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生活習慣病における遺伝因子と環境因子の相互関連について : アルデヒド脱水素酵素aldehyde dehydrogenase (ALDH)2の遺伝子多型における遺伝因子-環境因子相互関連の例

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全文

(1)

総 説

生活習慣病における遺伝因子と環境因子の相互関連について

ーアルデヒド脱水素酵素

a

l

d

e

h

y

d

ed

e

h

y

d

r

o

g

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a

s

e

(ALDH) 2

の遺伝子多型に

おける遺伝因子一環境因子相互関連の例

中 村 保 幸

1)

,環

慎二

2)

, 上 島 弘 嗣

3) アルデヒド脱水素酵素 aldehydedehydrogenase (ALDH)-2遺伝子多型による飲酒の健康状態への影響を提 示することによって 遺伝因子と環境因子の相互作用の重要性を例示する。まずこの遺伝子多型と高血圧 の関係について地域住民を被験者として調べた。正常型 ALDH2*l/*1遺伝子多型を有する男性において高 血圧が多かったが,女性ではこの関連を認めなかった。多変量ロジスティック解析の結果,高血圧の独立 規定因子は男女とも 年齢と肥満係数BMIであったが,アルコール消費量は,男性においてのみ高血圧の 他の独立規定因子だった。しかし ALDH2遺伝子多型は男性,女性ともに高血圧の独立寄与因子ではなか った。 ALDH2遺伝子多型と高血圧の聞の外見上の密接な関連は実際のところアルコールの消費量の差によ って説明できた。 さらにアルコール摂取量, ALDH2遺伝子多型と HDLコレステロールの聞の相互作用を検討した。欧米 人におけるアルコール摂取量とアルコール脱水素酵素 ADH3遺伝子多型の関連と比較して日本人の ALDH2 遺伝子多型では HDLコレステロール値に非常に異なった反応を示した。 ADH3遺伝子多型と異なり,アル コール摂取量が ALDH2欠損型遺伝子多型を有する被験者では HDLコレステロールを上げなかった。この ため ALDH2欠損型遺伝子多型を有する人では飲酒による心筋梗塞抑制効果は期待できないと思われる。

1

.

はじめに

遺 伝 お よ び 環 境 の 因 子 が 多 く の 疾 患 の 発 症 に 対 し て 重 要 な 役 割 を 果 た す 。 そ れ ぞ れ の 要 素 の 貢 献 の 程 度 は 疾 患 に よ っ て 異 な る 。 図 lで は 種 々 の 疾 患 に お け る そ れぞれの要素の貢献の程度を示す。たった1つの遺伝情 報 の 変 異 が 特 定 の 遺 伝 子 の 障 害 を も た ら す フ ェ ニ ー ル ケトン尿症 phenylketonuriaの よ う な , い わ ゆ る 単 一 遺 伝子疾患の場合に,遺伝因子の貢献は環境の因子よりは るかに重要である。このような病態は図 1の最上部に置 かれる。一方感染症の場合に図1の下部に置かれる。た とえばインフルエンザのような疾患では,遺伝因子の貢 献は環境因子であるインフルエンザウイルスより重要で は な い 。 し か し 単 一 遺 伝 子 疾 患 の 場 合 に さ え , 環 境 因 子が若干の役割を果たす。例えば, 日本では80,000の 出生児に対して l人発生し, ヨーロッパや合衆国で更に 頻度の高いフェニールケトン尿症 phenylketonuriaでは, 必 須 ア ミ ノ 酸 : フ ェ ニ ー ル ア ラ ニ ン phenylalanineの代 謝酵素遺伝子に欠損を来し,重篤な精神遅滞を起こす。 Phenylalanineが 患 児 の 血 液 と 尿 に 蓄 積 し , そ の 結 果 精 1)京都女子大学家政学部生活福祉学科教授 2) 甲賀病院内科医長 3) 滋賀医科大学福祉保健医学講座教授 神遅滞,てんかん発作,振戦や行動障害を起こす。多く の国が新生児のためにフェニールケトン尿症検査を採用 し て い る 。 検 査 が 陽 性 の 幼 児 に 対 し phenylalanine摂 取 量を制限することによって,患児の代謝異常を修正する ことが出来る。この対策によりフェニールケトン尿症の 特徴である精神発達障害を防ぐことが出来る。フェニー ル ケ ト ン 尿 症 は 遺 伝 子 障 害 で あ る と 考 え ら れ る け れ ど も,実際は遺伝因子と環境因子相互間により進展する。 図1の下方ある感染症の場合にでも,遺伝因子が若干 の役割を果たす。インフルエンザの流行の聞にさえ,一 部の人々がまったく発症しない。少なくともこのような 場合の一部で,強い免疫機構のような遺伝因子,あるい は親から継承された保護機構がインフルエンザ発症を阻 止するのであろう。 高血圧,糖尿病,動脈硬化症やがんなどの多くの慢性 疾患は多遺伝子疾患と呼ばれる。このタイプの疾患では, 多数の遺伝と環境の因子の組み合わせによって起こされ る。このタイプの大部分の疾患では適切な条件で環境因 子をコントロールすることによって,疾患発現が外見上 明白にならない。このため, このタイプの疾患は「生活 習慣病」と呼ばれる。 ア ル コ ー ル 代 謝 に 重 要 な 2つ 酵 素 の 一 つ で あ る ア ル デヒド脱水素酵素 aldehydedehydrogenaseの遺伝子変異

