生体重児にみられた高肺血流性先天性心疾患に対する段階的治療

Keywords:

Extremely low birth weight infants, Congenital heart disease, Pulmonary hypertension 加藤 温子1),伊吹圭二郎1),浅沼 賀洋1),佐藤 慶介1) 芳本  潤1),金  成海1),満下 紀恵1),新居 正基1) 田中 靖彦2),大崎 真樹3),坂本喜三郎4),小野 安生1) 静岡県立こども病院循環器科1),新生児科2),循環器集中治療科3) 心臓血管外科4)

Successful Staged Managements for Extremely Low Birth Weight Infants with Congenital

Heart Disease and Pulmonary Overcirculation - Four Case Reports

Atsuko Kato1), Keijiro Ibuki1), Norihiro Asanuma1), Keisuke Sato1), Jun Yoshimoto1), Song-Hae Kim1),

Norie Mitsushita1), Masaki Nii1), Yasuhiko Tanaka2), Masaki Osaki3), Kisaburo Sakamoto4), Yasuo Ono1)

1)Division of Cardiology, 2)Neonatology, 3)Cardiac Critical Care, and 4)Cardiovascular Surgery, Shizuoka Children’s Hospital, Shizuoka, Japan

Background: Recently the outcome of extremely low birth infants (ELBWI)has been improving, whereas the reports of treatment are still limited for those with complications of congenital heart disease. We report four cases of ELBWI who successfully underwent corrective cardiac surgery for congenital heart disease with pulmonary overcirculation.

Case: 1)Atrial septal defect: Gestational Age (GA)29 weeks, birth weight (BW)504 g. A female infant developed pulmonary hypertension at 2 months of age, which was treated with oral sildenafil. The defect was closed at 4 months. 2)Complete atrioventricular septal defect: GA 26 weeks, BW 670 g. A Trisomy 21 male infant who underwent pulmonary artery banding at 2 months. Corrective surgery was performed at 4 months. 3)Ventricular septal defect: GA 27 weeks, BW 412 g. A male infant presented with severe pulmonary hypertension at 5 months. He was treated with oxygen and sildenafil, subsequently underwent surgical closure at 10 months of age. 4)Truncus arteriosus: GA 29 weeks, BW 752 g. A girl underwent bilateral pulmonary artery banding at 7 months. After being optimized with oxygen therapy, sildenafil, and beraprost, she underwent corrective surgery at the age of 25 months.

Conclusion: Extremely low birth weight patients with congenital heart disease and pulmonary overcirculation can be successfully treated by intensive control of pulmonary blood flow and pulmonary hypertension. Surgery should not be delayed for premature infants with congenital heart disease, who might benefit from early and aggressive treatment.

要  旨 背景:超低出生体重児(ELBWI)の救命率は近年著しく改善しているが,ELBWI における心疾患に対する治療報告は いまだ少ない.ELBWI に高肺血流性心疾患を合併し,長期呼吸管理を要した症例に対し,積極的治療を行い根治術 に到達した 4 症例を報告する. 症例:①女児.心房中隔欠損症:在胎 29 週 504 g.抜管困難であり,生後 2 ヵ月より肺高血圧を呈したため,シルデ ナフィルを開始し,生後 4 ヵ月で根治術を施行した.②男児.完全型房室中隔欠損症:在胎 26 週 670 g.21 トリソミー. 生後 2 ヵ月で肺動脈絞扼術を施行した後,生後 4 ヵ月に根治術を施行した.③男児.心室中隔欠損症:在胎 27 週 412 g.生後 6 ヵ月で重度の肺高血圧を認め,酸素療法とシルデナフィルを開始した.生後 11 ヵ月で肺高血圧の改善 を確認し,根治術を施行した.④女児.総動脈幹症:在胎 29 週 752 g にて出生.生後 7 ヵ月で両側肺動脈絞扼術を施 行した後,酸素療法,シルデナフィル,ベラプロストの投与を行った.2 歳 1 ヵ月で根治術を施行した. 結論:ELBWI において,長期呼吸管理を要し肺高血圧を合併した高肺血流性心疾患に対し,肺血流の制限や肺高血 2013 年 7 月 8 日受付 2014 年 8 月 25 日受理 別刷請求先:〒 420-8660 静岡県静岡市葵区漆山 860 静岡県立こども病院循環器科 満下 紀恵

