公益財団法人 日本卓球協会
For the
Player
勝利をめざす前に
大切なことがある。
手
編
発行:公益財団法人 日本卓球協会 監修:指導者養成委員会・競技者育成委員会・強化本部 ※写真はすべてイメージです「おはよう」「こんにちは」「ありがとう」。こちらから元げ ん き気 にあいさつをすれば、笑え が お顔のあいさつが返か えってきます。 競きょうぎじょう技場、練れんしゅうじょう習場を使し よ う用した後あ とはゴミは残の こさず、忘れ物も のはし ない。スポーツマンとして当あたり前ま えのことを実じ っ践せ んしましょう。 スポーツにはルールがあります。卓球にもルールがありま す。ルールがあるからゲーム(試合)が展て ん開か いできるのです。ゲー ムは、ルールに従したがって相手選せ ん手し ゅと戦たたかい、審判員がルールに基も と づいて勝かち負まけを判は ん定て いします。ルール・相手・判定を尊重し ながら試合を進す すめていくことが、スポーツの原げ ん点て んです。
あ
い
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卓た っ球きゅうはルールを尊そ ん重ちょうし、相あ い て手を尊そ ん敬け い(リスペクト)するスポー ツです。アンフェア(不ふ せ い正)な試し あ い合態た い ど度で勝しょうり利しても、あなた は誰だ れからも勝しょう者し ゃとして尊敬されません。 また、指し導ど う者し ゃや保ほ ご し ゃ護者、自じ ぶ ん分のまわりのサポーターへの感か ん謝し ゃ の気き持もちを持つことが大た い切せ つです。対た い戦せ ん相手への尊敬と、自分の 試合をジャッジしてくれた審し ん判ぱ ん員い んへの尊敬と感謝の気持ちも忘わ す れないでください。 卓球から得えられることは勝利の喜よろこびだけではありません。卓 球という素す晴ばらしいスポーツとの出で合あいに感謝することで、あ なたは無む げ ん限の楽た のしみを得ることができ、生いきていくうえで大切 な数か ず多お おくのことを学ま なぶことができるはずです。卓球が
好き
な選手たち
へ
。
「スポーツマンシップ」とは、スポーツマンとしての品ひん性せい とマナーを身みにつけている態度のことです。選手として、試 合では勝つために全ぜん力りょくを尽つくすのは当とう然ぜんですが、それは勝つ ためには何なにをやっても良よいということではありません。ス ポーツマン同ど う し士が競きそい合あい、高たかめ合うから、スポーツをする こと自じ た い体を楽しむことができます。 格かく下したの相手に対たいして手てを抜ぬくようなプレーをしたり、試合 が終おわってから相手や審判員と握あく手しゅをしないでベンチに戻もどる ……このような態度はスポーツマンの態度とはいえません。 どんなにうれしくても、悔しくても、相手と審判員に敬け い い意を はら スポーツマンシップにのっとり、 ルールを正た だしく理り か い解し、 ルールを守ま もり、相手と審判員に敬意を払い、公こ う正せ いな態度を持 つことがフェアプレーです。 勝つためには何をしても良いのが卓球ではなく、選手とし て自分自じ し ん身が、また相手選手が、そして試合を観みている人ひ とが、 戦い終わって清す が々す がしくなるような試合態度でプレーをしま しょう。 フェアプレーで試合をするからこそ、卓球をやる意い味みがあ り、卓球というスポーツの価か値ちを高た かめられるのです。
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負けて悔しすぎて、あるいは勝ってうれしすぎて、試合後に相手選手 や審判員と握手しないのはスポーツマンシップに欠かける行為です。また、 最 さ い 近き んでは、相手の顔か おも見みずに、手のタッ チだけという場ば め ん面も見み 受う けられますが これも好ましくありません。相手に敬 意を払いながらしっかりと握手をする ことがスポーツの礼れ い ぎ儀の基き ほ ん本です。 負けても、悔しい気持ちを抑お さえ、相手 を尊重し、「正せ い々せ い堂ど う々ど うと試合をしてくれ てありがとう。今こ ん ど度は勝ちますよ」と いう意味も込こ めて、相手としっかり握 手をすることが選手としての礼儀です。
握手はスポーツの礼儀の基本です!
対戦相手と
指導者と
審判員と
相手のサービスミスやネットイン、
エッジボールへの、
ガッツポーズは
NG
(ノーグッド)
!
