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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 )    吉 岡 直 也

学 位 論 文 題 名

Rapid immunochromatographic test for serum granulysin

is useful for the prediction of Stevens‑Johnson syndrome     and toxlCepidermalneCrolySiS

    ( 迅 速 免 疫 ク ロ マ ト グ ラ フ イ ー 法 を 用 い た 血 清 グ ラ ニ ュ ラ イ シ ン 測 定 は   ス テ イ ー ブ ン ス ― ジ ョ ン ソ ン 症 候 群や 中毒 性表 皮壊 死症 の発 症予 測に 有用 で ある )

学位論文内容の要旨

  【背景と目的】

  Stevens−Johnson syndrome (SJS)およびToxic epidermal necrolysis (TEN)は発熱を伴う 紅斑、びらん、粘膜障害を呈する重症薬疹である。SJ S/TENの多くは多形滲出性紅斑や紅 斑丘疹型の皮疹からはじまり、 急速に表皮剥離や粘膜障害を生じる。最重症型であるTEN は死亡率20%と高率で、またSJSにおいても眼粘膜病変による視力障害等、重篤な後遺症 を残す例も多い。そのため早期診断と適切な治療が求められるが、SJ S/TENの発症早期に は通常の薬疹と臨床的に酷似し ており鑑別が困難である。我々は粘膜病変を呈する前の SJS/TENの血清granulysin (GNLY)値が通常薬疹と比べて有意にト昇することを報告した。

よって血清GNLYのヒ昇を検出することでSJ S/TENの早期診断が町能であることを想定し、

免 疫 ク 口 マ 卜 グ ラ フ ィ ー 法 を 用 い て 迅 速 診 断 キ ッ ト の 開 発 に 着 手 し た 。

【対象と方法】

  本研究において北海道大学病院および協力医療機関からSJ S/TEN患者35名の血清サンプ ルを収集し、うち5名はSJS/TEN診断以前に血清を収集した。潰瘍、びらんを初めて皮膚 粘膜または眼粘膜に初めて確認 した臼を、SJ S/TEN発症1日目とした。また健常人コン卜 口ー ル とし て31名、通常薬疹コント口ールとして24名 から血清を収集し、SJS/TEN患者 と同様に検討した。

  免疫ク口マトグラフイー法は2種類のヒトGNLY抗体をテストストリップに固相化し、結 果を肉眼で確認できるように作製レた。また免疫ク口マトグラフイー法の精度を検討する ため、Enzyme―linked iramunosorbent assay (ELISA)を用しゝて各サンプルの血清中GNLY 濃度を測定した。

【結果】

  免疫ク口マトグラフイー法を用いたGNLY迅速診断キットの作製に成功した。本キットは、

10 ng/mL GNLY濃度以上でテストラインに赤色のラインが出現し肉眼で確認可能であった。

  次に5名のSJ S/TEN発症前の血清サンプルを用いて検討レた。その結果、5検体のうち4 検体でテス卜ライン陽性の結果 が得られた。ELISAにて血清GNLY濃度を確認したところ、

全ての陽性検体でGNLY濃度が高 値を示した(30.4土9.9ng/mL:平均値土標準誤差)。陰 性の結果であった1検体は2.7 ng/mLであり健常人と同程度 の値(1.6土0.6ng/ml)を 示した。また通常薬疹患者から 得た血清サンプル24検体のうち1検体で陽性を示し、健常 人から得た血清サンブル31検体はすべて陰性であった。

  これらの結果から感度80%、 特異度95.8%を示した。また免疫ク□マ卜グラフイー法 の結果をフイッシャーの正確確率検定で統計解析した結果、p=l. 02X10・3となり迅速診断 キットの判定とSJ S/TENの発症は有意に関連した。

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【 考 察 】

  本 研 究 に お い て 、 血 清 中 のGNLY濃 度 上 昇 を 検 出 す る 迅 速 免 疫 ク 口 マ ト グ ラ フ イ ー 法 を 確 立 す る こ と に 成 功 し た 。 本 キ ッ ト を 用 い て 発 症 早 期 のSJ S/TEN患 者 血 清 を 検 討 レ た と こ ろ 、 感 度80% 、 特 異 度95.8% の 結 果 が 得 ら れ 、SJS/TENの 早 期 診 断 の 助 に な る こ と が 示 唆 さ れ た 。 ま たSJS/TENで 標 的 に な り 得 る 粘 膜 病 変 等 が 出 現 し た 場 合 、 本 研 究 の 検 査 法 は 鑑 別 時 に 有 用 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。

