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カンキツウイロイド病の病原学的研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 中 原 健 二

学 位 論 文 題 名

カンキツウイロイド病の病原学的研究 学位論文内容の要旨

  日本においてカンキツ台木として広く利用されているカラタチは、カンキツェキ ソコーティス病に対して感受性であり、その病原体の解明及びその防除が求められ ている。これまでに5種のカンキツウイロイドが海外で報告され、それらがカンキ ツエキソコーティス病に関与していることが知られている。日本のカンキツは2種 のウイロイドを保毒することが報告されているが、他のカンキツウイロイドもその 存在は示唆されているものの同定されるに至っていなかった。本研究により、日本 のカンキツは、これら5種全てのカンキツウイロイドを保毒することを明らかにし、

それらの高感度診断法を確立した。主な研究成果は以下のようにまとめられる。

1.日本のカンキツに感染しているウイロイドの種類

  日本のカンキツから核酸を抽出してカンキツウイロイドの検出を行ったところ、

連続ポリアクリルアミドゲル電気泳動(sPAGE)によルグループIIIカンキツウイ ロイド(CVd−III)とおもわれるウイロイド様RNAが検出された。また、既報の塩 基 配 列 か ら 設 計 した プ ライ マー によ るRT‑PCRによ りCVd〜IとCVd‑IVのcDNA と思われる増幅断片が検出された。それらの塩基配列を解析して既報の配列と比較 した結果、それぞれ予想されたウイロイドであることが確認できた。従って、日本 のカンキツは海外で報告されている5種全てのカンキツウイロイド、すなわち、カ ンキツエキソコーティスウイ口イド(CEVd)とCVd―I、CVd―II、CVd―III、CVd―IV を保毒する事、更に、多くの果樹で、複数のウイ口イドが複合感染していることが 明らかとなった。

2.日本のカンキツウイロイドの塩基配列の決定

  日本のカンキツウイロイドの中ではCVd―IIの塩基配列が決定されているだけで あった。そこで、日本のカンキツの保毒するCEVdとCVd―I、CVd−III、CVd―IV の 塩基配列を決定したところ、Duran‑Vilaら(1988)がsPAGEにより検出した CVd−IaとCVd−mcと思われる、海外においても塩基配列が決定されていなかっ た変異株の塩基配列を決定することができた。それら以外は既報の塩基配列変異株 と相同性が高く、RT−PCRクローニングに用いたプライマーの塩基配列部分にはニ つのプライマーを除いて変異が見られなかった。従って、それらのプライマーの多     ―201〜

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くはRT―PCRを用いた診断に利用できると思われた。

3.コ ー ン ケ ー プ ガ ム 様 症 状 を 呈 す る カ ン キ ツ か ら 特 異 的 に検 出さ れたCVd―III   コ ーン ケ ープ ガム 様症 状を 呈する日向夏と無症状のそれの保毒するウイ口 イドの 検 出をsPAGEとノ ーザ ンハ イブ リダ イゼ ーシ ョン によ り試 みた とこ ろ 、CVd―IIと CVd―IIIが 症状 を呈 する 株と 無症状の株の両方から検出されたが、症状を呈 する二 株か ら、 無 症状 の株 のCVd一IIIと移動度の異なるCVd−IIIのパンドがニつ検 出され た 。そ れら の中 で、sPAGEと塩 基配 列の 解析 の結 果よ りそ れら 二株 に 共通 のCVd― IIIの 変異 株は290塩 基か ら成 るCVd―IIIcと思わ れるものであった。このCVd―IIIc が コ ー ン ケ ー プ ガ ム 様 症 状 を 引 き 起 こ す 病 原 体 で あ る 可 能 性 が 考 え ら れ た 。

4. CEVdの塩 基 配列 に対 する 感染 宿主 の影 響

  広 島 産 カ ン キ ツ が 保 毒 す るCEVd (CEVd−H)を 草 本 の ト マト で増 殖し て塩 基配 列 を 決 定 し た 。 一 方 、 カ ン キ ツが 保毒 するCEVd−Hの 塩基 配列 が直 接決 定さ れて いる 。そ れら の塩 基配 列を 比較 した とこ ろ 、7力所 の変 異が認められた。これ は、

複 数 の 塩 基 配 列 変 異 株 集 団 か ら構 成さ れるCEVdーHが 感染 宿主 の選 択を 受け て、

多 数 を 占 め る 変 異 株 が 入 れ 替 わっ たた めと 思わ れた 。Semancikら (1993)の 仮説 と実 験を 裏付 ける 結果 であ り、 その遺伝子診断の確立を目的に塩基配列を解析 する 場 合 、 診 断 す る 宿 主 の 保 毒 す る ウ イ ロ イ ド を 用 い る べ き で あ る と 思 わ れ た 。

