36
特別掲載
( 東 女 医 大 誌 第55巻 第1号
)
頁 36~47 昭和60年1月東京女子医科大学入学生の身体計測値からの一考察
東 京 女 子 医 科 大 学 第 一 衛 生 学 教 室 ( 主 任 : 香 川 順 教 授 〉坂 木 佳 寿 美 ・ 木 村 一 彦
( 受 付 昭 和59年10月22日〉A Study in Somatometric Measurement
of the Freshman Students of Tokyo Women's Medical College Kasumi SAKAKI and Kazuhiko KIMURA
Department of Hygiene (Director: Prof. Jun KAGA WA, M.D.) Tokyo Women's Medical College
The purpose of this study is to compare with variations between actual measurements on the freshmen's somatometric items (standing height
,
body weight,
chest girth and sitting height) of Tokyo Women's Medical College and numerical values on the same items filled by the students themselves (manual values) and also is to solve our great doubts on the quite di妊erencebetween the somatometric data reported by the Ministry of Education,
on the students of seventeen years old of age and eighteen years old.The findings were as following:
1) With regard to the standing height
,
body weight,
chest girth and sitting height,
statistical analysis showes the level of significance between the measurements and manual values in all. Especially,
there is high level of significance (p<O.OOl) in body weight and sitting height.2) Freshman students of Tokyo Women's Medical College are c1assified into three c1asses
,
large,
middle and samll according to the somatometric measurement in each category. We found some remarkable habits in students' writings:Heavy weight students are apt to write less values than their actural weight
,
the studentsc1assified in the middle c1ass of sitting height, lower values than their actual sitting height, and the ones c1assified in the lowerc1ass of chest girth,
more broader than their own.3) Contrary to the measurements
,
the manual values of the freshman students of Tokyo Women's Medical Col1ege are their desirable values and they are almost approximate with mean values shown in the report by the Ministry of Education.4) The students have not keen interest in tracing of their own somatometric data.
緒 百 資 料 目 次 測定ならびに調査方法 1.測定方法 1)身長 2)体重 - 36-3) 胸囲 4)座高 2.調査方法 結 果 1.全国年齢別女子体位の年次推移 2.東京女子医科大学入学生の年齢別構成比率 3. 全国平均値との年次比較
1)体重と胸囲 2)身長と座高 4.学生各自の体格に関する記入状況 5.学生各自の体格に関する記入傾向 6.実測値と記入値の差の検定 7.実測値と記入値の 3階級別比較 1)身長 2)体重 3)胸囲 4)座高 考 察 要 約 文献 緒 言 健康診断の身体計測に関しては,小・中・高校 生は学校保健法で毎学年6月30日までに行なうよ うに義務づけられており,文部省はその結果を集 計し,毎年,児童・生徒の体位として発表してい る.一方,大学生の身体計測については,各大学 の自主性に任せられているのが現状である. 東京女子医科大学では,入学生に限り全員身体 計測を実施し,その実測値をその年度の学生の体 位として,当教室において長年調査してきた.そ の数値を文部省発表の全国平均値と比較すると, 身長は両者殆ど変わらないものの,体重・座高に ついては女子医大生のそれが全国値に比べ極めて 大きく,胸囲は逆に小さいとし、う特徴がみられた. この傾向は,筆者が先に報告した「東京女子医科 大学学生入学時体位の戦前戦後における推移j1) の中でも既に指摘したところである. 日本の若者の体位が良くなり,欧米人型に近づ いていると言われる現在,本学学生に関しては, その傾向は当てはまらないことに,筆者は疑問を 抱いていたが,その特異性を示す要因が文部省発 表による全国平均値の17歳と18歳の差の大きさに あることに気付き,文部省体育局に問い合わせた 結果,文部省発表の全国値は, 17歳までは実測値 であるが, 18歳以上は生徒各自の記入値であると の回答を得た. そこで今回は,本学入学生にも各自記入をさせ, 実測値と記入値を比較検討することにした.ここ にその結果を報告する. 資 料 測定4項目(身長,体重,胸囲,座高〉の全国 平均値は, 17歳までは文部省大臣官房調査統計課 「学校保健統計調査報告書2)jから, 18歳以上は文 部省体育局「体力・運動能力調査報告書2)jの性・ 年齢別平均値から引用した. 東京女子医科大学学生に関しては,入学時の健 康診断において,第一衛生学教室職員が実測した 数値を使用した. なお,全国平均値は昭和51-57年,東京女子医 科大学学生のそれは昭和50-59年のものである. 測定ならびに調査方法 1.測定方法 1)身長.身長計の正面に被検者を素足にて直 立させ, cm単位で小数点
1
位まで測定する.2
)
体重:衣服を脱ぎ(スリップ1
枚),体重計 の中央に乗り,kg
単位の小数点1
位 ま で 測 定 す る 3)胸囲:衣服はすべて脱ぎ(素肌),起立の姿 勢をさせ,安静呼吸の終了時に測定し, cm単位の 小数点1
位まで読む.なお,巻尺は鋼鉄製のもの を使用し,各人の使用前にアノレコール綿で、消毒す る 4)座高:座高計に腰かけて正座させ, cm単位 の小数点1
位まで測定する.2
.
