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博 士 ( 法 学 ) 渡 部 保 夫

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Academic year: 2021

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博 士 ( 法 学 ) 渡 部 保 夫

学 位 論 文 題 名

「無 罪の 発見 ―証拠 の分析と判断基準」

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本 書 は 、 刑 事 裁判 にお け る事 実の 認定 の 問題 に閲 連す る論 文 八通 (講 演原 稿に 加 筆 し た も の を 含 む ) と 判 例 評 釈 二 通 を 収 録 し 、 内 容 は 三 部 に 分 か れ る 。   第 一 部 は 、 証 拠の 分析 ・ 評価 ・総 合に っ いて の基 本的 考察 に 関す るも ので 、「 自 白 の信 用性 の 判断 基準 と注 意則 」 (1〕 、 「犯 人識 別供 述の信用性に関する考察 」〔2)、

「状 況証 拠 の評 価と 事実 認定 」 (3〕 か らな る。 この うち、(1)は、多数の 裁判の判決 理 由 ・ 上 告 趣 意 およ び事 実 認定 に閏 する 諸 文献 を参 考に して 、 被告 人の 捜査 官に 対 す る 自 白 の 信 用 性 の有 無の 判 断基 準お よび そ の際 の留 意事 項( 注 意則 )を 抽出 ・整 理 し て 、 モ れ ら の 基 準・ 注意 則 の合 理的 根拠 と それ らの 妥当 すべ き 限界 など を考 察し た も ので ある 。 (2) は 、多 数の 誤判 蟇例 お よび 多数 の文 献・ 実 験結 果・ 立法 例 などを参考 に し て ` 目 撃 証 人に よる 犯 人と 被告 人と の 同一 性の 確認 (犯 人 識別 供述 )の 一般 的 信 用 度 と そ の 供 述 の誤 零の 原 因を 検討 し、 誤 謠の 原因 を検 討し 、 誤譲 の生 じや すい 場 合 お よ び 誤 密 の 存 在を 示唆 す る供 述徽 表の 種 類を 類型 化し 、こ の 穫の 証拠 によ って 事 実 を 認 定 す る 覊 の 注意 則に っ いて 考察 し、 ま た英 米の 判例 ・実 務 規範 など を参 考に し て

、こ の穫 の 証拠 を扱 う際 の捜 査 上の 問題 点に っ いて 考察 して いる 。 (3) は 、やはり過 去 の 裁 判 例 ・ 関 係文 献を 参 考に して 、状 況 証拠 の評 価お よび 状 況証 拠に よる 事実 の 認 定 に 開 す る 判 断 基準 ・注 意 則な どを 明か に する とと もに 、状 況 証拠 の発 見. これ に 基 づ く 事 実 の 認 定 の 確 実 性 を 検 証 す る た め の 諸 方 法 な ど を 考 察 し て い る 。   第 二 部 は 、 応 用鑷 とも い うべ 塞も ので あ り、 「冤 罪事 件を 見 る目 一米 谷事 件を 素 材 と し て 」(4)、 「年 少者 の証 菖な ど ー板 橋強 制わ いせ つ 事件 上告 審判 決 につ いて 」(5

〕、 「い わ ゆる 共犯 者の 自白 を めぐ って ー山 中 事件 上告 審判 決に つ いて 」〔6〕からな る 。 い ず れ も ヽ 具体 的な 裁 判事 例の 訴訟 記 録又 は判 決文 や上 告 趣意 など を素 材に し て

、 第 一 部 で 論 じ た自 白、 犯 人識 別供 述、 状 況証 拠を はじ めと し て、 その ほか 法医 学 鑑 定 ヽ 年 少 者 の 証 百、 共犯 者 の自 白な どを 用 いて する 事実 の認 定 に関 する 判断 基準 ・ 注 意則 など の 貝体 的適 用上 の諸 問 題を 考察 して い る。

  第 三部 は 、「 虚偽 自白 と弁 護 活動 」〔7)、 「 公判 廷に おけ る自 白 の信 用性 」(8)、

(2)

