青年女子の身体計測値に関する研究 (第2報)
著者 橋詰 静子, 山田 民子
雑誌名 東京家政大学研究紀要 2 自然科学
巻 33
ページ 115‑125
発行年 1993
出版者 東京家政大学
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010527/
青年女子の身体計測値に関する研究(第2報)
橋詰静子,山田民子
(平成4年10月1日受理)
AStudy of Somatic Measurements of Young Women(Part II)
Shizuko HASHIzuME, Tamiko YAMADA
(Received October l,1992)
1.緒 言
正確な身体測定値を求めることは,衣服設計のための 基礎資料として欠すことはできない.
第1報に引き続き,近年体型が変化してきている青年 女子の身体計測値の検討を行い,体格,体型的特徴をと
らえることを目的とした.
前報と同様に度数分布・相関関係についてと,本報に おいては1970年の青年女子の身体計測値との差の検定を
行った.})
度数分布は,平均値・標準偏差などの統計量では得ら れないデータの全体に関する情報が把握でき,得られた データの分布型をもとに多方面から検討することができ
る.2】
測定は様々な体型を正確に知るために行い,体型を数 字で表わすことによって体型の特徴を正確に伝えること ができる.
詳しく体型を知ることは,パターンメーキング・ボディー の製作・着装など,被服造形上大切なことである.
前報で述べたように現在の既製材料サイズには,体型 に見合うものが少ないと考えられた.3)
理想として考えられることは,データで体に合い,機 能的な服がすぐ得られることである.
又,個人製作をする上においても,正確なデータは必 要なことであり,仮縫いの必要のないパターンメーキン
グができると予想される.
詳細な身体計測値を求め体型の把握を行った.
2.資 料 方 法
服飾美術科 第6被服構成研究室・被服構成学実験研
資料は,1970年と1990年の本学女子学生19才〜20才の 身体計測値とJIS体格調査表を使用した.4》
測定箇所は,高径・幅径・体幹の角度である.5)
測定項目は,身体の大きさ,又は形態を表わす基本的 な項目を選択した.
高径の計測には,1.身長,2.頸椎高,3.腕付根 高前,4.腕付根高後,5.乳頭高,6.肩峰高,7.
前胴高,8.後胴高,9.右前上揚骨棘高,10.股の高 さ,11.中指端高,12.右膝関節高,13.外果高 体幹の角度の計測には,1.肩傾斜右,2.肩傾斜左
3.腸骨稜,4.背部上面,5.後腰部,6.胸部上面 7.腹部
幅径の計測には,1.胸部横径,2.胸部矢状径3.
胴部横径,4.胴部矢状径,5.腰部横径,6.腰部矢 状径の径26項目である.
体幹の角度にっいては,被検者のシルエッター写真か ら求め,高径・幅径の計測は,被検者の測定結果より検 討を行った.各項目の特徴を知ると共に,前報と同様,
度数分布・相関関係と,本報においては,1970年の青年 女子の身体計測値との差の検定も行った.
3.結果および考察
図2−Aは,歪度を縦軸に,尖度を横軸にとり,高径 の各項目を位置づけたものである.全ての項目が正規分 布を示しており,分布の広がり,標準偏差とも大きいも のが多いことから,高径においては,個人差があるとい
える.