調査方法 昭和59年4
月東京女子医科大学入学学生に4
月23日(月),各白の身長,体重,胸囲,座高を記 入させた.一方,身体計測値は,第二次入学試験 の2月27日(月), 28日(火〉の両日に測定した値 である.また,都内のT短大2年生(19歳〉にも 記入を依頼し,参考にした. 結 果 1.全国年齢別女子体位の年次推移 表1により17・18歳女子の体重,身長・座高・ 胸囲の全国平均値をみると,体重では1.0
.
-
1.5kg
の差で18歳の方が少なく,身長は昭和57年を除い て0.1-1.3cmの 差 で18歳 の 方 が 高 い . 座 高 は 0.6-1.2cm,胸囲は0.2-0.6cmの差で18歳の方 が小さい.体重と胸囲は相関関係3)があることか 37-表1 全国年齢別女子体位の年次推移 (昭和50-57年〕 項 目 体 重 (kg) 身 長 (cm) 年 齢 15歳 16 17 18 19 20 15歳 16 17 18 19 20 昭和50年 50.7 51.9 52.2 155.7 156.2 156.3 51 50.8 51.9 52.3 51.3 51.3 51.1 155.9 156.3 156.5 156.6 156.7 156.2 52 51.0 51.7 52.2 51.0 51.0 50.6 156.1 156.4 156.6 156.6 156.9 156.7 53 51.0 51.9 52.0 51.0 51.3 51.1 156.1 156.5 156.6 157.0 157.2 157.2 54 51.3 52.2 52.3 51. 0 51.4 50.9 156.2 156.6 156.7 157.2 157.4 156.9 55 51.5 52.2 52.3 50.8 51.2 50.8 156.4 156.7 156.9 157.0 157.5 157.3 56 51. 7 52.2 52.3 51.2 51.1 50.7 156.6 156.9 156.1 157.4 157.4 157.1 57 51.7 52.5 52.4 50.9 51.3 51.1 156.6 157.3 157.3 157.1 157.8 157.6 項 目 座 高 (cm) 胸 囲 (cm) 年齢 15歳 16 17 18 19 20 15歳 16 17 18 19 20 昭和50年 84.9 85.1 85.0 80.7 81.5 81.9 51 84.9 85.0 85.1 84.2 84.1 83.9 80.7 81.5 81.9 81.7 81. 7 81.7 52 84.9 84.9 85.0 84.0 84.1 83.9 80.6 81.2 81. 7 81.4 81.6 81. 7 53 84.9 85.0 84.9 84.1 84.0 83.4 80.6 81.3 81.7 81.2 81.4 81. 7 54 85.0 85.0 85.0 84.4 84.3 83.9 80.8 81.6 81.9 81.3 81.6 81.7 55 85.0 85.1 85.0 83.8 84.2 83.6 80.9 81.5 81.8 81.3 81.5 81.6 56 85.0 85.0 85.0 84.3 84.2 83.9 80.9 81.5 81. 7 81.4 81.6 81.9 57 85.0 85.1 85.0 83.9 84.2 83.8 81.1 81.6 81.9 81.4 81.7 81.9 ※昭和57年度体力・運動能力調査報告書文部省体育局 昭和58年9月 表2 東京女子医科大学入学生の年齢別人数と構成比率 年 齢 18歳 19 20 そ の 他 入学生 人数 % 人数 % 人数 % 人数 % 総数 昭和50年 71 61.7 34 29.6 ※ ※ 115 51 68 59.6 32 28.1 9 7.9 5 4.4 114 52 72 61.5 29 24.8 9 7.7 7 6.0 117 53 59 53.2 34 30.6 12 10.8 6 5.4 111 54 54 47.8 33 29.2 13 11.5 13 11.5 113 55 51 47.7 36 33.6 13 12.2 7 6.5 107 56 59 49.2 47 39.2 6 5.0 8 6.7 120 57 64 55.7 30 26.1 15 13.0 6 5.2 115 58 77 65.3 25 21.2 10 8.5 6 5.1 118 59 69 59.0 35 29.9 8 6.8 5 4目3 117 ※不明 一3
8-ら,体重の増減に伴って,胸囲にもその影響があ ることが推察される.他方,身長と座高をみるに, 身長の僅少の伸びに対して座高は逆に大きく減少 するとし、う不可解な現象がみられる.
