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キーワード:二酸化炭素,炭酸化,アルカリ,空隙率,温度 1

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(1)

論文 コンクリートの炭酸化による空隙構造に及ぼす温度・湿度変化の影響 に関する研究

川浦 実郎*1・大下 英吉*2

要旨:既往の研究 1)において,コンクリートのアルカリ含有量に依存した炭酸化反応機構,空隙率機構を統 一的に評価可能なモデルの構築を行ったが,温度項を考慮にいれていないため任意温度で評価するまでに至 っていない。そこで,本研究では,物質平衡の温度依存性に加え,アルカリ濃度を考慮することで,任意の 二酸化炭素濃度における炭酸化反応を予測し,炭酸化による空隙構造に及ぼす温度変化の影響評価を行った。

キーワード:二酸化炭素,炭酸化,アルカリ,空隙率,温度

1. はじめに

現在,コンクリート構造物の早期劣化が大きな問題で あり,その代表事例に中性化現象がある。コンクリート の中性化現象は鉄筋コンクリート構造物内部の鋼材腐 食をもたらす要因であり,構造物の耐久性の観点から非 常に重要な課題である。

コンクリートの炭酸化反応において温度は大きな影 響因子であり,一般的に温度が高くなることで炭酸化が 促進されると言われている。一方,温度が上昇するとコ ンクリート中の空隙に存在する水分の蒸発も速く,また 水酸化カルシウムと気体である二酸化炭素の溶解度が 小さくなることも知られている。これら溶解度の温度に よる違いは,コンクリート中の空隙率変化に影響を及ぼ すと考えられる。

著者等 1)CaO/SiO2が大きいCSHは炭酸化により 組織の緻密化をもたらし,CaO/SiO2が小さいCSHは炭 酸化により組織の多孔化をもたらすことを明らかとし ている。コンクリート構造物は様々な環境温度下にある ため,炭酸化反応のモデル化には温度依存性を考慮しな ければならないものと考えられる。

本研究では,分析化学的手法に基づきアルカリイオン 濃度,温度に依存した二酸化炭素の溶解量を考慮にいれ た細孔溶液の pH 遷移および炭酸化による空隙率変化に 関するモデルの構築を目的として,細孔溶液中の各イオ ンに対する電荷均衡式を基に任意の二酸化炭素濃度に おける細孔溶液の pH 遷移に関する数値解析を行い,算 出した各化学種の平衡濃度により空隙率の変化および コンクリートの炭酸化メカニズムに関する詳細な検討 を行った

2. 細孔溶液中のイオン平衡

2.1 水酸化カルシウム存在下でのイオン平衡

本研究で考慮する,細孔溶液中における各化学種の溶 解平衡は図-1に示すように細孔溶液の pH に依存した二 酸化炭素の溶解,水,炭酸カルシウム,水酸化カルシウ ム,CSHおよび水酸化アルカリである。

モデル構築までの流れは,各化学種とそれに平衡する 水の物質収支則,電荷均衡式,質量作用の法則の定式化 を行い,これらを用いて細孔溶液の pH および各化学種 の平衡濃度を同定し,算出した平衡濃度から空隙率が算 出されるわけである。

(1) 各化学種の溶解平衡

本研究で考慮する各化学種の溶解平衡は,以下のよう になる。

OH O H O H2 3 2

) ( )

( 2 2 3

2 g H O H CO l

CO

O H HCO O H CO

H2 3 2 3 3

O H CO O H

HCO3 2 32 3

32

3 Ca2 CO

CaCO

OH Ca

OH

Ca( )2 2 2 OH R ROH

OH SiO H Ca

O H O

H SiO

CaO

8 2

4

66 . 5 34 . 2 2 4

4 4 2

2 2

2

OH SiO

H Ca

O H O

H SiO CaO

34 . 5 2

67 . 2

67 . 5 2

67 . 2

4 4 2

2 2

2

*1 中央大学大学院 理工学研究科土木工学専攻 (正会員)

*2 中央大学教授 理工学部土木工学科 工博 (正会員)

(1) (2) (3)

(4)

(5)

(6)

(7)

(8)

(9) コンクリート工学年次論文集,Vol.30,No.1,2008

(2)

