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責任施工の法的解析--民事法の観点から

著者

大森 文彦

著者別名

Fumihiko Omori

雑誌名

東洋法学

34

1

ページ

13-26

発行年

1990-12

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00003532/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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責任施工の法的解析

民事法の観点から!

七六五四三二一

目 次 はじめに 工事請負形態概説 責任施工の意義 責任施工の法的内容 責任施工の私法的効力と建築士法・建築基準法との関係 貴任施工の法的責任の所在 おわりに 東 洋 法 学 コニ

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責任施工の法的解析 一四 はじめに  今日における高度な科学化、専門技術化には驚かされることすでに久しいが、こうした専門・技術化された領域に おいては、法の解釈も徐々に変化を遂げつつあるように思える。しかしながらこれまでを概観するに、実際の紛争解 決において多くが﹁鑑定﹂という形を通じて法解釈に反映されていたように思われる。この鑑定は法律的にはいわば 素人ともいうべき人によってなされ、かつ鑑定をもとにした法解釈は今度は逆に科学的にはいわば素人ともいうべき 法律家によってなされることになる。それゆえ問題解決の結論の当否はさておくとしても、結論までの過程にははな はだあいまいさが残る︵これは民事・刑事を問わずあてはまる︶こともやむを得ないが、こうした現状をそのまま肯 定することには抵抗を感じる。自然科学ないし技術をベースとして成り立つ領域においては、当該領域を成り立たせ るところの自然科学ないし技術を基礎とした法解釈がなされることは好ましいことであっても決して不当ではあるま い。こうしたギャップを埋めるためには、法律家と科学者ないし技術者が一体となってより妥当な社会的規律を模索 する必要があるが、どちらかといえば科学者ないし技術者の法律学へのより一層のアプローチの必要性を痛感する。 ここに大学の自然科学系学部における法学教育の重要性をみてとることができるが、中にはすでにそうした方向性を いち早く察知し動き始めている大学もある。  筆者はこれまで、建築学と法律学の融合という観点から、建築設計者ないし工事監理者の立場を中心に微力ながら 議論を展開してきた。またこうした議論は、法解釈がそれぞれの社会の活動領域、平たくいえば各業界の専門領域と

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       パユ  しての特殊性を考慮した上での展開を見せることが望ましいと考える筆者の考え方にも沿うものである。  こうした流れの一貫として、今回は建築行為のプロセス︵設計・工事監理・施工︶のうち、設計・工事監理と施工 の間に存在するともいいうる﹁責任施工﹂の問題を取り上げたい。責任施工は、建築工事においてままなされている ものの、その法律的解析は全くなされていない。  もっとも土地基本法の立法などに象徴されるように、土地問題を中心とし、建物さらには都市そのものの在り方ま で巻き込んだダイナミックな形での住環境問題が強く意識されている今日、本稿のような論文を発表することにどれ ほどの意義があるか諸先輩の批判にゆだねるとしても、少なくとも筆者は広い意味において同じ住環境向上の一環と して、マクロな観点からだけでなく、ミクロな観点からの議論を積み重ねていくというアプローチもあって良いと考 えている。 ︵1︶ 社会の各活動領域が今日のように専門・複雑か2局度になってくると、それぞれの活動領域の特質にあった法的規制がな   されなければならない。したがって、これまでのような例えば憲法・民法・刑法といったいわゆる縦割りの研究だけではな   く、各活動領域ごとに当該領域に関する一切の法律問題につきその特殊性を踏まえたいわば法律の横断的研究が重要になろ   う。このように法律の研究対象が各活動領域単位に広がっていくことを筆者は﹁法律の分散化現象﹂と呼んでいる。︵拙稿   ﹁建築基準法とその法的環境﹂建築雑誌く○一﹂Oρ累○、三芙一九八八年δ月号[三頁︶ 東 洋 法 学 ㎝五

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責任施工の法的解析 一六 二 工事請負形態概説  責任施工について論じるためには、 よそ次のとおりである。 まず工事請負の実態ないし形態を把握する必要があるので概略説明するとおお