2
.
東京女子医科大学入学生の年齢別構成比率 表2
に過去1
0
年間の東京女子医科大学入学生の 年 齢 別 構 成 比 率 を 示 し た が ,1
8
歳〔現役〉が47.7-65.3%
,1
9
歳c1浪〉が2
1.2-39.2%
,2
0
歳(2
浪〉が5.0-13.0%
で,約1
/
2
が現役,約1
/
3が1浪とL、う入学状況である.そこで,本調査の 対象は1
8
歳と1
9
歳の入学生とした.3
.
全国平均値との年次比較 1) 体重と胸囲 表3
,図1-a
と図2-
a
に示すように,東京女子 医大,1
8
歳(図1-a)
の 体 重 は , 全 国 平 均 を0.7-2.3kg
の差で上廻り,胸囲は0.9-2.6cm
の 差で逆に全国平均を下廻っている.1
9
歳(図2-
a
)
も同様に体重は0.3-2.7kg
の差で大きく,胸囲は0.5-2.3cm
の差で小さい.この結果からみると, 本学学生の体型は全国値と比べ,体重に比して胸 表3 東京女子医科大学生入学時 08歳・19歳〉体位の実測値と記入値 年 齢 18歳 19歳 項目 体 重 (kg) 胸 囲 (cm) 体 重 (kg) 胸 囲 (cm) 実測値 記 入 値 記状入況 実測値 記 入 値 記状入況 実担IJ値 記 入 値 記入状況 実測値 記 入 値 記入状況 昭和 女医大子 全国 女医子大 女医子大 女医子大 全国 女医子大 女医子大 女医子大 全国 女医子大 T 女医子大 T 女医子大 全国 女医子大 T 女医子大 T 短 大 短 大 短 大 短 大 50 52.3 79.1 52.6 78.6 51 52.0 51.3 79.1 81. 7 52.9 51.3 80.4 81.7 52 52.0 51.0 80.1 81.4 53.7 51.0 80.9 81.4 53 51.9 51.0 78.9 81.2 51.6 51.3 78.9 81.2 54 52.4 51.0 79.7 81. 3 52.1 51.4 79.0 81.3 55 53.1 50.8 80.4 81. 3 53.4 51.2 80.5 81.3 56 53.3 51.2 79.5 81.4 53.3 51.1 80.0 81.4 57 52.2 50.9 79.9 81.4 52.3 51.3 80.2 81.4 58 54.2 (人 80.4 (人〉55.7 〔人〉 (人〉 81.2 (人 (人〉 59 53.6 52.1 61/67 80.9 82.3 53/67 52.7 51.2 52.5 33/34 38/40 79.2 80.5 81. 7 25/34 25/40 年 齢 18歳 19歳 項目 身 長 (cm) 座 高 (cm) 身 長 (cm) 座 高 Ccm) 実測値 記入値 記状入況 実測値 記入値 記状入況 実測値 記入値 記入状況 実測値 記入値 記入状況 昭 和 女医子大 全国 女医大子 女医子大 女医子大 全国 女医子大 女医大子 女医子大 全国 女医子大 短 大T 女医子大 短 大T 女医子大 全国 女医子大 短 大T 女医子大 短 大T 50 156.6 86.1 158.0 86.3 51 157.3 156.6 86.4 84.2 156.0 156.7 86.3 84.1 52 156.7 156.6 86.5 84.0 157.7 156.9 86.6 84.1 53 156.4 157.0 86.5 84.1 158.0 157.2 86.8 84.6 54 155.9 157.2 86.0 84.4 158.6 157.4 86.9 84.3 55 157.2 157.0 85.7 83.8 156.8 157.5 86.2 84.2 56 158.0 157.4 86.1 84.3 158.1 157.4 86.7 84.2 57 156.2 157.1 85.3 83.9 156.7 157.8 86.3 84.2 58 156.8 く人〕 85.8 (人〕160.2 (人〉 (人〉 86.9 (人 (人〕 59 157.6 158.0 67/67 85.9 84.0 33/67 157.4 157.0 158.8 34/34 40/40 86.9 84.0 85.2 17/34 10/40cm 90 kg 70
ぶ先走ンベ
胸 80「
60体
囲│万之ご「竹重
70ト 全 国 50 図1-a最近の東京女子医科大学生入学時 (18歳〉 体位の推移パ帯設
A
〆身長
女 子 医 大 女 子 医 大 長 -ーー.. 同ー咽・.-"弘、....-..・』吋. 全 国 140ト 図1-b 最近の東京女子医科大学生入学時(18歳〉 体位の推移 囲が狭いと言える. 2)身長と座高 表3
,図1-b
と図2-
b
で判るように,東京女子 医大生,1
8
歳(図1-b)
の身長は,全国平均より0.1-0.7cm
高 い 年 ( 昭 和5
1
,5
2
,5
5
,5
6
年〉と0.6-
1.3cm
低い年(昭和5
3
,5
4
,5
7
年〉があるが,7
年闘を平均すると僅かに全国平均の方が高い,1
9
歳(図2-
b
)
の学生では0.7-
1.2cm
高い年(昭 和52-54
,5
6
年〉と0.7-
1.1cm
低い年(昭和5
1
, C口1 90 kg 70 胸│
ω
〆設之 閣
1
ヘ
側同羊:ム
l 墓 70重
体
--150[¥;…:ーに
I
昭和│ ω 55 60年l 図2-a 最近の東京女子医科大学生入学時 (19歳〉 体位の推移 1乱〉器付イヘ身長
~~∞
女子¥広,人--・-座高
長
-
ー
-
.
