原 著
〔書鷹繕98第三63撫〕
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の脳波学的研究
第2編 周期性同期性放電(PSD)の睡眠段階との相関
および臨床病期による変化について
東京女子医科大学 小児科学教室(主任:福山幸夫教授)
ス ガマ ミチ コ洲 鎌 倫 子
(受付 昭和63年2月25日)Clinical and Electroencephalographical Study in Subacute
Sclerosing Panencephalitis(SSPE)
Part 2. Correlation between PSD Interval and Sleep Stage and/or Clinical Stage
Michiko SUGAMA
Department of Pediatrics(Director:Prof. YukioドUKUYAMA) Tokyo Women’s Medical College
Periodic synchronous discharge(PSD)on EEG is a characteristic feature of SSPE. The correlation of PSD interval and sleep stage and/or clinical stage was studied in serial EEGs of 4 cases of SSPE. Because typical spindles and humps are lacking in their records,sleep stages were classified based
upon the quantification of slow wave in the background EEG activity. Clinical staging was made
according to the Jabbour’s and Freeman’s classification. Average value of PSD interval was calculated
with random extraction of 20 samples from ordinary records,40−120 samples froln overnight polysomnograms. It was found that the PSD interval 1)varied from cas合to case,2)was shorter in
sleep than in awake records,3)was the longest in REM stage,4)changed with level of sleep stage, and was the shortest in deep sleep stage in cases with preserved normal sleep structure, and 5)became
shorter and more regular with progression in severity. By a method of autocorrelogram, it was demonstrated that PSD interval become regular with clinical progression.
The study revealed the fact that PSD and sleep are closely related and that PSD is activated by sleep and change with sleep stage.
はじめに
周期性同期性放電(periodic synchronous dis−
charges:PSD)は, SSPEを始め, Creutzfeldt−
Jakob病,無酸素脳症,ヘルペス脳炎,代謝性脳
症,Alzheimer病など種々の疾患で観察される
が,いずれも大脳半球の両側性ないし一側性の重
篤な疾患であり,大脳皮質ニューロンが高度に障
害され,且つ皮質下深部灰白質にも障害が存在し
たときにPSDが出現すると考えられている1).
SSPEにおける脳波上の大きな特徴であるPSD
はSSPE complexとも呼ばれ, Markandら2)によ
り次のようにまとめられている.(1)両側性で通
常は同期性左右対称性.(2)波形はどの誘導でも
ほぼ同一である.(3)2個以上のδ波からなり,
2相,3相あるいは多相性である.(4)その振幅
は500μVである.(5)出現間隔は4∼5秒で,か
なり規則正しく繰り返し出現する.(6)臨床的に
ミオクローヌス発作がある時は,PSDと1対1の
関係でみられる.
第1編では,SSPE 4症例における背景波の経
時的変化について述べたが,本編では特徴的な
PSDについてその出現様式の変化をPSDイン
ターバルの変化としてとらえ,睡眠との関係,臨
床期との関係について分析した.
研究対象および方法
第1編で報告した4例,計9回の終夜睡眠脳波
と,各例の通常脳波記録が対象である,PSD間イ
ンターバルの測り方は図1のごとくである.PSD
は症例により,また睡眠段階により同定しにくい
ものもあったが,通常脳波記録では連続20個の
PSD間のインターバル,終夜睡眠脳波では各睡眠
段階につき連続20個のPSD群を2ないし6箇
所,すなわち1記録につき40∼120個のPSD間イ
ンターバルについて,インターバルの平均および
論:照臨
鰍灘
此。・壷園山 蝋α∼鵡ダ姻 rm一π一㎜.㎜㌧㎜郡W.㎜潤・脚㎜一㎜一㎜宝田㎜川π膨繭さ編
噛漉帳!
鱗塾
図1 PSDインターバル
八/ ノ 直ル〉{【
1鳳∼曜
「 ㌧v
い㍉》4∼
へ 臥¢へ」炉∼ん
、▽陶ザ
鼠細鴨
ぜヘー鰍
㌧弼
、ハ料ψ臥♂▽
ゴ囲
L幅!▽西1 各PSDの山と山または谷と谷までの持続時間.標準偏差を算出した.得られたPSD間インター
バル平均値について,1.睡眠段階との相関,2.臨
床期との相関について検討した.
