デザ
イ
ン
・
ミ
ュー
ジ
ア ム の
役 割 を
め
ぐる
い
く
つか
の こ
と
が ら
Some
issues onthe
role ofdesign
museum柏 木 博 武 蔵 野 美 術 大 学
KASHIWAGl
Hiroshi MusashinoArt University1 .
は じめに18
世 紀か ら19
世 紀にかけて広 がっ た博 物 学 と関 連し、
ま た一
八 世紀の 市民社 会を背 景に権
力者が コ レ クシ ョンを 市 民に公開しはじめ たことによっ て博 物館
の 開 設 が広がっ てい く。 そ れ は ま た、 ディ ドロ の エ ンサ イク ロ ペ ディ ア に代 表 される一
八世 紀の 啓 蒙主義
と もか かわっ てい る。 誰も がひと しく情
報を 受 容 する権 利が あるとする啓 蒙主義は、
百科全書だ けで はな く、
公共の博 物 館そ して と りわ け 図書 館の 開 設の意 味づ けと なっ た。
そ うした意 味では、
啓 蒙 主 義 や 革 命を と もなっ た市民社 会を体 験しな かっ た 日本では、
図 書 館 をふ くめ た博 物 館の成り立ちは、
ヨー
ロ ッ パ と は異 なっ てい る とい え る だ ろ う。 た と えば、
日本の研 究 者 た ちは、
いま だに図 書 館 の コ レ クシ ョ ン に全 面的に依拠するこ と なく、
個 人 蔵 書を頼りに し て い る。
ま た、
イン ター
ネッ ト に よ る情 報の 公開と その 共有の シ ステム も、
欧 米に 比較
して、
日本は後 追い になっ て い る。
日本にお けるイ ン ター
ネッ ト社 会が 公 共 性 に か ん し て は、
欧 米 と は 異 なっ た様 相 を持っ て いるの も、
情 報にか んする そ う し た歴 史的 背 景が あ る よ う に 思 え る。
ところで、
百科 全 書 と同 様、
わ たした ちは現 代 美 術の こと が知り た け れ ば、まずは現 代 美 術 館に行 く。 焼 き 物の こと、
楽 器の こと、
衣 服の こ となど が知り た け れ ば、 そ れ も博物館 (美 術 館 )に行っ てみるの がてっ とり早い。
博物 館は、
百科全書と同様、
かな らず 何かの 手 が か り を与 えてく れ る と 同時に、
現物 を見せて くれる。
したがっ て、
「デ ザ イン 」の こ と が知りた け れば、
デ ザイン・
ミュー
ジア ムへ とい う こ と になる。
ところが、
残 念 なこ となの だ けれ ど、
口本 に はデ ザイ ン の充実 し た 歴史 的コ レ クシ ョンを 持っ て、
デ ザイ ン・
ミュー
ジ アムを名の る 公的 博 物館
が存在
し ない。 産 業 先進国と しては、
めずらしい 状 況である し、
寂し い こ と でもある。博 物 学そ して啓 蒙主
義、
も ち ろ ん 歴史へ の意
識を 背 景に して広 がっ た博 物 館 (美術
館 )では あ る が、
歴 史 的 過 去のもので はなく 同時 代の もの、
と り わ け 美術を 展 示する美 術 館、
つ ま り近 現 代 美 術 館の出現 は、
博物 館・
美 術 館の性 格を大き く変化 させ る こ と に なっ た。 同時 代の美 術を、
歴史 的 資 料と同 様に標 本の ように置い て お くこと に違和感を抱い たの で あ る。 そこ か ら、
美術 作 品をそ れにふ さわしい 形で展 示する方 向にむか う。 さら に は、 美術
作品 を ふ くめ た 空問その もの の構成が行わ れる ようになっ て いっ た。
した がっ て
、
今目のデ ザイン・
ミュー
ジアム も も ちろ ん、
デ ザイ ン の歴 史 的 作品 と と も に、
同時 代の 作品 を そ れ ら に ふ さ わ しい形で展示 して いる。
その 収集 と展示 の方 法 が 各ミュー
ジ アムの特性 に も なっ てい る。
近代の博 物 館 (美 術 館 )は、 歴 史 的に は
博
物学
や 啓蒙
主義
によっ てお り、
つ ま りは教育
的 装 置 とし て ある。
し てみ れば、
デ ザイン・
ミュー
ジ アムも ま た、
デ ザインを どの よ う に教育