.
.
-
ー
・
全 国ー
・・
ー
一
司
・
ー
-
+
-.
.
高
140ト 昭和ι
十 ]
図2-b最近の東京女子医科大学生入学時 (19歳〕 体位の推移5
5
,5
7
年〉があり,平均すると女子医大生の方が 僅かに高い,座高では1
8
歳(図1-b)
が1.4-2.5
cm
,1
9
歳(図2-
b
)
が2.0-2.6cm
,いずれも女子 医大生の方が高い.従って,本学の学生は全国値 を比べて,身長の僅少差に対して座高がかなり高 L 、ことが判る. 4.学生各自の体格に関する記入状況 身長,体重,胸囲,座高の4項目について女子 医大とT
短大の学生各自に記入させたが,表3
に - 40ーみるように,項目により自分の体位の数値を記入 する学生の記入状況が異なっている.体重につい て は
1
8
歳 ( 東 京 女 子 医 大 生 〉 で は6
7
人 中6
1
人(
9
1.0%)
が,1
9
歳(東京女子医大生・T
短大生〉 で は 学 生3
4
人 中3
3
人(97.1%)
・4
0
人 中3
8
人(
9
5
.
0
%
)
記入しているが,身長については三者共 学生の100%
が記入している.次いで座高の記入状 況をみると,三者それぞれ6
7
人中3
3
人(
4
9
.
3
%
)
,3
4
人中1
7
人(
5
0
.
0
%
)
・4
0
人中1
0
人(
2
5
.
0
%
)
と目 立って記入率が落ちる.胸囲については6
3
人中5
3
人(
7
9
.
1
%
入
3
4
人中2
5
人(
7
3
.
5
%
)
・4
0
人中2
5
人(
6
2
.
5
%
)
の記入率をみせる. 以上のように,学生は身長,体重に関しては数 値を認識しており,自ら記入するものの,胸囲で は約1
/
3
,座高で約1
/
2
が記入していない状況から, 座高と胸囲については,自らの数値を知らないた めに,記入できないことが察知された. 5.学生各自の体格に関する記入傾向 表3
において学生各自の記入値の平均を実測値 のそれと比較すると,体重では1
8
歳(図3
-a)と1
9
歳(図4
-a)ともに学生達による記入値は,実 測 値 よ り も1
.
5
k
g
少 な い5
2
.
1
k
g
と5
1.2
k
g
を 示 す,身長では1
8
歳(図3-b)の記入値は実測値よ り0
.
4
c
m
高い1
5
8
.
0
c
m
を示すが,1
9
歳(図4-
b
)
では逆に実測値より0.4cm
低 い1
5
7
.
0
c
m
が記入 されている.一方,座高は1
8
歳(図3-
b
)
と1
9
歳 (図4
-
b
)
の記入値は8
4
.
0
c
m
で等しく,実測値と比 べると,それぞれ1
.
9
c
m
,2.9cm
低くなっている. 胸囲の記入値は1
8
歳(図3
-a)で1
.
4
c
m
,1
9
歳(図4
-a)は1
.
3
c
m
実測値より大きい8
2
.
3
c
m
,8
0
.
5cm
が記入されている. 以上のことから,学生達が各自自分の体位を記 入する時は,体重,座高は少なく,身長,胸囲は 多く書く傾向にある事実が見出され,それぞれの 数値に対し,好みに従って四捨五入,切り捨て, 切り上げをしていることが窺われる. 6.実測値と記入値の差の検定 ます‘体重について1
8
歳の学生(図3
-a) の実測 値と記入値の平均の差の検定をしたところ,p<
0
.
