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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

学 位 論 文 題 名

博 士 ( 農 学 )   ス ワ ン デ イ

Studies on the common spear rot of oil palm and its     pathogenic fungi in Indonesia

(インドネシアにおけるアブラヤシ葉腐病の病原糸状菌に関する研究)

学位論文内容の要旨

  アブラヤシ葉腐病は,株腐病としても知られるアブラヤシ(Elaeis guineensis Jacq.)幼 樹の生育に多大な影響を与える世界的な重要病害である. 1920年代にインドネシアで最初の報 告がなされて以来,この病害はアブラヤシ大規模栽培圃場において多大な損失を与えてきたに もかかわらず,その原因は不明のままであった.一般には,病原性発現を再現できる発生環境 および病原を確定できないことを理由として,何らかの栄養障害が原因と考えられてきた経緯 がある,

  現在,インドネシアにおいて典型的な症状を示す罹病幼樹の発生率は,南スマトラ,北スマ トラおよびバンガ・ベリツン各県のプランテーションにおいて10%以上に達する.南スマトラ では一部の圃場において8年生樹にも見られたものの,発症が見られるのは樹齢4年以下のも のが大部分である.その症状は,若枝の小葉における進展性の腐敗,さらに,それに引き続く 葉組織の崩壊および萎縮を特徴とする.多数の小葉が被害を受けた樹木においては,葉軸が歪 曲することもしばしばあり,このような症状は本病発生樹の25%に及んでいた.本研究の目的 は,罹病アブラヤシから分離された糸状菌の病原性を環境要因との関連から再現することによ り,本病の原因を明らかにすることである,

  罹病樹の典型的な葉腐れ症状から14種の糸状菌が分離され,これらは,形態学的性質およ 乙ドtranslation elongation factor  (EF→la)あるし丶はinternal transcribed spacer  (ITS) regionの塩基配列比較により以下のように同定された,すなわち,Fusarium incarnatum,F solani,Fusarium sp.(Gibberella fu jikuroi複合種の1種と推定される),Fsaccharj, Foxysporum,F  prolj feratum,Ceratocystis paradoxa,Lasiodiplodia theobr0 鰡e, んsね| 〇tjopsゴs厨m叩〇 悶,觚 川|anaa灯hjs,勵jz〇cf伽jasp. ,M卿叩0rasp.,

胸 門jJj甜Jasp. およ び のueと 〇 打j曲 脚sp.であ る.こ の中でFJnca朋at峨Fs0|朋t 凡san脚sp.およびe朋rad。船が病葉から高い頻度で分離された.一方,健全葉からはP. mj凹〇騨)〇r.aあるいはeafHnゴsのほか,F  jnCa朋a亡umおよ乙ド未同定のんSarjL珊Sp.が 高頻度で分離されたものの,Cpara出朋は分離されなかった.

  以 上の分離 糸状菌 各種を代 表する18菌株にっ いて病 原性試験 を行った,その結果,e pa′aあ悶は自然発病と同様な進展性の腐敗を小葉に起こし,eparad0船に比較して病原力,

分 離率は低 いもの のFsac出打に も病原 性が認められた.また,両者においては,特に生 長が急激なため水分を多く含んで肥厚した小葉に対し,通常の小葉より高い発病程度を示した.

同 様 に ,肥 厚してい ない小 葉に対し ては病 原性が認 められな かった んsaH伽 属菌(F. ねcamatu賦未同定RJ…j伽sp.)によっても,上記のような肥厚した小葉には小型の病斑を

(2)

形 成 す る こ と か ら , こ れ ら は い わ ゆ る 「 弱 病 原 性 」で あ る と 確 認さ れ た . な お, い ず れ の 菌株 , 条 件 に お い て も 発 病 に は 傷 が 必 要 で あ る .