して い くか とい うこ と と 深 くか か わっ て お り、
その視 点は、
展 示へ と反 映 さ れ ること に な る。
デ ザイン
・
ミュー
ジ アムは、
どの よ う な形 式で情
報を わ た した ち に提 供し て きたのかを、
こ こ では検 討し て み たい 。 多くの デ ザイ ン・
ミュー
ジアムは、 もち ろ ん今日の 他 領 域の ミュー
ジアム と同 様、
さ ま ざまな視 点か らの 企画 展 を 構成
し、 デ ザイン の多
様 性 を わか りやす く見せ て い る。
た とえ ば、
2005 年ニ ュー
ヨー
クでは、
近代 美 術 館 (MoMA
)が 「セー
フ (安全)」 とい う企画 展 を行 い、
「安 全」 を め ぐっ てデ ザイン がい か に 処方し て きた か を展示 した。
こ うした 企画は、
もち ろん9 ・
11
と関 連し てい る とい え る だ ろ う。 ま た、 クー
パー ・
ヒ ュー
イッ トでは、
「極 限の テ キス タ イル 」 と い う企画 展 を 開催 し、 宇宙
服や 人工臓 器な ど ま さ に 極 限 的 な素 材とし て の テ キス タ イ ル の デ ザイ ンを展示 した
。
も ち ろ ん、
デ ザイ ナー
をテー
マ にした展 覧 会は、
これ までに頻 繁に企画されて き た。こ こ で は、 そ うし た企 画展につ い て で は な く
、
デ ザイ ン・
ミュー
ジアム の 常設 展 示 につ い て見ておき たい。
2 、
デ ザインという展示 品こ の
20
年 間ほ どで、
日本で は家
電 や 自動 車メー
カー
あ るい は印 刷 会 社 がつ くる 企業 博 物 館が か な りふ え た。
そうした博 物 館は、家
電 や 自動車を と き に は 自社製
ばか りでなく他 社の ものも収 集し て展 示 し て いる。
さまざま な製 品 や 印 刷 物 (グ ラフ ィック)の 展 示 は、 デ ザイン・
ミュー
ジアム 的な機 能を 担っ て い るともい える。
しか し、
そ う し た博 物 館は、
あ く までも自動 車 や 家 電 などの かぎられたもの を展示 し て お り、
総 合的 にデ ザイ ン を 見 せ てい る もの で はな い。
ま た
、90
年 代あ た り か ら、 戦後の家
電製
品や 家 具 など を収 集し展示する地 城の 博 物 館が少しずつ 出て きた.
けれどもその 展 示 を見る と、 ほ とん ど が説明 なしに洗 濯 機や掃 除機な ど を 並べ てい る状 態になっ て い る。
メー
カー
、
生 産 年 などの デー
タだ けが表 示 されてい るこ と がほ と ん ど だ。
した がっ て
、
観客
は、
戦 後の家 電 製 品や 家 具 を眺 め て どこと な くノス タル ジー
を感 じ る だ けで終わっ て し まう。
ノス タル ジー
を感 じさせ る 展 示 品 は、
た し か に それ だ けで充 分 魅 力 的だ ともい る。 し か し、 ノス タル ジー
に は 通常
、 論理 がなく、
そ れだ けの こ と で終 わっ て しま う。
っ ま り、1950
年 代の洗 濯 機が 置か れて い ても、 洗濯 機で あるとい うこ と し か 理解 できない。
美
術作
品の 場 合通常は、
作 品 名、
作 家 名、
制 作 年、
メディ ア な どの デー
タの 表示 だ け に なっ てい る。 地域
の 博 物 館に 展 示 され た家 電 製 品 な どの表 示 もデー
タだ けになっ て い るの も、
そ うし た美 術 作品の 表 示 形式をモ デル に し てい るの か もしれ ない。
美 術 作 品 を鑑賞 すること と
、
デ ザイ ン を 鑑賞
する こ と は 感覚をめ ぐっ て共 通すると こ ろ はある。
けれ ども、
美 術 作品は社 会 的コ ン テ クス ト を無 視し えな い もの でありながら美 術 家の 自己表 象で あ る。 デ ザ イン は、
もち ろ んデ ザイナー
の 自己表 象となっ て い る部 分は ある に し ても、
よ り全面的に複
雑な社
会 的 なコ ンテ クス ト と かかわっ て成立 し てい る。
さらに 広 げれ ば 人.
