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申請書の返戻と行政手続法-香川大学学術情報リポジトリ

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鹿

平 成 六 年 一 〇 月 一 日 に 行 政 手 続 法 が 施 行 さ れ て 以 来 一 五 年 が 経 過 し た 。 同 法 七 条 は 、 行 政 庁 の 審 査 応 答 義 務 に つ き 到 達 主 義 を 採 用 し 、 ま た 、 同 法 三 三 条 は 申 請 に 対 す る 行 政 指 導 に 一 定 の 限 界 を 定 め 、 許 認 可 等 を 求 め る 申 請 の 迅 速 で 公 正 な 処 理 の 確 保 を 図 っ て い る 。 特 に 七 条 は 、 従 前 の 行 政 実 務 に お い て 、 申 請 を 収 受 し た 後 も 受 理 さ れ て い な い と の 理 由 で 審 査 を 行 わ ず 、 と き に 申 請 書 を 返 戻 す る な ど 不 透 明 な 取 扱 い が み ら れ た こ と の 反 省 を 踏 ま え 、 申 請 処 理 手 続 か ら 受 理 の 概 念 を 排 除 し た と さ れ る︵1 ︶ 。 し か し 、 同 法 制 定 以 降 も 、 申 請 書 の 不 受 理 ・ 返 戻 と い っ た 措 置 が 訴 訟 で 争 わ れ る 事 例 は 今 な お 継 続 的 に 生 じ て い る︵2 ︶ 。 こ れ に は い く つ か の 理 由 が 考 え ら れ よ う が︵3 ︶ 、 関 係 法 令 に 照 ら せ ば 、 当 該 申 請 を 認 容 す る し か 選 択 肢 が な い 状 況 に お い て 、 こ れ を 回 避 す る た め の 措 置 と し て 敢 え て 返 戻 に 及 ぶ と い う 、 あ る 種 病 理 的 な 状 況 も 指 摘 さ れ て き た︵4 ︶ 。 国 の 法 令 と

29−2−129(香法2009) 一

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の 関 係 で 権 限 が 限 定 さ れ る 地 方 行 政 に お い て 特 に 顕 著 で 、 付 近 住 民 の 生 活 環 境 へ の 配 慮 が 返 戻 の 理 由 と な る 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 の 設 置 許 可 申 請 な ど は 典 型 的 な 例 で あ る 。 そ の 正 当 性 は 別 と し て 、 行 政 側 が 当 該 申 請 を 認 め 難 い と 考 え る 場 合 、 申 請 希 望 者 あ る い は 申 請 者 に 種 々 の 行 政 指 導 が 行 わ れ 、 あ わ せ て 申 請 書 の 返 戻 が 生 じ る 。 過 去 の 裁 判 例 を み て も 、 申 請 書 の 返 戻 は 、 そ の 背 景 に 何 ら か の 行 政 指 導 を 伴 う 事 例 が 多 数 で あ る 。 行 政 手 続 法 は 、 申 請 の 到 達 後 で あ っ て も 、 行 政 側 が 申 請 の 取 下 げ を 求 め る な ど 、 申 請 権 の 行 使 に 否 定 的 に 働 く 行 政 指 導 を 行 う こ と 自 体 は 否 定 し て お ら ず 、 三 三 条 が そ の 存 在 を 裏 付 け る 形 と な っ て い る 。 も っ と も 、 返 戻 自 体 は 七 条 が 認 め る と こ ろ で は な い 。 返 戻 を 行 う 行 政 側 の 意 図 は 、 補 正 を 求 め る 場 合 を 除 け ば 、 当 初 か ら 申 請 が な さ れ な か っ た も の と す る こ と に あ る と 考 え ら れ る が 、 こ の よ う な 効 果 は 七 条 か ら は 否 定 さ れ て い る 。 返 戻 行 為 に 対 す る 手 続 法 上 の 評 価 は 七 条 に お い て 既 に 結 論 が 出 て い る が 、 不 受 理 ・ 返 戻 が 原 因 と な る 訴 訟 が 後 を 絶 た な い こ と か ら 、 本 稿 で は 、 こ れ ま で の 裁 判 例 を 素 材 と し て 、 返 戻 の 背 景 に あ る 行 政 指 導 と の 関 係 に 注 目 し つ つ 、 行 政 手 続 法 に よ る 返 戻 の 統 制 を 確 認 す る こ と と す る 。 そ の 際 、 返 戻 が 国 賠 訴 訟 等 で 争 わ れ る 場 面 に お い て 、 手 続 法 か ら み た 返 戻 の 評 価 と 異 な る 捉 え 方 が み ら れ る 点 に 注 意 し な が ら 、 手 続 法 七 条 の 置 か れ た 意 義 を 考 え て み た い 。 そ こ で 、 第 二 節 で は 行 政 手 続 法 か ら み た 評 価 を 確 認 し 、 第 三 節 で は 抗 告 訴 訟 、 第 四 節 で は 国 賠 訴 訟 に お け る 返 戻 の 法 的 評 価 の 在 り 方 を 順 次 検 討 す る こ と と す る 。 な お 、 返 戻 と い う 表 現 は 、 法 令 用 語 で は な い 。 本 稿 で は 、 行 政 機 関 が い っ た ん 受 領 し た 申 請 書 や 届 出 書 を 返 却 す る 事 実 上 の 行 為 と 考 え る 。 そ れ ゆ え 、 本 稿 で 扱 う 問 題 は 、 申 請 が 行 政 庁 の 事 務 所 に 到 達 し た 後 に 生 じ る も の と な る 。 ︵ 1 ︶ 参 照 、 塩 野 宏 ﹃ 行 政 法 ! [ 第 四 版 ] ﹄ ︵ 有 斐 閣 、 二 〇 〇 六 年 ︶ 二 六 九 頁 、 仲 正 ﹃ 行 政 手 続 法 の す べ て ﹄ ︵ 良 書 普 及 会 、 一 九 九 五 年 ︶ 二 29−2−130(香法2009)

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一 八 一 頁 、 小 早 川 光 郎 編 ﹃ 行 政 手 続 法 逐 条 研 究 ﹄ ︵ 有 斐 閣 ジ ュ リ ス ト 増 刊 、 一 九 九 六 年 ︶ 九 六 頁 以 下 ︹ 以 下 ﹃ 逐 条 研 究 ﹄ と 略 記 ︺ 。 行 政 手 続 法 の コ ン メ ン タ ー ル と し て 、 高 橋 滋 ﹃ 行 政 手 続 法 ﹄ ︵ ぎ ょ う せ い 、 一 九 九 六 年 ︶ 二 〇 三 頁 以 下 、 塩 野 宏 ・ 高 木 光 ﹃ 条 解 行 政 手 続 法 ﹄ ︵ 弘 文 堂 、 二 〇 〇 〇 年 ︶ 一 五 七 頁 ︹ 以 下 ﹃ 条 解 ﹄ と 略 記 ︺ 、 室 井 力= 芝 池 義 一= 浜 川 清 編 ﹃ コ ン メ ン タ ー ル 行 政 法 ! 行 政 手 続 法 ・ 行 政 不 服 審 査 法 [ 第 二 版 ] ﹄ ︵ 日 本 評 論 社 、 二 〇 〇 八 年 ︶ 一 一 六 頁 [ 梶 哲 教 ] ︹ 以 下 ﹃ コ ン メ ン タ ー ル ﹄ と 略 記 ︺ 。 な お 、 実 務 の 説 明 概 念 と し て は 、 受 付 公 印 な ど 行 政 内 部 の 手 続 行 為 と し て 行 政 手 続 法 制 定 以 降 も 受 理 と い う 用 語 が 存 在 し う る こ と に つ き 、 参 照 、 兼 子 仁 ﹃ 行 政 手 続 法 ﹄ ︵ 岩 波 新 書 、 一 九 九 四 年 ︶ 七 三 頁 以 下 。 ま た 、 講 学 上 の 受 理 概 念 そ の も の の 当 否 に つ き 、 小 早 川 編 ﹃ 逐 条 研 究 ﹄ 九 九 頁 [ 塩 野 発 言 ] 参 照 。 ︵ 2 ︶ 申 請 ・ 届 出 の 不 受 理 ・ 返 戻 に 関 す る 裁 判 例 に つ き 参 考 と な る 文 献 と し て 、 椎 名 慎 太 郎 ﹁ 違 法 な 行 政 指 導 と は 何 か ︱ 申 請 ・ 届 出 の 扱 い と 行 政 手 続 法 の 規 律 ﹂ ︵ 同 ﹃ 行 政 手 続 法 と 住 民 参 加 ﹄ ︵ 成 文 堂 、 一 九 九 六 年 ︶ 所 収 ︶ 二 七 頁 以 下 、 最 高 裁 判 所 事 務 総 局 行 政 局 監 修 ﹃ 行 政 手 続 法 関 係 執 務 資 料 ﹄ ︵ 法 曹 会 、 一 九 九 七 年 ︶ 一 四 頁 以 下 、 恩 地 紀 代 子 ﹁ 返 戻 行 為 の 処 分 性 ﹂ 関 西 大 学 大 学 院 法 学 ジ ャ ー ナ ル 六 九 号 ︵ 二 〇 〇 〇 年 ︶ 二 五 六 頁 以 下 、 椎 名 慎 太 郎 ﹁ 申 請 ・ 届 出 の 受 付 け と 行 政 手 続 法 の 規 律 ﹂ 山 梨 学 院 ロ ー ジ ャ ー ナ ル ︵ 二 〇 〇 四 年 ︶ 七 頁 以 下 。 ︵ 3 ︶ 行 政 手 続 法 の 趣 旨 ・ 制 度 の 理 解 が 実 務 の 現 場 に 十 分 浸 透 し て い な い こ と も 一 因 と し て 挙 げ ら れ よ う 。 現 在 、 総 務 省 に よ り 実 施 さ れ て い る 行 政 手 続 法 の 施 行 状 況 調 査 に つ い て は 、 松 本 敦 司 ﹁ 行 政 手 続 法 の 施 行 状 況 ﹂ ジ ュ リ ス ト 一 三 〇 四 号 ︵ 二 〇 〇 六 年 ︶ 一 一 頁 以 下 、 宇 賀 克 也 ﹃ 行 政 手 続 ・ 情 報 公 開 ﹄ ︵ 弘 文 堂 、 二 〇 〇 六 年 ︶ 二 九 頁 等 参 照 。 な お 、 旧 総 務 庁 が 、 行 政 手 続 法 の 施 行 後 、 平 成 一 一 年 六 月 に ま と め た 勧 告 ﹁ 行 政 手 続 の 公 正 及 び 透 明 性 の 確 保 に 関 す る 調 査 結 果 の 概 要 ﹂ に よ れ ば 、 申 請 関 連 の 補 正 や 行 政 指 導 に お い て 申 請 書 返 戻 の 実 態 が 複 数 の 国 家 行 政 機 関 で 確 認 さ れ て お り 、 同 勧 告 で は 、 審 査 開 始 義 務 の 遵 守 と し て 、 申 請 に 対 す る 的 確 な 応 答 等 、 申 請 の 取 下 げ 指 導 や 法 令 上 許 認 可 等 の 申 請 の 要 件 と さ れ て い な い 事 項 に 関 す る 行 政 指 導 の 自 粛 を 各 省 庁 に 求 め て い る 。 ︵ 4 ︶ 前 掲 注 ︵ 2 ︶ 椎 名 ﹃ 行 政 手 続 法 と 住 民 参 加 ﹄ 二 八 ∼ 二 九 頁 参 照 。 な お 、 地 元 住 民 の 同 意 書 の 取 得 等 を 求 め る 行 政 指 導 に つ い て は 、 法 の 不 備 の 補 充 を 目 指 し た 自 治 体 の 創 意 工 夫 の 現 れ と し て 積 極 的 な 評 価 も 広 く み ら れ る 。 最 近 の 文 献 と し て 、 戸 部 真 澄 ﹁ 行 政 指 導 に よ る 産 業 廃 棄 物 処 分 業 の 許 可 留 保 を め ぐ る 国 家 賠 償 請 求 事 件 ﹂ 自 治 研 究 八 三 巻 一 号 ︵ 二 〇 〇 七 年 ︶ 一 〇 一 頁 参 照 。 た だ し 、 こ の よ う な 評 価 が 法 治 主 義 か ら の 乖 離 と い う 側 面 を 伴 う こ と に つ き 、 中 川 丈 久 ﹃ 行 政 手 続 と 行 政 指 導 ﹄ ︵ 有 斐 閣 、 二 〇 〇 〇 年 ︶ 二 六 〇 頁 以 下 参 照 。 29−2−131(香法2009) 三

