大豆アレルギーの多様性と味噌の低アレルゲン性の検証
誌名
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan
ISSN
09147314
著者
森山, 達哉
巻/号
106巻10号
掲載ページ
p. 645-655
発行年月
2011年10月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所大豆アレルギーの多様性と味噌の低アレ
ルゲン性の検証
近年,花粉症,ア卜ピ一性皮膚炎等のアレルギー症や食物アレルギーが増加し,その治療法のために原因 究明の研究が精力的に行われている。中でも大豆アレルギ一等の食物アレルギーについて抗原蛋白質が同定 されるなど研究が進んでいる。近年の研究によってアレルギ一発症機構からクラス1,クラス2の食物アレ ルギーが存在することがわかってきた。味噌 醤油,納豆等のわが国の伝統発酵食品と大豆アレルギーとの 関連性が注目されているが,アレルゲン蛋白質の消長に関する研究が進んでいる。本解説では,食物アレル ギー研究をご専門とする著者に,最新の研究成果の一端を紹介していただくとともに食物アレルギーの多様 性と味噌のアレルゲン蛋白質の低減化について分かり易く解説していただいた。1
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は じ め に 食物アレルギーやH尚息。花粉症,アトピー性皮j荷炎 などに代表される いわゆるアレルギー症は近年増加 しつづけている。最近の調査では国民の約3分のlが 何らかのアレルギ-:fiEを発症した経験があるとされて いる。このようなアレルギー症の増加の理由や,その 詳しい発症機構など,いまだ未知の点も多く。抜本的 な治療法は確立されていない。重要な栄養素である食 品タンパク質は それ自身はヒトにとっては非自己タ ンノfク質でありt
1C原となりうる。常にこれらのJofL原に l察 さ れ て い る 消 化 管 はIgAと い う 特 殊 な 抗 体 を 中 心 として独特の免疫防御機構が働いて侵入に備えている が,食品タンパク 質 が 生 体 内 に 侵 入 し 抗 原 と し て 認 識されることがある。その!役 IgE抗体が産生される と食物アレルギ一発症にi尊かれると考えられる。しか しながら食物アレルギーの発症にはその他にも様々な 要因が関与しており,環境要因や食品側の妥囚,個体 (人間)側の-更 I~ などがともに関連して発症に主ると 考えられる。近年,食の安全性が広く関心を集めてい るが 食物アレルギーも食の安全性に関わる重要な問 題の1つであるため守消費者のみならず食品の開発や森 山 達 哉
製造.流通,販売などを行う多くの人々にとっても一 定の知識や対策を周知lしておくことが望ましい。 大豆は米とともに日本型食生活の基盤食材の一つで, 味噌や醤i
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などの醸造品の材料としても重要である。 しかしながら 大豆は5大アレルギー食品として1 一 定のアレルギー誘発リスクを有していることが知られ ている。また,近年,花粉症と関連する新しい犬豆ア レルギーが明らかとなっており,小児だけで、なく成人 においても大互のアレルギーは健康危倶要因として認 識されてきている。このような 新しい大豆アレルギ ーも含めて醸造品である味噌や醤油などではそのアレ ルゲン性が低減化されていることが示唆されるが.実 際に個々のアレルゲンに対して個別に解析した例はほ とんど見られない。そこで本稿では花粉症と関連する 新しい大豆アレルギーを含めた大宣アレルギーの多様 性とその原因アレルゲンについて解説し 際 造 食 品 で ある各種の味噌がどの程度低アレルゲン化しているの かという点について個々のアレルゲンごとに解析して いる私たちの成果の一部を紹介したし、 なお,食物ア レルギーや大豆アレルギーに関する一般に関しては!求 書ト:1)や総説1-5)を参考にされたい。 Diversity of Soybean All巴rgyand Evaluation of Hypoallergenicity of Miso Tatsuya MORIYAMA (5c11001 01 Agriculture, Kin!?i University) 第 106巻 第 10号 6452
