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関西テレビ放送番組制作ガイドライン

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はじめに

過ちは二度と繰り返しません 自浄自律の精神と責務 資料1 制作工程管理のチェックポイント 資料2 関西テレビ放送 制作責任・担当表(例) 資料3 関西テレビのコンプライアンス・考査体制

第1章 番組を企画するガイドライン

はじめに企画があった 1. 「企画意図」∼誰に何を伝えたいのか∼ 2. 企画者(制作者)にとっての視聴率 3. 視聴者が求めるもの、企画者(制作者)が伝えたいもの 4. 常に「いま」に敏感であるために 5. 「企画」が「番組」として一歩を踏み出す前に・・・・・ (1)実現の可能性を精査する (2)主なチェックポイント (3)番組企画書および制作報告書への「情報の正確性確保の方法」の記載 (4)番組監修者の充実と強化 (5)企画提出から着手申請へ……必要な社内手続きの確認 (6)制作責任担当表……制作フローの確認と責任担当表の作成・共有

第2章 制作・演出のガイドライン

迷いがあればスタートラインに戻る 1. 事前取材・リサーチ (1)インターネットの便利さと危険性 (2)雑誌などのネタには怪しい噂・伝聞も含まれる (3)リサーチャーまかせにしない (4)科学番組ということに限定されるわけではない! 2. 企画構成会議

Contents

/目 次

───────────────────── 1 ─────────────────────── 2 ─────────────────────── 11 ────────────── 13 ──────────────── 15 ──────── 17 ────────────────── 19 ────────── 21 ─────────────────── 24 ─────────────────────── 25 ───────────────────────── 27

(3)

(1)コーナー企画、ディレクターの第一歩 (2)事件は会議室でも起こる 3. キャスティング 4. タレント打ち合わせ 5. オーディション 6. ロケ取材 (1)取材対象者とのトラブル (2)ロケ中の事故 (3)ロケでの苦情 (4)ロケ内容の問題 (5)電波法とロケ (6)再現VTRでの問題 (7)神社仏閣でのロケ  7. スタジオ収録 (1)トーク内容が名誉毀損に (2)資料映像 (3)お笑いネタ (4)観客 8. 生番組での一言から 9. プレゼント・問い合わせ 10.年少者の出演 11.演出 (1)まず自分の演出プランを (2)「演出家」と「ディレクター」は違う? (3)スタッフの名前を覚えよう・・・・番組は団体作業 (4)アシスタント・ディレクターの目指すもの 12.「過剰」演出と「問題」演出 ────────────────────────── 29 ──────────────────────── 30 ────────────────────────── 31 ──────────────────────────── 32 ────────────────────────── 37 ─────────────────────── 39 ────────────────────── 40 ────────────────────────── 40 ────────────────────────────── 41 ──────────────────── 44

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第3章 報道・取材のガイドライン

報道の自由と知る権利/報道の意義 1. 報道取材 (1)取材の基本 (2)人権・名誉毀損 (3)取材のマナー (4)災害報道 (5)政治・選挙報道 2. 被害者取材 (1)被害者取材の意味 (2)基本姿勢 (3)留意点 3. 加害者・容疑者取材 (1)基本姿勢∼推定無罪 (2)整理された報道 (3)容疑者の供述・弁明 (4)誤報、そのとき 4. 実名か匿名か (1)少年事件 (2)精神障害者 (3)性犯罪被害者 (4)詐欺等の被害者 (5)自殺 (6)公人 (7)任意捜査・書類送検 (8)無罪判決 (9)感染症 (10)「匿名希望」の取り扱い 5. 問題となる取材 (1)集団的過熱取材(メディアスクラム) (2)身分を隠しての取材 ───────────────── 49 ──────────────────────────── 51 ─────────────────────────── 56 ─────────────────────── 58 ───────────────────────── 59 ───────────────────────── 62

(5)

Contents

/目 次 (3)電話・インターホン取材 (4)隠し撮り・隠しマイク (5)謝礼の授受 (6)建物内・公道上での取材 (7)子供への取材 6. 個人情報 (1)情報の入手 (2)情報の保護 (3)流用の禁止 (4)情報の処分 7. 報道に関わる著作権問題 (1)自ら取材したものは「原則」自由に使える (2)制作会社に依頼した物 (3)他人の取材した物や著作物は勝手に使えない (4)視聴者提供映像 (5)ニュース素材の二次利用 (6)スポーツ素材について

第4章 表現のガイドライン

虚実皮膜の真実∼「表現のプロフェッショナル」として 1. 科学的知識の表現 (1)科学的に完全に立証されていない薬事効果・医療効果 (2)迷信、予言、霊感、占い(血液型を含む)など 資料 BPO(放送と青少年に関する委員会)からの要望 2004年12月8日 2. 特殊効果と処理 (1)モザイク・ぼかし ─────────────────────────── 66 ──────────────────── 68 ────────── 71 ─────────────────────── 72   ───────────────────────── 77

(6)

(6)音声の加工など 3. 人権をまもり差別を助長しない表現 (1)身体・病気への差別 (2)出自・境遇などへの差別 (3)性差別 (4)人種差別・民族差別 4. さまざまな権利概念 (1)名誉権とプライバシー (2)肖像権 (3)期待権 5. 著作権をめぐって (1)基本となる考え方 (2)権利クリアについて (3)許諾の必要がない場合 (4)使用の際の注意点∼自社素材の場合 (5)使用の際の注意点∼他社著作物の場合 (6)番組著作権の帰属について 6. 表現上留意すべきその他の事例 7. 番組と広告の境界線 (1)広告と番組の識別 (2)番組内の企業情報や商品情報

第5章 パートナーシップのガイドライン

制作に携わるすべての者がパートナー 1. すべてのパートナーとともに 2. 制作会社の皆さんとともに 3. 「発掘!あるある大事典」におけるパートナーシップの問題事例 (1)番組立ち上げ時の問題点 (2)完全パッケージ方式の番組制作におけるリスク管理 (3)再委託契約による制作の問題点 ───────────────── 82 ─────────────────────── 86 ──────────────────────── 89 ───────────────── 95 ────────────────────── 96 ───────────────── 98 ──────────────────── 99 ──────────────────── 100 ──── 101

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Contents

/目 次 (4)制作スケジュールの問題点 (5)番組制作費の問題点 資料 「発掘!あるある大事典」調査委員会報告書「提言」より 資料 ATP緊急声明 2007年2月5日 4. 「発掘!あるある大事典」以外の問題事例

