0 平成26 年 2 月 26 日
シェールオイル、シェールガス増産下の米国石油精製産業-その
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-代表的な石油精製会社Marathon Petroleum(MPC)の動向- シェールオイル、シェールガス急増産下の米国石 油精製産業の動向について、第16回JPECレポートで はその概観を、第19回、第22回の同レポートでは米 国の代表的な石油精製会社であるValero、Phillips 66について各々報告した。今回は前2社と肩をならべ て活躍するMarathon Petroleum Corporation (MPC) について、シェール増産という事業環境の中で彼ら が選び取った企業戦略の中に、その成功の秘訣を探る。本報告は平成23年度、24年度の北米、 特に米国でのシェールオイル、シェールガス関連の報告、及び平成25年度の上記、第16回、 第19回、第22回JPECレポートの延長上にある調査報告である。 平成23年度報告要旨:http://www.pecj.or.jp/japanese/report/reserch/H24guide/h24data/3.1-1.pdf 平成24年度報告要旨:http://www.pecj.or.jp/japanese/report/reserch/H25guide/h25data/02.pdf 平成 25 年度 JPEC レポート第 16 回「シェールオイル、シェールガス増産下の米国石油精製産業」 :http://www.pecj.or.jp/japanese/minireport/pdf/H25_2013/2013-016.pdf 平成 25 年度 JPEC レポート第 19 回「シェールオイル、シェールガス増産下の米国石油精製産業-その2」 :http://www.pecj.or.jp/japanese/minireport/pdf/H25_2013/2013-019.pdf 平成 25 年度 JPEC レポート第 22 回「シェールオイル、シェールガス増産下の米国石油精製産業-その 3」 : http://www.pecj.or.jp/japanese/minireport/pdf/H25_2013/2013-022.pdf (*本報告での図表類の出所は、明記がない場合はMPCである。) 1. MPCの概観 MPCは、トッパー(原油常圧蒸留装置:CDU)能力を基準にすると、米国で4番目に大きい 石油精製会社である。全米に有する7つの製油所での合計CDU能力は約171.4万b/d(暦日ベ ース。2013年12月31日現在)。PADD2とほぼ重なる米国中西部では最大の精製能力を有して いる。MPCは、2011年にMarathon Oil Corporationより分離して以降は、上流の探鉱開発や 生産事業には従事していない。 Marathonブランドのガソリンは、米国の中西部、メキシコ湾岸、そして南東部の18州で 約5,100の独立経営のスタンドで販売されている。これに加えて、MPCの子会社である Speedway LLCは、全米第4位の規模のコンビーニエンス・ストアのチェーンの所有と経営に 従事。コンビニ店の数は、9つの州で約1,470に及ぶ。MPCはまた、中流事業のマスター・リ ミティド・パートナーシップ(MLP)であるMPLX LPのジェネラル パートナーとして、原油 や石油関連製品、及びベンゼン、クメン、オフガス、プロピレン、トルエン、キシレン等 を含む石化関連製品も、自社ネットワークを通じて効率的に輸送している。MPCは、全米最 大のアスファルト生産会社の一つであり、米国中西部、南東部にある19の自社所有、10の リースターミナルを通じて販売している。表1にMPCの基礎情報を示す。 2013年度第
30 回