「被疑者尋問のテープ録音制度」(9)、「職業裁判官と事実認定」〔10)からなる。

このうち、(7〕は、被疑者の虚偽自白に開する心理的なメカニズム、虚偽自白をもた らす諸原因、わが国の誤判の有カな一原因は捜査段階で有罪方向の証拠が体系化され るとともに、無罪方向の証拠がゆがめられ又は擬散・消失などしやすい点にあること を指摘・考察し、弁護人において自白の信用性を争い又は自白の虚偽性を論証する際 の着眼的・注意則・方策などにっいて述べている。(8)は、童罪事件に閲する被告人 の公判廷における虚偽の自白の諸事例を取り上げ、虚偽自白の心理的原因などにっい てさらに考察を進めたものである。(9)は、イギリスにおける被疑者尋問のテーブ録 音制度の導入に至る経緯・論議を紹介するとともに、わが国でこの制度を採用した壜 合、捜査官による圧迫的な取調べ・誤判・裁判の遅延などを防止する効果の大きいこ とを指摘し、この制度の導入に閲し考慮すべき問題点などを諭じている。〔10)強、

談判の原因誼、(7〕で述べた以外に、職掌裁判官の予断・偏見、人間知・世間知の不 足、証拠の存在形態や誤零可能性に対する洞察の不足、プロなるがゆえの渦察カの過 信にあるとして、それらに影響する諸要因の分析および誤判の防止のための諸方篭な どにっいて考察している。

  本書の内害にみられる特徴・独自性は、次のとおりである。第一に、自白・犯人識 別供述・状況証拠の評価・分析・その信用性の判断基準・注意則に関する著書・論文 はいろいろあるが、わが国の髏判事例を網羅的に取り上げこれを素材とした点および 叙述の祥細さと包括的・体系的な点において、本書の各論文独特徴的である。第二に

、全く独創的とまではいえないが、証拠の評価および事実認定の方法・論証の方法な どにっいて、いろいろな実践上の示唆・提案一一たとえぱ、「被告人の供述史の再現 とそのフォローの必要性」、「自白内容の複合的構造への留意」、「虚偽自白の一原 因である精神的疲労の蓄積を示す身体症状への留意」、「主要証拠の除外的考察方法

」、「輪郭の不明瞭な状況証拠の発見の必要」、「証拠構造のゆがみの考慮」、「積 極的・探索的な態度による無罪証拠の発見の努カの必要」、「各種の仮説の設定によ る考察方法」、「有罪証拠の欠陥を示しかつ無罪を示唆する証拠は必ずしも法廷に現 れるものでないことへの留意」などーーを`試みている。第三に、本書のすべての論文 を通じて、次の三点ーーわが国に特有な捜査のあり方に由来して、有罪方向の証拠は 誇張化された形で現れ、無罪方向の証拠は矮小化された形で現れやすいこと、また在

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(3)

野の生活・弁護士の経験をもたない、キャリア.システムの下の裁判富はっねに証拠 の欠陥の発見に優れているとはいいが′こいこと、証拠の取捨・選択を裁判官の自由な 心証に委ねる主量はしばしば独断と恣意に門戸を聞毒やすいことを、多数の誤判事例 の分析を基にして指摘し、これらに起因する誤判を防止するためには、直感と経験を 量視する有罪認定をできるだけ排除し、合理的な判断能カを有するすべての人による 追検証可能な有罪認定をすべきであること、そのためには過去の誤判事例をできるだ け数多く集め詳一に検討してヽできるだけ網轟的な、証拠の判断基準と注意則を樹立 する必要のあること、および子ープ録音制度の導入により捜査段階における被疑者の 取覊べの可視性を高めるべ竃ことを強鬢することに努めている。これが本書全体のモ チ‑7となっている。鑰文全体の分量はA4版で425頁である。

(4)

学位論文審査の要旨

  本論文は、刑事裁判における事実認 定、とりわけ証拠の分析とその判断基準に関 して、これまで著者が発表してきた論 文9編に大幅な加筆を行い、 新たに執筆した 論稿を加えて体系化し、  「無罪の発見」と題する著書として、すでに公刊されたも のである。

  すナよわち、わが国の誤判事例を網羅的にとり上げ、これを素材として詳細に分析 した 上で 、そ の実 証 的知見に基づいて、の自白の 信用性(Iの1)、@犯人識別供 述 (Iの2) 、 @ 状 況 証 拠 (Iの3) 、 @ 法 医 学 鑑 定 (Hの4)、 ◎年 少者 の証 言