  以 前 我 々 はSJ S/TENの 極 早 期 に 血 清 中 可 溶 性Fasリ ガ ン ド 濃 度 が 有 意 に ト 昇 し 、 そ の 後 速 や か に 低 ・Fす る こ と を 見 出 し 、 可 溶 性Fasリ ガ ン ド が 重 症 薬 疹 の 診 断 マ ー カ ー と し て 有 用 で あ る こ と を 報 告 し た 。 方 既 報 で はSIS/TEN患 者 の 水 疱 内 でGNLYが 著 明 に 発 現 し 、 重 症 薬 疹 発 症 の メ デ ィ 工 一 夕 ー で あ る と 報 告 さ れ て い る 。 こ の 報 告 を も と に 、 我 々 はSJ S/TEN の 臨 床 経 過 と 血 清 中GNLY濃 度 推 移 に つ い て 解 析 を 行 っ た と こ ろ 、 表 皮 剥 離 や 粘 膜 病 変 を 呈 す るSJ S/TEN発 症 以 前 の 時 点 で 血 清GNLY値 が 発 症 後 よ り 育 意 に 上 昇 し 、 ま た 通 常 薬 疹 患 者 や 健 常 人 と 比 較 し た 場 合 、 こ れ ら の グ ル ー プ と の 間 に 有 意 に 上 昇 し て い た こ と を 報 告 し た 。 ま た 上 昇 し た 血 清GNLY値 は 発 症 か ら5日 以 内 に 速 や か に 低 下 し 、 こ れ は 以 前 我 々 が 報 告 し SJS/TENに お け る 可 溶 性Fasリ ガ ン ド 値 の 推 移 と 類 似 し て い た 。 我 々 は 可 溶 性Fasリ ガ ン ド に つ い て も 同 様 の 免 疫 ク □ マ 卜 グ ラ フ イ ー 法 の 作 成 を 試 み た が 、 正 常 上 限 値 が100 p g/mLと 低 く 、 作 製 に は 至 ら な か っ た 。 一 方GNLYの 正 常 上 限 値 は10 ng/mL10000 pg/mL) で 可 溶 性 Fasリ ガ ン ド に 比 べ て 正 常 上 限 値 が100倍 高 く 、 作 製 に 成 功 し た 。   GNLYSaposinlike proteins family1つ で 、 免 疫 反 応 に お い て 細 胞 障 害 性T細 胞 NK細 胞 か ら 分 泌 さ れ 、 微 生 物 や 腫 瘍 細 胞 、 移 植 細 胞 、 細 菌 、 真 菌 や 寄 生 虫 に 対 し て 細 胞 膜 の 電 荷 を 陰 性 に す る こ と で 細 胞 障 害 性 を 示 す こ と が 報 告 さ れ て い る 。 そ し てGNLYは 病 原 体 に 対 し て 生 体 防 御 と し て 重 要 な 蛋 白 で あ り 、 カ ス パ ー ゼ や 他 の 経 路 を 介 し て 標 的 細 胞 を ア ポ ト ー シ ス に 誘 導 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 。

  GNLYの 特 徴 は 微 生 物 や 異 物 を 広 範 囲 に 認 識 し ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る こ と で あ る 。 そ し SJS/TENと の 鑑 別 が 特 に 必 要 で あ る 疾 患 と し て 考 慮 す る と 、 急 性 ウ イ ル ス 性 発 疹 症 や 移 植 片 対 宿 主 病 等 の 検 討 が 必 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 本 研 究 で は ト 記I疾 患 を 対 象 と し て い な い た め 、 こ れ ら の 疾 患 に お い て も 本 研 究 で 開 発 し た 免 疫 ク 口 マ ト グ ラ フ イ ー 法 を 使 用 し 同 様 な 検 討 を 実 施 す る こ と が 肝 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 現 任 こ れ ら 疾 患 に お け る 血 清GNLY 値 の 検 討 を 行 っ て い る 。

【 結 諭 】

  本 研 究 で は 免 疫 ク 口 マ ト グ ラ フ イ ー 法 を 用 い て 、 発 症 早 期 のSJS/TENに 特 徴 的 な 血 清 GNLYの 上 昇 を 迅 速 簡 便 に 検 出 す る 診 断 キ ッ 卜 の 開 発 に 成 功 し た 。 さ ら に 本 研 究 の 診 断 キ ッ 卜 を 用 い る こ と で 、 通 常 薬 疹 か ら 重 症 化 しSJS/TENを 発 症 す る 可 能 性 の あ る 患 者 を 迅 速 に 予 測 し う る こ と が 示 唆 さ れ た 。

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Rapid immunochromatographic test for serum granulysin is useful fOrtheprediCtionofSteVenS‐JOhnSOnSyndronle     andtOXiCepidermalneCrolySiS

    ( 迅 速 免 疫 ク ロ マ ト グ ラ フ イ ー 法 を 用 い た 血 清 グ ラ ニ ュ ラ イ シ ン 測 定 は   ス テ イ ー ブ ン ス ― ジ ョ ン ソ ン 症 候群 や中 毒性 表皮 壊 死症 の発 症予 測に 有用 であ る)

  重症薬疹であるスティーブ ンスージョンソン症候群や中毒性表皮壊死症の早期診断は臨 床的に重要な課題である。両 薬疹発症前の患者血清では、他の通常薬疹の患者や健常人の 血清よりも血清グラニュライ シン濃度が有意に増加していたことより、血清グラニュライ シン濃度の推移が重症薬疹の 早期診断マーカーになり得ると考え、血清グラニュライシン を検出する迅速免疫クロマト グラフィー法を用いた検査キットを開発し、その早期診断に 有用であること明らかにした 。さらに、重症薬疹の包括的研究として重症薬疹モデルマウ ス作製の検討も行った。