【内容】 1. MPC の概観 2.MPC の業績 3.MPC の過年度の設備投資 4.今後の設備投資計画とその成果イメージ 5.MPCの精製部門表1 MPC基礎情報 企業型式 株式公開型独立石油精製会社 株式略号 MPC 本社所在地 Ohio州Finlay EBITDA(2013年) 約50億ドル 従業員数 約28,000人 稼働中の製油所 7ヶ所:内4ヶ所がPADD2、3ヶ所がPADD3 精製処理能力 171.4万b/d(2013年12月31日現在)。1製油所平均能力は約24.5万bpd 主要市場 18州で約5,100のMarathonブランド。傘下に全米4位のコンビニチェーンSpeedwayを擁す。 特徴 米国中西部で最大の独立系石油精製会社。アスファルトの生産販売も全米一。 図1に示すように、MPCは計約8,300マイル(約1.3万km)に及ぶパイプラインについて所有、 リース、または部分権益を有している。具体的には、Capline、Centennial Pipeline、 Explorer、 LOCAP、LOOP、 Maumee、Muskegon、及びWolverine Systemsの各パイプラインである。MPCは、 これらのパイプラインを通じて、2012年の1年間で原油及び石油製品を約220万b/d通油した。通油 量をベースにすると、MPCは米国で最大のパイプライン会社の一つである。 MPLX LP は、MPC の連結子会社であり、MPC の精製・販売・供給ネットワーク内の戦略的に有 利なエリアで活動している。MPC はまた、自社製品の出荷等ターミナルでの荷役や輸送サービス も提供している。原油等のフィードストック、石油製品、同半製品等を輸送するため、広範 な地域を移動できる内陸輸送用のバージやトラックを所有し、同じ目的で多量な鉄道貨車を 所有ないしレントしている。 図1 MPCの精製・販売・輸送ネットワーク
2.MPC の業績 1)株価の推移
図2は、上下流一貫型の石油会社Marathon Oil Corporationから、その精製・輸送・販売 部門を独立分離させて2011年7月1日設立されたMPCの、同日以降の株価の推移を表す。また、 併せて同社製油所への設備投資等(青色)、配当及び自社株購入による株主への利益還元(緑 色)、パイプライン他石油中流を担う子会社MPLXの発足及び資本投下(赤色)等、これまで の同社の主要な動きも示している。当然ながら上下の変動はあるが、基調は右肩上がりの上 昇傾向にあることが見てとれる。 図2 MPCの株価推移 2)同業他社との比較 図3は、2013年9月30日までの12ヶ月間に株主に還元した株式1株当たりの利益の比率を、 同業5社間で比較している。計算方法は、1株当たりの年換算配当額+同特別配当額+同自 社株購入額の合計を、2013年9月30日まで1年間の自社平均株価で除した比率で、MPCは首位 の14.7%となった。 図3 米国石油精製5社の株主利益還元率
MPCは株主利益還元にかなりの努力を費やしており、2011年7月1日以降2013年12月31日まで 2年半での累積株主利益還元額は、配当と自社株買戻しの合計額で約52億ドルに達した。これ は、2013年の同社EBITDA*全額約50億ドルを超えている。 *EBITDA:償却前営業利益(営業利益+減価償却費)。キャッシュフローを簡易的に示す利益概念。 図4 MPCのスピンオフ以降の累積株主利益還元(2011年7月1日~2013年12月31日) 図5は、同業各社の米国内での毎年の営業利益を、同年製油所で処理した原油の総量で除し た1バレル当たりの営業利益を比較したグラフで、MPCのランクは過去16年間で平均2~3位と なっている。 図5 米国石油精製8社の原油1バレル当たり営業利益
