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博 士 ( 理 学 ) 石 井

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 石 井    清      学位論文題名

Taxonomy and Biology of the Japanese Penicillate Diplopods      (日本産フサヤ スデ類の分類学及ぴ 生物学に関する研 究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  日本におけるフサヤスデ類の分類学と生物学に関する研究は、高桑・高島(194・2)以来 およそ60年間際立った進展が見られなぃ。本研究は、日本産フサヤスデ類の分類学と生物 学について新たな観点から検討したものである。分類学においては一般形態の記載、成体 と幼虫の種レベルでの検索表の作成、既知種の再検討と再記載、未記載種の記載、後胚子 発生、系統関係、地理的分布、東アジア地域の分類体系の構築について検討した。分類形 質として従来用いられていなかった大顎構造を新たに取入れることによって、種や属の決 定など今までの分類学上の疑問点を統一的に説明できた。大顎は、実体顕微鏡下で解剖し、

生物顕微鏡と走査型電子顕微鏡で観察した。系統関係は後胚子発生と地理的分布の両面か ら検討した。地理的分布は1,078地点の調査から明らかにした。東アジア地域での分類体 系の構築には特に大顎の臼歯形態を重視した。また、生物学においては生活史、生息地、

繁殖 、食物 選好性、 性比について検討した。生活史は1975年から1990年の期間におもに 定期調査によって調べた。生息地環境の塩濃度と食物分析はMohr法および分光分析(可視)

で 行 った 。 食 物選 好性 は消化 管内容物 を分析 した。性 比は♀/♂+ 早の式で 求めた 。 1.一般形態を詳細に記載したことで、新しい分類形態と名称の関連性が明瞭になった。

2.成体と幼虫の種レベルの検索表を作成したことで、すべての幼虫期について種や属の   確定ができるようになった。

3,日 本産Honographis属の1種3亜種は すべて 以下の特徴をもっていた:1)大顎臼歯の   縁片末端棘は普通で、臼歯櫛葉数が少ない、2))第6触角節の感覚乳頭は少ない、3)歩   肢の第2附節は基部が卵形の小さな感覚毛をもつ。一方、中国・東南アジア産Honographis   属は以下の特徴をもつていた:1)大顎臼歯は頑丈な末端棘のある臼歯縁片と多数の臼歯   櫛葉をもつ、2)第6触角節の感覚乳頭は多数あり、触角節末端縁に沿って配列する、3)   歩肢の第2附節は頑丈な棘がある。このことから日本産種群と中国・東南アジア産の種   群は互いに別属として扱うのが妥当と判断された。また、日本産3亜種のすべてについ   て歩肢 の第2附節の感 覚毛はEudigraphis属 の特徴(Silvestri,1948)と完全に一致し   た。こ のことか ら日本産のVonographis属とされていたものはEudigraphis属に変更す   るのが妥当と判断された。また、3亜種には大顎の臼歯構造に加えて、口器形態、歩肢   感 覚 毛 の 形 態 と 毛 序 を ど に 明 瞭 な 区 別 が 認 め ら れ 、 そ れ ぞ れ 別 種 と し た 。 4. Polyxenus shinoharaiは第6触角節に2本の太い桿状乳頭をもっている。一方、ヨー   ロッパ 産P 1agurusお よび近 縁種はす べて1本の太 い桿状乳 頭をも っている。これに   よ り 、 新 属 の Japonixenusを 創 立 し 、shinoharaiを こ れ に 帰 属 し た 。 5.本 州中部 山岳地帯 からPol yxenus属の未記載の新種を発見し、Ptamurai sp. nov.と   命名して記載した。

6. Lophoturus okinawaiの大顎構造は原記載に記載されていなぃためにこれを記載した。

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7. 種 ご と の 後 胚 子 発 生 を 明 ら か に し 、 発 育 段 階 に よ る 形 質 の 変 化 を 比 較 し た 。Eudi―     graphis属 の4種 はEkinutensis,Etairvanlensis,Etakakuwai,Enigricansの   順 で 祖 先 的 な 形 質 を 多 く 持 っ て い た 。 ま た 、 イshinoharaiとPtamurai sp. nov, の 両   属 は 近 縁 関 係 に あ る こ と が 判 明 し た 。 工 .okinarvaiはVIとVII齢意 外に 後 胚子 発生 は解   明でき ていない。