原 著

(2)

圧の治療を行うことによって,根治術に到達できた.ELBWI で出生した先天性心疾患症例において遅れることなく 外科的,内科的治療を行うことは児の予後を改善することが示唆された. 背  景 近年低出生体重児(LBWI)の予後の改善に伴い,先天 性心疾患を持つ LBWI に対する治療報告が散見される が1~4),超低出生体重児(ELBWI)に合併した先天性心疾 患への手術適応に関してはいまだ報告が少ない5) 2000 年 1 月 1 日から 2011 年 12 月 31 日に出生した ELBWI のうち,高肺血流性心疾患〔動脈管開存(PDA), 卵円孔開存単独症例を除く〕を合併し,静岡県立こども 病院に入院となった患児は 11 例;心室中隔欠損(VSD) 8 例(4 例は自然閉鎖),心房中隔欠損(ASD)1 例,完全 房室中隔欠損(CAVSD)1 例,総動脈幹(TAC)1 例であっ た.そのうち 1 ヵ月以上の呼吸管理を必要とした 4 例 (Table 1)に対し積極的に治療を行い,根治術に到達し たのでこれを報告する. 症  例 Case 1 女児. 診断:ASD. 在胎 29 週 0 日,504 g. 胎児機能不全を認め,緊急帝王切開にて出生した. APGAR スコア 5(1 分値)/ 7(5 分値).出生直後に気管 内挿管され,サーファクタント投与後,間欠的陽圧換 気(IMV)で人工呼吸管理となった.入院時心エコーに て 5 mm の ASD を認めた.胸部 X 線で肺血管陰影の増 強と心拡大を認め,日齢 5 よりフロセミド,スピロノ ラクトン各 1 mg/kg/ 日の内服を開始した.PDA は日齢 7 に閉鎖を確認した.日齢 1,6,39 に抜管し,経鼻的持 続陽圧呼吸管理への移行を試みたが,多呼吸,二酸化 炭素貯留,チアノーゼを認め,1 日,3 日,12 日後にそ れぞれ再挿管となった.3 度の再挿管すべてにおいて,

Table 1 Summary of patients’ demographics and clinical courses

Case 1 2 3 4

Diagnosis ASD CAVSD VSD TAC

Sex F M M F

GA (week) 29 26 27 29

Birth Weight (g) 504 670 412 752

Intubation Period before

1st surgery (days) 120 50 Tracheostomy 33

Surfactant use + + + +

Ventilation mode IMV/HFO IMV IMV/HFO IMV

Pulmonary vasodilators

PDE5 inhibitors + + + +

ET receptor antagonist + − + +

Oral PGI2 + − − +

Age when PDE5 inhibitor

was started (months) 3 6 6 13

1st surgery CR PAB CR bilateralPAB

BW at 1st surgery (kg) 1.5 1.0 2.9 3.6

Age at 1st surgery (day) 124 50 298 228

2nd operation − CR − CR

BW at 2nd surgery (kg) − 3.1 − 6.7

Age at 2nd surgery (day) − 196 − 761

Other Complications 21trisomy TracheomalaciaAT

(AT: atrial tachycardia, BW: body weight, CR: complete repair, ET: endothelin, GA: gestational age, HFO: high frequency oscillation, IMV: intermittent mandatory ventilation, PDE5: phosphodiesterase type 5, PAB: pulmonary artery banding, PGI2: prostaglandin I2)

(3)

