博 士(工 学)三枝利紀 学位 論文題 名
STUDY ON JOINING IVIETALS AND STABILIZED ZIRCONIA CERAMICS AND COLORATION OF THE CERAh/IICS
(金属と 安定化ジル コニアセラミックスの 接合及びセラミックスの変色に関する研究)
学位論文内容の要旨
安 定 化 ジ ルコ ニ ア(FSZ) は、高 い酸素 イオン 伝導性を 有する ことか ら、固 体酸化 物 型 燃料 電 池 (SOFC) の電 解 質 隔 膜へ の 応 用が期 待されて いるが 、電池 を構成 する際 、 セラ ミックス と金属 との接 合が必要である。しかし、この接合部には、機械的強度ととも に、 気密性、 耐熱性 、耐高 温腐食性、に優れた特性が要求されるため、殆ど研究例が報告 され ていなぃ 。現在 、ジル コニアを多孔性基材表面にプラズマ溶射などを用いて膜状に形 成 する 方 法 が 試み られて いるが 、膜の 性質、 生産性 、大型 化など に問題が あり、FSZセ ラ ミ ッ ク ス を 金 属 に 直 接 接 合 す る 技 術 の 開 発 カ ぎ 望 ま れ て い る 。 本 研 究 で は、 活 性金属 ろうによ るFSZセ ラミッ クスと金 属の接 合方法 を提案 し、強 固 な接 合体を得 るため の最適 条件を実験的に検討するとともに、高温環境下で接合部が劣化 する 現象とそ の対策 法を明 らかにした。また、接合時に見られるジルコニアセラミックス の黒 褐色化( 変色) 現象に ついて、酸化・還元処理、機械的性質、電気化学的測定、など の 研 究 か ら 変 色 機 構 に つ い て 詳 細 に 解 明 し た 結 果 を ま と め た も の で あ る 。
本論 文は以 下の6章から構成されている。
第1章で は、ジ ルコニ アセラ ミック スの欠 陥構造 と伝導機構、機械的性質、さらに、セ ラミッ クスと 金属の 接合に 関する既往の研究を総括し、本研究の背景と目的、ならびに本 論文の 構成に つレヽ て述べ ている。
第2章 では、 安定化 ジルコ ニアセ ラミッ クスと各 種金属 材料と の接合 条件を系統的に検 討し 、最適接合条件を明らかにしている。先ず、Ag−Cu−Ti系ろう材を用いて、安定化ジル コニ アセラミックス(8 rrlol%Y203添加)と各種金属材料(ク口ム、二ッケル、コバール合 金) を接合 した。 また、両 材料の 熱膨張 率およ び弾性率の違いにより生じる残留熱応カを 緩和 するた め、Ni、Ni/W、Ni/Kovar系 中間材 を使用 し、FSZセラミックスノ(Ag−CuーTi)/
(中間材)/相手金属母材の順に重ねて冶具で固定し、10―3Paの真空雰囲気にて112 3Kで60s
〜3.6 ksの条件で接合した。接合体の強度は室温における4点曲げ試験によって評価した。
得られた各接合体、FSZ/Cr、FSZ/ (Ni/W) /Cr、FSZ/ (Ni/W) /Ni、FSZ/ (Ni/Kovar) /Cr、FSZ/
Ni/Kovarの 最 高破断 強度は、 それぞ れ120、96、83、112、116MPaであ り、実 用的な 観点 から 、FSZ/Ni/Kovar系 接合体 を選定 した。 この接 合体の 最適接合 条件は 、ろう材に3UmTi
箔と100um銀ろう(BAg―8)箔 、0.9mm厚 のNi中間 材、接 合時間420sである 。さら に、ク口 ム酸化 物蒸気 による セラミ ックス 接合面 の改質処 理およ び接合体の周辺研削が接合体の強 度を高 めるのに有効であることを見出し、′これらの処理をFSZ/Ni/Kovar接合体に施した結 果 、FSZセ ラ ミ ッ ク ス 自 体 の 強 度 ( 150MPa)に 匹 敵 す る 強 度 が 得 ら れ た 。 第3章 では 、SOFC型 燃 料 電池 は 高 温 (1073〜1273℃ ) で 作 動し 、 接 合 部に 熱 影 響 が 予想さ れるこ とから 、接合 体の耐 熱・耐 酸化性を 明らか にした。FSZ/Ni/Kovar接合体を、
大気中、温度: 473‑‑‑973K、時間:3.6‑‑‑518. 4ksの条件下で加熱した後、室温での強度変化 を調べ た結果 、耐熱 限界は573Kであっ た。強 度カ淞 下した接合体はいずれも接合界面部で 破 断し て お り 、断 面 のSEM観察 か ら 、 本来 接 合を担っ ている 反応層 中のチ タン酸 化物層 がある臨界厚さ(数ミクロ))以上に成長した後に、急激な強度低下が起こることが確認した。
‐方、 このよ うな強 度の低 下と反 応層の 成長はAl203/Ni/Kovar接合体では観察されなかっ た 。従 っ て 、FSZセ ラ ミ ッ クス 接 合 体 の強 度 低下は、 セラミ ックス 中を拡 散する 酸素イ オンに よるろ う材中 のチタ ンの酸 化によ ると結諭 される 。酸素イオンの移動を阻止するFS ZーAl203傾斜組成セラミックスを用いて(FSZ一Al203) /Ni/Kovar接合体を作製し、酸化試験し た結果 、773K;360ksの酸化 後でlOOMPa以上、873K;360ksの酸化後で50MPa以上の強度を有 し、耐酸化性が飛躍的に向上することが確認された。