1.睡眠段階との相関
第1編で作成した各症例の終夜脳波の睡眠構築
図と対応させながら,PSD間インターバル平均値
の時間経過を検討した.また各終夜脳波の各睡眠
段階ごとに20個のPSD群を1ないし3箇所えら
び,それらのPSD問インターバルの平均と標準
偏差を求めた.2.臨床期との相関
症例2は覚醒時記録について経時的にPSD間
のインターバルの経過を追った.各記録について
20個のPSD間インターバルの平均,標準偏差を
グラフにした.症例4は覚醒,睡眠各々につき同
様の方法で相関を検討した.またautocorrelo−
gramを用いて,“PSD間インターバルが一定化
していく”ことの客観表示を試みた.Autocorrelo−
gramは,症例2の覚醒時および症例4の睡眠時
の通常の記録から,各々の記録につき20個のPSD
をパルス信号に換え,横軸は基点からの遅延時間
を,縦軸は相関係数を示した,
結 果
1.PSD間インターバルと睡眠段階との相関
4症例の各終夜脳波の各睡眠段階における
PSD間インターバルの平均値(秒)を表1に示し
た.症例によりPSD間のインターバルの絶対値
は異なり,最長は症例1の覚醒時の44秒,最:短は
表1 各睡眠段階におけるPSDインターバル(秒)症例 施行回
AWAKE
NREM1
NREM2
NREM3
NREM4
REM
1
@2
@ 44 @ 25@ 16
@ 14
@ 30
2@3
@ 6,4 @ 6.2 @ 6.6 3@2
@ 5,2 @ 4.8 @ 4.7 @ 4.8 @ 5.0 4@2
@ 9,0 @ 7.6 @ 6.4一590一
参 蚕 塁 60 50 40 30 20 10 RL命 聾・一一1 の 2
3
a ド う 垂卵
圭 40 30 20 10 てコ。 望 費60 量 一50爾、。 マ,。 塁、、) 10 1、L論 述NREM l ロリ
3
A REM NREM−l NREM−2 NREM−3
a b
図2 症例1の睡眠ヒストグラム(下段)とPSDイン
ターバル(上段)a:1回目,b:2回目
図3
ノレ a: 40 30 20 ユ0 bA REM NREM−1 NREM−2 NREM−3
Stage
症例1の各睡眠段階におけるPSDインター・ミ1回目,b:2回目
症例3のNREM 2の4.7秒とかなりの幅がある.
睡眠構築図とPSD間のインターバルの関係を図
2,4,6,8に図示した.また覚醒時と睡眠時
を比較すると,7記録(9記録中2記録は覚醒時
記録が短く,PSD問のインターバルの平均値を算
出できFなかった.)の内4記録において,PSD間イ
ンターバルは覚醒時が睡眠時より長く(図3あ,
5−a,7−a,9−b),他の2記録では覚醒時が
NREMより長かったが, REMでは更に長かった
(図3−a,5−b).残りの1記録では覚醒と睡眠で
ほとんど差がなかった(図7−b).
睡眠各段階との関係(症例1:図3,症例2:
図5,症例3:図7,症例4:図9)についてみ
ると,REMではPSD間インターバルは著明に延
長していた.また変動幅が著しく大きいのが特徴
的であった(図3−a,b,5−b). NREMの中の各
段階問で比較すると,睡眠構築が比較的保たれて
いた3回の記録(図2−a,b,4−b)では, PSD間
のインターバルは浅睡眠の方が深睡眠より長かっ
た(図3−a,b,5−b)が,睡眠構築がくずれてい
る4記録(図4−a,6−a,b,8−a)では, PSD間
インターバルの睡眠段階により相異はより縮小し
ており(図5−a,7−a,b,9−a),さらに睡眠構
築の破綻が著明な他の2記録(図4℃,6−b)で
は睡眠段階間の差が消失していた(図5℃,7
−b).症例4の第2回目記録(図8−b)では睡眠構i
築の破綻が著明であったが,NREM1とNREM2
の間にわずかな差が認められた(図9−b).以上ま
とめを表2に示した.