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本 節 で は 、 裁 判 例 を 素 材 に 、 申 請 書 の 返 戻 が 手 続 法 か ら ど の よ う に 評 価 さ れ る か を 考 察 す る が 、 ま ず 、 申 請 関 連 の 規 定 と し て 行 政 手 続 法 が 設 け る 七 条 と 三 三 条 と が 、 ど の よ う な 関 係 に あ る か 、 確 認 し て お く こ と と す る 。 手 続 法 三 三 条 の 文 言 か ら も わ か る よ う に 、 申 請 到 達 後 に お い て も 申 請 の 取 下 げ 又 は 内 容 の 変 更 を 求 め る 行 政 指 導 を 行 う こ と は 排 除 さ れ て お ら ず 、 申 請 関 連 の 行 政 指 導 の 存 否 に つ い て 七 条 は 中 立 で あ る と い わ れ る︵5 ︶ 。 こ れ を 申 請 審 査 義 務 に つ い て み れ ば 、 審 査 と 行 政 指 導 は 併 存 で き 、 相 互 に 排 斥 関 係 は な い と い う こ と に な る︵6 ︶ 。 も っ と も 、 申 請 者 が 任 意 に 行 政 指 導 に 応 じ る 姿 勢 を み せ て い る 場 合 、 こ れ に 要 し た 期 間 は 、 申 請 処 理 期 間 の 計 算 に お い て 考 慮 さ れ る 余 地 が 生 じ る︵7 ︶ 。 な お 、 三 三 条 は 、 申 請 者 が 当 該 行 政 指 導 に 従 う 意 思 が な い 旨 を 表 明 し た に も か か わ ら ず 指 導 を 継 続 す る こ と 等 に よ り 申 請 者 の 権 利 の 行 使 を 妨 げ て は な ら な い と す る が 、 申 請 の 審 査 が 適 正 に 進 め ら れ 審 査 の 遅 延 を 招 か な い な ら ば 、 申 請 者 が 行 政 指 導 に 従 わ な い 旨 の 意 思 を 表 明 し た 後 に お い て も 、 な お 申 請 者 に 対 し て 申 請 関 連 の 行 政 指 導 を 行 う 余 地 は あ る と 解 さ れ て い る︵8 ︶ 。 国 賠 訴 訟 の 場 面 で 特 に 顕 著 と な る が 、 返 戻 を そ の 背 景 に あ る 行 政 指 導 と 一 体 的 に 捉 え て 評 価 す る と い う 裁 判 例 の 系 列 が あ る 。 病 院 開 設 許 可 申 請 書 の 返 戻 が 国 賠 訴 訟 で 争 わ れ た 事 案 に つ き 、 富 山 地 裁 平 成 一 三 年 五 月 九 日 判 決 ︵ 判 例 地 四 29−2−132(香法2009)

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方 自 治 二 三 一 号 七 三 頁 ︶ は 、 原 告 の 賠 償 請 求 を 次 の よ う に 退 け て い る 。 ﹁ ︵ 行 政 手 続 ︶ 法 が 、 行 政 指 導 に つ い て 規 定 を 置 い て い る こ と ︵ 三 二 条 な い し 三 六 条 ︶ に 照 ら せ ば 、 同 法 七 条 は 、 申 請 に 関 し て 行 政 指 導 が 行 わ れ る こ と を 禁 止 す る も の で は な く 、 申 請 に 対 す る 審 査 と 行 政 指 導 と を 並 行 し て 行 う こ と を 許 容 し て い る と 解 す る の が 相 当 で あ る 。 ⋮ 行 政 手 続 法 七 条 に 照 ら せ ば 、 記 載 事 項 の 不 備 の 補 正 や そ の 他 の 行 政 指 導 を す る 場 合 に 申 請 書 を 返 戻 す る こ と は 望 ま し い と は い え な い が 、 本 件 で は 、 後 記 の と お り 、 原 告 側 が 当 初 行 政 指 導 に 応 じ る 姿 勢 を 示 し て い た こ と か ら す れ ば 、 上 記 返 戻 行 為 そ の も の が 、 国 家 賠 償 法 上 違 法 で あ る と ま で は い え な い ﹂ 。 手 続 法 七 条 の 規 範 は 後 退 し 、 焦 点 は 行 政 指 導 の 許 容 性 、 手 続 法 三 二 条 及 び 三 三 条 に よ る 任 意 性 原 則 に 照 ら し た 評 価 に 当 て ら れ る 。 も ち ろ ん 手 続 法 上 の 違 法 が 直 ち に 国 家 賠 償 法 上 の 違 法 を 構 成 す る と は 限 ら ず 、 あ く ま で も 国 家 賠 償 法 上 の 違 法 性 判 断 と し て 、 こ の よ う な 返 戻 の 評 価 と な る こ と は 一 応 考 え ら れ る 。 し か し 、 そ れ に と ど ま ら ず 、 返 戻 の 存 在 自 体 が 行 政 指 導 と の 関 係 に お い て 一 定 限 度 認 め ら れ る と す る 裁 判 例 も み ら れ る 。 大 阪 地 裁 平 成 一 五 年 五 月 八 日 判 決 ︵ 判 タ 一 一 四 三 号 二 七 〇 頁 ︶ は 、 行 政 財 産 の 目 的 外 使 用 許 可 申 請 書 の 返 戻 事 案 で あ る︵9 ︶ 。 放 課 後 事 業 を 実 施 す る た め 市 立 小 学 校 の 余 裕 教 室 に つ き 市 有 財 産 借 受 申 請 書 を 提 出 し た と こ ろ 、 別 の 放 課 後 児 童 対 策 が 既 に 実 施 さ れ て い る と の 理 由 で 借 受 申 請 書 の 受 領 拒 絶 、 返 戻 が 繰 り 返 さ れ る 。 裁 判 所 は 、 手 続 法 七 条 か ら ﹁ 不 受 理 な い し 返 戻 等 の 手 段 に よ っ て 、 そ の 受 理 を 拒 否 す る こ と は 、 申 請 を 受 理 し 応 答 す る 義 務 に 違 反 し 、 使 用 希 望 者 の 申 請 権 を 侵 害 す る も の で あ っ て 、 原 則 と し て 許 さ れ な い ﹂ と し つ つ も 、 国 家 賠 償 法 上 の 違 法 に つ い て は 次 の よ う に 述 べ て い る 。 ﹁ も っ と も 、 い か な る 場 合 に も こ の 原 則 に 対 す る 例 外 が 認 め ら れ な い も の で は な く 、 許 可 権 者 が 他 の 行 政 目 的 を 達 成 す る た め に 不 受 理 な い し 返 戻 す る こ と も 、 そ の 目 的 及 び 目 的 に よ り 得 ら れ る 利 益 と こ れ に よ り 申 請 者 が 受 け る 不 利 益 と を 比 較 考 量 し て 、 そ の 方 法 、 程 度 が 社 会 通 念 上 相 当 で あ り 、 か つ 、 申 請 者 が 任 意 に 不 受 理 な い し 返 戻 に 29−2−133(香法2009) 五

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同 意 し て い る 場 合 に は 、 一 概 に 国 家 賠 償 法 上 の 違 法 で あ る と は い え な い ﹂ 。 こ の 判 決 で は 、 原 則 に 対 す る 例 外 と い う 関 係 で 返 戻 の 存 在 が 許 容 さ れ て い る 。 行 政 指 導 を 理 由 と す る 建 築 確 認 留 保 に 関 す る 最 高 裁 昭 和 六 〇 年 七 月 一 六 日 第 三 小 法 廷 判 決 ︵ 民 集 三 九 巻 五 号 九 八 九 頁 ︶ に お い て 、 一 定 の 限 界 内 で 行 政 指 導 の 実 施 継 続 が 認 め ら れ た の と 同 様 の 判 断 を 返 戻 に 当 て は め た も の と い え る 。 な お 、 返 戻 と 行 政 指 導 が 一 体 と し て 把 握 さ れ る 場 合 、 返 戻 と 行 政 指 導 と の 結 び つ き が 強 め ら れ 、 ﹁ 行 政 指 導 を 理 由 と す る 返 戻 ﹂ か ら 更 に 一 体 化 が 進 ん だ ﹁ 行 政 指 導 と し て の 返 戻 ﹂ と い う 観 念 が 生 み 出 さ れ る こ と が あ る 。 前 掲 富 山 地 裁 平 成 一 三 年 判 決 で は 、 返 戻 そ れ 自 体 と 返 戻 の 理 由 と な る 行 政 指 導 と は 一 応 区 別 さ れ て い る が 、 前 掲 大 阪 地 裁 平 成 一 五 年 判 決 で は 、 も は や 返 戻 は 行 政 指 導 そ の も の と 理 解 さ れ 両 者 の 区 別 が 失 わ れ て い る 。 し た が っ て 、 申 請 者 の 任 意 の 応 諾 、 従 わ な い 旨 の 意 思 の 表 明 い ず れ も 行 政 指 導 に で は な く 返 戻 そ の も の に 向 け ら れ る こ と に な る 。 ﹁ 行 政 指 導 と し て の 返 戻 ﹂ に ま で 一 体 化 さ れ る と 返 戻 自 体 の 違 法 性 を 切 り 出 す こ と は 更 に 困 難 と な る 。 前 述 の と お り 、 国 賠 訴 訟 の 場 面 で は 、 返 戻 は 行 政 指 導 と 一 体 的 に 評 価 さ れ 、 そ の 存 在 が 一 定 限 度 で 肯 定 さ れ る 傾 向 に あ る 。 手 続 法 七 条 の 規 範 性 が 著 し く 低 下 す る こ と に は 違 和 感 を 覚 え る と こ ろ で あ り 、 こ の 点 は 第 四 節 で 改 め て 検 討 す る こ と と す る が 、 現 状 の 裁 判 例 を み る 限 り 、 国 賠 訴 訟 の 場 面 で は 、 結 果 的 に 行 政 指 導 の 存 在 が 手 続 法 七 条 の 規 範 に 一 定 の 制 限 を 加 え る よ う に み え る 状 況 に あ る 。 し か し 、 手 続 法 七 条 か ら 返 戻 を 評 価 す る と 全 く 異 な っ た 様 相 と な る 。 裁 判 例 を 二 例 取 り あ げ て み る 。 名 古 屋 高 裁 判 平 成 一 五 年 一 一 月 一 九 日 判 決 ︵ 判 タ 一 一 六 七 号 一 五 三 頁 ︶ は 、 前 掲 富 山 地 裁 平 成 一 三 年 判 決 の 控 訴 審 六 29−2−134(香法2009)