文的 なコ ンテ クス トの な か に あ る。 も ち ろ ん、
こ う した 比較
があて はまらない場 合はあるし、
ま たこれは原理原 則では まっ たくない。
し か し、多
くの 場 合、
デ ザイン は複 雑 な社 会 的、
人文 的コ ン テ クス トとか かわっ て成立 し て い る がゆえ に、
デ ザイ ンを凵の前
に し て、 そ れ 自体の 存 在はす ぐに 了解 さ れ る にし て も、
それ を成立 さ せてい る多 様な意味 が に わ か に読み と り に くい よ う に思え るの だ。
た とえば、
比較 的 長い間、
電話受話 器が 黒であっ たこと は、
当初そ れ が家
庭の 主 婦の お し ゃべ りの た めの 装 置であ ること を さ ほ ど意 識 してい な かっ た た めでは ない だ ろ うか。
初 期の 電 話は、
ビジネスのた めの装 置であり、
家 庭におい て も実務
目的に使わ れ る装 置であ る と業
界は考 えてい たと、
クロー
ド・S ・
フ ィッ シ ャー
は述べ てい る。 ま た、
「お しゃべ り」 っ ま り社交の ための装
置と考えるこ と は、
少々 不謹 慎 な うし ろ めた さ が あっ た と もい う。 ビジネス の た も めの装
置 とい うこ とは、
オフ ィス で使 用されるこ と が 義 的に考え ら れ ること に な る。
そ し て、
近代 の ビジネス の 空 間 で は、
さま ざ ま な ものが 「禁 欲 的」 であ る ようにデザ イン さ れ ること が多
かっ た 。 タ イ プ ラ イ ター
な どの オフ ィス での道 具や装 置、
そし て そこ で着 られるスー
ツが 近代では、 「黒 」 で あっ た こ と は、 そ れ が禁 欲 的 な 意 味 を担っ たからだ。
そ れ はま た、
近 代にお ける産 業ブル ジ ョ ワ ジー
の禁
欲 的 な 思考を 映 し出 し てい るともい え る だろ う。
もち ろ ん、
オフ ィス の 装 置 や 道具 は や がて黒で はな くなる わ けだ が。
そ し て、
電 話の 受 話 器のデザインは、
そ れだけでは ない多
様な意
味を持っ てい る し、
その変 遷も ま た興 味 深い もの である。
ま た
、
家 庭 用の冷
蔵庫
が30
年代半ばに、
レイモ ン ド・
n一
ウ イ に よっ て 「白1
くデ ザ イン されたの は、
「清 潔さ」の イ メー
ジを 打 ち 出 す ため で あり、
以来、
「清潔
の 美 学が家 庭 風 景の規 範 になっ てき たの だ とア ド リアン・
フ ォー
ティ は指 摘 してい る。
生 産 年
、
メー
カー
名あ るい は デザイ ナー
名 な ど基礎 的デ
ー
タ だけ を付 した洗 濯 機 や 冷 蔵 庫の展 示 か ら、
その装 置 や 道 具の意 味を即座 に読
み と ることは、
な か な か大 変 なことである、
、
3 ,
展示 システ ムをめ ぐっ てデ ザイ ン
・
ミュー
ジアムに は、
さ ま ざ まな展 示 方 法が あ る が、
その シス テム は、
デ ザイ ン の 啓 蒙に対 する考え方の特 性 を反映 してい る。 その こ とを、
ヴ ィク ト リア・
ア ン ド・
アル バー
ト・
ミュー
ジア ム(V&A ) を中心に 兄てお こ う。 世 界で最 初のデ ザイン
・
ミュー
ジア ムは、
ロ ン ド ン のV
&A
とされ てい る。1851
年の第一
回の ロ ン ド ン で の 万国 博 覧 会に集め られ た 品々 とと も に 国 立デ ザイン学 校の コ レ クシ ョン を 基礎と して、
W
.
