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論文の内容の要旨

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Academic year: 2021

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様式8の1の1 別紙1

論文の内容の要旨

専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 奥津 徳也

(2,000字程度とし,1行43文字で記入)

多くの細菌は、周囲の菌体密度の上昇に応答し、特定の遺伝子発現を活性化させるQuorum Sensing(QS)機構を有している。QS機構とは、シグナル物質を介した情報伝達系であり、グラ ム陰性細菌の多くは、シグナル物質としてアシル化ホモセリンラクトン(AHL)を用いてい る。グラム陰性細菌は、周囲のAHL濃度の上昇を菌体密度の増加として感知し、病原性因子の 発現やバイオフィルムの形成などに関わる遺伝子発現を制御している。生活排水の処理を行う下 水処理場では、一般的に標準活性汚泥法が用いられている。活性汚泥は、細菌を含む高密度の微 生物の集合体であるフロックにより形成されていることから、フロック内部でQS機構が活性化 している可能性が考えられる。下水処理場で用いられる活性汚泥に存在するAHL合成細菌は、

大部分がAeromonas属細菌であることが明らかになっているが、多様な有機物が主成分である産 業系排水の処理に用いられる活性汚泥については、微生物群の構成やQS機構についてほとんど 明らかにされていない。また、産業系用水の一つである冷却水においては、運転中に固体表面で 細菌がバイオフィルムを形成することにより、熱交換率の低下や配管等の局部腐食などの障害を 引き起こすことが問題となっている。しかしながら、冷却水に存在するAHL合成細菌の構成 や、これらのAHL合成細菌によるバイオフィルム形成機構に関しては、ほとんど研究が行われ ていない。本研究では、産業系排水の処理に用いられる活性汚泥及び工場冷却水中に存在する細 菌群からAHL合成細菌を単離し、高速液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS/MS)解析により AHL合成細菌が生産するAHLの化学構造を明らかにするとともに、次世代シークエンサーを用 いた全ゲノム解読により遺伝子レベルでのAHL合成機構の解析を行うことを目的とした。

本論文は全4章から構成されており、各章の概要は以下の通りである。

第1章では、本研究の背景と目的について述べている。

第2章では、食品系工場排水、化学系工場排水、半導体工場排水の処理に用いられる活性汚泥 からAHL合成細菌を単離し、その遺伝学的解析を行った結果について述べている。食品系及び 化学系工場排水の処理汚泥から単離されたAHL合成細菌は、全て既知のAeromonas属細菌であっ たが、半導体工場排水の処理汚泥からは、これまでにAHL合成細菌としての報告例のない Alicycliphilus属細菌を複数株単離することに成功した。その中から、Alicycliphilus sp. B1株をモデ ル細菌として選択し、次世代シークエンサーを用いた遺伝学的解析を行ったところ、B1株の AHL合成に関わる遺伝子群は、Delftia属細菌のような他の菌種の遺伝子クラスターが、何らかの 原因でB1株のゲノム中に挿入されることで獲得された可能性が示唆された。さらに、LC-MS/MS

(2)

解析により、B1株が生産するAHLの化学構造を明らかにすることにも成功した。

第3章では、5種類の工場から採取した冷却水サンプルの中からAHL合成細菌を単離し、その 遺伝学的解析を行っている。その結果、合計で7株のAHL合成細菌を単離することに成功し、細 菌種の同定を行った結果、Aeromonas hydrophilaが2株、Methylobacterium属細菌が2株、Bosea massiliensisが2株、Lysobacter属細菌が1株であることが明らかとなった。この中から、これまで にAHL合成細菌としての報告例がないLysobacter sp. F13株及びB. massiliensis E9株を用い、次世代 シークエンサーを用いた遺伝学的解析を行ったところ、両菌株のゲノム中に既知のAHL合成遺 伝子と高い相同性を示す遺伝子が存在することを明らかにした。さらに、両株が生産するAHL の化学構造をLC-MS/MSを用いて解析した結果、F13株は2種類のAHLを、E9株は3種類のAHLを それぞれ生産することが明らかになった。

第4章は結論であり、本研究で得られた知見を統括し、産業系排水および産業系用水のそれぞ れについて今後の展望を述べている。

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