しかし,右膝関節高・外果高等は,分布の広がり,標 準偏差が小さく,平均値に集っていることから,個人差
は少ないといえる.(図2−B)
2
QT
高 径
︸
一一一一@ 6
幅 径 2 4
5
体幹の角度
図1高径・幅径・体幹も角度項目
(116)
歪度 58
図2−A 歪度と尖度の関係
歪度 1.4
1
.1
0.6
83
@
ー度数
69
@
ー度靴
6
B
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甲 ︑
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5覧 い﹁ y 冨
lii;蓑 40 45 50 cm
外 果 高 x
データ歎コ278 平均 = 42.92 無2 旧差雪 2.q8
騨 均 準デ 平 繍 冒
振レ商攣畿奪壽蕎義嬉黛寧︑捲鑓蟻鑑♂ 鞍 頚匿露蔭講=︑︑.︑.︑籔釜気 奮餐£藩﹂漂層ー.な厘;殺壕
・聖特抽謎球羅燦蝿塚鋒﹂
5 1 10 ㎝
右膝関節高 1 9 9 0 図2−B 度数分布
304010 60 70
データ数 nt 281
目6.31
繍tP旧差= .92
一q2
一〇.6
一1
尖度
一 O.2
匂q6
一1
体幹の角度の分布 図3−A 歪度と尖度の関係
20
1 9 7 0
尖度
量15
1
度敢
5!1
ー曜数 重ー え
データ欽=2S2 平均 =2n.a 撮醐 堕壽5.12
15 25 35
1置.._=L_
口X
15
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8
ー度敵
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25
データ殿ロ252 平均 厩20.10 15準旧鉋覧5.06
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35 度
肩傾斜右
ー度数
肩傾斜左
61
文
一
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L
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15 20 25 30
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度
データ勲詔50 平均 翼21.コ峰 楓暇11簸盟循,1
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15 20 25 :30 度
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IO 15 20
データ数冨252 平均 Ut 13.32 eStBf日差・=3.74
度
7
−度数 唇ー
Y
to
データ数=50 平均 =剛.63 標酬口差雪3.田
15 20 度
背部下面
1 9 9 0 1 9 7 0
図3−B 度数分布
(118)
歪度
1
40 30
。L___=._.5____一.fe−一一一一・−
8 8 尖度
一〇2
一〇5
11
1 9 9 0 50 −O
歪度
1
O.6
q2 o
一〇2
一〇.6
1
幅径の分布
図4−A 歪度と尖度の関係
図3−Aは,体幹の角度の各項目を位置づけたもので ある.右が1970年・左が1990年を示したものだが,腹部 のみ正規分布を示さなかった.これは,最も個人差が大 きいと考える.
また,90年の分布においては,肩傾斜・腸骨稜の分布 の広がりは小さく,平均値に集中していることから,個 人差は少ないといえる.
70年と比較すると肩傾斜角度は,3度ほど上がってお り,度数の差はみられるが,70年,90年共に左右の角度 の差はなく,どちらも数値的には,普通肩であることが 示されている.
さらに,背部下面においては,70年は分布の広がりが 小さいが,90年は広がりが大きいことから,個人差があ
るといえる. (図3−B)
図4−Aは,幅径の各項目を位置づけたものであるが,
70年のものと比較してみると,正規分布から大きくはず れるものはないが,胸部矢状径以外は,歪度・尖度共に 対称の数値を示した.
図4−Bの胸部・胴部・腰部の度数分布では,共に横 径において,1990年は平均1.5cm前後小さくなっていた.
又,正中線上の矢状径においても,平均3cm前後小さ
くなっているのが認められた.
70年のものは,分布にばらっきがみられることから,
肥満・痩身など個人差があったといえるが,90年の分布 は,平均値に近い位置に集中していることから,個人差 は少ないといえる.
っまり,全体的に痩身になって来ていることがわかる.
次に,相関関係にっいてであるが表1は,身長との 相関関係と胸囲との相関関係を示したものである.
身長と高径との相関係数は高く,相関性は深いといえ るが,身長と周径,身長と幅径との相関係数はは低く,
相関性はほとんどないといえる.
また,身長との相関係数の低いものの中には,胴囲・
腰囲・乳頭下り・背幅・胸幅等があり,これらは,胸囲 との相関係数が高く,相関性の深いことを示している.
これは,骨の長さに関係するものと,身長との関係が 深いことを示している.
差の検定にっいては,全ての項目において1970年の計 測値との差の検定を行った.
高径に関しては,本校学生の計測値が不足のため,J ISの体格調査との検定とした.