直後に高い陽圧管理を必要としたため,高頻度陽圧換 気を使用し,徐々に IMV に移行した.日齢 50(修正 0 ヵ 月)の心エコー検査で,ASD は左右短絡優位だが,肺動 脈弁逆流の最高血流速度は 3.6 m/sec(収縮期体血圧 70 mmHg)と重度の肺高血圧を認めたため,根治術の適応 はないと判断された.日齢 76 に再度抜管を試みたが, 呼吸器離脱は困難であった.生後 3 ヵ月(修正 1 ヵ月) での胸部 X 線写真でび慢性不透亮像に加えて心拡大と 肺血管陰影の増強を認めたため(Fig. 1a),一酸化窒素 (NO)負荷検査(FiO2 1.0,NO 20 ppm)を行ったところ, 心エコーで左室収縮末期短軸像が半月状から円形とな り,肺高血圧が改善することが示唆された.そこでシ ルデナフィル 0.1 mg/kg/ 日の内服を開始した.心エコー 上肺高血圧所見が軽快し,ASD の左右短絡が増加する ことを確認したうえで,生後 4 ヵ月(修正 1 ヵ月),体 重 1.5 kg で ASD 閉鎖術を施行した.術後 2 週間で呼吸 器を離脱し,胸部 X 線写真では肺陰影の改善を認めた (Fig. 1b).酸素療法とシルデナフィルは継続した.術後 2 ヵ月(生後 6 ヵ月)の心エコーにて肺高血圧の増悪が 疑われたため,ボセンタン 2.5 mg/kg/ 日,ベラプロスト 1μg/kg/ 日の内服を追加した.在宅酸素療法に加え,夜 間持続陽圧換気を導入し,生後 10 ヵ月(修正 8 ヵ月)に 退院した.ベラプロストは術後 4 ヵ月間,ボセンタン は 11 ヵ月間継続し,シルデナフィルと在宅酸素は術後 15 ヵ月間(1 歳 7 ヵ月)で終了した.現在 3 歳 6 ヵ月で 肺高血圧の再燃はない. Case 2 男児. 診断:CAVSD,21 トリソミー. 在胎 26 週 6 日,670 g. 胎児機能不全のため,緊急帝王切開にて出生した. APGAR スコア 4(1 分値)/ 7(5 分値).出生直後に気管 内挿管され,サーファクタント投与後,IMV での人工 呼吸管理となった.入院時心エコーにて CAVSD,PDA を認めた.染色体検査にて 21 トリソミーと確定した. PDA はインドメタシンの静注を行ったが閉鎖せず, VSD は左右短絡で,重度の左側房室弁閉鎖不全を認め た.日齢 14 からフロセミド 1.5 mg/kg/ 日,スピロノラ クトン 3 mg/kg/ 日,日齢 17 からエナラプリル 0.04 mg/ kg/ 日の内服を開始したが,人工呼吸器を離脱出来ず, 胸部 X 線写真にて肺のび慢性泡沫状陰影を認め(Fig. 2a),尿量も低下したため,日齢 50(修正在胎 34 週)に, 体重 1.0 kg で肺動脈絞扼術(PAB)周囲径 14 mm および

Fig. 1 Chest X-ray of Case 1.

a: Before ASD closure (at 3 months), b: 14 days after ASD closure

Fig. 2 Chest X-ray of Case 2.

(4)

