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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 村 上    学

     学位論文題名

    The influence of the hidden curriculum on     medical education: an exploratory study

(医学教育における隠されたカリキュラムの影響に関する探索的研究)

学位論文内容の要旨

【背景と 目的】

  英 国 で は1993年 のGeneral Medical Councilに よ る カ リ キ ュ ラム 改訂 に 代表 され るよ う に 、 卒 前 医 学 教 育 に お け る 大 幅 な カ リ キ ュ ラ ム 改 訂 が 行 わ れ た が 、 隠 さ れ た(hidden)カ リ キ ュ ラ ム の 影 響 に 対 す る 関 心 は 当 初 薄く 、先 行研 究 にお いて 報告 が徐 々 にな され るよ う に な っ た 。 医 学 教 育 分 野 で 、 隠 さ れ た カリ キュ ラム と は「 組織 的な 構造 や 文化 のレ ベル で 機 能 す る ー 連 の 影 響(Hafferty FM「 、1998)」 と 定 義 さ れ 、 公 式 な(formaDカ リ キ ュ ラ ム

( 「述 べら れ 意図 され 、公 式に 与 えら れ是 認さ れ たカ リキ ュラ ム」 と 定義 され る)よりも教 育 に 与 え る 影 響 は 大 き い と 考 え ら れ て いる 。し かし な がら 、英 国同 様、 本 邦に おい ては 、 その影響 に関する関心は薄く、先行研 究もなかった。

  本 研 究 で は 、 医 学 教 育 上 、 隠 さ れ た カリ キュ ラム が 与え る影 響に つい て 、卒 前段 階の 医 学生(卒 前・基礎[4年次(3年次終了時)]/臨床[5年次])、及ぴ、卒後段階の研修医[卒後2 年 目] にっ い て、 本邦 の一 医学 校 、一 大学 病院 で 探索 的調 査を 行い 、 英国 での 先行研究と比 べること を目的とした。

【対 象と 方法 】

  調 査 手 法 と し て 、 数 値 で は 表 出 で き な い 深 い思 考や 経 験を 調査 する こと が 目的 であ るた め 、 質 的 研 究 手 法 を 選 択 し た 。 イ ン タ ビ ュ ー の手 法と し て半 構造 化面 接を 選 択し た。 期間 は2007年 〜2008年 の14ケ 月 問 、 時 間 は1回 あ た り 各30〜60分 程 度 を 目 安 と し 、 声 の 漏 れ な い 個 室 で 行 っ た 。 イ ン タ ビ ュ ー ガ イ ド は 先 行 研 究 を 参 考 に 仮 の も のを 作成 し、 最 初の5 名 を 終 了 し た 時 点 で 最 終 的 な も の と し て 確 定 した 。そ れ ぞれ 、臨 床段 階の 医 学生 が25名、

研 修 医 が23名 の 段 階 で 新 た な テ ー マ が 抽 出 さ れな くな っ た( 理論 的飽 和) た め、 それ ぞれ その 段階 でイ ン タビ ュー を中 止 した (基 礎段 階の 医 学生 は現 在、 調査 継 続中 であ る)。 イン タ ビ ュ ー は 全 て 録 音 さ れ 、 活 字 化 し て 分 析 に 供さ れた 。 分析 の手 法と して 内 容分 析を 選択 し 、 継 続 比 較 の 手 法 ( デ ー タ を 取 る こ と と 分 析を 並行 し て行 い、 新た なコ ー ド・ カテ ゴリ ー ・ テ ー マ が 随 時 、 抽 出 ・ 追 加 さ れ る ) を 用 い た 。 分 析 は2名 の 研 究 者が 独 立し て行 い、

さ ら に 最 初 関 与 し て い な か っ た 別 の 研 究 者1名 に 新 た に デ ー タ 及 び 結 果を 提 示し 、全 員の 合 意 を 得 る こ と で 妥 当 性 を 確 保 し た 。 倫 理 的 配慮 が重 要 であ るた め、 研究 前 に北 海道 大学 医学 部倫 理委 員 会の 承認 を得 た 。