OH SiO H Ca

O H O H SiO CaO

4 2

2

67 . 5 33 . 0 2 2

4 4 2

2 2

2

OH SiO

H Ca

O H O H SiO CaO

34 . 3 2

67 . 1

83 . 3 83 . 1 2 67 . 1

4 4 2

2 2

2

OH SiO H Ca

O H O H SiO CaO

2 2

3 2 2

4 4 2

2 2 2

O H H HSiO O H SiO

H4 4 2 3 2 2

O H O Si HSiO

HSiO3 3 2 52 2 OH O HSi O H O

Si2 52 2 2 5

なお,各化学種の平衡定数は式(16)を用いることで算 出し,温度を考慮した平衡定数は式(17)で算出した2)3)

KSP

RT

G ln

T T T SP T

SP dT

RT K H

K

0 2

) 0

ln(

) ln(

Rは気体定数[J/K mol],Tは絶対温度[K],KSPは 熱力学的溶解度積, Gは標準ギブスエネルギー変化,

Hはエンタルピー変化をそれぞれ表す。

次に,各化学種の物質収支式,電荷均衡式を示す。

a) 炭酸

炭酸の物質収支式,電荷均衡式は,式(1),式(3), 式(4)よりそれぞれ次のように表せる。

物質収支式

] [ ] [ ]

[ 2 3 3 32

0 H CO HCO CO

C

電荷均衡式

] [ ] [ 2 ] [ ]

[H HCO3 CO32 OH

C0:溶存炭酸濃度[mol/l]

b) 炭酸カルシウム

炭酸カルシウムの物質収支式,電荷均衡式は式(3)~

式(5),式(1)によりそれぞれ次のように表せる。

物質収支式

] [ ] [ ] [ ]

[ 2 3 3 32 2

1 H CO HCO CO Ca

S

電荷均衡式

] [ 2 ] [ ] [ ] [ 2 ]

[H Ca2 OH HCO3 CO32

S1:炭酸カルシウムの溶解度[mol/l]

c) 水酸化カルシウム

水酸化カルシウムの物質収支式,電荷均衡式は,式(1), 式(6)によりそれぞれ次のように表せる。

物質収支式 ]

[ 2

2 Ca

S

電荷均衡式

] [ ] [ 2 ]

[H Ca2 OH

S2:水酸化カルシウムの溶解度[mol/l]

d) 水酸化アルカリ

水酸化アルカリの物質収支式,電荷均衡式は,式(1),

式(7)によりそれぞれ次のように表せる。

物質収支式

] [ ] [ ]

2 [

,

1 ROH R R

C

電荷均衡式

] [ ] [ ]

[R H OH

C1:水酸化ナトリウムの濃度[mol/l]

C2:水酸化カリウムの濃度[mol/l]

e)珪酸カルシウム

CSHの組成は式(8)~(12)に示すように多岐に渡るが,

本研究においてCaO/SiO2比が 2.0 のC4S2H2.34CSH の代表物質とし,以下に示すこととする。

34 . 2 2 4S H

C の物質収支式,電荷均衡式は,式(1),式 (8),(13)~(15)により次のように表される。

物質収支式

] 2[

] 1 2[

] 1 [

]

[H4SiO4 HSiO3 Si2O52 HSi2O5 (26) ]

2[ 2S3 1 Ca2 (10)

(12)

(13)

(14)

(15)

(17) (16) (11)

(18)

(19)

(20)

(21)

(22)

(23)

(24)

(25)