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食 物 ア レ ル ギ ー の 症 状 の 多 様 性 食物アレルギーの臨床症状にも様々な多様性がある (第 l表)。これらを大きく分類すると句 ①惹麻疹や下 痢 l恒Itl:な ど の 全 身 症 状 ②口 腔 ア レ ル ギ ー 症 候 群 (OAS; oral a11巴rgysyndrome)①食物依存性運動誘発 性アナフィラキシー (FDEIA)@アトピー性皮膚炎 などに分けられる。 ①は,いわゆる通常の即時型食 物アレルギーの代表的な症例で,感作抗原と発症抗原 がj基本的に同ーのタンパク質であることや,乳幼児で の発症が多いことなどが特徴である。一方, ②は口腔 内での発症が中心であり,花粉症に伴う食物アレルギ ーなどがその代表例である。 ①は①と基本的には同様 であるが,原因食品を摂取し激しい運動を行うこと により発症するものである。誘発食品としては小麦が 有名である。これは運動による腸管での抗原の透過 第 1表 さまざまな食物アレルギー症状 │通常の食物アレルギー │ 消化管での│吸収によって発症。乳幼児での発症多い。 成長に伴って自然に治ることが多い。全身性の奪Ij:1'疹 など 〉アナフィラキシー │にl腔アレルギー症候群 (OAS)I
口腔粘膜での発症(称麻疹やl可三i吸困難。 ショックなど) 成人での発症が多い。治癒しない。主に花粉症と関述。 食物依存性通勤誘発性アナフィラキシー (FDEIA) 食物と運動との組み合わせにて発疾 小麦で発t定例が多し、。運動による腸管透過性の変化? │ァトピー性皮府炎│ 食物アレルギーの関与はある程度認められるが.それ以 外に,ダこなどの環境アレルゲンや,皮胸のバリア機能 の低下や炎疾。 i湖南 (ブドウ球菌)の繁殖などが関与 性・吸収性が関与していることが示唆されている。⑤ は食物アレルギーの関与も認められるが,それ以外に ダニなどの環境アレルゲンや,皮膚のバリア機能の低 下や炎症句細商(ブドウ球菌)の繁殖などが関与する と言われている。このような食物アレルギーの症例の 多様性には,その発症機序の多様性が関与している。 重篤なアレルギー症状の一つであるアナフィラキシ ーやアナフィラキシーショックは.①や①で多いが, ②においても発症することがある。 3. ク ラ ス 1食 物 ア レ ル ギ ー と ク ラ ス2食 物 ア レ ル ギ ー ( 第2
表) 近年,食物アレルギーを発症機構の観点から2
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り (クラス1.クラス 2)に区別する考え方が一般化して きた日。クラス l食物アレルギー(以下クラス lと省 略する)はいわゆる古典的な概念の食物アレルギーで ある。この場合,感作抗原と発症抗原が基本的に同ー であり,症例としては奪麻疹7 下 痢 匝 │ 止 シ ョ ッ ク 等が一般的で¥全身症状をきたす場合が多い。またこ の場合は乳幼児における腸管H莫の抗原透過性や免疫寛 容の不完全性などが発症基盤となる。このクラス lで は一部の抗原 (ソパ,エピ,カニなど)を除いて成長 とともに白然治癒(アウトグロー)する場令が多い。 原因抗原の特性としては,消化耐性や熱耐性を示すも のが多く,さらに分子内にS.S結合を有し構造的にコ ンパクトなものが多いと考えられている。このクラス のアレルゲン惹起食品としては,卵,乳,小麦 大豆 などの主要タンパク食i
原が多い。 一方,クラス2食物アレルギー(以下クラス2と省 略する)では,花粉抗原やラテックス(天然ゴム)抗 第2表 クラスl食物アレルギーとクラス2食物アレルギー 感作経路 ギ 一 作 一 ル 一 山 忠 一 レ一作一る一 ア 一 成 一 よ 一 物 一 管 一 に 一 食 一 腸 一 原 一 l 一経一抗一 ス 一 物 一 ラ 一 食 一 々 ノ ﹁ l l L 発症年齢 乳幼児 熱やiilj化醇素にi耐性 卯.乳,小麦.大豆,米なと 主に全身痕状 原 I~I 食品除去など アレルゲン i康状 対処法 クラス2食物アレルギー 経気道・経皮感作 花粉抗原やラテックスによる感作 後抗原の構造が似ている野菜果 実の抗原が交差反応を起こす 花粉症やラテックスアレルギーに催つ ている成人 熱や消化酵繁に不安定 野菜。果物 主にOAS 加熱で摂取可能となる例がある 646 醸 協 (2011)j京による経粘膜・経皮感作が先行しその後これらの 抗原と交差反応を示す植物性食品中の類似分子がアレ ルゲンとなって食物アレルギーを引き起こす。この場 合は花粉症やラテックスアレルギーに穫った成人で発 症しアウトグローは少ない。臨床像としては口腔粘 膜周辺での異常(仁川空アレルギー症候群。 OAS) が 中心であり1 口の中や喉がj$くなる例ヤ,仁川空内イガ イガ感などが多いとされるが.顔面浮腫や気道狭窄, 呼吸困難などのアナフイラキシ一様の重篤な症例も少 なくない。 このクラス2食物アレルギーを引き起こす原因食品 は,果実や野菜などが多いが,大豆やクルミなどの穀 類-豆類でも発症することが近年の我々の研究などで 明らかになってきた。このクラス2食物アレルギーの 原因抗原の特性としては,植物性食品タンパク質であ り,比較的低分子の水溶性のタンパク質が抗原となる 例が多い。これは,口