動脈管結紮術を施行した.術後 36 日(修正在胎 39 週) で抜管した.術後心エコーにて肺動脈絞扼部の最高血 流速度は 2.8 m/ 秒で,左側房室弁閉鎖不全は軽度であっ た.術後 2 ヵ月(生後 3 ヵ月,修正 1 ヵ月)から徐々に SpO2の低下を認めたため,経鼻酸素療法を開始した. 生後 4 ヵ月(修正 2 ヵ月),体重 2.5 kg で心臓カテーテ ル検査を施行したところ,平均肺動脈圧(mPAP)=16 mmHg,肺血管抵抗(Rp)=1.7 Wood units・m2,肺体血 流比(Qp/Qs)=0.66 であった.生後 6 ヵ月(修正 3 ヵ月) 体重 3.2 kg で ASD と VSD のパッチ閉鎖術を行った. 左側房室弁に認めた裂隙は房室弁のサイズ,形態から 閉鎖困難であり,そのままとした.術後 1 ヵ月(生後 7 ヵ 月)で中等度の左側房室弁閉鎖不全を残して退院と なった.生後 9 ヵ月(修正 6 ヵ月)に感染を契機に左側 房室弁閉鎖不全によると思われるうっ血性心不全が悪 化し,人工呼吸管理となった.入院時の胸部 X 線写真 では著明な心拡大と肺うっ血像を認めた(Fig. 2b).そ こで生後 10 ヵ月(修正 7 ヵ月),体重 3.8 kg に裂隙の閉 鎖術に加えケイ弁形成術を行い一旦退院となったが, 心不全が持続したため,1 歳 5 ヵ月,体重 5.5 kg で左側 房室弁に対し自己心膜を使用して弁尖を延長したうえ で,ePTFE 糸による人工腱索再建術を行い,また右側 房室弁に対して交連部の弁輪縫縮術を施行した.現在 2 歳 6 ヵ月でフロセミド,スピロノラクトン各 3 mg/kg/ 日,ロサルタン 0.15 mg/kg/ 日を内服しており,心エコー で左側房室弁の軽度狭窄と中等度閉鎖不全を認めてい るが,肺高血圧はなく,外来にて経過観察中である. Case 3 男児. 診断:VSD. 在胎 27 週 0 日,412 g. 絨毛膜下血腫,羊水過少を認め,緊急帝王切開にて 前医で出生した.出生直後に気管内挿管され,サーファ クタント投与後,IMV で人工呼吸管理となった.入院 時心エコーで VSD,PDA を認めた.PDA はインドメタ シンの静注にて閉鎖した.VSD は左右短絡であり,日 齢 62(修正在胎 35 週)からフロセミド 1 mg/kg/ 日の内 服を開始したが,人工呼吸器の離脱は困難であった. 生 後 5 ヵ 月(修 正 3 ヵ 月,体 重 1.7 kg)に 心 エ コ ー 上 VSD における右左短絡を認めるようになったため,肺 高血圧の精査加療目的に当院紹介となった.転院時の 心エコーで 5 mm の両方向性短絡の膜様部 VSD を認 め,胸部 X 線で散在性にび慢性肺気腫様変化を認めた (Fig. 3a).生後 5 ヵ月(修正 3 ヵ月)の心臓カテーテル 検査時に肺高血圧クリーゼに陥り,体肺血圧比(Pp/Ps) =1.18,Rp=17.5 Wood units・m2,Qp/Qs=0.44 で あ っ た(Table 2).この時点で手術は不可能と考えられたが, 今後肺の成熟とともに肺高血圧が改善することを期待 し,シルデナフィル 0.1 mg/kg/ 日の内服と酸素療法を 開始した.また重度の気管軟化症を合併しており,生 後 8 ヵ月(修正 5 ヵ月)に気管切開術を施行した.その 1 週間後に心臓カテーテル検査を行ったところ,Rp=

2.2 Wood units・m2,Qp/Qs=1.65 であり,NO 負荷にて

肺動脈圧はさらに低下し,肺高血圧の改善を認めた. PAB では,術後主肺動脈の拡大による気管圧迫が懸念 されたため,生後 9 ヵ月(修正 7 ヵ月),体重 2.9 kg で VSD 閉鎖術を施行した.術直後から NO を投与し,術 後 2 日目からボセンタン 2 mg/kg/ 日,タダラフィル 0.2 mg/kg/ 日の内服に移行した.術後 2 週間の胸部 X 線で は心陰影,肺透亮像の改善を認めた(Fig. 3b).術後 1 年 でタダラフィルは中止,術後 1 年 6 ヵ月でボセンタン も中止し,現在 2 歳 9 ヵ月(術後 2 年)で,肺高血圧の 再燃はない.

Fig. 3 Chest X-ray of Case 3.

(5)