3.MPCの過年度の設備投資 図6は、MPCの2007年~2013年の部門別設備投資額と、それに対応するEBITDAを示す。部門 は青色が精製・販売、黄色がSpeedway(SS併設のコンビニ・ストア)、赤色がパイプライン 等の輸送である。 設備投資、EBITDAとも精製・販売、特に精製部門が群を抜いている。製油所設備への投資 では、2007~2009年のルイジアナ州Garyville製油所の総額32億ドルに及ぶ能力増強プロジェ クト、2010~2012年のミシガン州Detroit製油所のカナダ重質原油増量処理のためのアップグ レーディング・プロジェクト、更に2013年2月BPからのテキサス州Galveston Bay製油所45.1 万b/dの買収と、連続して大型設備投資を実施している。 2007年~2013年で精製部門とSpeedway以外の販売部門で合計110億ドルを投資し、その結果 220億ドルのEBITDAを挙げた。Speedwayは、12億ドルの投資で28億ドルのEBITDA、パイプライ ン輸送部門は10億ドルの投資で17億ドルのEBITDAを挙げることができた。 図6 MPCの過年度の部門別設備投資とEBITDAの推移 4.今後の設備投資計画とその成果イメージ 1)今後の設備投資計画 図7にMPC の2012-2016年の設備投資計画を示す。投資の基本方針は、より安定したキャッ シュフローとより付加価値の高いビジネスへの資金投入を通じて、組織の成長に拍車をかけ るというもの。2013年に約14億ドルであった全部門投資額(但し、BPからのGalveston Bay 製油所買収5.98億ドル~ケースにより更に+7億ドル、を除く)は約14億ドル。それを、2014 年には約24億ドルとする計画。その内訳は、精製・販売 (R&M) 8.64億ドル、中流3.48億ドル、 Speedway3.27億ドル、パイプライン7.60億ドル、その他1.33億ドルである。2016年には、こ の総額約24億ドルが更に、約34億ドルへと増加する可能性がある(但し、未確定のGaryville 製油所の残渣アップグレーディング プロジェクト分を含む)。
図7 MPCの2012-2016年設備投資計画 2)将来の収益(EBITDA)構成 図8にあるように、将来はこれまでより投資のポートフォーリオをより分散化し、全体の EBITDAを極大化していく。主要部門毎の戦略は以下の通り。 ・精製部門では、軽質原油処理対応、中間留分増、重質油転換能力増、輸出能力増強等を通 じてマージンの一層の拡大を図る。
・中流部門では、Sandpiper、Southern Access Extension、Utica等のパイプライン増強等、 攻めのインフラ整備を図っていく。 ・Speedwayでは、既存及び隣接市場で店舗の新増築や優良物件の選択的な買収等による戦略 的な組織成長を実現させる。以下の章で、分野毎に現状と今後の具体的な計画等につき述 べていく。 図8 MPCの将来のEBITDAイメージ
5.MPCの精製部門 1)製油所の立地とトッパー能力 図9にあるように、MPCの7製油所は、米国中西部のPADD2とメキシコ湾岸のPADD3に所在 する。内PADD2が4製油所で、同PADD内のトッパー能力の小計は65.7万b/dである。PADD3に は、最近BPより取得したルイジアナ州のGaryville製油所52.2万b/dとテキサス州の2製油所 の計3製油所があり、PADD3の小計は105.7万b/dである。MPCの全7製油所のトッパー能力の 合計171.4万b/dは、全米第4位である。製油所の複雑度を示すネルソン指数*は、7製油所 の加重平均**で11.0と比較的高位にあり***、MPCの石油精製事業の収益性の高さを支え ている。
*ネルソン指数(Nelson Complexity Index)-米国の石油学者Wilbur L.Nelsonが1960年OGJ誌で初めて提唱した 原油常圧蒸留装置(CDU)の能力と比した製油所の2次転換装置(SCU)の能力を計る指標。CDU の複雑度指数を1.0と置き、建設コスト等を基に各SCUの指数を評価。この指数に、CDUの処理 能力と比べたSCUの通油能力の比率を掛け合わせ、得られた指数の合計にCDUの数値も含めて製 油所全体の複雑度を表す。 **各製油所の指数-Canton:8.8、Cattlesburg:10.2、Detroit:9.9、Robinson:10.0、Galveston Bay:13.1、 Texas City:8.0、Garyville:11.0(2013年12月31日付OGJ誌評価) ***指数の比較-欧州平均:6.5に対して米国平均:9.5、インドのRelianceのJamnagar製油所:14(OGJ他) 図9 MPCの製油所所在地とトッパー能力 2)原料供給面での優位性 ①北米シェールオイル等の供給見通し 図10は2012-2025年の北米での原油/コンデンセートの供給増の見通しを示している。 