臨床實験
急性汎襲性腹膜炎の臨躰的経験
東京女子馨學專門學校外科教室(主任三藤教授)松 村 鐵 子
内 容 目 次 ・一D:緒 言 .二。原因易IIに:よる分≡額 三.獲病と性.年齢及び季節との關係 四.Aar症例の韓機 1)輕快或は治癒症例の入院日数 (附)合併症の有無 2) 死亡例㊧臨床的襯察 イ.年 齢 ロ.原悪病竈別による翻察 ハ.虚病よb手術迄の時間的關係 昌.手術術式 ホ,手術に要せし時間 へ.死因及び合併症の有無とその種類に就いて ト.手術よ珍死亡に到りし迄の時間 五・診鎌上注意すべき事項 臨床診圓と手術診噺 六・豫後と關係ある臨床的事項 モL治療に:就いて 八.結 論九主婆文献
緒 言 治療馨學の翼的は機能障碍を遺さ1’る治癒を絡局の目的とするものにして.治療の 根本義は「早期診断一早期治療」を鐵則とするものなり。然るに吾人の日常経験する 虚に依れば.種々なる理由によりて治療の遷延し.爲めに豫後重篤なるに到りて始め て醤治を乞ふ者の筒ぼ甚だ少なからざる状態にあるは遺憾とすべき虚なり。 玄葦に昭和九年四月より同十一年十一月に到る約ニケ年孚の問に當教室に於て維験し ._第 7 雀 139・一46 松村=急性汎護性腹膜炎の臨床的経験 たる各種原因に因る急性汎褒性腹膜炎五十例に就いて種々なる漆黒占より隠れが甘露を 行ひ.特に本曲則の論調せらるべき理由を確認し得だるを以て藪に其の結果を報告し 敢て諸賢の御批判を乞はんとするものなり。 急性汎心性腹膜炎は之れが威打上.常に必ずしも.細菌を要せす.痛心十二指腸潰 瘍穿孔.膵液性或は謄汗性.外傷性等の化學的或は機械的刺戟に依りて惹起せられ得 るものたることは既に周知の事實にして前者を細菌性.後者を非細菌性腹膜炎と名言 し.更に叉崩れが病歌の進行程度如何によりて非限局性或は汎震性及び限局性腹膜炎 の二種に分類し得。然し乍ら一般に急性汎獲性腹膜炎と名付けらるsものは。主とし て細菌性にして自口ち大腸菌.葡萄状及び連鎖欣球菌其他嫌氣性細菌等により惹起せら れ.而も之等混合傳染に因るものを最多数となすは成書にも記さるN所な一り。此の他 肺炎菌。婦女子に於ては淋菌に其の埴生原因を見出すものあり。而して霞幕細菌は血 行性傳染・腹腔臓器及び隣接臓器の化膿竈の穿破による膿の腹腔内侵入及び腹壁の外 傷の際に於て同時に細菌の直接侵入によるものな砂。爾肺炎菌は血行に因るものs他 直接腸管壁を通過して腹腔に出で.或は内生殖器より之れが漸次腹膜に波及し萢に該 腹膜炎をも併忙し得るものとせらる。 叉其の名稻に就きては.大範團性.廣範性.禰蔓性等種々の命名法あるも余等は一 般の習慣に從ひて急性隠岐性腹膜炎と呼ぶ事とせり。
二 全症側の原因別による分類
當教室にて治療したる総撒は現在迄五十例にして亙れには前述せる細菌性.化學的 原因等に基けるもの四十五例及び墨書は慢性疾患なるも.短時日の間に急性悪化の状 を呈し.蔽に汎獲性腹膜炎の症歌を顯はし來りて開腹するに到りし結核性腹膜炎の五 例をも本症例中に加へたり。(第一表) 表に見る如く.原叢疾患としては諸家の報告例にも示さるSと同様.急性轟様突起 穿孔に因るものを最多敷となし二十九例にして五十八%を占め.全例数の約孚数を。 次いで胃十二指腸潰瘍穿孔によるもの四例、八%).「イレウス」穿孔(何れもS字結腸 軸捻鱒)に撫するもの三例(六%).淋菌性三例(六%).肺炎菌性ご例(四%).膵液性 (何れも急性膵臓壌死).三例(六%).謄汁性(壊疽性謄嚢周園炎).一例(二%).最後 に五例(十%)の結核性腹膜炎の急性嚢症と命名せるものを激へ得たり。 此の分類を河石博士(昭和十一年一月.氏の轡表せる名古屋融融に於ける四百八十 九例の汎嚢性腹膜炎)のものと比較するに同じく急性轟様突起穿孔に依るもの最多数 一軸 7 五泊 140一一松村=急性汎磯性腹膜炎の臨床的紐験 47 第一表憂症例の原野別分類 N・
P原因別分劉例
藪 1河石氏罪数
1 2 3 5 6 7 8 急 性最 様突起炎+二指腸潰瘍穿孔
イ レ ウ ス 穿 孔 淋 菌 性 肺 炎 菌 性 膵 液 性 謄 汁 性 結核性腹膜炎の急性獲症 29 4 3 3 2 3 1 5 計 50 男174
1
0
0
1
1
1
女12 0 2 3 2 2 0 4 25 .05 58% 8% 6% 6% 4% 6%1 2%0 10% 1oo% 40g 1 s3.6% 23 3 4 8 4.7% O. 7% O・8.e/e コ.6% 此の外藩原因による もの数+例を加へた り を示し.當教室に於けるもの玉他原獲疾患としてt外傷性.腸「チフス」潰瘍穿孔性. 丹毒に績獲せるもの等を漕げられたり。 三等の報告例は未だ漸く五十例に達せるのみにして.回れを以て統計的槻察を回す は些か失意ならんも其の概況は翻れを窺ぴ得べしと信ず;。三 獲二二性.年齢及び季節との關係
同じく第一表に示す如く急性轟様突起穿孔に因するものは二十九例にして男子十七 名・女子十二名を算し.胃十二指腸潰瘍穿孔(胃潰瘍及び十二指腸潰瘍夫k二例)に よるもの四例何れも男子に.S字歌結腸軸捻轄三例.男子一名.女子二名.淋菌性は 総べて女子の三例に.肺炎菌性のもの叉女子の二例に.膵液性の三例は男子一名.女 子二名に.謄汁性のものは男子に於て.最後に結核性の五例は一例を男子に・四例を 女子に見たり。 次で年齢別に回れを糊察する時は第二表.第一圖に示す如く六歳より六十一議に亘 り之れを五ケ年別に分くる時は二十一歳より二十五歳迄の五ケ年間に磯船せるもの十 二例(二十四%).十六戯より二十歳及び二十六歳より三十歳迄の各五ケ年間は略々同 数にして夫々十一名(二十二%)及び型名(二十%)を算し.之れより若年及び高年に到 りては.俄かに減少の傾向を示せり。之れを通覧するに十六歳より三十歳迄の十五ケ 年間に於て脳病せるもの最多撒を示し.五十例中三十三例を占め・回り十七例は六乃 至十五歳及び三十一乃至四十議間の二十年間に於て之れを見たり。印ち前述せる如き 一曲 7 巻 141一48 松村=急性汎曇性腹膜炎の臨床的紹瞼 第二表 磯病と性。年齢との關係