試合の後に握手を求め、
求められたら無視しない
相手のサービスミスや、マイボールが エッジやネットインで得と く て ん点になった時と きの ガッツポーズは、バッドマナーです。卓 球選手としては好こ のましくない行こ う い為です。ゲーム間か んの休きゅう憩け いや、タイムアウトの 1 分ぷ ん間か んを超こえても、アドバイスが終 わらずに台だ いにつかない場合は、イエローカードの対た い象しょうとなります。1 分 となった時じ て ん点で審判員は 「タイム」とか 「時じ か ん間です」とコールしますが、それは 1 分を過すぎても出てこない時の警告です。 ゲームをスムーズに進めるためにも、 1 分間以い な い内でコートに戻りましょう。ま た、ラリーとラリーの合あ い ま間にわざと相手 をじらすような行こ う動ど うもバッドマナーとい えるでしょう。 判定に抗こ う ぎ議した人に対して、 ベンチからヤジを飛とばす。こ の行為はルール上じょうの処しょ ばつ罰対象 にはなっていませんが、バッ ドマナーであり、関か ん け い し ゃ係者とし ては見み苦ぐ るしく、目めをそむけた くなる光こ う景け いです。場合によっ て(内容によって)警告の対 象になる可能性があります。 自分のモチベーションを高めようとす る言こ と ば葉であったり、ガッツポーズはバッ ドマナーとはなりません。しかし、大お お声ご え で相手をののしったり、汚きたない言葉を使つ かっ たり、観か ん客きゃくに不ふ快か い感か んを与あ たえた場ば あ い合、バッ ドマナーとなり、イエローカード(警け い告こ く・ 2 回か い目めには失し っ点て んとなる)が出でる可か 能の う性せ いが あります。 相手のボールがエッジボールやネット インの時に、「きたねえ」などの暴ぼ う言げ んはつ つしみましょう。 卓球台だ いやフェンスなどをけった り、思お もい切きりボールを投なげつけた りする行為は、バッドマナーとし てイエローカードとなります。こ のような違い は ん反が重か さなるとレッド カードで相手の得点となります。
エッジ、ネットイン時の暴言は違反行為!
自分のミスに怒って、
卓球台をドン !! は違反行為!
時間が過ぎているのに、
コートにわざと戻らないのは違反行為!
抗議中にベンチからヤジを飛ばすのは
バッドマナー
試合中ちゅうにアドバイスしたり、サインを送お く るのは違反行為で、イエローカードの対象 となります。「 頑が ん ば張れ」「ファイト」のよう な励は げましの応お う援え んならアドバイスとはみなさ れませんが、具ぐ た い て き体的に「バックを狙ね らえ」「フォ ア前だぞ」というようなアドバイスや、作さ く 戦せ んを伝つ たえるためのサインは違反行為です。 アドバイスやサインを送った人がイエロー カード・退た いじょう場(ペナルティー)の対象です。
Ping Pong !
スマ
イル
試合中のアドバイスやサインは違反行為!
敗者審判の役目を果たそう
観客席から相手選手
への暴言は違反行為!
大たいかい会では、負けた選手が「敗はい者しゃ審判」として、次つぎの試合の審判を務つとめ るのはよくあることです。負けた直ちょくご後に、次の審判員をするのは辛つらいこ とですが、それが大会のルールならばしっかりと審判員の役やく割わりを果はたす 必 ひつ 要 よう があります。 観客席せきからアドバイスしたり、相手へ のヤジは飛ばさないようにしましょう。 さわやかな応援は良いのですが、相手選 手へのヤジはマナー違反です。1977年ね ん世せ か い界選せ ん し ゅ け ん手権バーミンガム大会、 男だ ん し子シングルスの 7 回か い戦せ ん(ベスト 8 決け っ 定て い戦)でスウェーデンのステラン・ベ ンクソン(71年世界チャンピオン)選 手とドイツのミルフリード・リーク選 手が対戦しました。 ゲームオールの 20対19、ベンクソ ン選手のマッチポイントでした。ラ リーでベンクソン選手が打ったストレートへのバックハンドが、 コートをかすめましたが、セーフともアウトとも言える判断が難し いものでした。ベンクソン選手も「ん?入ったよね……」というジェ スチャーを示し めしていましたが、リーク選手はそのボールを拾ひ ろいに 行ってコートに戻ってくるなり、何な に事ご ともなかったかのように、ベン クソン選手に握手を求も とめ、ゲームが終しゅう了りょうしました。 世界選手権という大お お舞ぶ た い台で、ゲームを決け っする大だ い じ事な場面で、リー ク選手は正々堂々たる態度を見 せました。セーフともアウトと も言える、誰もが躊ちゅうちょ躇したくな る場面で、彼か れはフェアプレーを 貫 つらぬ いたのです。 リーク選手はこの大会で「フェ アプレー賞しょう」を受じゅしょう賞しました。