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庄内での粘膜を介した吸収効率 と関連していると考えられる。この場合はクラス1抗 原と異なか消化管内に移行するまでに吸収され発症 するため,消化酵素による消化抵抗性は原則として関 係しない。また,このクラス2では,花粉症やラテッ クスアレルギーとの交差反応を発症基盤としているた め守広く植物界で普遍的に存在しお互いに相向性の 高いタンパク質が共通抗原となることが多い。また, 理由は不明であるが,植物が病害虫や環境ストレスに 附された│努に発現が増加する一群のタンパク質 (感染 特異的タンパク質 pathog巴neSls-r巴lat巴dproteins:PR匂 Ps) が抗原となる例が一般的である。我々は笑際に, 病筈や虫害被害を受けたリンゴや大互において,感染 特異的タンパク質に属するアレルゲンが増加している ことを見出しているi)。 このクラス2食物アレルギーは植物性食品素材特異 的な新しいタイプの食物アレルギーであり,いまだ充 分に認識されていないのが実情である。しかし 花粉 症が蔓延している現代では。今後増加する可能性があ る。原因となる花粉症は,スギでは比較的少なく,シ ラカパ・ハンノキ属の花粉症が最も多い。また,他に もヨモギ花粉症やカモガヤ花粉症なども食物アレルギ ーと比較的高い相関性を示すと言われている。4
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大 豆 ア レ ル ギ ー の 多 様 性8) 大豆は栄養性や機能1
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加工特性などの点で非常に 第 106 巻 第 10 号 優れた食品で。 日本型食生活の中心的素材の一つであ る。大豆は,我々の食卓になじみの深い豆腐,納豆, 味噌,醤油,豆乳,煮豆などさまざまな加工食品の材 料となっている。醸造品としても味噌句醤泊だけで、な くある種のビール様アルコール飲料の原料としても使 用されている。アミノ酸スコアもほぼ100であり?ア ミノ置を源としての栄養価も植物性食品のなかでは例外 的に俊れている。国民栄養調査の結果では,国民 l人 あたりの平均タンパク質摂取量約80g/日のうち. 大豆由来のタンパク質摂取量は約10g/日に達する ことが示されている。さらに近年の研究により句大豆 中にはイソフラボンやレシチン,サポニンなどの低分 子の機能性成分が豊富に含まれ,これらの成分が相 加-相乗的に大豆の生理機能性(脂質代謝改菩,抗臆 蕩,など)に大きく寄与していることが明らかにされ てきた。このように大豆には,食品素材としてさまざ まな優れた点があか今後も私たち日本人の健康的な 食生活の形成には不可欠の食品素材といえる。 これまで句大豆アレルギーといえば,豆腐などの大 豆食品の摂取によって奪麻疹や下痢.nhll:1止 ア ト ピ ー などの症状を引き起こす, まに乳幼児で多発する食物 アレルギーと一元的に考えられてきた。しかしこれは よ述した「大豆のクラスl食物アレルギー」である。 このような古典的・典型的な大豆アレルギーとは大き く異なる新しいタイフ。の大豆アレルギーが近年増加傾 向にある。この新しいタイフ。の大豆アレルギーこそ. 大豆のクラス2食物アレルギーと考えられる(第 3表)。 この大豆のクラス2アレルギーの発症は,花粉症に 擢っている成人,特に中高年の女性に多く,高濃度の 豆乳や高濃度の手作り豆腐,ゆば,校豆などの摂取が 原因となる例が多い。もやしによる発症も報告されて いる。季節的には春から初夏にかけての発症例が多い ようである。症例としては軽微な場合は口腔内違和感, 重度の場合は呼吸困難などのアナフイラキシーショッ クもある。先に述べたとおり,この症例ではクラス2 アレルギーの特徴として花粉症への感作が先行してお り,花粉抗原と交差反応する大豆中の抗原がその発症 抗原となっていると考えている。 臨床的な知見から,このタイプの大豆アレルギー患 者の大部分がシラカパ・ハンノキ属花粉症に,薩患して いることが明らかとなった。そこで,シラカパ・ハン ノキ属花粉抗原のま要アレルゲンとしてBetv1が有 647第3表 大 豆 ア レ ル ギ ー の 症 状 の 分 類 <①ダイズ食品による奪麻疹や下痢等〉 豆腐や枝豆 豆乳煮豆などを摂取することによっ て引きJ起こされる。 クラスl食物アレルギー?