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に あ た る 。 行 政 側 は 、 病 院 開 設 許 可 申 請 に は 事 前 協 議 の 必 要 が あ り 、 本 件 返 戻 は 事 前 協 議 、 記 載 事 項 の 不 備 の 補 正 、 病 院 開 設 計 画 の 取 止 め の 要 請 の た め の 各 種 行 政 指 導 と し て 行 わ れ た も の で あ り 、 申 請 者 に お い て こ れ ら の 行 政 指 導 を 拒 絶 す る と の 明 確 な 意 思 表 示 が な さ れ て い な い 以 上 、 こ れ ら 行 政 指 導 の 方 法 と し て 申 請 書 を 返 戻 す る こ と も 許 さ れ 、 行 政 手 続 法 に 違 反 す る も の で は な い 旨 を 主 張 し た 。 こ れ に 対 し て 裁 判 所 は 次 の よ う に こ の 主 張 を 退 け て い る 。 ﹁ 申 請 者 の 意 思 及 び 上 記 し た 行 政 手 続 法 七 条 の 趣 旨 に 徴 す る と 、 行 政 庁 が 、 申 請 書 が 行 政 庁 の 事 務 所 に 到 達 し た に も か か わ ら ず 、 当 該 申 請 書 に よ る 申 請 を 申 請 と し て 取 り 扱 わ ず 、 当 該 申 請 書 を 返 戻 す る こ と が で き る の は 、 行 政 指 導 の 必 要 が あ る 場 合 で あ っ て も 、 申 請 書 の 返 戻 に つ い て 申 請 者 の 事 前 の 同 意 が あ っ た と き に 限 っ て 許 さ れ 、 そ の よ う な 同 意 な く し て 、 申 請 書 を 持 参 し 、 あ る い は 送 付 し て 申 請 行 為 を し て い る 申 請 者 に 対 し 、 そ の 受 付 手 続 を す る こ と な く 、 申 請 書 自 体 を 返 戻 す る こ と は 、 そ れ が 、 例 え 第 一 審 被 告 ら 主 張 の よ う な 事 前 協 議 の 必 要 等 に 基 づ く 行 政 指 導 と し て 行 わ れ る も の で あ っ て も 、 許 さ れ ず 、 申 請 書 を 返 戻 す る 行 為 は 、 同 条 に 違 反 し 、 行 政 手 続 法 上 違 法 な 措 置 で あ る と い う べ き で あ る ﹂10︵ ︶ 。 同 様 の 判 決 と し て 、 病 院 開 設 中 止 勧 告 の 取 消 請 求 事 案 で あ る 富 山 地 裁 平 成 一 九 年 八 月 二 九 日 判 決 ︵ 判 タ 一 二 七 九 号 一 四 六 頁 ︶ も 、 手 続 法 七 条 に 照 ら し ﹁ 申 請 者 の 同 意 が な い に も か か わ ら ず 、 こ れ を 申 請 と し て 取 り 扱 わ ず 、 当 該 申 請 書 を 返 戻 す る こ と は 同 条 に 違 反 し 許 さ れ な い ﹂ と す る 。 本 件 で も 行 政 側 は 、 事 前 協 議 、 記 載 事 項 の 不 備 の 補 正 を 求 め る 行 政 指 導 と し て 行 わ れ た 返 戻 で あ り 手 続 法 違 反 に は 当 た ら な い 旨 主 張 し た が 、 判 決 は ﹁ た と え 不 備 の 是 正 を 求 め る た め で あ っ て も 、 ま た 、 医 師 会 の 意 見 書 の 添 付 や 事 前 協 議 と い っ た 行 政 指 導 の 必 要 が あ っ た と し て も 、 被 告 の 申 請 書 の 各 返 戻 行 為 は い ず れ も 行 政 手 続 法 七 条 に 違 反 す る ﹂ と し て 退 け て い る 。 こ の 二 判 決 は 、 行 政 指 導 と は 別 途 に 、 返 戻 そ れ 自 体 を 手 続 法 七 条 か ら 判 断 し て い る 点 で 共 通 す る 。 申 請 取 下 げ の 求 29−2−135(香法2009) 七

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め 、 補 正 の 求 め 等 行 政 指 導 の 趣 旨 如 何 を 問 わ ず 、 ま た そ の 必 要 性 や 公 益 優 越 性 も 考 慮 す る こ と な く 、 端 的 に 返 戻 が 手 続 法 七 条 違 反 で あ る と す る 。 受 理 概 念 を 排 除 し た 手 続 法 七 条 の 趣 旨 か ら す れ ば 当 然 の 結 論 と も い え る 。 な お 、 返 戻 が 認 め ら れ る の は 申 請 者 の 同 意 が あ る 場 合 の み と す る 点 で も 前 記 二 判 例 は 共 通 し て い る 。 こ の 同 意 は 、 一 見 す る と 行 政 指 導 の 任 意 性 原 則 に 対 応 す る も の ︵ 行 政 指 導 へ の 応 諾 ︶ の よ う に も み え る が 、 全 く 異 な る も の で あ る 。 申 請 関 連 の 行 政 指 導 に 対 す る 任 意 の 応 諾 は 、 指 導 に 従 わ な い 旨 の 明 確 な 意 思 表 明 が 不 存 在 で あ る こ と に よ り 肯 定 さ れ う る し 、 行 政 指 導 の 限 界 は 指 導 に 従 わ な い 旨 の 意 思 表 明 に よ り も た ら さ れ る 。 い ず れ に し て も 、 意 思 を 表 明 す る か 否 か も っ ぱ ら 申 請 者 側 の 問 題 で あ る 。 こ れ に 対 し て 、 前 掲 二 判 決 が 求 め る ﹁ 返 戻 へ の 同 意 ﹂ は 、 ま ず も っ て 行 政 側 が 申 請 者 に 同 意 を 取 り 付 け る こ と を 要 求 す る も の で あ り 、 こ れ は 行 政 側 の 問 題 で あ る11︵ ︶ 。 と こ ろ で 、 こ こ で 求 め ら れ て い る 申 請 者 の 同 意 と は ど の よ う な 性 質 の も の で あ ろ う か 。 前 掲 名 古 屋 高 裁 判 決 の 事 案 に お い て 行 政 側 は 控 訴 す る に あ た り 、 手 続 法 七 条 は 申 請 書 の 返 戻 と い う 事 実 行 為 を 禁 止 し て お ら ず 、 本 件 返 戻 行 為 を も っ て 同 条 違 反 と は で き な い 旨 を 追 加 主 張 し て い る 。 こ れ に 対 し て 裁 判 所 は 、 手 続 法 七 条 の 解 釈 に つ い て の 誤 り を 指 摘 し た 後 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。 ﹁ 申 請 者 の 事 前 の 同 意 が あ る 場 合 ︵ こ の よ う な 同 意 が あ る と き に は 、 申 請 者 が 自 ら の 意 思 で 申 請 書 の 返 還 を 受 け る も の と い う こ と が で き る 。 ︶ で な い 限 り は 、 補 正 等 又 は 取 下 げ 指 導 の 目 的 で 申 請 書 を 返 戻 す る 行 為 も 同 条 に よ り 禁 止 さ れ て い る ﹂ 。 判 決 文 中 の か っ こ 書 き を 見 る 限 り 、 同 意 に 基 づ く 返 戻 と は 、 申 請 者 の 側 か ら す れ ば 、 申 請 の 撤 回 や 一 時 的 な 取 下 げ と い っ た 行 為 と し て 捉 え ら れ る も の で あ り 、 こ れ は 、 私 人 の 公 法 行 為 と し て 扱 わ れ て き た 問 題 と も い え る12︵ ︶ 。 申 請 が 相 手 方 の あ る 単 独 行 為 で あ る と 同 様 に 、 申 請 の 撤 回 等 も 、 そ の 成 立 は 申 請 者 の 意 思 表 示 に 基 づ く も の と の 理 解 か ら す れ ば 、 返 戻 に 申 請 者 の 同 意 を 求 め る こ と は 、 一 般 的 な 意 思 表 示 ・ 法 律 行 為 論 に よ り 説 明 さ れ る も の と 考 え ら れ る13︵ ︶ 。 八 29−2−136(香法2009)

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以 上 を 整 理 す る と 、 手 続 法 七 条 に よ れ ば 、 申 請 到 達 の 後 、 行 政 庁 が と り う る 対 応 と し て は 、 形 式 不 備 な 申 請 に 対 す る 補 正 の 求 め を 除 け ば 、 応 答 処 分 以 外 は 認 め ら れ ず 、 返 戻 の 存 在 余 地 は な い 。 手 続 法 の 規 律 は こ こ ま で で あ る が 、 別 途 、 私 人 の 公 法 行 為 と し て 、 事 前 の 同 意 に 基 づ く 返 戻 が 存 在 す る と 考 え ら れ る 。 現 実 に 行 わ れ る 返 戻 に つ い て は 、 そ の 意 図 や 趣 旨 が 多 様 で あ る こ と が 指 摘 さ れ て き た14︵ ︶ 。 た と え ば 、 ! 申 請 取 下 げ の 行 政 指 導 と し て な さ れ る も の 、 " 補 正 指 導 と し て な さ れ る も の 、 # 不 適 法 な 申 請 に 対 す る 拒 否 処 分 と し て な さ れ る も の 、 $ 実 体 的 な 拒 否 処 分 と し て な さ れ る も の 、 と い っ た 四 分 類 も 可 能 で あ ろ う15︵ ︶ 。 も っ と も 、 こ の よ う な 意 図 な り 趣 旨 が 直 ち に 、 返 戻 を 正 当 化 す る 理 由 と は な ら な い こ と は 言 う ま で も な い 。 従 来 の 裁 判 例 で も 、 不 作 為 が 争 わ れ る 場 面 で は 、 返 戻 が 拒 否 処 分 に 相 当 す る と の 主 張 を 、 逆 に 、 取 消 訴 訟 で 争 わ れ る 場 面 で は 、 補 正 等 の 指 導 に 過 ぎ な い と の 主 張 を 行 政 側 が 繰 り 広 げ る 例 が 多 々 み ら れ る 。 訴 訟 段 階 で は 、 返 戻 の 意 図 の 解 明 が 必 要 と さ れ る 場 面 ︵ 次 節 参 照 ︶ が 生 じ る こ と は 否 定 で き な い が 、 行 政 運 営 に お い て は 、 そ の 透 明 性 の 確 保 と い う 行 政 手 続 法 の 趣 旨 か ら す れ ば 、 行 政 庁 の 意 図 や 真 意 と い う 不 安 定 な 要 素 は で き る だ け 排 除 で き る こ と が 望 ま し い 。 ! 類 型 の 申 請 取 下 げ を 求 め る 意 図 で の 返 戻 に つ い て で あ る が 、 前 述 の と お り 、 近 年 の 裁 判 例 は 、 申 請 者 の 事 前 の 同 意 が あ る 場 合 に の み 認 め ら れ る と し 、 同 意 を 欠 い た 返 戻 は 直 ち に 手 続 法 七 条 違 反 が 問 わ れ る こ と に な る 。 申 請 の 内 容 の 変 更 を 求 め る 行 政 指 導 も 、 申 請 内 容 の 一 部 の 取 下 げ を 求 め る も の と 考 え る な ら ば 、 こ の 類 型 の 返 戻 に 準 じ て 考 え て よ い で あ ろ う 。 " 類 型 の 補 正 指 導16︵ ︶ と し て の 返 戻 に つ い て は ど う で あ ろ う 。 法 七 条 は 、 形 式 的 要 件 不 備 の 申 請 の 処 理 と し て 、 行 政 庁 29−2−137(香法2009) 九