第6章 説明責任のガイドライン

表現の自由・放送の自由と説明責任/視聴者と世論 1. 「クレーム」は価値ある「資源」 (1)初期対応の大切さ (2)生ワイド・放送中に抗議が来た! (3)対応策のアップデート (4)丁寧なレスポンス対応資料を 2. VTRの閲覧請求 3. 危機管理広報 (1)私たちは無謬ではない (2)初期報道:「予断と憶測」と嘆くなかれ! (3)逃げない、隠さない、そしてスピーディーに (4)「自主自律自浄」の実践 4. お詫びと訂正放送 (1)訂正放送 (2)誤報の後・名誉回復 5. 関西テレビ放送番組審議会 資料 関西テレビ放送番組審議会の見解 2007年2月8日 6. 放送活性化委員会 7. BPO(放送倫理・番組向上機構) ───────────── 108 ────────── 111 ────────────────── 112 ─────────────────────── 115 ───────────────────────── 117 ─────────────────────── 119 ─────────────────── 121 ─────────────────────── 124 ───────────────── 126

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(2)BPO放送と青少年に関する委員会 (3)BPO/BRC(放送と人権等権利に関する委員会) 資料 BRC決定第28号 2006年3月28日

第7章 広告のガイドライン

なぜ広告に規制があるのか? 1. 広告をめぐるコンプライアンス (1)法令による規制 (2)業界の自主規制 2. CM考査とは (1)業態考査 (2)CM表現考査 

第8章 大規模災害時等のガイドライン

減災のライフライン∼テレビ 1. 大規模災害時の行動指針 (1)第一報の放送 (2)緊急時の社内体制 (3)誰に向かって何を放送するのか (4)原発事故、感染症の発生、化学テロの可能性等被害の実態が不明である場合 (5)フジテレビが被災した場合 (6)国民保護法、災害対策基本法に基づく報道について  2. 1995年1月17日 阪神淡路大震災の教訓から

第9章 コンプライアンスと法令遵守

コンプライアンスと「法令遵守」は違う  社会の要請に応えることが「コンプライアンス」 ──────────────────── 136 ─────────────────── 137 ───────────────────────── 139 ───────────────────── 151 ─────────────────── 152 ─────────── 156 ──────────── 161

(9)

Contents

/目 次 コンプライアンスと「法令遵守」は違う  「法令」は社会要請を映す鏡 1. 「関テレ六法」 2. 関西テレビ 倫理・行動憲章 3. 関西テレビ放送 放送基準

おわりに

「負の記憶」の継承 索 引 資料編 放送人のための「電波法」「放送法」 ─────────────────── 162 ───────────────────────── 163 ─────────────────── 165 ─────────────────── 169 ──────────────────────── 181 ─────────────────────────────────182 ───────────────── 187

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はじめに

過ちは二度と繰り返しません

2007年1月7日放送の「発掘!あるある大事典Ⅱ」の捏造問題に端を発した一連の 問題で、関西テレビ(以下、「私たち」という)は、総務省から「警告」という最も厳しい行 政指導を受け、また、日本民間放送連盟からも「除名」という重い処分を受けました。 今回の問題は、私たちが番組を捏造したことに対する責任にとどまりません。私た ちは、テレビ業界全体に対する信頼を大きく傷つけ、ひいては表現の自由への制限 を招くことになりかねない状況を生んだ事実を厳粛に受け止めなければなりません。 私たちは自らの信頼回復に努めるだけでなく、業界全体の信頼回復に対して大きな 責任を負わなければなりません。 私たちは、調査委員会報告書が、「番組制作力を回復していく過程で、制作会社 や視聴者・市民とのあらたな信頼関係を築いていくこと、関西テレビが再生していく 道筋はここにしかない」と結ばれている意味を重く受け止め、その実現に真摯に取り 組んでまいります。 「放送で失った信頼は、放送で取り戻すしかない」ということを肝に銘じ、私たちに は、番組制作を通じて、視聴者の皆さんに見える形で再生していく姿を示す責任が あります。 私たちは、「過ちは二度と繰り返さない」との強い決意と誓いの下に、私たちが果 たすべき責任と行動原理を明示した「関西テレビ倫理・行動憲章」を定めました。そ して、その精神に則り、この「番組制作ガイドライン」を作成するとともに、ホームペー ジに公開することにしました。私たちが、どのような姿勢で番組を制作しているかを開 示することで、視聴者の皆さんをはじめとする1億人の厳しい目で、私たちの番組を 見ていただこうとの決意です。 私たちが放送で失った信頼を取り戻すことは、容易なことではありません。これか ら永い年月を要するという覚悟を、厳しく自らに課さなければなりません。 私たちは、犯した過ちを決して忘れないことと、二度と過ちを繰り返さないことを固 く誓い、私たちが負った責任の重さをしっかりと認識して、自らが定めたこの「番組制 作ガイドライン」を遵守します。

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は じ め に

自浄自律の精神と責務

一番大切なことは、どのように番組を制作するかということ以上に、放送人に求め られる高い倫理観に基づいた、誰に対して何を伝えたいのかとの制作者の明確な 情熱です。何を求め、何を自己実現しようと関西テレビに入社したのか、マスメディア を目指したときの情熱や正義感こそが、番組制作の根幹です 。このガイドラインの 第1章を「番組を企画するガイドライン」とした所以です。 また、私たちの番組が、常に、視聴者の皆さんの厳しい目で見られているとの緊張 感と認識が重要です。放送を通じて、視聴者の皆さんとどう繋がりを持つかという努 力が求められます。このガイドラインでは、視聴者の皆さんからの意見をはじめ、私た ちの番組に対する様々な批判や意見に真摯に向き合い、積極的に、情報を開示す る姿勢を示すために「説明責任のガイドライン」の章を設けました。 私たちは、視聴者・市民の皆さんに「嘘・偽りのない」「分かりやすく面白い」番組 を提供するために努力してきました。「報道の自由」や「表現の自由」が私たちに認 められているのは、この公共的使命を担うべきマスメディアであるからという自覚をし っかりと持たなければなりません。また、「関西テレビは、自主・自律性を保障され、一 種の特権的地位を与えられた放送事業者として、真実性の保持という重大な責務 を負っている」との調査報告書の指摘を重く受け止め、自らの番組は自らが正し、自 らが律していくという自浄自律の精神と責務を真に理解しなければなりません。 放送法をはじめ番組制作に関連する様々な法令や関西テレビの放送基準を遵守 することは、当然、厳格に求められます。しかし、それ以上に重要なことは、番組制作 に携わる者の極めて高度な倫理観であることを再確認しなければなりません。 番組制作に対する情熱と愛情、そして責任と誇りこそが、真に、番組制作における

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1 制作工程管理のチェックポイント

(1)制作体制の確認

□ スタッフは放送基準、放送倫理に関する研修を受けていますか □ プロデューサーは制作業務フローを確認し、「制作責任・担当表」(資料2)を記入 し、所属長に提出しましたか □ 外部委託番組(部分委託を含む)では下請法を遵守するとともに、事前に契約書 締結の協議をしていますか □ 専門的知識や根拠、見解を必要とする番組については、外部の専門家を専門分 野別に置き、かつ番組全体の監修者を置いていますか