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幼児に多い。 I │ ダイズに対するRAST値が高い。 -本人または周凶の人たちからダイズアレルギーであ るとの認識がある。 ー7Sグロプリンや GlymBd30K.GlymBd28Kなどが主 主Eアレルゲン <②豆乳によるアナフイラキシーや01-¥S> -豆腐やしょうゆ,などは供取可能。 I lクラス2食物 豆乳に特異的に発百しする場合が多い。│ ・成人に多い。(女性に多い lアレルギー? ・ダイズに対するR1-¥ST値は陰悩または低他。 花粉症や果物アレルギーを併発している場合が多い。 .本人または周囲の人たちからダイズアレルギーであ るとの認識がない場合が多い。 ー原凶JA
原については不明な点が多い。 いずれも発酵大豆食r.n1 ](1味噌 納豆!醤YHIなど)では発 綻頻度は少ない 名であるので.このBetvlの リ コ ン ビ ナ ン ト タ ン パ ク質へのIgE反応性をイムノプロットj去にて確認し たところ,ほほ全ての例で反応、を示した。さらに,豆 乳の存在F
でその反応は阻害されることから,豆乳中 にBetvlと交差反J;,じする抗原が存在することが明ら かとなった。実際に 大豆のアレルゲンの一つである, PR-10ファミリー抗原 (Glym4) がま口られており, こ れ は 花 粉 抗 原Betvlの大豆ホモログである。Glym4 に関しでも大腸菌にて発現させてリコンビナン卜抗原 を得たのち,患者瓜l消との反応性を線認したところ やはり予想通り大部分の症例でGlym4への反応性を 確認することが出来た。こうして,大豆のクラス2ア レルゲンの主要な抗原として.Glym4が関与するこ とが明らかとなったト11l。現在その他の原因抗原に関 して検討を進めているが,プロフィリン (Glym3) や オレオシンなども一部関与している可能性もある。な お 本 症 例 で は 臨 床 検査で多用される特異的IgE試 験 (IgE-RASTなど)において 大 豆 で の 反 応 が 低値または陰性であることが多く この点が診断を囚 難にしている。ただしその場合でも原因食材を用いた プリック試験では明瞭な反応が見られることが多い。 通常,クラス2抗原は熱や加工に弱いものが多いが 大豆のクラス2抗原は比較的熱や加工に抵抗↑生がある ようである。これらのことから,生に近く高濃度のタ ンパク質を含む大豆製品のうち,豆乳ややわらかい豆 648 腐などの口腔内での吸収性が高いものはこのタイプの アレルギーを引き起こす可能性がある。このように, 大宣のアレルギーにも多様性があり,上述したように クラス lとクラス 2の,少なくとも 2つのタイプに分 けることが可能となっている。これらの各クラスでは 原因となるアレルゲンが異なると考えられる。5
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主 要 な 大 豆 ア レ ル ゲ ン 大豆には多くのアレルゲン候補タンパク質が含まれ る が 先 に 述 べ た よ う に ク ラ スlに関与するアレルゲ ンと,主にクラス2に関与するアレルゲンの 2つに大 別される。これらのうち 主要なアレルゲンについて 第4表にまとめた。クラス l食物アレルギーの原因と なる主要なアレルゲンのうち.GlymBd30Kや 7Sグ ロプリン (s コングリシニン)が最も重要なアレル ゲンとして認識されている。クラス 2食物アレルギー の原、因となる主要なアレルゲンでは,未だ不明の点が 多いが。シラカパ花粉抗原Betvlの大豆でのホモロ グである Glym4.シラカパ花粉抗原Betv2の大豆で のホモログである Glym3の 2つが重要な原凶アレル ゲンであると考えられた(第 l図)。 (1)GlymBd30K Ogawaらによって見出された大豆の主要アレルゲ ンロ)で。クラス lアレルゲンと考えられる。アトピ ーなどを併発する小児における大豆アレルギーの主要 な原因アレルゲンである。この分子は.Kalinskiらに よって報告13)されていた大豆のオイルボディー(油 脂 球 ) の 皮 膜 タ ン パ ク 質 に 付 随 し て 単 離 さ れ る34 kDa oilbody associat巴dproteinに帰属された。構 造 的にはチオールプロテアーゼであるパパインスーパー ファミリーに属することが判っている。しかしながら プロテアーゼとしての活性中心に存在するシステイン がグリシンに変化しており,プロテアーゼ活性は全く 示さな¥,>。興味深いことに,このような構造的特徴か ケ 本 分 子 は ダ ニ の 主 要 ア レ ル ゲ ン で あ るDerplと 同 じ フ ァ ミ リ ー に 属 し 両 者 間 に は 約30%の相向性1 約54%の類似性を有することが判明した。また,大 豆 特 異 的 感 染 菌 で あ るPseudomonassyringeの 産 生 するエリシター (Syringolide) の結合タンパク質 (レ セプター)となっている可能性も示されている 1.1)。 実際に本分子は大豆葉にも発現していることが確認さ 蟻 協 (2011)ン 一 ゲ 一 L V ア J 一
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ア 一 一 豆 一 大 一 な ( 要 一 主 一 表 支 刈 ﹃ 一 / 汁 第 一 サ 一 イ 、 ノ 刀 アレルゲン候補分子名 大豆7Sグロプリン (別名F