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の 対 応 と し て は 、 補 正 を 求 め る か 、 直 ち に 拒 否 処 分 を す る か の い ず れ か と し て い る17︵ ︶ 。 補 正 に つ い て は 、 そ の 後 の 取 扱 も 含 め 具 体 的 な 定 め は な い た め 、 現 実 に 補 正 を 求 め る に 際 し て 申 請 書 の 返 戻 が 行 わ れ る 余 地 が 生 じ る 。 記 載 事 項 が 欠 け る 場 合 な ど 申 請 書 の 返 戻 が 必 要 と な る 場 面 も 当 然 生 じ る で あ ろ う が 、 幾 つ か 前 提 と な る こ と が あ る 。 ま ず 、 補 正 指 導 で あ る 以 上 、 補 正 が 必 要 な 事 項 が 指 示 さ れ る の が 当 然 で 、 こ れ を 欠 く 単 な る 返 戻 と い う こ と は 考 え 難 い 。 ま た 、 必 要 な 添 付 書 類 が 不 足 し て い る だ け な ら ば 、 申 請 書 自 体 を 返 戻 す る 必 要 は な い 。 補 正 の 趣 旨 に そ ぐ わ な い 返 戻 に つ い て 、 こ れ を 補 正 指 導 と し て の 返 戻 と み る こ と に は 、 裁 判 所 も 否 定 的 で あ る18︵ ︶ 。 法 令 で 要 求 さ れ て い な い 添 付 書 類 等 を 補 正 と 称 し て 求 め る こ と も 同 様 で あ る 。 ま た 、 補 正 事 項 の 指 示 等 が な さ れ た と し て も 、 問 題 が な い わ け で は な い 。 異 な る 補 正 事 項 を 五 月 雨 式 に 指 摘 し 、 そ の 度 に 返 戻 を 行 い 、 何 度 も 申 請 の 提 出 を や り 直 さ せ る と い う 例 が し ば し ば み ら れ る19︵ ︶ 。 こ の よ う に 補 正 指 導 の 運 用 如 何 に よ っ て は 、 実 質 的 に 従 来 の 不 受 理 扱 い と 同 様 、 審 査 応 答 の 遅 延 を も た ら す こ と に な る こ と を 考 え れ ば 、 補 正 指 導 を 理 由 と す る 申 請 書 の 返 戻 に つ い て も 慎 重 で あ る べ き で あ ろ う 。 こ の 点 に 関 し て 、 前 掲 の 名 古 屋 高 裁 平 成 一 五 年 判 決 が 、 補 正 を 求 め る 場 合 に も 、 返 戻 に つ い て は 申 請 者 の 同 意 を 求 め て い る 点 が 注 目 さ れ る20︵ ︶ 。 ! " の 類 型 に つ い て は 、 実 質 的 に み れ ば 、 前 者 が 申 請 却 下 、 後 者 が 申 請 棄 却 に 相 当 す る が 、 行 政 手 続 法 は 不 服 審 査 法 に み ら れ る よ う な 区 別 を せ ず 、 い ず れ も 申 請 拒 否 処 分 と し て 処 理 す る こ と と し て い る21︵ ︶ 。 拒 否 処 分 で あ る 以 上 、 処 分 に 求 め ら れ る 形 式 が 備 わ ら ね ば な ら ず 、 手 続 法 八 条 一 項 は 申 請 に よ り 求 め ら れ た 許 認 可 等 を 拒 否 す る 処 分 を す る に 際 し て 当 該 処 分 と 同 時 に 当 該 処 分 の 理 由 を 申 請 者 に 示 さ な け れ ば な ら な い と し て い る 。 理 由 提 示 義 務 が 、 実 体 的 な 拒 否 処 分 と 異 な る 形 式 的 な 拒 否 処 分 に も 及 ぶ か に つ い て は 、 手 続 法 八 条 一 項 に い う 拒 否 処 分 と は 申 請 を 拒 否 す る 処 分 を す べ て 指 し 、 形 式 要 件 を 充 た さ な い こ と を 理 由 と す る 拒 否 処 分 も こ れ に 含 ま れ る と 解 さ れ て い る22︵ ︶ 。 し た が っ て 、 行 政 庁 の 意 図 に 関 わ ら ず 、 拒 否 処 分 を 単 な る 申 請 書 の 返 戻 で 代 用 す る こ と は 理 由 提 示 義 務 違 反 に も 該 当 す る こ と に な る 。 一 〇 29−2−138(香法2009)

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以 上 か ら 考 え る と 、 手 続 法 七 条 の も と に あ っ て は 、 申 請 書 の 返 戻 は 、 い か な る 理 由 に よ ろ う と も 原 則 と し て 認 め ら れ ず 、 申 請 者 の 事 前 同 意 が あ る 場 合 は 、 申 請 の 撤 回 あ る い は そ れ に 準 じ た 行 為 と し て 申 請 書 が 返 却 さ れ る と い う 簡 明 な 結 論 と な る 。 ︵ 5 ︶ 宇 賀 克 也 ﹃ 行 政 手 続 法 の 理 論 ﹄ ︵ 東 京 大 学 出 版 、 一 九 九 五 年 ︶ 六 四 ∼ 六 五 頁 、 前 掲 ・ 小 早 川 編 ﹃ 逐 条 研 究 ﹄ 二 七 二 頁 参 照 。 ︵ 6 ︶ 行 政 相 談 事 例 研 究 会 編 ﹃ 行 政 手 続 の 現 場 ﹄ ︵ ぎ ょ う せ い 、 一 九 九 八 年 ︶ 一 一 七 頁 、 前 掲 ・ 塩 野 ・ 高 木 ﹃ 条 解 ﹄ 一 五 九 頁 等 参 照 。 行 政 指 導 が 継 続 中 で あ っ て も 、 当 該 指 導 に 関 連 し な い 部 分 に つ き 、 申 請 の 審 査 を 行 う こ と は 可 能 で あ る こ と に つ き 、 前 掲 ・ 室 井= 芝 池= 浜 川 編 ﹃ コ ン メ ン タ ー ル ﹄ 一 一 六 頁 [ 梶 ] 参 照 。 ︵ 7 ︶ 前 掲 ・ 室 井= 芝 池= 浜 川 編 ﹃ コ ン メ ン タ ー ル ﹄ 一 一 五 ∼ 一 一 六 頁 [ 梶 ] 参 照 。 な お 、 補 正 に 要 す る 期 間 と 標 準 処 理 期 間 と の 関 係 に つ き 、 前 掲 ・ 小 早 川 編 ﹃ 逐 条 研 究 ﹄ 八 九 頁 以 下 参 照 。 ︵ 8 ︶ 前 掲 ・ 室 井= 芝 池= 浜 川 編 ﹃ コ ン メ ン タ ー ル ﹄ 二 四 九 頁 [ 紙 野 健 二 ] 参 照 。 手 続 法 三 二 条 に い う 申 請 者 の 権 利 と は 、 手 続 法 上 の 権 利 と 位 置 付 け ら れ る 申 請 権 一 般 と 解 さ れ る こ と に つ き 、 前 掲 ・ 塩 野= 高 木 ﹃ 条 解 ﹄ 三 二 九 頁 、 前 掲 ・ 小 早 川 編 ﹃ 逐 条 研 究 ﹄ 二 七 三 頁 以 下 参 照 。 申 請 権 の 意 義 に つ い て は 、 人 見 剛 ﹁ 行 政 処 分 申 請 権 に つ い て ﹂ 兼 子 仁= 磯 部 力 編 ﹃ 手 続 法 的 行 政 法 学 の 理 論 ﹄ ︵ 勁 草 書 房 、 一 九 九 五 年 ︶ 所 収 一 四 九 頁 、 薄 井 一 成 ﹁ 申 請 権 の 保 護 ﹂ ﹃ 行 政 法 の 争 点 [ 第 三 版 ] ﹄ ︵ 有 斐 閣 、 二 〇 〇 四 年 ︶ 五 四 頁 、 同 ﹁ 申 請 手 続 過 程 と 法 ﹂ 磯 部 力= 小 早 川 光 郎= 芝 池 義 一 編 ﹃ 行 政 法 の 新 構 想 " ﹄ ︵ 有 斐 閣 、 二 〇 〇 八 年 ︶ 二 六 九 頁 参 照 。 ︵ 9 ︶ 行 政 財 産 の 目 的 外 使 用 許 可 申 請 が 行 政 手 続 法 上 の 申 請 に 該 当 す る か と い う 問 題 が あ る が 、 手 続 法 の 解 釈 問 題 で は な く 国 有 財 産 法 等 の 解 釈 の 問 題 で あ る こ と に つ き 、 塩 野 ﹃ 行 政 法 ! ﹄ 二 六 六 頁 以 下 参 照 。 本 件 も 行 政 財 産 の 使 用 許 可 で あ る た め 、 審 査 応 答 義 務 の 前 提 と な る 申 請 権 が 存 在 す る か が 一 つ の 争 点 と な っ て い る 。 判 決 は ﹁ 地 方 自 治 法 二 三 八 条 の 四 ⋮ の 趣 旨 に 鑑 み れ ば 、 同 条 は 、 使 用 希 望 者 に 対 し 当 該 行 政 財 産 を 使 用 す る こ と が で き る 実 体 法 上 の 権 利 な い し 法 的 利 益 を 賦 与 す る も の と ま で は 解 し 難 い が 、 こ の こ と と 行 政 財 産 の 目 的 外 使 用 許 可 処 分 を 求 め る 申 請 権 が 実 体 法 上 の 権 利 な い し 法 的 利 益 と し て 認 め ら れ る か 否 か と は 別 個 の 問 題 で あ ︵ る ︶ ﹂ と し て 申 請 権 の 成 立 を 認 め て い る 。 ︵ 10 ︶ 本 件 評 釈 と し て は 、 田 村 達 久 ﹁ 行 政 手 続 法 七 条 違 反 行 為 の 国 家 賠 償 法 上 の 違 法 性 有 無 の 判 断 ﹂ 法 学 セ ミ ナ ー 六 〇 八 号 ︵ 二 〇 〇 五 29−2−139(香法2009) 一 一