  本 病 害 の 症 状 の 発 現 に は , 特 に 弱 病 原 性 菌 株 の 場 合 に は 小 葉 の 罹 病 性 が 高 く な る こ と が 必 要 十 分 条 件 と な る . 苗 の 育 成 方 法 の ー っ で あ る 湛 水 苗 床(flooded nursery)に お い て は , 排 水 と 湛 水 の 繰 り 返 し に よ る 間 欠 的 な 乾 燥 ス 卜 レ ス が , 小 葉 の 迅 速 な 肥 厚 生 長 を 促 す . ま た , 本 圃 苗 床(field nursery)に お い て は ,11月 か ら12月 の 雨 期 初 期 の 施 肥 に よ る ア ブ ラ ヤ シ の 急 速 な 生 長 の 間 に , 罹 病 性 の 高 い 小 葉 が 形 成 さ れ る こ と に な る . こ の よ う に , ア ブ ラ ヤ シ の 苗 育 成 の 過 程 に お い て , 乾 燥 か ら の 回 復 後 に 続 く 急 速 な 生 長 期 間 に ア ブ ラ ヤ シ の 罹 病 性 が 高 ま り , 弱 病 原 性 の も の も 含 め た 複 数 の 糸 状 菌 の 感 染 に よ り 本 病 が 発 症 す る も の と 考 え ら れ た . た だ し , こ れ ら 弱 病 原 性 の 糸 状 菌 各 種 を 混 合 接 種 し て も そ れ に 伴 っ て 発 病 が 激 し く な る こ と は な く , 比 較 的 病 原 性 が 強 いeparadoxaと 弱 病 原 性 のFusari um属 菌 と の 混 合 接 種 に お い て も ,e pa. raめ 船 単 独 接 種 の 場 合 と 比 べ て 発 病 程 度 に 差 は 認 め ら れ な か っ た .   以 上 の 機 構 を 明 ら か に す る た め , 弱 病 原 性 菌 で あ る 数 種 のR佑an伽 属 菌 の 生 長 , 病 原 カ お よ び 各 種 細 胞 壁 分 解 酵 素 の 活 性 に 対 す る 乾 燥 と 高 浸 透 圧 ス ト レ ス の 影 響 に つ い て 検 討 し た , 高 浸 透 圧 条 件 で は , 著 し く 各 菌 株 の 菌 糸 生 長 が 抑 制 さ れ た が , ス ト レ ス を 取 り 除 い た 培 地 に 戻 す と 菌 糸 生 長 は 迅 速 な 回 復 を 見 せ た . 高 浸 透 圧 培 地 で 前 培 養 し た 未 同 定 凡 佑aガ 脚sp. とF jnc…at伽 は , 回 復 後 ス ト レ ス が 与 え ら れ な か っ た と き に 比 べ て2〜4倍 の 大 き さ の 病 斑 を 形 成 し , 病 原 カ の 増 強 が 認 め ら れ た . な お , 中 程 度 の 病 原 カ を 示 すF舶cc舶nで は , 病 斑 形 成 程 度 の 増 加 に 対 す る 高 浸 透 圧 ス ト レ ス の 影 響 は 見 ら れ な か っ た . こ の 時pectinlyase, laCCaSe,ligninperOXidaSe,manganeSeperOXidaSeお よ びCe11ulaSe活 性 は , い ず れ の 凡san脚 属 菌 に お い て も 認 め ら れ な か っ た が ,FむcaMaと 伽 菌 株BT48を 除 く す べ て の 凡 俗a′j珊 属 菌 で , 液 体 培 地 内 あ る い は そ れ ら の 感 染 葉 に お い てpolygalacturonase活 性の 増 加 を 示 し た . 未 同 定 觚 an脚 sp. お よ び F. saccカ a′ jの 感 染 葉 で は 5〜 32倍 の polygalacturonase瀞 陸 を 示 し た こ と か ら , こ れ ら に よ る 小 葉 の 腐 敗 に はpectinaseが 関 与 し て い る も の と 推 察 さ れ た . 以 上 の こ と は , 未 同 定 んsan珊sp. ,F| ぬca朋at伽 お よ びF 齟c舶a′jの 高 浸 透 圧 ス ト レ ス に 対 す る 病 原 力 昂 進 誘 導 と い う 適 応 的 可 塑 性を 示 唆 す る .こ の よ う に , 浸 透 圧 適 応 が 弱 病 原 性 ん …j伽 属 菌 の 病 原 力 増 強 に 関 連 す る こ と は 新 知 見 で あ る と 考 え ら れ る . 病 原 カ が 強 いe閉rad0船 に お い て も , 同 様 に 高 浸 透 圧 ス ト レ ス か ら の 回 復 に 伴 う 菌 糸 生 長 の 回 復 と 病 原 カ の 増 強 が 認 め ら れ ,p01ygalacturonase活 性 の ほ かlaccase活 性 お よ びcellulase活 性 の 有 意 な 増 加 が 認 め ら れ た ,

  以 上 , 本 論 文 に お い て , ア ブ ラ ヤ シ 葉 腐 病 の 発 生 拡 大 に は , 乾 燥 に よ り 宿 主 側 の 罹 病 性 が 高 く な る こ と と 併 せ て , 病 原 カ が 比 較 的 強 いep舳d。 . 閲 お よ びFsacc舶nに 加 え て , 高 浸 透 圧 お よ び 乾 燥 ス ト レ ス か ら の 回 復 に 伴 う 未 同 定 ん 齟n脚sp. やFゴnca朋aと 脚 な ど 弱 病 原 性 の 葉 面 常 在 糸 状 菌 の 病 原 カ の 増 強 が 関 係 す る こ と を 明 ら か に し た .

‑ 1060―

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    近 藤 則 夫 副査   特任教授   幸田泰則 副 査    講 師    秋 野 聖 之

学 位 論 文 題 名

Studies on the common spear rot of oil palm and its     pathogenic fungi in Indonesia

( イ ン ド ネ シ ア に お け る ア ブ ラ ヤ シ 葉 腐 病 の 病 原 糸 状 菌 に 関 す る 研 究 )

  

本 論文 は図

30

, 表9 を 含み ,全

7

章 から なる総頁数138 の英文論文であり,別に参 考論文1 編が添えられ ている.