護
男 女 計 6− 10 1 1 2 部門1 4.IF
lr) ユ6_ 20 2 1 3 6% 魯 7 11 22% 21− 2ろ 26− 30 7 51・ 12 24%A
ミ.1 5 10 20% 31− 351 36− 40 3 3 c) 3 0 3 12%?6% 41N 45 46− 5G ol o.OI 2
o o% 2 4% 51− 55 r)6− 60 o o o o% o o o o%6F
56 0 1 1 2% 計 25 25 50 100% 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 !・八!へ\\
ン〃 h減棟 卸!/ ”s,.N〈 !一 t er” ×一一一一一一X ’x x第1 圖
e一全例薮
㊥一一男子数 X一一一一女子敏 kX. ;.i x’x N s アx 7−10 11πi5 ア6−20 ?/−25 26−30 3ノー3536−40 41−45 46−50 51−5 56−60 6アー65 膏肚年期に多きは.汎脂性腹膜炎の原畿病竈たる急性轟様突起炎.胃十二指腸潰瘍或 は結核等の如き青年期に多き疾病に因する爲めならん。 次に獲病と季節との關係を観るに深き相關的關係は認められざるも.全例を逓じて 六.七.八..九.十月の夏期より秋季にかけての五ケ月聞に梢々例敷の増加を示し. 五十例中三十例を次で.冬季に亘りては例数の甚しき減少を見る。何れも急性轟様突起 炎に因るものを原四病竈とせ砂。次に結核性¢〉ものは少数なるも.十.十一月に見ら れ.同等結核性疾患の夏期より秋季に移行せんとするに際し.病勢俄かに募りて増悪 すると叉何等かの因果關係あらんか。前述せる急性外様突起炎に回するもの多きも, 叉夏期と食物との關係、或は特殊スポーツ等との内的或は外的諸因子に基くものなら んか。四 全症例の韓機に就いて
五十例中三盛或は治癒せるもの三十五働何れも比較的早期に手術の行はれたるも のにして・七十%を占め.淺り十五例は不幸にも死の輻機をとるに至りしものなり。其一第7塔≡…142一
松村=急性汎i震性腹膜炎の臨床的紹瞼 49 死亡率は三十%を算す(第三表)。此の死亡十.五例中手術施行せるもの十二例にして淺 り三例は何れも來院時既に一般状態極度に悪化し到底手術的操作を施す能はざりしも
第三表彰例藪’と死亡率
原因SiJ分類 急性躍し様突起酒 店+二指腸潰瘍 「イレウスー』穿孔 淋 .菌 性 肺 炎 菌 性 膵 液 性 膿 汁 性 結該性腹膜炎の念牲護症
計 例 数 ・9{季灘29 4{ 施 行 不 能 .gi
施 行 不 能 3[ 施 行 不 能 ・{藤野 ・{簗嘉 1( 施 行 不 能 ・{築寵 0 3 1 1 2 3, 0 2 0 3 0 J o s o ・・{築墓41 死亡敷 fi] 8 圭}・ 毒}・ g} olい
8) i 8] 0 8} o 杢死亡率 27.5% 50.0% 100.0% e.e% 50.0% 手 斑1 死亡率 27.5% 25.0% 3,9,.3% o.o% 50.0% ,o,3..O,%i 63.3.% o.o%吻
。.o% O.090t. 河石氏 死亡率 21.8yoii 60.9% 66.7% 75.0% P,7.5% 睡快及び治癒例 廠及び其の率 21 2 o .D, 1 2 1 or 7.0.4% so.e% o.o% leo.o% ,tr)o.o% 66.6 e.iig. } is 1 30.o% 24.o%l! 2zg%” 3to
100.0% 100.Osels. 70.0% の一例(こは術前「レ」線撮影によりてS字状結腸軸捻韓と一々確信されたるものなり) 及び手術すべきや否やの境界域にあり而も街ほ一命を救ひ得ばとの念より辛じて手術 的操作には及びしも.術中脹搏.呼吸の悪化及び「チアノーゼ」の現出等俄然一般朕三 悪化せるため途に下れが中止を已むなくせられたる二例なり。帥ち手術施行の如何に 拘らす死亡十五例の総胡町五十回目甥する其の杢死亡率は三十%なるも.此の内前述 の理由によりて.手術不能となりしもの三例を除きたる手術施行十二例の手術死亡率 は二十四%を算し.河石氏等の報告せられたる結果に略k同撮なり。 既述輕快とあるは退院時手術創に於ける漿液性.血性.或は膿様の分泌物全く無く 只肉芽創面のみを遺せ・るを謂ひ.一般固態は殆んど恢復の域に達せるものなり。又治 癒と記載せるは.全身の恢復輕快と共に.手術竈の第二期癒合の完全に絡了せられた るものN意なり。 (1) 輕快事は治癒せし症例の入院日撒に就いて.(附)合併症の有無 前述三十五例の輕快或は治癒せるものx入院1ヨ数は.最少+四日間ついで長きは七 _第 7 巷 143一一