0
0
1
で高度の有意差を示し,実測値は記入値より 大きいものとなっている.類似の傾向がみられた - 411
9
歳の学生(図4-a) における差は,例数が少な いため有意とは認め得なかった.身長では1
8
歳(図3
-
b
)
の場合,実測値と記入値の間にp<0.05
の有 意差を以て,実測値より記入値の方がやや高いこ とが認められる.1
9
歳(図4-b)では徴差を以て, 記入値が実測値より少ないことをみたが,少数の ためもあり,この間の差は有意ではなかった.座 高でみられた実測値と記入値の間の大差,即ち, 記入値が実測値より大きく下廻る差に関しては,1
8
歳(図3-
b
)
はもとより,1
9
歳(図4-
b
)
の人 数の少なさをも超えて,両者共p<O.
0
0
1
の有意性 が見出された.学生達は座高について,低自に低 目にと記入していることが判る.胸囲では,1
8
,1
9
歳(図3
-a,4
-a)とも実測値より大き目に記入 される事実をみたが,この聞の差は, ¥,、ずれもp<
0
.
0
5
の有意性を示す.7
.
実測値と記入値の3
階級別比較 ここでは昭和5
9
年度東京女子医科大学入学生のう ち,年齢18-20
歳で記入項目の身長と体重を満た している者,総数8
3
名を一括して対象とした. 方法は,各測定項目を大・中・小の3階級に区 分する.即ち,実測平均値を基準に,標準偏差/
2
を上側と下側に加算し,中の階級の幅とする.そ の階級幅以上を大の階級,それ未満を小の階級と し,それぞれの階級に属する者の身長,体重,胸 閤,座高の実測値と記入値を比較検討した.結果 は表4
と図5-
a
,-
b
,-
c
,-
d
に示す. 1)身長(表4,図5-a) 総 数 の 平 均 は 実 測 値1
5
7
.26cm
, 記 入 値1
5
7
.
6
8
cm
で,実測値の方が0
.
4
2
c
m
低い.身長の高い階 級,即ち,1
6
0
.
1
c
m
以上の実測値を示す2
1
名の実 測 値 , 記 入 値 の 平 均 値 は1
6
4
.37cm
と1
6
4
.
4
0
c
m
で,その差0
.
0
3
c
m
,僅かに実測値が低い.身長の 中級1
5
4
.
5
-
1
6
0
.
0
c
m
の階級には3
4
名が属し,実 測値,記入値それぞれ1
5
7
.84cm
と1
5
7
.96cm
の平 均値を示し,その差0
.
1
2
c
m
はやはり実測値の方 が低いことを表わしている.大・中2つの階級の 実測値と記入値の差は小さく,有意とは認められ ない.次に,身長1
5
4
.
4
c
m
以下の低い階級2
8
名の 平均値は,実測値1
5
1
.16cm
,記入値1
5
2
.
3
0
c
m
,こ の間1.14cm
の大差をもって実測値は記入値に比』 同 42 C町1 90 80
*
82.3 80.9 81.4 EZZZl実測値 亡 二 コ 記 入 値*
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pく0.001 キ ネ * 53.6 50.9 kg 60 体 50 囲 ン/1 V//l I I I 重 90 胸 80t
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二 コ 記 入 値*
pく0.05 kg 60 体 50 重 70ト 1//1 r//l -1 70 40 ト r//j V/冗 寸40。
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昭和、 59年 57年 59年 57年 図3-a東京女子医科大学生入学時(18歳〕体位の 実狽u値と記入値 E2Zヨ実測値E
二 コ 記 入 値 160*
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Pく0.05 100 158.3 157.6r岨--, 157.1*
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昭和 59年 57年 59年 57年 図3-b 東京女子医科大学生入学時 (18歳〉体位の 実測値と記入値 昭和 ー-59年一一-57年 ー一一59年一~57年 図4-a東京女子医科大学生入学時 (19歳)体位の 実測値と記入値 f22Z]実測値 仁 二 コ 記 入 値 1601
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←-59年 一 →57年 図4-b東京女子医科大学生入学時(19歳)体位の 実測値と記入値ベ明らかに低い (p<0.05).以上,身長が低くな るにつれて実測値と記入値の差が大きくなるとい う興味ある現象がみられる. 2)体重(表4,図5-b) 実測値,記入値それぞれの平均値は,総数では 53.70kgと53.73kgで,ごく僅か0.03kgだけ記入 値の方が大きい 3階級のうち,体重の大なる57.8kg以上のもの は21名おり,実測値,記入値のそれぞれの平均値 が64.42kgと61.55kgで,その差2.87kgは実測値 の方が有意に大(p<0.05)であることを示してい る.次に49.6-57.7kgの中の階級には35名が属 し,その実測値,記入値の平均値は53.90kg,52.90 kgと, 1.00kgの有意 (p<0.05)の差を以てやは り実測値の方が大きい.小の階級49.5kg以下の27 名の平均値は,他の大・中の