2.PSD間インターバルと臨床期との相関
症例2(図10−a,b)と症例4(図11)において,
臨床期の進行に伴うPSD間インターバルの変化
を追跡した.覚醒時の変化では,症例2では多少
の変動があるが,1982年11月頃の平均9秒台から
1982年12月から1983年1月にかけて平均7秒台へ
と短縮傾向が見られた.これに対して症例4では,
同様にインターバルの短縮傾向は見られるもの
寸 劇 雲 岩 9 8 7 6 5
A
品NREM−1 男 2 3 a 三 三 号 窒 25 喜 聲 薯 葦 :i才
A
ゆ 恕NREM−1 あ2
3 1982 11/20−21 20 15 10 爵 Φ REM 圏NREM・一1 お 23
4
! b ユ982 !2/27−28 1982 12/2−3図4 症例2の睡眠ヒストグラム(下段)とPSDインターバル(上段)
a:1回目,b:2回目, c:3回目表2 4症例のまとめ
症 例 1 2 3 4 発症年齢 9歳6ヵ月 9歳5ヵ月 11歳3ヵ月 9歳7ヵ月脳波施行回
1i2
1i2i3
1i2
1i2
Jabbour臨床期分類 ereeman臨床期分類
2i2
QA :2B :2i2i3
QA:2B:3A : :2i2
QB 12C
QB 13A 12i3
NREMの識別可能な
@睡眠段階数 ・i・ 1 : 1 Ri4i3 1 1 ・…・ 卜 ・…・ 1REM期の有無
+i+
一i+i一
一…一
刊一
PSDインターバル @ 覚醒〉睡眠 @ 浅睡眠〉深睡眠 i−i+ ¥ 1 十 : 1 1 @1 :+…± : 十 :一 : : 1+…± } : 一 ; l
@ i+
} :± :の,その変化は著明ではなかった.一方睡眠での
変化は,睡眠段階がほぼ一致していると考えられ
る箇所からサンプリングして平均を求めたのであ
るが,経時的に睡眠段階も変化していったので多
少修飾は加わるが,傾向として臨床期の進行につ
れてPSD問インターバルは短縮し,且つ変動幅
が小さく一定化していった.症例4の睡眠記録で
は発症時のPSD問インター・ミルが平均12秒で
あったのが,1年半後には平均3秒と著明な短縮
をみた.変動幅も小さくなっていった(図11).
このようなインターバルの“一定化”の経時的
変化をautocorrelogramを用いて客観表示を試
みたのが図12−A,Bである.症例2(図12−A)の
覚醒時記録であるが,初期には相関係数も低く周
君8
聲 雲7 睾6
5 4編綴
A NREM−l NREM−2 NREM−3
a _25蕊 斎20 き 三ユ5 / \\ / ! \ ! 、 \ を \’
g
一}蜂 一垂軽 b撃 8
}1
星2
ム 尋NREM−1 あ 23
ユO 5 A REM NREM−1筥8
鶏 姦7 塞6
5 4 、一什
’ ア爾、
誕,
皇・
3
ム 覇NREM−1 お あ 3 4・図6
bNREM−2 NREM−3 NREM−4 C NREM一ユNREM−2 NREM−3
stage
図5 症例2の各睡眠段階におけるPSDインターバ
ノレ a:1回目,b:2回目, c:3回目症例3の睡眠ヒストグラム(下段)とPSDイン
ターバル(上段)a:1回目,b:2回目
憲7
並 雲 塁6 5 4 3 2A NREM−1 NREM−2 NREM−3
a
期性を示さないが,後期では相関係数も高くPSD
間インターバルに一致して周期性を示すのがわ
かった.症例4(図12−B)の睡眠時記録について
も同様で,初期にはバラツキの大きかったPSD
が,臨床期が進むに従い一定の周期を持つに至る
のが判明した.考 察
SSPEのPSDの周期性を規定するものは何か,
需7 聲 薯6 葺 5図7
ノレ a: 4 3 2{「
卦一
一 一 一 _ 下 _一 」 }A NREM−1 NREM−2 NREM−3 NREM−4
stage
b
症例3の各睡眠段階におけるPSDインターパ
1回目,b:2回目
書 言 奎 リ ヒズ 蟹NREM一ユ の 2 a でユユ遇 葡13 ヒ
912
‘ 1ユ lo9
8
7
エ頭重
蔭・
碧1
三£
198⊥ 10/14−15 b馴
垂・ 茸 : 、 、 @ 、 @ 、¶1
REM NREM−l NREM−2
噛…油
a 慧 の 響NREM−1 2 1982 11/9−11/10図8 症例4の睡眠ヒストグラム(下段)とPSDイン
ターバル(上段)a:1回目,b:2回目
そのリズムを形成する所はどこか,という問題に
ついては様々な議論がなされている.睡眠リズム
との相関,呼吸,心拍数,体温など自律神経機能
との関係など,種々の生体リズムとの関連におい
て研究がなされてきた.本研究では睡眠および臨
床期とPSDの出現様式とを比較検討することに
よって,そのメカニズムの一端を探った.