第4章 で は、 活性 金属ろ うとの 反応に よるFSZセ ラミッ クスの 黒褐色 化現象に ついて 、 動 力学的 におよ び熱力 学的に 詳細に 検討し 、変色し たジルコニアの機臓的および結晶学的 変 化について調査した。,活性金属ろう(10u mTi箔とlOOum銀ろう箔)を用いて作成したサ ンドイッチ状の接合体(FSZ/(Ti,BAgー8,Ti)/FSZ)を、真空雰囲気、温度:l073〜1273K、 時 間:0〜14.4ks保持し、セラミックスに形成した変色層の厚さを測定した。その結果、変 色層の成長は放物線貝眦こ従い、その活ー陸化エネルギーは201KJ/mlであった。一方、変色し たFSZセラ ミックス を大気 中で加 熱処理 するこ とによ って元 の白色 に戻るの が観察され、
白 色層の 成長の ための 活性化 エネル ギーと して、変 色層の成長に対するのとほぼ等しい、
209kJ/molの値が 得られ たが、 速度定数は一桁小さかった。これらの結果から、変色過程お よ びその 逆の変 化はい ずれも ジルコ ニア中 の酸素イ オンの拡散支配であり、前者が大きい 速 度を示 すのは 変色部 の酸素 空孔濃 度が増 大してい るためと考えられる。また、変色した ジ ルコニ アの4点 曲げ強 度とビ ッカー ス硬さ はいず れも低下 する傾 向にあ った。変色は相 変 化を伴 わない 現象で あるこ とがX線回折より磁認された。ジルコニアの変色機構として、
酸素欠損に起因する着色中心の形成にあることを提案している。
第5章 では 、 直 流 電圧 の 印 加 によ るFSZセ ラミ ッ ク ス の変色 現象につ いて検 討し、 こ の現象がジルコニアの伝導機構に与える影響について調査した。真空中、773Kの条件下で、
セラ ミック スの両 端に直流電圧30Vを加えることにより、内部の酸素イオンを強制的に移動 させ た。そ の結果 、変色 層はカ ソード 側からア ノード側ヘ進行し、その全体に占める割合 カ増 加する にっれ て、セ ラミッ クスの 電気伝導 度は増大した。この際観察されたセラミッ クス の重量 減少量 は通電 量から 求めた 酸素量に 一致するが、電気伝導度は酸素イオン伝導 度 の 増 大 の み な ら ず 電 子 伝 導 の 寄 与 が 大 き い 事 を 明 ら か に し た 。
第6章は本 論文の結諭であり、各章を総括している。
以 上 の よ うに 、 本 論 文で は活 性金属 ろうに よるFSZセ ラミッ クスと 金属と の新し い接 合法を提案し、接合時に観察されるセラミックスの変色機溝を明らかにすることによって、
高強度で耐熱性に優れた接合が可能である事を明らかにしている。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
STUDY ON JOINING METALS AND STABILIZED ZIRCONIA CERAMICS AND COLORATION OF THE CERAIVIICS
( 金 属 と 安 定 化 ジ ル コ ニ ア セ ラ ミ ッ ク ス の 接 合及 びセ ラミ ック スの変 色に 関する研究)
近年 、 エ ネ ルギ 問 題 に 関連 し て 固 体酸 化物 型燃料 電池(SOFC)の開 発に関 する研 究 が盛 んに行 われて いる。 安定化 ジルコ ニア(FSZ)は高 い埴鱈ミイオン伝導性を有するこ とか ら電解 質隔膜 への応 用が期 待されているが、電池を構成する際にはセラミックスと金 属と の接合 が必要 であり 、この 接合部には、機械的強度とともに、気密性、耐熱性、耐高 温腐 食性、 に優れ た特性 が要求 される。現在、ジルコニアを多孔性基材表面にプラズマ溶 射な どを用 いて膜 伏に形 成する 方法が試みられているが、膜の性質、生産陸、大型化など に 問 題 があ り 、FSZセラ ミ ッ ク スを 金 属 に 直接 接 合 す る技 術 の 開 発が望 まれてい る。
本 論 文 は、 活 性金属ろ うによ るFSZセ ラミック スと金 属の接 合方法 を提案 し、強 固な 接合体 を得る ための 最適条件 を実験的に検討するとともに、高温環境下で接合部が劣化す る現象 とその 対策法 を明らか にした。また、接合時に見られるジルコニアセラミックスの 黒褐色 化(変 色)現 象につい て、酸化・還元処理、機械的性質、電気化学的測定、などの 研 究 か ら 変 色 機 構 に つ い て 詳 細 に 解 明 し た 結 果 を ま と め た も の で あ る 。 ジ ルコニ アセラ ミック スの欠 陥構造 と伝導 機構、機械的性質、さらに、セラミックスと 金 属の接 合に関 する既 往の研 究を総 括し、本 研究の 背景と目的、ならびに本論文の構成に つ いて述 べてい る。安 定化ジ ルコニ アセラミ ックス と各種金属材料との接合条件を系統的