2
階級とは逆に,実 測値45.48kgに対し記入値45.97kgで,実測値よ り0.49kg大きく記入していることが判る.ただ し,この間の差は有意とは認められない. 3) 胸囲(表 4,図 5-c) 身長,体重については,対象のすべてが自分の 値を記入して記入率100%であったが,胸囲につい ては, 83人のうち64人 (77.1%)記入したに止ま る.座高に比べれば記入率は良い.総数の平均値 は実測値79.92cmと記入値82.23cmで, 2.31cm の差を以て実測値の方が記入値より小さくなって いる.胸囲82.5cm以上の大きい階級では21名中 20名(95.2%)が記入し,その平均値は実測値86.65 cm,記入値86.45cmで,実測値の方がわずかに大 き い0.20cmの 僅 差 は , 有 意 で な い . 次 の 77.4-82.4cmの階級では, 34名中24名 (70.6%) の記入があり,実測値を記入値の平均値は79.95 cmと81.54cmで,その間1.59cmの差は強い有意 性 (p<0.001)をもって,実測値の方が小さいこ とを示している.77.3cm以下の小の階級では, 28 名のうち20名 (71.4%)が記入しているが,実測 値75.02cmに 対 し , 記 入 値78.85cmの 大 差3.83 cmをみせ,強い有意性(p<O.OO1)をもって実測 値が記入値をはるかに下廻ることを示す. 以上より,全般的に胸囲については,大きい方 表 4 東京女子医科大学入学生(昭和59年〉の実測値と記入値の「大・中・小」 3階級別比較 測 項目輸入
実 側 イ直 記 入 イ直 定自 N X S.D N 記入率 X S.D. 言 十 83 157.26 5.62 83 100 157.68 5.30 身 大 160.1~ 21 164.37 3.28 21 100 164.40 3.37 長 中 154.5~160. 。 34 157.84 1.74 34 100 157.96 1.97 cm ~154.4 28 151.16 2.59 28 100 152.30 2.67 計 83 53.70 8.12 83 100 53.73 7.06 体 7!' 57.8~ 21 64.42 6.26 21 100 61.55 5.74 重 中 49.6~ 57.7 35 53.90 2.72 35 100 52.90 3.13 kg ~ 49.5 27 45.48 3.27 27 100 45.97 3.55 計 83 79.92 5.15 64 77.1 82.23 4.85 胸 大 82.5~ 21 86.65 4.11 20 95.2 86.45 5.63 囲 中 77.4~ 82.4 34 79.95 1.79 24 70.6 81.54 2.25 cm ~ 77.3 28 75.02 2.48 20 71.4 78.85 2.49 計 83 86.86 3.22 45 54.2 84.56 4.05 座 大 88.2~ 30 89.98 1.48 15 50.0 88.58 3.46 高 中 85.1~ 88.1 33 85.88 1.05 18 51.5 82.85 2.60 C町1 ~ 85.0 20 83.13 1.48 12 60.0 82.00 2.56 - 43fZZZI実測値
E
二二コ記入値*
P<0.05 164.37 164.40 cm 160 157.84 157.96*
n n δ ハu L r o ー ハ 0 1 ー に 1 u l 150 140 身 130 長 120 154.5 160.0 154.4 大 中 小 図5-a I大・中・小J3階級別にみた「身長」実測 値と記入値の平均値の比較 を願望していることから,実測値を上廻って大き く記入する傾向が見出される. 4) 座高(表 4,図 5-d) 座高については,実測8
3
人中,自分の座高を記 入し得た者は4
5
人(54.2%)
に止まった.自分の 座高を知らない者が半数に近い. 総数で、は実測値86.86cm
,記入値84.56cm
,その 問 実 測 値 の 方 が2.1cm
も高い.座高の高い8
8
.
2
cm
以 上 の 大 の 階 級 で は ,3
0
名 中 半 数 の1
5
名(50.0%)
が記入しているにすぎず,実測値8
9
.
9
8
cm
と記入値88.58cm
,その間1.4cm
の差で実測 値の方が高くみえるが,有意とは言えない.次に85.1-88.1cm
の 中 の 階 級 で は3
3
名 中1
8
名(
5
1.5%)
が記入したに過ぎないが,実測値8
5
.