ーコングリシニン) (日。日s
subunit) グリシニンA3サブユニット Gly mBd30K 悩質・帰属などl
クラス分類 主要貯蔵タンバク質糖鎖結合タンパク│クラス l関連抗原 質 山 肌 原 一 LiL レ HU レ 山 ν 連 連 関 関 1 i 1 L スス - フ - フ 均 ノ み / 咋 ムf
i 白 旦 品 川 u r f 寸 志 内 ロ ( 止 口 } 草 丹 4 R 1 単 品 ー ゼ 日明貝一 ク ア パ テ ンロ タ 。 フ 刊 威 ル 貯 一 ) 要 オ し 主 チ な ) n d D LA d 斗 A、
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クラス l関連抗原 ク質 オイルボディー結合タンバク質 │クラス 2関連打L原 ? トリプシンインヒビター(醇素問答タン│クラス l関連抗原 パ ク 質 吸 入 抗 原 Betv1ホモロ夕、。 PR-10ファミリー │クラス2関連抗原 Pan-allergen.アクチン調節タンパク質│クラス2関連抗原 ハルセロナIJ前息の原因抗原として報告 │吸入抗原 バルセロナIJ崩息のj点│主!抗原として報告 11吸入抗原 プロラミンスーパーファミリー,菜種ぞl
クラス l関連抗原? ナッツ,ゴマにも類似タンパク質が存γf
クラス分類に関しては一部仮説を含む。│シラカバ・
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、ンノキ属花粉症
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こ 感 作│
大豆のGlym4が原因となって 大豆のプロフィリン(Glym3)が原因となって 豆乳アレルギー発症 豆乳アレルギー発症i
大豆クラス
2
食物アレルギー
(OAS
、アナフィラキシー)
大豆中の
Betv1
ホモログ
Glym4
大豆中の
Betv2
ホモログ、
Glym3
第1図 大豆によるクラス2食 物 ア レ ル ギ ー の 発 症 機 構 れている。 (2) 7Sグロブリン(
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ー コ ン グ リ シ ニ ン ) 大 豆 の 主 要 な 貯 蔵 タ ン パ ク 質 の 一 つ で あ り , 大 豆 種 子中において全タンパク質の約 25%~30%を占める。 こ れ ら は 互 い に 類 似 し た3つ の サ ブ ユ ニ ッ ト か ら な る。 い ず れ の サ ブ ユ ニ ッ ト も 植 物 タ ン パ ク 質 に 共 通 し て 広 く認められる高マンノース型の糖主演を有している。当 初 は 日 サ ブ ユ ニ ッ ト の み が ア レ ル ゲ ン と し て 報 告15)さ れ た が , そ の 後 残 り の2つのサフeユ ニyトも同様にア レルゲンであると報告されたJ(i)。笑│努に我々の研究 第 1日B巻 第 10号 に お い て も , 患 者 血 清 は3つ の サ ブ ユ ニ ッ ト に ほ ぼ 同 等 にIgEが 結 合 す る こ と を 認 め て い る 。 ま た こ の タ ン パ ク 質 は マ ウ ス や ヒ ト に お い て 脂 質 代 謝 調 節 能 な ど の生理機能性を有している可能性が報告されている 17jo 大 豆 加 工 食 品 中 に お い て は 、 比 較 的 高 レ ベ ル に 存 在 し て い る ( 第5表)1針。興味深いことに, 豆腐 特 異 的 に 発 症 す る 食 物 依 存 性 運 動 誘 発 性 ア ナ フ イ ラ キ シ ー (FDEIA)に お い て , 本 ア レ ル ゲ ン が そ の 原 因 ア レ ル ゲ ン と し て 発 症 に 関 与 し て い る こ と が 報 告 さ れ たl九
この症例では, 豆乳 で は 発 症 せ ず , 豆 腐 特 異 的 に 発 症 することが明らかにされているが,その原因として, 649報告されている。また,この分子は感染特異的タンパ ク質のPR-IOフ ァ ミ リ ー に 属 し 植 物 の 生 体 防 御 タ ンパク質として機能することが示唆される。我々はこ の分子をクローニングし 大腸菌にて発現させ,精製 することに成功した。また,得られた組換え体を抗原 として特異抗体を作製した。さまざまな大豆加工食品 における本アレルゲンの存在レベルをウエスタンブロ ッテイングにて比較検討したところ,味]1普や納豆など の発酵食品では低レベルであったが,豆腐や豆乳,枝 豆など多くの大豆加工食品においでほぼ同レベル存在 していることが判明した。しかし,これらの加工食品 を 口 腔 内 の 岨 嶋 過 程 を 模 倣 し 破 砕 後 遠 心 分 離 を 行 い 得られた上清の可溶性画分における本分子の存在レベ ルを比較したところ, もともと液体状である豆乳にお いて最も高レベルの存在が見られた(第2医J)。豆腐 では,近年流行している柔らかい形状の豆腐において 高レベルの存在が見られ,通常の木綿豆腐などでは比 較的少なかった。これらの上清における存在レベルは 大豆におけるクラス2アレルギーの臨床的な発症頻度 とほぼ相関していた。このように,破昨後の遠心上清 における本アレルゲンの存在レベルを評価する方法が7 花粉症に関連する
OAS
なとJの大豆のクラス2