【 結 果 】

隠 さ れ た カ リ キ ュ ラ ム の 影 響 に 関 し て 、 卒 前 段 階 の 医 学 生 ・ 卒 後段 階の 研修 医の 各 段階     ‑ 453―

(2)

から得られたテーマをまとめ、英国で出されたものと比較すると、以下の通りであった。

  英国と共通のテーマ:1.序列・排他性(ヒエラルヒー[立場の上下関係]の意識が根強く残 っていること、及び、自分の専門領域と他者の専門領域をはっきり区分しようという意識が働く こと。これによって、指導者が自身の立場を明確に示そうとすること。)、2.女性に関連した 問題(男性優位の職場・教育環境が未だに残っており、女性特有の問題について周囲に話 しにくい雰囲気があること。また、女性の学習者は増えているのに、指導者の数が少なく、

女性のキャリア上の問題があること。)、3.医学教育の軽視(教育の価値が、研究や臨床 と比べると低く見られること。直接目に見える業績評価・経済的利益と結び付きにくいこ とから、指導者が学習者の教育にカを入れようとしなぃこと。)、4.ロールモデルの影響

(指導 者の熱 心な態度 が学習 者の学習 意欲や進 路選択に影響する場合があること。)。

  英国と 相違の あったテ ーマ:5.習得すべ き医学的知識量の多さ(卒前の基礎段階・臨 床段階、卒後と経っにっれ、心理社会的視点・患者の全人的理解を重視する考え方から、

生物医学的視点・医学的知識技術の重視する考え方に変わっていくが、その時期に、日本 と英国でずれがある可能性があること。)、6.グループ間の人間関係が与える影響(日本 の医学生が自身の属するグループ内での強調性を示すのに対し、英国の医学生は競争性を 示す可能性があること。)。

【考察】

  本研究は、調査研究そのものが行いにくく明確な結果もわかりにくいとされる、医学教 育分野において、さらに、一般的に研究成果が出にくいとされる質的研究の手法を用いて、

医学の分野に根強く残っていると言われている組織的な構造・文化レベルで機能する影響

(すなわち、明文化されていないカリキュラムの影響)について、日本と英国の違いを調 べた、本邦初の調査である。

  英 国との 先行研究 との比較 で共通 点を認め た1〜4のテーマに関して、医学教育におい て 隠された カリキ ュラムが 学習者 に与える 影響は 、その医学教育が形成されてきた地理 的・歴史的・文化的な背景の違いを超えて世界的な普遍性を有する可能性があることが考 え られた。 一方、 相違点を 認めた5〜6のテー マに関 して、日本の医学教育の特性(臨床 現場を早くから体験できない・講義が中心で技術指導が遅れがちになる)や、日本の医学 生の協調性を重視する性格的な面が、相違の原因のーっとなっている可能性が考えられた。

  本研究の限界として、一医学校での研究という一般化可能性の問題、研究者の立場が結 果に与える影響の問題、研究プロセス上の翻訳の問題がある。特に一般化可能性について は、さらなる研究が必要とされる。

【結 論】

  本邦で、医学教育上、隠されたカリキュラムが与える影響についての探索的調査を行つ た結 果、6つのテ ーマが抽 出され、英国での先行研究と比較して、共通点・相違点を認め た。本研究が明らかにする隠されたカリキュラムの影響は、世界中で普遍的である可能性 があ り、さら なる調 査が必要 である と考えら れた。

  本研究の有用性として、実際の臨床及び教育現場で将来の医療を担う医学生・レジデン トを指導する立場にある教員・指導医に対して、結果をフイードバックすることで、医学 教育 上の活用 が期待 されるこ とが挙 げられる 。

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(3)

学位論文審査の要旨

    学 位 論 文 題 名

    The influence of the hidden curriculum on     medical education: an exploratory study

( 医 学 教 育 に お け る 隠 さ れ た カ リ キ ュ ラ ム の 影 響 に 関 す る 探 索 的 研 究 )