8
8
cm
~,こ対し記入値82.85cm と低く,その間 3.03cm の大差は明らかに強い有意性(p<O.OOl)を示す.85.0cm
以 下 の 座 高 の 低 い 階 級 に は2
0
名 中1
2
名 kg 70 IZ?ZI実測値E
二二3
記入値*
P<0.05*
60*
休 日 45.4845.97 重 40 30 20 10。
49.6 57.7 中 57.8 49.5 小 大 図5-b I大・中・小J3階級別にみた「体重」実測 値と記入値の平均値の比較(60.0%)
が 記 入 し た . 実 測 値8
3
.13cm
,記入値82.00cm
,その差1.13cm
と大・中の階級と同じく 実測値の方が高いが,有意で、はない. 以上,座高中級のみが実測値と記入値の差に明 らかな有意性を示したに止まったが,全般的に座 高が低いことを願望している傾向は窺われる.自 分の座高を知る者が少なくて,記入例数が減った ため,統計的有意性が出難くなった. 考 察 東京女子医科大学学生の体位に関して,当教室 では長年調査をしてきており,それに関する論文 も先輩諸氏により多数発表されている1) 筆者も 手がけて1
0
年余になるが,東京女子医大生の体位 と文部省統計による全国平均を対比すると,常に 「身長は殆ど差がないのに対し,座高が高く,体重 は大で,胸囲が狭い」とL、う特徴がみられた. 本学へは,高校卒の女子が日本全国(都道府県〉 より入学している実態から,この一見特異な現象 は不可解な問題として今日まで残されてきた. 文部省発表“体格の変遷"2)の数値のうち, 17歳 - 44ー回口
*
*
*
Pく0.001 cm 90 A -R υ * 1 0 0 * にd * S Q d ヴ , a M ﹁ r o F h U C U 0 0*
*
7*
8.85 80 75.02 70 1旬60 囲 50 40 30 20 82.5 77.4 82.4 中 7小7.3 大 図5-c I大・中・小J3階級別にみた「胸囲」実測 値と記入値の平均値の比較 (幼稚園から高等学校〉までは,学校保健法第 2章 第2
条に健康診断を毎年行なうことが義務づけら れているため「実測値」であるのに対し, 18歳(大 学,短大〉以上は義務づけられていない上に,文 部省が指定する年に実施するようになっている. しかも最近は実施されておらず,文部省体育局 が毎年ランダムに約2,000名を抽出して行なう“体 力・運動能力調査"において,付属的に被調査者 各自に身体測定値を記入させ,その「記入値」を 18歳以上の数値として発表している旨,文部省体 育局の回答を得た. ここに,実測値と記入値両者の相違をみるため, 東京女子医大生(昭和59年入学〉各自に数値を記 載させ,検討したところ,女子医大生が全般に体 重・座高は実測値より少なく記入する一方,身長・ 胸囲はより多く記入する傾向が明らかとなった. 実測値と記入値の差を検定すると,身長・胸囲Z
乙?.2l実測値E
二 コ 記 入 値*
*
*
P<O.OOl Cロ1 ﹁ D * 。 A * m u * ∞ ∞ に -U 0 6 0 6 R U O 0 0 0 Q O Q U Q U 0 6 90 80 70 座 60 高 50 40 30 20 88.2 88.1 85.1 中 ハ リ 1 5 ト 0 6 J 大 図5-d I大・中・小J3階級別にみた「座高」実測 値と記入値の平均値の比較 を 大 き 目 に 記 入 す る 傾 向 は , 両 者 聞 の 差 がp<
0.05を以て,また体重と座高を小さ目に記入する 傾向はp
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.