(2)企画・リサーチ段階

□ 番組収録までの準備期間は十分にありますか □ 収録後から編集MA納品までの期間は十分にありますか □ 放送基準・放送倫理に違背する内容は含まれていませんか □ 企画内容に差別を助長するような内容は含まれていませんか □ 宗教、政治(選挙)、皇室関係など特に配慮が必要な内容はありませんか □ リサーチされた内容の事実関係に誤りはありませんか □ 独自につかんだ情報は、複数ルートで裏取りをしましたか □ 薬事法等関係法令に違背する内容を含んでいませんか □ 個人情報の管理を十分に行っていますか メールでの連絡の際、BCCを使用す るなどして、無関係の人に他人のアドレスが分からないようにしましたか □ 完パケ発注番組においても、局のプロデューサーは企画会議で決めた企画の進 捗について、報告を受けていますか □ 下請法に該当する委託の場合、発注書を交付しましたか □ 番組で取り上げる科学的な情報の根拠は複数の識者に見解を求めていますか □ 番組独自で行う実験やシミュレーションは、科学的根拠がありますか 資 料

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は じ め に

(3)収録・ロケ・取材段階

□ 収録台本を考査担当者および所属長に渡しましたか □ 問題箇所がないか考査担当者、所属長に確認を求めましたか □ 過剰演出、やらせ、捏造はありませんか □ 出演者のコメントに不適切な表現・内容はありませんか □ 主張、見解が分かれている事項は、双方の取材を行いましたか □ 一般の方の出演・協力に対して承諾を得ていますか □ 電話を録音する場合、先方の承諾を得ましたか □ 番組協力者・出演者に対する番組内での扱い方に関する説明義務は果たされて いますか □ 取材協力者等に対して不用意に放送日や宣伝の約束をしていませんか □ 取材協力者等に対して不用意に取材テープやOA同録の提供を約束していませ んか □ 取材先や関係者とトラブルはありませんでしたか □ もしあった場合プロデューサーや所属長に報告しましたか □ 番組独自で行うシミュレーション・実験は、適切に行われましたか 不適切に断定 的な表現になっていませんか □ 定説、最新学説、見解が分かれている学説等、その位置づけに応じた取り上げ方、 表現方法に工夫、配慮していますか 不適切に断定的な表現になっていませんか □ 独自の実験やシミュレーションを伴うロケ収録の際は、専門家の監修を受けていま すか 局のプロデューサーまたはディレクターが立ち会っていますか

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(4)素材編集・オフラインチェック・本編集・MA段階

□ 編集方針の確認をしていますか □ 恣意的な編集により事実に反する内容になっていませんか □ 発言本来の文脈や趣旨と異なった編集をしていませんか □ 事実と再現の区別を明確に表現していますか □ 主張、見解が分かれている事項は、双方を考慮して構成されていますか □ テロップ・スーパーに問題はありませんか □ 肖像権、著作権について許諾はとっていますか □ 必要なクレジットは入っていますか □ 放送基準、放送倫理に照らして問題はありませんか □ 人権侵害はありませんか □ 引用資料(データ・グラフ・写真・映像等)の出典・権利クリアについて把握していますか □ 権利クリア状況など一覧表を作成・提出しましたか 責任者はこれを確認しましたか □ いわゆるパカパカやサブリミナルはありませんか □ 外国人コメントのボイスオーバー処理などが行われているときに、取材テープ内容 や日本語訳文の確認をしましたか □ モザイク処理などが行われていたときは取材テープ内容の確認をしましたか 科 学的根拠等に関して、不適切に断定的な表現になっていませんか 否定的な部 分があれば、それを考慮した表現となっていますか □ 引用したデータ・グラフや映像・写真等の資料、情報の根拠・出典を明示した資料 を提出しましたか 責任者はこれを確認しましたか □ 番組で行った実験データや番組で展開した見解に対する科学的論拠および監修 者の意見等の資料を提示しましたか 責任者はこれをチェックしましたか □ MA前のテープを必ずチェックし、問題がないか確認しましたか □ MA前にナレーション原稿をチェックしましたか □ ナレーションコメントに不適切な表現はありませんか

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は じ め に

(5)完パケ・納品時

□ 完パケ後の最終チェックを行いましたか □ 考査担当者の確認を受けましたか □ 引用したデータ・グラフや情報の根拠・出典、番組で行った実験データや科学的論 拠および監修者の意見等の資料を保管していますか

(6)放送後の対応

□ 丁寧なレスポンス資料を準備しましたか □ レスポンス資料を視聴者情報部や広報部に届けましたか □ 視聴者からの番組に対するメールに目を通しましたか □ 回答が期待されているお便りなどには丁寧に対応しましたか

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は じ め に

2 関西テレビ放送 制作責任・担当表(例)

資 料 関西テレビ放送 制作責任・担当表(例)

「 番 組 名 」

〈B制作会社担当回〉

プロデューサー プロデューサー 番組監修者 構成作家 総合演出 ディレクター A D プロデューサー コーナー監修者 ブレーン チーフディレクター ディレクター A D リサーチャー AAAA BBBB CCCC DDDD E E E E F F F F GGGG HHHH I I I I J J J J KKKK L L L L MMMM NNNN 関西テレビ A制作会社 Z大学教授 フリー A制作会社 A制作会社 A制作会社 B制作会社 Y製薬 主任研究員 B制作会社 フリー B制作会社 C調査会社 C調査会社

制作業務フロー          におけるチェックポイント

△実験ロケ立会い △実験ロケ・編集立会い △実験ロケ・編集立会い △実験ロケ立会い ◎:責任者 ○:関係者 △:条件付関係者 役 割 氏 名 所 属 備  考

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3 関西テレビのコンプライアンス・考査体制

(1)考査体制の強化のため各局に

「コンプライアンス責任者」を配置する

考査体制の強化のため各局に「コンプライアンス責任者」を配置する。 ライン部長を対象とするが、原局の状況によって適切な立場の者(編集長、プロデ ューサー等)を任命する。同様の理由で複数であることもあり得る。 各局の「コンプライアンス責任者」は、局内における様々な案件に関与し、コンプラ イアンスの確保に努める。また番組の制作、イベントの催行、出版などコンテンツの制 作に関わる職場では、より現場に近い場所で考査責任者としても機能する。 同責任者は、現場担当者からの相談に応じ、的確な助言を行うなどコミュニケーシ ョンを密にするとともに、組織全体の意思疎通を円滑にする。