カナダのオイルサンド系原油の増産分357.5万b/dと、米国PADD2とPADD3に集中するシェー ルオイルの主要生産フィールドであるバッケン、イーグルフォード、パーミアン、ウティカ からの増産分を合わせると、この期間での供給増量は、合計586万b/dが見込まれる。米国の 石油精製企業は、この豊富な原油供給量を享受しつつあるが、以下に述べるように、特にMPC は恵まれている。
図10 北米の原油/コンデンセート供給増見通し(2012-2025年) ②MPCの原油調達ソース 図11は、MPCの製油所精製能力の全てが原油調達に有利なPADD2とPADD3に集中しているこ とを示す。精製能力の約38%があるPADD2ではカナディアン・バッケンとウティカフィールド からの原油、シェールオイル、コンデンセート等が入手可能であり、精製能力の約62%がある PADD3では、パーミアン、イーグルフォード、メキシコ湾、及び海外からも原油やシェール オイル等が豊富に供給され得る。このようにMPCの全製油所が、原料調達面で有利な立地条件 に恵まれていると考えられる。 図11 MPCの製油所立地の優位性(PADD別精製能力) これまでの実際の原油選択と処理では、7製油所の内Texas City製油所を除く6製油所は、 軽質から重質まで幅広い原油選択をしている。Texas City製油所では、イーグルフォードの シェールオイルを含め、軽質原油のみを処理している。7製油所での処理原油全体の約52%
が中高硫黄原油(Sour Crude)、約48%が低硫黄原油(Sweet Crude)である。前者の油種は アラブライト、クウエート、マヤ、WCS、Mars等、後者の油種は、既述のシェールオイルを含 む国産原油が中心である。 3)精製部門の設備投資動向 シェールオイル等の軽質原油供給が急増しつつある現下の事業環境に対応すべく、MPC は以下のとおり、軽質低硫黄原油、コンデンセートの処理能力増強を計画している。 ①Condensate Splitters ⅰ)オハイオ州Canton製油所 :25,000 b/d-2014年第4四半期完成予定 ⅱ)ケンタッキー州Catlettsburg製油所:35,000 b/d-2015年第2四半期完成予定 ⅲ)主なフィードストック(上記ⅰ)ⅱ)共):ウティカ・シェール構造からのコンデンセート ⅳ)設備投資額(上記2製油所の合計):2.5億ドル ⅴ)目標利益率(上記2製油所の各プロジェクト毎のROI):いずれも30%超 図12にあるように、超低硫黄の(ウティカ)コンデンセートを新規導入の分留装置 (Fractionator=Splitter)にかけ、ライトナフサはガソリンとブレンド、ヘビーナフサは改質 装置(Reformer)へ、留出油(Distillates)は水素化処理(Hydrotreating)する。更に重質 の成分(Heavier Components)は既存の原油蒸留装置(Existing Crude Unit)に送る。
図12 コンデンセート処理の概念図
②Light Crude Processing
ⅰ)イリノイ州Robinson製油所:3万b/dの軽質原油増処理 ⅱ)設備投資額 :1.6億ドル
ⅲ)完成予定 :2016年 ⅳ)目標利益率(ROI) :60%超