)2

(O H Ca

H+

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H4S iO 4

O H - C a 2+

図 - 1 各 化 学 種 の イ オ ン 平 衡 の 模 式 図

H2C O 3

H SiO 3 52 2O S i

5 2O H+ H Si

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H4S iO 4

O H - C a 2+

各 化 学 種 の イ オ ン 平 衡 の 模 式 図

H2C O 3

H SiO 3 52 2O S i

5 2O H Si

)2

(O H Ca

H+

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H4S iO 4

O H - C a 2+

図 - 1 各 化 学 種 の イ オ ン 平 衡 の 模 式 図

H2C O 3

H SiO 3 52 2O S i

5 2O H+ H Si

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H+

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H4S iO 4

O H - C a 2+

図 - 1 各 化 学 種 の イ オ ン 平 衡 の 模 式 図

H2C O 3

H SiO 3 52 2O S i

5 2O H+ H Si

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H4S iO 4

O H - C a 2+

各 化 学 種 の イ オ ン 平 衡 の 模 式 図

H2C O 3

H SiO 3 52 2O S i

5 2O H SiSi2O5-

HSiO3- HSi2O5-

H4SiO4 2 ) (O H Ca

H+

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H4S iO 4

O H - C a 2+

図 - 1 各 化 学 種 の イ オ ン 平 衡 の 模 式 図

H2C O 3

H SiO 3 52 2O S i

5 2O H+ H Si

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H4S iO 4

O H - C a 2+

各 化 学 種 の イ オ ン 平 衡 の 模 式 図

H2C O 3

H SiO 3 52 2O S i

5 2O H Si

)2

(O H Ca

H+

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H4S iO 4

O H - C a 2+

図 - 1 各 化 学 種 の イ オ ン 平 衡 の 模 式 図

H2C O 3

H SiO 3 52 2O S i

5 2O H+ H Si

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H+

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H4S iO 4

O H - C a 2+

図 - 1 各 化 学 種 の イ オ ン 平 衡 の 模 式 図

H2C O 3

H SiO 3 52 2O S i

5 2O H+ H Si

C a 2+

C O 2 (g )

C a(O H ) 2(s)

H2C O 3

C a 2 +

H C O 3-

C aC O 3 (s) C - S - H (s)

H+ HC O 3-

C O 32 - 2O H -

R O H

R+ O H -

C O 32 - H4S iO 4

O H - C a 2+

各 化 学 種 の イ オ ン 平 衡 の 模 式 図

H2C O 3

H SiO 3 52 2O S i

5 2O H SiSi2O5-

HSiO3- HSi2O5-

H4SiO4

図-1 化学種のイオン平衡の模式図

(3)

] [

] [ 2 ] [ ] [

] [ 2 ] [

5 2 2

5 2 3

2

O HSi O

Si HSiO

OH Ca H

電荷均衡式

S3C4S2H2.34の溶解度[mol/l]

(2) 炭酸カルシウム,水酸化ナトリウムおよび珪酸カ ルシウムの溶解度

炭酸カルシウム,水酸化カルシウム,珪酸カルシウム S1S2S3は溶解度積の関係に共通イオン効果を考慮 することで算出される。以下に共通イオン効果を考慮し た式を示す。

ここで, iは炭酸の解離分率,

i

は失ったプロトン数を

示す。

(3) 細孔溶液全体の電荷均衡式

細孔溶液における(1)項に示した,五つの物質での全 電荷均衡式は,各系の寄与を加えることで以下のように 表される。

最終的に,各系において示した物質収支式,電荷均衡式 および平衡定数の式を式(31)に導入することにより次 式が得られる。

2.2 水酸化カルシウム消失後のイオン平衡

固相に存在していた水酸化カルシウムが消失した後 における各化学種の溶解平衡は,前節における化学種に 水酸化カルシウムの寄与を除くことで得られる。

炭酸カルシウム,C4S2H2.34の各溶解度S1,S3は,共 通イオン効果を考慮することで次のように表される。

水酸化カルシウム消失後の細孔溶液でのイオン平衡に 関する全体のプロトン収支式は,各系の寄与を加えるこ

とで以下のように表される。

最終的に各系において示した物質収支式,電荷均衡式お よび平衡定数の式を式(35)に代入することで次式が得 られる。

溶液中の全ての化学種を考慮にいれた溶液のプロトン 濃度は式(32),式(35)に炭酸の解離分率,炭酸カルシウム,

水酸化カルシウム,C4S2H2.34の溶解度を導入し,任意 の溶存炭酸濃度およびアルカリ濃度を与えて解くこと により算出され,細孔溶液中における各化学種の平衡濃 度が算出されプロトン濃度により求められる。

2.3 炭酸化の温度依存性 (1) 水酸化カルシウム存在下

CSHの溶解を考慮せず,単に水酸化カルシウムと二酸 化炭素が反応して炭酸カルシウムが生成する反応系に 対し温度の影響を考える。この時,水酸化カルシウムか ら溶解するCa2 は全て炭酸カルシウムになるとする。