①設計契約⋮

 ②工事監理契約 ﹁設計監理契約﹂として締結されることも多い。 ③︵元︶請負契約⋮⋮建築主から元請業者に工事全般にわたって       ハ ズくマ ど別個に発注されることもある。         文工事監理︶       ハヱレ 建築主から設計者に委託される。 ⋮⋮建築主から工事監理者に委託される。なお実際上は、設計契約と工事監理契約が一体化され        ︵2︶ 一括して発注されることが多いが、 設備工事な ② ③ 工事監理者   ︵工事監理︶ 元講業者 ︵工事請負業者︶ ④ ④ 一次下請業者 一次下請業者 ⑤ ⑤ ⑤ 二次下請業者︵孫請業者︶ 二次下請業者︵孫請業者︶ 二次下請業者︵孫講業者︶ 二次下請業者︵孫講業者︶

        建築主①設計者

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      ハゑ  ④︵下︶請負契約⋮⋮おおむね各工事工程別に元請業者から下請業者に発注される。たとえば、根切・山止めエ ハゑ       ハヱ 事、地盤工事、鉄骨工事、鉄筋工事、型枠工事、コンクリート工事、防水工事、石工事、組積工事、カーテンウォ⋮   ハタレ       ハむレ       ぬレ ル工事、金属工事、建具工事、ガラス工事、木工事、タイル工事、左官工事、塗装工事、空調・衛生工事、電気工事 などそれぞれ専門にする下請業者に元請業者が発注する。元請業者自体は直接工事を行わず、下請業者に発注し、自 らは下請業者の工事が適切になされるよう管理︵導きお①導Φ無︶することが多い。  ここで工事監理者が行う﹁工事監理﹂︵8霧菖9象。 Q名霞≦ω一8︶と元請業者の行う﹁工事管理﹂︵8霧件露&舅 導弩認①幕簿︶はその内容において異なる点に注意を要する。工事監理はその者の責任において工事を設計図書と照 合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認し、工事が設計図書のとおりに実施されていない と認めるときには直ちに施工者に注意を与え、施工者がこれに従わないときはその旨を建築主に報告し、また工事が 完了したときはその結果を文書で建築主に報告する他、工事契約に関する事務および工事の指導監督などを行うこと   ハユ をいう。これに対し工事管理は、工事が設計図・仕様書に基づいて完成されるよう、工事の進捗状況、仕上がり程度       パのレ など技術・労務・資材の運用、工程・予算・安全管理の面から監督指導することをいう。すなわち、工事全体を見渡 した上で総合的な工事計画を立案し、その工事計画に従って適切な下請業者に工事を発注、実際に工事を行わせる際 当該工事が適切になされるよう管理するとともに、各下請工事がスムーズにいくよう計画し、実際に手配・段取りす ることをいう。各下請工事が工事現場において安全かつ合理的に実施されるためには、元請業者による管理が絶対に 必要であるとともに、元請業者にとってもこうした管理をいかにするかがその業者の力量を問われる場面となる。ま     東 洋 法 学      一七

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    責任施工の法的解析      一八 た工事管理は、下請業者の行う工事が設計どおりか否かチェックすることをも含んでいる。したがって優秀な元請業 者がいれば工事監理者は楽して良い結果が得られるが、低レベルの元請業者と一緒に仕事をすればどんなに頑張って       お  も成果をあげることができないことがある。それゆえ、工事管理の徹底しているる現場ほど良質の建物が出来上がる。  ⑤ ︵孫︶請負契約⋮⋮一次下請業者から二次下請業者︵孫請業者︶に発注される。さらに三次、四次と請負が重 層化することがあり、建設業の一つの問題点ともなっている。