O
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の強い有意性を以て,実測値と記 入値との差を認め得た. 更に対象者は測定項目(身長・体重・胸囲・座 高〉ごとに大・中・小の3階級に区分し,記入状 況の平均値をみると,体重は大・中の階級では 2.87・1.00kg実測値より少なく,小の階級では 0.49kg多く記入している.身長は大・中・小の各 階級が0.03・0.12・1.14cmの順で実測値より高く 記入しており,座高に関しては大・中・小の階級 それぞれが1.40・3.03・1.13cm実測値より低く記 入している.胸囲は大の階級が0.20cm小さく, 中・小の階級では1.59・3.83cmの大きく記入して いる.測定値のサイズによる大・中・小の階級毎 の記入状況に特色がみられる.即ち,身長の低い 者は高く,体重の多い者は少なく,胸囲は小さい -45-46 者も中級の者も多目に,座高は全般に,特に中級 の者は低自に記入している実状が判り,学生が個 人の"願望値"を記入していることが浮き彫りにさ れた. 学校保健統計(指定統計第15号〉や体力・運動 能力調査のデータは,学校,家庭,職場を問わず, 現代社会における人間生活の向上に向って営なま れる諸種の活動の基礎資料として,広く活用され るものである.従って,高度の信頼性と,客観性, 妥当性4)叫が求められるべきは当然といえよう. 文部省体育局から発表される数値は,信頼すべ き基準とされて,全国の諸種集団の実態との比較, 更には今後の見通し等に,広く利用されるであろ う.従って,基準とされる数値の資料の扱いは慎 重になされるべきであることはいうまでもない 現代,中・高校女生徒・短大学生等,若い女性 の中には,体重の減量に浮身をやっす者,拒食傾 向にある者7)が増加しており,その結果,全般的に スリムな体型,バラツキの少ない平均化傾向討を 示しているとし、う.背丈が高く,体重は少なく, しかも胸の脹らみは大きく,座高は低自の体型で ありたし、とする現代の若い女性の願望が,今回, 測定者自らに記入させた体格の数値に如実に顕現 された.被検者自らに記入させた資料を使って作 製された文部省体育局による体位の数値は,到底 全国基準値としての有用性を持たない.一方,文 部省へ全国各都道府県の各学校から提出される “児童・生徒の身体計測の平均値"の算出の仕方が, 統ーされていないことも指摘9)されている. 世界に誇るべき, 1900年以降の文部省学童体位 統計が,近く21世紀にさしかかろうとする変動の 現代に到って,全国基準値としての信頼性を失う ことは, しのび難い. 少なくとも全国基準値としての使用に耐える統 計資料を後世に残すべく,慎重な措置がとられる ことを切望する. 要 約 文部省発表の生徒・学生の身体計測値に関し, 17歳(高校生)までは実測, 18歳(大学・勤労青 少年〉以上は各自の記入の平均値であることを, 直接文部省に問い合わせ,知った. 46 そこで,昭和59年度東京女子医科大学入学生117 名に各自の体位について記入させ,その記入値を 実測値と対比検討したところ,次のような結果を 得た. 1)身長,体重,胸囲,座高の4測定項目すべて において,実測値と記入値の両者間に有意差が認 められた.即ち,身長,胸囲の記入値は実測値よ り大きく (p<0.05),体重と座高の記入値は実測 イ直より小さL、(p<O.OO1).
2
)
各測定項目を「大・中・小」の3
階級に分別 し,夫々の傾向をみると,体重「大」の階級では 実測値より少なし座高「中」の階級では実測値 より低く,胸囲「小」の階級では実際より大に記 入する傾向が顕著に現われている. 3) 東京女子医大生の記入値は,全国平均値と近 似値であって,実測値に比べると,体重少なく身 長高く,座高低く胸囲が大きい,願望値とも言う べき値を示している.ここに,文部省体育局によ る全国平均値も願望値であろうことが察せられ る 4)学生の記入状況から,女子学生が自分の身体 計測値を知らない者が少なくないこと,また身体 計測に関する意識が薄いことが認められた.特に, 座高,胸囲については記入できぬ者が多かった. 文部省発表の数値が信頼すべきものとして,評 価の目安に活用されるためには,文部省は体位統 計作製に慎重であって欲しい. この稿を終るに臨み,御指導,御校閲を賜わりまし た本学第一衛生学教室前任教授,石井妙子先生に深謝 いたします. (本論文の要旨は, 1984年6月14日,第259回東京女 子医科大学学会例会において発表した.) 文 献 1)坂本佳寿美・東京女子医科大学学生入学時体位の 戦前戦後における推移.東女医大誌 47(8) 877-892(1977. 8) 2)文部省体育局 体力・運動能力調査報告書.昭和 57年度(1983. 9) 3)木村一彦・小野 恵:女子医大生の身体計測値の 消長に関する一考察.東女医大誌 53(5) 474-482 (1983. 5) 4)三木和彦:学校保健統計の利用と限界.学校保健研究 24(8)360-365 0982. 8) 5)大山良徳学校保健における統計的認識.学校保 健研究 24(8) 352-355 0982. 8) 6)大沢清二.学校保健に関する調査統計の問題点. 学校保健研究.24(8) 356-359 0982. 8) 7)堀越幸代・ヤセ型の流行について.保健の科学 - 47 25(1)57-58 (1983.1) 8)西千代子 女子短大生の体位の年次変化.綜合臨 32(7) 2051-2053 (1983. 7) 9)鈴木登.体位等における平均値の比較について 考える.保健の科学 23(1)63-65 (1981.1)