Case 4 女児. 診断:TAC Collet-Edward 分類 A 型. 在胎 29 週 0 日,752 g. 胎児機能不全のため緊急帝王切開にて出生した. APGAR スコア 4(1 分値)/ 7(5 分値).出生直後に気管 内挿管され,サーファクタント投与後,日齢 33 まで IMV で人工呼吸管理が行われた.高肺血流に対し,日 齢 13 からフロセミド,スピロノラクトン各 1 mg/kg/ 日 の内服を開始した.生後 3 ヵ月(修正 0 ヵ月)体重 1.7 kg の時点では肺高血圧のため心臓に対する外科的介入の 適応はないと判断され,生後 5 ヵ月(修正 2 ヵ月),体 重 2.7 kg で前医を退院した.生後 6 ヵ月(修正 3 ヵ月) に当院外来を受診した.来院時の胸部 X 線(Fig. 4a)は 肺門部を中心とした浸潤影と肺過膨張病変が散在して いた.心エコーでは 10 mm の VSD と総動脈幹から起 始する左右肺動脈を認めた.心臓カテーテル検査では, Qp/Qs=3.64,Rp=2.0 Wood units・m2,Pp(右)/Ps=1.4 で あり,NO 負荷(20 ppm)にて Pp(右)/Ps=0.96 と改善し たことから,高肺血流による肺高血圧と考えられた (Table 3).生後 7 ヵ月(修正 5 ヵ月)体重 3.64 kg で両側 PAB(両側とも周囲径 12 mm)を施行した.1 歳 1 ヵ月(修 正 9 ヵ月)体重 5.0 kg 時の心臓カテーテル検査では,平 均左肺動脈圧=20 mmHg,平均右肺動脈圧=43 mmHg, Rp=1.2 Wood units・m2,Pp(右)/Ps=0.74,Qp/Qs=0.74 であった.そこでシルデナフィル 2 mg/kg/ 日,プロス タサイクリン 5 mg/kg/ 日の内服を開始し, 肺高血圧の 改善と体重増加を待つ方針となった.1 歳 8 ヵ月(修正 17 ヵ月)体重 6.2 kg 時の心臓カテーテル検査で,平均 左肺動脈圧=15 mmHg,平均右肺動脈圧=20 mmHg, Pp(右)/Ps=0.57 と肺高血圧は改善していたため,2 歳 1 ヵ月,6.6 kg で 16 mm 3 弁付き人工導管を用いた根治 術を行った.術後胸部 X 線写真の所見は改善した(Fig. 4b).術後 2 年の心臓カテーテル検査では,肺高血圧は 認めず,シルデナフィルとプロスタサイクリンを漸減 終了した.現在 4 歳で肺高血圧の再燃はなく経過良好 である.

Table 3 Hemodynamic data on cardiac catheterization of Case 4

Age(month) 3 10 17 BW(kg) 3.3 5.0 6.2 mPAP(mmHg) 34 59 39 rPAP(mmHg) 52 43 15 lPAP(mmHg) 34 20 23 Rp(Wood units・m2 2.0 5.3:1.6(R:L) 6.0:3.9(R:L) Rs(Wood units・m2 9.4 8.3 9.0 Qp/Qs 3.64 0.74 1.08

rPAP: mean right pulmonary artery pressure, lPAP: mean left pulmonary artery pressure Table 2 Hemodynamic data on cardiac catheterization of Case 3

Age(month) 5 8 BW(kg) 1.7 2.3 FiO 1.0 0.6 1.0+NO mPAP(mmHg) 47 25 23 mAoP(mmHg) 40 30 27 Rp(Wood units・m2 17.6 2.2 1.7 Rs(Wood units・m2 6.6 5.3 NA Qp/Qs 0.44 1.65 3.05 SaO2 60 98 100

mAoP: mean aortic pressure, mPAP: mean pulmonary artery pressure, Qp/Qs: pulmonary-to-systemic flow ratio, Rp: pulmonary vascular resistance, Rs: systemic vascular resistance, SaO2: arterial oxygen

(6)