(2)

単一遺伝子疾患

〈フェニルケトン尿症など〉

多遺伝子疾患

〈高血圧などの生活習慣病〉

感染症

図 1 遺伝因子と環境因子の相互作用 すべての疾患は遺伝因子と環境因子がからみあって発症 するが,それぞれの因子の関与程度は疾患によって異な る。 は北東アジア人以外に存在しないが 本項ではこの遺伝 子変異と関連する健康状態の変化を例示することによっ て,遺伝因子と環境因子間の相互関連の重要性に焦点を 当てる。このようにある遺伝子多型の出現が地理的・人 種的に限定される理由は何千年以上前に現代人の進展と 拡大がどのように起こったかに関連している。

1

1

.

現代人の進展と拡大 およそ 100,000年前の旧世界ではヒト科動物は形態学 的に多様な種族が多数共存していた。アフリカと中東で はホモ・サピエンスhomosaPiensが, アジアではhomo erectusホモ・エレクトゥス Qava) と, シナントロプス・ ペキネンシス Sinan的ropuspekinensis (中国);そしてヨ ーロッパでは,ネアンデ、ルタール人Neanderthalensis (図 2) がし、た。しかし 30,000年前までにこの多様性は 消失し, ヒトが形態上も行動上も近代的なかたちに発展 していった。この変遷の課程に関しては 2つの学説があ り , 2学説間に激しい議論がある:一学説では起源が多 地域にあり,すべてが現代人と連続しているとする。別 の学説は単一起源を唱える。今日, DNA遺伝学におけ る最近の進歩によっての「現代人の起源説:アフリカ起 源説」が有力になってきた。現代人のDNA,特にミト コンドリアと呼ばれる細胞小器官にだけ存在している ミトコンドリア DNA (mtDNA)の研究により,人種聞 の遺伝子変異は比較的小さくl)2), ヒトは驚くほど同種 であることが明らかになっている。現代人における人種 間の類似性が高いこととは対称的に,我々に最も近い種 族であるチンパンジーの間での遺伝子変異ははるかに大

人類の祖先:アフリカ単一起源説

現代人 │ ヨ 一 日 人

II

アジア人 20万年前

X

X

X

図2 ホモ・サピエンスhomosapiens, homo erectus(Java), シナントロプス・ペキネンシスSinan幼ropuspekinensis(中国)とネアン デ ル タ ー ル 人Neanderthalensis

(3)

きい3)。さらに,同一集団内のチンパンジ一間の遺伝子 の変異は, ヨーロッパ, アジア,そしてアフリカの現代 人間の変異よりはるかに大きい。ホモ・サピエンス:ア フリカ起源説を支持して, CannとWilsonはmtDNAに お け る 遺 伝 子 変 異 が 最 も 高 頻 度 で あ る の が ア フ リ カ 人 の聞に存在することを示した1)。これはホモ・サピエン スが最初にアフリカで発生したことを意味している。つ まりアフリカ人は突然変異の結果としての遺伝的多様性 を蓄積する時間がより長いかったことを意味する。彼ら はさらにアフリカ住民と他の現代人たちの間の遺伝変異 の程度を参照して,ホモ・サピエンスがアフリカにおい て今から 100,000から 400,000年前に誕生したことを算 出した。現代人の聞の低量の遺伝子相違は,我々の祖先 は比較的小集団のホモ・サピエンスであったことを示唆 する。 RogersとHarpendingによる mtDNA解 析 の 結 果 も10,000'"'-'50,000人 が 構 成 す る ホ モ ・ サ ピ エ ン ス の 小 集団が, 50,000'"'-' 100,000年 前 に ア フ リ カ か ら 移 動 し た という説を支持した4)。最近いくつかのネアンデルター ル人の骨格からのDNAが成功裏に分離された5)。 特 に mtDNAの 注 意 深 い 分 析 や 若 干 の 核DNA分析によりネ アンデ、ルタール人のDNAが我々自身のものと非常に異 図 3 人類祖先の進化と拡散 なっていることを明らかにした。ネアンデルタール人と 現代人におけるDNAの聞の差の度を算定すると, これ らの2つの集団は400,000年以上前に分離したことを示 唆する。 図3で 描 か れ る よ う に , 現 代 人 が ア フ リ カ か ら , 中 東,アジア, ヨーロッパに広がって,そして先住者に取 って代わった。従ってアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2) の突然変異は北東アジア人が他のアジア人から分かれた 67,000年前より後に起こったことになる。 1 11.アルコール代謝酵素 2つ の 酵 素 シ ス テ ム , つ ま り ア ル コ ー ル 脱 水 素 酵 素 (ADH)とアルデヒド脱水素酵素 (ALDH)がアルコー ノレ代謝における主要な役割を果たす6)。クラス 1ADH アイソザイムは, ADH1, ADH2とADH3遺伝子によっ てコード化されている。これらはエタノールに対して低 いMichaelis・Menten定 数 (Km)を持つ(すなわち代謝 能力が高い)0ADH2とADH3にはさらにアイソザイム があり,異なった特性を示す多型がある(図4)6)。 ADH によってのエタノールが分解され,アセトアル デヒドが出来, これが速やかにALDHによって代謝さ ミトコンドリアDNAを解析研究したWilsonの「アフリカ単一起源説」によると,現代人の祖先,ホモ・サピエンス・サピエ ンスは約20万年前アフリカで誕生したとされる。現代人がアフリカから,中東,アジア, ヨーロッパに広がって,そして先住 者に取って代わった。従ってアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)遺伝子の突然変異は北東アジア人が他のアジア人から分かれ た67,000年前より後に起こった事になる (ALDH2の突然変異が存在する地域を#で示した)。