  本研究は、本邦では数少なぃ、医学教育そのものを研究対象とした内容である。英国同 様、本邦でも、大幅なカリキュラム改訂が行われているにも関わらず、隠されたカリキュ ラム(組織構造・文化のレベルで機能する、目に見えない教育上の影響)にっいて注目が薄 かったという歴史的背景を踏まえ、申請者は、本邦の一医学校で、医学生(プレクリニカ ル・クリニカル).研修医の各段階に対してインタビュー調査を行い、隠されたカリキュラ ムの影響について、英国での先行研究内容との類似点・相違点を見出すことを目的とした。

その結果、類似点4テーマ(序列・排他性、女性に関連した問題、医学教育の軽視、ロー ルモデルの影響)・相違点2テーマ(習得すべき医学的知識量の多さ、グループ間の人間 関係 が与え る影響) が抽出 され、本 邦で初め て、そ の影響の 実態が 明らかになった。

  申請者は、医学教育が形成される地理的・歴史的・文化的な背景の違いを超えて隠され たカリキュラムが普遍性を持っこと、並びに、本邦の医学教育・医学生の特徴が、英国で の先行研究との相違点に影響を与えている可能性があることについて指摘し、将来、本研 究結果を、実際の教育現場(ファカルティディベロップメントやワークショップ)につい てフイードバックする必要性を強調した。

  質疑応答では、最初に、田中教授から、成績など教育効果に関連した測定指標による確 証、具体的なフイードバック法について質問があった。次に、小山教授から、日英間で類 似点・相違点が生まれる文化的背景、対象者の段階による結果の相違について質問があっ た。次に、上田教授から、インタビューアーの役割について質問、実際の教育改善に関す る提案があった。次に、寺沢教授から、テーマ選択の理由、研究者の立場が与える影響の 問題についての質問があった。最後に、玉城教授から、比較グループの特徴を明示する必 要性、国際的文化事情、倫理問題の質問・提案があった。

  申請者は、最初に、田中教授の質問に対して、成績などの定量的な調査は行っていない こと、今後、360゜の多面的評価を含めて、さらなる調査が必要であることを回答した。

また、フイードバックの具体策についても、今後、検討していくと回答した。次に、小山

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男 司

英 哲

   

真 浩

田 山

玉 上

小 田

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

教授の質問に対して、日英間の根本的な医学教育の背景の違いの例を示しつつ、上田教授 からの指摘も交えて回答した。また、対象者の段階によって、今回の発表では時間・スペ ースの都合で伝え切れなかった、重要な学習者の考え方の経時的変化にっいても回答した。

次に、上田教授の質問に対して、インタビューアーが対象者に偏りなく質問出来るように、

互いに質問の仕方などを調整したことを述べた。また、提案を頂いたことにっいては感謝 の意を示した。次に、寺沢教授からの質問に対して、北大の医学教育の伝統(阿部名誉教 授・大滝教授・前沢名誉教授の流れ)を説明し、前沢名誉教授の指導と自身の経験が相ま って本研究に至ったことを説明した。また研究者の立場が与える影響について、対象者が 模範解答的に回答し、本音を隠す可能性があることは、どんなに倫理的な配慮をもってし ても対応に限界があることを説明した。最後に、玉城教授からの質問・提案に対して、言 語問題の根底にある文化の違いを理解する必要性に触れた後、それまで御指摘頂いた先生 方の意見を総括して回答し、医学教育に対する各々の審査員の先生方の貴重な御意見を頂 いたことに感謝の意を示しつつ、今後のさらなる研究に反映させていきたいと述べた。そ れに対し、審査員らからは、博士課程における独創的研究として、医学教育の問題を取り 上げたことを評価したいとの意見が出された。

  この論文は、医学教育における隠されたカリキュラムの影響の重要さに関して、本邦で 初めて検討されたものとして高く評価され、今後の本邦・世界の医学教育分野の礎となる 研究として期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併せ、 申請者が 博士( 医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

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参照

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