考  察 今回われわれは,積極的治療が有効であった高肺血 流性心疾患を合併した ELBWI の 4 例を経験した.近年 LBWI の予後は著しく改善している6)が,多くの先天性 心疾患において体重が小さいことはいまだ予後不良因 子の一つである4).特に高肺血流性心疾患は乳児期早期 に外科治療が必要になることが多いが,体が小さいた め手術の難易度は上がり,また未熟な肺,中枢神経,消 化管における合併症のリスクは高い.一方で,LBWI に おける先天性心疾患に対し,体重増加を待つために手 術時期を遅らせることは予後改善につながらないと Reddy ら1)が報告しているように,LBWI に対する手術 成功例が散見されるようになっている2~5).しかし, ELBWI に特化した先天性心疾患の手術成績,手術適応 に関する報告はない.今回 ELBWI で出生した 4 例に対 し当院にて複合的な管理を行うことにより根治術に到 達し,いずれも生存退院が可能であったことは特筆す べきことである. また ELBWI の中でも 1 ヵ月以上の呼吸管理を要し た症例を報告した.新生児の慢性肺障害(CLD)は日本 厚生労働省研究班により “ 先天性奇形を除く肺の異常 により酸素投与を必要とするような呼吸窮迫症状が新 生児期に始まり日齢 28 を越えて続くもの ” と定義され ている7).今回の 4 症例は,先天性心疾患合併例である ためこの定義からは除外されるが,症例 1,2 では胸部 X 線写真においてび慢性不透亮像および泡沫上陰影が 認められており,肺が CLD 類似状態であったことが推 察される.一般的に ELBWI において CLD は主な予後 悪化因子の一つであり,また米国国立衛生研究所の診 断基準8)における CLD では先天性心疾患の合併症例に おいて,CLD を合併しない症例と比べて予後が悪いと の報告がある5).高肺血流型心疾患では,肺うっ血によ り患児は呼吸障害を来し,長期の呼吸管理や高度の呼 吸 器 条 件 を 必 要 と す る リ ス ク を伴 う.し た が っ て ELBWI に高肺血流型心疾患を合併することによりさ らに未熟な肺が傷つけられ,呼吸窮迫症状は長引くこ とが推察される.このような児に対し,積極的に手術 を行い肺血流の制限を行うことは,肺障害を早期に軽 減し,呼吸器からの離脱を促すことにつながることが 期待される9).肺うっ血による呼吸状態の悪化を認め, 内科的治療により症状が改善しない場合,外科的治療 による肺血流コントロールを検討すべきである.ただ し,未熟児 PDA において,予防的に動脈管結紮術を行 うことは CLD の発症リスクを下げなかったという報 告が示すように10),手術時期をやみくもに早めること が CLD の発症リスクを低下させるかは不明だが,今回 の 4 例において全例で術後比較的早期に呼吸状態の改 善を認めており,手術介入により児の呼吸機能予後を 改善する可能性が示唆された. 新生児における肺高血圧は,生理的肺高血圧,遷延 性新生児肺高血圧などが主だが,重症 CLD や,高肺血 流型先天性心疾患においても肺高血圧が認められ,さ らにこの後 2 者を合併した場合,診断,治療はしばし ば困難である.症例 1 では人工呼吸器での酸素負荷及 び一酸化窒素投与により,肺高血圧が改善することを 確認し,根治術の適応と判断した.症例 3 では初回の 心臓カテーテル検査で重度の肺高血圧を認め,手術は 不可能と考えられた.ところがシルデナフィルの内服 と安定した呼吸管理を行ったところ肺高血圧は改善 し,根治術に到達出来た.症例 4 も同様に両側肺動脈 絞扼術,シルデナフィル内服,在宅酸素投与などを行 うことで根治術に到達できた.Beghetti ら11)も肺高血圧 治療薬を使用することにより,手術不適応症例を手術

Fig. 4 Chest X-ray of Case 4.

(7)

適 応 と す る こ と が 可 能 で あ る と し て い る.ま た Rabinovitch ら12)は肺高血圧を合併した先天性心疾患は 早期に治療されることで,肺はより改善しやすくなり, 生後 9 ヵ月以内に根治術に至った高肺血流型心疾患は 全例 1 年後の肺生検でほぼ正常であったとしている. 実際,今回経験した全例で肺高血圧の改善を認め,21 トリソミーを合併した症例 2 を除く 3 例で現在肺高血 圧は消失している.したがって,生後 1 年以内の高肺 血流型心疾患症例では重症の肺動脈閉塞性疾患を呈す るのは稀だと報告にもあるように13),ELBWI で乳児期 早期に心臓に対する治療が困難であり,肺高血圧が進 行し “ ゴールデンタイム ” を逃してしまったと思われ るような症例でも,生後 1 年以内であれば,PAB によ る肺血流制限および肺高血圧に対する積極的治療を行 い,適切な評価の後に根治術に到達できると考えられ た.また PAB や根治術によって肺体血流比を適切に保 つことは,人工呼吸器から早期に離脱し,肺動脈のリ モデリングを阻止することにつながり,長期的な肺高 血圧の進行を予防できる可能性が示唆された. 結  論 高肺血流型心疾患を合併した ELBWI 4 例に対し,段 階的に内科的,外科的治療を行うことで根治術に到達 できた.長期間の呼吸管理を要し肺高血圧を合併した ELBWI においても,肺血流を適切に保ち,肺高血圧に 対する治療を行うことにより,児の呼吸機能予後およ び生命予後を改善し得ることが示唆された. 【 参 考 文 献 】