(4)

Ethanol CH

3

CH

2

0H

ADHl

2

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・ー

Acetaldehyde CH

3

CHO

ALDHl

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3

COOH

図4 アルコール代謝酵素 2つの酵素システム,アルコール脱水素酵素 (ADH) と アルデヒド脱水素酵素 (ALDH) がアルコール代謝にお ける主要な役割を担う。 ADHによってのエタノールが 分解され,アセトアルデヒドが出来, これが速やかに ALDHによって代謝され酢酸になる。 れ 酢 酸 に な る 。 肝 臓 に は 多 数 の 形 のALDHがあるが, 第12染色体上のALDH2遺 伝 子 に よ っ て コ ー ド さ れ た ミトコンドリア酵素はアセトアルデヒドに対して非常 に低いKmを有する7)8)0ALDH2遺 伝 子 は 第12染 色 体 の 長 腕 上 に あ る が , 低 い 代 謝 機 能 の ア イ ソ ザ イ ム は エ クソン 12のポジション 1510におけるG (グアニン)が A (アデニン)に一塩基突然変異が起こったために, グ ルタミン酸を決める GAAの配列が AAAとなり,その 結 果 の リ シ ン へ と 変 異 す る た め に 起 こ る ( 図5)9)。 北 東アジア住民の半数近くがこの酵素に欠損があり,飲酒 後血中アセトアルデヒドが上昇して顔が赤くなると共に 他の症状を起こす10)11)0 ALDH2欠損にはヘテロ接合体 ALDH2*1/*2とホモ接合体ALDH2*2/*2がある。

I

V

.

ALDH2

遺伝子多型と高血圧 大量から中等量の飲酒は高血圧や早朝の血圧上昇と関 連することが知られている12)ー24)。 そ の 機 序 に つ い て 不 明な点が多い。日本人を含めての多くの北東アジア人が 飲酒により動停,頭痛,吐き気,幅吐と冷汗を来すいわ ゆる「東洋人の顔面紅潮」と呼ばれる特有の症状を呈す る。飲酒によって体内に入ったエタノールはアルコール 脱水素酵素によってアセトアルデヒドに代謝され,さら にアルデヒド脱水素酵素によって速やかに酢酸と水に分 解される。ところがアルデヒド脱水素酵素のなかで能力 が強いアルデヒド脱水素酵素2 (ALDH2)は北東アジ ア人の多くが突然変異による欠損酵素を持っている。北 東アジア人のアルコールに対する過敏症は, ALDH2欠 損のため飲酒後アセトアルデヒドが効率よく代謝されな いため血中に蓄積することによって起こる9)11)25) 26)。日

L

GAAGlu AAALys

(ALDH2*1) (ALDH2*2)

図 5 ALDH2遺伝子のエクソン ALDH2遺伝子は第 12染色体の長腕上にあるが,低い代 謝機能のアイソザイムはエクソン 12のポジション 1510 におけるG (グアニン)が A (アデニン)に一塩基突然 変異が起こったために グルタミン酸を決めるGAAの 配列が

AAA

となり,その結果のリシンへと変異するた めに起こる。北東アジア住民の半分近くがこの酵素欠損 があり,飲酒後,血中アセトアルデヒドが高くなり顔が 赤くなると共に他の症状を起こす。 本人や他の北東アジア人においてのいくつかの疫学研究 がALDH2遺伝子多型と血圧との聞の関連について研究 した。しかし,都市住民を被験者とした 1研 究27)以 外 の多くの研究では職場の比較的少数の男性を被験者とし たものであった28)-31)。地域住民を被験者とした大規模研 究がなかった。我々は地域住民を被験者として遺伝子多 型を解析することによって 日本人でのALDH2遺伝子 多型と高血圧との関連を検討した32)。 1.被験者と方法