50 松村』急性汎機性腹膜炎め鵬床的輕瞼 十日間に及べるもの各lt ;例にして.三十二日より三十五日間に亘れるもめ団々多数 を占めたり。 從來急性汎軸性腹膜炎:の術後には.合併症として屡々癒着性「イレウス」.腸麻痺. 三里.腹腔内膿瘍慰留・直腸膀胱障碍.肝膿瘍.横隔膜下膿瘍.肺炎..肺血栓.血栓 性翻脹炎.敗血症等墨げらる凶も.當教室に於ける之等輕快或は治癒せる三十五例に 於ては.幸ぴに之等の合併症を俘ひしもの殆んど無く僅か二例に於て輕度の肺炎重症 歌を併覚し顧れるも.何れも早期に配れを獲証しその増悪を防ぎ得たり。 尚此の三十五例中.解熱に到りし迄の一定の日激画具係は之れを見出し難く.術後 早きは三日目(術後翌日を第一日と激へたの叉退院五十日目に到りても筒三十七度 二。三分の微熱を伴ぴ居たりしものありしが。二十四日目より三十日目に解熱せるも の梢々多敏なる傾向を示せり。藪に解熱とは三十六度九分迄の熟の謂ひにして.一時 解熟せるも省.二.■三日を経て再び三十七度以上の磯熱を見たる時は此の熱の全く三 十七度以下に下りたる日を亘れに當てたり。 回れと磯病より手術に到りし迄の時間的關係とを比較観察するも.特筆すべき事項 は見出すを得ざりき。 (2)死亡例の臨床的麹察 イ.年 齢 十五例中最年少七歳より六十一歳の老齢に及びしもの各々一例.他は何れも十四歳 より五十歳間に亘り.二十代及び三十代のもの九例の多数を占めたり。 EPち年齢別に観るも急性汎獲性腹膜炎の原彊疾患が此の年代に多く.又一度び磯病 せば、此の年代に於けるものは何れも彊肚剛健なる青肚年者にして.各種職業戦線の 第一線に立つもの多きが故に.円卓的にも相當苦痛を畳ゆるに至りて始めて讐治を乞 ふ場合多かるべく.從って病状の進行程度も然らざる者に比し急速且つ重篤を極むる 事事なり。故に之等青肚年者を診察するに趨りては常に外部に現れたる一般歌態に比 し相當に原獲病竈部に於ける病機進行の度甚しき場合あるを念頭に置く宙き事亦重要 博す無きものと思惟す。 而して死亡率は諸報告には此の年代に斯く原獲疾患の多きに拘ら寛蓮比例すと記 されたるに.本臨床例に於ては之等逆比例的關係を見出す能はざりき。 ロ.原因病竈別に依る観察 第三表に示せる如く何れも手術的に差置せる二十九例の急性髄様突起穿孔に因るも のは八例の死亡自口ち二十七・五%の手術及び全死亡率を.次で胃十二指腸潰瘍穿孔に因 一策 7 巷 144一
松村==急性汎畿性腹膜炎の臨床的経験 51 .る四例に於ては.手術施行及び不能の如何に拘らす二例の死亡邸ち五十%の全死亡率 を.不能なりし一例を除く時は二十五%め手術死亡率を算するに到る。以上S聖歌結 腸軸捻縛に因る三例は手術施行の如何に拘らす何れも死の断機をとりしために遺憾乍 ら全死亡率に於て.は百%を示すに到り.爾ほ手術不能なり.し二例を除外する時は.手 爾死亡率は三+三。三%となる。肺炎菌性及び膵液性のものは何れも皆手術的操作の 加へられたるものにして各々一例の死亡を見たり。帥ち夫々の蒲江に甥しては五十% 及び三十三・三%の手術及全死亡率を示せるを知る。反之淋菌性1謄汁性及び結核性腹 膜炎の急性磯症に因するものは・何れも良好の維過を辿るに到れり。 ハ.磯病よ)1手術迄の時間 患者或は家族のロ答による推定時間にしてこは正確なる時聞的關係を記し難く.當 第四表死亡十五例に就ての麹察 例 1 2 3 4
k
l,6 i7 ji 8 iig ilO lii I,, li3 114 115 1 姓名及年齢 鈴○♀25歳 野○♂26〃 金○♂14〃 i森○.♀=2 1〃 奉○舎18〃奥O♂22〃
佐○♂ 7〃 叢○♀30〃 井○♂29ク 伊○♂35〃柿0♀50〃
渡○♂32ク 山○♀61〃 笹○♀49〃 西○・♀35ク 磯目より 原因疾患手術まで の日・時、 急性轟様突起炎
ク 1− 1一 !! 1一 !一 1一 +二指腸 潰瘍 胃潰瘍 S字歌結 腸軸捻轄 1! ク 膵臓壊死 肺炎菌性 12日14塙 3日12〃 10日 16日9〃 14日21ク i6 !一 3日 10日 目 24 1! 48 1一 不明 34 1− 96 1! 28!1 15ク 1手術に 手 術 方 式 要せし 時 問。。.。ガ魂鍬1糊
零雨驚i・ll,・・分
ii ドレーンガーゼ挿入2時OG分 ドレーンガーゼ挿入1時08分難、難,鄭時45分
” i1時50分 1・ 〃 ほ時10分 1 〃 1va45分 [ ドレーンガーゼ挿入i2時25分 手 術 不 能 11 手.@術 中 絶S字画結腸切除
腸 痙 形 成 ドレ’ンガーゼ挿入 贔様突起切除術 ドレーンガーゼ挿入 不明 /7 1− 2時10分 2時00分 1時50分直接死因
褒病後12日を輕 過し重篤な1)し もの 中毒症朕著閉 !f 獲病後16日を輕; 過せるtsの 腸 結 核 肺及喉頭結核 中毒症飛出度 妊娠第八ケ月に 獲病 穿孔後24時聞を 二裡闇 黒子L後48時問を 藩儒 一般駅態重篤な りしもの !1 中毒症歌高度 1! 腸 麻 痺 術後死1 亡迄の1: 日.時「 1 1鱒問1 24クi 3i一 I I 63日 ! …8日1
93日 14時問 49日 2《時冊 レ26a ll 不出 10時間 8日 1 ・・分16日1
i’n 1i 十 1.一第7巻
145一
52 ‘松村=急性汎蛮性腹膜炎の臨床的輕験 :教室にては患者自身.胃壁.心窩部・或は腹部に於て梢々明確に自畳せる疹痛或は之 .れに悪心.嘔吐を俘ひ。比較的急激に酸醸し遮れる時より執刀に至りし迄の時間を以 て算出せり。 先づ急性轟様突趙穿孔に因る死亡は全二十九例中八例にして.内七例は何れも獲病 後術的操作を受くる迄に三日乃至長きは十六日を経たり。一例は比較的早期に手術的 操作は施されたるも他に重篤なる合併症を俘へるものなりき(第四表) 反之輕快事は治癒の好簿機をとれるものは何れも爽病後手術に到る迄.早きは二十 三時間.掻くも二日以内に手術の行はれたるものなり。Nordmannは二口以内に手術 せる場合・十乃至十五%e三日以内十五乃至二十%.之れ以上に及べば.四十%の死 亡率を示すと記せり。 次に胃十二指腸潰瘍穿孔に因為ものは四例中.二例の死亡を.何れも穿破せしと響 応せる時より二+四乃至二+六時聞を経過し・一般欣態既に重篤にして手術的諸操作 の既に不能なりしものなり。反磁他の二治験例は夫々五乃至八時闇以内に膝隠操作の 加へられたるものなり。