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年 ︶ 一 二 四 頁 、 山 崎 栄 一 郎 ﹁ 申 請 書 の 返 戻 行 為 が 国 家 賠 償 法 上 違 法 と さ れ た 事 例 ﹂ み ん け ん 五 七 五 号 ︵ 二 〇 〇 五 年 ︶ 二 九 頁 、 岡 本 博 志 ﹁ 病 院 開 設 許 可 申 請 書 を 受 理 せ ず に 返 戻 す る 行 為 が 行 政 手 続 法 上 違 法 で あ る と と も に 、 国 家 賠 償 法 上 も 違 法 と さ れ た 事 例 ﹂ 北 九 州 市 立 大 学 法 政 論 集 三 三 巻 二 ・ 三 ・ 四 合 併 号 ︵ 二 〇 〇 六 年 ︶ 一 三 九 頁 。 ︵ 11 ︶ 申 請 書 の 返 戻 に 申 請 者 の 同 意 が 必 要 で あ る と す る 判 例 は 、 従 前 か ら み ら れ た と こ ろ で あ る 。 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 設 置 許 可 申 請 の 返 戻 が 不 作 為 の 違 法 確 認 で 争 わ れ た 事 案 で 、 岡 山 地 裁 平 成 一 一 年 二 月 九 日 ︵ 判 例 地 方 自 治 一 九 四 号 八 四 頁 ︶ は 、 ﹁ 事 前 計 画 書 を 取 り 下 げ た 上 、 許 可 申 請 書 返 戻 後 新 た に 事 前 計 画 書 を 提 出 し た か ら と い っ て 、 右 の 許 可 申 請 書 返 戻 に 同 意 し 、 本 件 許 可 申 請 を 撤 回 し た と い う こ と は で き な い ﹂ と す る 。 控 訴 審 で あ る 広 島 高 裁 平 成 一 二 年 四 月 二 七 日 ︵ 判 例 地 方 自 治 二 一 四 号 七 〇 頁 ︶ で 行 政 側 は 、 事 前 計 画 書 を 求 め る 指 導 の 後 、 申 請 者 が 新 た に 許 可 申 請 を し た こ と に よ り 以 前 の 許 可 申 請 が 黙 示 的 に 取 り 下 げ ら れ た 旨 主 張 し た が 、 裁 判 所 は 、 本 件 許 可 申 請 を 撤 回 す る 意 思 は 認 め ら れ な い と し て 退 け て い る 。 ︵ 12 ︶ 最 高 裁 昭 和 三 四 年 六 月 二 六 日 第 二 小 法 廷 判 決 ︵ 民 集 一 三 巻 六 号 八 四 六 頁 ︶ は 、 公 務 員 の 退 職 願 に つ き 、 原 則 と し て 免 職 処 分 が 有 効 に 成 立 す る ま で は 撤 回 は 自 由 で あ る と し た 。 申 請 に お い て も 基 本 的 に は 同 様 に 解 さ れ 、 申 請 に よ り 求 め ら れ た 許 認 可 等 の 処 分 が 有 効 に 成 立 す る ま で は 、 個 別 法 令 で 撤 回 が 制 限 さ れ る 場 合 や 信 義 則 に 反 す る 等 の 特 段 の 事 情 の な い 限 り 、 申 請 の 撤 回 は 自 由 で あ る こ と に つ き 、 前 掲 ・ 室 井= 芝 池= 浜 川 編 ﹃ コ ン メ ン タ ー ル ﹄ 一 一 六 頁 [ 梶 ] 参 照 。 な お 、 申 請 の 撤 回 が 手 続 法 七 条 と の 関 連 で 言 及 さ れ る こ と は あ る が 、 そ れ は 申 請 の 到 達 に よ り 生 じ た 行 政 庁 の 審 査 応 答 義 務 の 消 長 に つ い て で あ り 、 申 請 の 撤 回 自 体 の 可 否 が 行 政 手 続 法 上 問 題 と な る わ け で は な い 。 ︵ 13 ︶ 行 政 手 続 法 は 、 手 続 法 で あ る が ゆ え に 申 請 の 実 体 問 題 に つ い て は 触 れ て い な い 。 七 条 の 到 達 主 義 に つ い て も 、 申 請 を 意 思 表 示 と 考 え れ ば 、 意 思 表 示 ・ 法 律 行 為 の 一 般 論 か ら 、 そ の 効 力 発 生 時 点 は 相 手 方 へ の 到 達 時 と 理 解 さ れ る 。 行 政 手 続 法 は 、 行 政 庁 に 課 せ ら れ る 審 査 応 答 義 務 の 発 生 時 点 を 、 到 達 時 に 同 期 さ せ た 点 に 手 続 法 固 有 の 意 味 が あ る と 考 え ら れ る 。 ︵ 14 ︶ 行 政 手 続 法 の 制 定 以 前 で あ る が 、 返 戻 の 多 様 性 を 考 え る 上 で 示 唆 に 富 む も の と し て 、 塩 野 宏 ﹁ 返 戻 ﹂ 法 学 教 室 一 一 七 号 ︵ 一 九 九 〇 年 ︶ 巻 頭 言 。 ︵ 15 ︶ こ の 分 類 は 、 兼 子 仁 教 授 が 行 わ れ た 分 類 に 基 づ い て い る 。 前 掲 ・ 兼 子 ﹃ 行 政 手 続 法 ﹄ 七 四 ∼ 七 五 頁 参 照 。 ︵ 16 ︶ 行 政 庁 が 補 正 を 求 め る 行 為 は 、 行 政 手 続 法 二 条 の 定 義 か ら し て 概 念 的 に は 行 政 指 導 に あ た る こ と に つ き 、 前 掲 ・ 小 早 川 編 ﹃ 逐 条 研 究 ﹄ 一 〇 三 頁 [ 仲 発 言 ] 参 照 。 そ の 限 り で 行 政 手 続 法 第 四 章 の 規 定 が 妥 当 す る こ と に つ き 、 前 掲 ・ 室 井= 芝 池= 浜 川 編 ﹃ コ ン メ ン タ ー ル ﹄ 一 一 五 頁 [ 梶 ] 参 照 。 申 請 者 が 補 正 を 拒 否 し て 審 査 へ の 移 行 を 希 望 し て い る な ら ば 、 行 政 指 導 の 任 意 性 原 則 か ら し て 、 一 二 29−2−140(香法2009)

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直 ち に 審 査 に 移 る こ と に な る 。 ︵ 17 ︶ 形 式 不 備 な 申 請 に つ き 、 手 続 法 七 条 が 補 正 を 求 め る か 拒 否 処 分 を す る か を 並 列 的 に 定 め る こ と に つ き 、 学 説 上 は 、 補 正 可 能 な 場 合 に は 補 正 を 求 め る こ と が 条 理 解 釈 と し て 求 め ら れ る と す る 見 解 も 示 さ れ て い る ︵ 前 掲 ・ 兼 子 仁 ﹃ 行 政 手 続 法 ﹄ 七 二 頁 ︶ 。 七 条 か ら 一 般 的 な 補 正 指 導 義 務 な い し 補 正 優 先 原 則 が 導 か れ な い と し て も 、 容 易 に 補 正 可 能 な 場 合 に 直 ち に 却 下 す る 行 為 が 許 さ れ る か 等 に つ き 解 釈 の 余 地 が 考 え ら れ る こ と に つ き 、 前 掲 ・ 高 橋 ﹃ 行 政 手 続 法 ﹄ 二 〇 五 頁 、 前 掲 ・ 宇 賀 ﹃ 解 説 ﹄ 九 五 頁 参 照 。 ︵ 18 ︶ 一 例 と し て 、 富 山 地 裁 平 成 一 三 年 五 月 九 日 判 決 は ﹁ 記 載 事 項 の 不 備 の 補 正 や 意 見 書 の 添 付 等 を 求 め る だ け で あ れ ば 申 請 書 を 送 り 返 す 必 要 が な い こ と か ら す れ ば 、 こ れ ら の 返 戻 は 、 申 請 取 下 げ の 行 政 指 導 の 意 味 を も 含 む も の と 解 さ れ る ﹂ と す る 。 ︵ 19 ︶ 本 文 で 取 り 上 げ た 名 古 屋 高 裁 判 平 成 一 五 年 一 一 月 一 九 日 判 決 の 事 案 で は 、 申 請 の 度 に 返 戻 が 繰 り 返 さ れ 、 合 計 六 回 の 申 請 が 繰 返 さ れ て い る 。 判 決 は 、 返 戻 行 為 の 繰 返 し で 審 査 を 実 質 的 に 拒 否 し 、 こ れ を 遅 滞 さ せ た も の で あ る と し 、 ま た 、 申 請 者 の 本 件 病 院 開 設 許 可 申 請 は 本 件 各 申 請 行 為 を 通 じ て 同 一 の も の と 認 め る の が 相 当 で あ る と し て い る 。 ︵ 20 ︶ 補 正 の 求 め も 行 政 指 導 で あ る と い う 点 を 捉 え れ ば 、 裁 判 所 が 、 補 正 の 求 め を 他 の 行 政 指 導 と 区 別 せ ず 一 括 し て い る こ と に は 一 貫 性 が あ る と い え る 。 た だ し 、 補 正 の 求 め が 通 常 い わ れ る 行 政 指 導 と 異 な る 性 質 が あ る と も 考 え ら れ る こ と に つ き 、 前 掲 ・ 小 早 川 編 ﹃ 逐 条 研 究 ﹄ 一 〇 二 ∼ 一 〇 三 頁 参 照 。 ま た 、 手 続 法 七 条 が 本 線 の 申 請 処 理 手 続 と は 別 途 に 補 正 手 続 を 置 い て い る と 考 え れ ば 、 補 正 を 求 め る 返 戻 を 区 別 し て 考 え る こ と が 適 当 か も し れ な い 。 も っ と も 、 本 件 判 決 の よ う に 補 正 の 場 合 を 区 別 し な い と し て も 、 窓 口 で 補 正 指 導 を 受 け 、 申 請 者 が こ れ に 応 じ 申 請 書 類 を 持 ち 帰 れ ば 特 段 問 題 は 生 じ な い 。 補 正 を 求 め る た め 一 方 的 に 郵 送 で 申 請 書 類 を 返 戻 す る こ と が で き る か ︵ そ の 場 合 、 申 請 者 に よ る 事 後 的 な 黙 示 の 同 意 を 推 認 で き る か ︶ に つ い て は 問 題 が 残 る 。 な お 、 申 請 者 が 一 旦 補 正 指 導 に 応 じ た も の の 相 当 の 期 間 内 に 補 正 が な さ れ な か っ た 場 合 、 申 請 の 取 下 げ と み な す 処 理 も 許 さ れ る か と い う 問 題 も あ る 。 手 数 料 等 の 負 担 問 題 、 拒 否 処 分 を 受 け た 前 歴 が 将 来 不 利 に 考 慮 さ れ る 可 能 性 な ど 申 請 者 の 権 利 保 護 と い う 観 点 か ら は 、 必 ず し も 拒 否 処 分 し か 許 さ れ な い と い う わ け で は な い こ と に つ き 、 前 掲 ・ 室 井= 芝 池= 浜 川 編 ﹃ コ ン メ ン タ ー ル ﹄ 一 一 六 頁 [ 梶 ] 参 照 。 申 請 の 取 下 げ と し て 処 理 す る 場 合 で あ っ て も 申 請 者 の 意 思 の 確 認 は 必 要 で あ り 、 こ の 点 は 、 申 請 取 下 げ の 行 政 指 導 と し て の 返 戻 の 場 合 と 同 様 に 考 え て よ い と 思 わ れ る 。 ︵ 21 ︶ 行 政 不 服 審 査 法 と 異 な る 定 め を 置 い た 趣 旨 に つ き 、 前 掲 ・ 小 早 川 編 ﹃ 逐 条 研 究 ﹄ 一 〇 三 頁 [ 仲 発 言 ] 参 照 。 ︵ 22 ︶ 前 掲 ・ 室 井= 芝 池= 浜 川 編 ﹃ コ ン メ ン タ ー ル ﹄ 一 二 〇 頁 [ 梶 ] 参 照 。 29−2−141(香法2009) 一 三