(2)コンプライアンス・放送倫理担当と

コンプライアンス責任者の連携

コンテンツの制作に関わる職場においては、既設のコンプライアンス・放送倫理担 当が、コンプライアンス責任者を統括し、豊富な経験や情報量に立脚したより肌理の 細かい助言を行うとともに、発生した案件に対して適切な対応をする。 またコンプライアンス・放送倫理担当は、これまでと同様、各種研修や社内外のスタ ッフの教育に資する活動を企画し実施する。その際、コンプライアンス責任者との間 での連絡を密にし、より効果的な施策を検討する。 資 料

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は じ め に

(3)コンプライアンス考査責任者会議

コンプライアンス・放送倫理担当とコンプライアンス責任者が一堂に会する会議を 定期的に開催し、情報を一元化するともに、コンプライアンスの確保に関わる諸施策 を検討し、効果的に実施する。 * 次ページ以降 本文中「外部調査委員会報告書」「調査委員会報告」は「発掘!あるある大事典」調査委 員会(熊 勝彦委員長)より2007年3月23日付でいただいた「調査報告書」を指します。 *本文中 「放送基準」とは、「関西テレビ放送 放送基準」を指しますが、「関西テレビ放 送 放送基準」は、日本民間放送連盟放送基準に完全準拠しています。 *本文中「放送基準解説」「解説書」は日本民間放送連盟放送基準解説書を指します。 *2007年6月現在、関西テレビ放送は日本民間放送連盟の加盟社ではありませんが(除名 処分中)、「放送基準解説書」他の資料引用・転載については日本民間放送連盟番組 部に許諾をいただきました。

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番組を企画する

ガイドライン

第1章

はじめに企画があった

一つの番組が制作・放送へと至る出発点は「企画」にあります。 企画書がプロデューサーや上司、編成担当者などによって吟味され、ゴーサインが 出された時点で初めて、番組として具体化して行くということはすべての番組が常に 辿る過程です。 それでは「企画」の原点とは何でしょうか? それは一言で言えば、私たち一人ひとりの「個人」です。 企画書を作成するときに、誰かと共同で考えたり、アイデアを構成スタッフに整理し てもらうといったことはあるかもしれませんが、「企画」そのものの原点は、あくまで私 たち一人ひとりの「個人」から発せられるものです。 しかし、「企画」が具現化し、番組となって完成し、電波に乗って視聴者の皆さん に送り届けられた瞬間に、「個人」を原点としてスタートした「企画」は、公共的使命 を担った関西テレビというメディアの、もしくは放送事業者という「社会的公器」による 表現となります。 「個人」から発したものが最終的には「公器の表現」となる。このことは、例えば、 芸術家が絵画や音楽作品を純粋な自己表現の発露として世の中に発表することと は、大きく異なる認識とそれに則った過程が求められていることを示しています。 と言っても、「公器の表現」となる、ということは、テレビ番組がただただ堅苦しくな ることや、萎縮したものになることを求めているのではありません。エンターテインメント をお届けすることも立派な公共的使命だと考えます。しかし、どのような内容であれ、 「企画」が決して会社や組織からではなく、あくまで「個人」から発するものであると いう前提の上で、企画者(もしくは制作者)はその責務として、その「企画」が番組と なって広範に視聴者の皆さんに届くということはどういうことなのか、「放送人」として

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第 1 章   番 組 を 企 画 す る ガ イ ド ラ イ ン 「発掘!あるある大事典」調査委員会報告書より 地上波テレビ放送局は、複雑に絡み合った分業と相互の協力なしには成立でき ない。(中略) そこには役割の定義と規律とガイドラインを明確に示すことができるものもあれば、 それらをむしろ意図的に曖昧にし、自由闊達な活動を促すことによって、これら複雑 に絡み合う分業・協力構造総体の成果として生まれる「番組」を豊かに実らせる性 質の仕事もある。この後者の仕事分野の広い点が、放送にかぎらず、広く言論表現 や文化に関わる事業の特徴と言ってよい。 しかし、このことは、その分野に携わる人々が無責任、放埓でよいということを意味 しない。外部から規制・制約されることが少ない代わりに、みずからの良心と価値意 識に基づいて自己を律し、課題には真摯に取り組み、協力を仰いだ人たちの言説と、 そこで得た知識や事実を尊重し、他者からの助言や忠告や批判には謙虚に耳を傾 けること―言論表現や文化に関わって活動する人間には、こうした内発的倫理に 基づく姿勢こそが求められている。

(21)

「企画意図」∼誰に何を伝えたいのか∼

「発掘!あるある大事典」調査委員会報告書より 私たちはそれぞれの段階の会議資料や取材テープを検証したが、そこで強く印 象づけられたのは、多くの関係者から、その番組、そのテーマ、その事実に対して強 い関心を持ち、敢然と取り組むのだ、という明確な意欲や意気込みを感じ取れなか った、ということである。どこか他人事なのだ。だれもがどことなく他人任せであり、自 分はそのテーマや事実や知識を本気で信じてもいなければ、真正面から取り組ん でいるわけでもない、という気配が漂ってくる。いったい何のために集まっているの か、ヒアリングを繰り返しても、じつはよく分からないのだ。 「納豆ダイエット」の制作過程で仔細に検証したように、当初、番組の軸として取 り上げることにしていた成分βコングリシニンについて、その研究者と連絡も取らず、 話も聞かないうちに、現場を統括する立場の制作幹部らも顔を揃え、番組の基本方 針を決定する企画会議( 分科会 )が2度開かれ、2度とも成分そのものや研究内 容の検討ではなく、納豆の食べ方やダイエット効果の演出法に議論が流れていっ ている。 もう一例を挙げれば、やはり制作幹部をまじえ、スタジオ収録直後のVTRチェック が行われたとき、幹部らはDHEAについて語る人物がF3教授からF1教授に変更 されていたことに、ほとんど気がついていなかった。 制作関係者のあいだに漂うこのいい加減さを、私たちは「当事者意識の欠如」と 呼んでおきたい。 番組制作において最も重要で、かつ決して欠くことができないものが「企画意図」 です。企画者(もしくは制作者 )は、その番組を通して、どのような人々に何を伝えた いのか。これはドキュメンタリーやドラマに限られたことではなく、たとえ全編ナンセン スギャグ的なコントを見せていくお笑い番組においても必要なことです。 また、「企画意図」とは、企画書に文字として記された「企画意図」という狭い意味 にとどまらず、企画者(もしくは制作者)のより深いところにあるもの、ある種の魂とでも 言うべきものなのかもしれません。