EPち穿孔雪踏乃至七時間置くも八時間以内に手術的操作の施 され得るものは辛うじて死の韓機を冤るNも.之れ以上に及びては.既に各種操作を カilふるも及ぼす‘。 要之.潰瘍穿孔に因るものは上記時聞内に於ては.穿孔に因り腹腔内に出でたる胃 及び+中指腸内容は.尚細菌の繁殖及び感染作用を顯はさ1“るも.既に八時間を経る に到れば.既に之れが感染を開始して藪に急性化膿性汎磯性腹膜炎を招來し得るもの な1>。されば穿孔を診識し.之れが術的操作に移る場合は實に寸刻をも争ふ轟く.急 性蓮葉突起穿孔に於ける場合と同様實に死命を制する重大要項と数ふ可きなり。 次にS字朕結腸軸捻韓の三月中一例は獲病二千不詳.他の二例は夫々三十四時間及 び九十六時間(四N)を経.既に一般朕態重篤にして.開腹時S字状結腸は捻榑による 榮養障碍のため高度の壊死竃と攣化し.一部穿孔して腸内容の腹腔内漏出に到りしも のなり。 次に肺炎菌性の二例中.一例は磯病後十五時闇以内に手術の行はれたるに拘らす死 の弊機をとり.却って二+こ二時間以内に行はれたるものN.輕快せるを見たり。蓋し 本腹膜炎に於ては.毒性彊烈にして腹膜の吸牧速かなる型と.之れに反するものとの 二型ありて.前者に於ては短時間内に無機悪化し.後者に於ては.治癒傾向多き顯に 齢すべきものと思考ざる。 膵液性の三例中.手術死亡の一例は來院前既に二十八時間を維過せるものなり。次 一第 7 巷 146一
松村二急性汎嚢牲腹膜炎の臨床的経瞼 53 で他の一例は四十八時間以内に開腹せられたるものなるも.病機遙行前者に比し棺々 緩漫なる型にして.膵臓は全腱に浮腫の歌島に置かれしものなり。第三例は爽病後二 十四時聞に行はれ.既に膵臓は全く壊死性に憂化せるも.辛うじて「ガーゼタンポン1 挿入のみにより高徳を絡り.治癒の順路を辿りたり。 =。手 術 方 式 急性面様突起穿孔に因る八例中五例は辛じて轟様垂を切除し.加ふるに腹壁甥ロを 形成して.深くドーグラス語誌.左右腸骨窩及び両様垂切除部への「ドレーンガーゼ」 挿入を施せ夢。他の三例は何れも周園との癒着甚しきか.或は高度の壊死竈と壁化し て容易に之れを切除し得られぎりしものにして前述のものと同様庭置したll。 胃十二指腸潰瘍穿孔による各々一一例印ち胃潰瘍穿孔に評するものは來立時一般歌態 の甚しき悪化のため手術不能なりしもの.十二指腸潰瘍穿孔に因る竜のは開腹には及 びしも脹搏呼吸等相次いで悪化のため軍に「ドレーンガーゼ」挿入に止りたるものな IP o S字朕結腸軸捻醇によるものは前述せる如く一例は來院画既に諸操作不能・一例は 手術牛ばにして慮れを中止せるもの。最後の一例は高度に壊死せる8宇朕結腸部を廣 範に切除し次で腸痩を形成し手術を絡夢たるものなり。 急性膵臓死の一例も辛じて開腹せるも容態の刻々悪化の爲めに軍に「ドレーンガ・・ ゼ」挿入を行ひおきしものなり。 ホ.手術に要せし時間 先づ急性轟檬突起穿孔に因る死亡八例に就いて麹察する時は.最少三十八分.最長 二時間十分を要せ1)。此の内四例は雫均一時聞淺り四例は一時間四十五分乃至二時聞 十分の長きに及べり。 反之既述せる治癒或は輕快せるものにて.爾二時間以上を要せしものあるを見ば. 軍に手術時間の長短のみに死亡率の支配さるS事は晦れを一律には断定し難く.減れ 共長時聞に亘りて操作の績行さる玉時はe短時面内に於て同様に行はるXものよりは 事實腸管の機械的。温三盛刺戟を受くる事も多く.叉細菌博播の程度等も之れが短時 聞内に於けるものに比する時は術後の経過に於て.何等か影響する所あるならんと思 はるN。 次で胃十二指腸潰瘍穿孔.S字歌結腸軸捻韓によるものx肺炎菌性及び膵液性のも のに於ては.比較的短時間内に於て手術の施されたるものに於ても爾死亡例の多数を 見.}定の時間的關係を見出す事能はざりき。 一語 7.巷 147一一一一
54 松村=急性汎磯牲腹膜炎の臨床的鰹験 へ.死因及び合併症の有無とその種類に就いて 腹膜炎死因に澄しては.1)敗血症論2)脱水論.3)紳維反射論.4>蛋白喪失論. 5)中毒論意の諸論あるも。此等の中.中毒読は最有力にして.其の毒素産生に關して は.(a)腹腔内毒素産出説.(b)腸管内毒素産生説.(c)腹腔内及び腸管内毒素産生 読.(d)ガス中毒読.(e)特殊菌毒素説.(f)血管及び呼吸中椹障碍論等學げらる。 而して総べての疾患に於て磯病時既に重篤なる繕言を以て襲來せるものは勿論.嚢 病初期の歌態.比較的輕度にして而も早期に手術の施行せられたるtc.之れが快復期 に於て他疾患の併合し來れる時…は.軍に原畿疾患のみの場合とは大いにその磯現を異 にし.又既存せる疾患の西園.其の後の合併症の種類如何に依り術後の経過及び豫後 判定上に重大なる結果を齎らす事は言を倹たざる所なり。治療に回りても困難煩雑を 極むる事往々にして.本症例に於ても之等合併症が直接死の縛機を誘來・且つ早めた らんと思はるS瓢多々あり。 死亡十五例中.手術不能三例を除きたる手術死亡十二例に就きて考察するに.急性 贔鯨突起炎穿孔に因る八例中.全五例は來院時既に一般状態爾愁眉を開くの域を聾し 難く.共に焚病後照日乃至十日以上をも経たるものにして中毒症歌既に短期激烈にし て凡ての術的療法も及ばざ幸しものなり。他の三例は夫々腸結核の現存に加ふるに術 後輕度の肺炎様症朕を呈し中れるもの・肺及び喉頭結核の重症期に該腹膜炎を併穫せ るもの及び第三例は妊娠第八ケ月に併博し古り。加ふるに獲病後既に十日を経.且つ 叉高度の中毒症歌を呈し來り辛じて彬的操作を加へ得.その後二十五日目に無事分娩 を絡了せるも.同時に勃興せる悪感職藻を以て俄然高儀を襲し懸り.不幸にも死の韓 機をとれるものなり。 次に胃潰瘍穿孔に因る一例.S字源結腸軸捻韓一例及び膵液性の一例は.何れも初 診時重篤にして.辛じて手術を移りたるも.術後の療法の如何とも及ばざりしものな り。 叉肺炎菌性の一例は既に慢性腎臓炎潜在し.術後三日目よりは高度の腸麻痺の歌を 呈し.あらゆる方法を解したるも途に死に至る迄六日闇.瓦斯排出を見ざりし例な り。 ト.手術より死亡に到りし迄の時間 手術の翌日を第一一・日となし溜れより死亡に到りし迄の日時を観察する時は十五例中 七日.八日.九日目に死亡せるもの各々一例.二十四日.四十九EI.五十日及び九十 三日聞の長時日に及べるもの各々一例.他の八例は何れも來院時数十分後.或は手術 __第 7 巻 148一一一r一