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行 政 手 続 法 の 制 定 以 降 、 申 請 の 不 受 理 ・ 返 戻 に つ い て は 、 不 作 為 の 違 法 確 認 訴 訟 が 適 切 な 訴 訟 形 式 で あ る と の 理 解 が 一 般 的 に な っ て い る 。 不 受 理 ・ 返 戻 が 現 実 に 行 わ れ た と し て も 、 法 令 が 認 め る 権 限 の 行 使 で な い 以 上 、 単 な る 事 実 行 為 と み る ほ か な く 、 こ れ を 処 分 と み る こ と は 困 難 で あ り 、 ま た 、 そ の よ う に 解 す る こ と が 受 理 の 概 念 を 排 除 し た 手 続 法 七 条 の 趣 旨 に も 適 う も の と 解 さ れ る こ と に よ る 。 そ れ ゆ え 、 行 政 手 続 法 の 制 定 に よ り 、 今 後 は 不 作 為 の 違 法 確 認 訴 訟 で 争 わ れ る 方 向 で 実 務 も 定 着 す る と の 予 想 が 述 べ ら れ23︵ ︶ 、 実 際 に そ の 後 の 下 級 審 裁 判 例 を み る と 、 不 受 理 ・ 返 戻 の 処 分 性 を 否 定 し 、 不 作 為 の 違 法 確 認 訴 訟 を 選 択 す べ き と す る も の が 多 数 と な っ て い る24︵ ︶ 。 取 消 訴 訟 の 可 能 性 を 検 討 す る 場 合 、 不 受 理 ・ 返 戻 処 分 の 取 消 訴 訟 と 申 請 拒 否 処 分 の 取 消 訴 訟 の 二 様 が あ る 。 前 者 の 取 消 訴 訟 は 種 々 の 問 題 点 が 指 摘 さ れ る が25︵ ︶ 、 返 戻 事 案 を 申 請 拒 否 処 分 と し て 争 う 余 地 が あ る と の 理 解 は 少 な か ら ず み ら れ る 。 そ の 理 由 と し て 、 一 つ に は 、 返 戻 の 趣 旨 が 拒 否 処 分 な の か 、 行 政 指 導 を 理 由 と す る 事 実 上 の 措 置 な の か 必 ず し も 明 確 で な い こ と が 挙 げ ら れ る26︵ ︶ 。 実 際 に 、 裁 判 例 を み れ ば 、 拒 否 処 分 取 消 訴 訟 と し て 争 わ れ 、 処 分 性 が 肯 定 さ れ る 例 が あ る 。 裁 判 所 と し て は 、 返 戻 事 案 で 拒 否 処 分 の 成 立 を 肯 定 す る か 否 か の 判 断 と な る ゆ え 、 こ れ を 争 う 申 請 者 の 側 と し て は 、 不 作 為 の 違 法 確 認 訴 訟 と 申 請 拒 否 処 分 の 両 訴 訟 を 併 合 提 起 す る こ と が 、 訴 訟 選 択 の 誤 り に よ る リ ス ク を 避 け る 上 で 望 ま れ る こ と が 指 摘 さ れ る27︵ ︶ 。 一 四 29−2−142(香法2009)

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返 戻 事 案 で 拒 否 処 分 取 消 訴 訟 の 可 能 性 に つ い て は 、 よ り 積 極 的 に こ れ を 検 討 す る こ と も 考 え ら れ る 。 た と え ば 、 不 作 為 の 違 法 確 認 で は 、 返 戻 行 為 そ れ 自 体 の 違 法 性 は 直 接 の 争 点 か ら 外 れ て し ま う こ と か ら 、 返 戻 が そ の 行 為 自 体 に お い て 違 法 で あ る こ と を 明 確 に す る 意 味 で は 、 申 請 拒 否 処 分 の 取 消 訴 訟 に も 意 義 が あ る と す る 見 解 が あ る28︵ ︶ 。 あ る い は 、 返 戻 に お け る 行 政 庁 の 判 断 権 行 使 の 実 態 か ら 取 消 訴 訟 の 妥 当 性 を 考 え る こ と も で き よ う 。 手 続 違 背 と 考 え ら れ る 返 戻 を 敢 え て 行 政 庁 が 行 う の は 、 当 該 申 請 に 係 る 法 令 の 規 定 に 従 え ば 申 請 内 容 を 認 め ざ る を え な い が 、 当 該 法 令 か ら 導 き 出 せ な い 理 由 か ら こ れ を 回 避 す る 意 図 に よ る こ と が 考 え ら れ る 。 こ の 場 合 、 申 請 が 法 令 の 要 件 を 充 足 し て い る こ と 、 ま た 、 応 答 処 分 を 行 わ な い と の 一 応 の 判 断 は 既 に 行 わ れ て い る と 考 え ら れ 、 仮 に こ の よ う な 積 極 的 判 断 と し て の 返 戻 で あ れ ば 、 も は や 申 請 の 審 査 再 開 や 最 終 的 な 許 認 可 が 行 わ れ る こ と は 考 え 難 く 、 相 当 の 期 間 の 経 過 を 待 つ ま で も な く 、 返 戻 を 受 け た 時 点 で 直 ち に 取 消 訴 訟 を 提 起 す る こ と が 合 理 的 と も 思 え る 。 こ の よ う な 返 戻 に は 、 不 作 為 で 想 定 さ れ る よ う な 消 極 的 な 審 査 の 懈 怠 と は 異 質 な 、 行 政 庁 の 積 極 的 な 意 思 の 表 明 が あ る と も い え 、 そ の 行 政 庁 の 意 思 自 体 の 妥 当 性 が 取 消 訴 訟 で 直 接 争 わ れ る 余 地 は 十 分 考 え ら れ る29︵ ︶ 。 以 上 の よ う に 、 申 請 拒 否 処 分 取 消 訴 訟 の 提 起 可 能 性 に つ い て は 、 あ く ま で も 例 外 的 な も の と み る の か 、 よ り 積 極 的 に 検 討 さ れ て も よ い も の な の か と い う 方 向 性 に 違 い は 生 じ る が 、 い ず れ に せ よ 、 行 政 手 続 法 と の 整 合 性 を ど の よ う に 考 え る か と い う 問 題 が 残 っ て い る 。 不 作 為 の 違 法 確 認 で あ れ ば 、 手 続 法 七 条 に 即 し て 客 観 的 処 理 が 可 能 で あ る の に 対 し 、 取 消 訴 訟 の 場 合 は 、 返 戻 が 申 請 拒 否 処 分 と 解 さ れ る か と い う 主 観 的 要 素 が 問 わ れ る 点 で 、 両 訴 訟 に は 相 違 が 生 じ る 。 申 請 拒 否 処 分 取 消 訴 訟 に お い て は 、 行 政 庁 の 意 図 ︵ 真 意 ︶ の 解 明 と い う 不 安 定 な 要 素 を 持 ち 込 む こ と に な る が 、 こ の 点 は 、 行 政 運 営 に お け る 透 明 性 の 確 保 を 図 る 行 政 手 続 法 の 趣 旨 に そ ぐ わ な い 面 が あ る こ と は 否 定 で き な い 。 し か し 、 逆 に 言 え ば 、 不 安 定 性 を あ る 程 度 排 除 で き る な ら ば 、 取 消 訴 訟 の 利 用 が 検 討 さ れ て よ い で あ ろ う 。 た と え ば 、 返 29−2−143(香法2009) 一 五

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戻 の 解 釈 に 際 し て 客 観 的 な 手 が か り が 存 在 す る 場 合 な ど が 考 え ら れ る 。 以 下 に お い て は 、 申 請 書 返 戻 事 案 に つ き 申 請 拒 否 取 消 訴 訟 が 肯 定 さ れ た 事 例 を 取 り 上 げ 、 裁 判 所 が 示 し た 返 戻 の 解 釈 を み て み よ う 。 ! 東 京 地 裁 平 成 二 年 一 〇 月 一 五 日 判 決 ︵ 行 集 四 一 巻 一 〇 号 一 六 三 九 頁 ︶ 原 告 が 第 三 種 電 気 主 任 技 術 者 の 資 格 認 定 申 請 を 行 っ た と こ ろ 、 資 格 取 得 に 必 要 と さ れ る 科 目 群 の 一 つ に つ き 全 く 履 修 さ れ て い な い た め 資 格 認 定 の 対 象 に な ら な い と の 旨 が 記 さ れ た 書 面 と と も に 申 請 書 類 一 式 が 郵 送 で 返 戻 さ れ た 事 案 で あ る 。 行 政 庁 は 、 補 正 あ る い は 再 検 討 の 機 会 を 与 え る た め の 返 戻 で あ り 、 申 請 に 対 す る 終 局 的 判 断 を 行 っ た も の で は な い と 主 張 し た が 、 裁 判 所 は 、 次 の よ う に 拒 否 処 分 の 存 在 を 肯 定 し た 。 ﹁ 本 件 の 場 合 ⋮ 被 告 の 側 で 原 告 の 本 件 申 請 を 従 前 の 資 格 認 定 基 準 に 照 ら し て 認 容 す る 余 地 の な い も の と 考 え て い た こ と は 明 ら か で あ り 、 し か も 申 請 書 類 の 返 戻 に 当 た っ て は 、 原 告 の 申 請 が 容 れ ら れ な い も の で あ る こ と が 明 確 に 告 知 さ れ た の み で 、 そ れ 以 上 に 、 書 類 の 補 正 や 申 請 自 体 の 再 検 討 の 結 果 を 待 っ た 上 で 改 め て 本 件 申 請 に 対 す る 最 終 的 な 許 否 の 判 断 を す る と い っ た 趣 旨 の 通 知 は 、 何 ら な さ れ て い な い の で あ る 。 そ う す る と 、 本 件 の 場 合 は 、 右 の 申 請 書 類 の 返 戻 に よ っ て 、 原 告 の 本 件 申 請 に 対 す る 被 告 の 拒 否 処 分 が あ っ た こ と に な る と す る の が 相 当 で あ り 、 右 書 類 の 返 戻 に 当 た っ て 申 請 書 に 受 理 印 が 押 さ れ て お ら ず 、 印 紙 の 消 印 も な さ れ ず 、 ま た 本 来 の 処 分 権 者 で あ る 被 告 の 名 前 が 用 い ら れ て い な い と い っ た 事 実 も 、 右 の 結 論 を 左 右 す る も の で は な い ﹂ 。 控 訴 審 ︵ 東 京 高 等 平 成 三 年 四 月 二 三 日 判 決 ・ 行 集 四 二 巻 四 号 五 九 二 頁 ︶ も 原 審 判 断 を 支 持 し 判 決 は 確 定 し て い る 。 一 六 29−2−144(香法2009)

