人体彫刻におけるムーブマンの研究
教科・領域教育専攻 芸術系(美術)コース 増 田 有 美
作品の要旨 I 制作の動機
自分が以前から
3
齢、関心を持ち、常に気にな る存在となっているものは「人」である。その ことに気づいてから、私は人体をモチーフとし た具象彫刻の制作を行ってきた。制作を行うにあたって、モデノレ使用時や日常 的な場面で人体を意識的に観察するにつれ、人 がどのようにして2本の脚で体全体の重力を支 えて立っているかということに不思議さを感じ るようになったO 人が立っときには、例え複雑 な姿勢でなくとも、立つための努力を必ずして いる。倒れないために様々な筋肉が作用し、全 身で、バランスを取ろうとしている。例えば直立 から右脚に重心を置いた場合、腰は右上がりに なり、そのバランスを取るために肩のラインは 右下がりになる。また、上半身は僅かに右へ回 転し、螺旋がかった構造が生じる。こういった 点に人体の面白みを感じ、人体の構造を意識し た制作を通して生命感を表現したいと考えてい る。
E テーマについて
私の制作の根本的なねらいは、彫刻作品に生 命感を出すことである。以前は、モデ、ノレが行う
ポーズそのものの形態を写しとることのみに気 を取られて制作していたが、結果的に人体彫刻 としての強さや媛かさが薄れ、生命感に欠ける
指 導 教 員 長 岡 強
作品となってしまったO これは、シノレエットと してのラインばかりを追っていて、人体の構築 性による追求が不十分で、あったからで、あるO 修 了制作では、上下左右に力を関連させ、そこに 生まれる緊張を大事にした「ムーブマンJをテ ーマとした制作をすることにした。
E 制作過程
( 1 )ポーズについて
修了作品「西日 Jでは、両脚を僅かにずらし て近づけ、両腕を頭の上で組んでいる、比較的 静かな静中動のポーズに決めた。人が直立から 身体の重心を傾けるとき、ほんの僅かな傾きで も、それに呼応するように身体のあらゆる部分 が作用し、動きが起こる。
今回は逆三角形のようなポーズにすることに より、不安定な中で、バランスを取るためにどの ようにカが働いているのかを捉えられるのでは ないかと考えた。静かな中での動きを捉えるこ とにより、人に生き生きとした印象を与えるの が目的である。
(2)肉付けについて
人体は膨らみと凹みの集合体である。骨・筋 肉・脂肪により、大小様々な凹凸がかたち作ら れ、膨らみと由みのリズムが生まれる。その凹 凸が織り成すリズムによってムーブマンは生ま れるのではなし、かと考えた また凹凸によるリ
Fhu
q u q u
ズムを心地よいものにすることで、作品に暖か みを出すことができるのではなし、かと考えた。
今回の作品では、凹凸によるリズムを心地よ いものとするための具体的な方法として、かた ちの単純化を意識した。人体の表面にある凹凸 を全て表現した場合、視点が分散され、心地よ いとしづ感覚から遠ざかってしまう。また、塊 としての強さも失われる恐れがある。そこで、
実際には複数ある凹凸を整理することにより、
大らかな肉付けを目指した。特に頭上で重ねら れた手は、ひとつの塊として感じてもらうため に細部を潰して表現した。
(3)テクスチュアについて
テクスチュアは、ムーフ、マンを生み出そうと した際に非常に重要な要素だと考える。
以前の作品「夜明け」では、それほどテクス チュアを意識しなかったために、緊張感のない 作品となってしまった。その反省を生かすため、
今回はテクスチュアについても工夫した。張り のある部分はヘラで均してツルツルとした表面 にし、凹んでいる部分は表面の凹凸を残すこと で、表面に生まれるリズムを際立たせることを ねらいとした。また、 FRPでの成型後も、や すりをかけるなどして 更なるテクスチュアの 変化を試みた。
(4)着色について
今回の作品「西日 Jでは、人体の内側から渉 み出る生命の強さを表現するため、着色は暗め の色を用いることにした。ダークトーンにする ことで、見る人に作品全体をひとつの塊として 捉えてもらうことを目指した。また、塗り重ね る色の材料と分量に変化をつけ、テクスチュア をより際立たせるよう工夫した。
N
考察と今後の課題修了制作では、研究課題や表現意図を明確に してから制作に臨んだ。人体彫刻における様々 な要素について考えながら表現の改善を重ねて いったO そこで、当初の「生命感を出すj とい うねらいに少し近づくことができたように思う。
しかし、人体の構造の把握が不十分なため、
下半身から上半身へのつながりや、部分的なカ の作用に不自然な点も見られた。
また、今回は両脚を近づけることで、 2本の 脚をひとつの塊として表現することをねらった が、脚の聞の空間の処理を疎かにしてしまい、
バラついた印象を与えることになってしまったo
結果的に、全体の流れやリズムは比較的掴むこ とができたものの、部分的に詰めの甘さが目立 つ作品となったO
今後の展開としては、量感に着目した制作を 考えている。全体像の中に、また部分部分に微 妙な変化や強調や変形を取り入れた作品を作っ てみたい。また、量感とテクスチュアの関係に ついても研究を進めていきたいと考えている。
「西日J 185 X 50 X 50cm FRP 2010
nb
n︿u
q u