図-2 に温度を考慮した任意の溶存炭酸濃度下における 水酸化カルシウム,炭酸カルシウムの溶解度を数値解析 により予測した結果を示す。同図に示すように,水酸化 カルシウム,炭酸カルシウムの温度の違いによる溶解度 にはほとんど差がないことがわかる。水酸化カルシウム の溶解量と同量の炭酸カルシウムが生成する反応のみ では温度を考慮した炭酸化を正確には評価することは できないと考えられる。

次に,CSHの溶解を考慮した反応系を考える。図-3 に水酸化カルシウムの溶解,二酸化炭素の溶解,炭酸カ

0 2 1 5 2 2 5 2 3

3 2 1 2 1 2 1

) 2 ( ] [ ] [ 2 ] [ ] [

8 2 ) 2 2 ( ]

[

C O

HSi O

Si HSiO OH

S S S C

C H

) ( ) 4 ( )

(CaCO3 S1 S3 2 C0 S1 Ksp

8 2

4 4 4 3 1 34 . 2 2

4 ) ( 4 ) [ ] [ ]

(C S H S S H SlO OH

Ksp

] [

] [ 2 ] [

] [ 2 ] [ ] [

] [ 2 ] [ ] [ ] [

5 2 2

5 2 3

2 3 3

2

O HSi O

Si HSiO

CO HCO

OH

Ca K

Na H

) ( ) 4 (

)

(CaCO3 S1 S2 S3 2 C0 S1 KSP

2 3

2 1

2) ( 4 ) [ ]

) (

(Ca OH S S S OH

KSP

8 4 2

4 4 3 2 1

34 . 2 2 4

] [ ] [

) 4 (

) (

OH SiO H S S S

H S C KSP

] [

] [ 2 ] [

] [ 2 ] [ ] [

] [ 2 ] [ ] [ ] [

5 2 2

5 2 3

32 3

O HSi O

Si HSiO

CO HCO

OH

Ca K

Na H

0 2 1 5 2

2 5 2 3

3 1 2 1 2

1

) 2 ( ] [

] [ 2 ] [ ] [

8 ) 2 2 ( ]

[

C O

HSi

O Si HSiO

OH

S S C

C H (27)

(28) (29) (30)

(31)

(32)

(33) (34)

(35)

(36)

図―2 溶存炭酸濃度とCa(OH)2CaCO3溶解度の関係 0

0.05 0.1 0.15 0.2

0 0.05 0.1 0.15 0.2 溶存炭酸濃度[mol/l]

Ca(OH)2[mol/l]

10℃

25℃

40℃

-0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0

0 0.05 0.1 0.15 0.2 溶存炭酸濃度[mol/l]

CaCO3[mpl/l] 10℃

25℃

40℃

図-2 溶存炭酸濃度と Ca(OH)2,CaCO3の 溶解度の関係

Ca(OH)2の溶解度[mol/l] CaCO3の溶解度[mol/l]

(4)

CSH CH

c [Ca(OH)2] V [CSH] V

ルシウムの生成に加えCSHの溶解を考慮した反応にお ける 10℃,25℃,40℃の任意の溶存炭酸濃度下での,

34 . 2 2 4S H

C の溶解度を数値解析により予測した結果を示 す。同図に示すように,温度の違いにより,CSHの溶解 度に差が生じることがわかる。水酸化カルシウム溶解と 同量の炭酸カルシウムが生成するとしているため,

それぞれの溶解度は図-2と同様な傾向を示した。これ より温度依存性を考慮した炭酸化反応のモデル化には,

CSHを考慮する必要がある。

(2) 水酸化カルシウム消失後

図-4 に水酸化カルシウム消失後のC4S2H2.34溶解度 を式(36)より得られた予測値を示す。同図より温度によ って,C4S2H2.34の溶解度に差があることが確認できる。

図-5に,式(36)のイオン平衡式を用いて,CaO/SiO2 毎に炭酸化終了時のCSHの溶解量を算出したものを,温 度毎に示す。なお,炭酸化終了の判定は細孔溶液の pH 値がフェノールフタレインの変色域である 10.0 の時点 とした。