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! 岡 山 地 裁 平 成 一 二 年 二 月 二 日 第 二 民 事 部 判 決 ︵ 判 例 集 未 搭 載 ︶ 道 路 法 二 四 条 に 基 づ く 道 路 工 事 の 承 認 申 請 書 の 返 戻 事 案 で あ り 、 原 告 は 主 位 的 に 不 作 為 の 違 法 確 認 を 、 予 備 的 に 承 認 拒 否 処 分 の 取 消 し を 求 め て い る 。 主 位 的 請 求 に つ き 、 被 告 は 、 本 件 返 戻 の 前 に 聴 聞 に 準 ず る 意 見 聴 取 会 を 開 催 し て 原 告 に 弁 明 の 機 会 を 付 与 し 、 そ の 結 果 を 踏 ま え て 一 〇 項 目 に わ た る 拒 否 理 由 を 明 示 し た 書 面 を 交 付 し て 本 件 返 戻 行 為 を し た も の で あ り 、 単 な る 事 実 上 の 書 類 返 戻 行 為 に と ど ま ら ず 、 実 質 的 に は 不 承 認 処 分 で あ る と 主 張 。 裁 判 所 は 、 手 続 法 七 条 及 び 八 条 か ら 、 ﹁ 本 来 で あ れ ば 、 道 路 管 理 者 で あ る 行 政 庁 は 、 申 請 が そ の 事 務 所 に 到 達 す る と 遅 滞 な く こ れ を 審 査 し 、 内 部 的 に は 決 裁 を 経 て 、 承 認 処 分 を す る か 、 承 認 で き な い 場 合 は 理 由 を 付 し て 不 承 認 処 分 を す る こ と に よ り 、 そ の 処 分 結 果 を 明 確 に す べ き で あ る ﹂ と し た 上 で 、 ﹁ も っ と も 、 右 申 請 に 対 す る 審 査 を 経 た の に 承 認 ・ 不 承 認 の 具 体 的 な 明 示 が な い ま ま に 申 請 書 が 返 戻 さ れ る 場 合 も あ り 、 こ の よ う な 場 合 は 、 右 返 戻 行 為 が 、 申 請 書 の 撤 回 又 は 補 正 を 促 す 単 な る 事 実 上 の 措 置 に と ど ま る も の か 、 承 認 を 拒 否 ︵ 不 承 認 ︶ す る 行 政 処 分 な の か が 問 題 と な る と こ ろ 、 そ の 判 断 は 、 形 式 的 に 承 認 ・ 不 承 認 の 記 載 の 有 無 だ け に よ る の で は な く 、 行 政 庁 が ど の よ う な 意 思 で 当 該 返 戻 行 為 を し た か を 考 慮 し て 判 断 さ れ る べ き で あ る ﹂ と し 、 承 認 拒 否 処 分 の 取 消 請 求 を 認 容 し た 。 本 件 で は 、 返 却 理 由 書 本 文 に は 申 請 書 を 返 却 す る 旨 の 記 載 の み で 、 不 承 認 ・ 承 認 に つ い て の 記 載 は な か っ た が 、 返 却 理 由 書 本 文 で 引 用 さ れ た 別 紙 に は 、 単 な る 訂 正 な ど で は 治 癒 で き な い よ う な 重 大 な 問 題 が 存 在 す る こ と が 記 載 さ れ て お り 、 こ の 点 を 重 視 し た 裁 判 所 は 、 ﹁ 被 告 は ⋮ 本 件 各 申 請 を 拒 否 す る 意 思 で 本 件 返 戻 行 為 を し た も の で あ り 、 右 の 被 告 の 承 認 拒 否 の 意 思 は 返 却 理 由 書 上 も 客 観 的 に 明 白 で あ っ た と 認 め る こ と が で き る ﹂ と し 、 不 作 為 の 違 法 確 認 請 求 に つ い て 、 す で に 処 分 が 行 わ れ て い る こ と か ら 不 適 法 で あ る と し 退 け て い る 。 控 訴 審 ︵ 広 島 高 裁 平 成 一 二 年 六 月 二 九 日 判 決 ・ 判 例 集 未 搭 載 ︶ も 原 判 決 を 支 持 し 控 訴 を 棄 却 し た 。 29−2−145(香法2009) 一 七

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以 上 の 二 事 案 は い ず れ も 単 な る 申 請 書 の 返 戻 で な く 、 返 戻 理 由 を 示 し た 書 面 が 添 付 さ れ て い る 点 が 特 徴 で あ る 。 こ の 書 面 を 手 掛 か り に 、 行 政 庁 の 真 意 が 解 釈 さ れ 、 拒 否 処 分 該 当 性 が 肯 定 さ れ て い る 。 返 戻 理 由 書 に は 、 補 正 指 導 と み ら れ る 記 載 が 一 切 な い か 、 あ っ て も 補 正 不 能 の 事 項 も 含 ま れ て お り 、 こ の 点 を 捉 え て 裁 判 所 は 、 補 正 指 導 と し て の 返 戻 と い う 選 択 肢 を 消 去 し て い る 。 ま た 、 行 政 庁 の 審 査 が 、 実 質 的 に は 実 体 審 査 に 及 ん で お り 、 最 終 的 な 判 断 に 至 っ て い る と み る に 難 く な い 事 案 と い う 点 で も 共 通 し て い る 。 な お 、 添 付 さ れ た 返 戻 理 由 書 類 が 申 請 拒 否 処 分 書 そ の も の に な り え な い こ と は 当 然 で 、 行 政 行 為 が 備 え る べ き 形 式 か ら み れ ば 重 大 な 瑕 疵 を 帯 び て い る こ と に は な る が 、 行 政 行 為 の 形 式 と 訴 訟 救 済 段 階 で の 処 分 性 は 区 別 さ れ て よ い で あ ろ う し30︵ ︶ 、 少 な く と も 、 手 続 法 八 条 で 要 求 さ れ る 拒 否 処 分 理 由 が 客 観 的 に 読 み 取 れ る な ら ば 、 申 請 拒 否 処 分 の 成 立 を 判 断 す る 重 要 な 要 素 と な る と 考 え ら れ る31︵ ︶ 。 も っ と も 、 返 戻 理 由 書 の 類 が 存 在 す る 場 合 で も 、 そ れ が 常 に 申 請 拒 否 と 解 さ れ る わ け で は な く 、 解 釈 が 微 妙 な 場 合 も 生 じ る 。 次 の 事 例 な ど は そ の 例 と 言 え る 。 ! 東 京 高 裁 平 成 一 四 年 二 月 二 〇 日 判 決 ︵ 判 例 集 未 搭 載 ︶ 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 設 置 の 許 可 申 請 書 の 返 戻 が 申 請 却 下 処 分 に 当 た る と し て 取 消 訴 訟 で 争 わ れ た 事 案 で あ る 。 原 審 ︵ 前 橋 地 裁 平 成 一 三 年 六 月 二 九 日 ・ 判 例 集 未 搭 載 ︶ は 、 本 件 返 却 行 為 が 事 実 上 の 措 置 で あ る こ と か ら 、 受 理 拒 絶 を も っ て 何 ら か の 法 的 効 果 を 伴 う 行 政 処 分 が な さ れ た と 認 め る こ と は で き な い 旨 判 示 し 、 原 告 の 訴 え を 却 下 し た 。 こ れ に 対 し 、 控 訴 審 は 、 ﹁ 本 件 申 請 書 の こ の よ う な 返 却 行 為 は 、 本 件 返 却 書 面 の 記 載 そ の 他 の 関 係 証 拠 に よ れ ば 、 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 の 設 置 の 許 可 に つ き 専 決 権 限 を 有 す る 機 関 の 制 定 に 係 る 事 前 協 議 規 程 の 規 定 を 根 拠 と し 、 同 県 主 務 課 に も 確 認 済 み の 上 で 、 同 保 健 所 長 が な し た 行 為 で あ っ て 、 同 行 為 に 示 さ れ た 意 思 は 、 そ の よ う に 返 却 す る 本 件 申 請 書 に 係 る 一 八 29−2−146(香法2009)

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許 可 申 請 に つ い て は そ の 許 可 に つ き 専 決 権 限 を 有 す る 機 関 が そ の 許 否 の 判 断 を じ 後 行 わ な い こ と と す る 、 か つ 、 そ の 許 否 の 判 断 を じ 後 行 わ な い こ と と す る 意 思 を 控 訴 人 に 対 し 確 定 的 に 表 示 す る と い う 内 容 と 認 め ら れ る ﹂ と し て 本 件 返 戻 が 実 質 的 に 取 消 訴 訟 の 対 象 と な る 申 請 却 下 処 分 に 当 た る と 判 断 し た 。 こ の 判 断 は 、 本 件 返 戻 に 添 付 さ れ た 返 却 書 面 の 記 載 内 容 が 勘 案 さ れ て い る 。 返 却 書 面 に は 、 ︵ 一 ︶ 原 告 か ら 送 付 さ れ た 廃 棄 物 処 理 施 設 設 置 計 画 に つ い て は 、 県 廃 棄 物 処 理 施 設 の 事 前 協 議 等 に 関 す る 規 程 第 一 二 条 に 基 づ き 不 承 認 と な っ て い る こ と 、 ︵ 二 ︶ 県 で は 、 同 事 前 協 議 規 程 に 基 づ き 不 承 認 と さ れ た 計 画 に つ い て は 、 設 置 許 可 申 請 に 関 す る 書 類 を 受 理 し な い こ と と し て い る こ と 、 ︵ 三 ︶ 申 請 書 類 の 内 容 に つ い て の 審 査 は 行 っ て い な い こ と 、 が 記 載 さ れ て い た 。 本 件 は 、 前 記 ! " 事 案 と 異 な り 、 申 請 の 審 査 が 一 切 行 わ れ て い な い 点 が 特 徴 で あ る 。 少 な く と も 返 戻 理 由 書 の 内 容 か ら 実 質 的 な 申 請 拒 否 処 分 ︵ 申 請 棄 却 ︶ と み る 余 地 が な い こ と は 確 か で あ る 。 も っ と も 、 行 政 庁 側 が 事 前 協 議 の 完 了 を 示 す 文 書 を 申 請 の 形 式 要 件 と 考 え て お り 、 そ の 欠 如 に よ り 不 適 法 な 申 請 と 解 し て い る と 理 解 す れ ば 、 本 件 返 戻 は 申 請 拒 否 処 分 ︵ 返 却 書 面 の ︵ 三 ︶ も 実 体 審 査 を 行 っ て い な い 趣 旨 と も 読 め る ︶ に 当 た る と す る 構 成 も 考 え ら れ な く は な い 。 し か し 、 本 件 の 事 前 協 議 は 規 程 を 根 拠 と す る も の で 、 法 令 上 要 求 さ れ て い る も の で は な く 、 そ れ ゆ え 形 式 審 査 も 未 了 で あ る と す れ ば 、 申 請 却 下 処 分 と い う 解 釈 も 問 題 が あ る よ う に 思 え る 。 事 前 協 議 完 了 を 示 す 文 書 の 追 加 提 出 を 求 め る 補 正 の 求 め と し て の 返 戻 と い う 要 素 も 本 件 返 却 書 面 か ら は 読 み 取 る こ と が 困 難 で あ り 、 申 請 却 下 処 分 の 成 立 を 認 め る に は 疑 問 が 残 る 。 ︵ 23 ︶ 前 掲 ・ 小 早 川 編 ﹃ 逐 条 研 究 ﹄ 九 六 頁 、 前 掲 ・ 塩 野= 高 木 ﹃ 条 解 ﹄ 一 五 八 頁 参 照 。 ︵ 24 ︶ 前 掲 注 ︵ 2 ︶ 椎 名 ﹁ 申 請 ・ 届 出 の 受 付 け と 行 政 手 続 法 の 規 律 ﹂ 一 一 ∼ 一 二 頁 参 照 。 29−2−147(香法2009) 一 九