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第 1 章   番 組 を 企 画 す る ガ イ ド ラ イ ン 番組を制作し放送するにあたり、私たちが遵守しなければならない法令や放送基 準。社内的には、上司や、編成・営業といった各セクションの同意。また、予算規模や スタッフメイクの問題、技術的課題。そして、世間の風潮や時代の趨勢、目標視聴率。 そして何よりも視聴者。 これらの関門は、自分自身の企画意図を具現化するときに、あるときは応援者とな り、あるときは大きな壁となることがあります。しかし、テレビ番組は、個人の発意が公 共的使命を担うメディアの表現として世の中に出て行くものだからこそ、当然のことと して、これをクリアしていかなければならないのです。 苦難続きの、この道のりを乗り越えて行くための原動力は、「自分の企画意図を伝 えたい、表現したい、世に問いたい」という情熱です。この情熱があるからこそ、この 情熱の実現のために番組制作に対して、より積極的に、より慎重に取り組むことがで き、番組の制作過程に問題がないかチェックすることができるのです。チェックマニュ アルやチェック体制を整備することは大切なことですが、企画意図に支えられた番組 を具現化していく情熱がないと、本当の意味で番組に魂を込めることはできません。 また、社内の関門、ある種のハードルとなる上司や編成部門、営業部門、経営陣等 の意思や方針が、当然のことながら、本来の企画意図の具現化を損ねるようなただ の障害となってしまっては意味がありません。テレビ番組が「個人の発意」を原点に、 情熱を原動力としてかたちとなり、それが公共的使命を担うメディアの表現として世 の中に出て行くということを十分に理解した上で、その過程のすべてに責任と愛情と 敬意をもって、それぞれの部署がそれぞれの役割を果たす必要があることを忘れて はなりません。

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 企画者(制作者)にとっての視聴率

「発掘!あるある大事典」調査委員会報告書より 視聴率を回復するために、前述したとおり面白く、分かりやすく、スピード感があっ てかつお役立ち感がある番組として、「あるあるⅡ」が企画され成立した。そして、 この企画が視聴者の関心を呼び、視聴率が上がったため、次第にこの視聴率を維 持するために内容が断定的効果を謳うものへと過激化していった。このような経緯 は、明らかに視聴率本位の制作態度の現れといわれても仕方あるまい。 「発掘!あるある大事典」調査委員会報告書より インターネット等でたびたび番組内容の正確性につき批判され、さらに平成17年 4月、あるあるを取り上げた「真に受けてはいけない─氾濫する健康・ダイエット商品 の恐いウソ」が出版されるなど、「あるあるⅡ」の情報の正確性に対する批判本が 出版されていた。このような現象は、そのような批判の内容の真偽や正確性は措く として、健康番組に対する社会的関心が高まり、そして社会の監視が強まっている ことの証であったと見られる。 したがって、健康番組とりわけ視聴率も高く視聴者の注目を浴びている健康番組 を制作している担当プロデューサーや担当部局においては、批判されている箇所を 検討するだけでなく番組制作全体のあり方を再チェックし、上述したような番組制 作のチェック体制を設けることを新たに検討してもよかったと考えられるが、何ら特 段の検討はなされなかった。 テレビはマスメディアのなかで大きな存在です。「マス」に向かって発信するわけ ですから、自分が作ったものをより多くの方に見ていただきたいと願うことは当然の摂 理であり、どれだけ多くの人が見てくれたかを示す指標として存在する視聴率をより 高く求めることは、決して非難されるべきものではありません。公共的使命をより有効 に果たすという観点から見ても、視聴率は低くてもかまわないということにはならない でしょう。また民間放送である以上、視聴率は重要な営業指標であることも否定でき ません。しかし、だからといって数字の「量」だけを見つめていて果たしてよいのでし

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第 1 章   番 組 を 企 画 す る ガ イ ド ラ イ ン 組を作れたら……。私たちは、そのときの心を今も忘れず持っているでしょうか? 番組を誰に向けて作っているのか? あるいは、何のために作っているのか? 番組を見ているのは視聴者です。制作者はより多くの視聴者により深く伝えたいと 思っていますが、テレビ放送は例えば舞台公演とは違い、お客様の反応が直接的に は伝わってきません。端的に分かるように思えるのは、視聴率という目安です。とはい えそこには、文字通り数字だけがあり、視聴者の顔は見えません。笑っているのか、 泣いているのか、怒っているのか。 しかしそれでも、視聴者に向かって番組を制作する限り、常に視聴者の顔を思い 浮かべましょう。まずは、親兄弟など愛する人たちから、そして、見知らぬ人々の顔を 想像しましょう。その人たちに番組を通して自分の思いが伝わっているのか。番組は 数字だけで表せるものではないのです。 視聴率とは、テレビがいかに見られているかということを示す指標の一つに過ぎな いのですが、量的結果を明快に数値で示すために、とかく一人歩きしがちです。し かし、どのように見られたかという質的結果は直接的には示していません。世の中に どのように影響を与えたかということも数字だけでは読み取れません。 本来、拠り所とすべき指標は、決して視聴率だけではありません。視聴者の方々か らの意見・感想は言うに及ばず、上司、同僚、仕事上のパートナー、家族、友人とのコ ミュニケーションや、世の中の動静を常に感じること、想像力を豊かにして考えること、 そして最も大切な自分自身の良心。 数字にならない指標はたくさん存在するはずです。

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 視聴者が求めるもの、企画者(制作者)が伝えたいもの

「発掘!あるある大事典」調査委員会報告書より 生活情報バラエティ番組の「分かりやすく」「面白く」という制作手法を目指す事 自体は悪いことではない。事実などの背後にある難解な説明や入り組んだ経緯を分 かりやすく、面白く見せるには大変な技量が必要であり、それをしようと挑むことには 意味がある。 しかし、「あるある」では、こまごまと、複雑な事実を集めても、番組では使えない、 そんなことに手間やコストをかけるより、ものごとすべてを単純化し、簡単に、手軽に 分かることの方がいい、という発想が、制作現場に浸透し、その全体を覆い尽くして いた。 テーマが設定され、それにふさわしい具体的な事実・真実・知識に焦点を当て、そ こから手軽で有用なノウハウを引き出し、リサーチも実験も取材も、この流れに沿って 進んでいった。 テーマに沿った、都合のよいコメントや事実だけが集められ、編集が進み、番組と して仕上げられていった。 「発掘!あるある大事典」調査委員会報告書より 成分の効能について、あるいは学術論文の意義について、出席者からの強烈な 好奇心を示す発言もなければ、疑義や疑問を呈するような申し立てもない。議論の 多くは「いかに見せるか」「演出法はどうか」「視聴者には分かりにくくないか」「日 程は大丈夫か」等々に費やされており、番組の核心となるはずのファクトそのものに ついては、企画発案者の通り一遍の説明で終わっている。 関西エリアにおいて世帯視聴率の1%は約8万9千世帯。20%を獲得すれば178 万世帯もの人々が視聴していることになります。途方もなく多くの人々に同時に情報 を伝達する地上波テレビ。この巨大なメディアに従事し、日々番組を送り届けようとす る私たちは、何を伝えていくべきなのでしょうか。例えば、視聴者の皆さんが見たいも の、視聴者の皆さんが求める情報をひたすら突き詰めてお届けするべきなのか。そ