アレル ギーの発症リスク評価に使用できることが示唆された。 各種大豆加工食品中のs-
コングリシニン定 量 値 試 ①豆腐 (紺ごし) ①豆乳ヨーグルト ①豆乳飲料→l ④豆乳飲料ー2 ①豆腐ハンパーグ ①納豆 ⑦日 a のSPI ③SPI ①牛乳 (ネガテイブ コントロール)F
コングリシニ ン (mg/g) 26.3 20.8 42.9 9.5 15.3 2.3 35.0 320.0 検出lされずF
コングリシニ ン (mg/ml) 22.6 20.4 401 9.5 13.0 2.0 検出されず 米│ 欠1
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大豆 第5表 ゲル化食品である豆腐の消化管内での消化抵抗性が寄 与している可能性が示され。大豆加工食品の株々な加 工形態がアレルギー症状の多様性に直接的に関与して いることを示す興味深い例といえる。(
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本 ア レ ル ゲ ン は シ ラ カ パ 花 粉 抗 原Betvlの大豆 でのホモログである。花粉症との交差反応、に関与する 代表的なクラス2アレルゲンと考えられる。本分子の 詳細な機能は不明であるが.RNaseと し て の 機 能 が ~岨
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(kDa) 10075
37 50上清
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厚揚げ
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おぼろ豆腐
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協 (2011) 醸 遠心分離したL
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レベル 破 砕 後 第2図 650なお,シラカパ・ハンノキ花粉症においては, リンゴ やモモなどにおいても反応することがある。実際にシ ラカパ花粉抗原B巴tvlのホモログは種間でホモロジ ー も 高 (大豆のGlym4に反応する患者はリンゴの Betvlのホモログである Maldlにも反応する例が多 い。ホモロジー検索を行うと, Glym4と Maldlの聞 では約70%のホモロジーが認められる。 (4) Glym3 本アレルゲンは,シラカパ花粉抗原の一つである Betv2の 大 豆 で の ホ モ ロ グ で あ か 花 粉 症 と の 交 差 反 応に関与するクラス2アレルゲンのーっと考えられる。 Glym4よりは頻度は高くないと考えられている。本 分子はプロフイリンであり 細胞内骨格タンパク質で あるアクチンの結合タンパク質である。従ってこの分 子は真板Q:.物において普遍的に存在し またその種間 でのホモロジーは高いため。本分子による感作が成立 している場合は多くの
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菜や果物に反応する場合が多 い。すなわち,多くの植物性食品アレルギーの原因抗 原となる汎アレルゲンとして重要な抗原である。ただ し大豆におけるクラス2アレルゲンとしての特性は Glym4ほどは解析されておらず,今後の研究の進展 が望まれる。6
味 噌 の 低 ア レ ル ゲ ン 性 の 検 討 l床l噌は日本型食生活において不可欠の食品素材・調 味料である。一般的な味11留の主成分は大豆であるが, 大豆にはさまざまな土理機能成分が含まれていること が明らかになってきている。たとえば,大豆タンパク 質やペプチド,イソフラボンやサポニン。 レシチン, リノール酸などである。従って, 主に大豆から製造さ れる味H自にもまたこれらの健康機能成分が含まれてお り また他にも米麹由来の成分や 発酵によって新た に生成される有主主成分や, ペプチドのように発防によ り高機能化される成分などが豊富に含まれる。 上述したような新しい大豆アレルギー (クラス2食 物アレルギー)も含めて,味11自ではそのアレルゲン悩 が低減化されていることが示唆されているが, ~I努に 各種の味噌において個々のアレルゲンの存在レベルが 解析された例はほとんど見られない。 そこで我々は.我が固において生産されている主要 な│床日留について,そのタンパク質パターンや各種アレ 第 1日B巻 第 1日 号 ルゲンレベルを検討している。この研究によって,味 噌の低アレルゲン性を実証することを試みた。なお, 本研究の成果は原著論文として取りまとめ中であるた め,結果の一部のみを紹介することをお許しいただき たい。 (1 )実験方法 味噌は中央味噌研究所より供与いただ、いた。実験に 使用した味11首とその卵、材料の一覧を第6去に示す。今 回検討した味噌は 七│日米みそ1種類7 辛口米みそ7 種類.麦みそ.豆みそ各1
種類の合計ゃ1
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種類である。 一定量の昧H目サンフールに純水を一定量加え句 ミキサ ーにて撹f
宇した。得られた抽出物をBradfordi
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にて タンパク定量し各種│床日目間で比較検討できるように 同一量のタンパク質を電気泳動やウエスタンブロァテ イングに1