)被験者 滋賀県信楽町はおよそ15.000の人口を有する農林業を 主とする地域である。 1999年に住民検診を行った2,892 人の住民のうち2,395人から遺伝子研究についてのイン フォームド・コンセントが得られ 男性917人(平均年 齢58:t15.7) と女性1.478人 ( 平 均 年 齢56.3:t15.6)に つ い て 検 討 す る こ と が 出 来 た 。 し か し 遺 伝 子 多 型 の 同 定不能のため274人(男性46人 女 性44人),あるい は 脂 質 治 療 薬 服 用 の 184人 ( 男 性45人 , 女 性139人) が 除 外 さ れ た 。 脂 質 治 療 薬 服 用 者 を 除 外 し た の は 別 に ALDH2遺伝子多型と HDLコレステロール値について も検討するためである。どの被験者も冠動脈疾患を示す 心電図変化を有していなかった。この研究は滋賀医科大 学の倫理委員会によって承認された (No.11・15,1999)。

2

)

遺伝子多型の分析 DNAを白血球層から抽出し Takeshitaらの報告した

(5)

方法でポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)を用いてALDH2 遺伝子多型を決定した33)。

3

)

検診 被験者は坐位にて標準的な血圧計を用いて,少なく とも 5分間安静の後,収縮期血圧と拡張期血圧を熟練看 護師によって2回測定した。血圧値は2回の平均を用い た 。 今 回 高 血 圧 の 定 義 弘 収 縮 期 血 圧 孟140mmHg,ま たは拡張期血圧主90 または降圧薬の服用のいずれかが あることとした。肥満係数

(

B

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=

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mass

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)

を 体重 (kg) /身長 (m)の2乗で計算した。

4

)

アルコール摂取量についての情報 アンケートを用いて,熟練看護師がそれぞれの被験者 からアルコール摂取量についての情報を得た。 1週間平 均の飲酒頻度と摂取量を集計し 1日平均のアルコール 摂取量を計算した。そして飲酒量単位を欧米の研究と同 様に設定した。飲酒量2単位とは酒 1合(エタノールの 23 g), 350 mlのビール2本, ウイスキーシングル2杯, ワインをグラス(180ml) 2杯と定義した。 2.高血圧研究の結果 1 )背景因子 表 1,2に 男 女 の 背 景 因 子 を 示 す 。 遺 伝 子 多 型 ALDH2*1/*1, *1/牢2と*2/*2の 頻 度 は 男 性 で そ れ ぞ れ 45.8%, 46.0%, 8.2%,女性でそれぞれ, 50.6%, 42.0%, 7.4%であり,性差はなかった。男性ではALDH2遺伝子 多型により体重,

BMI

,血清トリグリセリドおよび飲酒 関連の変数において有意な相違を認めた。つまり,他の 遺伝子多型と比較してALDH2*1/* 1遺伝子多型の男性の 飲酒量が最も多く,また最も多い飲酒習慣があった。さ らに体重,

BMI

, トリグリセリドはこの群でより高かっ た。男性の年齢,身長,総コレステロール値と HDLコ レステロール値,および喫煙率は3遺伝子多型群間で差 がなかった。 女性では, ALDH2*2/*2遺 伝 子 多 型 が 他 の 群 よ り 年 齢が少し高かった。総コレステロール値はALDH2*1/* 1 遺伝子多型でより低くかった。男性に比べて女性では 飲酒量と飲酒習慣の頻度は少なかったが,男性と同様に ALDH2*1/*1遺伝子多型の女性が他の遺伝子多型の女性 たちに比べて飲酒量と飲酒習慣の頻度が多かった。

2

)

高血圧 図6にALDH2遺 伝 子 多 型 ご と の 高 血 圧 有 病 率 を 示 す。男性では正常型ALDH2*lj*1遺伝子多型において 高血圧有病率が高かったが,女性で‘は遺伝子多型聞に 表1 ALDH2遺伝子多型ごとの背景因子(男性) 遺伝子多型 *1/*1 *1/*2 *2/*2 P N (Total=871) 404 393 74 年齢(歳) 58.4:t15.4 58.9:t15.3 55.1土17.5 0.2 BMI (m2) 23.0:t3.0 22.5:t2.9 22.1 :t2.7 0.02 総 コ レ ス テ ロ ー ル (mg/dl) 184:t35 184:t32 189:t32 0.5 ト リ グ リ セ リ ド (mg/dl) 160:t 118 142:t88 130:t71 0.008 HDL (mg/dl) 54:t 15 52:t 14 50:t 14 0.2 飲酒量(g/日) 27.3:t20.0 17.9:t21.3 0.9:t4.2 く0.0001 飲酒習慣 86.6% 71.0% 5.5% <0.0001 喫煙者 50.0% 49.2% 52.7% 0.9 表2 ALDH2遺伝子多型ごとの背景因子(女性) 遺伝子多型 *1/*1 *1/*2 *21*2 P N (Total = 1424) 717 602 105 年齢(歳) 56.2:t15.9 56.1:t 15.4 59.3:t 13.6 0.1 BMI (m2) 22.6:t3.1 22.5:t3.3 22.6:t3.1 0.9 総 コ レ ス テ ロ ー ル (mg/dl) 196:t35 198:t34 206:t32 0.01 TG (nig/dl) 119:t75 119:t70 119:t71 0.9 HDL (mg/dl) 61:t 14 60:t 14 61:t 16 0.1 飲酒量(g/day) 4.5:t7.7 1.5:t5.0 0.1:t1.1 <0.0001 飲酒習慣 37.2% 15.4% 1.0% <0.0001 喫煙 5.7% 7.0% 11.4% 0.1