5. sPAGEと ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン に よ る カ ン キ ツ ウ イ ロ イ ド の 検 出   ウ イロ イド 診断 のた めに カン キツ 組織5−10gから 従来 法に より 核酸 抽出 を試 み た とこ ろ、 抽出 で きな い株 があった。これは、粗抽 出物中に含まれる宿主由来の多 糖 類やフウノール化合物 が多いためと思われた。従来法における2ーヌトキシエタノ ー ル 抽 出 とCTAB沈 殿 の 代 わ り に2― プト キシ エ タノ ール によ る分 画沈 殿法 を用 い る 改良 法に より 試 みた とこ ろ、供試した全てのカン キツ株から核酸が抽出できた。

そ れ ら の 純 度 と 量 は 、sPAGEと ハイ プリ ダイ ゼ ーシ ョン によ るカ ンキ ツウ イロ イ ド の診 断に 充分 で あっ た。

6.ウ イロ イド 診断 のた め の簡 易核 酸抽 出法 の確 立

  簡 易 核 酸 抽 出 法 の 確 立 を 目 的 に 、 エチ ルキ サン トゲ ン酸 カリ ウム(PEX)を用 い て磨 砕を 行わ ずに 植物 組 織か らウ イロイドを含む核酸を溶 出させることを試みたと ころ 、カ ンキ ッだ けで な くキ ク、 ホッブ、ジャガイモから も効果的に感染ウイロイ ドを 溶出 でき た。 ホッ プ とジ ャガ イモからの溶出核酸は、 ドットブロットハイブリ ダイ ゼー ショ ンだ けで な くRT一PCRに よる ウイ ロイ ド の高 感度 診断にも用いること がで きた 。し かし 、カ ン キツ とキ クからの溶出核酸は、ド ットブロットハイブリダ イゼ ーシ ョン 法に よる 診 断に 用い ることができたが、それ らに含まれる阻害物質、

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おそらく、多糖類とフェノール化合物のためにRT‑PCRに適用できなかった。

7.RTーPCRによる高感度簡易診断法の確立

  カンキツ中に低濃度で存在するカンキツウイロイドにはRT‑PCR法による高感度 検出が必要であった。PEX抽出後の溶出核酸の精製法を検討した結果、2一ブトキ シエタノールによる分画沈殿と塩酸処理及びェタノール沈殿により簡便にカンキツ とキクからR‑I、―PCRの阻害物質を取り除くことができた。本方法を用いて抽出した カンキツ100ロgに相当する核酸から5種全てのカンキツウイ口イドが検出できた。

診断の簡易化には、全ての操作をマイク口遠心チューブ中で行う必要がある。本抽 出法では、これに充分なカンキツ組織量をチューブ内に確保でき、1日に多数の検 体の処理することが可能となった。

8. NASBAによるカンキツウイロイドの診断

  RNA増幅 法(NASBA)に よ り 通常 の 条件 下 で ウイ ロ イドcRNAを増 幅できな か った。この理由は、ウイロイドはGC含量が高く、分子内で相補結合構造をとりう るからだと考えた。しかしながら、ITPを反応液中に添加することにより、感染カ ンキツからの抽出核酸を鋳型にしてウイ口イドcRNAを増幅することができた。/

一ザンハイブリダイゼーションによりこの増幅cRNAを解析した結果、その増幅の 量と増幅の正確性は、ウイ口イドの特異的高感度検出に充分であった。NASBA法 は、RT一PCR法に比べると、1種類の反応組成、一定温度、短時間で標的の核酸配 列を増幅することができる利点があり、本研究による改良でRT‑一PCRよりも高感度 にウイロイドを検出可能であった。簡易核酸抽出法と組み合わせることにより、さ らに実用的な診断法を確立できる。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    上 田 一 郎 副 査    教 授    生 越    明 副査   教授    喜久田嘉郎

学位論文題名

カンキツウイロイド病の病原学的研究

  本 論 文 は 、7章 で 構 成 さ れ 、 図53、 表8、 引 用 文 献186、 総 頁 数137の 和 論文で、他に参考論文6編が添えられている。

  日本においてカンキツ台木とレて広く利用されているカラタチは、カンキツエキ ソコーティス病に対して感受性である。これまでに5種のカンキツウイロイドが海 外で報告され、それらがカンキツエキソコーティス病に関与していることが知られ ている。日本のカンキツは2種のウイロイドを保毒することが報告されているが、