3. 本構築モデルに基づく空隙率変化の評価 3.1 炭酸化による空隙率変化率の予測手法

炭酸化による空隙率変化の予測は Papadakis4)等の研 究を参考に以下のように決定した。

ここで, cは炭酸化による空隙率変化, , はそれぞれCa(OH)2CSH1molあたりの炭酸化による 空隙率変化を表す。なお以下においては簡略化のため,

式(36)の右辺第一項を c(CH),第二項を c(CSH)と する。Papadakis 等の研究では単に, のみを対象 としているが,本研究では は式(32)および式 (36)において算出された各化学種の平衡濃度を考慮す るためCSHの反応に応じてCSHの溶解,CaCO3のみ生 成,SiO2のみ生成,およびSiO2CaCO3の生成に分類 した。

1)を用い, は 式(17)から各温度下での珪酸の平衡定数を算出し,算出 した値から各 pH 値におけるSiO2析出領域を求め,水酸 化カルシウム消失後において算出したプロトン濃度か ら各温度下でのSiO2生成量,CaCO3生成量,C4S2H2.34 溶解量を算出し各化学種の密度5)を用いることで算定し た。

3.2 水酸化カルシウム存在下での空隙率変化

表-1に示す解析値は,アルカリ濃度R2O 0.56%にお いて式(32)より得られる水酸化カルシウムの溶解量を 用いて式(37)から算出したものである。アルカリ濃度

O

R2 ,固相に存在する水酸化カルシウム量は松里等6)の 研究結果を用いた。各CaO/SiO2比の組成を示すCSHに おける空隙率変化はCaO/SiO2=2.0 のC4S2H2.34を各

/SiO2

CaO 比のCSHに置き換えることで,同様に算出し た。

表-1 より,いずれのCaO/SiO2においても空隙率変 化は同じ値を示している。これは,固相に水酸化カルシ ウムが存在する場合,CSHは炭酸化の影響を受けない。

VCH VCSH

VCSH VCSH

VCH VCH 3.85 10 6m3/mol VCSH 3.0E-06

3.5E-06 4.0E-06

0 0.05 0.1 0.15 0.2

溶存炭酸濃度[mol/]

C4S2H2.34[mol/l] 10℃

25℃

40℃

図―3 水酸化カルシウム存在下での溶存 炭酸濃度との溶解度の関係

C4S2H2.34の溶解度[mol/l]

3.0E-06 3.5E-06 4.0E-06

0 0.05 0.1 0.15 0.2

溶存炭酸濃度[mol/]

C4S2H2.34[mol/l] 10℃

25℃

40℃

図―3 水酸化カルシウム存在下での溶存 炭酸濃度との溶解度の関係

C4S2H2.34の溶解度[mol/l]

図-3 水酸化カルシウム存在下での溶存炭酸濃度と C4S2H2.34の溶解度の関係

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

0 0.05 0.1 0.15

溶存炭酸濃度[mol/l]

C4S2H2.34[mol/l]

10℃

25℃

40℃

図―4 水酸化カルシウム消失後での溶存 炭酸濃度との溶解度の関係

C4S2H2.34の溶解度[mol/l]

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

0 0.05 0.1 0.15

溶存炭酸濃度[mol/l]

C4S2H2.34[mol/l]

10℃

25℃

40℃

図―4 水酸化カルシウム消失後での溶存 炭酸濃度との溶解度の関係

C4S2H2.34の溶解度[mol/l]

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

0 0.05 0.1 0.15

溶存炭酸濃度[mol/l]

C4S2H2.34[mol/l]

10℃

25℃

40℃

図―4 水酸化カルシウム消失後での溶存 炭酸濃度との溶解度の関係

C4S2H2.34の溶解度[mol/l]

図 - 4 水 酸 化カ ル シウ ム消 失 後の 溶 存炭 濃度 と C4S2H2.34の溶解度との関係

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

10 25 40

温度(℃)

CSH(mol/l)

CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

10 25 40

温度(℃)

CSH(mol/l)

CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33 CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33

図―5 炭酸化終了時における 毎の溶解度

温度(℃)

CSH溶解度[mol/l]

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

10 25 40

温度(℃)

CSH(mol/l)

CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

10 25 40

温度(℃)

CSH(mol/l)

CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33 CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33

図―5 炭酸化終了時における 毎の溶解度

温度(℃)

CSH溶解度[mol/l]

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

10 25 40

温度(℃)

CSH(mol/l)

CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

10 25 40

温度(℃)

CSH(mol/l)

CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33 CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33