(6)

高血圧有病率の差はなかった。男性の収縮期血圧と拡張 期血圧を図7に示す。両血圧が他の遺伝子多型に比べて ALDH2*1/*1遺伝子多型の男性で高かった。これらの違 いは女性では認められなかった(図的。表3に多変量 ロジスティック解析結果による高血圧の独立規定因子を 示す。男女とも年齢と BMIが高血圧の独立規定因子で あった。飲酒量は,男性において高血圧の独立規定因子 であったが,女性ではそうではなかった。 ALDH2遺伝 子多型は男性,女性とも高血圧の独立規定因子ではなか った。

男性 (χ2=12.1

TO.002)

高血圧 (0=380) 正常血圧 (0=489) 0 高血圧 (0=545) 正 常 血 圧 (0=878) 0 20 40 20 40 60 80 100 (0/0) 60 80 100 (0/0) 図6 ALDH2遺伝子多型ごとの高血圧有病率 男性では正常型ALDH2*l/*1遺伝子多型において高血圧 有病率が高かったが,女性では遺伝子多型聞に高血圧有 病率の差はなかった。 (mmH 140 130 120 11

0

100

収縮期血圧

1

*

/

1

*

1

*

/

2

*

2

*

/

2

*

(n=314) (n=321) (n=74)

拡張期血圧

80 70 60 50

1

*

/

1

*

1

*

/

2

*

2

*

/

2

*

図 7 ALDH2遺伝子多型ごとの収縮期血圧と拡張期血圧(男 性) 両血圧とも他の遺伝子多型に比べてALDH2*l/*1遺伝子 多型の男性で、高かった。降圧薬服薬者は除外した。

V

.

アルコール摂取量,

ALDH2

遺 伝 子 多 型 と

HDL

コレステロール{直

欧米人ではアルコール脱水素酵素ADH2遺伝子多型 の欠損型は比較的まれであるが 40---50%の欧米人が ADH3に変異を有することが知られている6)。最近,欠 損型アルコール脱水素酵素ADH3遺伝子多型を有する 適量飲酒男性ではHDLコレステロール値が高く,心筋 梗塞の発症率が低いとの報告があった(図9)九 一 方 北東アジア人に多いALDH2遺伝子多型と HDLコレス テロール値,および飲酒の関係は知られていない。そ れで,我々はALDH2遺伝子多型 アルコール摂取量と HDLコレステロール値との間の関連を調べた刻。 1 . 方 法 血 清 コ レ ス テ ロ ー ル の 測 定 非絶食血液を採血し 血清脂質を精度管理された1研 究所で測定した。

収縮期血圧

(P=O.9) (mmHg) 140 130 120 100 1合11* 1*/2* 2勺2* (n=575) (n=479) (n=76)

拡張期血圧

(P=O.7) (mmHg) 90 80 70 60 50 ド11* 1*/2* 2*/2* 図8 ALDH2遺伝子多型ごとの女性の収縮期血圧と拡張期血 圧 遺伝子多型と血圧に関連はなかった。降圧薬服薬者は除 外した。 表3 多変量ロジスティク解析による高血圧独立規定因子 男性 女性 年 齢 Pく0.0001 P<O.OOOl BMI <0.0001 P<O.OOOl 飲酒量 P=0.03 P=0.5 喫煙 P=0.5 P=0.5 ALDH2(1*/1*) : 遺:((伝11**子//22**++型22**//22*) P=O.1 P=0.3

(7)

ADH3遺 伝 子 多 型 と 飲 酒 、 心 筋 梗 塞 リ ス ク 制 1.2 鑑

1

d

0.8 恩 0.6

0.4 掻 0.2

口く 1drink/day

・ミ

1drinksl day yl yl yl y2 y2y2 AHD3遺 伝 子 多 型 ADH3遺 伝 子 多 型 と 飲 酒 、 HDLコ レ ス テ ロ ー ル 値 但l 三 52