③既存の軽質低硫黄原油処理能力の最適化 MPC7製油所の接触改質装置(Catalytic Reformer)の合計能力は、42万b/d強であり、約170 万b/dの原油処理能力のほぼ25%に相当する。一方、米国全体のReformer能力は約370万b/dと、 原油処理能力約1,900万b/dの20%に満たない。MPCは、シェールオイル等の軽質原油の供給増 に合わせ、その処理が経済価値を最大限に実現できるようReformerの操業の最適化を図って いる。 図 13 MPC の改質装置能力(CDU 能力の%) 具体的には、ガソリンや石化製品等の需給や市況を見つつReformerからの生産物 (Reformate)をアロマティクス等の石化製品原料として多用している。図14にあるように、 MPCのアロマティクス生産能力は、ExxonMobilに次いで全米2位の約6万b/dであり、他社比 相対的に有利な位置につけている。この意味で、2013年2月、BPから買収したGalveston Bay 製油所は、約3.3万b/dのアロマティクス生産能力を有し、MPCの石化戦略に大いに貢献して いると云える。 図14 米国のアロマティクス生産能力
④世界的なディーゼル需要の伸びへの対応 -水素化分解装置(Hydrocracker)の増設と改良 ⅰ)Garyville製油所 ・2014-15年に超低硫黄ディーゼル(ULSD)の生産を2.5万b/d増やす ・設備投資額:2.25億ドル ・目標ROI :45% ⅱ)Galveston Bay製油所 ・2015年にULSDの生産を0.9万b/d増やす ・設備投資額:0.18億ドル ・目標ROI :70% ⅲ)Robinson製油所 ・2015年にULSDの生産を0.5万b/d増やす ・設備投資額:0.77億ドル ・目標ROI :20% 図15 MPCの中間留分生産見通し 図15にあるように、MPCは上記のULSD含め中間留分の生産を2013年の50万b/d台後半から、2014 -2015年に60万b/d台まで約10万b/d増産する計画である。世界的に見込まれるディーゼル需要 の増加に対応して輸出を増やしていく目論見である。 ⑤メキシコ湾岸からの輸出能力増強 輸出の中心となるメキシコ湾岸での輸出能力については、以下の通り増強を進めている。 ⅰ)2013年Garyvilleに50万b/dの輸出用タンクを増設した。 図16 MPCの製品輸出能力
ⅱ) Garyville と Galveston Bay で、低コスト かつハイリターンのドックの拡張を計画中。 現在は設計段階にある。 ⅲ)Galveston Bay から、12 万 b/d のガソリン 輸出増を実現できる可能性あり。 図 16 にあるように、メキシコ湾岸からの輸出 能力を 2013 年の 32 万 b/d から、2018 には 47.5 万 b/d に増強する計画である。
⑥Garyville製油所の残渣水素化分解(Resid Hydrocracker:RHCR)プロジェクト -有利な市場環境を利する機会- ⅰ)プロジェクト概要 ・最新技術による設計に1.3億ドル投下 ・ULSD生産を2.8万b/d増やし、Gas Oil の購入を減らす ・安価な天然ガスからの水素を使って 低価値の残渣をULSDに転換 ・目標ROI :20-25% ・目標EBITDA:8-10億ドル ・設備投資額:22-25億ドル ・稼働開始予定:2018年 ⅱ)プロセス概要 図17にあるように、RHCRはULSDと製油所内で再処理する半製品(Refinery Intermediates) の増産を可能にするプロセスである。RHCRへのフィードとして、例えば水素110 mmscfd(百万 立方フィート/日)、FCCスラリー(FCCの触媒分解反応で、ガソリンや軽油等を抽出後の残油 部分。FCC塔底液とも)0.7万b/d、減圧残渣(Vacuum Resid:VR)6.3万b/dを投入する場合、 そのアウトプットとしての製品、半製品は、以下のとおり。 LPG(製品)0.2万b/d、ナフサ(半製品。Reformerへのフィードとして)0.7万b/d、ULSD (製品)2.3万b/d、Gas Oil(半製品。FCCへのフィードとして)2.2万b/d、残渣(Unconverted Resid。Cokerへのフィードとして)2.3万b/d。
図17 Garyville製油所 のResid Hydrocracking プロセス概念図
⑦Galveston Bay製油所の事例