1) Reddy VM, McElhinney DB, Sagrado T, et al:Results of 102 cases of complete repair of congenital heart defects in patients weighing 700 to 2500 grams. J Thorac Cardiovasc Surg 1999;117:324-331

2) Shepard CW, Kochilas LK, Rosengar RM, et al:Repair of major congenital cardiac defects in low-birth-weight infants:

is delay warranted ? J Thorac Cardiovasc Surg 2010;140: 1104-9

3) Kawahira Y, Nishigaki K, Maehata Y:Bilateral pulmonary artery banding for extremely low birth weight infants with coarctation or interruption of the aorta weighing less than 1.0 kg. J Thorac Cardiovasc Surg 2010;139:1339-1340 4) Archer JM, Yeager SB, Kenny MJ, et al:Distribution of and

mortality from serious congenital heart disease in very low birth weight infants. Pediatrics 2011;127:293-299 5) McMahon CJ, Penny DJ, Nelson DP, et al:Preterm infants

with congenital heart diesase and bronchopulmonary dysplasia:postoperative course and outcome after cardiac surgery. Pediatrics 2005;116:423-430 6) 日本小児科学会新生児委員会新生児医療調査小委員会 わが国の主要医療施設におけるハイリスク新生児医療 の現状(2001年 1月)と新生児死亡率(2000年 1 ~ 12月). 日小児会誌 2002;106:603-613 7) 藤村正哲:新生児の慢性肺疾患の予防と治療に関する 研究. 厚生省心身障害研究班「新生児期の疾患とケアに 関する研究」平成 7年度研究報告書. 1996;35-39

8) Baraldi E, Filippone M:Chronic Lung Disease after Premature Birth. N Engl J Med 2007;357:1946-1955 9) Lammers A, Hager A, Eicken A, et al:Need for closure of

secundum atrial septal defect in infancy. J Thorac Cardiovasc Surg. 2005;129:1353-1357

10) Clyman R, Cassady G, Kirklin JK, et al:The role of patent ductus arteriosus ligation in bronchopulmonary dysplasia: reexamining a randomized controlled trial. J Pediatr 2009;

154:873-876

11) Beghetti M, Nazzareno G, Bonnet D:Can “inoperable” congenital heart defects become operable in patients with pulmonary arterial hypertension? Dream or Reality? Congenit Heart Dis 2012;7:3-11

12) Rabinovitch M, Keane JF, Norwood WI, et al:Vascular structure in lung tissue obtained at biopsy correlated with pulmonary hemodynamic findings after repair of congenital heart defects. Circulation 1984;69:655-667

13) Yamaki S, Yasui H, Kado H, et al:Pulmonary vascular disease and operative indications in complete atrioventricular canal defect in early infancy. J Thorac Cardiovasc Surg 1993;106:398-405

Table 1 Summary of patients’ demographics and clinical courses
Fig. 2 Chest X-ray of Case 2.
Fig. 3 Chest X-ray of Case 3.
Table 3 Hemodynamic data on cardiac catheterization of Case 4

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定性分析のみ 1 検体あたり約 3~6 万円 定性及び定量分析 1 検体あたり約 4~10 万円

方針 3-1:エネルギーを通じた他都市との新たな交流の促進  方針 1-1:区民が楽しみながら続けられる省エネ対策の推進  テーマ 1 .

表 2.1-1 に米国の NRC に承認された AOO,ATWS,安定性,LOCA に関する主な LTR を示す。No.1 から No.5 は AOO または ATWS に関する LTR を,No.6 から No.9 は安定性に 関する