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第 1 章   番 組 を 企 画 す る ガ イ ド ラ イ ン か」「いかに分かりやすくするか」という演出テクニックを駆使して、ただお届けすれ ばそれでよいのでしょうか。それは短期的には視聴率アップをもたらすかもしれませ んが、それだけではテレビ本来の役割を果たしているとは、とても言い切れません。 のみならず、見たいもの・欲しい情報を効果的に送り届ける手法ばかりに気をとら れすぎると、過剰な演出や、情報の都合のよい切り売り、さらには最悪の場合、やらせ や捏造さえも生んでしまうおそれがあるとも言えます。 また、個人の発意を原点とする企画者(もしくは制作者)の企画意図、情熱、誰に 何を伝えたいかという意志、メッセージといったものがないと、いくら見たいもの・欲し い情報を効果的に送り届けようと技巧を凝らしても視聴者には十分に伝わらないで しょう。またそれと同時に、番組の制作過程に問題がないかどうかチェックすることも できないのではないでしょうか。 番組は多くのスタッフの共同作業によって制作されます。そこに関わる全員がその 番組の「企画者」であることは当然ながらあり得ません。しかし、そのスタッフの一員 として制作に携わる限り、この番組は何を伝えようとしているのか、どんなメッセージを 込めようとしているのかを常に意識し、感じていなければなりません。 企画者(もしくは制作者)の企画意図やメッセージが、視聴者の皆さんの見たいも の・欲しい情報といかにリンクしあうか。あるいは視聴者の皆さんに、それまで自らが 気付いていないような種類の見たいもの・欲しい情報を、新たに発見させる番組の可 能性や先見性。客観的事実を決して捻じ曲げることなく、豊かな創造性を発揮して いくモノづくり。こうしたテレビならではの真のクリエイティビティを発揮するために、プ ロフェッショナルとして日夜悪戦苦闘し、創意工夫を凝らして番組を具体化していく のが、テレビ番組制作者の本務であると考えます。 そしてそれこそが、「放送人」の醍醐味とさえ言えるのではないでしょうか。

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 常に「いま」に敏感であるために

「発掘!あるある大事典」調査委員会報告書より しかし、このころの社会情勢として、健康志向の高まりに伴い、例えば平成14年 に中国から輸入されたダイエット商品による健康被害が社会問題化するなどし、 (中略)健康の保持増進の効果等に関する虚偽又は誇大な広告を禁止する健康 増進法の一部改正が平成15年8月29日になされていた。 これを受け、民放連においても、健康関連番組の増加を踏まえ、番組における取扱い の適正化を図るため、留意すべき事項を定めるとともにテレビショップ等に関する規定を 新設し、視聴者保護に関する自立的取組が強化され、以下のとおり、放送基準57条に 新たな健康情報が加えられることになり、平成16年1月30日、民放連放送基準審議会よ り各放送局宛に放送基準の改正の通知がなされていたことは、前述したとおりである。 関西テレビは、同時期に上記のような番組を制作するのであれば、このような情報 番組に対する環境の変化を敏感に受け止め、その趣旨に十分に配慮した番組作り を進めるべきであったといえよう。 「発掘!あるある大事典」調査委員会報告書より 意図したテーマから外れたり、テーマに反するコメントや事実はいらないということ である。それらは当然のように、切り捨てられる。事実や真実や知識がそれほど単 純なものでないことは、いくら強調してもしすぎることはないが、いまはそのことはおい ておく。要は、テーマに沿った、都合のよいコメントや事実だけが集められるというこ とである。そうやって編集が進み、番組として仕上げられていく。 ここにないのは、コミュニケーションである。都合のいい説明やコメントをしてくれる 相手とすら、本質的なコミュニケーションが成り立っていない。あたかも必要な材料 だけを調達してくるように、番組で使えそうな言葉だけを拾ってくる。テレビは最大の マスコミと言われながら、ここには取材する側とされる側とのあいだの真剣なやりとり がない。葛藤がない。コミュニケーションがない。 これは専門的な知識の、安直な利用である。 問題は、その核心に位置して、番組制作そのものに携わっている人々の精神と活

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第 1 章   番 組 を 企 画 す る ガ イ ド ラ イ ン 「個人」を原点としてスタートした「企画」は、「番組」となって各家庭のお茶の間 に、自室の個人用テレビに、そして今やワンセグ携帯端末にまで送り届けられます。 「番組」が視聴者の「現在」に、市民の日常生活の「いま」に次々と送り込まれている のです。 だからこそ、テレビ番組を企画、制作していくときには、常に「今なぜこの番組を作 るのか」という問いが投げかけられます。「世の中」の「いま」をいかに捉え、いかな る方法で、「個人の発意」を起点としてスタートした「企画」に込められたメッセージ を発していくのか。企画者(もしくは制作者)の「いま」との真摯な向き合いが求めら れます。 私たちをとりまく環境の「いま」、すなわち社会問題、世間の風潮、時代の趨勢、メ ディアの「現在」に常に目配りをしておかなければならないのは、言うまでもありません。 しかしこれは、決してとりまく環境の「いま」にただ迎合すればいいということではあり ません。「いま」を敏感に感じ取り、冷静に分析し、「今なぜこの企画を出すのか、こ の番組を作るのか」という問いへの答えを常に持っていなければなりません。まさに 企画者(もしくは制作者)自身の「いま」の立ち位置を問われていると言っても過言で はありません。 ではそのために、私たちはどのように心がけるべきなのでしょうか。 当たり前のことかもしれませんが、それは、私たち自身の日常の心がけやアンテナ の張り方、そして自己啓発への取り組みにすべて集約されています。 まずは、日常のあらゆる「情報」に触れ、自ら「現場」に身を置き、自分自身で実感、 体感すること。新聞、書籍は言うまでもなく映画、芝居、コンサート会場、演芸場。ある いは市場や祭り、雑踏などに、とにかく足を運び、自ら感じ取る。とかく多忙で生活時 間も不規則になりがちな制作現場ですが、「番組を作る」ことが本務であるからこそ、 やり繰りをしてでも時間を割くべきでしょう。 そして家族、友人、近隣の人々との会話。さらには地域の視聴者の皆さんとの会 話の機会を作り出す努力。あるいは職場の先輩・後輩、制作パートナーとのコミュニ ケーション・議論など、より多くの人々と日頃からモノづくりに関して語りあうことも非常 に大切です。また、社内外を問わず、スタッフを教育・指導していくことも私たちの大き な責任です。 こうした不断の努力の積み重ねが、「当事者意識」を生み、たゆまぬ「想像力」を 育み、企画者(もしくは制作者)自身の「いま」を自ずと豊かにしていくのです。そして、 そこから湧き上がる「個人」の「当事者意識」を原点とした「企画」と、「想像力」を駆 使した「モノづくり」こそが、「番組」としての本当の輝きをはなっていくと確信します。