I

50

lト48

~

46 544 242

40 口く 1drinkl day ・ミ 1drinks/ day yl yl yl y2 y2y2 ADH3遺 伝 子 多 型 図9 ADH3遺伝子多型と飲酒, HDLコレステロール値,心筋梗塞リスク(文献 7より) 上図はADH3遺伝子多型ごとの飲酒による心筋梗塞リスク(相対危険度)の影響を示す。飲酒量が 1日 1飲酒単位未満で AHD3遺伝子多型が正常型 (ylyl) 男性の心筋梗塞リスクを基準 1としたときの相対危険度を表している。飲酒量が 1日 l飲 酒単位以上のylyl遺伝子多型男性 (P=0.04),欠損ヘテロ接合体 (yly2) 遺伝子多型男性 (P=0.04),欠損ホモ接合体 (y2y2) 遺伝子多型男性 (Pく0.001) において有意に心筋梗塞相対危険度が低下している。 下図はADH3遺伝子多型ごとの飲酒による多変量調整 HDLコレステロール値(善玉コレステロール)の影響を示す。飲酒量 が1日l飲酒単位未満で AHD3遺伝子多型が正常型 (ylyl)男性に比べ飲酒量が 1日1飲酒単位以上の欠損ヘテロ接合体 (yly2) 遺伝子多型男性 (P=0.004),欠損ホモ接合体 (y2y2) 遺伝子多型男性 (P=0.03) で有意に多変量調整 HDLコレステロール値 が増加している。 2. 結 果 HDL-,総コレステロール値についての結果 1日に2単 位 以 下 の 飲 酒 を す る 男 性 問 で は , 調 整 HDLコレステロール値(年齢,喫煙状態, BMI, HbAlc で補正)は3つの ALDH2遺伝子多型間で有意な差はな か っ た ( 表1) 。 し か し 飲 酒 量 が1日2単 位 以 上 の 男 性 で はALDH2*l/刊を有する男性が ALDH2*l/*2を 有 す る 男 性 よ り 調 整HDLコレステロール値が有意に高か った (56:t1対 51土1

m

g/dl,平均:tSE; Pく0.0001) (図 10)。 こ れ ら の 相 違 は ALDH2*2j*2遺 伝 子 多 型 で は 見 ら れなかった。 1日に2単位以下の飲酒をする男性間では,調整総コ レ ス テ ロ ー ル 値 はALDH2*lj*1を 有 す る 男 性 に お い て ALDH2*2j*2を有する男性より低かった(181:t3対 195 :t4

m

g/dl ; P =0.001) 0 1日に少なくとも 2単位飲酒し た男性では調整総コレステロール値はALDH2*l/刊を有 する男性においてALDH2*lj*2を有する男性より低かっ た(181:t2対 187:t3mg/dl ; P =0.031) (図 11)。 1日飲酒量 0.5単 位 以 下 の 女 性 で は , 調 整 HDLコレ ス テ ロ ー ル 値 はALDH2*lj*1遺 伝 子 多 型 を 有 す る 群 が ALDH2*l/*2遺伝子多型を有する群より高かった (60:t l対 58:t1 mg/dl ; P=0.04) (図12)。 ま た ALDH2*l/*1 遺伝子多型を有する群の調整総コレステロール値が他の

(8)

HDL(mgldl)

M

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(再構顧│

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'

・1・:・:・:・:・翻繭醐│ 白骨11*1

囲 **1211**22 35 30 N 121 213 66 257 167 く2drinks/day >=2 drinks/day 図10 ALDH2遺伝子多型と飲酒のHDLコレステロール値に対する影響(男性) 1日に2単位以下の飲酒をする男性問では,調整HDLコレステロール値(年齢,喫煙状態, BMI, HbA1cで補正)は3つの ALDH2遺伝子多型間で際立って異なっていなかった。一方,飲酒量が1日2単位以上の男性ではALDH2*l/*1を有する男性が ALDH2*1!*2を有する男性より調整HDLコレステロール値が有意に高かった (56:t1対51:t1 mgldl,平均:tS.E.; Pく0.0001)。 これらの相違はALDH2*21*2遺伝子多型では見られなかった。数字のP値は同じ飲酒量カテゴリー内でALDH2*1/*1遺伝子多 型の例との比較による。一方,同じ遺伝子多型内で飲酒量2単位未満か以上で比較した値は*(Pく0.05)と#(有意なし)で示す。 Genotype口遺伝子多型

TC (

m

g

/

d

l

)

M

e

n

210 200 190 180 170 160 150 N 121 213

A

L

D

H

2

G

e

n

o

t

y

p

e

*11*1 回世11*2 闘士2/*2 < 2 drinks/day 、 刷 。 ' et ' n u・a a w v Jw 周 , , , , ‘ 、 正 U J 山 l ・ l 伊 - E E G . , f u

-¥ / 珂 , f

, 、

J 内 , , M fhu r h U 図11 ALDH2遺伝子多型と飲酒の総コレステロール値に対する影響(男性) 1日に2単位以下の飲酒をする男性問では,調整総コレステロール値はALDH2*1/*1を有する男性においてALDH2*2j*2を有 する男性より低かった(181:t3対195:t4mgldl ; P=O.OOl)o 1日に少なくとも2単位飲酒した男性では調整総コレステロー ノレ値はALDH2*l/*1を有する男性においてALDH2*l/*2を有する男性より低かった(181:t2対187:t3mgldl ; P=0.031)。数 字のP値は同じ飲酒量カテゴリー内でALDH2*l/*1遺伝子多型の例との比較による。一方,同じ遺伝子多型内で飲酒量2単位 未満か以上で比較した値は*(P<0.05)と # (有意なし)で示す。 TC=総コレステロール値, Genotype=遺伝子多型

(9)