【FSZ/Cr、FSZ/ (Ni/VV) /Cr、FSZ/(Ni/W) /Ni、FSZ/ (Ni/Kovar) /Cr、FSZ/Ni/Kovar】に検討 し た結果 、ろう 材に3 UmTi箔と100 um銀 ろう(BAg−8)箔、0.9mm厚のNi中間材、接合時間 420s、が最 適接合条 件であ ること を明ら かにし ている。さらに、ク口ム酸化物蒸気による セ ラミッ クス接 合面の 改質処 理およ び接合体 の周辺 研削が接合体の強度を高めるのに有効 で あ る こ とを 見 出 し 、こ れ ら の 処理 をFSZ/Ni/Kovar接合体 に施し た結果 、FSZセラ ミッ ク ス 自 体 の 強 度(150MPa)に 匹 敵 す る 強 度 が 得 ら れ た こ と は 高 く 評 価 さ れ る 。 SOFC型 燃料 電池は 高温(1073〜 1273℃ )で作 動し、 接合部 に熱影 響が予 想される こ と から、 接合体 の耐熱 ・耐酸 化性を 明らかに するこ とは工学的にも重要な課題となってい る。FSZ/Ni/Kovar接合体を、大気中 温度:473〜 973K、時間:3.6〜518.4ksの条件下で加
夫
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俊
敏
達
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田
川
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成 石
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授 授
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査 査
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熱後、室温での 強度変化を調べた結果,耐 熱限界は5731<であり、強度 は反応層中のチタン 酸化物層がある臨界厚さ(数ミウロン)以上に成長した後に、急激な低下することを確認して いる。この対策 法として、FSZ―Al203傾斜 組成セラミックスを用いて接合体を作製する方法 を新しく提案し 、773K;360ksの酸化後でlOOMPa以上、873K;360ksの酸 化後でも50MPa以上 の 強度 を有し、耐酸化性が飛躍 的に向上することを確認し ている。これらの成果は実用 化 へ の応 用研 究へ と発 展 して いる 。FSZセ ラミ ック ス 接合 体の 強度 低 下は 、セ ラミック ス 中 を 拡 散 す る 酸 素 イ オ ン に よ る ろ う 材 中 の チ タ ン の 酸 化 に よ る と 結 諭 し て い る 。 活´ 陸金 属 ろう との 反応 によるFSZセラミ ックスの黒褐色化現象につ いては、動力学的 に および熱力学 的に詳細に検討している。変 色層の成長は放物線則に従 い、その活性化エ ネ ルギ ーは201KJ/molであ り、 一方 、変 色 したFSZセラミックスを大気 中で加熱処理する ことによ って元の白色に戻るのが観 察され、白色層の成長のための活性化エネルギとして、
変色層の 成長に対するのとほぼ等しレ、、209kj/molの値が得られたが、速度定数は一桁小さ い ことを明らか にしている。これらの結果か ら、変色過程およびその逆 の変化はいずれも ジ ルコニア中の 酸素イオンの拡散支配であり 、前者が大きい速度を示す のは変色部の酸素 空 孔濃 度が 増 大し てい るた めであると結諭 している。変色により、4点 曲げ強度とビッカ ー ス硬 さは い ずれ も低 下す る傾向にあり、 変色は相変化を伴わなぃ現象 であることをX線 回 折より確認し ている。ジルコニアの変色機 構として、酸素欠損に起因 する着色中´め形 成にある ことを提案している。
FSZセラ ミ ック スの 変色 現象 は 強度 や電 池性 能に も 影響を与える ことから、直流電圧 の 印加法を採用して、この現象 がジルコニアの伝導臓構に 与える影響について調査してい る 。変色層はカソード側からア ノード側ヘ進行し、その全 体に占める割合が増加するにつ れ て、セラミックスの電気伝導 度は増大し、この際観察さ れたセラミックスの重量減少量 は 通電量から求めた酸素量に一 致するが、電気伝導度は酸 素イオン伝導度の増大のみなら ず 電子伝導の寄与が大きい事を 明らかにしている。
これを要するに 、著者は、金属とセラミック スの接合について系統的研究を進め、新し ■
い知見と機構を解 明したものであり、金属・セ ラミックス材料工学と複合材料工学に対し て貢献するところ 大なるものがある。
よ っ て著 者は 、北 海道大学博士(工 学)の学位を授与される資 格あるものと認める。
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