松村=急性汎嚢性腹膜炎の臨昧的経験 55 後早きは三十分及び二日後に死の韓機をとれるものなり。
五診断上注意すべ毯專項
臨床診断と手術診断 以上を考察するに術前の適評に由り.何れも早期に診断さるS事の肝要なるは勿論 殊に胃十二指腸潰瘍穿孔に於ては可心的早期診断に重きを置く結く.底幅をも崩れが 細心の維過及び豊後の上に看過すべからざる重:大影響を與ふるものなるを特に留意す べく.又妊娠の経過中に併置せる急性轟様突起炎は殊に其の豫後不良なりと云ふを得 べく.自Pち患者も叉腹痛を軍に陣痛とのみ思ひ込みて讐治を乞ふに到ること既に趣く 術時及び術後も排膿の完全に行はれ難き親等獲れが重篤なる結果を招益する一:大原因 を占むるものなり。 th’ 一一時溢血蠕動の目的を以て行はれたる鎭痛注射により爾重症なる歌態にあり乍ら 之れを看過し終ゆて途に時機を失するに到りし遺憾なる場合を幽く轍叉少なからす。 第五表臨床診断及手術後診断に就いて 藪に経験せる五十例に就き手術後診剛臨床診副
淋菌性腹膜炎 3例中 肺炎菌性腹膜炎膵液性腹膜炎
S字邦犬結腸寧由捻韓 結核性腹膜炎の急 性獲症 2例中 3例中 3例中 5例中 2例…急性轟筆工起炎 1例…婦入科的疾患 1例…腸 閉 塞 1例…急性郭様突起炎 1例…急性轟様突起炎 1例…腸 閉 塞 2例…魚性」勤口突起炎 2例…原因不明の腹膜炎1例…腸閉塞
其の臨床診衡と手術後の診衡 とを比較樹照するに二十九例 の黙止突起穿孔に因るもの は.何れも術前之れが原磯疾 患たる事は確定され居たる も.淋菌性及び肺炎菌性の全 五例膵液性及びS字歌結腸軸 捻韓の各の一例.最後に結核 性腹膜炎急性磯症の全五例は.何れも開腹に依り腹水或は腸管壁に附著せる立様苔歌 物の細菌學藤壷査によりて初めて確診し得たるものなり(第五表)。 之れを詳細に述ぶるに。淋菌に因るものぱ三例にして何れも婦女子を諭し.内二例 は夫々術前.急性轟様突起穿孔に因る汎磯性腹膜炎と.一例は婦人科的炎症性疾患よ り波及されたる汎磯性腹膜炎と診噺され.叉肺炎菌によれる二例は腸閉塞及び急性轟 様突起穿孔の診断の下に開腹され.膵液性の一例も叉急性轟様突起炎と診断され.最 後の結核性の全五例中.こ二例は同様に急性轟様突起:炎と.次で二例は原因不明の汎獲 性腹膜炎として試験的開腹を行ふに到り一例は腸閉塞と診衝されしもの等なり。 斯く診噺的誤謬を招くに到りたる原因を考究するに先づ既往症の迅問に當り之れが 一団 7 巻 149一56 松村=急性汎磯性腹膜炎の臨床的終験 不充分なりし事.患者の自供にのみ重きを置きて早急の間質問すべき問題をも等閑に 附せし事.帥ち患者の直壁の生活朕態例へば結核性のものに就ては爾精密なる既往 症の墨取.現症の検診等.殊に肺炎菌性の一例は其の診隊を下すに當り.可成りの困 難を感じ.術後始めて街前数十日風邪に罹り居たりし事.肋膜炎を激年前に経過せし 事・白帯下のありし事等家人により之れを識り始めて全経過を訟明し得るに至れるも のなりき。 ,爾軽症の診察に際しては.既に記載にもある如く常に汎嚢性腹膜炎の必獲徴候とし て來る腹痛は原酸病竈に近き部に著明ならざる事意外に多く.急性此様突起炎にて尾 部叉は心窩部に相當激烈なる疹痛誌面を最初に訴ふる事屡々なると同様。上腹部疾患 に締ても時に腰部に殆んど該部疾患の存在を思はしむるが如き限局せる激しき疹痛 を.叉左右下腹部.或は腹部等原叢竃より蓬かに隔たりたる部所に。或は其の部に原 稜病兵に於けるよりは張き疹痛を訴ふるものあり。叉上腹部疾患にして.而も下腹部 にのみ膨満著明なるものあり。然し乍ら禽之等を詳細に追求探索するに熟練したらん には.何等か原急病竈護見の上に於て根継あるものを把握し得るに到るならんと確信 さる。 尚疹痛の診ETrtc當りては.穿孔性腹膜炎.淋菌性腹膜炎及び肺炎菌性腹膜炎の疹痛 は.激甚に起りて激痛を惹起するも.産褥性及び心後腹膜炎にありては腹痛稻々臆度 なりと考へらる。殊に穿孔に因るものに於ては.自磯痛乃至墜痛共に甚しく.時聞の 維痩せる場合に於ては.叉之油墨痛の位置に就いては.前述の如く必ずしも原毛病竈 に一i致せざる事:等は吾々も叉楽曲同経験せる所なり。 即ち汎磁性腹膜炎の診噺にあたりては.之が原獲疾患を見出すは誠に至難の場合多 く.而して淋菌に原因を遺するものは総べての腹膜炎中治癒率最も良く本三例に経て 何れも治癒の活機をとれり。反之肺炎菌性のものは豫後妻蜀に不良なりと云ふを得べ く開腹により該腹膜炎なりと確診されたる以上は.何等操作を加へる事無く.直ちに腹 膜を閉ぢ保存的治療に委すべしとせられ.爾論議多き黒占なるも之等球菌性非穿孔性の 腹膜炎に於ては術前の診断は殆んど不可能なるか.寧ろ至難事なりと云ふを得べく.疑 はしき場合には徒らに原磯疾患の曲見に勢するを避け.早期に開腹。適當の廃置の施 さるSを最:良策なりと思惟す。 爾急性獲症を呈せる結核性腹膜炎の全五例は何れも開腹的操作のみによりて豫後良 好の経過をとれり。 一軸 7 4罫 150一一一一