52
年、
デザ イ ン を学ぶ学生へ の刺 激 を 生む た め と し てマー
ルボロ・
ハ ウス に、製
造 品 (マ ニ ュ フ ァク チャー
) の ミュー
ジアム 「産業 博 物 館」が 設 立 され る 。 その 後、1857
年に文化施設建設用地 と して指定 さ れ た サ ウス・
ケン シ ン トンに装 飾 美 術 館 とし て移 され、
そ れが現 在のV
&A
となっ た。現在の 建物 は、1899
年、
アス トン・
ウエ ッブの設 計で着工 され た もの で、
ヴ ィク ト リ ア女王の 亡夫アル バー
ト を記 念 する美 わ隙 官 と して現 在の名 称へ と改められ た。
当初
、
デ ザイン を学
ぶ学生の た め には じまっ た産 業 博 物 館は、V
&A
では、
産 業 家、
デ ザイ ナー
、 デ ザ イン を学ぶ人、 そ して生活 者に デ ザ イン を啓 蒙 する こ と を 目的 とした。
つ ま り、
専 門家
と 同時に市民 に む けての デ ザイン の教 育 的 施設 とし て位 置づ けられ たの であ る。
その後
、
た と えば、 『
美術
様式論 』の ア ロイス・
リー
グル が20
代 後 半で加 わっ たこ とで も知られ る 「オー
ス ト リア美 術工芸博物館」 を は じ め、
ヨー
ロ ッパ 各地にデザ イン・
ミュー
ジ アムがっ く ら れ る が、V
&tx を 手本と す るこ と と なっ た 。知ら れる ように
、V
&A
の コ レク シ ョン は膨大 な も の であり、
お そ ら く一
週 間 か けて も、
すべ て を見る こと は むつ か しい だ ろ う。
なぜ膨 大になるの か とい えば、
あ らゆ る もの はデ ザイン さ れて いる か らで あ り、
し た がっ てあ らゆるものがコ レクシ ョ ン の 対象 になりえる か らだ。 そ して、
その 膨 大 なコ レクショ ンの 展示に は、
た とえば、 MoMA や あ るい は、2002
年に開館し た ヨー
ロ ッ パ最大 と思える ミュ ンヘ ン の 「ピナ コ テイク・
デル・
モ デル ネ」 の モ ダンデ ザイ ン部門の展 示 と は異なっ た デ ザ イン・
ミュー
ジア ム の特 性を見るこ とがで きる。
MoMA
は、2005
年に谷1
↑吉生の設 計で増 改 築が行 われた。
こ の増 改 築 後、
デ ザイン・
コ レクシ ョン の 展 示 が 充実してい る。20
世 紀のデ ザ インを 中心 とし たその 展示 は、
各 時 代ご と に 地域
や ジャンル を超え た ま と ま り が作られてい る。
た と えば、
ジャ ン・
プ ルー
ヴェ、
チ ャー
ル ズ・
イー
ムズ 、 ポー
ル・
ケアホ ル ムの 同時代の デ ザイン がひ と ま と まり で展示 され る とい う形式 になっ て い る。
こ の展示で は、
各地域
やデ ザイ ナー