世界選手権でのフェアプレー賞
「エッジ?」「ミス?」
リーク選手の正々堂々たる態度
column
リーク選手は世界選手権という大舞台でフェ 男子シングルス 7 回戦でベンクソン選 手(手前)と対戦するリーク選手 フェアプレーというのは「公正にプレーする」ことです。 たとえば、こういうケースがあります。相手の打う ったボールが自分 のコートのエッジをかすめた。審判員は見み落おとして「アウト」と判は ん断だ んし、 自分の得点にした。ところが相手選手は「セーフ」だとアピール。 あなたなら、どうしますか? 自分はエッジボールだとわかっていても、判定がアウトだから、「ラッ キー」だと思いますか? 相手選手がアピールしているのに「判定がア ウトなので、自分の得点です」と主しゅちょう張しますか? 相手のボールが入は いっていて、自分の得点ではないのに、ごまかして自 分の得点にしたままプレーを続つ づけると、嫌い やな気持ちを持ったままで戦う ことになります。かりに試合で勝ったとしてもその嫌な気持ちは残りま す。 自分をごまかして審判員の誤あやまった判断のまま得点を受け入いれることは、 ルール違反ではありませんが、「公正=フェア」な態度ではないことに なります。その時に、「今い まの相手のボールは入っています」と審判員に 自 みずか らはっきり言いうことが真し んのフェアプレーと言えるでしょう。自分の失点だとわかっていたら……
イラスト後送卓球はひとりではできない競技です。それゆえ、仲間を大 切にすることが大事です。チームのため、卓球仲間のため、 そして自分を応援してくれるサポーターのための行動をとり ましょう。お互いが助た すけ合い、尊敬し合い、協きょう力りょくしながら卓 球を楽しみましょう。
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人たち
「リスペクト」(respect)は「尊敬する」という意味です。 選手は、試合で「相手」と「審判員」をリスペクトします。コー トに入ったら試合前に相手選手と握手をして、審判員とも握手 をします。そして、ゲーム終了後に同お なじように相手選手と審判 員と握手します。これらは「リスペクト」の気持ちを表あらわす行動 として習しゅうかん慣にしましょう。 普ふ だ ん段の練習では「コーチ」をリスペクトしましょう。コーチ の言葉に謙け ん虚き ょに耳み みを傾かたむけることが、選手の強つ よくなる条じょうけん件のひと つです。 そして、あなたの周ま わりにはサポーターがいませんか。チー ムの応援団だ ん、マネージャーのような裏う ら方か たの人たち、ラケットを 買かってくれたり、送そ う迎げ いをしてくれる保護者の方か た々が た……これらの 方があなたのサポーターです。このサポーターの方々への「リ スペクト」も決して忘れてはいけません。 最さ い ご後に、「卓球仲な か ま間」へのリスペクト。チームメイト、そし て相手チームの選手たちもあなたの「卓球仲間」です。仲間が いるからあなたが卓球をすることができるのです。卓球はひと りでは決してできないスポーツです。仲間へのリスペクトを忘 れないことは、あなたにとってかけがえのない大切なことです。 「今き ょ う日はありがとう」「また卓球をやろうね」「次は負けないぞ」 とお互た がいが声を掛かけ合えるような関係になるためには、そうい う仲間への思いやりや尊敬の気持ちが大切です。「真の勝利」とは、ルールを守り、審判員と相手選手に敬 意を払って正々堂々と戦い、つかみ取るものです。 「真の勝者」とはフェアプレーに徹て っし、審判員や相手選手 からも敬意を払われる選手です。ルール違反やアンフェア なプレーで勝利しても、それは「真の勝利」とは言えません。 審判員や相手選手を不快にさせて勝利しても、その人を誰が 「真の勝者」とリスペクトしてくれるでしょうか。 卓球選手として、最さ い ぜ ん善を尽くし、「真の勝者」となることを めざしましょう。 「グッド・ルーザー」(Good Loser)という言葉があります。 「良き敗者」です。 ルールに従い、フェアプレーで戦い、勝つために最さ い だ い げ ん大限の 努 ど り ょ く 力を積つみ、良いゲームをしましょう。ルール違反となる行 動を取とってはいけません。 良いゲームをするためには勝しょうはい敗にこだわりすぎないことで す。そして、負けた時の態度も大事です。ふてくされた態度 を取らず、負けた結け っ か果を素す な お直に受け止とめ、次に何をすべきか を考えましょう。 それが「良き敗者」の姿すがたといえるでしょう。 選手が敗は い北ぼ くに直ちょくめん面した時、いかに振ふる舞まえるか? 応援し てくれた人や支さ さえてくれた人は、そこも見ているものです。