  

アブラヤシ葉腐病は,アブラヤシ(Elaeis guineensis Jacq. )幼樹の生育・育成に 多大な影響を与える世界的な重要病害である.1920 年代にインドネシアで最初の報告 がなされたものの,本症状からの分離微生物による病徴が必ずしも再現されなかった ことから,その原因として栄養障害が疑われるなど,病原菌は長らく不明のままであ った.本病害は,アブラヤシ大規模栽培圃場にお いて樹齢4 年以下の幼樹に主に発生 し,若枝の小葉における進展性の腐敗,さらに,それに引き続く葉組織の崩壊および 萎縮を特徴とする.

  

本研究は,罹病アブラヤシから分離された病原性糸状菌の同定を行うとともに,発 病に関わる病原菌の生理的要因を明らかにすることを目的に行われたものである.詳 細は以下のとおりである,

分離糸状菌の病原性

  

罹病アブラヤシの典型的な葉腐れ症状から分離された14 種の糸状菌の中で,高頻度 で 分 離 さ れ , 小 葉 の 有 傷 接 種 法 に よ り 病 原性 が認 めら れた のは ,Ceratoc 卩f お

mra

あ朋であり,自然 発病と同様な進展亅陸の腐敗を小葉に起こした.同時に,分離率 は低いもののR ′sarf 脚sac めa ガにも病原性が認められた.さらに,両者においては,

特に生長が急激なため水分を多く含んで肥厚したアブラヤシの小葉に対して,より高 い発病程度を示すことが明らかにされた.なお,健全葉からはこれらの糸状菌は分離 され てい ない .ま た, 肥厚 が見 られ ない 小葉に対して病原性が認めら れなかったF む

ca

at

脚 お よ び 甜 舶 帥

ua

皿 ロ ぬ

r

j

複 合種 の1 種と 推 定さ れる 未同 定ん 卿j 脚

sp

.においても,肥厚した小葉においては有傷接種により小型の病斑が形成されるこ とから,これらはいわゆる弱病原性菌であると確認された.これらの糸状菌は健全葉 からも分離されており,常在の葉面糸状菌と考え られる.

高浸透圧ストレスと病原カ

  

このように,宿主であるアブラヤシの小葉の肥厚生長により罹痾陸が高くなる(抵 抗性が低下する)という宿主側の要因とは別に,環境要因として乾燥ストレスあるい は高浸透圧ストレスが及ぼす病原菌自身の病原カへの影響が検討された,高浸透圧条

        ― 1 0 6 1   ‑

(4)

件では,著し く各菌株の菌糸生長が抑制されたが,高浸透圧ストレスを取り除いた培 地に戻すと菌 糸生長は迅速に回復した.高浸透圧培地で前培養した未同定Fusarium sp.

F incarnatum

は, 菌糸 生 長の 回復後にはス 卜レスが与えられなかったときに比べ て

2

〜4 倍の 大き さの 病斑 を 形成 し,病原カの 増強が認められた.なお,中程度の病 原 カを 示す

F sacc

rf

で は ,病 斑形成程度の 増加に対する高浸透圧ストレスの影響 は見られなか った.

各種細胞壁分 解酵素の活性比較

  

こ の 時 , 細 胞 壁 分 解 酵 素 で あ る

pectinlyaSe

laCCaSe

ligninperOXidaSe

, 髄

nganeSeperOXidaSe

お よび

cellulaSe

の活 陸は ,い ずれ の凡

S

釘j 脚属 菌に おい て も認められな かったが,一部菌株を除くすべての凡絡aH 卿属菌で,液体培地内あるい は それ らの 感染 葉に おい て

p01ygalacturonase

潘陸の増加を示した.未同 定んsan 伽

sp

.お よび

F

.sacc ね

rf

の 感染 葉で は5 〜

32

倍 のp01ygalacturonase 活性を示したこ と から ,これら糸 状菌による小葉の腐敗にはpectinase が関与しているものと推察さ れ た. 病原カが強 いepa .ra あ閲においても, 同様に高浸透圧ストレスから通常の浸 透 圧 に 変 化 す る こ と に 伴 う 菌 糸 生 長 の 回 復 と 病 原 カ の 増 強 が 認 め ら れ ,

polygalacturonase

活 性の ほか

laccase

活 陸お よぴ

ce11ulase

活陸に有意な増加が認 められた,

  

以上のように,長年に渡って不明であっ たアブラヤシ葉腐病の病原糸状菌を明らか にし,高浸透圧ストレスによるこれら病原 糸状菌の病原カの回復及び増強という知見 は本病害の防除法開発に有用な成果であり ,学術上および応用上高く評価できる.よ って審査員一同は,スワンディが博士(農 学)の学位を受けるに十分な資格を有する ものと認めた.

―1062−

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