2012年10月8日、MPCはBPからGalveston Bay製油所を買収する契約を結んだ。対価は5.98 億ドル(後に+7億ドルとなる可能性を含む)。このディールは、2013年2月1日に完了した。 MPCは同製油所での、これまで過去1年間の実績を成功例として捉えており、将来についても 多大な期待を寄せている。以下、その成果と今後の目標について記す。
ⅰ)原料供給増と操業コストの削減 図18にあるように、種々の供給ソースから有利な価格で多量の原油を調達することにより、 製油所の操業コスト削減に成功した。 図18 安価な原油の多量処理 ⅱ)収益性の向上 図19にあるように、MPCは近隣にある自社のTexas City製油所との連携等により、当初想定 していた以上のコスト削減やシナジー効果を実現した。計画より少ない投資額でより大きい シナジー効果が達成できたということである。具体的には以下のとおり。 ・製油所の信頼度向上と得率改善により マージンを 0.38 億ドル増加させた。 ・海外からの軽質低硫黄原油の輸入を減 らし、カナダからの重質原油を増加さ せた。 ・シェールオイル系では、イーグルフォ ード、パーミアンベイスン、バッケン をバージ、鉄道、パイプライン等、種々 の輸送手段で調達した。 ・フィードストック中に占める北米産の 原油比率は、63%から 85%に増えた。 ・他に、MPC の製油所での処理基準を遵 守して、HES(健康・環境・安全)の面 でも優れた実績を残せた。 ・2013 年のシナジー効果は 0.1 億ドル ・シナジー実現のためのプロジェクト -Texas City製油所と隣接する製油所間のライン建設 -ドックの能力向上と使用面の柔軟な運用巾の拡大 -原油の調達ソースの拡大 ・プロセスの最適化 -アロマティクスの増産 -残渣処理の改善 -最軽質留分の回収向上
図19 シナジー効果-実績と見通し ⅲ)長期の成長機会 ・原油の常圧蒸留装置(CDU)と減圧蒸留装置(VDU)の改良 -将来の供給原油に対応した装置の最適化 ・中間留分の回収得率向上 ・水素化処理(Hydrotreating)能力の増強 -ディーゼルの全量ULSD化
・Gas Oil Hydrocrackerのオプション評価 -最少規模、最旧式FCCの遊休化
-ULSD得率の増加 ・輸出能力の拡張
⑧Detroit製油所 図20 Detroit製油所の立地 表2 Detroit製油所の精製装置とその生産能力 MPCのDetroit製油所は、軽質低硫黄から重質まで幅 広い範囲の原油処理ができる。MPCは「同製油所はカナダ の安価な重質原油や、米国の中西部ないし海外からの輸入 原油等、実質的にどのようなタイプの原油でも処理が可能。 戦略的に有利な立地条件を享受」(図20)としている。 ・生産品:Detroit 製油所は、ガソリン、ディーゼル、ア スファルト、プロパン、プロピレン、スラリー、及び燃 料用のコークス等を生産している。 ・製油所の複雑度:1次、2次の精製装置として、原油蒸留装 置、接触分解装置、水素化処理装置、改質装置、異性化装 置、硫黄回収装置、及びコーカー等がある(表2)。 ・製油所のアップグレード:2012年11月、MPCは22億ドルの”Detroit Heavy Oil Upgrade Project(DHOUP)を完成した。これにより、 製油所の原油処理能力を1.4万b/d、重質油処理能力を8万b/d増加 することができた。 -同プロジェクトでDelayed Coker2. 8万b/dと中間留分の水素化処 理設備(Distillate Hydrotreater)3.6万b/dを設置できた。 -アップグレードの結果、製油所の重質油精製能力は、2万b/dから 10万b/dに増加し、製油所の精製処理能力全体も、10.6万b/dから 12万b/dに増加した。 ・EBITDAの向上見通し:上記アップグレードの結果、今後の原油、 製品等の価格が、もし2006-2010年と同じレベルの場合は、2億 ドル、2011年と同じ場合は、3.5億ドルの年間EBITDAの増加が見 込める。 ・貯蔵施設:Detroit製油所は86の貯蔵タンクを有し、その貯蔵能 力は計600万バレルである。
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