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︵5︶ ︵6︶  内容、問題点については拙稿﹁建築設計の法律空間﹂東洋法学第三一巻第丁二合併号を参照。  内容、問題点については拙稿﹁工事監理業務内容の法的解析﹂東洋法学第三一一巻第二号、﹁工事監理者責任の法的解析﹂ 岡第三三巻第二号をそれぞれ参照。  建設業法では、﹁元請人しとは下請契約における注文者で建設業者であるものをいう︵同法第二条第五号︶とされる。  建設業法上、特定建設業と一般建設業の区別があり、それぞれなしうる工事が決まっている︵同法第三条第四項︶が、お おまかにみて元請業者の多くが特定建設業、下請業者の多くが一般建設業ともいえる。  建設業法では、﹁下請契約﹂とは建設工事を他の者から請け負った建設業を営む者と他の建設業を営む者との間で当該建 設工事の全部または一部について締結される請負契約をいう︵同法第二条第四号︶とされるが、本稿では必ずしも右用法に はとらわれない。  根切り︵巽8<器8︶とは、建造物の基礎または地下室部分を築造するために、地盤面以下の土を掘削して所要の空閲 を造ることをいう︵彰国社・建築大辞典一一七二頁︶。また山止め︵鴇霊黛詣︶とは、地盤を掘削する際、周囲地盤の崩 壌を防ぐため、矢板などを用いて土圧を受ける壁を設けその壁を腹起しおよび切張りなどの支持材で受けた支持架構をいう ︵同一五四五頁︶。

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︵7︶ ︵8︶

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 組積︵導器○巽望げ○鼠︶とは、石材、煉瓦・コンクリ⋮トブロックなどをモルタルで積み重ねることをいう︵同八六五 頁︶。  カーテンウォ⋮ル︵oξ鼠貯≦毘︶とは、近代建築において、構造体としての骨組みの前面に空間区画のために設けられ る薄い壁で、従って煉瓦造や石造の壁面のように荷重支持の機能を持たないものをいう︵同二六八頁︶。  建具とは、可動の戸と建具枠で構成され、建築の開口部を開閉するものの総称をいう︵岡九一七頁︶。  左官工事︵覧霧聾訂αQ︶とは、日本壁塗やモルタル塗、プラスター塗、人造石塗など左官工がする工事をいう︵同五六八 頁︶。  詳しくは、前出﹁工事監理業務内容の法的解析﹂二七〇頁以下参照。  彰国社・建築大辞典四八○頁。  前出﹁工事監理業務内容の法的解析﹂二七四頁参照。 三 責任施工の意義        ハと  責任施工とは、工事請負者が全責任をもって施工することをいい、発注者側の設計仕様を略したり、監督、監理な       ヱ どを特に加えないこともある。かように通常、責任施工と呼ばれているものの中には、発注者側︵発注者と設計者・ 工事監理者を一グループと考える︶で設計仕様を省略して施工者に一切の工事を任せるものと、設計仕様はあるもの       ハき の設計者が工事監理を行わず、仕様どおりの工事を施工者に任せるものがある。  責任施工は、建築工事のうち特に高度な専門技術やノウハウを要する部分について、設計者より当該工事の専門業     東 洋法 学      一九

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     責任施工の法的解析       二〇 者の能力に委ねた方がより適切な施工が期待される場合に、その専門業者に工事を一切任せるかわりに、万一何らか の工事毅疵が生じた場合には全責任を負ってもらうというものであり、防水工事などに多くみられる。 ︵1︶

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 設計仕様を省略して施工者に一切を任せるといっても、全ての工事について仕様を省略することは許されない。なぜなら  技報堂・建築用語辞典七二九頁。 るものをいう︵彰国社・建築大辞典七一二頁︶。 数値などで表現するもので、品質・成分・性能・精度、製造や施工の方法、部晶や材料のメーカ⋮、施工業者などを指定す  仕様とは仕様書︵呂8聾o鍵8︶の略で、工事に対する設計者の指示のうち、図面では表すことができない点を文章・ ば、それでは設計者は実質的に設計を全部放棄していると考えられると同時に、かつ建築工事のうち特に高度な専門技術や ノウハウを要する部分について専門業者の能力にゆだねた方がより適切な施工が期待できると思われるためになされるとい う責任施工の趣猛自体に反するからである︵工事全般にわたって設計者より施工者の方が能力があるとは考えられないし、 仮にそうであっても自らの職責を放棄することは許されない︶。また工事監理を全ての工事に対して行わず施工者に一切を 任せるということも許されない。なぜならば、それでは設計者は実質的に工事監理を放棄していると考えられると同時に、 責任施工の趣旨に反するからである。 四 責任施工の法的内容 貴任施工は、実際は設計者の指示に従ってなされるものであり、あたかも設計者中心の合意がなされているかの如