表2は,差の検定をグラフに表わしたものである.0
π
データ敢掃 平均 = 1慕準旧並=
56 27.2v 1,2a
30
﹇﹈
32 cnl 26 28
﹂. 天
データ数 平均 愕 tti置桝目藁昌
5u 24?1 1.53
28 cm
ー度裁
26
ズ
データ数霧 平均 冒
む翼ttg lPt竃…=
252 26.32 2.s6
35 cm 30
25
__..,⊂コ噌 口_口
20
部
lJ
1
1EJk
胸
X
ヲータ敵竃 平均 翼 繍le lff箆=
252 22.44
2.84
,L. 一[出⊥L
22 24 cm
25 30 20 15
部 胴
ヌ
データ数鑓
ユ1己均 昌
傾準10差=
56 32コ8 1.50
凹⊥
3t 36 cm 32
30 0
0 7 9 1
X
14@ ー度故
データ数冒 平均 ロ 卿 僑差=
25Z 3e.Gl 2.05
35 ㎝ 30
・25〔L』」
20
部 腰
0 9 9 1
図4−B 度数分布
(120>
僻 ー度勲卵 ー度数
0
55@ !曜故
点を軸とし,マイナス方向は70年に有意差を示し,プラ ス方向は90年に有意差を示す.
高径では,全て90年に有意差が認められ,中でも12.
右膝関節高の4.89が他と比べて大きく有意差を示した.
体幹の角度では,4.背部下面の5.4・5.後腰部の6.
17が90年に大きな有意差を示しており,1.右肩傾斜の一 4.13・2.左肩傾斜の一4.72が70年に大きな有意差を示
した.
幅径では,全て70年に有意差が認められ,2.胸部矢 状径の一11.3・4.胴部矢状径の一7.88.・6.腰部矢 状径の一9.04,特に正中線上の矢状径は他の項目と比べ ても大きな有意差が見られる.
これを見ても,体型の大きな変化があることが理解で
きる.
前胴高・後胴高において,従来は腹部のふくらみによ り,前胴高が後胴高より長い傾向が強いとされていたが,
今回の測定結果では,次のようなことがいえる.
被検者236名のうち,前胴高の高い者は44名,全体の1 8.6%・後胴高の高い者は154名,全体の65.3%・差のな い者は38名,全体の16.1%という結果が示された.
度数分布を見ると,前胴高の高い者は0.5〜1cm未満 の前後差に集中しており,後胴高の高い者は0.5〜2cm といったように差の幅は広い.(図5)
また,身長と前胴高の相関係数は0.76・身長と後胴高 は0.74,身長と胴高の場合,相関関係の深いことを示し ているが,前後の差と身長に関して相関性は認められな
表1 相関係数
身長との相関係数 胸囲との相関係数
1.背丈 2.頸椎高 3.肩峰高 4.腕付け根高後 5.腕付け根高前・乳頭高
ひじ丈 体重 背肩幅 背幅 乳頭下がり 腰囲・外果高 胸幅
20.胸囲・首っけ根囲 21.胴囲
6.前胴高 7.後胴高 8.股の高さ 9.右膝関節高 10.中指端高 11.そで丈
12.右前上揚骨棘高・前丈
13.
14.
15.
16.
17.
18.
19.
1.0
0.92 0.86 0.81 0.80 0.76 0.74 0.70 0.67 0.64 0.58 0.56 0.42 0.39 0.31 0.26 0.22 0.20 0.17 0.15 0.10
1234567891011121314
体重胴囲 腰囲 上腕最大囲 ひじ囲 腕っけ根囲 乳頭下がり 乳頭間幅 背幅 胸幅 背肩幅 そで丈 肩傾斜右 肩傾斜左
2071095420903188766555443200 00000000000000
い.
これは,身長が伸びているのと同様に,前・後嗣高の 高さも増加していることがわかる.