群 よ り 低 か っ た ( l94:t2対 199:t2対 202:t3 mgldl ;そ れぞれ P=0.003,0.01)(図13)。女性のALDH2*l/*2遺 伝子多型の群では飲酒量を1日平均 0.5単 位 で 2分 割 す ると,多い飲酒量群において調整HDLコレステロール 値 が 有 意 に 高 値 で あ っ た (0.5単 位 未 満 群 :58:t 1対 0.5

Women

HDL(mg/dl) 70 P=O 7P. 60 50 45 40 35 30 N 437 47 94 く0.5drinks/day 218 単 位 以 上 群 :63:t2 mgldl, P<0.05) し, ALDH2* l/*1 遺伝子多型の群では多い飲酒量群において調整総コレス テロール値が有意に低値であった (0.5単 位 未 満 群 :199 :t2対 0.5単 位 以 上 群 :185:t4 mgldl, Pく0.05)(図12, 13)

* #

LDH2Genotype

u

合11*1 白 骨11*2 園 *2/士2 69 2 >= 0.5 drinks/day 図12 ALDH2遺伝子多型と飲酒のHDLコレステロール値に対する影響(女性) 1日飲酒量0.5単位以下の女性では,調整HDLコレステロール値はALDH2*lj*1遺伝子多型を有する群がALDH2*lj*2遺 伝 子多型を有する群より高くかった (60:t1対58:t1mgldl ; P=0.04)0 ALDH2*lj*2遺伝子多型の群では飲酒量を1日平均0.5単 位 で2分割すると,多い飲酒量群において調整HDLコレステロール値が有意に高値であった (0.5単位未満群:58:t 1対0.5単 位以上群:63:t2 mgldl, Pく0.05)。 数字のP値は同じ飲酒量カテゴリー内でALDH2*1j*1遺伝子多型の例との比較による。一方,閉じ遺伝子多型内で飲酒量0.5 単位未満か以上で比較した値は*(Pく0.05)と # (有意なし)で示す。 図13 ALDH2遺伝子多型と飲酒の総コレステロール値に対する影響(女性) ALDH2*1j*1遺伝子多型を有する群の調整総コレステロール値が他の群より低かった(193.6:t2.2対199.4:t2.1対201.8:t3.3 mgldl;それぞれP=0.003,0.01)0 ALDH2*lj*1遺伝子多型の群では多い飲酒量群において調整総コレステロール値が有意に低 値であった (0.5単位未満群:199土2対0.5単位以上群:185:t4 mgldl, Pく0.05)。 数字のP値は同じ飲酒量カテゴリー内でALDH2*1j*1遺伝子多型の例との比較による。一方,同じ遺伝子多型内で飲酒量0.5 単位未満か以上で比較した値は*(Pく0.05)と # (有意なし)で示す。

(10)

HDL

コレステロール値が

8

0m

g

l

d

l

以上の場合

CETP

(コレステロール・エステル転送タンパク)遺伝子変異 が想定出来るため,それらの被験者を除外して統計解析 を行ったが,解析結果に本質的差違は生じなかった。

V

I.考察

1

.

ALDH2

遺伝子多型と高血圧 飲 酒 の 影 響 を 考 慮 に 入 れ な い と き , 男 性 に お い て

ALDH2

遺伝子多型がこれまで我々が検討した全ての遺 伝子多型(アンジオテンシン変換酵素I/D多型, アンジ オテンシノーゲン

M

2

3

5

T

多型,

α

-

a

d

d

u

c

i

nG

l

y

4

6

0

T

叩 多 型など)の中でもっとも高血圧との関連が強かった。し かしこの関連は女性ではまったく認められなかった。 アルコール摂取量を考慮した多変量ロジスティック解 析によると

ALDH2

遺伝子多型が男性における高血圧の 独立寄与因子ではなくなった。高血圧の独立規定因子は 男女ともに年齢と BMIだった。飲酒は,男性では高血 圧の独立規定因子の一つだったが,女性では関連がなか った。飲酒習慣を持つ女性が少数であったので,アルコ ール飲酒量は単変量分析によってさえ高血圧と関連はな かった。以上の所見は遺伝因子と環境因子がどのように 相互作用するかを示すために良い例である。

ALDH2

遺 伝子多型と高血圧の間の外見上の密接な関連はアルコ ールの消費量による調整にて消失し,高血圧は飲酒を 介して発現することを再確認した12)ー23)。男性に於いて

A

L

D

H

2

*

l

j

*

1

遺伝子多型の被験者にもっとも多くの高血 圧症があったのは この遺伝子多型の男性が他の遺伝子 多型の男性より飲酒習慣を有する人が多く,飲酒量も多 かったためである。飲酒習慣のない

A

L

D

H

2

*

1

/

ペ 遺 伝 子 多型の男性の高血圧有病率は飲酒習慣のない他の遺伝子 多型の男性と変わりがなかった。栄養摂取状態,運動習 慣,飲酒習慣などを含んだ生活習慣情報を詳細正確に把 握することが遺伝子多型と高血圧などの表現形との聞の 関連を研究する際非常に重要である。

2

.