図―5 炭酸化終了時における 毎の溶解度

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

10 25 40

温度(℃)

CSH(mol/l)

CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

10 25 40

温度(℃)

CSH(mol/l)

CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33 CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33

図―5 炭酸化終了時における 毎の溶解度

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

10 25 40

温度(℃)

CSH(mol/l)

CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

10 25 40

温度(℃)

CSH(mol/l)

CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33 CaO/SiO2=0.5 CaO/SiO2=0.83 CaO/SiO2=1.0 CaO/SiO2=1.33

図―5 炭酸化終了時における 毎の溶解度

温度(℃)

CSH溶解度[mol/l]

図-5 炭酸化終了時における各温度毎の溶解度

CaO/SiO2比 0.5 0.83 1 1.33 2

10℃ 0.33 0.33 0.33 0.33 0.33

25℃ 0.33 0.33 0.33 0.33 0.33

40℃ 0.33 0.33 0.33 0.33 0.33

CaO/SiO2比 0.5 0.83 1 1.33 2

10℃ 0.33 0.33 0.33 0.33 0.33

25℃ 0.33 0.33 0.33 0.33 0.33

40℃ 0.33 0.33 0.33 0.33 0.33

表-1 水酸化カルシウム存在下での空隙率変化

(37)

(5)

さらに,水酸化カルシウムの溶解量と同量の炭酸カルシ ウムが生成することを仮定しており,体積変化に寄与す るものは水酸化カルシウムの炭酸化のみであるためで ある。

また,同表より,いずれの温度においても空隙率変化 は同じ値となっている。これは溶解した水酸化カルシウ ムと同量の炭酸カルシウムが生成され,この反応系態が 水酸化カルシウムが存在する限り生じることによるも のである。これらより,固相に水酸化カルシウムが存在 している場合,炭酸化による空隙率変化は温度の影響を うけにくく,CaO/SiO2に関わらず全て同じ値になるこ とが示唆された。

3.3 水酸化カルシウム消失後の空隙率変化の評価 図-6は各CaO/SiO2におけるCSHの炭酸化による 空隙変化率 cを 10℃,25℃,40℃において示したもの である。

まず,いずれの場合においてもCaO/SiO2が大きい CSHは炭酸化により組織の緻密化が生じることに対し て,CaO/SiO2が小さいCSHは炭酸化により組織の多孔 化が生じている。これは,式(36)において得られたイオ ン平衡式を用いて任意の溶存炭酸濃度下における pH 遷 移を示した図-7より,CaO/SiO2が大きいほど pH の低 下が緩やかであり,炭酸化終了時までに多くの二酸化炭 酸と反応するためと考えられる。

またCaO/SiO2が大きいほど組織が緻密化するとい う傾向は温度が低いほど顕著であり,これは図-5 より 炭酸化終了時において,CSHの溶解度は温度が低くな るほど大きくなり,CaO/SiO2が大きいほど,大きくな るためである。また図-7より,温度が低いほど pH の低 下が緩やかであり,炭酸化終了時までに多くの二酸化炭 酸と反応するためと考えられる。

炭酸化による空隙率変化の温度依存性をより詳細に 議論するため,温度と空隙率変化の関係をCaO/SiO2毎 に整理したものが図-8である。いずれのCaO/SiO2

図-6 各CaO/SiO2におけるCSHの体積変化

1E-14

1E-13

1E-12

1E-11

1E-10

0 0.04 0.08 0.12 0.16 0.2 溶存炭酸濃度[mol/l]

pH

c/s=0.5 c/s=0.83 c/s=1.0 c/s=1.33 c/s=2.0

(a) 10℃

1E-14 1E-13

1E-12 1E-11

1E-10

0 0.04 0.08 0.12 0.16 0.2 溶存炭酸濃度[mol/l]

pH

c/s=0.5 c/s=0.83 c/s=1.0 c/s=1.33 c/s=2.0

(b) 25℃

1E-14 1E-13

1E-12

1E-11

1E-10

0 0.04 0.08 0.12 0.16 0.2 溶存炭酸濃度[mol/l]