松村=急性汎議性腹膜炎の臨床的紹駒 57 六 豫後訟彌係謬る臨床的:=・葺の專墳翼就いて ユ.磯病より手術に到りし迄の推定時間と豫後との關係(第六表) 之れを観るに早期手術の施されたるもの程.手術的諸操作を施すに當1).容易なる
第譲原因疾翻。よ脳病・踏簿迄。鞘、そ御感且つ麟駄亘れ鵬
の言明 四壁の各種機械的刺戟に因る悪 1鰍急齢灘繊圃跳二醐潰翻灘旧く確も遙旅期度
i!.16時間12118回
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1 2 3 5時問 81f 48(2日) 24(!日) 治癒1 超侠: 死亡I lf,字羅激編「
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淋 菌 性 23 輕快 51( 2日 3日寺…) 〃 78(3日 6時…) 〃 減ぜられ.術後の経過及び事後 決定の上にも好結果を齎らすは 今更蕪に多言を要せす。2.術前の膿温血搏及び
呼吸と豫後との關係 艦温及び呼吸の性状とは大な る相開を認め得ざりしも.脹搏 の数及び性朕との開係は特に注 意すべく。直接には手術施行の 是非に。叉延いては術中及び術 119 20 21 [2.o. 2,0, 24 25 f 26 27 i240こ10日)麟一
50⊂ 2日 2時…) 51(2日 3時…) 5ア( 2日 9時)『 59(2日1塒〕・ 63( 2日15時) 63( 2日15時)72(鋤 死『1
84(3日12時、”1 96(4日目 輕快} 117(4日21時) 死亡 120(5日) 重脛’映 125(5日5時) 〃 死亡 302(12日14時)1 i一 i 1 0. 1 2 3 1 2 3 4 5 1陰炎菌性死一聯:鷺灘農舞
22 輕快l l頻激且つ不正なるものは.多く 1膵 液 性 1は憂慮すべき無機を齎らしむる障1.一儲漁る激欝黙
i24 輕快 a手術に要せし時聞と綴
織性四型。副 後との關係
性磯症 1 概して重症のものは.極れが 52( 2日 4時) 尋璽’決・2(・・)引雛を旧るに際し糊ならざ
111(4日1講)山畑るは既にi激同これを呼べたる如・・日 i・ iく.之れのみにて豫後娘不良
3ケ月 〃 紹 の是非を論ずるは尚不當ならん 謄 汁 性 1も.叉考慮すべき黙も少なから 48(2日) 輕快: [ざるものと思はるS。 一轍 7 巻 151一一58 松村=急性汎獲牲腹膜炎の臨床的輕瞼 4.術直前の白血球激と豫後との關係(第七表) 表に示せる如く調査例の少数且つ不明なるものS多歎あるは遺憾とする所にして。 第七表 原因疾患別による手術直前の白」血球 数と其の韓機 製 ,!
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9 10 i 11 112 i 1.3F4
1 ・irs I ,, i 17 1,, ! 19 [ 20 1,,I I 2, i 2?, 2劉 t 急狸轟様突起炎 (294列中白』血球 数不明4例) 7200 8450 8800 8960 生瀬 1− 1一 死亡 q.soo !! 11200 1一 11240 11400 11920 12670 13000 13080 工5320 156tOO 16300 輕快 ク 1一 !一 泊癒 1一 輕快 !一 死亡 17760 1一 18440 輕t快 19160 死・亡= 199.PO 20840 2t.040 E,2200 25680 25440 輕快 1! 治癒 輕快 治癒 死亡 25 」35880 輕,決= 例 数 1 2 rO, 1 2 1 2 1 2 .eC 1 2 3 4 5 附 ) 胃+二指腸潰瘍 (4例中不明1例) 14300 治癒 16520 1− 18400 死亡 淋 菌 性 (3例中不明1例) 10520 輕」快25000 p
肺炎菌性
15640 死亡 25680 輕・映 膵 液 性 13240 死亡 1692e 治癒 17200 輕快 結核性腹膜炎 の急性嚢症 6720 輕快: 8320 ff 11440 1− 12040 !一 44360 !1 S字撒結腸軸捻 韓 (3{列)及び謄 汁牲(1例)は何 れも白血球敷不 明なりき 從って総括的批判を下す能はす.白血 球数何れも一萬以内にて死亡せるもの 三例あり。自Pち又重症期にありては却 って自血球数の減少を來す事實を物語 れり。七 治療に就て
本臨床五+例中手術的操作を加へし もの四十七例.残iり三例は前蓮せる如 く來二時既に重篤にして.内一例は諸 操作不能・:二例は共に腹壁切開に依り 内記を窺ひしのみにて.切迫せる歌態 悪化の爲め已むなく手術を中止せるも のなり。 先づ術前の虞置としては.心臓機能 衰弱の防止,全身の抵抗素養増張の目 的を以て.回心剤.リンゲル.葡萄糖 或は食三水の翻三内或は皮下注射によ る膿内注入を行へり。 手術時の各種麻醇正の選揮に正して は.各人之れを異にするも.當教室に ては昭和十年四月迄は.迷朦麻酵とし て術前一時間及び三十分の二同に亘り 「パピナールアトロピン」或は「パント ポン」の皮下注射を施し回れに「エピ ネフリン」加「ツトカイン」(0.5%)溶液 局所浸潤麻醇を併用せり。四月以降は 嘔吐無きか或は輕度のものには術前三 十分に「アロナール」錠の二乃至三個を一般迷引回痛促進の目的を以て経口的に與へ. 之れに「ヌペルカ■ン」加盤酸「トロバコカイン」溶液に依る高位腰椎麻醇を施し.且つ 一躍 7 巻 152一松村=急性汎磯性腹膜炎の臨床的紹験 59 前述と同齢の液を以てせ’る腹壁切開部に於ける局所浸潤麻酔を併用せり。既述せる 「アロナt一・ル」錠は嘔:氣或は嘔:吐ある者に乱れを使用するも.