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︵ 25 ︶ 解 釈 論 上 の 形 式 的 行 政 処 分 概 念 の 是 非 に つ い て は 、 前 掲 ・ 塩 野= 高 木 ﹃ 条 解 ﹄ 三 六 二 頁 以 下 参 照 。 過 去 の 裁 判 例 で み れ ば 、 産 廃 施 設 の 設 置 許 可 申 請 書 が 返 戻 さ れ た 類 似 事 案 に お い て 、 不 受 理 処 分 取 消 訴 訟 を 肯 定 し た 裁 判 例 は ﹁ 行 政 庁 が 申 請 に 対 し 、 許 否 の 決 定 を 拒 否 し て 申 請 書 を 返 戻 す る こ と は 、 申 請 者 の 行 政 手 続 上 の 権 利 乃 至 法 律 上 の 地 位 に 変 動 を 及 ぼ す 行 為 で あ る ﹂ ︵ 岡 山 地 裁 平 成 八 年 七 月 二 三 日 判 決 、 判 例 地 方 自 治 一 六 五 号 七 四 頁 ︶ と し 、 否 定 す る 裁 判 例 は ﹁ 審 査 の 拒 否 は あ く ま で 事 実 上 の 措 置 と い う ほ か な く 、 こ れ を も っ て 何 ら か の 法 的 効 果 を 伴 う 行 政 処 分 が な さ れ た と 認 め る こ と は 困 難 で あ る ﹂ ︵ 仙 台 地 裁 平 成 一 〇 年 一 月 二 七 日 判 決 、 判 例 時 報 一 六 七 六 号 四 三 頁 ・ 判 タ 九 九 四 号 一 三 二 頁 ・ 判 例 地 方 自 治 一 七 九 号 六 六 頁 ︶ と な る 。 申 請 到 達 に よ り 行 政 庁 に 課 さ れ る 審 査 応 答 義 務 は 返 戻 で 消 長 を き た す こ と が な い こ と を 考 え れ ば 、 不 受 理 ・ 返 戻 は 申 請 者 の 手 続 上 の 権 利 に 変 動 を 及 ぼ す も の で は な く 、 そ れ が 手 続 法 七 条 の 趣 旨 で あ る と 考 え ら れ る 。 ︵ 26 ︶ 前 掲 ・ 塩 野= 高 木 ﹃ 条 解 ﹄ 一 五 八 頁 、 前 掲 注 ︵ 6 ︶ ﹃ 行 政 手 続 法 の 現 場 ﹄ 一 一 九 ∼ 一 二 〇 頁 参 照 。 ︵ 27 ︶ 前 掲 ・ 塩 野= 高 木 ﹃ 条 解 ﹄ 一 五 八 頁 。 行 政 指 導 が 絡 ん だ 返 戻 の 場 合 、 一 般 的 に 拒 否 処 分 と 構 成 す る こ と は 、 行 政 庁 と の や り と り の 中 で そ の よ う に 理 解 し て い な い 申 請 者 に 訴 訟 上 の 不 利 益 を も た ら す お そ れ が あ る と の 見 解 に つ き 、 本 田 滝 夫 ﹁ 裁 判 例 の 分 析 か ら み た 行 政 手 続 法 の 課 題 ﹂ ︵ ジ ュ リ ス ト 一 三 〇 四 号 、 二 〇 〇 六 年 ︶ 四 〇 頁 参 照 。 な お 、 取 消 訴 訟 に お け る 出 訴 期 間 と 不 作 為 の 違 法 確 認 に お け る 相 当 の 期 間 と の 関 係 は あ る が 、 行 政 事 件 訴 訟 法 の 改 正 に よ り 取 消 訴 訟 の 出 訴 期 間 が 六 カ 月 に 延 長 さ れ た こ と か ら 、 問 題 と な る 場 面 は ほ と ん ど 生 じ な い で あ ろ う 。 ︵ 28 ︶ 前 掲 注 ︵ 6 ︶ ﹃ 行 政 手 続 の 現 場 ﹄ 一 二 〇 頁 。 ︵ 29 ︶ 応 答 処 分 の 留 保 に つ き 述 べ ら れ た も の で あ る が 、 前 掲 ・ 仲 ﹃ す べ て ﹄ 四 二 頁 参 照 。 実 質 的 に 申 請 に 対 す る 実 体 判 断 が な さ れ た 上 で の 返 戻 に つ い て も 妥 当 す る と 考 え ら れ る 。 ︵ 30 ︶ 病 院 開 設 中 止 勧 告 取 消 訴 訟 に お い て 勧 告 の 処 分 性 を 肯 定 し た 最 高 裁 平 成 一 七 年 七 月 一 五 日 第 二 小 法 廷 判 決 ︵ 民 集 五 九 巻 六 号 一 六 六 一 頁 ︶ 等 に み ら れ る 最 高 裁 が 処 分 性 を 柔 軟 に 解 す る 諸 判 例 に お い て も 同 様 の 問 題 が 含 ま れ る 。 ︵ 31 ︶ 教 示 の 欠 如 は あ ま り 問 題 と な ら な い 。 広 島 高 裁 平 成 一 二 年 六 月 二 九 日 判 決 ︵ 判 例 集 未 搭 載 ・ 本 文 ! 事 件 控 訴 審 ︶ で は 、 被 告 行 政 側 は 、 返 却 理 由 書 に は 承 認 拒 否 の 意 思 が 明 確 に 記 載 さ れ て い る と は い え ず 、 行 政 不 服 審 査 法 五 七 条 の 規 定 に よ る 教 示 も な さ れ て い な い こ と か ら 、 返 戻 行 為 を 承 認 拒 否 の 処 分 と 認 め る こ と は で き な い 旨 主 張 し た が 、 裁 判 所 は こ れ を 退 け 、 ﹁ 本 件 返 却 理 由 書 に は 右 教 示 が な さ れ て い な い が 、 教 示 が な さ れ て い な い こ と と 当 該 行 為 が 承 認 拒 否 の 処 分 で あ る か 否 か と は 直 接 の 関 係 が な い の で あ っ て 、 ⋮ 教 示 が な さ れ て い な い こ と を 考 慮 し て も 、 本 件 返 戻 行 為 は 本 件 各 申 請 に 対 す る 承 認 拒 否 の 処 分 と 認 め る の が 相 当 で あ る ﹂ と 二 〇 29−2−148(香法2009)

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し た 。

第 二 節 で み た よ う に 、 裁 判 所 は 、 申 請 書 の 返 戻 を 手 続 法 七 条 に 照 ら し て 厳 し く 評 価 し て お り 、 返 戻 が 認 め ら れ る の は 申 請 者 の 事 前 の 同 意 が あ る と い う 限 ら れ た 場 合 と す る 。 こ の よ う な 判 断 の 特 徴 は 、 返 戻 と 背 景 と な る 行 政 指 導 を 切 り 離 し 、 行 政 指 導 の 必 要 性 や 合 理 性 を 考 慮 す る こ と な く 、 返 戻 そ れ 自 体 の 違 法 性 を 手 続 法 七 条 か ら 端 的 に 判 断 す る と こ ろ に あ る 。 し か し 、 申 請 の 不 受 理 ・ 返 戻 に よ り 生 じ た 申 請 処 理 や 応 答 処 分 の 遅 延 に つ き 国 家 賠 償 が 求 め ら れ る 事 案 で は 、 申 請 書 の 返 戻 は 、 再 び 背 景 に あ る 行 政 指 導 と 一 体 的 に 捉 え ら れ る こ と に な る 。 返 戻 行 為 の 国 家 賠 償 法 上 の 違 法 性 を 判 断 す る 際 に 、 返 戻 を 行 政 指 導 と 一 体 的 に 捉 え 、 行 政 指 導 の 限 界 か ら 違 法 性 を 評 価 す る と い う 構 成 は 、 従 来 か ら 多 く の 裁 判 例 で み ら れ る32︵ ︶ 。 音 楽 堂 使 用 許 可 申 請 書 の 受 理 拒 否 が 争 わ れ た 事 案 で 、 大 阪 地 裁 平 成 四 年 九 月 一 六 日 判 決 ︵ 判 時 一 四 六 七 号 八 六 頁 ︶ は 、 ﹁ 申 請 者 が 行 政 の 勧 告 に 応 じ る 意 向 が な く 、 あ く ま で 当 初 予 定 し た と お り の 申 請 内 容 を 維 持 す る こ と を 明 白 に し た 場 合 に は 、 行 政 機 関 が 、 以 後 、 申 請 書 の 受 理 拒 否 を 続 け る こ と は 、 申 請 者 の 不 協 力 が 社 会 通 念 上 正 義 の 観 念 に 反 す る と い え る よ う な 特 段 の 事 情 が な い 限 り 違 法 で あ る ﹂ と し 、 控 訴 審 ︵ 大 阪 高 裁 平 成 六 年 二 月 一 日 判 決 ・ 判 時 一 五 〇 九 号 七 四 頁 ︶ も 原 審 の 判 断 を 支 持 し た33︵ ︶ 。 こ の よ う な 一 連 の 判 決 は 、 行 政 指 導 を 理 由 と す る 建 築 確 認 の 留 保 が 国 賠 訴 訟 で 争 わ れ た 最 高 裁 昭 和 六 〇 年 判 決 ︵ 最 29−2−149(香法2009) 二 一

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高村 ゆかり 名古屋大学大学院環境学研究科 教授 寺島 紘士 笹川平和財団 海洋政策研究所長 西本 健太郎 東北大学大学院法学研究科 准教授 三浦 大介 神奈川大学 法学部長.