原型の腰囲における前後の差にっいて,胴部・腰部の 横断体型より検討した. (図8)
スカートの脇線を体の厚みの中央に通すには,脇線を 移動させなければならない前中心から後中心までのヒッ プ寸法を二等分した位置が脇縫い目線として必ずしも好 ましいものではなく,デザインや体型によって縫い目を 設定することが必要である.この移動させる寸法が製図 上では,前後の差として,ヒップライン・ウエストライ ンで処理されている.腰囲と腹囲の寸法が何cmであるか ということではなく,腰囲線の横断面に対して,腹囲線 の横断面がどの位置にあるのかがより大切な問題である.
縫い目線は,耳珠点と転子点を通る線であり,この線 が前中心から後中心までのウエスト寸法・ヒップ寸法を
二等分した線よりどのくらい移動しているかを調べた.
その結果,最近では前中心から後中心まで1/2点が,
脇縫目線より後に位置している場合が多いという結果が 得られた.
胴部では,前胴部の大きい者は42.6%で平均0.5cm大 きく,後胴高の大きい者は52.8%で平均0.5cm大きく,
差のない者は4.6%であった. (図6)
腰部では,前腰部の大きい者は42.1%で平均0.5cm大 きく,後腰部の大きい者は75.4%で平均1cm大きく,差 のない者は0.5%であった. (図7)
脇縫は,着装効果を左右する重要な線であり,スカー ト原型において,腰囲線上で前幅,後幅を同寸にするか,
二等分より±1cmに設定することが多いとされていたが,
今回の測定結果により,腰部は個人差が大きく,脇線の 位置は体型により異る.従って,同位置に決められない
ということがわかった.
表2 差の検定
差の検定 高径
体幹の角度
幅径
や
1 9 7 0 1 9 9 0
(122)
前胴高〉後胴高
㎝
人
60
40
20
前胴高く後胴高
22.533.544。5㎝
図5 前胴高・後胴高の差
スカート・パンッを製作して行く上において,脇線の 設定には,体型的要素を加味する必要があると考えられ 特に,密着衣になるほど脇線の位置は大切である.
各学校のスカート原型を見ても,前胴高と後胴高を逆 転させたものがあり,前幅・後幅を分けて考えているも
のなどがある.
このことからも,体型を良く把握し,体に合った機能 的な衣服設計ができるパターンづくりを考える必要があ ると感じる.
前胴部〉後胴部
国
前胴部く後胴部
面
図6 前胴部・後胴部の差
人 前腰部〉後腰部
前腰部く後腰部
図7 前腰部・後腰部の差
F
0
B
図8 胴部・腰部断面図
S
4.要 約 結果として
1)差の検定により,体幹の角度において大きな有意 差が認められた.
2)耳珠点と転子点を垂直に通る線が脇線であるとい うことを前提とし,腰部・胴部の横断体型より,前中心 から後中心までの1/2点が脇縫い目線より後に位置して いる場合が多く認められたが,耳珠点と転子点がっねに 垂直ではなく個人差もあることから,今後更に検討する 必要があると考える.
3)後胴高が前胴高より高くなっている場合も多く認
められた.
まとめとして
高径など骨の長さに関係する項目は,正規分布を示す という認識に沿うものであった.
そして,このように体型の変化や個人差が認められる ことからも,現状をふまえたうえで衣服設計をすべきで
(124)
あり,体型を良く把握し,体型に見合う既製サイズがよ り必要であるということがわかった.
おわりに,御協力下さいました田中早苗実験助手,本 学学生の山縣哲子・堀内悦子さんに深く感謝致します.
文 献
1)P.G.ホーエル:初等統計学,培風館(東京),
1987, P.102P.173
2)山田民子・本郷美枝・長塚こずえ・玉田晴美・橋 詰静子:東京家政大学研究紀要,31.P79 3)日本規格協会:既製衣料呼びサイズ,日本規格協
会(東京),1975
4)日本規格協会:日本人の体格調査報告書,日本規 格協会(東京),1984
5)木曾山かね:服装造形のためのデザイン,同文書 院(東京)1974