8.E takakulvai、Enigricans.Ekinutensis./.shinoharai,工 ,okina}vaiは 本 州 の   暖 温 帯 地 域 か ら 亜 熱 帯 地 域 に か け て 分 布 し た 。 こ の こ と か ら 、 こ れ ら の3属5種 は 、   琉 球 列 島 を 経 由 し て 本 州 に 分 布 し た と 考 え ら れ た 。 ま た 、P tamurai sp. nov.は 、近   縁 種 が ウ ラ ジ オ ス ト ク に 生 息 す る こ と 、 琉 球 列 島に は 分布 しな いこ とな ど から 朝鮮 半島   経由で 本州に侵入し、分化したも のと考えられる。

9. Eudigraphis属 の4種 の 系 統 関 係 に お い て 、 中 国 大 陸 でEsinensisと 共 通 の 祖 先 型 か     らE kinutensisの 祖 先 型 が 派 生 し 、 こ の 祖 先 型 が 台 湾 でEkinutensisとEぬiwani‑

  ensiの2種 を 派 生 さ せ た 。 そ の 後 、Etaijvaniensisの 祖 先 型 はEtakaku鰡jを 派   生 さ せ 、 さ ら にE takakulvaiの 祖 先 型 か らEnigricansが 派 生 し た と 考 え ら れ た 。     こ の こ と は 地 理 的 パ タ ー ン に よ っ て も 支 持 さ れ た 。 ま た 、Japonixenus属は 祖先 形質   を 多 く も つPol yxenus属 か ら 派 生 し た と 考 え ら れ た 。E.okina vaiの 系 統 関 係 は 今 後   の調査 によって明らかにする。

10. Japonixenus‑Po.lyxenus属 グ ル ー プ の 大 顎 は 円 形 に 配 列 し た 中 間 葉 感 覚 乳 頭 と 副 臼   歯 隆 起 を も つ 。 ー 方 、Eudigrap々j← 廠 加 鋸ramお 属 グ ル ー プ は3列 の 中 間 感 覚 乳 頭     と 臼 歯 櫛 葉 を も つ 。 こ れ に よ り 、Polyxenidea上 科 は 従 来 のP01yxenidae科 だ け で 詮     く 、新 科 を創 立す るの が 妥当 と考 え、Silvestridaeを 創立 した 。丿め伽む館U9―ん |y一     jeカUs属 グ ル ー プ はP01yXenidae科 に 、 馳 イ なr.a帥j← 〃0n曙rヨmjS属 グル ープ は新   科 に そ れ ぞ れ 分 類 さ れ る 。 ま た 、 こ の 新 し い 分 類体 系 に従 って 東ア ジア 産 フサ ヤス デ類     を再 検討した。

ll. ム 甜jカa珊jを 除 く 日 本 産 フ サ ヤ ス デ 類 の 生 活 史 は1年1世 帯 で あ っ た 。 ム 甜j々a|j     の生 活史は今後解明する。

12, 生 息 場 所 は 種 特 異 性 が 認 め ら れ 、 以 下 の5型 が 確 認 さ れ た :Eta舶 々Uぬf一 腐 植 中 、     樹 皮 下 、 樹 冠 、 落 果 、 蟻 巣 な ど 多 様 型 、E々 むu£ 館 釘 ← 樹 皮 下 型 、E々j〆|can←磯     海 岸の 岩 の剥 離間 隙型 、0鋤む 鋤ara亠 ー海 岸 森林 と磯 海岸 の境 界 域の 岩の 剥離 間 隙型 、     Pf駟urajsp.nOV.とC.むゴ舶 |卜腐植中型。