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した。 各種大豆アレルゲンの検出は各種大豆一アレルゲンに 対する特異抗体を用いたウエスタンプロッティング法 を斤l
いた。す な わ ち 床 時iサ ン プ ル をS
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にて電気泳動を行ったのちPVDFI
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膜はブロァキング後アレルゲン に対する抗体(1次抗体)と反比、させPBST
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こて洗 浄 後 , ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ (HRP) 襟識fJc
マウスIgG または抗ラビット IgGなどの 2次抗体を用いて反応 させ,最終的にはHRPの化学発光基質 (ECLwest -巴rnblotting d巴tectionreagent)を用いて発光させ守 X線フィルムに露光させた。なお,使m
した大豆アレ ルゲンに対するJ'Jcイヰ;は。 トリプシンインヒビターを除 いてすべて我々が作製したものを用いた。 第6表 実験に使用した各種みその原材刺 甘口米みそ 米司大."l. 食塩 水車t
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日国精 辛口米みそA 米.大豆.食t~, 酉精 竿円米みそ B 大 立 米.食塩 辛口米みそ C 大豆.米,食j~. 酉鞘 辛口米みそD 大 豆 米 食 指 辛口米みそE I大 豆 米 食 弘 樹fiJ< 辛1-.1米みそF :大夏。封 食 塩,調和 辛口米みそG 大豆 米.食j孟 酒 精 表みそ 大変。大豆. 食 飽 出 梢 豆みそ 大 豆 食 塩 651(kDa) タンパク量一定(10悶lIa附 150 国 咽 100一一一ー『 75
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麦 豆 大 子 量口
辛口米みそ
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米そ そ そ 第3図 味噌のタンパク質パターン(CBB染色)(1)1
タンパク量一定(約 100悶/Iane) (kDa) 。 〆 ︼ 色 染 R U R U 円 し ン 勿 〆 一 銭 均 ノ ノ ン 甘 口 米 み そ タ 分子 量 マl
力 │ 駒 昧 図 A U マ 第 麦 み そ辛口米みそ
(2)結果と考察 まずはじめに.1レーンあたり 10μgのタンパク量 となるように味噌サンプルを電気泳動し.CBB染色 によってタンパク質のパターンを確認した。いずれの 味11普も 大豆抽出物と比べると明瞭なタンパク質バン ドが消失して,低分子化していることが明らかであっ た(第3図)。タンパク質のアプライ量をlレーンあ たり 100μgに増やして泳動すると.いくつかのパン ドが見られた(第4図)0 I床唱問では.概ね似たパタ ーンであったが 米みそと比べて麦味噌や豆味噌では ややタンパク質のパターンが異なり,特徴的なバンド を示した。 これは材料が異なるためや,発酵熟成期間 の長さが影響しているものと考えられた。特に‘豆味 噌ではバンドはほとんど確認できず スメアな泳動像 652 醸 協 (2011)同
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乳幼児で発生するクラス
1の大豆アレルギーの
最も主要なアレルゲン。事麻疹やアトピーなどに関連。
ダニのアレルゲンとも構造が似ている。
(kDa)│
味噌のタンパク量一定
O.5,
lg/laneI
•
0.5 0.25 甘 A B C D E F G 麦 豆 口 み み (μg/lane) 米 辛口米みそ そ そ み そ 第5図 l床日開における大豆アレルゲンの検出(1)匝 副
主に成人で発生するクラス
2の大豆アレルギーの主要アレルゲン。
花粉症と併発する。症例は主
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こOASやアナフィラキシーなど。
PRタンパク質の一種で病害虫被害などのストレスで増える。
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e n a i g i ト ハ U 4l│
みそのタンパク量一定
(kDa)大豆
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10 5 甘 A B C D E F G 麦 豆 (μglla附与
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み み 辛口米みそ そ そ そ 第6図 l床噌における大豆アレルゲンの検出(2) が見られた。豆味噌は長期間熟成にてタンパク質の分 解が他の味11留と比べてより進んでいることが示唆され fこ。 次に特異抗体を用いた各種大豆アレルゲンの検出を 行い,大豆そのものと比べた。また味噌間で低減化レ ベルを相対比較した。大豆のクラスl食物アレルゲン と 考 え ら れ るGlymBd30K
.
GlymBd28K
.