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き観を呈し、建築主、設計者ないし工事監理者、施工者全てを含んだ合意︵契約︶ともみうる。しかし分析すれば、 設計仕様を省略するケースにおいては、建築主と設計者との間では設計契約に関連して設計の一部を実質的に放棄す る内容の合意︵契約︶であり、建築主と元請業者あるいは建築主と下請業者︵孫請業者︶との間では請負契約に関連 して設計の一部を実質的に施工者に行わせ、かつ当該工事の結果に対し施工者に全面的責任を負わせる内容の合意 ︵契約︶といえる。また工事監理を省略するケースにおいては、建築主と設計者ないし工事監理者との間における ︵設計︶工事監理契約に関連して工事監理業務の一部ないし全面的放棄を内容とする合意︵契約︶であり、建築主と       き 元請業者など施工者との間では当該工事の結果に対し全責任をもつ︵保証する︶という内容の合意︵契約﹀と言える。  かように責任施工は、建築主と設計者ないし工事監理者、建築主と施工者︵元請業者、下請業者、孫請業者など︶ との間の特別な合意︵契約︶によって生じるものの、それぞれの内容において大幅に異なっているため、関係者全員 を巻き込んだ合意︵契約︶とみるべきではなかろう。すなわち責任施工は、建築主と設計者ないし工事監理者との間 では、設計者ないし工事監理者の業務および責任の放棄の合意であり、建築主と施工者との間では、実質的に設計業 務まで行わせる点では設計委託契約に準ずるものであり、工事監理を省略する点ではまさしく本来の請負契約そのも     ヵヤ のである。

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責任施工は、通常建築主が施工者から保証書という形で工事の結果につき保証を取り付けることが多い。 工事監理を省略するケースにおける建築主と施工者の関係は、本文でも述べたようにまさしく請負契約そのものである。

東洋法学       二一

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 責任施工の法的解析      二二 すなわち、請負工事は仕事の完成を約するものであって、完成までのプロセスについては施工者の裁量に委ねられている。 にもかかわらず工事監理者という一定の資格を有する者による監理が強制される︵建築基準法第五条の二︶のは、建築行為 は単に建築主だけの問題にとどまらず、広く当該建築物に関係する国民の利益にまで影響をおよぼす、つまり公共性という 側面を有しているからに他ならない︵前出﹁工事監理業務内容の法的解析﹂一六七・一六八頁参照︶。 五 責任施工の私法的効力と建築士法・建築基準法との関係  建築士法第三条ないし第三条の三では一定規模以上の建物を設計、工事監理する場合には、建築士でなければなら ない旨定めている。またこれを建築主に義務付けたものが建築基準法第五条の二である。責任施工の場合、個別的工 事につき建築士が設計ないし工事監理を全面的に放棄することになるが、右建築士法や建築基準法に違反しないか、 ひいては責任施工の私法的効力が問題となる。  建物の設計、工事監理を行う者が建築士でなければならないとされるのは、設計業務の適正を図り︵建築士法第一 条﹀、国民の安全を確保する︵建築基準法第一条︶ためである。しかし、建築士の関与が全くない状態で当該工事の 毅疵から何らかの事故が発生した場合でも建築士の責任を何ら問えないとしたら建築士法、建築基準法の趣旨は全う されない。まただからといって責任施工の合意そのものが両法に違反するとすることも妥当ではない。なぜならば、       ヘヱス   そもそも責任施工とすること自体より適切な工事を確保するためのものだからである。そうだとすれば、責任施工は