ALDH2

遺伝子多型と

HDL

コレステロール 今回の研究で

HDL

コレステロール値に対する適度の 飲酒の有益な効果,すなわち

HDL

コレステロール値の 上昇が

A

L

D

H

2

*

l

j

*

1

遺伝子多型の男性で最も顕著であ ることを示した。この所見は

H

i

n

e

s

らの

ADH3

遺伝子 多型と適量飲酒,

HDL

コレステロール値,および心筋 梗塞リスクの関連についての研究結果と顕著なコント ラストを示す7)0

H

i

n

e

s

ら研究では代謝効率の悪い欠損

ADH3

のホモ接合体被験者では他の遺伝子多型を有する 男性に比べ適量飲酒により

HDL

コレステロール値がよ り高くなり,心筋梗塞発症率をも減少させた。我々の今 回の研究では心筋梗塞リスクと飲酒の効果を調べること は不可能だが,欠損

ADH3

遺伝子多型にみられたような 飲酒による心筋梗塞予防作用は欠損

ALDH2

遺伝子多型 では期待出来ない可能性がある。 飲酒が

HDL

コレステロール値の増加を来すことは確 立している35)。しかし,アルコールがなぜ

HDL

を増や すかについての機序については確立していない。飲酒量 がアルコール換算で

8

0

'

"

'

-

'

1

7

7

gI日の大酒家における研究 では

HDL

コレステロール値の増加はアルコールにより コレステリル・エステル転送タンパク

(

C

E

T

P

)

の量と 活性が低下することが原因であることを示唆した36)。し か し 3週間禁酒の後に4週間の適量飲酒 (0.5glkg体 重訂日)の効果を調べた

1

研究では

CETP

活性は変化し なかったが,

HDL

コレステロール値は明らかに上昇し た問。この研究では飲酒によるリポ蛋白リバーゼ活性増 加が

HDL

コレステロール値上昇の一因になったことを 示唆した。従って

CETP

は適量飲酒者での飲酒による

HDL

コレステロール値上昇の機序ではない可能性があ る。いかなる機序が

HDL

コレステロール値上昇に関与 したとしても,欠損

ALDH2

遺伝子多型において血中ア セトアルデヒド値が上昇するとその作用が異なってくる と考えられる。最近の研究で、は飲酒によりアポリポ蛋白

A

l

の輸送率が増えるため

HDL

コレステロール値が上昇 するとの報告もある37)38)。

CETP

遺伝子欠損が日本人に高頻度に存在し, このた め

HDL

コレステロール値が上昇するとの報告がある。 金 沢 地 域 の 研 究 で

2

つ の 突 然 変 異 :

i

n

t

r

o

n

1

4

G

(1

+

)

から

G

への変異とエクソン

1

5

D

4

4

2

G

変異のヘテロ 接 合 体 頻 度 は

2

7%

であった39)。 ま た 中 国 人 で は そ の頻度が

4

'

"

'

-

'

6

%

であると報告されている40)0

CETP

遺 伝子欠損と冠動脈リスクとの関連については議論が多 い。

CETP

遺伝子欠損例で心筋梗塞が増加したとの報告 や41),反対にリスクが低下したとの報告がある42)-44)。本 研究では

HDL

コレステロール値

8

0m

g

l

d

l

以上の例を除 外した解析でも同様の結果が得られたので,本研究の所 見には

CETP

欠損が関与しないことを示した。しかし

ALDH2

遺伝子多型と

CETP

遺伝子多型の相互関連につ いては今後の検討が必要であろう。 北東アジア人には高頻度に欠陥

ALDH2

遺伝子多型が 存在する10)11)。飲酒後欠損

ALDH2

遺伝子多型を有する 人は血中アセトアルデヒド濃度が上昇し,顔面紅潮その 他の症状を来す。欠損

ALDH2

遺伝子多型例では飲酒習 慣が少なく,このためアルコール中毒患者とアルコール 性肝障害の発症が少ないとの報告がある初制。しかし今 回の研究では,

A

L

D

H

2

*

l

j

2

遺伝子多型男性の

44%

が毎

(11)

日2飲酒単位以上を飲んでいた。アセトアルデヒドの代 謝能力が不十分な人における飲酒は心筋梗塞のリスクが 増加する可能性があるばかりでなく,食道や大腸・直腸 の癌が増加するとの報告もあるので6)46),下戸にも飲酒 を強要するというわが闘の社会習慣は改善すべきと考え る。 他の研究の所見と同様に,我々の研究でも女性では飲 酒習慣と飲酒量が男性に比べて有意に少なかった7)。そ のために,女性での適量飲酒の境界値を1日0.5飲酒単 位の飲酒とした。女性での所見は男性に比べて少し異な っていたが,欠損ALDH2遺伝子多型例での飲酒による HDLコレステロール値の影響は欠損 ADH3遺伝子多型 の場合とは異なり利点がない点においては男性と同様で あった7)。 他のアルコール代謝酵素の遺伝子多型についても検討 する必要がある。欠損ADH2遺伝子多型が日本人に高 頻度存在することを知られている。報告によると日本人 の85%が欠損 ADH2アレルを有するという47)。従って 本研究の被験者も大多数が欠損ADH2アレルを有した と思われる。

参 考 文 献

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