  審査会において、副査の畠 山鎮次教授より重症薬疹モデルマウスを作製する上で免疫不 全 マウ スで あるNOGマウ スを 使 用し たが 、他 の免 疫不全マウス、例えばRAGノックアウ トマウスを使用しなかった理 由を問われ、NOGマウスはり ンパ球などの免疫細胞を欠損し ているが、他の免疫不全マウ スではNK細胞等、マウス由来の免疫細胞が一部残存してお り、拒絶反応を生じる可能性 を考慮し、NOGマウスを用い たと回答した。加えて、可能な 限ルヒト由来の免疫細胞に置 換するためにNOGマウスを使 用した回答した。さらに、グラ ニュライシンの産生細胞と産 生機序および作用機序を問われ、グラニュライシンの産生細 胞 とし ては 活性 化し た細 胞障 害性T細胞 やNK細胞 の他 に、 ヘル パーT細胞 やNKT細胞が あり、そして細胞内の顆粒か らパーフォリンやグランザイムと同様な過程で産生されると 回答した。また、作用機序と しては標的細胞の細胞膜の電荷を変化させアポトーシスを誘 導する機序の他に、カスパー ゼやその他の経路を介して感染細胞や腫瘍細胞等のアポトー シスを誘導することについて 回答した。次に、副査の山本有平教授から、重症薬疹に対す るグラニュライシン検査キッ トの特異性について問われ、グラニュライシンは体内の非自 己を排除する生体防御として 働くタンパク質であるため、感染症や急性移植片対宿主病、

腫瘍等の疾患に対して血液中 のグラニュライシンが増加する可能性はあると回答した。し かし、これまで報告されてき た重症薬疹以外の血清グラニュライシン濃度は重症薬疹で示 した濃度よりも概ね低値を示 すため、各疾患に対してさらに検討していくことで検査キッ トの特異性は維持できると回 答した。さらに、重症薬疹の重症度と血清グラニュライシン 濃度との相関性について問わ れ、重症度と血清グラニュライシン濃度との相関性は認めら

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雅 鎮

村 山

本 水

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れ な い と 回 答 し た 。 し か し 、 急 性 移 植 片 対 宿 主 病 等 の 重 症 度 と 血 清 グ ラ ニ ュ ラ イ シ ン 濃 度 が 相 関 し て い る と 回 答 し た 。 そ し て 重 症 薬 疹 と 血 清 グ ラ ニ ュ ラ イ シ ン 濃 度 の 相 関 性 に 対 し て 、 今 後 例 数 を 増 や す こ と が で き れ ば 相 関 性 を 見 出 す こ と が で き る 可 能 性 が あ る と 回 答 し 、 相 関 性 が あ れ ば 診 断 キ ッ ト の 有 用 性 は 高 ま る こ と に 言 及 し た 。 次 に 、 主 査 の 今 村 雅 寛 教 授 よ り 、 他 の ア ポ ト ー シ ス 誘 導 タ ン パ ク で あ る パ ー フ ォ リ ン や グ ラ ン ザ イ ム と 重 症 薬 疹 と の 関 連 性 に つ い て 問 わ れ 、 重 症 薬 疹 で の そ れ ら の 関 連 性 に つ い て 意 見 が 分 か れ る 旨 を 説 明 し 、 さ ら に グ ラ ニ ュ ラ イ シ ン の 増 加 が 認 め ら れ な い 症 例 の 場 合 、 グ ラ ン ザ イ ム や 可 溶 性FasL 関 与 が あ る 可 能 性 を 併 せ て 回 答 し た 。 最 後 に 、 副 査 で 指 導 教 授 の 清 水 宏 教 授 か ら 、 重 症 薬 疹 の 問 題 点 や 本 研 究 の 経 緯 の 説 明 の 後 、 今 後 の 展 望 に つ い て 問 わ れ 、 こ れ ま で の 経 験 を 活 か し 今 後 の 研 究 を さ ら に 発 展 さ せ た い と 回 答 し た 。

  こ の 論 文 は 、 重 症 薬 疹 の 発 症 早 期 で は 通 常 薬 疹 の 症 状 を 呈 し 、 臨 床 的 に 鑑 別 が 困 難 で あ る に も か か わ ら ず 、 発 症 早 期 の 血 清 グ ラ ニ ュ ラ イ シ ン 濃 度 を 検 討 す る こ と で 、 そ れ ら の 早 期 診 断 を 可 能 に す る 簡 易 な 迅 速 診 断 キ ッ ト の 開 発 に 成 功 し た こ と で 高 く 評 価 さ れ た 。 今 後 の 解 析 を 重 ね る こ と で 、 本 研 究 成 果 が 重 症 薬 疹 の 新 し い 診 断 や 治 療 、 予 防 の ア プ 口 ー チ 法 の ひ と っ に な り 得 る こ と が 期 待 さ れ る 。

  審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学 院 課 程 に お け る 研 鑽 や 取 得 単 位 な ど も 併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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