(IIの5) 、◎ 共犯 者の 自白 (皿 の6) 、◎ 虚偽 自白 と弁 護活 動(mの7)、 @公 判法廷における自白の信用性(皿の8)のそれぞれに関する判断基 準・注意則を抽 出・整理して、それらの基準・注意則 の合理的根拠とそれらの妥当すべき限界など を明らかにする。加えて、イギリスに おける被疑者尋問のテ―プ録音制度を紹介し つつ 、こ の制 度の 持 つ効 果を 検証 し(mの9)、 職業 裁判 官の 事実 認定 を論 じて

(mの10)、誤判防止の諸方策を考察し たものである。

    本論文の内容に見られる特徴・独 自性は、次のように要約できるであろう。第 一に、判断基準・注意則の抽出にあた り、わが国の誤判事例を網羅的に取り上げ、

これを素材とした点と、その叙述の詳 細さ、及び包括的・体系的な点において、本 論文は極めて特徴的である。第二に、 証拠の評価及び事実認定の方法・論証の方法 などにっいて、多様な実践上の示唆・ 提案、例えぱ「被告人の供述史のフォロ―の 必要性」、「自白内容の複合的構造へ の留意」、「虚偽自白の一原因である精神的 疲労の蓄積を示す身体状況への留意」 、「主要証拠の除外的考察方法」、「輪郭の 不明瞭な状況証拠の発見の必要」、「 証拠構造の歪みの考慮」、「積極的・探索的 態度による無罪証拠の発見の努カの必要」、「各種の仮説の設定による考察方法」、

「有罪証拠の欠陥を示しかっ無罪を示 唆する証拠は必ずしも法廷に現れるものでは ないことへの留意」など、を試みてい る。第三に、本論文のライトモチーフともい うべきっぎの3点、すなわちのわが国に特有な捜査のあり方に由来 して、有罪方向 の証拠は誇張化された形で現れ、無罪 方向の証拠は矮小化された形で現れやすいこ と、@在野の生活・弁護士の経験をも たないキャリア・システムの下の裁判官は常 に証拠の欠陥の発見に優れているとは いいがたいこと、@証拠取捨・選択を裁判官 の自由な心証に委ねる主義はしばしば独断と恣意に門戸を開きやすいことを指摘し、

誤判 防止 のた めに は 、(1)直 感と 経験 を重 視す る 有罪認定をできるだけ排除し、

合理的な判断能カを有するすべての人に、よる追検証可能な有罪認定をすべきである こと、  ( 2)そのためには過去の誤判事例を可能な限り数多く集め、詳細に検討し て、できるだけ網羅的ナょ、証拠の判断基準と注意則を樹立する必要のあること、お よび(3) テープ録音制度の導入により捜査段階における被疑者の 取調の可視性を 高 め る べ き こ と を 強 調 す る こ と に 努 め こ れ に 成 功 し た こ と で あ る 。   これを要するに、本論文は、わが国 の刑事裁判の虚飾をはぎとり、刑事裁判の核 心を衝いた、正面からの本格的な事実 認定研究の集大成であり、長く価値ある研究 論文として歴史に残ると思われる。今 後、刑事裁判、とりわけ白・黒の争われる難 事件の担当者達は、雅であれ、本論文 と本論文が指摘する方法諭や警鐘、経験則を 無視することが困難になり、帰すると ころ、冤(えん)罪の救済に決定的な役割を

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雄 嘉

得 猛

勢 暮

井 藤

能 小

今 佐

授 授

授 授

   

   

教 教

教 教

助 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

として、また極めて実践的な事実認定の手引き書として、わが国刑事法学界ならび に刑事裁判実務に貢献するところ大なるものがあり、実務と理論の架橋を果たされ た 著 者 の 業 績 の 集 大 成 と し て 高 い 評 価 に 値 す る も の と 思 わ れ る 。 よって、著者は、博士(法学)の学位を授与される資格あるものと審査員全員一致で認 める。

                 

                                             O    3   

           

     

   

参照

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