13.C, 甜jna胎 ゴ を 除 く3属5種 の 産 卵 期 は 、6月 中 旬 か らlO月 下 旬 で あ っ た 。 卵 塊 は 以     下 の3型 に 分 け ら れ た :凪 所〆 印 カjs属一4ー5列の 平 板型 、丿 めDnjJPn s属一2段 リン     グ 型 、 んJ朋 印Us属 ー 螺 旋 型 。1卵 塊 あ た り の 卵 数 はEぬ ね 量U鰡j32.3土4.91、E     カj〆jc鋤s25.8土4.08、E々むUt帥sjs31.7土615、メ曲むD々a朋f16.0(n 1)、Pt細U′af     Sp.nOV.16(n 1)であった。

14. 食 性 は 以 下 の4型 に 分 け ら れ た :Eオa量a々U船j、Pf跚H朋fsp,nov. 、 己 旗 むa朋j     の3種 一 腐 植 食 型 、E々 むUt朗sfpー 樹 皮 ・ 地 衣 食 型 、0鋤 わ 甜ara一 腐 植 ・地 衣食 型、

    En竡ncaカ←地衣食型。

15. 生 殖 法 は 両 性 生 殖 で あ り 、 単 性 生 殖 は 認 め ら れ な か っ た 。 性 比 は 約1:1で あ っ た 。

  最 後 に 、 こ の 研 究 か ら 日 本 産 フ サ ヤ ス デ 類 が3科4属6種 に 分 類 整 理 さ れ 、 種 ご と の 後 胚 子 発 生 、 系 統関 係お よ ぴ分 布が 明ら かに な った 。さ らに 、フ サ ヤス デ類 の生 活 史、 生息 地 、 繁 殖 、 食 物選 好性 、 性比 につ いて も明 ら かに され た。 これ ら の研 究手 法な ら ぴに 結果 は フ サ ヤ ス デ 類の 研究 の 発展 だけ でな く、 今 後、 他の ヤス デ類 の 研究 にも 貢献 す るも のと 考 え る 。

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学 位 論 文 審 査 の 要旨

主査   教授   馬渡駿介 副査   教授   片倉晴雄

副査   教授   戸田正憲(大学院地球環境科学研究科)

     学位論文題名

Taxonomy and Biology of the Japanese Penicillate Diplopods      (日本産フサヤスデ類の分類学及び生物学に関する研究)

  フサヤスデ類は、その名の通り体表に毛の束を備え、最大でも体長6 mm以下の最小のヤ スデで、 分類学 的にはヤスデ綱フサヤスデ亜綱に属し、現在までに記録されている約100 種は熱帯地方から北極圏まで広く分布する。一般のヤスデ類は主に外部生殖器の形態で分 類されている。ところがフサヤスデ類は発達した外部生殖器を持たないため、種分類形質 が少なく、高次分類群でも分類は安定していなかった。また、フサヤスデ類の後胚子発生 については断片的な報告例以外に本格的な研究はなされておらず、生活史、棲息地、繁殖、

食性などの生物学的特性はほとんど解明されていなかった。申請者が本研究を始める前は 日本産フサヤスデ類は3属3種3亜種とされていた。

  そこで申請者は、日本産フサヤスデ類の全容の解明を目的とし、分類学的および生物学 的 観 点 か ら 研 究 を 行 な っ た 。 そ の 包 括 的 研 究 の 成 果 が 本 論 文 で あ る 。   まず、 従来亜種とされてきたEudiLgraphis takakuwai takakuwai;Eえri臼をanゞ,E己 舳? 卿船は、大顎臼歯櫛の櫛歯の配列状態,歩肢第2附節の感覚毛の卵型基部の毛の有無、

等々の形態形質で明確に区別されることを見いだした。さらに、日本の1,078地点で定性 的な調査 をおこ なった結果、Et繃派zn懶fは山岳地帯を除く関東地方以西に広く分布し、

Ef.門ゆ励硲は日本の暖温帯に属する磯海岸に分布、Ef 舫,嫐恥おは暖温帯の北部地域に あたる関 東地方 に局所分 布する ことが明 らかとなった。Ef.馴弸珊刪とEf.門鬱を…、