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「企画」が「番組」として一歩を踏み出す前に……

(1)実現の可能性を精査する

この章ではここまで、私たち「個人」から湧き上がるプロフェッショナルな「放送人」 としての「企画意図」の重要性と、その土壌となる私たち自身の日常の心構え、そし てその「個人」を原点とした「企画意図」を「番組」として世の中に投じていくための 情熱と切磋琢磨の必要性を論じてきましたが、さらにこの項では、「企画」が番組制 作過程へ一歩を踏み出す前に必ず行っておくべき「実現の可能性の精査」につい て述べます。

(2)主なチェックポイント

企画者(もしくは制作者)は、ある種の「思い」あるいは「魂」ともいえる「企画意図」 を、番組制作を取り巻く諸条件の中で「どのように具現化するのか」というプランを持 っておく必要があります。 むろん番組制作は膨大な過程を伴う共同作業ですから、特に企画者と制作者が 同一でない場合などは、すべての条件を精査することは困難かもしれません。また、 演出の領域に直結する事柄が多数含まれるので、どこまでが企画者の領域で、どこ からがプロデューサーやディレクターの領域かといった分かちがたい問題もあります が、実現性に乏しい企画を強行することは様々な意味で危険ですので、できる限り 情報を収集し、想像力を駆使してしっかりとしたプランニングを行いましょう。 ここにその主なチェックポイントを列挙します。 1)番組内容そのものの実現性 インタビュー証言や特定のデータ、情報を根拠とするような企画の場合、それら を番組内の表現として確保できる可能性を十分に持っているのか、あるいはそれ らの正確性を担保できるのか。 あるキャスティング、取材相手、あるいは取材先等の承諾を「核」とする企画の 場合、それらが確実に取得できるのか、あるいは代替案が可能なのか。 番組制作工程に危険は伴わないのか。安全性は担保されるのか、など。

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第 1 章   番 組 を 企 画 す る ガ イ ド ラ イ ン 2)編成枠・予算 想定される編成枠はどこか、想定編成枠の時間帯特性や視聴者構成特性と企 画が乖離していないか、想定枠予算に見合う企画か、あるいは逆に企画に見合う 予算が確保できるのか、など。 3)制作体制(人員) 社内の制作対応人員は確保できるのか、企画に適合した能力を持つスタッフ等 は確保できるのか、適正な委託先は確保できるのか、必要に応じて番組監修者を 確保できるのか、など。 4)制作期間(納期) 放送想定日までの制作期間に無理はないか、取り扱う内容・テーマが取材時期 と合致するか、番組宣伝・広報に必要な期間が確保できるか、など。 5)制作環境(設備・技術) 必要なスタジオなどの収録場所・中継車、編集・MA設備等が確保できるのか、 技術的に表現可能な内容なのか、など。

(3)番組企画書および制作報告書への

「情報の正確性確保の方法」の記載

番組で取り扱う情報が正確であるべきことは論を待ちません。しかし、番組制作が、 その制作体制や演出手法、制作期間、予算等の多様かつ複雑な条件下で行われ る以上、そこに落とし穴がないとは言い切れません。 番組のジャンルや企画内容によって濃淡はありこそすれ、例えば科学的根拠を前 提とする企画等の場合は、必要に応じて、番組監修者の配置、実験の方法、実験デ ータの提出・保管、根拠となる論文等の提出・保管、インタビュー記録の保管など、科 学的根拠の正確性を確保するための方法を講じる必要があります。 こういった企画の場合は、これらの「正確性確保の方法」を番組立ち上げどきの 「番組企画書」や制作・放送終了後(もしくは半期ごと)の「番組制作報告書」に記 載するなどして、チェックが行える体制を確保しましょう。

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(4)番組監修者の充実と強化

番組の内容自体が科学的知識を取り上げている場合や、レギュラー番組内に科 学的知識を取り上げるコーナーがある場合などには、内容に応じて、番組監修者とし て専門家に番組スタッフとして入ってもらう必要があります。 その上で、番組企画段階・構成段階・編集段階等の各段階において、必要に応じて 監修者にチェックしてもらわなければなりません。番組独自で実験やシミュレーションを 行う際には、当該事項の専門家や学者とともに、番組監修者にも協力を求めましょう。

(5)企画提出から着手申請へ……必要な社内手続きの確認

企画書を提出後、プロデューサーや上司、編成担当者などが吟味し、ゴーサイン が出たらいよいよ番組制作プロセスに突入します。関西テレビのプロデューサーは社 内規程に基づいて、まずは着手申請書に番組企画書を添付して提出し、制作着手 承認を受けなければなりません。 関西テレビではこのほかに、実行予算決定のための稟議手続きや制作委託契約締 結、タイアップ報告、広報・ホームページ等への対応、視聴者情報対応、JASRAC報 告等の権利処理、そして制作・放送終了後(もしくは半期ごと)の番組制作報告書の 提出など様々な手続きや対応業務があります。関西テレビの社内規程等に従って遅 滞なく手続き・対応を行う必要があります。

(6)制作・責任担当表……

制作フローの確認と責任担当表の作成・共有

番組制作にはプロデューサーやディレクターのみならず、構成作家やブレーン、リ サーチャー、ロケ・ディレクター、アシスタント・ディレクター、再委託先など多種多様なス タッフが関わります。それだけに、それぞれの担当者の役割と責任は何なのかを明 確にし、かつ番組制作コンプライアンスの観点から、これを社内のしかるべき関係者 が把握しておく必要があります。 そこで、番組制作体制が構成されたら、番組制作フローの確認と、番組制作フロー の各段階において関わるスタッフと、それぞれの責任について十分に検討した上で決