が 特定の 時 代の な かで どの ようなデ ザ インを し たの かを比較し て見せ る もの となる。 こ う した 展 示 は、 美 術 作品 な どの展示では一
般 的 な もの だ とい え る。
「ピナコテ イ ク
・
デル・
モ デル ネ」の 展 示 も ま た、20 世紀を中心 とした時 間 系 列の見せ 方 を とっ て い る。
V&A の 場 合
、
も ち ろ ん各 時 代、
各地域 別で展示 を 行っ て い る。
同 時に、
い わば 「見 本 資 料」形 式の 展 示を行っ てい る。
た と えば、
テ キス タ イル の部 門で は、
これまでに収 集したコ レ ク ショ ン をパ ネル に し、
膨 大 なパ ネル を引き出して閲 覧できる ように し て い る。これは銀 器 な どの部 門でも同様で あ る。つ ま り、
作品 を 「鑑賞
」する た めの展示 と同 時に、
「閲 覧」 する た めの展 示があるの だ
。
「閲 覧」形式の展 示 は、
まさに 百科全書
的 な 知の 展示 と言っ てい い。
すで にふ れ たよ うに
、
近 現代の 美術
を 展 示する美 術 館は、
その は じ ま りに おい て、
展 示 品 を 歴史 的 資 料と 同様に標 本の よ うに置い てお くこ とに違和感を 抱 き、
美 術 作品 を そ れ に ふ さ わ しい形で展示するこ と になっ た し、
さ らに は、
美術 作晶 を ふ く め た 空間 その もの の 構成
が 行 わ れ る よ うに なっ て いっ た。
そ うした作 品 展 示の あり方は、
多くの デ ザイン・
ミュー
ジア ムで も踏襲
さ れて きた。
し か し
、V
&A
の よ うにデザイン を標本の よ う に扱
い 閲 覧 させ る よ うな展 示 は、
さほ ど多 くない。
デザ イン・
ミュー
ジア ムが、V
&A
の よ うに専 門家
と 同時 に市民 に む け てのデ ザイ ン の 教育
的施設とし て位 置づけ られるなら
、
百科全書 的な閲 覧システム に よ る 展 示 も ま た き わ め て重要なもの だ といわ な けれ ば な らない。
つ い でなが ら、 シ ドニ
ー
の 「パ ワー
ハ ウス・
ミュー
ジアム」 は、
デ ザイン・
ミュー
ジアム の機 能 を 持 っ てい る。
その 展示 は、
作 家とし ての デ ザ イナー
を 中心にするの で は なく、
あ り と あ らゆる もの をデ ザ イ ン の 対象と し て収 集して お り、
そ うした意 味では、
V
&A
と 共通 するもの が あ る。
し か し、
V
&A
の よ うに、
コ レ クシ ョ ン を 標本 形 式で閲 覧 するほ どに は 至っ て い ない。
だ が、
死刑 装 置の 電 気椅子 か らエ ッ トー
レ・
ソッ トサ スの椅
子 ま で を 同時に展示するシス テ ム に は、
やは り百 科全書 的 視 点を見るこ と がで き る。4 .