1.睡眠との関連について
PSDは睡眠により賦活されるという報告が多
い3)∼’1).Farrellら7)は睡眠中体温が下降し,体温との関連においてPSDが賦活されると述べてい
る.反対に睡眠においてPSDが消失すると報告
したのはPetscheら3>, van Leeuwen12)であり,不
変と報告したのはFenyoら13>, Passouantら6),小
野田らlo)であるが,ほとんどの報告はPSDは睡眠
により賊活される,すなわちPSD間インターバ
ルが短縮すると述べている.Passouantら,小野
田らの報告では症例により異なり,不変の例も賦
活された例もあったという.我々の症例では,覚
醒時のPSD間インターバルが睡眠時のそれより
長かったのは7記録中4記録,不変1記録であり,
図9
ノレ a: b A NREM−1 NREM・一2stage
症例4の各睡眠段階におけるPSDインター・ミ
1回目,b:2回目
他の2記録ではREM,覚醒時, NREMの順に長
かった.REMとNREMの成立に関わる神経機
序は異な:り,したがってREMおよびNREMに
おけるPSDの出現様式も当然相異ると思われ
る.REMの脳波パターンが覚醒のそれに類似し
ていることと,PSDの態度が覚醒時とREM期と
で近似していることと,何か関連があるのかもし
れない.後述するが,PSDと睡眠との関連は観察
が行なわれる病期(臨床期)とも深い関係がある
と考えた.PSD間インターバルと睡眠深度との関係につ
いては,報告が少なく結果も一定しないようであ
る.Petre−Quadensら4)によれぽ, PSD頻度は
一594一
雪ll l王1
葦8
7
6
5
aNov 1982 Dec l982 Jan 1983
諦
要’1遷8
7
6
5
bslow wave stageで増加し, fast wave stageで
減少するという.小野田ら10)によると,NREMは
2∼3相に分類されるが,同一睡眠相にあっても
PSDの頻度は刻々と変化し,睡眠相との関係は明
らかではなく,長い周期をもつ終夜変化であると
している.三宅ら14)は,Freeman 2B期以降では
睡眠による周期の短縮化は認めないが,7症例の
うち2症例のFreeman 2A期におけるNREM
睡眠では,睡眠深度が深まるにつれ,その周期の
最頻値は覚醒時より約2秒短縮し,intermediate
sleep(REMのないsREM)およびREMでは覚
宮 瑠〒 三ユ8勤
含 ‘Nov 1981 Dec 1981 Jan 1982
図10 覚醒時PSDインターバルの経時的変化
a:症例2,b:症例4
Nov.1981 図11 症例4, 化 Dec.1981 Dec,1982睡眠時PSDインターバルの経時的変
5層…
P
一6600 5.DDE−0工 10/28 0 肝 5,DDE−016000
[MS] 5.DI=)E−Ol llね2 5.DDE−0ユ 11/26 o 12/4 ユ2ね7.」㎞血
0 o 5.DDE−01 01’宥24
0 5,DDE−01 5.DDE−O1 11/19 5.DDE−0112ね0 1/ユ4 O 0 図12−A 症例2,PSDインターバルの自己相関図の経時的変化 0 Case 2 Awake5.DDE−01 5,DDE−O110/21 11/26 一ユ2000 5.DDEI−01 0 12000 [MSコ 5.DDE−01 11/12 一12000 O 12000 [MS] 12/4 一12000 5,DDE−01 0 ユ2000 [MS] 11/19 一12000 0 12000 Case 4 Sleep 一12〔〕00 0 12000
[Ms]
図12−B 症例4,PSDインターバルの自己相関図の経時的変化1
醒時の周期と同様であると報告している.REM
期にPSD頻度が覚醒時と同様かそれ以.ヒに減少
することは諸家の報告で一致している.我々の例
でもREM期のPSD間インターバルは延長して
いた.睡眠段階によるPSD頻度の変化が明確に
認められたのは,病初期,すなわちFreeman 2B
期までであったが,一部にはFreeman 2A期以降
不明確となった例もあった.睡眠構築の比較的保
たれている3記録において,深睡眠ほどPSD間
インターバルが短かったことから,PSD間イン
ターバルの睡眠相における変化は,臨床期と同様,
睡眠構築と少なからず関係があると考えられた.
基本的には臨床期が進むほど睡眠構築も破綻して
くるが,早い時期においては睡眠深度とPSD間
インターバルは平行するものと思われた.