7Sグロプ リン, トリプシンインヒピター,について調べた。な お 本 稿 で はGlymBd30Kの 結 果 の み 示 す。GlymB -d30KはOgawaら に よ っ て 同 定 さ れ た 大豆の主要ア レルゲンの一つで,乳幼児で発生するクラスlの大豆 アレルギーの最も主要なアレルゲンである。解析の結 果,大豆そのものと比べていずれの味噌においても低 第 106巻 第 10号 減化が進んでいた。甘口米みそや一部の辛口米みそで は,一部残存が確認されたが,それ以外の味噌ではほ とんど検出できなかった(第5図)。 続いて,大豆のクラス2アレルゲンについても検討 した。上述したとおり,クラス2アレルゲンは花粉抗 原と交差性が強く,特に大豆の場合はシラカパ,ハン ノ キ 属 花 粉 の ア レ ル ゲ ン で あ る Betvl及 び Betv2と 交差する Glym4及 び Glym3が知られている。Glym4に関しては,いずれの味11首でもほとんど検出できない 程度に低減化していたが, Glym3は 逆 に 比 較 的 残 存 しているものも多かった。しかしこの場合もFの米 みそや麦みそ,豆みそではほとんど検出不能で、あった。 なお。ここではGlym4の結果のみ示す(第6図)。 653
本研究の結果より,いずれの味噌も,従来から知ら れていたクラス l食物アレルゲンのみならず,新しい クラス 2食物アレルゲンにおいても低減化しているこ とを明らかにした。アレルゲン性の低減化の度合は, 熟成期間の長い豆味噌が優れており1 このことから発 酵熟成過程の長さがアレルゲン分断Jに有益な効果をも たらすと考えられた。
7
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お わ り に 我が国はじめ多くの先進国においては,衛生状態が 向上し感染症が激減している。しかしながら,それ する研究は生研センター研究フ。ロジェクト守生物系産 業創出のための異分野融合研究支援事業(起業化促進 型)r
低アレルゲン大豆加工食品の開発と製造・流通 システムの構築J.及び厚生労働科学研究費補助金 「食物等によるアナフィラキシ一反応の原因物質(ア レルゲン)の確定,予防・予知 j去の確立に関する研 究jなどの研究助成を受けて多くの臨床医の先生方と の共同研究のもと行われました。関係各位に厚く御礼 申し上げます。また,研究の実施にあたりご指導,こ 助言,ご協力いただきました河村幸雄教授,矢野えり か研究員,鵜 I事有希研究員,実験担当の~~:生達に!感謝 と引き替えに衛生状態の向上がアレルギー疾患を増加 いたします。 <近 畿 大 学 > させているという「衛生仮説」が分子レベルで実証さ れつつある。よってアレルギー疾患はまさに文明病と もいえる。このような生体の免疫バランスの偏向を背 景に、空気汚染などの環境悪化,花粉症の蔓延などの 環境要因も変化している。その結果,新しい食物アレ ルギーであるクラス 2食物アレルギーが増加している ことを紹介した。そして.このように新しい食物アレ ルゲンが増えた状況下でも,i
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、統的な食品で、ある味噌 や醤油などの様造品や‘納豆.テンべなども含めた発 酵大豆食品では.個々のアレルゲンが程度の差こそあ れ。いずれも明瞭に低減化していることが明らかにな りつつある。食物アレルギ一発症の閥値は患者個人で 変動するため 完全なリスクゼロとはいえないが,他 の大豆加工食品と比べて,味l噌では明らかにリスクは 低減化していると言って良いだろう。特に,豆味噌な どの長期熟成味噌は味噌の中でも低減化度合が大きく, よりアレルゲンリスクは少ない。 現在 さらに多くの大豆アレルゲンについて検出・ 定量系を構築し各種味噌におけるアレルゲン低減化 の網羅的解析を進めている。また,近年, 7Sグロプ リンのa,日'などの大宣のアレルゲンが一部欠失し ている大豆品種 (ゆめみのり,なごみまる)が成分育 穫の手法により開発されており 川'これらを原料に することでよりアレルゲンリスクの少ない味噌などの 醸造食品が開発できると考えられる21)。 謝 辞 本稿で犯介した味 II~ の低アレルゲン性に関する研究 成果は, (社)中央味噌研究所からの研究助成を受け て行われました。また。大豆アレルゲンの多様性に関 654 文 献 1) 上野川修一,近藤直実編 食品のアレルギ一対 策 ハ ン ド ブ ッ ク . サ イ エ ン ス フ ォ ー ラ ム (1996) 2) 中村 晋 , 飯 倉 洋 治 編 最 新 食 物 ア レ ル ギ ー ‘ 永井警)苫, (2002) 3) 小川 正,篠原和毅,新本洋士編 抗 ア レ ル ギ 一食品開発ハンドフずツク,サイエンスフォーラ ム (2005) 4) 森山達哉食品加工技術, 28. 152・162.(2008) 5) Ogawa T, SamotoM
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