pH

c/s=0.5 c/s=0.83 c/s=1.0 c/s=1.33 c/s=2.0

(c) 40℃

-0.01 -0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03

0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 1.7 1.9

CaO/SiO2

Δεc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16

(c) 40℃

⊿ε

CaO/SiO2 ε空隙率変化⊿ε

-0.01 -0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03

0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 1.7 1.9

CaO/SiO2

Δεc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16%

(b) 25℃

⊿εε

CaO/SiO2 空隙率変化⊿ε

(a) 10℃

-0.01 -0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03

0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 1.7 1.9

CaO/SiO2

Δεc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16%

⊿ε空隙率変化⊿ε

CaO/SiO2 -0.01

-0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03

0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 1.7 1.9

CaO/SiO2

Δεc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16%

⊿ε

-0.01 -0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03

0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 1.7 1.9

CaO/SiO2

Δεc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16%

⊿ε

-0.01 -0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03

0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 1.7 1.9

CaO/SiO2

Δεc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16%

⊿ε⊿ε空隙率変化⊿ε

CaO/SiO2 空隙率変化⊿ε

図-7 Ca(OH)2消失後での pH と溶存炭酸濃度の関係

(6)

おいても 25℃と 40℃における空隙率変化に差異はない が,10℃では他の温度に比べて差異を生じている。この 傾向は特にCaO/SiO2が 1.0 以上において顕著である。

これは図-5より,1.0 以上の場合において 10℃での炭 酸化終了時の溶解度が 25℃,40℃の溶解度よりも顕著に 大きくなっていることによるものである。

以上のように,炭酸化による空隙率変化の温度依存性 はCaO/SiO2に大きく関係しており今後更なる検討が 必要である。

4. まとめ

本研究で得られた結果を要約すると,以下のように示 される。

(1)分析化学的手法により細孔溶液中の各化学種を 慮にいれた,任意の炭酸濃度下における任意温度の細孔

溶液中の各化学種の溶解度に関する方程式の構築を行 った。

(2)構築された方程式から,水酸化カルシウムが固相に 存在するとき炭酸化による空隙率変化は温度の影響を うけず,水酸化カルシウム消失後の空隙率変化は温度の 影響をうけることが明らかとなった。

(3) 炭酸化による空隙率変化の温度依存性は CaO/SiO2

に大きく関係しており今後更なる検討が必要である。

参考文献

1) 佐々木崇,島袋出,大下英吉:化学平衡論を導入し たコンクリートの炭酸化モデルに基づく空隙率評 価に関する研究,土木学会論文集,Vol.62,No.3,

pp.555-568,2006.8

2) Babushukin,V.I,Matever,G.M.andMchedlov-Perrossyan, O.P.:Thermodynamics of Silicate,Springer-Verlag,1985

3) Freiser,H and Femando,Q共著,藤永太一郎,関戸栄

一共訳:イオン平衡―分析化学に置ける-,化学同 人,1967.8.

4) Papadakis,V.G,Vayenas,C.G and Fardis,M.N:Physical and Chemical Characteristics Affecting the Durability of Concrete,ACIMaterials,JournalVol.88,No.2,pp186-196,1 991

5) セメント硬化体研究委員会:セメント硬化体委員会 報告書,セメント協会,2001,5

6) 松里広昭ほか:炭酸化した硬化体の強度と微細構造,

第 46 回セメント技術講演集,pp.630-635,1992 図-8 各CaO/SiO2における体積変化の温度依存性

-0.005 -0.004 -0.003 -0.002 -0.001 0

10 25 40

温度(℃)

εc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16%

(a) CaO/SiO2 0.5

εεε

(a) CaO/SiO2=0.5

-0.005 -0.004 -0.003 -0.002 -0.001 0

10 25 40

温度(℃)

εc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16%

(b) CaO/SiO2 0.83

⊿εεε

(b) CaO/SiO2=0.83

-0.005 -0.004 -0.003 -0.002 -0.001 0

10 25 40

温度(℃)

εc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16%

(c) CaO/SiO2 1.0

εεε

(c) CaO/SiO2=1.0

-0.005 -0.004 -0.003 -0.002 -0.001 0

10 25 40

温度(℃)

εc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16%

(d) CaO/SiO2 1.33

εεε

(d) CaO/SiO2=1.33

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05

10 25 40

温度(℃)

εc(CSH)

R2O=0.56%

R2O=0.83%

R2O=1.16%

(e) CaO/SiO2 2.0

εεε

(e) CaO/SiO2=2.0

参照

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