他のカンキツウイロイドもその存在は示唆されているものの同定されるに至ってい なかった。本研究により、日本のカンキツは、これら5種全てのカンキツウイロイ ドを保毒することを明らかにし、それらの高感度診断法を確立した。主な研究成果 は以下のようにまとめられる。

  日本のカンキツからカンキツウイロイドの検出を試みたところ、連続ポリアクリ ルアミドゲル電気泳動( sPAGE)とRT‑PCRによりこれまで日本で報告のなかった グループIカンキツウイロイド(CVd−I)、CVd―IIIとCVdーIVが検出された。これ によって日本のカンキツは海外で報告されている全てのカンキツウイロイド、すな わち、カンキツエキソコーティスウイロイド(CEVd)とCVd‑I、CVd―II、CVdーIII、 CVd‑IVを保毒する事、更に、多くの果樹で、複数のウイロイドが複合感染してい ることを明らかにした。それらの塩基配列の多くは、既報の塩基配列と相同性が高 かったが、新たにCVd−IaとCVd−IIIcと思われる変異株の塩基配列を決定した。

  コーンケープガム症状を呈するカンキツに対するCVdーIIIの関与が示唆された。

即ち、コーンケープガム様症状を呈する日向夏から、sPAGEとノーザンハイブリダ イゼーションによって、無症状の株に存在しないCVd−IIIのバンドがニつ検出され た。それらの中で、sPAGEと塩基配列の解析結果より、症状を呈する二株に共通の CVdーIIIの変異株は290塩基から成るCVd―IIIcと思われた。よってこれがコーンケ ープガム様症状を引き起こす病原体であると示唆した。

  広島産カンキツが保毒するCEVd (CEVd―H)を、草本のトマトで増殖すると、

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もとのカンキツが保毒するCEVd―Hの塩基配列に比べて、7カ所の変異が認められ た。これは、複数の塩基配列変異株集団から構成されるCEVd―Hが感染宿主の選択 を受けて、多数を占める変異株が入れ替わったためと思われた。そこで、遺伝子診 断の確立を目的に塩基配列を解析する場合、診断する宿主の保毒するウイロイドを 用いるべきと結論した。

  遺伝子診断法に用いる簡易核酸抽出法を確立した。即ち、エチルキサントゲン酸 カリウム(PEX)を用しゝて磨砕を行わずに植物組織から核酸を溶出させる方法によ り、カンキッだけでなくキク、ホップ、ジャガイモからも効果的に感染ウイロイド を溶出できた。ホップとジャガイモからの溶出核酸は、ドットブロットハイブリダ イゼーションだけでなくRT‑PCRによるウイ口イドの高感度診断にも用いることが できた。しかし、カンキツとキクからの溶出核酸は、ドットブロットハイブリダイ ゼーション法による診断に用いることができたが、それらに含まれる阻害物質(多 糖類等)のためにRT―PCRに適用できなかった。カンキツ中において低濃度で存在 するカンキツウイロイドにはRT‑PCRによる高感度検出が必要であった。そこで精 製法を検討した結果、2―ブトキシエタノールによる分画沈殿と塩酸処理及びェタノ ール沈殿により簡便にカンキツとキクから阻害物質を取り除くことができた。

  NASBAによるカンキツウイロイドの検出を試みた。通常の条件下ではウイロイ ドcRNAを増幅できなかった。これは、ウイロイドRNAの高いGC含量と分子内での 相補結合構造が原因と考えられた。しかしながら、、ITPを反応液中に添加するこ とにより、感染カンキツからの抽出核酸を鋳型にしてウイロイドcRNAを増幅する ことができた。ノーザンハイブリダイゼーションにより、特異的高感度検出に充分 であることが確かめられた。NASBA法は、RT−PCR法に比べて1度の反応、一定温 度、短時間で標的の核酸配列を増幅することができる利点があり、また、本研究に よ る 改 良 でRT‑PCRよ り も 高 感 度 に ウ イ ロ イ ド を 検 出 可 能 で あ っ た 。   以上のように本研究は、日本のカンキツから5種類のウイロイドを報告して病原 性の解明における基礎的知見を得た上で、更にこれら全てのウイロイドの高感度診 断法を確立してウイロイド病防除に大きく貢献したものである。よって審査員一同 は,中原健二が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有するものと認めた。

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