またEr. 繃滅1刪所とEf.舫zz細硲おは同所的生息が確認された。他方、Ef.ぬり加珊、

とEf.舫,雛恥むは分布が重ならなかった。生息場所を調べてみると、Ef.刪醐繍伽は腐植 中、樹皮下、樹冠、落果、蟻巣など多様なところ、Ef.舫,眦恥おはケヤキやクスノキなど の樹皮下、Ef.門趣叫珊ぷは海岸森林から隔離された磯海岸の岩の剥離間隙と、それぞれ異 なってい た。以 上の結果から、3亜種は生殖的に隔離されているとみとめ、それぞれを種 に格上げ し、3別種盈′缶聞所轟細ね紅′呱Eロ回畑々SE崩コU蛔樹奮として記載した。以

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上の研究は、分布や生息場所のデータを用いて生殖隔離饑構の有無を生物学的に確認して 種分 類学 を行 なう とい う 、信 頼度 の高 い種 分類 の典 型的研究として高く評価できる。

  さらに申請者は、本州中部山岳地帯から日本で未記録のPol yxenus属の一種を発見し、

新種として記載した。また、日本産Lophoturus okinawaiの原記載には大顎構造の記述が ないことから、それらについても明らかにした。以上の分類学的研究から、日本産フサヤ スデ類は4属6種となった。加えて申請者 は、日本各地1,078地点での調査に基づき、そ れぞれの種の地理的分布を明らかにした(Eudigrashis種に関しては上述のとおり)。メ shinoharaiは 暖流 の影 響 を受ける海岸森林周辺に限って分布し、Ptamurai sp. nov.は 本州中部の山岳地帯にのみ分布する。また、Z. okinawaiは沖繩島と小笠原諸島の亜熱帯 に属する地域に広く分布することが判明した。

  生物学的特性についても申請者は詳細な研究を行なった。まず、生活史は、継続的な調 査が でき なか った ムokinawaiを除 いた すべ て1世帯1年であることが確認された。主な 生息地は以下の通り(Eudigrapカむに関してはすでに述べた)。メめ む鋤―jは海岸森林 と磯 海岸 の境 界域 にす む 。ん |閂 釦恥 属新 種とZ, む|鰡鰡jは腐植層中に棲息する。

  産卵時期については以下のことが判明した。Z,D セf閲胎jを除く3属5種において6月中 旬から10月下旬である。すべて卵塊の形で産卵され、卵塊の表面は逆鈎のある尾毛で被わ れる。卵の配列は属によって特徴があり、&dなr叩カぉ属は4〜5列の平板型、カp弸む釦恥 属は2段リン グ型、め|朋釦船属は螺旋型であった。1卵塊あたりの卵数は種によって異 なり、Eぬね血′鰡j32.3、E灯ロびt釦釘s31.7、Eロなガc朋ざ25.8、メ勘むD.ね珊j16.0、 Pぬ讎z瑠jsp.nov.16である。

  日 本産 フサ ヤス デ類 の 食性は4型に分類された。Eぬねん嬲丶Pぬ駅z閉ゴsp.nov.、

Z.む 血a紛の3種は 腐植 食型 、E灯Mf釦dsは 樹皮 ー地 衣食 型、 メ動 むむara| は腐植―

地衣 食型 、Eロ なぬ 弸sは 地衣 食型 であ る。 最後 に、 日本産フサヤスデ類の生殖型は両 性 生 殖 型 で あ る こ と 、 又 、 性 比 が ほ ば 1: 1で あ る こ と を 明 ら か に し た 。   以上の、申請者による日本産フサヤスデ類の生物学的特性に関する研究は、これまで世 界 で も 例 を 見 な い 詳 細 な も の で 、 今 後 の 同 様 な 研 究 の 範 と な る も の で あ る 。   以上のように、本研究はフサヤスデ類の分類学および生物学に関する知見を大いに深め たことに加えて、世界のフサヤスデ類に関する今後の研究に新しいきっかけを与えるもの として評価される。よって審査員一同は、申請者が北海道大学博士(理学)の学位を授与 される資格のあるものと認めた。

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参照

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