よく服用し得て催眠並び に鎭痛作用をも現はすもの」如し。 而して上腹部疾患のものにても同様前述の混和溶液を以てせる高位腰椎廓醇.帥ち 普通には第三乃至第四腰椎膿聞内にて行ふも.こは第二乃至第三.時に第一乃至第二 腰椎鰹闇内に於て行ひも何等忌むべき副作用を招來せる例を見ぎりき。藥液注入後は 直ちに頭部を絵革乃至五度に傾下せしむるを常とし.術中嘔氣或は嘔吐を催し流れる ものは.再び頭部を水運位に復するか叉梢々高位に置き換へたり。既述の「ヌペルカ ィン」’1..O−1.3c.c.の混和は作用時間比較的長く.二時闇以上を要する操作の場合にも. 何等他の追加併用麻醇を要せ’ざるのみなるか.倫ほ要せるも極く少量にて足れり。全 身麻即吟としての「エPtテル」は多くの場合補助麻醇として選びたり。之等制御使用後 の頭重・頭痛.悪心及び嘔吐等の嫌むべき副作用は殆んど認め得難く.叉稜來するも 極めて輕度なるを常とせり。 術式としては.上腹部のものは夫々正中切開を.急性贔様愛重炎診断の下に爲され たるものは何れも先づ右下腹部に約五乃至八糎の裂切開を加へ次で左側同部に封ロを 形成せり。此の際腹腔の汚染を可及的少なからしめんが集め.先づ左側斜切開に於て 腹膜を開き.此の部を窺ひて異常を認めす特に操作を加ふる必要なき場合には未だ膿 等にて汚染せられざる手にて直ちに該部の第一期癒合を行ひ.序で右側に斜切開を施 す法を推賞せる人あるも.當教室にては原畿病竈の磯見に容易且つ爾後の操作方針 を速かに選揮決定するに便あらしめん爲めに常に先づ右側斜切開.次で左側斜切開の 順をとるを專らとせり。腹壁切開創に於ける腹腔内膿様物に因る汚染は,之れを開腹 と同時tc.腹膜と皮膚とを.此の間に介在せる組織帥ち皮下脂肪或は筋肉等の塞源な る包園を目的として前述の二値を腹膜鋸子或は「ペアン」鉗子にて充分にはさみ置け り。斯くする時は.術後切創に於ける膿瘍形成等の不愉快なる煩事より冤かるs事多 し。 開腹後は吸引器にて貯溜せる腹水を充分に吸引排除し以て隣れに次ぐ各種操作を容 易ならしめ.而して一般法則に從ぴ手術的に除去し得るものは総べて之れを除去し. 周園との祖母甚しく之れが剥離困難或は不能の場合には.軍に「ヨードホルムガーゼ」 の」タンポン挿入法を以て排膿を計りたり。 叉開腹時.從來殺菌或は解毒作用時効果ありと稻へらるN人工太陽燈照射を行ひて 良結果を得.叉「ラバロボスランプ」使用時に於ける繊維素の増減に就いての効巣を述 一第 7 岱 コ53・一
69 松村==急性汎護性腹膜炎の臨床的経瞼 べ.何れも奏効する事多々なるを。其の他食鞭水.「リバノール」等の諸種薬液に依る腹 腔の直接洗際.或は之等母液の注入.叉は汚染手術野に駒する防腐.防毒の作用あり と主張さるN抗腹膜炎血清を腹腔内に注入し置くを推賞せる記載例数多きも.當藪:室 にては之等諸方法の何れをも用ぴざりき。 術時注意すべきは.特に嬬女子に在りては開腹時必す深く小骨盤腔内をも検探し聯 かにても疑はしき場合には.後磯疾患の合併或は招來を顧慮して該部への完全なるガ ・・ゼ」挿入をも行ひ置く研きものとす。 術中は常に賑搏.呼吸等に注意すべきは云ふ迄もなく蔽には略記す。 術後は一般に行はる玉如く.先づ彊心.水分補給.品切維持.解毒等諸目的の下に 毎日「リンゲル」.食盛水或は葡萄糖溶液の静脈内或は皮下輸入を行ひ.爾一日一同. 二百乃至三百。.c.の輸血を。或は五十乃至百e.c.の少量を一臼二乃至三同に亘りて施行し 著効を奏したる類例あり。共の外部屋の海芋.漁労.特に獺後の肺炎合併を憂ぴて. 少数にても咳轍の徴候を現はし來りたるものには直ちにプlj e一スニッツ氏胸部上布. 自家短既三十乃至五十C.e.の筋肉内注射を施し.之れが増悪を防ぎ得たるご例を経験せり。 叉「ベット」の傾斜に就きても微細なる事項ならんも膿汁の上昇を避くるため上三身 を外々高位に保つ事に務めたり。 斯くして術後早きは第一一 ruiの夕刻より.遅くも第二日目には未だ腹部薄葬及緊張 感・並びに腹鳴の爾高度とならざるに早き立ちて瓦斯の早期排出を促したり。「リス リン」.石鹸浅腸等施行し爾之れに加ふるに.「べ・リスタルチン」.「プロスチグミン」ぺ 「ロツシユ」.「ピツイトリン」及び「クロナ1・ ・一ル」等の腸蠕動充進剤の皮下或は齢脹内 注入或は10−20%高張食導水約八百乃至千。.c.に依る直腸内注入.更にゴム管挿入を併 用し以て隔れが目的に充てたり。特に濃厚食管水の腸管内注入は其の効観るべきもの あるやに思はる。 其の他嘔氣或は胃部.心窩部に於て膨満等の獲來し來れるものは早期に婁胴の胃洗 溝を施せり。 局所注置として.先づ腹膜の冷却刺戟による翻脹血行障碍に基く吸図無延を利用せ bと云はる玉津漁布を常用し.尚之れに薄荷油の数滴を滴下して腸蠕動蓮動の再振を 計れり。挿入せる「ドレ’ンJは術後三乃至四日目頃より漸次に上方のものより之れを 移動し始め.その生ぜる各間隙には新たに「ヨt一一ドホルムガーゼ」の挿入を加へ.六乃 至七日口に至りて全交換を行ひたり。多くは全「ガーゼ」交換の前日.三十八度前後の 腿温上昇を見たるも.以後次第に下降の傾向をとれり。術後の痙痛に回して臨多種
一蹴7巻:154一
松村==急性汎畿性腹膜炎の臨床的鰹瞼 61 鎭痛剤を使用する事常に同じく.瓦斯排出の困難を増強するど唱へらるSも.睡眠.安 静の状態は心力の保護上面に重要なるを以て敢て禁ぜす。 淋菌性及び肺炎菌性腹膜炎に劃しては.當教室にては.淋菌「ワクチン」.「ゴノブn カノン」.「クn ・一ルカルチウムJ。「モクソール」等の静門内注入を行ひ.肺炎菌型を 詳かにし得ざりし爲め.特殊菌型「ワクチンJを使用せし経駿を有せす.一般療法に從 へり。 珍くして腹壁に懸口を形成せるに到りし重症なるものに撃ても回れが輕快に赴く場 合{こは.飼れも術後約十日乃至十匹旧に到れば.一般歌態も頓に良好となるを常とせ りσ・ 結