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限度はあるものの建築士法、建築基準法違反とまではいえないと考えられる。したがってかかる合意がなされた場合、 当事者間では合意そのものを無効とすることはないが、第三者との関係においては両法の右趣旨が勘案されると解す べきである。 ︵1︶ ︵2︶  ここでの問題は、国民の抽象的安全を守ろうとする建築士法、建築基準法と、個々具体的な場面における安全確保の具体 的方法のひとつとしての責任施工が相対立する場面ともいえよう。  翻って考えてみると、責任施工自体建築士の能力不足を露呈するものともいえる。しかし、設計ひとつとっても意匠、構 造、設備などに専門分化されているように、建築分野においても他の分野同様、高度技術化、専門化している現状を考えた とき、一建築士にス⋮パーマン的働きを期待すること自体無理といわなければならない。もっとも、極端な例として設計す べてを責任施工とした場合を考えればわかるように自ずとそこには限界がある。かかる限界を明示することは困難であるが、 建築士に要求されるプロフェッショナルライアビリティ︵駿○諭霧ご露=貯げまぞ︶がひとつの指針となろう。 六 責任施工の法的責任の所在  ①第三者との関係  前述のように、責任施工が建築士法、建築基準法に違反しないといってもそのことが直ちに建築士の全面的責任免 除につながる訳ではない。確かに当事者問においては、一般的には合意内容に従い元請施工会社ないし下請施工会社 東 洋 法 学 二三

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    責任施工の法的解析       二四 が責任を負うといえよう︵この点については後述する︶。しかし第三者が当該工事によって何らかの損害を被ったと き、実際に当該工事を行った業者が不法行為など法的責任を問われることは別として、設計者や工事監理者は何ら責 任を問われないのであろうか。  前述のとおり建築士法および建築基準法で建築士の資格を要求しているのは、両法で相侯って広く国民一般の安全 を確保しようとする極めて強い公共性からである。つまり、建築行為は建築主のみならず国民への影響が大であるが        ハユ  ゆえに建築士に設計ないし工事監理をさせている点に着目すべきである。こうした観点からすると、たとえ施工者に 全てを委ねた結果であったとしても、本来あくまで建築士が行うべき業務を他に委ねたうえ、その結果についても他 に転嫁することは許されない。またこのように考えないと建築士に要求される高度な注意義務にも反する。すなわち、 建築士はたとえ責任施工を行ったとしても、第三者との関係において責任施工の結果に対し、その責任を免れないと 解すべきである。 ︵三︶前出責任施工﹁建築設計の法律空間﹂一六八頁。 ②当事者間の関係  前述のとおり、責任施工は当事者間においては一応有効と考えられる。したがって、責任施工の対象となった特定 工事に毅疵ある場合、建築主は当然施工者に対し責任追及をなしうる。では、設計者ないし工事監理者に対してはど

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うか。  合意が有効であるとすれば責任は免除されることになろうが、建築主は建築的に素人であって建設については設計 者・工事監理者に全てを委ねているがゆえに責任施工とするか否かに関しても設計者・工事監理者が実質的決定権を 有している実態を考えたとき、建築主と設計者・工事監理者との合意は両者の対等な立場における合意とまで言い切 れない要素を含んでいる。むしろ設計者・工事監理者がプロフェッショナルライアビリティとしての高度な注意義       ハエレ 務を負うべき立場にあることを考えるならば、一般的に業務受託者が負うと考えられる注意義務︵高度な注意義務で はない︶まで免除する旨の合意と考えるべきではないのではなかろうか。そうだとすれば、建築主と設計者工事監理 者問の責任施工の合意は、設計者工事監理者に課されている高度な注意義務を軽滅する趣旨のものと考えるべきであ る。 ︵1︶前出﹁建築設計の法律空間﹂=二二頁、﹁工事監理者責任の法的解析﹂一六二頁。 七 おわりに  ﹁責任施工﹂は建築工事の中でも特殊といえるものであって、通常意識されない。しかし、筆者自らの建築工事実 務を通じ責任施工に幾度か出会い、そのたびごとにその法的意味合いは全く不明のまま工事を進めてきたことの反省

    東洋法学       二五

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    責任施工の法的解析      二六

から、こうした細かい点であっても法的なメスを入れることが建築関係の法的解明に少しでも役立つと信じ本稿を発

参照

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