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制作・演出のガイドライン 

第2章

第 2 章   制 作 ・ 演 出 の ガ イ ド ラ イ ン

迷いがあればスタートラインに戻る

企画書や台本は、建築でいう設計図にあたります。設計図を基に条件内でいかに 上質な建築物を建てることができるか。制作者、特に監督(ディレクター)の腕の見 せどころです。 ただ、番組が建築と違うのは、相手が人間であり、人の心だというところです。それ だけに、制作が進めば進むほど、思い通りにいかないことが多く、そのたびに当初に あった設計図を書き換えていくことになります。しかし、また多数ある表現方法の中で 最上のものを選ぶことの醍醐味がここにあります。迷いがあれば、今一度スタートライ ンに立ち戻ってみましょう。 ここでは、番組を制作するなかで、「制作、演出」という、企画に魂を入れ、生き生き とした番組にするための重要なプロセスの話をします。 ただ、同じ番組でもドラマ、バラエティ、情報、ワイドショー、ドキュメンタリー、報道番 組などその顔は様々でその境界線も曖昧です。視聴者もジャンルによって見方が変 わるときと、そうでないときがあります。情報バラエティ番組で時事問題を扱えば報道 ニュースと捉えられたり、また、バラエティ番組でシリアスな社会問題を扱っても、面白 おかしく紹介していると反感を受けるときがあります。そこで、この章では制作番組の 取材に関する事例を中心に記載しますが、次章の報道取材のガイドラインも参照の 上、活用されることを望みます。

(33)

 事前取材・リサーチ

(1)インターネットの便利さと危険性

最近、リサーチの多くの部分を、スタッフはインターネットに頼っていることが多いよ うです。しかし、インターネットの情報がすべて正しいとは限りません。 また『マリファナの育て方』や『爆弾の作り方』等非合法なことまで、インターネット による情報収集が可能な時代です。インターネットには規制がないといっても過言で はない、インターネットで入手できる情報は世間で認知されている事実や常識とは異 なるということを大前提にしてください。 「発掘!あるある大事典Ⅱ」納豆ダイエット編 当初、調べていた大豆に含まれる成分(βコングリシニン)でダイエット効果を説明し ようとしていたが、取材先から断られ変更することになった。次に新たな成分(DHEA) の情報を他番組より入手し、すぐにインターネットで<DHEA・やせる>で検索したと ころ、アメリカの大学の研究に行き当たった。本番収録までの時間は迫り、研究内容 の詳細を調べたり分析をすることも不十分ななか、制作する側にとって有利な一部の 情報を頼りに外国人の大学研究者にインタビュー取材を申し込んだが、思うような取 材ができなかった。

(2)雑誌などのネタには怪しい噂・伝聞も含まれる

また、活字メディアには規制がありません。表現の自由はテレビ媒体とは異なるレベ ルのものです。 名誉毀損であるとか、プライバシーの侵害であるとか、差別の表現であるとか、記 事内容の真偽や正当性が法廷で争われることもままあります。出版社は常に係争中 の案件をたくさん抱えている状態になっています。電波法や放送法の規制を受ける テレビはそうではないという実情を改めて認識しておいてください。 つまり、週刊誌のネタ( 噂 )を鵜呑みにして一般に認識されている事実だと捉えな いで、しっかり吟味してください。 また事実だとしても、周辺情報も深く調べることが大事です。

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第 2 章   制 作 ・ 演 出 の ガ イ ド ラ イ ン

(3)リサーチャーまかせにしない

リサーチャーは基本的に前述したような情報源を頼りにネタ探しをしています。し たがって、上がってきたネタは、採用に当たって、ディレクターがもう一度自分で裏づけ を取る必要があることを忘れないでください。くれぐれもトラブルがあったときに、リサ ーチャーが調べたことだと責任を押し付けるような形になってはいけません。 箕面サル事件 箕面の滝近くにとても多く生息する「箕面のサル」。新緑や紅葉の季節など、滝を 訪れる観光客に襲いかかったり悪戯したりとやりたい放題でその凶暴さが特に話題 になっていた時期のこと。対策に苦慮していた人々に朗報!と、ある夕刊紙の記事に なったのが「野生のサルに音楽を聞かせるとおとなしくなる……!?」という報告。とり わけ、阪神タイガース絶好調だったその年は、なぜか「六甲おろし」を聞かせるととたん にコロリと静かになり沈静化に一番効果がある?!という超面白データ。 「これは面白い!」と記事に飛び付き、十分な周辺リサーチを怠ったままロケに出発。 取材を終え無事放送も終了したのだが、ここで大問題発生。 【問題①】 箕面の山に生息する野生サルは天然記念物である。 テレビ取材については文化庁および箕面市教育委員会の許可が必要 である。 【問題②】  本来リサーチ段階で「許可」について認識するはずであるが、会議室・分 科会の誰もそこに気が付かずにスルーしてしまっている。 結局、放送後、箕面市教育委員会の指摘があるまで気が付かなかった。 【問題③】 「カンテレさんこれで2回目だよ!」 極めて短い期間で違う番組で同じミスを繰り返していた。セクションにと らわれず事例の情報共有が不可欠である。

(4)科学番組ということに限定されるわけではない!

私たちが専門外のことを扱うことは、テレビのテーマではしばしばあります。そうい ったテーマを与えられたとき、専門家の知識を借りることになります。テレビは専門家 の難解な説明を視聴者の皆さんに分かりやすく伝えねばなりません。この部分は実 に番組のデリケートな部分です。「分かりやすく」を錦の御旗に「勝手な解釈」を与 えることは完全なルール違反です。 分かりやすく表現するためにまず、自分がそのテーマの専門家の説明を完全に理 解できるというハードルを越えてください。

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 企画構成会議

(1)コーナー企画、ディレクターの第一歩

1コーナーを任される、あるいはロケ取材を1本任されるということはディレクターとし て独り立ちする第一歩であります。自分の発想、企画、表現力、感性をスタッフにも、 視聴者にも示すこの一大事を決して他人に委ねることなく自力で精一杯取り組んで ください。 まず、自分で感じたこと、思ったことは何か、人に伝えたいことは何か、これが最も 大切なことです。これを自分に問い直してみる。その後に構成作家にぶつけたり、先 輩ディレクターに演出手法を相談したりしてみてください。 また、取材に入る前には、対象者との条件があれば、明確な形で表しておきましょう。 取材の条件 外部ディレクターに発注のロケ取材で、放送後、取材先から「協力スーパー等が入 っていなかった」とのクレームが来た。情報番組やバラエティ番組において、取材され る側がなんらかのメリットを期待するのも当然である。取材される側が期待するメリット は何なのか、きっちりと把握しておかなければならない。 社員ディレクターが取材の場合、取材条件等はプロデューサーまで伝わりやすいが、 外部ディレクターに発注の際はきっちり伝わりにくいということがあるので、場合によっ ては簡単でもよいから、文面を残し誤解のないようにしておくことが望ましい。 取材する側から、される側へ、取材の結果につき、番組上どのような取り扱いをする のか伝えておくべきである。

(2)事件は会議室でも起こる

おかしいと感じたことは必ずこの会議でぶつけ合うのが基本 ぶつけられた方も腐らず、怒らず 不明確な出典や、事実か噂かの判断もここで確認しあうのが基本 スタジオにせよロケにせよ、企画の内容はどんなに面白いと感じてもまず、その裏づ けを取ってください。そして、全体会議でいろんなスタッフの前で披露してください。

参照

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