論
當教室にて最近ニケ年牛の閤に於て治療したる五十例の急性汎獲性腹膜炎に就いて 計れを臨床的に総括的観察を爲せし結果.急性汎獲性腹膜炎と診噺の確定されたる以 上.たとへ原話疾患の穫見鑑別には困難なる論議ありとも.早期に開腹.適當の雲量 の施されたるものに於ては。何れも良好の結果を得るに到れる事實を確認し叉落後 な之れが経過中。潜在或は現存せる他疾患の岩出。増悪及び併蛮症の襲來如何等を考 慮し.而も之等他疾患のその豫後に重大なる影響を齎らす可きなるを明らかtc指示さ れたるを痛感し.以て之等を治療の方針と寒し。今後照隠を重ねんと努力せるものな り。 欄筆に臨み御指導と御校閲を賜はりたる教授三藤博士に深謝し.併せて醤局員諸氏 の御助力に蜀し深甚の謝意を表す。 (本文要旨は第三同東京女署學會総會席上に於て護表せり) 主 要 交 蹴 1)藤森舜吉,大阪馨事新誌.4唇,4號,(昭和8年) 2)石田俊孝,内外治療,6年4號, (昭和6年) 3)泉伍郎,日本鐵遣讐協會雑誌,18巻,正0號(昭和7年) 4)井Plよし子, 岡山監學會雑誌,46年2號(昭和9年) 5)井口興志子,岡山馨學會難誌,48年2號(昭和11rp) 6)石山弼二郎,東西馨學,2巷11號(昭和10年) 7)石山三二郎,臨講,71號(昭和11年) 8)岩本正樹,東京讐事雑誌,2608號(昭不照年) 9)摺本正樹,東北醤學難山18巻補冊 (昭和10年) 10)岩本正樹,内外治療,11年3號(昭和1エ年) tl)岩永仁雄,關西警事, 169號(昭和11年) 12)岩永仁雄,大阪馨事新誌,7巷農號(昭和11年) ユ3)岩永仁雄,臨 床月報,107號(昭和11年) 14)汲田之丞,鹿晃島縣轡學會難誌,18號(大正3年) 15) 河合五郎,東京馨事新誌,2503號(昭和2年頃 16)片山久壽頼,過日回報,140號 17) 示申/11一絡, 日本夕下科學會楽逓1誌, 30同臨時號(昭和4年) 18) 河合直次,診噺と治療,21雀9號 一蹴 7 巷 155一62 松村=急性汎獲性腹膜炎の臨床的経験 (昭和♀年). 19)小池百藏,日本外科學會雑誌臨時號(昭和9年) 20)古森善五郎,實 地讐家と臨床,11巻,9號,11號42號(昭和9年) 21)河石九二夫,大阪腰事新誌,5巻,10 號,11號,12號(昭和10年) 22)河石九二夫,大阪露事新誌,6巷,2號,3號,9號(昭和10年) 23)河石九二央,欝.岡縣醤學會會報,87號(昭和11年) 24)河石九二夫,グレンツゲビーtS 9年,1號,2號,3號(昭和10年) 25)木村嚴,北陸轡學會會報,344(昭和9年) 26)木村 巌=日本外科學會難誌,臨時號(昭和10年) 27)小橋新i…k,臨床研究,.7倦2號(昭和10年) 28)溝口喜六,實瞼馨報,4年,48號 29)溝口喜六,第十三回九殉醤學會會誌,(大正7年) 30)峯閥保,海軍軍馨會難誌,18巻21號(昭和4年) 31)茂木藏之助,診騨と治療,臨時;暦 刊四輯(昭和5年) .32)茂木藏之助,診断と治療,117雀,エ號,2號(昭溜5年) ’83)茂木藏 之助,茂木外科各論,中巻36阪(昭和7年) 3()宮城順,實地讐家と臨床,11審,3號(昭和9 年). R5)町田謙三,臨床の皮膚泌尿と其境域,1&1號(昭和11年) 36)中村徳吉,診 隊と治療,16巻,7號(昭和4年) 37)永野信英,グレンツゲビート}8年,4號(昭和9年) 38)大園尾入,グレンツゲピHト,3年,5號(昭和4年) 39)岡島亮三,日本外科學愈難誌, 37回,3號(昭和11年目 40)大槻菊男,醤界展望,1同特輯號(昭和10年) 41)大杉眞造, 岡山蟹學會雑誌44年,7號(昭和7年) 42)大杉眞造,日本外科學會雑誌臨時號(昭和10 年)43⊃大杉雌・響町騨誌・47年・聯(噛・0年 44)4・1il春,簡嚇科各論 下巻,4版(昭和11年) 45)町田廣重ユ日本外科學會難誌,第14同1擁 46)畑田廣重,日 新醤學,2年10號 47)齋田主意,牛馬輯覧,10號(大正15年) 48)關口春樹1診断と治 療,15巻,1號(昭和3年) 49)金筆削五郎,千葉警學會難誌,6巷,1號(昭和3年) 50)佐 田正物,日本外科學會雑誌,31同12號(昭和6年). 51)進藤宙二,治療學難誌,6巷,3號(昭 和11年) 52)杉寛一郎,愛知轡學會四脚,29巻,1號(昭和11年) 53)土屋直茂,日本外 科隅田三拝29同,8號(昭和3年) 59)高木堅剛,成書界臨床,1巻,1號(昭和4年り ’55) 高木喜寛,臨講,9號(昭和5年) .56)高木喜寛。日本外科學會難誌,20同,3號(昭和8年) 57) 得倉旨倫三, 1司山讐學會蓼届出, 41年, 2號(.昭孝04年) 58) 津田早月ζ, 診臨と量台療, 19巻, 2號(昭和7年) 59)高島令三,醤學輯覧,107號〔昭和9年) 60)徳毛卓三,岡山醤學會難 山,46年,2號(昭和9年) 61)高島令三,警世輯覧1117號(昭和10年) 62)玉田太郎, 臨床外科,2巷,6號(昭和11年) 63)湧井孝敏,北越国乱會難誌,51年,11號(昭和11年) 64)柳肚一,内外治療,2年,2號(昭和2年) 65)矢田貝薫,京郡府立{i警科大學難誌6巻, 6號(昭和7年) 66)吉田智一,岡山馨學會難場,43年,2號(昭和6年) 67)横田浩吉,軍 醤團雑誌,25!號こ昭和9年) 68)川名正壽,穴阪早事新誌,&巻,1號(昭和12年) 一曲 7. 巻 156一