展 示 と解 説 すで にふれたよ うに、
デザイン に は社 会 的ま た 広 く人文的コ ンテ クス ト と し ての 意 味が織り 込 ま れ て い る。
その こと を どのように伝えて いくか は、
教 育 的 装 置であ る デザイン・
ミュー
ジアムの 重要なテー
マ である。
この こ と は
、
文字
や音 声で伝え るこ と もあれば、
展 示物の 組み合わせ で伝える こと も ある。
た と えば、
シ ドニー
の 「パ ワー
ハ ウス・
ミュー
ジア ム 」 で は、
死刑 装 置の 電 気 椅 子が さ ま ざ ま な 目常的 な道具 や装 置、
そ して 口常 的 な椅
∫・
、
さら に はソ ソ トサス の ク ラフ ト的 な 椅r
一
と混 在し て展示 されて い る。
その こ と に よっ て、椅
子の 持つ 意 味が そ れ となく浮かび 上 がっ て くる。
椅子 に座ること は、
幾 分か身 体を楽に さ せ る。 つ ま り、椅
子 は休 息の装
置であり、
ま た 室 内に あっ てそれは美 的 なオ ブ ジェ であ るこ と が 示 さ れてい る。 そ うした椅
子が時と し て 死 の 装 置とし て デザインさ れ た とい うことであ り、
そこ に 死 をめ ぐ る 近代の 意 識 が示 され る。
っ まり、
死刑とい う究 極 の拷 問は、
せ めて安楽
な状 態を意 味す る 「椅
r
−
」 で 執 行し よう とい う意 識 を、
そこに はっ きり と読む こ と がで きるの であ る。 も し、 電 気椅
子 が、 他の 口常 的 な道 具 や 装 置 と並列 されるこ とな く、
まっ た く単 独に展示 されてい た ら、
「死刑」 を安 楽に とい う近 代 的 思 考の 奇 妙 さや 残 酷さに気づ か い ないだ ろう
。
V
&A
では、占
い家
具 や 調度品の フ ェ イクの 見 分 け 方や、 量産品 と 手工芸品の 見分 け 方 な どを解 説し て いる、
しかも、
そ うし た解 説に関しては、 規 物 を 手 に とっ て 見 ら れ るい わ ゆ るハ ン ズ・
オ ン に し て る。
た と え ば、
ゴシ ッ ク 風の椅
子 を 展 示 して、
「これ は ゴシ ッ クの フ ェ イクです」 とコ メン トし て い る
。
椅 子の背 もた れ な ど に 施 され た 彫刻が 平 面的であるこ となどの 理由 を あ げて いる。
あ るいは、
日本風の タン ス が 展 示 さ れ てい る が、
そ れ が実は、
日本の もの ではな く、
取っ 手 など さ ま ざ まな 部 品の寄せ集め に よっ て い るこ と を 逐一
示 し てい る。 ま た、
銀の 容器の展示では、
.
方 はすべ て を 手工 芸 でつ くっ た もの と、
他 方は型の流し 込 みで作っ た もの を 展 示 し てい る。
こ の展 示では、
内 側 がラフ に 作られ てい るこ とが型の 流し込みで作っ たもの の 特 徴であ るこ と を 説 明 してい る。V
&A
の 展 示解 説 を 紹 介 する と、
た と え ば17
世 紀 の家 具の展示の 中に 立派な 本棚
が あ り、
その解
説に は、
この 本 棚はサミュ エ ル・
ピー
プス が作らせ たも の とほぼ同じもの だ と あ る。 棚 板が動か せるように なっ て い るこ とが特 徴と なっ て い る。
本 棚の サ イ ド・
パ ネル に棚
板の 幅でス リッ トを入れて、
取り外 し移 動 を 自在に し て い る。
ビ
ー
プ スは、
17世紀の イギリス の 官 僚で、
の ちに 海軍大 臣となっ た人物だ。
彼は、
不思議な 日記を 残 し たこ と で 知 られ てい る。 その 人の 本 棚の棚 板が動 か せ る とい うこと は、
こ の時 代に、
さ まざま な サ イ ズの 本が増
え たの だとい うことが理解で きる。
つ まり
、
本 棚の デ ザ インを知るこ とで、
当 時の ブ ッ クデ ザインそ して 出版
文化にか んする情 報も得る こ とがで きる。
実際、
ヘ ン リー ・
ペ トロ ス キー
の 『本 棚の 歴 史 』に は 「木の寸 法の ば らつ きが悩みの種に なり始め た時 期は、17
世紀
に ま で 遡 ること が で き る」 とある。
ペ トロ ス キー
は、
ピー
プス が蔵 書を特 別に製 本さ せて いたこと に ふ れ てい る が、 可動 式 棚板
の本棚
をつ くらせたこ とに はふれて いない。
しか し ピー
プス が本 箱に頭を悩ませ てい た こ と をペ トロ ス キー
は指 摘 し てい る。
ピ
ー
プ ス の 死 後、
ケン ブリッジ大 学モー
ド リン学 寮に 口記 とともに、
蔵 書3000
冊が寄 贈さ れ た こと が記 録 されてい る