2.臨床期との関連について
臨床期が進むとPSD頻度が増加し,末期には
消失するという見解も諸家の一致するところであ
る2)14>∼21).また臨床期の進行とともにPSDの出現様式が規則的になり一定化していくことについて
は,渡辺ら21)が6歳女児例のPSDの平均潜時と標
準偏差について検討しているが,我々も同様の知
見を得た.小野田22)もPSD周期は次第に短くなり
規則的となったが,平均2.5秒以下になることはな
かったと報告している.症例2,4ともFreeman
3期になった頃に前後してPSD間インターバル
が短縮し,変動幅も減少し一定化していった.自
己相関図においても,各々Freeman 3A期になっ
た頃の記録(症例2は12月10日,症例4は11月19
日)から,PSD間インターバルの自己相関度が大
きくなってきており,一定性ということに関して
はFreeman 3A期がその出現の時期とみられた.
PSDの発生機序については,その起源について
定説はないが,主に3つの説が唱えられている.
皮質および中心灰白質両者から由来するとする報
告者は,Rayport23), Gloorら24}, Celesia8), Leeら25),Siskら26),広瀬18)な:どである. Gloorら24>に
よるとPSDは皮質および中心灰白質病変でみら
れ,この両者の正常な関係が障害されて起こると
され,Rayport23)やCelesia8)の切断実験において
も両者の病変の関与が示唆される.皮質下(視床,
間脳網様体,脳幹)説は,Cobb27), Radermecker
ら28>,Fenyoら13), Lombroso29),三宅ら14)が提唱
している.Cobb27)はPSDの発生機序には皮質が
かなり正常であることが条件と考えている.三宅
ら14)は睡眠分析などから橋の機能障害と推定して
いる.本論文において,PSD間インターバルは,
(1)覚醒時より睡眠時で短い(但しNREM).(2)
睡眠段階でREMでは著明に延長,睡眠段階の保
たれている症例では深睡眠で短縮.(3)臨床期が
進むと短縮し,変動幅も減少し一定化していった.
睡眠構築も臨床期の進行とともに破綻し(第1
編),PSD間インターバルも睡眠段階間で差が少
なくなっていった.以上のことが結論として得ら
れたが,PSDが睡眠により三皇されること,睡眠
相で変化すること,睡眠構築の破綻に相前後して
PSDの出現が一定化してくることなどから, PSD
の発生に関与する神経機構と,睡眠の構築やリズ
ムに関与する神経機構の両者の間には密接な連絡
機構があると考えられる.睡眠構築の形成には大
脳皮質の機能が保たれていることが必要である.
皮質機能が荒廃していくと睡眠構築も単調となっ
ていく.しかし全く皮質機能が荒廃したと思われ
る時点でもPSDが認められる例もあり,その事
実からもPSDの発生起源は皮質下であろうと思
われる.末期にPSDが消失するのは発生部位と
推察される脳幹にまで障害が及ぶためと考えられ
る.皮質は発生部位というよりも抑制機構として
の役割をもつものと考える.臨床期が進行しPSD
はその睡眠相で変化するが,さらに末期になり皮
質からの抑制がとれると,PSDは皮質下のリズム
で出現するようになる.皮質の荒廃が高度ならば
睡眠構築も破綻し,睡眠覚醒のリズムも消失し,
睡眠によるPSDの変化という修飾もなくなり,
PSDは一定化していくものと考えた.
同じ臨床期にある症例でもPSDの出現様式が
異な:るのは,障害された部位と病変の程度の差を
反映しているものと思われた.また持続時間の差
などは個体のPSDのペースメーカーのリズムの
差であると考えられた.
結 語
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)4症例の経時的脳
波変化につき,特にその周期性同期性放電(PSD)
に注目し,PSD間インターバルと睡眠段階, PSD
間インター・ミルと臨床期との相関について検討し
た.睡眠段階は指標となる典型的な紡錘波や瘤波
が認められなかったので,第1編で示したように,
背景波の徐波の量によってパターン分類した.臨
床期はFreeman分類とJabbour分類を併記し
た.PSD間インターバルは,通常記録では連続20
個,終夜睡眠記録では各記録につき40∼120個の平
均を算出した.PSD間インターバルは,(1)症例
によりその絶対値は異なった.(2)覚醒時より睡
眠時(NREM)で短かった.(3)REMで著明に
延長していた.(4)睡眠構築が保たれていれば
(Freeman 2B),睡眠相で変化し,深睡眠になるほ
と短縮していた.(5)臨床期の進行と共に(Free−
man 3A以降)短縮し,変動幅も減少し,一定化
していった.一定化していくことは,autocorrelo・
gramを用いて客観的に表示することができた.
PSDが睡眠により賦活されること,睡眠相で変
化すること,睡眠構築の破綻に相前後して,PSD
の出現が一定化することにより,PSDの発生に関
与する神経機構と,睡眠の生理機構の間には密接
な関連があると考えられた.
文 献
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